JP6012221B2 - インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 - Google Patents

インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、記録ヘッドの内部状態に応じた制御が可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法に関するものである。
インクジェット記録装置に備わる記録ヘッドは、記録デューティー(単位記録領域当たりの記録量)が比較的高い場合などにおいて、ノズル先端の吐出口からインクを連続的に吐出したときに、インク流路内のインク中に生じる微細な気泡が成長することがある。このような気泡はインクの吐出に影響を及ぼし、正常な吐出が行われなくなるおそれがある。このような気泡は、インクの吐出に伴って生ずるもの以外に、インク供給路の接続部等、インク供給系において外部からインク中に混入するものもある。特に、近年開発の進められているインク循環システムを有する記録装置においては、インク供給系からの気泡混入がより生じやすくなる。
このような気泡に起因するインクの吐出不良の発生を抑えるために、一般の記録装置においては、インクの吐出口をキャップによってキャッピングし、その吐出口からキャップ内にインクを吸引排出して、記録ヘッド内の気泡を除去する回復動作が行われる。しかし、このような回復動作を頻繁に行った場合には、インクの廃棄量の増大、回復動作に伴うスループットの低下などの問題を生じることになる。
特許文献1には、このような問題を解決するために、記録ヘッドが回復動作を必要とする状態か否かを判定する方法が提案されている。その方法においては、まず、記録ヘッドが画像の記録に寄与しないインクを吐出(空吐出)する前に、記録ヘッドの温度(空吐出前の温度)を測定する。その後、所定のインク滴数分だけインクを空吐出してから、その空吐出後の温度を測定する。次に、空吐出の前後における温度の変化分を計測し、その温度の変化量に基づいて、ノズルからのインクの吐出状態が正常であるか否かを推定する。
図1は、インク不吐出のノズルがある場合とない場合の記録ヘッドの温度変化を示す。横軸は、空吐出を始めてからの経過時間であり、空吐出によるインクの吐出数に対応する。縦軸は、空吐出を行ってからの検出温度の上昇温度である。インク不吐出のノズルがある場合は、正しく吐出が行われないため、記録ヘッドの温度は正常時と比較して大きく上昇する。このような記録ヘッドの温度上昇に応じて、記録ヘッドの状態(インク不吐出のノズルの有無)を判定することができる。それは、次のような理由による。
ここでは、インクの吐出方式として、熱エネルギーを利用してインク中に膜沸騰を生じさせ、この膜沸騰による気泡の成長に伴ってインクを吐出する方式を用いた記録ヘッドを例にして説明する。この記録ヘッドはシリコン等の基板を含み、その基板には、熱エネルギーを発生する電気熱変換素子(ヒータ)、これに電気パルスを印加するための電極配線、および駆動素子等が形成されている。この基板と天板とが接合することによって、ノズルの吐出口、および、この吐出口に連通して熱エネルギーの作用部をなすインク液路等が形成される。インクを吐出するときには、電気パルスの印加によってヒータが発熱し、その熱エネルギーは、インクを吐出するための気泡の成長に用いられると共に、その一部は基板へ伝達される。しかしながら、ヒータが発生する熱エネルギーの大部分は、インクの吐出に用いられ、しかも吐出されるインクに蓄熱される。また、ヒータが発生する熱エネルギーは、インクの吐出に伴う気泡の発生および成長を媒介にして運動エネルギーに変換されることにより、その大部分が記録ヘッドの外へ排出される。
ところが、インク流路内に気泡が滞留することによって正常な吐出が行われない場合には、ヒータから発生した熱が記録ヘッドの外へ排出されず、基板の温度を上昇させることになる。そのため、インクの不吐出頻度が高い程、基板の検出温度が高く、あるいは温度上昇の変化率が大きくなる。ここでインクの不吐出頻度とは、1つの吐出口および複数の吐出口において定義されるものである。1つの吐出口において定義される場合は、インクの吐出量が少ない程、インクの不吐出頻度が高くなり、また、複数の吐出口において定義される場合は、インクの吐出不良の吐出口の数が多い程、不吐出頻度が高くなる。
特許3124022号公報
しかし、上記の技術は、空吐出を行ったときの温度上昇に応じて記録ヘッドの状態を類推するものであるため、泡の存在位置によっては、インクの正常吐出時と不吐出時における温度差が発生しづらく、記録ヘッドの状態の検出精度の低下を招くおそれがある。以下、インクの正常吐出時と不吐出時において温度差が発生しづらい理由について記す。
記録ヘッドの吐出部を形成する基材はシリコンで構成され、一般に、そのシリコンは酸化アルミニウム部材によって固定される。酸化アルミニウムは耐熱性および耐久性に優れており、熱伝達率が非常に高い。そのため、シリコンから酸化アルミニウムに放熱され、特に、シリコンと酸化アルミニウムとの接触面積が大きい四隅において、伝熱がより顕著に行われる。それらの四隅にインク不吐出のノズルが存在する場合には、記録ヘッドに蓄えられる熱が酸化アルミニウムに放熱されることになり、記録ヘッドの正常状態と異常状態とを判定するための温度差が発生しづらくなり、その判定精度の低下を招くおそれがある。近年は、コスト削減を考慮して、酸化アルミニウムを用いない構成も存在する。しかし、そのような構成においても、上記のような四隅において放熱特性が高いことは共通であり、酸化アルミニウムを用いる構成のみ限定される課題ではない。
本発明の目的は、記録ヘッドの内部状態に応じた制御を確実に実行することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法を提供することにある。
本発明のインクジェット記録装置は、ヒータの発熱によってインクを発泡させ吐出口からインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの温度を検出可能な温度センサと、前記吐出口からインクを排出して前記記録ヘッドの吐出性能を回復する回復動作を実行可能な回復手段と、を備え、前記記録ヘッドの内部を第1の方向にインクを流動させているときに前記吐出口からインクを吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの内部を前記第1の方向と反対の第2の方向にインクを流動させつつ前記吐出口からインクを吐出させたときに前記温度センサにより検出された温度に基づいて前記回復動作を実行する制御手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドの内部を通して記録時とは逆の方向にインクを流動させつつ、記録ヘッドからインクを吐出させることにより、そのときの記録ヘッドの温度から、記録ヘッドの内部の状態を判定することができる。記録ヘッドの内部に泡が存在する場合には、その泡を移動させつつ記録ヘッドの温度を検出するため、その泡の存在に起因する温度の変化を検出することができる。この結果、記録ヘッドの内部における泡の位置の如何に拘わらず、その泡の存在を確実に検知して、泡の発生が記録ヘッドのインク吐出状態に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。例えば、記録ヘッド内の泡を排出する回復動作を最適なタイミングで実行して、スループットを向上させつつ、回復動作に伴って発生する廃インクの量を削減することができる。その他の副次的な効果としては、記録ヘッド内の泡に起因するインクの不吐出によって、画像の記録品位が低下した失敗記録物の発生を抑えて、その失敗記録物を補うための再記録動作に要するコストおよび時間を削減することもできる。
インクの空吐出時における記録ヘッドの温度変化を説明する図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態における記録装置の概略斜視図、(b)は、その記録装置の側面図である。 図1の記録装置の制御系のブロック構成図である。 本発明の第1の実施形態における判定処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。 本発明の第1の実施形態における記録ヘッド内のインク流路を説明する図である。 図5のVI矢視図である。 図6におけるチップの拡大平面図である。 本発明の第1の実施形態におけるインクの空吐出時の温度変化を説明する図である。 (a),(b),(c)は、それぞれ、インクの循環方向と泡の移動方向との関係を説明する図である。 本発明の第2の実施形態における記録ヘッド内のインク流路を説明する図である。 図10のXI矢視図である。 本発明の第2の実施形態における判定処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。 本発明の第2の実施形態におけるインクの空吐出時の温度変化を説明する図である。 本発明の第3の実施形態における判定処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。 本発明の第3の実施形態におけるインクの空吐出時の温度変化説明する図である。 本発明の第3の実施形態における回復動作の条件設定を説明する図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。以下で説明する図面において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書中においては、冗長な説明を避けるために1つの記録ヘッドに着目して説明をする。しかし、一般の記録装置においては、複数のヘッドが用いられ、インク流路も記録ヘッドの個数分存在する。本発明が1つの記録ヘッドに対してのみならず、複数の記録ヘッドに対しても適応可能なことは明らかである。また、本発明の実施形態における回復動作や空吐出などの動作は、インク色毎に個別のタイミングで実施してもよく、あるいは、共通のタイミングで実施してもよい。回復動作や空吐出などの動作をインク色間の関係性に応じて如何に制御してもよい。
(第1の実施形態)
図2(a)は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略斜視図である。本例の記録装置(プリンタ)1において、通常の記録を行う場合、給紙トレー4から給紙された記録媒体3は、上下に複数配置された搬送ローラ5の回転により、矢印Y方向に搬送される。記録ヘッド2は、後述する吐出部からインクを吐出することにより、記録媒体3に画像を記録可能である。記録ヘッド2により画像が記録された記録媒体3は、排紙トレー6上に排紙される。記録ヘッド2に対しては、インク循環部7からインク循環経路8を通してインクが供給される。
図2(b)は、図1の記録装置1の概略断面図である。本例の記録ヘッド2は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)のインクを吐出可能な4つの記録ヘッド2C、2M、2Y、2Kによって構成されている。インク循環部7は、それぞれの記録ヘッド2(2C、2M、2Y、2K)に対応する4つのインク循環部7C、7M、7Y、7Kによって構成されており、インク色毎のインクタンクとインクポンプを備えている。本実施形態では、CMYKの4色のインクを用いる記録装置を例に挙げて説明する。しかし本発明は、これらのインク色に限られるものではなく、淡シアン、淡マゼンタ、淡グレー、レッド、グリーンなどの多数のインクを用いた形態であってもよい。
図3は、本実施形態における記録システムのブロック構成図である。画像処理装置300は、CPU301、ROM302、RAM303、およびモニタ313(タッチパネルを備えてもよい)を接続するビデオカード304を備える。さらに記憶領域として、ハードディスクドライブやメモリカードなどの記憶装置305を備える。また、マウス、スタイラスおよびタブレットなどのポインティングデバイス306、およびキーボード307などを接続するためのUSBやIEEE1394などのシリアルバス用のインターフェイス308を備える。さらに、ネットワーク314と接続するためのネットワークインターフェイスカード(NIC)315を備える。これらの構成要素は、システムバス309によって相互に接続されている。インターフェイス308には、記録装置(プリンタ)310、CCDカメラ311、スキャナ312などが接続可能である。画像処理装置300は、光学的に画像データを取得するディジタルカメラやディジタルビデオなどの装置、および磁気ディスク、光ディスク、メモリカードなどの可搬型メディアからも画像データを入力することができる。入力される画像データは、画像ファイルに含まれた構成であってもよい。CPU301は、ROM302または記憶装置305に格納されたプログラム(後述する画像処理のプログラムを含む)をワークメモリであるRAM303にロードして、そのプログラムを実行する。そのプログラムにしたがって、システムバス309を介して上記の各構成要素を制御することにより、そのプログラムの機能を実現する。空吐出を行わせる空吐出制御部、および泡の存在に起因する温度変化を検出する温度変化検出部などとして機能する。これらのROM302、RAM303のメモリ、および記憶装置305など記憶デバイスは、記録ヘッドの最適な駆動条件に関する情報を記憶する。この情報は、記録ヘッドの駆動条件を示す情報であればどのような情報であってもよい。記録装置310には、その装置全体の制御を司るCPU(制御部)、プログラムを格納するROM、ワークエリアとして利用されるRAMなどが備えられている。そのCPUは、後述するように空吐出を行わせる吐出制御部、および泡の存在に起因する温度変化から記録ヘッドの内部状態を判定する判定部などとして機能する。また、画像処理装置300の一部を記録装置310に組み込んでもよく、CPU301を後述する吐出制御部、および判定部として機能させてもよい。
図4は、記録ヘッド内の微細な気泡の検出を行うための、インクの循環と空吐出とを組み合わせたシーケンスのフローチャートである。
まず、ステップS1において、インクの逆方向の循環を開始する。以下の説明において、正方向(第1の方向)とは画像の記録中にインクを循環させる方向を意味し、逆方向(第2の方向)とは正方向とは反対の方向を意味する。記録装置によっては、インク循環部7のインクポンプを逆方向に回転させるだけでは、循環経路の構成上、インクを逆方向に循環できない可能性もある。そのよう場合には、インクを逆方向に循環させるためのインクポンプを追加し、通常の記録時とは異なるインクポンプによってインクを逆方向に循環させてもよい。また、このようなインクの正方向および逆方向の循環は、後述する記録ヘッドの内部(インク室)を含む循環経路を通してインクを循環することになるが、少なくとも、記録ヘッドの内部を通してインクを正方向および逆方向に流動させることができればよい。
次に、ステップS2において、画像の記録に寄与しないインクを吐出する空吐出と、記録ヘッドの温度検出と、を同時に開始する。
ここで、記録ヘッドの吐出口と、記録ヘッドの温度を検出するための温度センサと、の位置関係について説明する。
図5は、1色のインクに対応する記録ヘッド2の要部の概略斜視図である。51はヘッドホルダであり、チップ52が配設される共に、インク流路53が形成されている。チップ52には、インク吐出用のノズルが形成されており、ヘッドホルダ51の中央に配設されている。インク流路53は、記録ヘッド2の上部から記録ヘッド2の内部を通るように形成されている。記録動作中において、インクは、図5中の矢印A1のように、同図中の右側から記録ヘッド2内に流れ込み、同図中の左側から排出されるように正方向に循環する。
図6は、図5の記録ヘッドを矢印VI方向から見た図である。インクは、上述したようにインク流路53によって循環される。すなわち、ヘッドホルダ51の流路部54から供給されたインクは、後述するX方向に沿うように、チップ52の裏側のインク室内を正方向(矢印A1方向)に通ってから、ヘッドホルダ51の流路部55から外部に導かれる。チップ52には、複数のノズルがノズル列56を形成するように直線状に配列されている。本例の場合は、それぞれのチップ52毎に、4つのノズル列56a,56b,56c,56dが形成されている。それらのノズル列56は、記録媒体の搬送方向Yと交差(本例の場合は、直交)するX方向に延在する。チップ52の裏側のインク室はノズルに連通しており、そのインク室内のインクは、ノズルの先端の吐出口から吐出可能である。ノズルは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いてインクを吐出する。ヒータを用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してノズル先端の吐出口からインクを吐出することができる。本例の場合、吐出エネルギー発生素子として、このようなヒータを用いる。
チップ52の裏側のインク室を通してインクを正方向(矢印A1方向)に循環させた場合、インク室内に、インクの流れが速い部分と遅い部分とが生じる。具体的には、チップ52の中央に位置するインク室内の部分ではインクの流れが速く、図6中上下方向におけるチップ52の端部に位置するインク室内の部分ではインクの流れが遅くなる。その結果、インク室内における正方向の下流側の領域57において、インクがあまり流れないインク溜まりが生じるおそれがある。ノズルからのインクの吐出中に発生した微細な泡は、このインク溜まりの領域57に溜まって成長をするおそれがある。記録ヘッド内の微細な泡を検出するためには、このようなインク溜まりの領域57に溜まった微細な泡を検出することが重要となる。しかし、チップ52の放熱特性を鑑みると、チップ52の裏側のインク室内における図6中上下左右の四隅の領域は、温度検出が極めて難しい領域である。
ここで、チップ52と温度センサとの位置関係について説明する。
図7において、ノズル列56a,56b,56c,56dのそれぞれの複数の部分(0セグメントから511セグメント)にはノズルが形成されている。このようなチップ52において、その温度を検出するための温度センサ(本例の場合は、ダイオードセンサ)58は、図7のようにチップ52の中央部に備えられる。その理由は、インクの吐出時に発生する熱は、チップ52の外周部の縁から放熱されて、チップ52の中央部にこもるため、その中央部の温度を検出することが重要となるからである。チップ52の四隅の領域59は、放熱特性が極めて良好であるため、その温度は検出しづらい。
温度センサ58によって検出された温度は、記録画像の濃度ムラを抑制するための制御において用いられる。インクの吐出時に発生した熱によってチップ52の温度が上昇した場合、その熱によって、インクの粘度などの特性が変化することが考えられる。その場合には、インク吐出時におけるインクの発泡現象が変化し、インク1滴当たりのインク量が増大して、記録画像に濃度ムラが生じるおそれがある。一般に、このような濃度ムラを抑制するために、インクの吐出時に与えるヒータの駆動パルスのエネルギーを調整してインクの吐出量を一定に維持する。
再び、図4に戻り、ステップS2において、インクの空吐出と温度センサ58の検出温度の取得を開始する。空吐出の際には、記録装置本体や記録媒体などのインク汚れを防止するために、画像の記録に寄与しないインクを不図示のキャップ内に吐出(空吐出)する。本例の場合、空吐出の際には、実際にインクを吐出させる程度のエネルギーによってヒータを駆動する。しかし、インクの消費量を節約のために、実際にはインクを吐出させない程度のエネルギーによってヒータを駆動することも可能である。その場合には、インクの消費量は削減できるものの、インクの吐出時に生じた熱エネルギーが記録ヘッドの外部に放出されないため、検出温度に基づいて記録ヘッドの正常状態と異常状態を区別することは難しくなる。ヒータの近傍にインクが存在するか否かによって発熱量が変化するため、その差分を検知することは可能である。このような構成においても本発明は適応可能である。ただし、空吐出時のヒータの駆動回数等、最適な条件を設定することが必要である。
図4のステップS3にて空吐出と温度検出を停止してから、ステップS4において、インクの逆方向の循環を停止する。
次のステップS5において、ステップS2とS3の間にて取得した温度センサ58の検出温度が規定量であるか否かを確認する。
図8は、空吐出時における温度センサ58の検出温度の変化を説明する図である。横軸は、空吐出を始めてからの経過時間であり、空吐出によるインクの吐出数に対応する。縦軸は、空吐出を行ってからの検出温度の上昇温度である。曲線C1は、チップ52の裏側のインク室がインクで満たされていて、泡が存在していない理想的な状態における温度変化を示す。曲線C2は、インク室内に泡が混入して、インクの吐出が不可能なノズル(非吐出ノズル)が多数存在する状態における温度変化を示す。曲線C3は、インク室内の泡がインクの循環によって移動したときの温度変化を示す。インク室内にインクが充分に存在する曲線C1の場合には、空吐出時の熱が外部に放出され、さらにインクの循環によってチップ52からインクへ熱が放出されるため、温度上昇が低くなる。それとは逆に、インク室内に泡が多く含まれて非吐出ノズルが多数存在する曲線C2の場合は、空吐出時の熱を外部に放出することができず、さらにインクの循環による冷却効果も得られないため、温度上昇が大きくなる。また、曲線C3の場合の温度変化は、インク室内の微小な泡が四隅の領域59(図7参照)から移動し、時点T0において、その泡が温度センサ58の温度検出可能な領域に移動したときの温度変化である。
図9は、インクの循環と、チップ52の裏側のインク室内の泡と、の関係を説明する図である。インク溜まりとなる同図中の左下隅の領域57に微細な泡Bが発生しているものとする。四隅の領域59は、温度センサ58からの距離が大きく、さらにチップ52の縁部からの放熱も大きいために、空吐出を行っても温度上昇が起こりづらい領域である。図9(a)は、インクを逆方向(矢印A2方向)に循環させる前の状態を示し、通常の記録時におけるインクの正方向(矢印A1方向)の循環を行った後であるため、微細な泡Bが右下隅のインク溜まりの領域57に位置している。この状態における空吐出時の温度変化は、インク室内に泡Bが存在していない状態における空吐出時の温度変化と区別しにくい。図9(b)は、インクを逆方向に循環させて、領域59にあった微細な泡Bが移動しているときの状態を示す。放熱の激しいチップ52の四隅の領域59から移動した泡Bが温度センサ58の近くを通るときに、空吐出を行った場合には、インク室内がインクによって満たされている状態と比較して温度上昇が大きくなる。このように図9(a)から図9(b)に移行する間に、図8中の時点T0の温度変化が生じることになる。つまり、泡Bの存在に起因する温度変化が生じる。さらに、インクの逆方向の循環を続けることにより、図9(c)のように、泡Bが同図中の右下隅のインク溜まりの領域57に留まることになる。これは、インクの循環方向を正方向から逆方向に変更したために、インクの循環方向の下流側に生じるインク溜まりの領域57の位置がずれて、泡Bが逆方向(矢印A2方向)の下流側のインク溜まりの領域57に移動したからである。また、温度センサ58による温度検出の能力が低い四隅の領域59に泡Bが移動したため、検出温度は、図8の曲線C3のように上昇が収まって、泡Bが存在していないときの温度に近づく。四隅の領域59に泡Bが存在する場合は、空吐出時の温度上昇が小さくて、ノズルの状態つまり記録ヘッドの内部状態が判定しにくい。
本発明は、インクの循環方向を変更して泡Bを移動させることにより、空吐出時の温度上昇を大きくして、ノズルの状態の正確な判定を可能とするものである。このような判定を行うために、ノズルが正常な状態であるときの曲線C1と、それが異常な状態であるときの曲線C2と、を予め記憶しておいて、取得した検出温度が曲線C1のラインから外れたか否かを判定する。取得した検出温度が曲線C1のラインから外れたときに、ノズルが異常であると判定する。曲線C3のように、泡Bが移動する場合は、チップの中央部付近に泡Bが移動した時点T0にて変曲点が存在することになる。この変曲点を検出することにより、ノズルが異常であるか否かを判定することも可能である。インクの循環方向を変更したときの検出温度に基づく、ノズルの状態の判定方法がいずれの方法であっても本発明の効果を得ることができる。本実施例は、空吐出前の温度を基準とし、空吐出中の温度との差分(温度差)に基づいてノズルの状態を判定する。ノズルの状態の判定方法は、このような空吐出前の温度を基準とする相対温度に基づく方法のみに特定されず、検出温度の絶対値に基づいて判定することも可能である。この場合には、空吐出前の温度を一定範囲内に抑え込んだ上、チップの温度を検出することが重要となる。
再び図4に戻り、ステップS5において、検出温度の上昇が規定通りであるか否か、つまりノズルが正常であるか否かを判定する。検出温度の上昇が規定通りでない場合には、ステップS6にて、ノズルのインクの吐出状態を良好に維持するための回復動作を行う。回復動作としては、種々の動作を含むことができる。例えば、インクの循環方向の下流側を塞いでから、その上流側からインクを加圧供給することにより、インク室およびインク流路内に存在する泡をインクと共にノズルから強制的に排出する回復動作(加圧回復動作)を行うことができる。または、ノズルをキャッピングするキャップ内に負圧を導入して、記録ヘッド内の泡をインクと共にノズルからキャップ内に吸引排出させる回復動作(吸引回復動作)を行うことができる。本発明は、どのような回復動作を行う記録装置に対しても適応可能である。
次に、図4のステップS7において、再度、記録ヘッドのノズルが正常なインク吐出状態にあるか否かを判定する。具体的には、上述したステップS1からS5のシーケンスを繰り返すことにより、記録ヘッドのインク吐出状態を再度判定する。その説明は重複するため省略する。
次に、ステップS8において、回復動作を行ったにも拘わらず、記録ヘッドのインク吐出状態が異常であると判定された場合には、インクの循環経路または記録ヘッドに何らかの異常が発生した判断して、その旨のエラーをオペレータに通知する。
以上のように、空吐出の前後の検出温度の差に基づいて泡Bが存在するか否かを判定する場合に、インクの循環方向を逆転させて泡Bを移動させることにより、微細な泡の存在をも検出することが可能となる。
本実施形態においては、記録動作時とは逆の方向にインクを循環させながら空吐出を行い、そのときの温度を検出することにより記録ヘッドのインク吐出状態を判定する。本発明は、記録動作時にインクを正方向に循環させる場合に生じるインク溜まりのインクを動かして、記録ヘッドのインク吐出状態が判定できればよい。例えば、最初にインクを正方向に循環させながら空吐出を行い、次に、インクを逆方向に循環させながら、空吐出を伴って温度を検出するようにしてもよい。空吐出を伴う温度検出の前にインクを正方向に循環させることにより、記録ヘッド内の泡を通常の記録動作時におけるインク溜まりに確実に集めることができ、その後の空吐出を伴う温度検出により、記録ヘッドのインク吐出状態をより正確に判定することができる。また、本例においては、インクを連続的に逆方向に循環しつつ空吐出を行っているが、例えば、インクの逆方向の循環を断続的に行い、その循環時あるいは循環の中断時に空吐出を行ってもよい。この場合には、インクを連続的に逆方向に循環する場合とはインクの流れが異なり、インク溜まりの領域内の泡をより効率よく動かすことが可能となる。なお、インクを逆方向に循環させる動作は1回のみに限られない。例えば、インクの正方向の循環と逆方向の循環を複数回実施することも可能であり、オペレータが任意の実施回数を設定できるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、泡Bが存在した場合に回復動作を1回行い、それでも記録ヘッドのインク吐出状態が回復しなかった場合に、その旨のエラーを通知する。しかし、そのような回復動作とは別に、さらに回復効果が強力な回復動作の実施シーケンスを用意しておき、図4のステップS8において記録ヘッドの異常が検知されたときに、その強力な回復動作を行うようにしてもよい
また、本実施形態において、記録ヘッド内に微細な泡が存在するか否かの判定処理の実施タイミングは、ユーザが任意に設定することができる。例えば、図8のような判定処理を記録動作に入る度に行ってもよく、あるいは、記録装置の電源を入れた初回の運転時にのみに行うようにしてもよい。また、前回の判定処理からの経過時間、インクの吐出回数、および記録枚数などの記録ヘッドの使用条件によって、判定処理のシーケンスを挿入するようにシステムを構成することもできる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、単一のチップを含む記録ヘッドにおいて、空吐出中にインクを逆方向(矢印A2方向)に循環させつつ、検出温度の変化に基づいて微細な泡Bを検知する。近年、記録物の大サイズ化への要求に伴い、複数のチップを千鳥状に配列したマルチチップタイプの長尺な記録ヘッド(以下、「ラインヘッド」ともいう)が開発されつつある。このようなラインヘッドの内部を通してインクを循環させる場合には、千鳥状に配列された複数のチップの間を湾曲したインク流路によって接続することになり、インク溜まりの領域の発生確率が高くなる。
そこで第2の実施形態では、複数のチップが配設されたラインヘッドに対して、連続的な空吐出の途中でインクの循環方向を複数回変更する。なお、記録装置の全体構成などは第1の実施形態と同様である。
図10は、1色のインクに対応する記録ヘッド2における複数のチップ52と、インク流路と、の関係を説明する図である。ヘッドホルダ51には、複数のチップ52およびインク流路が配設されている。本例の場合、インクを吐出可能なノズルが形成された4つのチップ52A,52B,52C,52Dが配列されている。インク流路53は、記録ヘッド2の上部から記録ヘッドの2の内部を通るように形成されている。記録動作中において、インクは、図10中の矢印A1のように、同図中の右側から記録ヘッド2内に流れ込み、同図中の左側から排出されるように正方方向に循環する。
図11は、図10の記録ヘッドを矢印XI方向から見た図である。インクは、上述したように流路によって循環される。すなわち、ヘッドホルダ51の流路部54から供給されたインクは、チップ52A,52B,52C,52Dの裏側のインク室内を正方向(矢印A1)に順次通ってから、ヘッドホルダ51の流路部55から外部に導かれる。流路部55,54の間において、チップ52A,52B,52C,52Dの裏側のインク室は、矢印A1方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に延在する流路部60(60a,60b,60c,60d,60e)によって直列に連通されている。それぞれのチップ52(52A,52B,52C,52D)には、前述した実施形態と同様に、4つのノズル列56a,56b,56c,56dが形成されている。それらのノズル列56(56a,56b,56c,56d)は、記録媒体の搬送方向Yと交差(本例の場合は、直交)するX方向に延在する。チップ52の裏側のインク室はノズルに連通しており、そのインク室内のインクは、ノズルの先端の吐出口から吐出可能である。
千鳥状に配設された4つのチップ52に対して、一連のインク流路を通して直列的にインクを正方向(矢印A1方向)に循環させた場合、インク室内に、インクの流れが速い部分と遅い部分とが生じる。その結果、領域61(61a,61b,61c)のように、インクがあまり流れないインク溜まりが生じるおそれがある。このようなインク溜まりの領域61は、単一チップを備える第1の実施形態の記録ヘッドの場合よりも顕著に発生するおそれがある。
図12は、第2の実施形態における判定処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。第1の実施形態と同様の処理内容について、重複を避けるために詳細な記載は省略する。
まず、ステップS11において、通常の記録動作時と同様にインクの正方向(矢印A1方向)の循環を開始する。その結果、チップ52の裏側のインク室内に泡が散在している場合には、その泡をインクの順下方向の下流側のインク溜まりの領域61に集めることができる。次のステップS2において、前述した実施形態と同様に、インクの空吐出と温度検出を開始する。チップ52A,52B,52C,52Dの温度は、それぞれに備わる温度センサ58によって個別に検出される。
次に、ステップS12において、インクの循環方向を正方向から逆方向(矢印A2方向)に変更する。本実施形態における記録装置は、インクの循環方向を連続的に変更可能な構成となっている。実際には、インクを循環させるためのポンプを逆転させる場合に、そのポンプのモータによる駆動条件により、若干のタイムラグが発生する場合も考えられる。インクの循環方向を逆転可能な構成は任意であり、記録装置の構成に応じた最適な方法を採用すればよい。
次のステップS13において、インクの循環方向を逆方向から再度正方向に変更する。次に、ステップS14において、インクの循環方向を再度逆方向に変更する。次に、前述した実施形態と同様に、ステップS3においてインクの循環を停止し、ステップS4においてインクの空吐出と温度検出を停止する。
次のステップS15において、ステップS2とS3の間にて取得したチップ52A,52B,52C,52D毎の検出温度が規定通りであるか否かを確認して、回復動作の必要の有無を判定する。
図13は、空吐出時における温度センサ58の検出温度の変化を説明する図である。横軸は、空吐出を始めてからの経過時間であり、空吐出によるインクの吐出数に対応する。縦軸は、空吐出を行ってからの検出温度の上昇温度である。本実施形態においては、前述したように、インクの正方向の循環と逆方向の循環を2回ずつ行う。曲線D1は、それぞれのチップ52の裏側のインク室がインクで満たされていて、泡が存在していない理想的な状態における空吐出時の温度変化を示す。全てのチップ52A,52B,52C,52Dの検出温度が曲線D1のように変化した場合には、記録ヘッドの回復動作(ステップS6)は必要ないと判定する。曲線D2は、インク室内に泡が混入して、インクの吐出が不可能なノズル(非吐出ノズル)が多数存在する状態における空吐出時の温度変化を示し、空吐出時の熱がインクの吐出によって外部に放出されないために、検出温度が大きく上昇する。チップ52A,52B,52C,52Dの検出温度の少なくとも1つが曲線D2のように変化した場合には、記録ヘッドの回復動作(ステップS6)が必要であると判定する。
曲線D3は、インク室内の細微な泡がインク溜まりの領域に存在していて、その泡がインクの循環方向の変更によって移動したときの温度変化を示す。T1,T2,T3が泡の移動タイミングを表しており、インクの循環方向を変更する度に泡が移動していることを意味する。検出温度が曲線D3のように上昇した場合には、最後の空吐出まで泡が存在したと判定する。そして、チップ52A,52B,52C,52Dの検出温度の少なくとも1つが曲線D3のように変化した場合には、記録ヘッドの回復動作(ステップS6)が必要であると判定する。
曲線D4は、インクの循環方向の1回目の逆転(ステップS12)によって、微細な泡が空吐出やインクの循環によって消滅した場合の温度変化を示す。時点T1において、泡の移動により検出温度が上昇した後、空吐出やインクの循環によって微細な泡が消滅した結果、それ以降の時点T2,T3では温度が上昇しなくなっている。このような場合には、ステップS14において最終的なインクの循環と空吐出を行う際の検出温度の上昇曲線に基づいて、微細な泡が存在の有無を確認する。すなわち、その検出温度の上昇曲線が図13の曲線D4のように所定範囲内に収まったときには、微細な泡が存在しないと判定する。全てのチップ52A,52B,52C,52Dの検出温度が曲線D4のように変化した場合には、記録ヘッドの回復動作(ステップS6)は必要ないと判定する。
ステップS6からS8は、前述した実施形態と同様であるため、それらの詳細な記載は割愛する。
以上のように、インクの循環方向を複数回変更して、最後のインク循環時における検出温度の上昇の程度に応じて泡が存在するか否かを判定することにより、より確実に泡の存在の有無を検出して、必要以上の回復動作の実施を回避することができる。また、このようなインクの循環方向の変更により、記録ヘッド内においてインクを正方向に流動させてから逆方向に流動させる動作を複数回繰り返し、少なくともインクを逆方向に1回流動させるときに、泡の存在に起因する温度変化を検出することができればよい。
本実施形態においては、1チップに着目して、複数チップを備える記録ヘッド全体の回復動作が必要であるか否かを判定している。しかし、記録ヘッドに備わる複数のチップ毎に回復動作が可能な場合には、回復動作が必要なチップに対してのみ回復動作を行なうことができる。また、1つの記録ヘッドに、複数の色のインクを吐出するためのチップが備えられていて、それらのインク色毎のチップに対して回復動作が可能な場合には、回復動作が必要なインク色毎のチップに対してのみ回復動作を行うこともできる。このように、回復動作が必要なチップに対してのみ回復動作を行うことにより、不要なインク消費を抑えることができる。
また、空吐出を行った際に生じる熱は、インクの循環方向における上流側のチップ(上流側チップ)から下流側のチップ(下流側チップ)へと伝熱する可能性が高い。そのため、その上流側チップの空吐出時に生じる熱が空吐出前の下流側チップに伝わって、その下流側チップの空吐出前の温度が変動して、泡の存在の有無の判定に誤差が生じるおそれがある。このような場合には、例えば、最も下流側に位置するチップから、その上流側の位置するチップの順に、インクの空吐出と温度検出を行うことが望ましい。あるいは、複数のチップからインクを空吐出させる時間をずらして、1つのチップの空吐出による伝熱が収まってから、次のチップの空吐出を行うように、時間差を設けることが望ましい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、泡の移動時に生じる検出温度の変化に基づいて、泡の大きさを推定する。泡が大きいときには、空吐出時にノズルがインクを吐出しない非吐出の時間が長くなり、その分、温度上昇も大きくなる。このような現象を利用して、泡の大きさを推定することにより、その泡の大きさに応じた最適な回復動作を実施することを可能とする。
図14は、本実施形態における判定処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。前述した第1および第2の実施形態と同様の処理については、詳細な説明を省略する。
ステップS21において、ステップS2からS3までの間に取得したチップ52の温度上昇に関する情報に基づいて、泡の大きさを推定し、その大きさ(量)に応じた最適な回復シーケンスを決定する。図15は、泡の大きさと、チップの温度上昇に関する情報と、の関係を説明する図である。横軸は、空吐出を始めてからの経過時間であり、空吐出によるインクの吐出数に対応する。縦軸は、空吐出を行ってからの検出温度の上昇温度である。
曲線E1は、チップ52の裏側のインク室がインクで満たされている状態、曲線E2は、インク室内に泡が多量に存在する状態における温度変化を示す。これらの曲線E1,E2は、第1の実施形態における図8の曲線C1,C2と同様である。曲線E3は、大きな泡(多量の泡)が存在していて、その泡が移動した場合における温度変化を示し、曲線E4は、小さな泡(少量の泡)が存在していて、その泡が移動した場合の温度変化を示す。大きな泡が移動した場合には、曲線E3のように温度上昇が早く始まり、最高到達温度も高くなる。曲線E3,E4のそれぞれにおいて、インクの循環方向を逆転させてから温度上昇が始まるまでの経過時間をt1,t2とする。例えば、t1は5秒であり、t2は10秒である。以下の説明においては、これらの経過時間t1,t2を含め、インクの循環方向を逆転させてから温度上昇が始まるまでの経過時間をtとして説明する。
図16は、インクの循環方向を逆転させてから温度上昇が始まるまでの経過時間tと、回復動作によって排出されるインク排出量と、回復動作に必要なポンプの回転数と、の関係を説明する図である。図16において、インク排出量は、経過時間tに基づいて推定した容量の泡を回復動作によって排出するために必要なインクの排出量である。ポンプの回転数は、そのような量のインクを排出するために必要なポンプの回転数である。回復動作としては、前述したように、ノズルからのインクの排出に伴って泡を排出する加圧回復動作や吸引回復動作などを含む。また、ポンプは、前述したようにインクを循環させるためにモータによって駆動させるポンプなどを含む。
本例の場合、曲線E3における経過時間t1は5秒であり、それから推定される量の泡を回復動作によって排出するために、ノズルから1.5gのインクを排出することが必要となり、そのインクを排出するためにポンプを15000回回転させることを決定する。また、曲線E4における経過時間t2は10秒であり、それから推定される量の泡を回復動作によって排出するために、ノズルから1gのインクを排出することが必要となり、そのインクを排出するためにポンプを10000回回転させることを決定する。
また、このようなポンプの回転数のみならず、例えば、インク排出の継続時間、およびインク排出時にノズルに掛ける圧力などの種々の条件などによって、記録ヘッドに対するインクの吐出性能の回復効果の程度(回復強度)を決定することも可能である。その回復効果の程度は、記録ヘッド内の泡を排出する回復動作による泡の排出作用の程度に対応する。また、本実施形態では、泡の通過時間に対応する経過時間tに基づいて泡の量を推定し、実施すべき回復動作を決定している。しかし、例えば曲線E1を基準として、それとの上昇温度の差分などの情報に基づいて、泡の量を推定することも可能である。
再び図14に戻り、次のステップS6において、先のステップS21にて決定された回復動作を実施する。その後のステップS7,8は、前述した実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
このように本実施形態においては、図15のような温度上昇の曲線に基づいて泡の量を推定し、それに応じて回復動作を決定することにより、最適な回復動作を行うことができる。その結果、インクの排出量を泡の量に応じた必要な最小限の量に抑えることができ、余分なインクを排出することなく回復動作を行うことができる。
(他の実施形態)
本発明は、記録ヘッドのインク吐出状態を検出するときに、記録動作時と異なる方向にインクを流動させることにより、記録動作時におけるインク溜まりの領域に位置していた泡を移動させて、そのときに空吐出をしつつ記録ヘッドの温度変化が検出できればよい。通常、記録動作時における記録ヘッド内のインク溜まりは、記録動作時におけるインクの流動方向の下流側の隅の領域に位置し、その隅の領域は、記録ヘッドの構造上、放熱特性が高いために温度変化の検出が難しい。したがって、上述した実施形態においては、このようなインク溜まりの領域以外の位置に温度センサを備えて、その温度センサの位置の近傍を泡が通過するように、インクの流動方向を記録動作時と異ならせた。記録ヘッドのインク吐出状態を検出するときのインクの流動方向は、泡と温度センサとの位置関係をずらすことができる方向であればよく、記録動作時とは異なる如何なる方向であってもよい。
温度センサは、インクを記録動作時と異なる方向に流動させつつ空吐出したときに、泡の存在に起因する温度変化の検出を可能とするような記録ヘッドの温度が検出できればよく、その温度センサの配備位置および配備数は、上述した実施形態のみに特定されない。泡の存在に起因する温度変化をより確実に検出する上においては、記録動作時におけるインク溜まりの領域以外の位置に温度センサを1つ以上備えて、その温度センサの近傍を記録ヘッド内の泡が一時的に通過あるいは継続的に位置するようにすることが望ましい。
1 記録装置
2 記録ヘッド
7 インク循環部
51 ヘッドホルダ
52 チップ
53 インク流路
54,55 流路部
56 ノズル列
58 温度センサ
A1 正方向(第1の方向)
A2 逆方向(第2の方向)

Claims (11)

  1. ヒータの発熱によってインクを発泡させ吐出口からインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの温度を検出可能な温度センサと、前記吐出口からインクを排出して前記記録ヘッドの吐出性能を回復する回復動作を実行可能な回復手段と、を備え、前記記録ヘッドの内部を第1の方向にインクを流動させているときに前記吐出口からインクを吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、
    前記記録ヘッドの内部を前記第1の方向と反対の第2の方向にインクを流動させつつ前記吐出口からインクを吐出させたときに前記温度センサにより検出された温度に基づいて前記回復動作を実行する制御手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記制御手段は、インクを前記第2の方向に流動させる前インクを前記第1の方向に流動させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記制御手段は、インクを前記第1の方向に流動させてから前記第2の方向に流動させる動作を複数回繰り返し、少なくともインクを前記第2の方向に1回流動させたときに前記温度センサにより検出された温度に基づいて前記回復動作を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記記録ヘッドは、前記吐出口が形成されたチップ前記チップの裏側に形成されたインク室とを有し、
    前記温度センサは、前記チップに設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記記録ヘッドは複数の前記チップを有し、
    前記複数のチップのそれぞれに対応する複数の前記インク室は、当該複数のインク室を通してインクを前記第1の方向および前記第2の方向に流動させインク流路に接続されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度の上昇値が規定値以上である場合に前記回復動作を実行することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記制御手段は、前記第2の方向にインクを流動させつつ前記吐出口からインクを吐出させている間に、前記温度センサにより検出された温度の上昇値が規定値以上となった後に、前記温度の上昇値が規定値未満となった場合は、前記回復動作を実行しないことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記制御手段は、前記回復動作を実行した後に、前記記録ヘッドの内部を前記第2の方向にインクを流動させつつ前記吐出口からインクを吐出させたときに前記温度センサにより検出された温度の上昇値が規定値以上である場合は、ユーザーに対してエラーを通知することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度の上昇値に応じて、インクの排出量の異なる前記回復動作を実行することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記制御手段は、前記温度センサにより検出された温度の上昇値が大きい程、または前記温度センサにより検出された温度の上昇が早く生じる程、インクの排出量が多い前記回復動作を実行することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
  11. ヒータの発熱によってインクを発泡させ吐出口からインクを吐出する記録ヘッドを備え、当該記録ヘッドの内部を第1の方向にインクを流動させているときに前記吐出口からインクを吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置の制御方法であって、
    前記記録ヘッドの内部を前記第1の方向と反対の第2の方向にインクを流動させつつ前記吐出口からインクを吐出させる吐出工程と、
    当該吐出工程において検出された温度に基づいて前記吐出口からインクを排出して前記記録ヘッドの吐出性能を回復させる回復動作を実行する回復工程と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
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