以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。また、図面において、実質的に同一の構成、動作、および効果を表す要素については、同一の符号を付す。
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態に係るプラズマダイシング装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態のプラズマダイシング装置の断面図である。
図1に示されるように、プラズマダイシング装置1は、ウエハをプラズマダイシングにより個片化する装置であり、真空チャンバ10と、搬送部20と、プラズマダイシング時にウエハを支持する支持台30と、電源部51、52、53及び54と、制御部60とを備える。なお、電源部51、52、53及び54並びに制御部60は、搬送部20の一部として設けられてもよい。
真空チャンバ10には、ウエハがその内部に搬入され又はその外部に搬出されるときに開かれるゲートバルブが設けられている。真空チャンバ10は、搬入されたウエハのプラズマダイシングが行われる容器である。従って、真空チャンバ10には、エッチングガスを導入するためのガス導入路が接続されると共に、エッチングガスを排出するためのターボポンプが設けられた排気経路が接続されている。
プラズマダイシング装置に設けられた搬送部20は、真空チャンバ10内にウエハを搬入し、また真空チャンバ10内からウエハを搬出するための、つまり真空チャンバ10の内部とその外部との間でのウエハの搬送を行うための機構部である。具体的に、搬送部20は、吸着部22を移動させる搬送アーム21と、搬送アーム21の先端に固定され、ウエハを静電吸着する吸着部22とを有する。搬送部20の吸着部22は、ウエハを静電吸着するときにウエハと接する吸着面22aを有する。
搬送アーム21は、真空チャンバ10内において吸着部22を鉛直方向及び水平方向に移動可能なアームである。具体的に、搬送アーム21は、支持台30の上方と真空チャンバ10の外部との間で吸着部22を水平方向に往復動させると共に、支持台30の上方で吸着部22を鉛直方向に往復動させるアームである。
吸着部22は、吸着部22を鉛直方向から見たとき、ウエハの上面と例えば同様の円形状を有し、ウエハの上面の面積と略同等以上の面積を有する。これにより、吸着部22は、ウエハの上面の全領域に静電吸着し、プラズマダイシング後の個片化されたウエハのそれぞれのチップを保持することが可能である。具体的に、吸着部22は、独立した電圧を印加可能な一対の電極23及び24と、その一対の電極23及び24の周囲に設けられた誘電体25とを有する。
吸着部22の一対の電極23及び24は、それぞれ吸着部22の吸着面22aと略平行な同一面内に配置された平板状の電極である。例えば、吸着部22を鉛直方向から見たとき、吸着部22の電極23は櫛歯形状を有し、吸着部22の電極24はその電極23の櫛歯形状と噛み合う櫛歯形状を有する。
誘電体25は、セラミックや、可撓性を有するポリイミド樹脂、PET樹脂等の絶縁膜から構成され、ウエハと吸着部22の一対の電極23及び24との間に位置し、吸着部22の吸着面22aを構成している。誘電体25は、例えば、吸着部22の一対の電極23及び24の全周囲を囲むように形成される。
支持台30は、真空チャンバ10内に設けられ、プラズマダイシングが行われているウエハをその支持面30a上で支持すると共に、静電吸着して固定するステージである。具体的に、支持台30は、独立した電圧を印加可能な一対の電極33及び34と、支持面30a上に載置されたウエハの水平方向の移動の規制や、ウエハのプラズマダイシング処理中のシースをコントロールする枠体31とを有する。そして、支持台30における一対の電極33及び34と支持面30aとの間の部分は、セラミック等の誘電体材料から構成されている。
支持台30の一対の電極33及び34は、それぞれ支持面30aと略平行な同一面内に配置された平板状の電極である。例えば、支持台30を鉛直方向から見たとき、支持台30の電極33は吸着部22の電極23と略同じ形状を有し、支持台30の電極34は吸着部22の電極24と同じ形状を有する。具体的に、支持台30の電極33は櫛歯形状を有し、支持台30の電極34はその電極33の櫛歯形状と噛み合う櫛歯形状を有する。
枠体31は、例えば、円形状の支持面30aの外周を囲むように設けられたリング状の剛体であり、支持面30aの外周に沿って形成された支持台30の段差部に配設されている。
電源部51は、制御部60により接続及び非接続を選択可能な状態で搬送部20の吸着部22の電極23と接続され、電源51aから構成される。電源部52は、制御部60により接続及び非接続を選択可能な状態で搬送部20の吸着部22の電極24と接続され、電源52a、電源52b及びスイッチ52cから構成される。
電源51aは、吸着部22の電極23に正の電圧を印加するための正の直流電源である。電源52a及び電源52bは、それぞれ吸着部22の電極24に異なる極性の電圧を印加するための正又は負の直流電源である。具体的に、電源52aは吸着部22の電極24に負の電圧を印加するための負の直流電源であり、電源52bは吸着部22の電極24に正の電圧を印加するための正の直流電源である。スイッチ52cは、吸着部22の電極24に電源52a及び52bのいずれを接続するかを決定する例えば3端子のスイッチである。
電源部53は、制御部60により接続及び非接続を選択可能な状態で支持台30の電極33と接続され、電源53a、電源53b及びスイッチ53cから構成される。電源部54は、制御部60により接続及び非接続を選択可能な状態で支持台30の電極34と接続され、電源54a、電源54b及びスイッチ54cから構成される。
電源53a及び電源53bは、それぞれ支持台30の電極33に異なる極性の電圧を印加するための正又は負の直流電源である。具体的に、電源53aは支持台30の電極33に正の電圧を印加するための正の直流電源であり、電源53bは支持台30の電極33に負の電圧を印加するための負の直流電源である。スイッチ53cは、支持台30の電極33に電源53a及び53bのいずれを接続するかを決定する例えば3端子のスイッチである。
電源54a及び電源54bは、それぞれ支持台30の電極34に異なる極性の電圧を印加するための正又は負の直流電源である。具体的に、電源54aは支持台30の電極34に負の電圧を印加するための負の直流電源であり、電源54bは支持台30の電極34に正の電圧を印加するための正の直流電源である。スイッチ54cは、支持台30の電極34に電源54a及び54bのいずれを接続するかを決定する例えば3端子のスイッチである。
制御部60は、電源部51、52、53及び54に対応する吸着部22や支持台30への静電吸着のための接続及び非接続の選択の制御、つまり電源部52のスイッチ52c、電源部53のスイッチ53c、及び電源部54のスイッチ54cの切り替えの制御を行うコントローラである。制御部60は、これらスイッチ52c、53c及び54cを制御することで、吸着部22による静電吸着の方式を双極式及び単極式の間で切り替える。
なお、電源51a、52a、52b、53a、53b、54a及び54bは、それぞれ例えば200V等の数百V〜数kVの電圧を印加可能な直流電源である。
以上のように本実施の形態のプラズマダイシング装置1は、ウエハをプラズマエッチングによりダイシングするプラズマダイシングを行う装置であって、プラズマダイシングが行われる真空チャンバ10を備える。そして、プラズマダイシング装置1は、さらに、真空チャンバ10内に設けられ、下面にテープが貼り付けられているウエハの上面を支持する支持台30を備える。また、プラズマダイシング装置1は、さらに、下面にテープが貼り付けられているウエハの上面を静電吸着により保持して支持台30上に搬入し、かつ、支持台30上に保持され、プラズマダイシングにより個片化されたウエハ(チップ、ベアチップ)の上面を静電吸着により保持して個片化されたウエハをテープに貼り付けられた状態で真空チャンバ10から搬出する搬送部20を備える。
これにより、真空チャンバ10へのウエハの搬出入において、搬送部20は、静電吸着により、真空チャンバ10への搬入時には、下面にテープが貼り付けられたウエハの上面を保持して搬送し、プラズマダイシング処理後には、プラズマダイシングにより個片化されたウエハの上面を静電吸着して保持し、個片化されたウエハをテープに貼り付けられた状態で真空チャンバ10から搬出する搬送を行うことができる。従って、ウエハにテープ付きリングとしてのダイシングリングを取り付ける必要がなく、テープ付きリング(ダイシングリング)を用いたプラズマダイシングに起因する諸問題も生じない。その結果、ダイシングリングに対応する大きな真空チャンバではなく、コンパクトな真空チャンバ10で所望の高真空を得ることができ、またプラズマダイシングにおけるウエハの温度上昇を抑えることができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング装置1は、さらに、ウエハの搬入を行うときに双極式で静電吸着を行い、ウエハの搬出を行うときに単極式で静電吸着を行うように搬送部20を制御する制御部60を備える。
これにより、真空チャンバ10からのウエハの搬出において、単極式の静電吸着でウエハを搬送部20に保持させることができる。従って、個片化されたウエハの上面を静電吸着するときに、同極性の電圧が印加可能な吸着部22の一対の電極23及び24が、ウエハの上面に位置するように配置されれば、個片化されたウエハの全てを静電吸着させることができる。よって、例えば1mm角以下の微細なチップを形成するプラズマダイシングにおいても適用可能なプラズマダイシング装置1を実現できる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング装置1では、搬送部20は、ウエハを静電吸着する吸着部22の吸着面22aが可撓性や弾性を有する誘電体25により構成されても良い。
これにより、ウエハを搬送部20に静電吸着させるときに、搬送部20とウエハとが接触するが、誘電体25によりウエハとの接触性を上げると共に、この接触によるウエハが受ける衝撃を吸収することができる。従って、ウエハを搬送部20に静電吸着させるときに、吸着力を向上させると共に、ウエハが受ける衝撃を抑えて、個片化されたウエハの破損を抑えることができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング装置1では、搬送部20は、ウエハの上面の全領域と接触して静電吸着を行う。
これにより、個片化されたウエハの全てを搬送部20に静電吸着させることができる。
次に、本発明の実施の形態に係るプラズマダイシング方法について説明する。図2は、本実施の形態のプラズマダイシング方法を説明するためのプラズマダイシング装置1の断面図である。
まず、図2(a)に示されるように、真空チャンバ10の外部において、ウエハ40を用意し、下面にテープ41が貼り付けられているウエハ40を真空チャンバ10に搬入するために、このウエハ40の上面を搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させる。具体的には、吸着部22の誘電体25をウエハ40の上面に押し付けて接触させる。そして、吸着部22の一方の電極23を正の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を負の電圧として、ウエハ40の上面を吸着部22の吸着面22aに双極式で静電吸着させる。
このとき、ウエハ40の上面には、絶縁性のレジスト等によりマスクが形成されており、このマスクにはウエハ40を個片化するためのダイシングラインがパターニングにより形成されている。一方、ウエハ40の下面には、ウエハ40の下面の面積と略同一の面積を有し、ウエハ40と接着可能な可撓性で絶縁性のテープ(ダイシングテープ、バックグラインドテープ)41が貼り付けられている。
次に、図2(b)に示されるように、真空チャンバ10のゲートバルブを開け、搬送部20によりウエハ40を真空チャンバ10の内部に搬入し、支持台30の支持面30a上に静電吸着により固定する。具体的には、まず、吸着部22に静電吸着されたウエハ40を、搬送アーム21により、支持台30の支持面30aの上方まで水平方向に移動させた後、テープ41が支持台30の支持面30aと接するまで鉛直方向に移動させる。そして、吸着部22の一対の電極23及び24と電源部51及び52とを非接続状態として、吸着部22による双極式の静電吸着を解除する。そして、支持台30の一方の電極33を正の電圧とし、支持台30の他方の電極34を負の電圧として、ウエハ40の下面を支持台30の支持面30aに双極式で静電吸着させる。
なお、吸着部22による静電吸着を解除してから、支持台30の一方の電極33を正の電圧とし、支持台30の他方の電極34を負の電圧とする前に、支持台30の一方の電極33を負の電圧とし、支持台30の他方の電極34を正の電圧としてもよい。これにより、静電吸着を行っていた搬送部20の吸着部22の一方の電極23に設定されていた電圧とは反対の極性の電圧が、吸着部22の一方の電極23と対向し、これから静電吸着を行う支持台30の一方の電極33に対して設定される。同様に、静電吸着を行っていた搬送部20の吸着部22の他方の電極24に設定されていた電圧とは反対の極性の電圧が、搬送部20の吸着部22の他方の電極24と対向し、これから静電吸着を行う支持台30の他方の電極34に対して設定される。その結果、吸着部22の残留電荷を消失させて吸着部22による静電吸着の残留を抑えることができる。
次に、図2(c)に示されるように、真空チャンバ10のゲートバルブを閉じ、真空チャンバ10内でプラズマを発生させることでウエハ40のプラズマダイシングを行い、ウエハ40を個片化する。具体的には、プラズマダイシング装置1の図示しない高周波電極に高周波電力を供給することで真空チャンバ10内のエッチングガスをプラズマ化させ、ウエハ40の上面のマスクのダイシングラインに沿ってプラズマエッチングする。これにより、ウエハ40を個片化して複数のチップとすることができる。
次に、図2(d)に示されるように、個片化されたウエハ40を一括して搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させる。具体的には、まず、吸着部22の誘電体25つまり吸着面22aを、下面にテープが貼り付けられた状態の個片化されたウエハ40の上面に押し付けて接触させる。そして、支持台30の一対の電極33及び34を負の電圧とすると共に、搬送部20の吸着部22の一対の電極23及び24を正の電圧とすることで、ウエハ40と吸着部22とが誘電分極し、ウエハ40の上面を吸着部22の吸着面22aに単極式で静電吸着させる。
このとき、搬送部20の吸着部22の吸着面22aに対して鉛直方向から見たとき、吸着部22の一方の電極23の外縁と対向する支持台30の一方の電極33の外縁とが一致し、吸着部22の他方の電極24の外縁と対向する支持台30の他方の電極34の外縁とが一致した状態で、吸着部22の電極23及び24並びに支持台30の電極33及び34への電圧印加を行うことが好ましい。
なお、ウエハ40を吸着部22に単極式で静電吸着させるときに、支持台30の一方の電極33を正の電圧とし、支持台30の他方の電極34を負の電圧とし、それぞれ対向する搬送部20の吸着部22の一方の電極23を負の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を正の電圧としてもよい。または、支持台30の一方の電極33を負の電圧とし、支持台30の他方の電極34を正の電圧とし、それぞれ対向する搬送部20の吸着部22の一方の電極23を正の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を負の電圧としてもよい。いずれの場合でも、吸着部22の電極23とこれに対向する支持台30の電極33とに反対の極性の電圧が設定されると共に、吸着部22の電極24とこれに対向する支持台30の電極34とに反対の極性の電圧が設定される。従って、ウエハ40の上面と吸着部22との間が、ウエハ40の下面に貼り付けられたテープ41と支持台30の支持面30aとの間より相対的に強く誘電分極され、吸着部22にウエハ40を単極式で静電吸着させることができる。
次に、図2(e)に示されるように、真空チャンバ10のゲートバルブを開け、搬送部20により個片化されたウエハ40の上面を静電吸着し、個片化されたウエハ40を、テープ41に貼り付けられた状態で、真空チャンバ10の外部に搬出する。具体的には、まず、支持台30の一対の電極33及び34と電源部53及び54とを非接続状態とする。そして、支持台30から、吸着部22に静電吸着された個片化されたウエハ40を、搬送アーム21により、支持台30の支持面30aの上方に鉛直方向に移動させた後、真空チャンバ10の外部に向けて移動させる。
最後に、個片化されたウエハ40を搬送部20の吸着部22から取り外した後、ウエハ40の下面からテープ41を剥がす。なお、静電吸着された搬送部20の吸着部22からの個片化されたウエハ40の取り外しは、例えば、ウエハ40を接地された導体又は負の電圧(逆電圧を印加)に設定された電極等と接触させ、静電吸着の電荷を放電又は中和させることで行うことができる。
図3は、ウエハ40からのテープ41の取り外しの一例を説明するための断面図である。
まず、図3(a)に示されるように、個片化されたウエハ40を、テープ41に貼り付けられた状態で、搬送部20によりバキュームステージ70上へ移動させる。その後、搬送部20の吸着部22によるウエハ40の上面の静電吸着を解除し、個片化されたウエハ40の下面にテープ41が貼り付けられた側をバキュームステージ70上に真空吸着により固定する。
次に、図3(b)に示されるように、個片化されたウエハ40の上面にダイシングリング71で保持されたダイボンテープ72を貼り付ける。
最後に、図3(c)に示されるように、バキュームステージ70の固定を解除し、ダイシングリング71を上下反転させた後、個片化されたウエハ40からテープ41を剥がして取り外す。
以上のように本実施の形態のプラズマダイシング方法は、ウエハ40をプラズマエッチングによりダイシングするプラズマダイシングを行う方法である。そして、プラズマダイシング方法は、下面にテープ41が貼り付けられているウエハ40の上面を搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させ、搬送部20により真空チャンバ10内の支持台30上に搬入する搬入工程(図2(a)、(b))を含む。また、プラズマダイシング方法は、さらに、搬入工程で搬入された支持台30上のウエハ40をプラズマダイシングにより個片化するプラズマダイシング工程(図2(c))を含む。また、プラズマダイシング方法は、さらに、プラズマダイシング工程で個片化された支持台30上のウエハ40の上面を、搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させ、個片化されたウエハ40を、テープ41に貼り付けられた状態で真空チャンバ10から搬出する搬出工程(図2(d)、(e))を含む。
これにより、真空チャンバ10へのウエハ40の搬出入において、静電吸着により、真空チャンバ10への搬入時には、下面にテープ41が貼り付けられたウエハ40の上面を保持して搬送し、プラズマダイシング処理後には、プラズマダイシングにより個片化されたウエハ40の上面を保持し、個片化されたウエハ40をテープ41に貼り付けられた状態で真空チャンバ10から搬出する搬送を行うことができる。従って、ウエハ40にテープ付きリングとしてのガイドリングを取り付ける必要がなく、ガイドリングを用いたプラズマダイシングに起因する諸問題も生じない。その結果、ダイシングリング(ガイドリンス)に対応する大きな真空チャンバでなく、コンパクトな真空チャンバ10で所望の高真空を得ることができ、またプラズマダイシングにおけるウエハ40の温度上昇を抑えることができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング方法は、搬入工程では、双極式で静電吸着を行う。
これにより、ウエハ40の真空チャンバ10への搬入において、ウエハ40の搬送部20への静電吸着を簡易に行うことができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング方法は、搬出工程では、単極式で静電吸着を行う。
これにより、吸着部22の一対の電極23及び24のいずれかが、個片化されたウエハ40を静電吸着するときに、ウエハ40の上面に位置するように配置して搬送部20の吸着部22の側に正の電圧を印加し、支持台30の側に負の電圧を印加して、下面に共通(一体)のテープ41が貼り付けられた状態で個片化されているウエハ40の上面と搬送部20の吸着部22との間で誘電分極を生じさせて、個片化されたウエハ40の全てを搬送部20の吸着部22に静電吸着させることができる。よって、微細なチップを形成するプラズマダイシングにおいても適用可能なプラズマダイシング装置1を実現できる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング方法は、搬入工程及び搬出工程では、ウエハ40の上面の全領域と搬送部20の吸着部22とを接触させて静電吸着を行う。
これにより、個片化されたウエハ40の搬出において、個片化されているウエハ40のそれぞれの上面と搬送部20の吸着部22との間で誘電分極させているので、それぞれの個片化されたウエハ40の全てを搬送部20の吸着部22に静電吸着させることができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング方法は、搬入工程及び搬出工程では、ウエハ40を静電吸着する吸着部22の吸着面22aが誘電体25により構成された搬送部20により静電吸着を行う。
これにより、ウエハ40を搬送部20の吸着部22に静電吸着させるときに、搬送部20の吸着部22とウエハ40とが接触するが、吸着部22の吸着面22aが弾性を有する誘電体25である場合、ウエハ40との接触性を上げると共に、この接触の衝撃を吸収することができる。従って、ウエハ40を搬送部20の吸着部22に静電吸着させるときに、吸着力を向上させると共に、ウエハ40が受ける衝撃を抑えて、ウエハ40の破損を抑えることができる。
また、本実施の形態のプラズマダイシング方法は、搬入工程では、下面にテープ41が貼り付けられたウエハ40の上面を静電吸着して保持を行い、搬出工程では、個片化されたウエハ40を下面にテープ41に貼り付けた状態で搬出する。
これにより、個片化されたウエハ40がバラバラに離散するのを抑えて、個片化された複数のウエハ40を一度に搬出することができる。また、ウエハ40の下面がテープ41でカバーされるので、プラズマダイシングが行われているときに、ウエハ40の下面側を支持する支持台30の支持面30aがプラズマによりダメージを受けるのを抑えることができる。
(変形例)
本実施の形態のプラズマダイシング方法において、搬送部20は搬出において個片化されたウエハ40を単極式の静電吸着で保持するとしたが、双極式で静電吸着しても、本実施の形態のプラズマダイシング装置1と同様の効果が得られる。そして、単極式の静電吸着を考慮して吸着部22の電極23及び24の形状を、対向する支持台30の電極33及び34の形状に合わせて、静電吸着において両者の外縁が一致するように吸着部22を配置する必要もなくなる。従って、本変形例のプラズマダイシング方法は、搬送部20が搬出において個片化されたウエハ40を双極式の静電吸着で保持する点で本実施の形態のプラズマダイシング方法と異なる。以下、本実施の形態のプラズマダイシング方法と異なる点を中心に詳述する。
図4は、本変形例のプラズマダイシング方法を説明するためのプラズマダイシング装置1の断面図である。
まず、図4(a)に示されるように、真空チャンバ10の外部において、下面にテープ41が接着され、上面にパターニングされたマスクが形成されたウエハ40を用意し、このウエハ40の上面を搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させる。
次に、図4(b)に示されるように、真空チャンバ10の図示しないゲートバルブを開け、搬送部20の吸着部22により上面が保持されたウエハ40を真空チャンバ10の内部に搬入し、支持台30の支持面30a上に静電吸着により固定する。
次に、真空チャンバ10のゲートバルブを閉じ、真空チャンバ10内でプラズマを発生させることでウエハ40のプラズマダイシングを行い、ウエハ40を個片化する。
次に、図4(c)に示されるように、下面にテープ41に貼り付けられた状態で、個片化されたウエハ40を搬送部20の吸着部22に静電吸着により保持させる。具体的には、まず、支持台30の一対の電極33及び34と電源部53及び54とを非接続状態として、支持台30による双極式の静電吸着を解除する。そして、吸着部22の誘電体25つまり吸着面22aを個片化されたウエハ40の上面に押し付けて接触させる。そして、吸着部22の一方の電極23を正の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を負の電圧とすることで、下面にテープ41に貼り付けられた状態で、個片化されたウエハ40の上面を吸着部22の吸着面22aに双極式で静電吸着させる。
このとき、チップの全てを双極式で静電吸着するために、吸着部22の一対の電極23及び24の両方が、複数のチップのそれぞれの上方に位置するように配置されることが好ましい。この場合、一対の電極23及び24の間の距離は、例えば個片化されたウエハ40つまりチップの一辺の長さより短くされる。
なお、搬送部20の吸着部22の吸着面22aを個片化されたウエハ40の上面に接触させた後で、吸着部22の一方の電極23を正の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を負の電圧とする前に、テープ41及び支持台30の残留電荷を抑えるため、それぞれ逆電圧を印加するように、搬送部20の吸着部22の一方の電極23を負の電圧とし、吸着部22の他方の電極24を正の電圧としてもよい。これにより、静電吸着を行っていた支持台30の一方の電極33に設定されていた電圧とは反対の極性の電圧が、支持台30の電極33と対向し、これから静電吸着を行う搬送部20の吸着部22の一方の電極23に対して設定される。同様に、静電吸着を行っていた支持台30の他方の電極34に設定されていた電圧とは反対の極性の電圧が、支持台30の電極34と対向し、これから静電吸着を行う吸着部22の他方の電極24に対して設定される。その結果、テープ41及び支持台30の残留電荷を消失させて支持台30による静電吸着の残留を抑えることができる。なお、支持台30側で逆電圧印加により支持部30とウエハ40との残留電荷の除去を行ってもよい。
次に、真空チャンバ10のゲートバルブを開け、下面にテープ41が貼り付けられた状態で、個片化されたウエハ40の上面を搬送部20により真空チャンバ10の外部に搬出する。
最後に、個片化されたウエハ40を搬送部20の吸着部22から取り外した後、ウエハ40からテープ41を剥がす。個片化されたウエハ40の取り外しは、例えば、支持台30の一対の電極23及び24と電源部51及び52とを非接続状態として、搬送部20の吸着部22による双極式の静電吸着を解除することで行うことができる。このとき、吸着部22とウエハ40との残留電荷を抑えるように、ウエハ40を吸着していた吸着部22の一対の電極23及び24に対してそれぞれ静電吸着時とは逆の極性の電圧を印加してもよい。
以上のように、本変形例のプラズマダイシング方法によれば、本実施の形態のプラズマダイシング方法と同様の理由により、真空チャンバ10で所望の高真空を得ることができ、またプラズマダイシングにおけるウエハ40の温度上昇を抑えることができる。
以上、本発明のプラズマダイシング方法及びプラズマダイシング装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
例えば、上記実施の形態において、電源51aは負の直流電源とされてもよい。この場合、プラズマダイシング方法における各工程において電極24、33及び34に印加される電圧は上述したものと反対の極性となる。
また、上記実施の形態において、双極式の静電吸着を解除するときに、静電吸着を解除するまで印加されていた極性の関係とは逆の極性の関係の電圧を搬送部20の吸着部22の一対の電極23及び24、又は支持台30の一対の電極33及び34に印加し、残留電荷を消失させることにより静電吸着の残留を抑えてもよい。つまり、双極式の静電吸着を行うための一対の電極の一方に正の電圧が印加され、他方に負の電圧が印加されて静電吸着が行われている場合、静電吸着を解除するときに、一方の電極に負の電圧を印加し、他方の電極に正の電圧を印加してもよい。テープ41には残留電荷が生じやすいため、特に支持台30における静電吸着を解除するときに、この手法は大きな効果を発揮する。
また、上記実施の形態において、各電源部52、53及び54には、3端子のスイッチ52c、53c及び54cを設けるとした。しかし、搬送部20の吸着部22の電極24に対応する電源部52において、電極24と電源52aとを接続する電源経路と、電極24と電源52bとを接続する電源経路とに、個別に、オンオフを切り替え可能な2端子のスイッチが設けられてもよい。同様に、支持台30の電極33に対応する電源部53において、電極33と電源53aとを接続する電源経路と、電極33と電源53bとを接続する電源経路とに、個別に、2端子のスイッチが設けられてもよい。また、支持台30の電極34に対応する電源部54において、電極34と電源54aとを接続する電源経路と、電極34と電源54bとを接続する電源経路とに、個別に、2端子のスイッチが設けられてもよい。
また、上記実施の形態において、搬送部20の吸着部22は、ウエハ40の搬入においてウエハ40を双極式で静電吸着するとしたが、単極式で静電吸着してもよい。この場合、搬送部20の吸着部22の一対の電極23及び24を1つの電極にまとめることができる。しかし、搬送部20の吸着部22による真空チャンバ10へのウエハ40の搬入のためのウエハ40の静電吸着の動作時には、吸着部22の一つにまとめられた電極23及び24とは逆の極性の電圧に設定された電極を別途用意し、ウエハ40を搬入するときに、この電極をウエハ40の下面に接触させて吸着部22にウエハ40を静電吸着させる必要がある。
また、上記実施の形態において、支持台30は、プラズマダイシングにおいてウエハ40を双極式で静電吸着するとしたが、例えばプラズマを利用して単極式で静電吸着してもよい。
また、上記実施の形態において、下面に共通のテープ41が貼り付けられた状態で、プラズマダイシング処理で個片化されるウエハ40の個片化とは、図5(a)のように、個片化されたウエハ(チップ)40が厚み方向にフルカットされるものだけでなく、図5(b)のように、ウエハ40の厚み方向に厚みTの50%以上の厚みtだけハーフカットされる構成も含まれる。つまり、ウエハ40の厚み方向に剛性が低い構成も個片化されたウエハ40に含まれる。