JP6027932B2 - ハードコート層形成用組成物およびハードコート層 - Google Patents

ハードコート層形成用組成物およびハードコート層 Download PDF

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Description

本発明は、ハードコート層形成用組成物、ハードコート層および積層フィルムに関する。具体的には、本発明は、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子と、重合性モノマーと硬化促進剤を含み、水性組成物の粘度が100mPa・s以下である水性組成物に関する。また、本発明は、該水性組成物から形成したハードコート層、および該ハードコート層の上に特定の無機粒子を含むハードコート層を積層した積層体を含む積層フィルムに関する。
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等の表示装置が急速に普及している。これらの表示装置の表面は、様々な物と接触するため傷が付きやすい。また、時には強い衝撃が加えられることもある。このため、表示装置の表面には高い耐傷性や耐衝撃性が求められている。
表示装置の表面に高い耐傷性や耐衝撃性を持たせるために、表示装置の表層には、ハードコート層が設けられることが多い。ハードコート層は、多官能アクリル重合性モノマー、オリゴマーを含む材料に紫外線や電子線などを照射することによって硬化させたり、アルコキシシランの加水分解物を縮合させて硬化させることによって形成される。
例えば、特許文献1には、透明基材フィルムの上にハードコート層を塗設したハードコートフィルムが開示されている。ここでは、ハードコート層の硬度を高めるために、平均アスペクト比が1.5〜20の無機微粒子を含有させることとしている。なお、特許文献1ではハードコート層形成用組成物の溶剤として、有機溶剤が用いられている。
また、特許文献2には、平均アスペクト比が30〜5000のアルミナ粒子を用いたアルミナ多孔質膜が開示されている。特許文献2に開示されたアルミナ多孔質膜は、紫外線励起による発光能と強度を併せもつ膜状構造体である。この膜状構造体には、高いアスペクト比の無機粒子が用いられているが、通常のハードコート層を形成する際に混合される樹脂やアルコキシシラン等のバインダーは含有されていない。
特開2002−60526号公報 特開2010−105846号公報
上述したように、特許文献1に記載のハードコート層は、平均アスペクト比が1.5〜20の無機微粒子を含有しているが、その硬度は十分ではなかった。このため、より高硬度で耐傷性に優れたハードコート層が求められていた。
また、特許文献1のハードコート層形成用組成物は、有機溶剤を溶媒としているため、環境への負荷が大きく、また、製造工程で有機溶媒が揮発することによる製造環境の悪化が問題となっていた。
また、特許文献2では、平均アスペクト比が30〜5000のアルミナ粒子を用いてアルミナ多孔質膜を形成しているが、バインダーを含有していないため、厚膜形成をすることが困難であった。このため、特許文献2に開示されたアルミナ多孔質膜は衝撃に弱いという問題があった。また、特許文献2のような高アスペクト比を有する粒子を用いて膜を形成した場合、膜のヘイズ値が高くなるという問題があった。さらに、特許文献2では、塗布液にバインダーが含まれていないため、成膜時に、1000℃程度の高温に加熱する工程が必要となり、製造適性が悪いという問題もあった。
そこで本願発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、高硬度のハードコート層であって、耐傷性と耐衝撃性に優れ、かつヘイズ値が低いハードコート層を提供することを目的として検討を進めた。また、本願発明者らは、環境負荷が少なく、製造適性に優れた方法でハードコート層を形成することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本願発明者らは、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子(無機フィラー)と、重合性モノマーと、硬化促進剤を含有した水性組成物であって、水性組成物の粘度を100mPa・s以下とした水性組成物を用いてハードコート層を形成することにより、高硬度であり、かつヘイズ値が低いハードコート層が得られることを見出した。さらに、本願発明者らは、ハードコート層を形成する塗布液を水性組成物とすることにより、環境負荷を低減し、製造適性を高めることに成功し、本願発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]無機粒子と重合性モノマーと硬化促進剤を含む水性組成物であって、前記無機粒子の平均アスペクト比が30〜5000であり、前記水性組成物の粘度は100mPa・s以下であることを特徴とする水性組成物。
[2]前記無機粒子の平均アスペクト比が300〜800であることを特徴とする[1]に記載の水性組成物。
[3]前記水性組成物中の全固形分に対して前記無機粒子が占める割合は、10〜30質量%であることを特徴とする[1]または[2]に記載の水性組成物。
[4]前記重合性モノマーがアルコキシシランであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水性組成物。
[5]前記アルコキシシランは、テトラアルコキシシランおよびアルキルトリアルコキシシランの混合物であることを特徴とする[4]に記載の水性組成物。
[6]前記硬化促進剤はアルミニウムキレート錯体であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の水性組成物。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の水性組成物を硬化して形成したことを特徴とするハードコート層。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の水性組成物を硬化して形成した第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層の上に、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子を含む第2のハードコート層を積層した積層体を含み、
前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率の差は10%以下であることを特徴とする積層フィルム。
[9]前記第2のハードコート層に含まれる無機粒子の平均粒子径は、50nm以下であることを特徴とする[8]に記載の積層フィルム。
[10]ヘイズ値が1%以下であることを特徴とする[8]または[9]に記載の積層フィルム。
[11]さらに支持体を有し、前記支持体は、前記第1のハードコート層の一方の面側であって、前記第2のハードコート層が積層された面とは反対側に設けられていることを特徴とする[8]〜[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
[12]前記支持体と前記第1のハードコート層の間にさらに易接着層が設けられていることを特徴とする[11]に記載の積層フィルム。
[13]前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層の平均膜厚の合計が2μm以上であることを特徴とする[8]〜[12]のいずれかに記載の積層フィルム。
[14]重合性モノマーと平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子を含む第1の水性組成物を得る工程と、重合性モノマーと硬化促進剤を含む第2の水性組成物を得る工程と、前記第1の水性組成物と前記第2の水性組成物を混合する工程を含むことを特徴とする水性組成物の製造方法。
[15]前記第1の水性組成物と前記第2の水性組成物の質量比は、1:9〜9:1であることと特徴とする[14]に記載の水性組成物の製造方法。
[16][14]または[15]に記載の製造方法により製造した水性組成物を支持体上に塗布し、第1のハードコート層を製膜する工程を含み、
前記第1のハードコート層を製膜する工程は、120〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
[17]前記加熱する工程では、120〜300℃で10秒〜1時間加熱することを特徴とする[16]に記載の積層フィルムの製造方法。
[18]前記第1のハードコート層を製膜する工程の後に、さらに第2のハードコート層を製膜する工程を含み、前記第2のハードコート層を製膜する工程は、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子と重合性モノマーを含む水性組成物を前記第1のハードコート層の上に塗布する工程を含むことを特徴とする[16]または[17]に記載の積層フィルムの製造方法。
[19][16]〜[18]のいずれかに記載の製造方法により製造された積層フィルム。
本発明によれば、高硬度のハードコート層を得ることができ、ハードコート層の耐傷性を高めることができる。また、本発明によれば、ヘイズ値の低いハードコート層を得ることができる。本発明では、水性組成物の粘度を100mPa・s以下とすることにより、ハードコート層のヘイズを低く抑えることができる。
このように、本発明で得られるハードコート層は、高硬度であるため割れにくく、耐衝撃性に優れており、かつ、ヘイズ値が低いため透明性に優れており、表示装置等の表面層として好適に用いられる。
さらに、本発明によれば、水性組成物からハードコート層を形成することができるため、環境への負荷を減らすことができる。さらに、本発明によれば、成膜時の加熱温度を低く設定することができるため、ハードコート層の製造を容易にすることができ、製造適性を高めることができる。さらに、ハードコート層の製造にかかるコストを抑制することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(水性組成物)
本発明の水性組成物は、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子と重合性モノマーと硬化促進剤を含む。本発明では、水性組成物の粘度は100mPa・s以下である。上述した水性組成物を支持体の上に塗布し、硬化させることによって、ハードコート層が形成される。すなわち、本発明の水性組成物はハードコート層形成用の水性組成物とすることができる。
本発明では、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子と重合性モノマーを含むことにより、ハードコート層を形成した際に、その硬度を高めることができ、さらに耐傷性および耐衝撃性を高めることができる。また、本発明においては、平均アスペクト比が30〜5000という高アスペクト比の無機粒子と重合性モノマーと硬化促進剤を混合することにより、ハードコート層の膜厚を厚くすることができる。これにより、ハードコート層の硬度をより高めることができる。
本発明では、水性組成物の粘度は100mPa・s以下であればよく、80mPa・s以下であることが好ましく、60mPa・s以下であることがより好ましい。なお、水性組成物の粘度は1mPa・s以上であることが好ましい。本発明では、上記範囲内とすることにより、ハードコート層を形成した際に、そのハードコート層のヘイズ値を低く抑えることができる。すなわち、本発明のハードコート層は、ヘイズ値が低いため、透明性に優れている。本発明により得られるハードコート層は、硬度が高いことに加えて、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、かつ透明性に優れているためタッチパネル等の表示装置に好適に用いられる。
水性組成物の粘度が上記範囲内であることは、水性組成物中において無機粒子が凝集せず、均一に分散していることを表す。つまり、このような水性組成物を用いて形成したハードコート層において、無機粒子は均一に分散することとなる。これにより、ハードコート層のヘイズ値を低く抑えることが可能となる。
本発明では、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子と重合性モノマーと硬化促進剤を混合することにより、ハードコート層の成膜時の加熱温度を低くすることができる。これにより、ハードコート層の製造効率を高めることができ、製造にかかるコストを削減することができる。
また、本発明の水性組成物は、有機溶剤を用いていないため、水性組成物を塗布し乾燥させる際に蒸発するものは、主に水成分となる。このため、有機溶剤を用いた場合と比較して、環境への負荷を大幅に低減することができる。
(無機粒子)
本発明の水性組成物は、無機粒子を含む。この無機粒子は、高いアスペクト比を有しており、平均アスペクト比は、30〜5000である。無機粒子のアスペクト比は、30以上であれば良く、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。また、無機粒子のアスペクト比は、5000以下であれば良く、3000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。
本発明では、無機粒子の平均アスペクト比を上記範囲内とすることにより、より高硬度なハードコート層を形成することができる。
ここで、平均アスペクト比とは、無機粒子の長軸方向に直交する厚み方向における無機粒子の平均短径をr(nm)として、無機粒子の長軸方向における無機粒子の平均長径をL(nm)とした際のL/r比を意味する。すなわち、アスペクト比は、水性組成物中に含有される無機粒子を観察し、無機粒子の長径を短径で割ることにより算出することができる。
本発明では、無機粒子の平均短径r(nm)は、1〜20nmであることが好ましい。平均短径r(nm)は、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましい。平均短径r(nm)は、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。また、平均長径L(nm)は、100〜10000nmであることが好ましい。平均長径L(nm)は、100nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、700nm以上であることがさらに好ましい。また、平均長径L(nm)は、10000nm以下であることが好ましく、8000nm以下であることがより好ましく、5000nm以下であることがさらに好ましい。無機粒子の短径および長径を上記範囲内とすることにより、無機粒子の平均アスペクト比を好ましい範囲内にすることができる。
上述した無機粒子の長さは、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ハードコート層の縦方向に垂直な断面と、縦方向に平行な断面に存在する長径が100nm以上の任意の無機粒子を100個選択し、その無機粒子の長径と短径を計測し、アスペクト比を求めることができる。100個の無機粒子毎に長径と短径を計測し、それらアスペクト比から平均のアスペクト比を算出することができる。
無機粒子は、平均アスペクト比が30〜5000のものであれば特に制限されるものではないが、硬度が高く、モース硬度が6以上の無機酸化物粒子であることが好ましい。例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが用いられ、酸化アルミニウム粒子が好ましく用いられる。中でも、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子またはアルミナ粒子は特に好適である。アルミナ水和物粒子は、無定形、ベーマイトまたは擬ベーマイトから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ベーマイトまたは擬ベーマイトであることがさらに好ましい。ここで、ベーマイトとは、Al23・nH2O(n=1〜1.5)で表されるアルミナ水和物の結晶である。また、擬ベーマイトは、ベーマイトのコロイド状凝集体を指している。なお、無機粒子として用いることができるアルミナ粒子の結晶系はγ、θまたはαから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、γまたはθから選ばれることがさらに好ましい。市販品としては、例えば、ベーマイトゾル(川研ファインケミカル(株)製)、AS−520(日産化学(株)製)、クォートロン(扶桑化学(株)製)、AKPシリーズ(住友化学(株)製)などが挙げられ、これらから平均アスペクト比やアルミナ粒子の結晶系が本発明の範囲内であるものを使用することができる。
アルミナ水和物粒子またはアルミナ粒子は、水性溶液に分散していることが好ましい。アルミナ水和物粒子またはアルミナ粒子が分散している水性溶液を水性アルミナゾルといい、この水性アルミナゾルは、加水分解性アルミニウム化合物を加水分解し、酸性下でコロイドを形成することにより製造することができる。加水分解性アルミニウム化合物には、各種の無機アルミニウム化合物および有機性の基を有するアルミニウム化合物が包含される。無機アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどの無機酸の塩、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩、水酸化アルミニウムなどが例示される。
また、有機性の基を有するアルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、環状アルミニウムオリゴマー、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウムなどのアルミニウムキレート、アルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物などが例示される。
これらの化合物のうち、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であることなどから、アルミニウムアルコキシドが好ましく、炭素数2〜5のアルコキシル基を有するものが特に好ましい。
加水分解に使用する酸としては、塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの一価の酸が好ましく、操作性、経済性の面で、酢酸が特に好ましく用いられる。酸の使用量は、アルミニウムアルコキシドに対し、0.2〜2.0モル倍であり、好ましくは0.3〜1.8モル倍である。加水分解に使用する酸の使用量を上記範囲内とすることにより、得られる粒子の平均アスペクト比を所望の範囲とすることができ、かつ経時安定性を高めることができる。なお、加水分解は、100℃以下で、0.1〜3時間行うことが好ましい。
加水分解するアルミニウムアルコキサイドの酸水溶液の固形分濃度は、2〜15質量%が好ましく、好ましくは3〜10質量%である。固形分濃度を上記範囲内とすることにより、得られる粒子の平均アスペクト比を所望の範囲とすることができ、反応液の撹拌性も高めることができる。
加水分解で生成したアルコールを留去後、解膠処理を行う。解膠処理は、100℃〜200℃で、0.1〜10時間加熱し、更に好ましくは110〜180℃で、0.5〜5時間処理する。このようにして、所望の平均アスペクト比を有する無機粒子を得ることができる。
本発明で得られるハードコート層において、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子の長軸方向は平行に配向した状態で積み重なって集積されることが好ましい。このような態様で無機粒子が集積されるために、無機粒子は水性組成物中で均一に分散されることが好ましい。また、ハードコート層の成膜条件や水性組成物のpHを調整することによっても集積状態を調整することができる。
本発明では、水性組成物のpHは2〜7とすることが好ましく、2〜6とすることがより好ましく、2〜5とすることがさらに好ましく、3〜4とすることが特に好ましい。水性組成物のpHを上記範囲内とするために、水性組成物には、酢酸、塩酸、硝酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸等の酸を加えることが好ましい。中でも、酢酸を添加することが特に好ましく、酢酸を添加することによってpHを3〜4に調節することが最も好ましい。水性組成物のpHを上記のようにすることにより、無機粒子の分散性を高めつつ、無機粒子の長軸方向を平行に配向した状態で積み重ねて集積させることができる。これにより、膜厚が均一なハードコート層であって、かつ、高硬度のハードコート層を形成することができる。さらに、無機粒子の長軸方向を平行に配向した状態で集積させることにより、傷がつきにくく、衝撃に強いハードコート層を得ることができる。
本発明では、水性組成物の粘度は100mPa・s以下であればよく、80mPa・s以下であることが好ましく、60mPa・s以下であることがより好ましい。なお、水性組成物の粘度は1mPa・s以上であることが好ましい。
水性組成物の粘度を100mPa・s以下とするためには、水性組成物を調製する工程において、無機粒子と硬化促進剤が直接接触しないように混合することが好ましい。例えば、重合性モノマーを有する水溶液を2分割し、分割した一方の水溶液に無機粒子を添加して第1の水性組成物とし、他方の水溶液に硬化促進剤を添加して第2の水性組成物とし、それぞれの水性組成物を混合して目的の水性組成物を得ることによって、無機粒子と硬化促進剤が直接接触しないように混合することができる。これにより、水性組成物の粘度を100mPa・s以下とすることができる。これは、重合性モノマーを有する水溶液中に無機粒子と硬化促進剤を別々に添加することによって、無機粒子および硬化促進剤の各々が水溶液中の重合性モノマー分子に覆われたような状態になるためであると考えられる。このような状態となった無機粒子および硬化促進剤は、その後に各々が含まれる水性組成物が混合されて、無機粒子と硬化促進剤の両者が同一溶液中に存在することとなっても、直接的に接触することはなく、水性組成物中において均一に分散することができる。
水性組成物中の全固形分に対して無機粒子が占める割合は、10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましく、14質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子が占める割合は、30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。本発明では、水性組成物中において、無機粒子が均一に分散されるため、無機粒子が占める割合を30質量%以下とすることができる。このように、無機粒子が占める割合を低くした場合であっても、高硬度のハードコート層を形成することができる。
なお、無機粒子は2種以上を併用してもよく、その場合は使用した全種類の合計量が上記範囲内となる。無機粒子が占める割合を上記範囲内とすることにより、水性組成物中における無機粒子の分散性を高めることができる。さらに、高硬度であって、耐傷性および耐衝撃性に優れたハードコート層を形成することができる。
(重合性モノマー)
本発明の水性組成物は、重合性モノマーを含む。ここで、重合性モノマーとは、モノマー同士が重合することによって、オリゴマーを形成し得る化合物のことをいう。重合性モノマーはアルコキシシランであることが好ましい。アルコキシシランは、水溶性又は水分散性の素材を使用することが好ましい。水溶性又は水分散性の素材を使用することは、VOC(volatile organic compounds)による環境汚染を低減する観点からも特に好ましい。
アルコキシシランは、加水分解性基を有する。この加水分解性基が酸性の水溶液中で加水分解されることによりシラノールが生成され、シラノール同士が縮合することによって、オリゴマーが生成される。本発明の水性組成物中においては、アルコキシシランの一部は加水分解されていても良い。
重合性モノマーは、水性組成物全質量に対して、40〜70質量%含まれることが好ましい。重合性モノマーの含有率は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、重合性モノマーの含有率は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。重合性モノマーは2種以上を併用してもよく、その場合は使用した全種類の合計量が上記範囲内となる。重合性モノマーの含有率を上記範囲内とすることにより、水性組成物の経時安定性を高めることができ、かつ、ハードコート層を形成した際の硬度を高めることができる。さらに、ハードコート層の膜厚を厚くすることを可能とする。
アルコキシシランは、テトラアルコキシシランを含むことが好ましく、テトラアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシランの混合物とすることがより好ましい。アルコキシシランが4官能のアルコキシシランであるテトラアルコキシシランを含有することにより、ハードコート層を形成した際に十分な硬度を得ることができる。また、3官能のアルコキシシランであるアルキルトリアルコキシシランを混合することによって、ハードコート層の硬度を高く維持しつつも適度な柔軟性を付与することができ、よりひび割れしにくいハードコート層を得ることができる。
アルコキシシランが、テトラアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシランの混合物である場合、テトラアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシランのモル比は、0:100〜85:15であることが好ましく、5:95〜80:20であることがより好ましく、10:90〜75:25であることがさらに好ましい。モル比を上記範囲内とすることにより、高硬度であって、耐傷性と耐衝撃性に優れたハードコート層を得ることができる。
テトラアルコキシシランとしては、各アルコキシ基の炭素数が1〜4のものがより好ましく用いられる。中でも、テトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランであることが特に好ましい。各アルコキシ基の炭素数を4以下とすることにより、酸性水と混ぜたときの4官能のアルコキシシランの加水分解速度が遅くなりすぎることがなく、均一な水溶液にするまでの溶解に要する時間がより短くなる。これにより、ハードコート層を製造する際の製造効率を高めることができる。市販品としては、KBE−04(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
アルキルトリアルコキシシランは、下記一般式(1)で表される3官能のアルコキシシランである。
RSi(OR13 …(1)
ここで、Rはアミノ基を含まない炭素数が1〜15の有機基、R1はメチル、エチル基等炭素数4以下のアルキル基である。
一般式(1)で表されるアルキルトリアルコキシシランは、アミノ基を官能基として含まない。つまり、このアルキルトリアルコキシシランは、アミノ基を持たない有機基Rを有している。Rがアミノ基を有する場合は、テトラアルコキシシランと混合して加水分解すると、生成するシラノール同士で脱水縮合が促進されてしまう。このため、水性組成物が不安定となり好ましくない。
一般式(1)のRは、炭素数が1〜15の範囲であるような分子鎖長をもつ有機基であれば良い。炭素数を15以下とすることにより、ハードコート層の柔軟性が過度に大きくならず、十分な硬度を得ることができる。
さらに、Rで示す有機基は、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を有することが好ましい。特に、エポキシ基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基などが有機基R中にあることが好ましい。中でも、エポキシ基を含有するアルキルトリアルコキシシランは、酸性水中でのシラノールの安定性を高める効果があり、特に好ましい。また、エポキシ基を含有するアルキルトリアルコキシシランは、ハードコート層に適度な柔軟性を付与しつつも、十分な硬度を与えることができる。
一般式(1)中のR1は、炭素数が4以下のアルキル基である。中でもR1は特に、メチル基またはエチル基であることが好ましい。R1を炭素数が4以下のアルキル基とすることにより、3官能または2官能のアルコキシシランの親水性を高めることができ、水溶液中での加水分解を促進させることができる。
本発明で用いるアルキルトリアルコキシシランのうち好ましい化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランを挙げることができる。中でも、アルキルトリアルコキシシランは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、またはこれらの混合物であることが好ましい。市販品としては、KBE−403(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
重合性モノマーは、上述したアルコキシシランの他に、公知の硬化性樹脂を用いることもできる。公知の硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や活性化エネルギー線重合樹脂を挙げることができる。
熱硬化性樹脂は熱を加えることにより硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂としてはメラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のプレポリマーの架橋反応を利用するものがある。熱硬化性樹脂としては、カルボキシル(−COOH)基および/またはヒドロキシル(−OH)基を含有するポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、フルオロ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂およびアルキド樹脂等を挙げることができる。
活性エネルギー線重合性樹脂は、多官能モノマーと重合開始剤を含む塗布液を塗布し、多官能モノマーを活性エネルギー線により重合させることで形成される。モノマーが有する官能基としては、重合性不飽和二重結合基を挙げることができる。重合性不飽和二重結合の例としては、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基を挙げることができる。反応性の観点よりアクリレート基が好ましく用いられる。
活性エネルギー線としては、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線等を用いることができるが、紫外線(UV)が好ましく用いられる。UV硬化性樹脂としては、アクリレート系モノマーからなるアクリル樹脂や、エポキシシ系あるいはウレタン樹脂等を挙げることができる。
(硬化促進剤)
本発明の水性組成物は、硬化促進剤をさらに含む。硬化促進剤は、水溶性であることが好ましい。本発明で用いる硬化促進剤は、水性組成物中で、シラノールの脱水縮合を促してシロキサン結合の形成を促進させる働きをする。硬化促進剤は、水溶性の無機酸、有機酸、有機酸塩、無機酸塩、金属アルコキシド、金属錯体を用いることができる。金属錯体としては、Al、Mg、Mn、Ti、Cu、Co、Zn、Hf及びZrよりなる金属錯体が好ましく、これらを併用することもできる。
無機酸としては、ホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸が挙げられ、有機酸としては、酢酸、蟻酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸アルミ、シュウ酸アルミ、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウムが挙げられ、無機酸塩としては、塩化アルミ、硫酸アルミ、硝酸アルミ、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが挙げられる。金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドが挙げられる。金属錯体としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)、マンガンアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、銅アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、チタンオキシアセチルアセトナートが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートであり、保存安定性、入手容易さを考慮すると、アルミニウムキレート錯体であるアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。市販品としては、アルミキレートA(W)、アルミキレートD(川研ファインケミカル(株)製)などが挙げられる。
硬化促進剤は、塗布液中に均一に混合、溶解することが好ましく、本発明における塗布液の溶剤としての水に溶解することが好ましい。水への溶解性が低い場合には、塗布液中に固体として存在するため、塗布乾燥後にも異物として残留し、透明度が低いハードコート層となってしまうことがあるからである。
硬化促進剤の添加量は、全てのアルコキシシランに対して20〜70重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましく、40〜50重量%であることがさらに好ましい。硬化促進剤の添加量を上記範囲内とすることにより、シラノールの脱水縮合の反応速度を適切な速度とすることができ、膜厚が均一なハードコート層を得ることができる。
(その他の添加剤)
本発明の水性組成物には、ハードコート層の平滑性を向上させて塗膜表面の摩擦を軽減する目的で界面活性剤を添加しても良い。また、顔料や染料、その他微粒子等を分散させることによってハードコート層を着色しても良い。さらに、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤や酸化防止剤等を添加しても良い。
(界面活性剤)
本発明の水性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、パイオニンD−6512、D−6414、D−6112、D−6115、D−6120、D−6131、D−6108−W、D−6112−W、D−6115−W、D−6115−X、D−6120−X(竹本油脂(株)製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、ナロアクティーCL−95、HN−100(三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)、サンデッドBL(三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の添加量は、水性組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
(ハードコート層/積層フィルム)
本発明のハードコート層は、上述した水性組成物を硬化させることによって得られる。ハードコート層は、支持体等の上に水性組成物を塗布して乾燥することにより、形成される。
ハードコート層の厚みは、水性組成物の塗布量を調整することにより制御することができる。得られるハードコート層の硬度の観点からは、平均膜厚は、2μm以上であることが好ましい。ハードコート層の平均膜厚は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。また、ハードコート層の平均膜厚は、12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましい。なお、ハードコート層の厚さは上記の範囲で一定あることがより好ましい。厚みが2μm未満であると十分な硬度が発現せずにハードコート層としての機能が得られないことがあり、12μmよりも大きいとハードコート層の内部応力が大きくなってカール等の変形が生じてしまう場合がある。
ハードコート層の屈折率は、例えば1.54〜1.64の範囲内にすることができる。ハードコート層の屈折率を上記範囲内とすることにより、タッチパネル等にも好適に用いることができる。
本発明の積層フィルムは、少なくとも2層のハードコート層が積層された積層体を含むことが好ましい。2層のハードコート層のうち一方を第1のハードコート層とし、他方を第2のハードコート層とすると、第1のハードコート層は、平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子を含み、第2のハードコート層は、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子を含む。なお、ここで、第1のハードコート層は、上述した水性組成物を硬化して形成されるハードコート層である。
第2のハードコート層は、第1のハードコート層の上に積層される。第2のハードコート層は、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子と重合性モノマーを含む水性組成物を第1のハードコート層の上に塗布し、硬化することによって形成される。第2のハードコート層を形成するための水性組成物には、硬化促進剤が含まれていてもよい。なお、第1のハードコート層と第2のハードコート層の間には他の層が積層されてもよいが、隣接して積層されることが好ましい。
第2のハードコート層に含まれる無機粒子の平均アスペクト比は、1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、無機粒子は略球形であることが特に好ましい。このように、平均アスペクト比が小さな無機粒子を含む第2のハードコート層を第1のハードコート層の上に積層することによって、ヘイズ値を下げることができる。
また、第2のハードコート層に含まれる無機粒子の平均粒子径は50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。第2のハードコート層に含まれる無機粒子の平均粒子径を上記範囲内とすることにより、積層フィルムのヘイズ値をより効果的に下げることができる。
本発明においては、第1のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率と第2のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率の差は一定範囲内であることが好ましい。具体的には、第1のハードコート層と第2のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率の差は10%以下であり、5%以下であることが好ましい。
第1のハードコート層に含まれる平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子の含有率は、10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。また、第2のハードコート層に含まれる平均アスペクト比が1〜10の無機粒子の含有率は10〜30質量%であることが好ましく15〜25質量%であることがより好ましい。なお、ここで、無機粒子の含有率とは、各々のハードコート層の全体の質量に対して無機粒子の質量が占める割合を示している。
第1のハードコート層と第2のハードコート層の屈折率の差は、0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましい。このような屈折率差の低減は、第1のハードコート層と第2のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率の差を上記範囲内とすることにより達成することができる。本発明では、屈折率の差が小さい2層のハードコート層を積層することによって、第1のハードコート層と第2のハードコート層を積層した積層フィルムのヘイズ値を低くすることができる。これにより、ヘイズが低く、かつ高硬度の積層フィルムを得ることができる。
第1のハードコート層の上に第2のハードコート層を積層した積層フィルムのヘイズ値は、1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。本発明では、第1のハードコート層の上に第2のハードコート層を設けることによって、低ヘイズの積層フィルムを得ることができる。
第1のハードコート層と第2のハードコート層の平均膜厚の合計は、2μm以上であることが好ましい。2つのハードコート層の平均膜厚の合計は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。また、2つのハードコート層の平均膜厚の合計は、12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましい。2つのハードコート層の平均膜厚の合計を上記範囲内とすることにより、より効果的にヘイズ値を低く抑制することができる。また、2つのハードコート層の平均膜厚の合計を上記範囲内とすることにより、積層フィルムが変形することを抑制することができる。
上記のような2層のハードコート層を積層した積層体を含む積層フィルムは、さらに、支持体を有することが好ましい。支持体は、第1のハードコート層の一方の面側であって、第2のハードコート層が積層された面とは反対側に設けられる。すなわち、支持体を有する積層フィルムにおいては、支持体→第1のハードコート層→第2のハードコート層の順になるように各層が構成される。なお、本発明においては、2層のハードコート層を積層したものを積層体といい、この積層体からなるフィルムやこの積層体を含むフィルムを積層フィルムという。
ハードコート層を積層する支持体としては、高分子化合物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にしたものを用いることができる。支持体に用いる高分子化合物は特に制限されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート類、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリイミド、ポリシクロオレフィン類等が好ましい。この中でも、PET、PEN、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体がより好ましく、PET、PENが特に好ましい。
これらの支持体は、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸とは、フィルムの幅方向および長手方向をそれぞれ1軸とみなして両方向に延伸させることである。このように2軸延伸されたポリエステルフィルムは、2軸での分子配向が十分に制御されているため非常に優れた機械強度を有する。延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向に対する延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、より好ましくは2〜5倍である。特に、1軸方向あたりの延伸倍率を2〜5倍として2軸延伸させたポリエステルフィルムは、分子配向がより効率良くかつ効果的に制御されているので、非常に優れた機械強度を備え、ポリエステルフィルムとして好適である。
支持体は、表面がコロナ処理やグロー処理がされたものであってもよい。これらの処理により、支持体の表面が親水化され、水性組成物の塗れ性を改善することができるので、ハードコート層との密着力または易接着層との密着力をより高めることができる。また、グロー放電処理を行うことにより、ポリエステルフィルムの表面を改質し、平面性を高めることができる。さらに、グロー放電処理には、積層フィルムの密着性を高めることができるという利点がある。
さらに、本発明では、支持体と第1のハードコート層の間に易接着層が設けられていることが好ましい。易接着層は、支持体とハードコート層の接着性を向上させ、ハードコート層との密着力を高めるために支持体に適宜設けられる。易接着層は、通常、バインダーと硬化剤と界面活性剤とからなる塗布液を、支持体のハードコート層が設けられる面に塗布して形成される。易接着層には、有機または無機の微粒子を適宜添加してもよい。特に限定されないが例えば金属酸化物が挙げられ、具体的には酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ニオブなどが好ましく、これらを単独で使用、もしくは2種以上を併用してもよい。市販品としては、例えば、ET−500WほかETシリーズ、FT−2000ほかFTシリーズ、SN−100PほかSNシリーズ、FS−10DほかFSシリーズ(石原産業(株)製)などが挙げられる。
易接着層に使用するバインダーは、特に限定されないが、接着性の観点からポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、スチレンブタジエン共重合体の少なくともひとつであることが好ましい。また、バインダーは、水溶性または水分散性を持つものが環境への負荷が少ない点で特に好ましい。市販品としては、例えば、カルボジライトV−02−L2ほかカルボジライトシリーズ(日清紡(株)製)タケラックWS−5100ほかタケラックWSシリーズ(三井化学(株)製)などが挙げられる。
易接着層の厚みは、その塗布量を調節することで適宜調整することができる。易接着層の厚みは、0.01〜5μmの範囲で一定であることがより好ましい。厚みが0.01μm未満であると接着性が不十分となることがあり、5μmよりも大きいと均一な厚みの接着性を形成することが難しかったり、さらには、溶液の使用量が増加したり乾燥時間が長くかかりすぎてコストが増大することになる。より好ましい厚みの範囲は、0.02〜3μmである。易接着層は、1層のみでもよいし、これを複数重ねた態様であってもよい。複数の易接着層を重ねた場合には、すべての易接着層の厚みの合計を厚みとみなす。
本発明の積層フィルムは、透明度が高く、入射光のうち波長が340nmである光の透過率が70%〜100%の範囲とすることができる。これにより、本発明の積層フィルムは多種多様な用途に応用することができる。
(製造方法)
本発明の水性組成物は、重合性モノマーと平均アスペクト比が30〜5000の無機粒子を含む第1の水性組成物を得る工程と、重合性モノマーと硬化促進剤を含む第2の水性組成物を得る工程と、第1の水性組成物と第2の水性組成物を混合する工程を含む製造方法により製造される。すなわち、本発明の水性組成物の製造方法においては、無機粒子と硬化促進剤は、まず別々の水性組成物中に混合され、その後、無機粒子と硬化促進剤が各々混合された2種類の水性組成物が混合される。このように得られた水性組成物においては、無機粒子が均一に分散され、無機粒子の平均粒子径は一定範囲以下となる。
これは、重合性モノマーを有する水溶液中に無機粒子と硬化促進剤を別々に添加することによって、無機粒子および硬化促進剤の各々が水溶液中の重合性モノマー分子に覆われたような状態になるためであると考えられる。このような状態となった無機粒子および硬化促進剤は、その後に各々が含まれる水性組成物が混合されて、無機粒子と硬化促進剤の両者が同一溶液中に存在することとなっても、直接的に接触することはなく、水性組成物中において均一に分散することができる。
第1の水性組成物と第2の水性組成物に含まれる重合性モノマーの質量比は、3:7〜7:3であることが好ましく、4:6〜6:4であることがより好ましく、5:5であることが特に好ましい。第1の水性組成物と第2の水性組成物に含まれる重合性モノマーの質量比を上記範囲内とすることにより、各水性組成物中において、無機粒子と硬化促進剤を均一に分散させることができる。
ハードコート層は、上記のようにして得られた水性組成物をポリエステルフィルム等の支持体の表面に塗布することにより形成される。具体的には、ハードコート層(第1のハードコート層)は、アスペクト比が30〜5000の無機粒子と重合性モノマーを含む水性組成物を支持体の上に塗布し、硬化させることによって得ることができる。
また、積層フィルムは、上記のような第1のハードコート層を製膜する工程の後に、さらに第2のハードコート層を製膜する工程を設けることにより形成される。第2のハードコート層を製膜する工程は、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子と重合性モノマーを含む水性組成物を第1のハードコート層の上に塗布する工程を含む。このように、第1のハードコート層の上に第2のハードコート層を形成することにより、積層フィルム全体のヘイズ値を低く抑えることができる。
第1のハードコート層および第2のハードコート層を形成する水性組成物のpHはあらかじめ調整されていることが好ましい。例えば、水性組成物が塗布される前に、水性組成物に酸性溶液を添加し、pHを所望の範囲となるように調節することが好ましい。酸性溶液は、pHが2〜6であることが好ましく、水性組成物のpHは2〜7、好ましくは2〜6となるように調整されることが好ましい。
水性組成物の塗布工程は、ポリエステルフィルムの延伸工程の途中に設けられても良いが、延伸工程の後に設けられることが好ましい。水性組成物の塗布は公知の塗布機を適宜用いることができる。例えば、スピンコータ、ロールコータ、バーコータ、カーテンコータ等を挙げることができる。
塗布工程の後には、塗布液を乾燥させる工程が設けられる。乾燥工程では、加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱乾燥では、塗布膜の温度が120℃以上となるように加熱処理を行うことが好ましく、塗布膜の温度は140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることがさらに好ましい。また、塗布膜の温度は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理温度を上記範囲内とすることにより、塗布膜を十分に硬化することができ、かつ、ハードコート層に変形が起こることを防ぐことができる。なお、加熱時間は、10秒〜1時間であればよく、10秒〜5分であることが好ましい。本発明では、加熱工程では、120℃〜300℃の程度の加熱温度で加熱すれば十分であり、加熱時間も10秒〜1時間程度と短時間である。このため、製造効率を高めることができ、製造にかかるコストを抑制することができる。
乾燥工程の後に得られた積層フィルムは、その後ロール状に巻き取られても良く、シート状にカットされても良い。なお、加熱処理工程は、塗布工程の後の乾燥工程に設けられてもよく、ロール状に巻き取られた後に加熱処理工程を設けてもよい。
ハードコート層の上には、さらに、他の構成層を積層してタッチパネル等の表示装置を形成しても良い。他の構成層の積層方法としては、各々、従来の公知の方法を適宜選択できる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
下記の配合で接着用溶液を調製した。この接着用溶液を接着用溶液サンプルAとした。
[接着用溶液サンプルA]
・酸化スズ分散液 8.0重量部
(FS−10D、固形分濃度20%、石原産業(株)製)
・タケラックWS−5100 2.8重量部
(三井化学(株)製)
・カルボジライトV−02−L2 4.2重量部
(10%水溶液、日清紡ケミカル(株)製)
・界面活性剤 0.2重量部
(ナロアクティーCL−95の10%水溶液、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.2重量部
(サンデットBLの10%水溶液、三洋化成工業(株)製)
・水 84.6重量部
PETフィルム(コスモシャインA4300 125μm、東洋紡)の一方の面にコロナ放電処理を施した。このコロナ放電処理を施した面に、上記の接着用溶液サンプルAを塗布し120℃で2分乾燥させて、厚みが0.1μmの接着層を形成した。
以下の配合で、ハードコート層を形成する塗布液を調製した。この塗布液を塗布液サンプルAとした。
[塗布液サンプルA]
・テトラエトキシシラン 2.0重量部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 5.5重量部
(KBE−403、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=1%) 9.7重量部
・硬化剤 2.3重量部
(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)製)
・アルミナゾル 12.5重量部
(繊維状ベーマイトゾルF−1000、平均長径1400nm、平均短径4nm、
固形分濃度5%、pH=3.3、川研ファインケミカル(株)製)
・界面活性剤 6.9重量部
(ナロアクティーCL−95の10%水溶液、三洋化成工業(株)製)
・水 61.1重量部
塗布液サンプルAは、以下の方法で調製した。まず、酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に添加し、その後30分攪拌を続けた。次に、テトラアルコキシシランとしてのテトラメトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら添加し、その後1時間攪拌を続けた。次に、このアルコキシシラン水溶液を二分割し、片方にアルミナゾルを添加し、温浴にて45℃で6時間加熱した。もう片方のアルコキシシラン水溶液に硬化剤を添加し、その後6時間攪拌を続けた。その後、両液を混合して30分間攪拌した。次に界面活性剤と固形分が7%となるように水を順次添加し、塗布液サンプルAを調製した。
この塗布液サンプルAを上記接着層の上にバーコート法により塗布し、150℃で2分間加熱して乾燥し、厚さ4.0μmのハードコート層を形成し、積層フィルムを得た。
塗布液サンプルAについて、TVB−10M(東機産業(株)製)を用いて粘度を測定した。結果は表1に示す。
得られた積層フィルムについて、下記の(1)と(2)と(3)の評価を実施した。これらの結果は、表1に示す。
(1)ハードコート層のひび割れの有無及び程度
150℃にて1時間ベーク処理を行い、ハードコート層を目視で観察し、以下の基準で評価した。ひび割れが多くあるほど、さらに全面にわたり発生しているほど、光の透過性、耐久性、外観が悪いことを意味する。
A:ひび割れが全く認められない
B:ひび割れが局所的に認められるが、用途によっては使用可能なレベル
C:ひび割れが全面に認められ、製品として用いることができないレベル
(2)鉛筆硬度
150℃にて1時間ベーク処理を行い、往復磨耗試験機トライボギア(登録商標) TYPE:30S(新東科学(株)製)を用いて、JIS K5600−5−4に基づき、移動速度0.5mm/秒、加重750gにて、ハードコート層の鉛筆硬度を測定した。ハードコート層の鉛筆硬度は、用途によって求められるレベルが異なるものの、最表面に用いる場合「4H」以上であればハードコート層としての機能は満足するといえる。
(3)へイズ
ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業(株)製)を用いて、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値は、JIS K7136に基づき測定した。
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
実施例1と同様に接着層を形成し、表1の配合比になるように調液した塗布液サンプルを実施例1と同様に塗布しサンプルを作成した。評価(1)と(2)と(3)の結果を表1に示す。
なお、ここで用いた無機粒子は、
アスペクト比350:繊維状ベーマイトゾルF−1000、平均長径1400nm、平均短径4nm、固形分濃度5%、pH=3.3、川研ファインケミカル(株)製
アスペクト比750:繊維状ベーマイトゾルF−3000、平均長径3000nm、平均短径4nm、固形分濃度5%、pH=3.0、川研ファインケミカル(株)製
アスペクト比10:アルミナゾル−200、平均長径100nm、平均短径10nm、固形分濃度11%、pH=4.8、日産化学工業(株)製
アスペクト比1:アルミゾルーA2、平均粒子径10〜20nm、固形分濃度10%、pH=3.8、川研ファインケミカル(株)製
である。
(比較例4、5)
塗布液は、以下の方法で調製した。まず、酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に添加し、その後30分攪拌を続けた。次に、テトラアルコキシシランとしてのテトラメトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら添加し、その後1時間攪拌を続けた。次に、このアルコキシシラン水溶液にアルミナゾルを添加し、その後30分間攪拌を続けた。次に、硬化剤を添加し、その後1時間攪拌を続けた。次に界面活性剤と固形分が7%となるように水を順次添加し、塗布液サンプルAを調製した。
この塗布液サンプルAを上記接着層の上にバーコート法により塗布し、150℃で2分間加熱して乾燥し、厚さ4.0μmのハードコート層を形成し、積層フィルムを得た。
なお、ここで用いた無機粒子は、
アスペクト比350:繊維状ベーマイトゾルF−1000、平均長径1400nm、平均短径4nm、固形分濃度5%、pH=3.3、川研ファインケミカル(株)製
である。
Figure 0006027932
実施例1〜4では、調液方法を二液タイプ(無機粒子と硬化促進剤を別々の水溶液で混合する工程を含む)としているため、水性組成物の粘度が100mPa・s以下となっている。また、無機粒子のアスペクト比が30〜5000の範囲内であり、無機粒子の含有率が10質量%以上である。このため、実施例1〜4では、ひび割れもなく、高い鉛筆硬度が得られており、ハードコート層が高硬度であることがわかる。さらに、実施例1〜4ではヘイズ値も低いことがわかる。
一方、比較例1では、無機粒子の含有率が10質量%を下回っており、鉛筆硬度が低下しており、ヘイズ値も高い。また、比較例2および3では、無機粒子のアスペクト比が30を下回っているため、鉛筆硬度が低下している。比較例4および5では、調液方法が一液タイプであり、水性組成物の粘度が100mPa・s以上となっている。特に、比較例4では、水性組成物がゲル化し、ハードコート層が形成されていない。比較例5では、極めてヘイズの高いハードコート層が得られていることがわかる。
(実施例5〜8及び比較例6〜9)
さらに、実施例5〜8及び比較例6〜9では、第1のハードコート層と第2のハードコート層を含む積層フィルムを作製した。
実施例1と同様に接着層を形成し、第1のハードコート層として表2の配合比になるように調液した塗布液サンプルを実施例1と同様に塗布した。さらに第2のハードコート層として、表2の配合比になるように調液した塗布液サンプルを上記第1のハードコート層の上にバーコート法により塗布し、150℃で2分間加熱して乾燥し、厚さ1.0μmのハードコート層を形成し、積層フィルムを得た。
なお、ここで用いた無機粒子は、
アスペクト比350:繊維状ベーマイトゾルF−1000、平均長径1400nm、平均短径4nm、固形分濃度5%、pH=3.3、川研ファインケミカル(株)製
アスペクト比750:繊維状ベーマイトゾルF−3000、平均長径3000nm、平均短径4nm、固形分濃度5%、pH=3.0、川研ファインケミカル(株)製
アスペクト比10:アルミナゾル−200、平均長径100nm、平均短径10nm、固形分濃度11%、pH=4.8、日産化学工業(株)製
アスペクト比1:アルミゾルーA2、平均粒子径10〜20nm、固形分濃度10%、pH=3.8、川研ファインケミカル(株)製
である。
得られた積層フィルムについて、上記の(1)と(2)と(3)の評価を実施した。これらの結果は、表2に示す。
Figure 0006027932
実施例5〜8では、第1のハードコート層に含まれる無機粒子のアスペクト比が30〜5000の範囲内であり、第2のハードコート層に含まれる無機粒子のアスペクト比が1〜10である。また、第1のハードコート層の無機粒子の含有率と第2のハードコート層の無機粒子の含有率の差は10%以下である。このため、実施例5〜8で得られた積層フィルムは、ヘイズ値が低く抑えられており、高硬度と低ヘイズが両立されていることがわかる。
一方、比較例5および6では、第1のハードコート層の無機粒子の含有率と第2のハードコート層の無機粒子の含有率の差が10%を超えている。このため、ヘイズ値が高くなっている。また、比較例7および8では、第2のハードコート層に含まれる無機粒子のアスペクト比が1〜10の範囲外であるため、ヘイズ値が高くなっていることがわかる。
本発明によれば、高硬度であり、かつ、ヘイズ値が低いハードコート層を得ることができる。また、本発明によれば、水性組成物からハードコート層を形成することができるため、環境への負荷を減らすことができ、かつ、成膜時の加熱温度を低く設定することができるため、ハードコート層の製造を容易にすることができ、製造適性を高めることができる。本発明のハードコート層は、タッチパネル等の表示装置に好適に用いることができ、産業上の利用可能性が高い。

Claims (15)

  1. 無機粒子とアルコキシシランと硬化促進剤を含む水性組成物であって、
    前記無機粒子の平均アスペクト比が300〜800であり、
    前記水性組成物中の全固形分に対して前記無機粒子が占める割合は、10〜30質量%であり、
    前記水性組成物の粘度は100mPa・s以下であり、
    前記水性組成物は、有機溶剤を含まないことを特徴とする水性組成物。
  2. 前記アルコキシシランは、テトラアルコキシシランおよびアルキルトリアルコキシシランの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の水性組成物。
  3. 前記硬化促進剤はアルミニウムキレート錯体であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の水性組成物を硬化して形成したことを特徴とするハードコート層。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の水性組成物を硬化して形成した第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層の上に、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子を含む第2のハードコート層を積層した積層体を含み、
    前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層に含まれる無機粒子の含有率の差は10%以下であることを特徴とする積層フィルム。
  6. 前記第2のハードコート層に含まれる無機粒子の平均粒子径は、50nm以下であることを特徴とする請求項に記載の積層フィルム。
  7. ヘイズ値が1%以下であることを特徴とする請求項またはに記載の積層フィルム。
  8. さらに支持体を有し、前記支持体は、前記第1のハードコート層の一方の面側であって、前記第2のハードコート層が積層された面とは反対側に設けられていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  9. 前記支持体と前記第1のハードコート層の間にさらに易接着層が設けられていることを特徴とする請求項に記載の積層フィルム。
  10. 前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層の平均膜厚の合計が2μm以上であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  11. アルコキシシランと平均アスペクト比が300〜800の無機粒子を含む第1の水性組成物を得る工程と、
    アルコキシシランと硬化促進剤を含む第2の水性組成物を得る工程と、
    前記第1の水性組成物と前記第2の水性組成物を混合する工程を含む水性組成物の製造方法であって、
    前記水性組成物中の全固形分に対して前記無機粒子が占める割合は、10〜30質量%であり、
    前記水性組成物の粘度は100mPa・s以下である水性組成物の製造方法
  12. 前記第1の水性組成物と前記第2の水性組成物に含まれるアルコキシシランの質量比は、3:7〜7:3であることと特徴とする請求項11に記載の水性組成物の製造方法。
  13. 請求項11または12に記載の製造方法により製造した水性組成物を支持体上に塗布し、第1のハードコート層を製膜する工程を含み、
    前記第1のハードコート層を製膜する工程は、120〜300℃で加熱する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  14. 前記加熱する工程では、120〜300℃で10秒〜1時間加熱することを特徴とする請求項13に記載の積層フィルムの製造方法。
  15. 前記第1のハードコート層を製膜する工程の後に、さらに第2のハードコート層を製膜する工程を含み、
    前記第2のハードコート層を製膜する工程は、平均アスペクト比が1〜10の無機粒子とアルコキシシランを含む水性組成物を前記第1のハードコート層の上に塗布する工程を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の積層フィルムの製造方法。
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