以下、本発明の実態の形態について添付図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態である薬液供給装置1の外観を、図3は、図1および図2の薬液供給装置1を分解した状態を、それぞれ示している。なお、図示例の薬液供給装置1は、水洗トイレにおける貯水タンク上部の手洗用の給水受皿(図示せず)に設置されるタイプのものを例に挙げている。
薬液供給装置1は、芳香、消臭、便器の洗浄のための薬液を収容する薬液容器2と、薬液容器2を支持するカップ状の支持体3とを備えている。支持体3は、支持体3内に着脱可能に取り付けられるカバー部材4(図7に示す)を備えている。また、支持体3は、下部に、薬液容器2内から排出される薬液を、支持体3の外部の断続的に流れる液体と接触する位置へ案内する案内部材5を備えている。この薬液供給装置1は、支持体3の案内部材5および長脚部36が給水受皿の排水口(図示せず)に挿入されるようにして設置される。
薬液容器2は、薬液を収容可能な薬液収納部20を備え、薬液収納部20の端面(図3では下端面)には、薬液を排出するための排出口21が設けられている。薬液容器2は、一部または全体が透明または半透明の材料で構成され、外部から薬液の残量が確認できる。排出口21には、キャップ22が被せられている。
支持体3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂製であり、図3〜図6に示すように、上部に開口を有し、平面視において略楕円形状に形成されている。支持体3は、底面部30と側面部31とを備えており、側面部31の上端縁39に、薬液収納部20の内側に凹んだ一端部23(図3では下端部)が嵌め合わされるようになっている。
底面部30の下面には、2本の長脚部36と、長脚部36の周囲に配置された4本の短脚部38とが立設されている。長脚部36は給水受皿の排水口に挿入可能である。短脚部38は、案内部材5および長脚部36が排水口に挿入された状態で、支持体3を給水受皿上にほぼ水平に支持する。底面部30の上面には、後述するカバー部材4の周壁(以下、本実施形態では「内側壁」という。)41の外側に嵌合する略矩形枠状の周壁(以下、本実施形態では「外側壁」という。)32が設けられている。
側面部31の上端縁39は、支持体3の内側から外側方向へ向けて低く傾斜しており、側面部31の内側面31Aと外側面31Bとの間に、傾斜面部31Cが形成されている。この傾斜面部31Cは、本実施形態では、図12(a)に示すように、断面視円弧(または略円弧)状の、凸状に湾曲する凸曲面に形成されており、つまり、頂部31Dにおける接線lの、頂部31Dから真っ直ぐ下方に延びる鉛直面Cに対する角度が90°以下となっている。
支持体3に薬液容器2を嵌め合わせると、傾斜面部31Cの頂部31Dが、嵌合する薬液容器2の表面に当接または近接する。よって、この傾斜面部31Cの頂部31Dは、薬液容器2と支持体3との支持体3外における境界となる。そして、この頂部31Dよりも内側の支持体3の内側面31Aは、薬液容器2の外形に沿うことなく下方に延びているとともに、頂部31Dの外側には、低く傾斜する傾斜面部31Cが設けられているので、給水受皿上の給水管(図示せず)から薬液容器2上に落下した水が、薬液容器2の表面に沿って流下して薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tまで伝わった場合でも、水は支持体3の上端縁39の頂部31Dで遮断された後、支持体3内よりも傾斜面部31Cによって支持体3外へと案内されて、側面部31の外側面31Bに沿って下方に流れるように促される。よって、薬液容器2の表面を流下した水が、当該嵌合部分Tから支持体3内に浸入することが阻止されるので、後述する緩衝室60内に水が浸入することを防止できる。
傾斜面部31Cは、凸曲面の傾斜が緩いと、薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tに伝わった水が、傾斜面部31Cに促されて側面部31の外側面31Bの方へ流れにくくなる。そのため、傾斜面部31Cの両端を結ぶ平面Vの前記鉛直面Cとの間のなす角度αが75°以下であることが望ましく、60°以下であることがさらに望ましい。一方で、傾斜面部31Cの傾斜が急すぎると、頂部31Dが鋭利になり使用時に危険を伴ったり、側面部31が薄肉になり過ぎて上端縁39の強度が低下したりするため、前記角度αは5°以上であることが望ましく、10°以上であることがさらに望ましい。
なお、本実施形態では、傾斜面部31Cは凸曲面に形成されているが、図12(b)に示すように、凹状に湾曲する凹曲面に形成されていてもよい。また、図12(a),(b)の双方において、傾斜面部31Cは必ずしも滑らかに湾曲している必要はなく、その断面視形状が角張った多角形状の曲面であってもよい。
また、図12(c)に示すように、傾斜面部31Cは、断面視直線状の平坦面に形成されていてもよい。この図12(c)の形状の傾斜面部31Cにおいては、傾斜面部31Cの両端を結ぶ平面V、つまりは、傾斜面部31C表面の平坦面の傾斜が緩いと、同様に、薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tに伝わった水が、傾斜面部31Cに促されて側面部31の外側面31Bの方へ流れにくくなる。そのため、傾斜面部31Cの前記鉛直面Cとの間のなす角度θが75°以下であることが望ましく、60°以下であることがさらに望ましい。一方で、傾斜面部31Cの平坦面の傾斜が急すぎると、頂部31Dが鋭利になり使用時に危険を伴ったり、側面部31が薄肉になり過ぎて上端縁39の強度が低下したりするため、前記角度θは5°以上であることが望ましく、10°以上であることがさらに望ましい。
なお、図12に示す例では、支持体3の上端縁39は、傾斜面部31Cのみで構成されており、傾斜面部31Cは側面部31の内側面31Aと連続しているが、図13(a)に示すように、傾斜面部31Cと側面部31の内側面31Aとの間に、水平な中間面部31Eが介在されていてもよい。図13(a)の実施形態においても、傾斜面部31Cの頂部31D(すなわち、傾斜面部31Cと中間面部31Eとの接続部分)が、支持体3に嵌合する薬液容器2の表面に当接または近接して、薬液容器2と支持体3との支持体3外における境界となるように位置していれば、上記した実施形態と同様に、支持体3の上端縁39の頂部31Dおよび傾斜面部31Cの作用により、薬液容器2の表面を流下した水が当該嵌合部分Tから支持体3内に浸入することを阻止できる。よって、緩衝室60内に水が浸入することを防止できる結果、緩衝室60内部に貯留された薬液が薄められることを防止できる。なお、この中間面部31Eは、図13(b)に示すように、薬液容器2の外形に沿うような傾斜面となっていると、薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tに伝わった水が、傾斜面部31Cではなく中間面部31Eに案内されて、支持体3内に浸入するおそれがあるので好ましくない。
カバー部材4は、図7〜図10に示すように、下端が開放された箱状に形成されており、平面視略矩形状の上面部40と、上面部40から垂下する略矩形枠状の内側壁41とを備えている。内側壁41を支持体3の外側壁32の内側に嵌合することで、カバー部材4が支持体3に装着される。上面部40は、その中央部の円形状の下段部40aと、下段部40aより高い位置にある下段部40aの周囲の上段部40bとからなる。下段部40aの中央部には、薬液容器2の排出口21に接続され、薬液容器2内の薬液を外部へ排出させる排出部材42が設けられている。
排出部材42は、カバー部材4の下段部40aに一体形成されており、下段部40aの上面から突き出る円筒状の接続部42aと、接続部42aの下端部に設けられた、接続部42aよりも小径の円筒状の細管部42bとを備える。接続部42aは、薬液容器2の排出口21に接続される。接続部42aと細管部42bとは、流通孔42cを介して連通しており、接続部42aおよび細管部42bの内部は、薬液を薬液容器2から後述する案内部材5に通す薬液通路を構成している。接続部42a内の細管部42bの周囲には、連通孔61が複数(図示例では3個)形成されている。この連通孔61は、後述する調整機構6を構成するものである。
カバー部材4の上面部40は、内側壁41の外側に囲繞壁43をさらに備えている。この囲繞壁43は、内側壁41の上端から支持体3の外側壁32の上端を越えて水平に延びる延長部43aと、延長部43aの先端部から垂下する略矩形枠状の垂下壁43bとからなり、垂下壁43bは、外側壁32の外周面から離反している。
図3〜図6に戻って、支持体3の底面部30の外側壁32に囲まれた領域の中央部には、円形の底孔34が形成されている。この底孔34に排出部材42の細管部42bが嵌入するようになっている。そして、底孔34の下方には、細管部42bから排出された薬液を下方へと案内する案内部材5が設けられている。案内部材5は、底面部30の下面に一体に設けられており、案内部材5の上端部には、排出部材42の細管部42b内に嵌入する嵌合突部50が一体に設けられている。嵌合突部50の外側面には、上端から下端まで延びる縦溝51が形成されており、縦溝51により、細管部42bの内周面との間に薬液の導出路が形成されている。縦溝51の断面形状は、半円状の他、三角形や四角形などの角状など、種々の形状とすることができる。また、その断面寸法は、毛管作用により薬液が導出路に沿って導出され得る程度とするのが望ましい。底孔34の周囲には、細管部42bと嵌合突部50との嵌合状態を確実に保持するために、細管部42bの外側に嵌合する環状部35が立設されている。
案内部材5は、板状に形成されており、上端部が細管部42bの下端に当接している。案内部材5の表裏の板面には、上下方向に延びる多数の細溝52が形成されている。この案内部材5は、2本の長脚部36の間に位置しており、長脚部36とともに給水受皿の排水口に挿入される。ただし、案内部材5は長脚部36よりもやや短く形成されており、その下端部のみが排水口に挿入可能となっている。案内部材5と長脚部36との間には、遮蔽部材37が設けられている。遮蔽部材37は、案内部材5よりもさらに短く形成されており、長脚部36は支持体3を排水口に位置決めし、案内部材5は排水口に流下する水に接することで、案内部材5上の薬液が水に洗い流されて貯水タンクの中に流れ込む。一方、遮蔽部材37は、流下する水が前記導出路から支持体3内に逆流することを規制している。
支持体3の側面部31には、薬液の芳香成分を外部に拡散させるための開口33Aが形成されている。また、底面部30の外側壁32の外側位置には、給水受皿に供給された水が支持体3の内部へ浸入したときに、その水を外部へ排出するための開口33Bが形成されている。
支持体3は、底面部30の外側壁32の内側に、カバー部材4の内側壁41を嵌合することで組み立てられる。これにより、支持体3には、図11に示すように、カバー部材4との間に、底面部30の外側壁32に囲まれた領域(底壁)と、外側壁32および内側壁41(側壁)と、カバー部材4の上面部40(上壁)とにより囲まれた緩衝室60が形成される。緩衝室60は、細管部42bとは仕切られており、薬液が貯留可能な空間を有している。なお、図11において、一点鎖線は、支持体3に嵌合する容器2の一部分を示している。
緩衝室60は、薬液容器2から排出される薬液の量を調整する調整機構6を構成するものであり、調整機構6は、緩衝室60、上述した連通孔61、および、緩衝室60に空気を流入させる空気流通孔62により構成される。連通孔61は、薬液容器2から排出部材42の接続部42aに排出された薬液の一部を、緩衝室60へ導入可能である。
空気流通孔62は、本実施形態では、緩衝室60の側壁に設けられている。支持体3の外側壁32の上端部が凹状に切り欠かれることで、外側壁32に貫通穴63が形成されている一方で、カバー部材4の内側壁41には、その上端部から下端部まで上下方向に延びるスリット64が形成されている。このスリット64は、支持体3の外側壁32の貫通穴63に対応する位置に形成されており、カバー部材4を支持体3に装着して、貫通穴63とスリット64とを一致させることで、空気流通孔62が形成される。
なお、本実施形態では、空気流通孔62は、平面視略矩形状の緩衝室60の側壁(外側壁32および内側壁41)の対向する2辺の幅中央部に設けられているが、空気流通孔62の配置は、必ずしもこれに限られるものではなく、緩衝室60の側壁のいずれの位置に設けることができる。また、本実施形態では、緩衝室60の側壁の上端部に空気流通孔62が設けられているが、上端部よりも下方位置に設けることもできる。ただし、あまりに下方に配置すると、給水受皿に供給された水が支持体3の内部へ浸入したときに、その水が空気流通孔62を通って緩衝室60内に浸入するおそれがあるので好ましくない。また、本実施形態では、内側壁41に縦長のスリット64を設けることにより空気流通孔62を形成しているが、内側壁41にも外側壁32と同じように貫通穴を設け、貫通穴同士を一致させることで、空気流通孔62を形成してもよい。また、本実施形態では、空気流通孔62は水平方向を向いているが、水平方向よりも下向き(斜め下向き)になるように形成してもよい。
また、空気流通孔62は、必ずしも緩衝室60の側壁62に設けられている必要はなく、図21〜図26の例にも示されているように、緩衝室60の上壁に設けられていても構わない。
上記した調整機構6は、薬液容器2の温度変化に対して次のように作用をする。例えば、温度が上昇して薬液容器2が暖められた場合には、薬液容器2内の空気が膨張して薬液容器2内は正圧になる。この場合、薬液容器2内の薬液は押し出されて排出口21から排出されるが、排出された薬液は、細管部42bから導出路に流れ込む他、連通孔61を介して緩衝室60にも流れ込むため、薬液が前記導出路へ過剰に流出するのが防止される。
一方、流水で冷やされるなどして、薬液容器2の温度が低下すると、薬液容器2内の空気が収縮して薬液容器2内は負圧になる。この場合には、空気流通孔62の作用により大気圧または室内圧となっている緩衝室60内の薬液が、連通孔61を介して薬液容器2内へ吸い込まれる。したがって、案内部材5上の水または薄められた薬液が細管部42bを通って薬液容器2側に戻されるのが抑制される。また、薬液容器2内の負圧によって薬液の排出が制限されるのが防止される。このように、調整機構6によって、温度変化によって薬液容器2内に圧力変化が生じた場合でも、薬液容器2と緩衝室60との間での薬液の流通が生じるため、薬液容器2内の薬液が過剰に流出したり、あるいは、流出が制限されるのを防止することができる。
上記構成の薬液供給装置1は、カバー部材4の内側壁41の外側に、支持体3の外側壁32を嵌合して緩衝室60を形成した後、カバー部材4から上方へ延びる排出部材42の接続部42aを薬液容器2の排出口21にキャップ22を貫通して嵌入することにより組み立てられる。そして、水洗トイレ用貯水タンクの給水受皿の排水口に支持体3の案内部材5および長脚部36が挿入されることで、薬液容器2内の薬液は、接続部42aから細管部42bに流入して導出路から案内部材5に排出され、案内部材5上の薬液がフラッシュ時に給水受皿に供給される水に洗い流されて、排水口から貯水タンクに流れ込む。なお、上記構成の薬液供給装置1は、案内部材5上の薬液がフラッシュ時に給水受皿に供給される水に洗い流されることのない場合にも、経時的に薬液を吐出し、薬液容器2内の薬液を直接貯水タンクに供給する機構を備えることもできる。
このとき、給水受皿上の給水管から薬液容器2上に落下して、薬液容器2の表面に沿って流下する水は、薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tまで伝わると、支持体3の上端縁39の頂部31Dで遮断された後、その外側の傾斜面部31Cに案内されることで、その大部分が支持体3内よりも支持体3外へと案内されて、側面部31の外側面31Bに沿って下方に流れるように促される。そして、側面部31の外側面31Bを下方へ流れ落ちて給水受皿に落下する。このように、支持体3の上端縁39の頂部31Dおよび傾斜面部31Cが、薬液容器2の表面を流下した水が当該嵌合部分Tから支持体3内に浸入することを阻止しているため、水が緩衝室60内に浸入することを効果的に防止できる。よって、緩衝室60内に貯留された薬液が薄められることを防止できる結果、薬液の戻りによる薬液容器2内の薬液の希釈化が防止され、薬液容器2から排出される薬液濃度を適正に保つことができる。なお、本実施形態では、緩衝室60の側壁の上端部に空気流通孔62が設けられているため、仮に水が支持体3内に浸入し、薬液容器2の下端面を伝って緩衝室60上に流れ落ちた場合でも、空気流通孔62から緩衝室60内に浸入しにくくなっている。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、薬液容器2の下端部23を内側に凹ませて支持体3の上端縁に嵌合させ、支持体3の上端縁の頂部31Dを当該凹ませた部分に当接または近接させている。しかしながら、薬液容器2と支持体3との嵌合構造は、何も上記実施形態の構造に限られるものではなく、支持体3の上端縁の頂部31Dが薬液容器2に当接または近接する状態となる嵌合構造であれば、どのような嵌合構造であってもよい。
また、図14に示すように、薬液容器2の下部外周面に、水平方向外側に張り出す張出部24を設け、この張出部24の下面に、支持体3の上端縁の頂部31Dが当接または近接するようにして、薬液容器2を支持体3に嵌合させるようにしてもよい。これにより、薬液容器2の張出部24が庇として機能することで、薬液容器2の表面を流下した水が薬液容器2および支持体3の嵌合部分Tに到達することを予め規制することができる。そのうえで、水が当該嵌合部分Tに到達したとしても、支持体3の上端縁39の頂部31Dおよび傾斜面部31Cの作用により、当該嵌合部分Tから支持体3内に浸入することが阻止される。このように、薬液容器2に張出部24を設けることにより、薬液容器2の表面を流下した水が支持体3内に浸入することをより効果的に阻止することができる。なお、張出部24は、その上面が、支持体3の外側に向けて低く傾斜しているのが望ましいが、傾斜面の形状は、凹曲面、凸曲面、平坦面など種々の形状とすることができる。
なお、本発明は、上記した図1〜図11の実施形態のように、薬液容器2の薬液収納部20および排出口21を1つとし、これに対応して支持体3に緩衝室60などを1つ設けたタイプの薬液供給装置1だけを対象にしているわけではなく、図24〜図26の例に示されているように、これらを各々2つ以上設けたタイプの薬液供給装置についても、支持体の上端縁を同様の形状にすることができる。
また、上記した図1〜図11の実施形態の薬液供給装置1においては、カバー部材4は、支持体3の外側壁32の内側に内側壁41が嵌合する内側嵌合構造となっているが、図21〜図23の例に示されているように、その逆の、カバー部材側の周壁が支持体側の周壁の外側に嵌合する外側嵌合構造の薬液供給装置についても、支持体の上端縁を同様の形状にすることができる。
また、上記した図1〜図11の実施形態の薬液供給装置1では、案内部材5を支持体3の下方へ突出させ、案内部材5を給水受皿の排水口に挿入して案内部材5を介して薬液を排水口に排出しているが、薬液を給水受皿上に直接排出する薬液供給装置についても、支持体の上端縁を同様の形状にすることができる。図15〜図18は、当該実施形態に係る薬液供給装置1´を示している。なお、薬液容器2は、上記した実施形態の構成と同様であり、同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。
この実施形態の薬液装置1´も、薬液容器2と、薬液容器2を支持するカップ状の支持体7とを備えている。支持体7は、支持体7内に着脱可能に取り付けられるカバー部材8と、カバー部材8と支持体7の底面部70との間に介在する板状の案内部材9とを備えている。支持体7の底面部70の下面には、4本の長脚部72と、長脚部72の周囲に配置された4本の短脚部73とが立設されている。また、支持体7の側面部71には、案内部材9が突出する開口74のほか、薬液の芳香成分を外部に拡散させるための開口75Aが形成されており、支持体7の底面部70には、支持体7内に水が滞留するのを防止するための開口75Bが複数形成されている。
カバー部材8は、下端が開放された箱状に形成されており、平面視長方形状の上面部80と、側面部81とを備えている。側面部81の下端部に設けられた係止爪82を、支持体7の底面部70に設けられた係合段部(図示せず)に係合させることで、カバー部材8が支持体7に固定される。
上面部80は、その中央部の円形状の下段部80aと、下段部80aより高い位置にある下段部80aの周囲の上段部80bとからなり、下段部80aの中央部に、薬液容器2の排出口21に接続され、薬液容器2内の薬液を外部へ排出させる円筒状の接続部83が設けられている。接続部83の下端部の内部には、接続部83よりも小径の円筒状の細管部84が一体に設けられている。接続部83と細管部84とは、流通孔85を介して連通しており、接続部83および細管部84の内部は、薬液を薬液容器2から後述する案内部材9に流す薬液通路を構成している。細管部84の周囲には、連通孔61´が複数形成されている。この連通孔61´は、調整機構6を構成する。
案内部材9は、プラスチックで形成され、支持体7の底面部70上に載置される。この案内部材9は、細管部84の一端部がほぼ当接する基部90と、基部90の両側縁(図18(a)の上下辺)から下方へ傾斜する一対の案内板91とを備えている。基部90において細管部84が当接する部分およびその近傍には薬液が流通可能な複数の溝92が幅方向(図18(a)の左右方向)に形成されており、これらの溝92のうち、中央に配置されたものは案内板91の端部まで延びて案内溝93を構成している。この案内溝93は、薬液を基部90から案内板91側へ導くようになっている。各案内板91の端部は、支持体7の開口74から突出している。
支持体7の底面部70上に、案内部材9を介在させてカバー部材8を装着することで、支持体7には、案内部材9の基部90(底壁)と、カバー部材8の側面部81(側壁)と、カバー部材8の上面部80(上壁)とで囲まれた薬液が貯留可能な空間を有する緩衝室60´が形成される。この緩衝室60´は、調整機構6を構成し、連通孔61´および空気流通孔62´とともに、上記した実施形態と同様の役割を果たす。
上記構成の薬液供給装置1´は、次のように動作する。まず、薬液容器2から薬液が接続部83に排出され、細管部84を通って案内部材9上に流れ出す。案内部材9上では、一部が基部90上に保持されるとともに、案内溝93を伝って案内板91上に流れ出し、この上で保持される。そして、フラッシュ時に給水受皿に水が供給されると、この水が支持体7の開口74から突き出た案内板91上の薬液と接触し、これを洗い流す。こうして薬液は、流水とともに、給水受皿上に流れ出し、排水口から貯水タンクの中に流れ込む。
この実施形態においても、上記した実施形態と同様に、側面部71の上端縁76を、支持体7の内側から外側方向へ向けて低く傾斜するように形成して傾斜面部71Cを設けるとともに、傾斜面部71Cの頂部71Dを、支持体7に嵌合する薬液容器2の表面に当接または近接させる。これにより、傾斜面部71Cの頂部71Dが、薬液容器2と支持体7との支持体7外における境界となるため、給水受皿上の給水管から薬液容器2上に落下した水が、薬液容器2の表面に沿って流下して薬液容器2および支持体7の嵌合部分Tまで伝わった場合でも、水は、支持体7の上端縁76の頂部71Dで遮断された後、支持体7内よりも傾斜面部71Cによって支持体7外へと案内されて、側面部71の外側面71Bに沿って下方に流れるように促される。よって、薬液容器2の表面を流下した水が、当該嵌合部分Tから支持体7内に浸入することが阻止される。よって、緩衝室60´内に水が浸入することを防止できる結果、緩衝室60´内部に貯留された薬液が薄められることを防止できる。
また、水洗トイレの貯水タンク上に配置されるタイプの薬液供給装置だけでなく、便器のリムに吊り掛けられて使用されるタイプの薬液供給装置についても、支持体の上端縁を同様の形状にすることができる。このタイプの薬液供給装置1’’も、図19および図20に示すように、薬液が収容された薬液容器2’’と、薬液容器2’’を支持するカップ状の支持体3’’とを備えており、さらに、当該装置1’’を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材13を備えている。なお、基本的な構成は、上記した貯水タンク上に設置されるタイプの薬液供給装置の構成と同様である。
支持体3’’は、底面部30’’と、側面部31’’とを有している。底面部30’’は、平面視略矩形状の基部30A’’と、基部30A’’の一辺に揺動自在に連結された可動部30B’’とで構成されており、可動部30B’’が設けられている辺以外の3辺に、側面部31’’が平面視コ字状に設けられている。したがって、支持体3’’は、一辺の壁が切り欠かれて開放しており、この開放部分30C’’から基部30A’’の一部および可動部30B’’が突出するように構成されている。そして、この開放部分30C’’から支持体3’’内に水が流れ込むようになっている。基部30A’’の中央には、上方へ延びる支柱14が取り付けられており、この支柱14と後述するカバー部材4’’との間の空間に、吊掛部材13が上下動可能に取り付けられている。吊掛部材13は、弾性変形可能に2箇所で折り曲げられた帯状に形成されており、初期状態では、図19に示すように折り畳まれている。また、吊掛部材13は、上下動可能に構成されているため、当該装置1’’とリムとが干渉しないように、リムに対する薬液容器2’’および支持体3’’の高さを調整することができる。
支持体3’’は、支持体3’’内に着脱可能に取り付けられる下部材15およびカバー部材4’’を備えており、下部材15の周壁32’’の外側に、カバー部材4’’の周壁41’’を嵌合することで、支持体3には、下部材15の上面部16(底壁)と、周壁32’’,41’’(側壁)と、カバー部材4’’の上面部40’’(上壁)とにより囲まれた緩衝室60’’が形成される。この緩衝室60’’は、調整機構6を構成し、連通孔(図示せず)および空気流通孔62’’とともに、上記した実施形態と同様の役割を果たす。なお、カバー部材4’’の側面には、上方に延びるレール部材17が取り付けられており、このレール部材17は、支柱14との間で、吊掛部材13を収容する空間を形成している。
カバー部材4’’の上面部40’’の中央部には、薬液容器2’’の排出口21’’に接続され、薬液容器2’’内の薬液を外部へ排出させる排出部材42’’ が設けられている。また、カバー部材4’’の周囲には、4つの空気流通孔62’’が、それぞれ設けられている。
下部材15の上面部16の中央部には、円形の底孔34’’が形成されている。また、底孔34’’には、嵌合突部50’’設けられており、底孔34’’の周囲には、環状部35’’が立設されている。
支持体3’’の側面部31’’には、フラッシュ時に便器内に供給された水が支持体3’’の内部へ浸入したときに、その水を外部へ排出するための開口33’’が形成されている。
上記構成の薬液供給装置1’’は、次のように動作する。まず、薬液容器2’’から薬液が排出部材42’’に排出され、支持体3’’の底面部30’’上に供給される。そして、底面部30’’上に供給される薬液をフラッシュ時に便器内に供給される水によってさらうことで、便器内に薬液が供給される。なお、上記構成の薬液供給装置1’’は、底面部30’’上の薬液がフラッシュ時に便器内に供給される水に洗い流されることのない場合にも、経時的に薬液を吐出し、薬液容器2’’内の薬液を直接便器内に供給する機構を備えることもできる。
この便器のリムに吊り掛けられて使用されるタイプの薬液供給装置1’’においても、フラッシュ時に便器内に水が勢いよく供給されたり、供給された水が便器内で飛び散ったりすると、薬液容器2’’の表面に水がかかり、そして、水が薬液容器2’’の表面に沿って流下して薬液容器2’’および支持体3’との嵌合部分Tまで伝わるおそれがある。しかし、この場合においても、上記した実施形態と同様に、側面部31’’の上端縁39’’を、支持体3’’の内側から外側方向へ向けて低く傾斜するように形成して傾斜面部31’’Cを設けるとともに、傾斜面部31’’Cの頂部31’’Dを、支持体3’’に嵌合する薬液容器2’’の表面に当接または近接させる。これにより、傾斜面部31’’Cの頂部31’’Dが、薬液容器2’’と支持体3’’との支持体3’’外における境界となるため、薬液容器2’’上に付着した水が、薬液容器2’’の表面に沿って流下して薬液容器2’’および支持体3’’の嵌合部分Tまで伝わった場合でも、水は、支持体3’’の上端縁39’’の頂部31’’Dで遮断された後、支持体3’’内よりも傾斜面部31’’Cによって支持体3’’外へと案内されて、側面部31’’の外側面31’’Bに沿って下方に流れるように促される。よって、薬液容器2’’の表面を流下した水が、当該嵌合部分Tから支持体3’’内に浸入することが阻止される。よって、緩衝室60’’内に水が浸入することを防止できる結果、緩衝室60’’内部に貯留された薬液が薄められることを防止できる。