JP6008424B2 - 金属ナノ粒子の水分散液、及びその製造方法 - Google Patents

金属ナノ粒子の水分散液、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とを含む水分散液、又は金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)と、さらにβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)を含む水分散液、及びその製造方法に関する。
近年、金属ナノ粒子は、その導電性や半導体性を活かして微粒子化することにより、従来のめっき方法に代わる塗布方法を用いた手法で配線が可能となるため、電子機器や情報機器の回路形成やセンサーへの応用など、多方面で検討が進められており、プリンタブルエレクトロニクスとして一つの技術が形成されつつある。また、金属ナノ粒子は抗酸化剤やUV吸収剤として化粧品の原料としても使用されている。
金属ナノ粒子は、単独ではなく規則性を持った構造体にすることによって、単独では見られなかった新規な電子的、光学的、磁気的性質などを示すことから、先端的なエレクトロニクス及び光学分野のデバイスへの応用を期待した研究が近年盛んに行なわれている。しかし、金属ナノ粒子の粒子間には、特異的な相互作用が存在しないため、自己組織的な集積は困難である。一方、高分子鎖は、自己組織的に特定の高次構造を有し、単独の金属ナノ粒子を集合化させたり分散化させたりする特徴を有している。例えば、特許文献1には、非プロトン性溶媒を用いて、シゾフィランと金を複合体化することにより、金に分散性を付与することが開示されている。しかしながら、上記方法で作成された複合体は、水への分散性が不十分であり、実用化可能なものとはいえない。
一方、β-グルカンは、β-1,3-グルカン、β-1,6グルカン、β-1,3-1,6グルカンなどが自然界に生息するキノコ(担子菌の子実体)に多く含まれる成分(数%から50%程度)であり、それらの子実体だけでなく培養菌糸体にも含まれていることが知られている。また、それらのβ-グルカンには抗腫瘍活性があることが知られている(非特許文献1)。例えば、スエヒロタケ、カワラタケ、シイタケから抽出されたそれぞれのβ-グルカンは、既に抗がん剤などの医薬品として製造販売されている。一方、不完全菌であるオーレオバシジウム属(Aureobasidium)に属する微生物もβ-1,3-1,6グルカンを生産することが知られている。
また、β-1,3-1,6グルカンは、一本鎖構造のものが絡みあい3重螺旋構造を形成していることが知られており、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒やアルカリ溶液で処理することにより、3重螺旋構造が解離し、一本鎖構造となることが知られている(非特許文献2)。
特開2006−205302号公報
Immunity,19(3),311-315 J.Med.Mycol.Vol.33,267-277,(1992)
本発明は、実用上十分な分散性を有する金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とを含む水分散液、又は金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)を含む水分散液、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ね、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とを混合することによって水中で安定した分散性を有する分散液が得られることを見出した。さらに、β-1,3-1,6グルカンの中でも、主鎖のβ-1,3結合に対する側鎖のβ-1,6結合の比率(分岐度)が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)を添加することでより、水中で安定した分散液が得られることを見出した。
詳しくは、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)を混合する工程、又は金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とを混合する工程とを含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法である。さらに、詳しくは、金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてアルカリ性に調整した水溶液中で混合し、中和剤(d)を用いて中和する工程とを含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法によって、得られる金属ナノ粒子の水分散液が、分散性に著しく優れることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の金属ナノ粒子の水分散液とその製造方法を提供する。
項1. 金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とを含む水分散液。
項2. さらに、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)を含む項1に記載の水分散液。
項3. 金属ナノ粒子(a)が、鉛、ニッケル、鉄、マグネシウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム、白金、金、銀、銅、チタン、亜鉛、パラジウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、タングステン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、及びこれらの金属の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の水分散液。
項4. アミン類(b)が、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、及びアルキレンアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3に記載の水分散液。
項5. アミン類(b)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、及びトリプロパノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1〜3に記載の水分散液。
項6. 金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)を混合する工程を含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法。
項7. 金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とを混合する工程を含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法。
項8. 金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてアルカリ性に調整した溶液中で混合する工程と、混合した溶液に中和剤(d)を添加して中和する工程とを含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法。
項9. 金属ナノ粒子(a)が、鉛、ニッケル、鉄、マグネシウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム、白金、金、銀、銅、チタン、亜鉛、パラジウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、タングステン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素及びこれらの金属の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である項6〜8に記載の製造方法。
項10. アミン類(b)が、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、及びアルキレンアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である項6〜9に記載の分散液の製造方法。
項11. アミン類(b)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、及びトリプロパノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項6〜9に記載の製造方法。
本発明によれば、安定した分散性を有する金属ナノ粒子の水分散液が得ることができる。
本発明は、食品成分としても利用されるβ-1,3-1,6グルカンを用いて金属ナノ粒子を水溶液中に分散させているため、本発明の水分散液は安全性が高く、医薬・化粧品として利用可能である。また、本発明の水分散液は、触媒材料、磁気記録材料、導電膜形成材料、半導体膜形成材料、顔料などの各種用途に使用できる。
また、本発明の金属ナノ粒子の水分散液の製造方法を用いることで、効率よく安定性に優れた水分散液を製造することができる。
実験例で得たオーレオバシジウム・プルランス由来のグルカンのH NMRスペクトルである。 実験例で得たオーレオバシジウム・プルランス由来のグルカンの超音波照射したときの培養液の粒度分布を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)金属ナノ粒子の水分散液
本発明の分散液は、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とを含む水分散液、さらには、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)を含む水分散液である。
水分散液中における金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)の比率は、(アミン類:金属ナノ粒子)は重量比で、1:0.001〜1500程度の範囲が好ましく、1:0.01〜1200程度の範囲がより好ましく、1:0.1〜1200程度の範囲がさらに好ましい。上記範囲であれば、水中で十分な分散性を有する分散液が得られる
さらに、水分散液中にβ-1,3-1,6グルカン(c)を含む場合、金属ナノ粒子と、β-1,3-1,6グルカンの比率(β-1,3-1,6グルカン:金属ナノ粒子)は重量比で、1:0.001〜1000程度の範囲が好ましく、1:0.01〜1000程度の範囲がより好ましく、1:0.1〜500程度の範囲がさらに好ましい。上記範囲であれば、水中で十分な分散性を有する分散液が得られる。
(1−1)金属ナノ粒子(a)
本発明に用いる金属ナノ粒子(a)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。
金属ナノ粒子(a)は、前記金属単体、前記金属の合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これらの金属ナノ粒子(a)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属ナノ粒子(a)は、通常、金属単体粒子、又は金属合金粒子である場合が多い。また、金属ナノ粒子(a)は、導電性金属粒子であってもよい。
上記金属ナノ粒子(a)としては、一般に市販されているものを用いることができ、具体的には、鉛、ニッケル、鉄、マグネシウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム、白金、金、銀、銅、チタン、亜鉛、パラジウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、タングステン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素(シリカ)などの金属、又はこれらの金属の酸化物などを例示することができる。中でも、白金、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウムが好ましく、白金、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄がより好ましい。また、上記金属ナノ粒子を2種以上任意の割合で混合したものを用いることもできる。さらには、上記金属ナノ粒子の粒子表面を他の化合物で被覆(修飾)したものを用いることもできる。例えば、金属ナノ粒子の表面をケイ素(シリカ)で被覆したシリカ被覆ナノ粒子を例示することができる。
本発明に用いる金属ナノ粒子(a)の平均粒子径は、その最大径が200nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカンとの混合することにより、最大径が5nm以上であるような大きな金属ナノ粒子を用いることができる。また、金属ナノ粒子の平均粒子径の測定方法は、一般に、マイクロトラック法(レーザー解析・光散乱法など)によって測定することができる。
本発明に用いる金属ナノ粒子(a)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、フレーク状、粒状、棒状、ワイヤー状、針状などを例示することができる。中でも水溶液中での分散性の点で、粒状、棒状、ワイヤー状、針状が好ましい。また、上記金属ナノ粒子の形状のものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の水分散液に用いる金属ナノ粒子の添加量は、水分散液中での最終濃度として、1〜70重量%であればよく、10〜65重量%が好ましく、15〜50重量%がより好ましい。上記範囲であれば、安定した水分散液が得られる。
(1−2)アミン類(b)
本発明に用いるアミン類(b)としては、例えば、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、アルキレンアミン類などを例示することができ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、アミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルエタノールアミン、アミノエトキシエタノール、及びN,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ−n−ブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジ−n−ペンタノールアミン、ジ−n−ヘキサノールアミン、トリプロパノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトライソプロパノールエチレンジアミンシクロヘキシルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類;エチレンジアミン,トリメチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミン,ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキレンアミン類を例示することができる。中でも作業環境の点で、アルカノールアミン類が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンがより好ましい。
本発明におけるアミン類の使用量は、使用する金属ナノ粒子の種類又は使用量にもよるが、水分散液とした際の最終濃度として0.01〜10重量%であればよく、0.01〜5重量%が好ましく、0.01〜3重量%がより好ましい。上記範囲であれば、安定した水分散液が得られる。
(1−3)β-1,3-1,6グルカン(c)
本発明においては、水分散液中にさらにβ-1,3-1,6グルカンを添加することによって、水中での分散性がより安定する。また、β-1,3-1,6グルカンを添加することによって、アミン類の使用量を低く押えることが可能となる。
本発明におけるβ-1,3-1,6グルカンの使用量は、使用する金属ナノ粒子の種類又は使用量にもよるが、水分散液とした際の最終濃度として0.01〜10重量%であればよく、0.05〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましい。上記範囲であれば、安定した水分散液が得られる。
本発明に用いるβ-1,3-1,6グルカンにおいて、主鎖のβ-1,3結合数に対する側鎖のβ-1,6結合数の比率である分岐度は、通常約50〜100%、好ましくは約75〜100%、より好ましくは約85〜100%であればよい。
β-1,3-1,6グルカンが上記分岐度を有することは、β-1,3-1,6グルカンをエキソ型のβ-1,3-グルカナーゼ(キタラーゼ M、ケイアイ化成製)で加水分解処理した場合に分解生成物としてグルコースとゲンチオビオースが遊離すること、及びNMRの積算比から確認できる(今中忠行 監修、微生物利用の大展開、1012-1015、エヌ・ティー・エス(2002))。
(i)オーレオバシジウム属微生物が生産するβ-1,3-1,6グルカン
上記の分岐度を有するβ-1,3-1,6グルカンは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物から得ることができる。
オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物由来のβ-1,3-1,6グルカンは、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
上記の分岐度を有するβ-1,3-1,6グルカンは、水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が、好ましくは200cP(mPa・s)以下、より好ましくは100cP(mPa・s)以下、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下のものである。上記粘度の下限値は通常10cP(mPa・s)程度であり得る。
本発明において、粘度は、BM型回転粘度計を用いて測定した値である。
オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6グルカンは、菌体外に分泌されるため、キノコ類やパン酵母の細胞壁に含まれるβ-グルカンと比べて、回収が容易であり、また水溶性である点で好ましいものである。オーレオバシジウム属の微生物は、分子量が100万以上の高分子量のグルカンから分子量が数万程度の低分子のグルカンまでを培養条件に応じて産生することができる。
中でも、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)が生産するものが好ましく、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株、又はGM-NH-1A2株(独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センターにそれぞれFERM P-19285及びFERM P-19286として寄託済み)が産生するものが好ましい。GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)K-1株の変異株である。オーレオバシジウム属K-1株は、分子量200万以上と100万程度の2種類のβ-1,3-1,6グルカンを産生することが知られている。
また、オーレオバシジウム属微生物が産生するβ-1,3-1,6グルカンは、通常、硫黄含有基を有するところ、K-1株の産生するβ−グルカンはスルホ酢酸基を有することが知られている(Arg.Biol.Chem.,47,1167-1172(1983)),科学と工業,64,131-135(1990))。GM-NH-1A1株、及びGM-NH-1A2株が生産するβ-1,3-1,6グルカンもスルホ酢酸基を有すると考えられる。オーレオバシジウム属微生物の中には、リン酸基のようなリン含有基、リンゴ酸基などを含むβ-1,3-1,6グルカンを産生する菌種、菌株も存在する。
GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、後に実施例において示すようにメインピークが見かけ上50〜250万の高分子量のβ-グルカン(微粒子グルカン)とメインピークが見かけ上2〜30万の低分子量のβ-グルカンの両方を産生する菌株である。この微粒子状グルカンは、一次粒子径が0.05〜2μm程度である。
β-1,3-1,6グルカンの溶解度は、pH及び温度に依存する。このβ-1,3-1,6グルカンは、pH3.5、温度25℃の条件で2mg/ml水溶液を調製しようとすると、その50重量%以上が一次粒子径0.05〜2μmの微粒子を形成し、残部は水に溶解する。本発明において粒子径は、レーザー回折散乱法により測定した値である。
β-1,3-1,6グルカンは、水溶液にしたときの粘度が、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β-1,3-1,6グルカンより低いものが好ましい。この低粘度β-1,3-1,6グルカンは、水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が、通常200cP(mPa・s)以下であり、より好ましくは100cP(mPa・s)以下であり、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下であり、よりさらに好ましくは10cP以下である。
この低粘度グルカンは、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β-1,3-1,6グルカンと同様の一次構造を有し得る。具体的には、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のHNMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有するものである。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
β-1,3-1,6グルカンは、金属イオン濃度が、β-1,3-1,6グルカンの固形分1g当たり0.4g以下であることが好ましく、0.2g以下であることがより好ましく、0.1g以下であることがさらにより好ましい。原料β-1,3-1,6グルカンが水溶液状態のものである場合は、金属イオン濃度は、水溶液の100ml当たり120mg以下であることが好ましく、50mg以下であることがより好ましく、20mg以下であることがさらにより好ましい。
ここでいう金属イオンには、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第3〜第5族金属イオン、遷移金属イオンなどが含まれるが、混入する可能性のある金属イオンとしては、代表的には、低粘度β-1,3-1,6グルカンの製造において使用されるアルカリ由来のカリウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。金属イオン濃度は、限外ろ過や透析により調整できる。
金属イオン濃度が上記範囲であれば、水溶液状態で保存する場合や、水溶液状態で加熱滅菌する際に、β-1,3-1,6グルカンのゲル化、凝集、沈殿が生じ難い。また、固形で使用する場合は、再溶解させる場合に凝集などが生じ難い。
(ii)オーレオバシジウム属微生物によるβ-1,3-1,6グルカンの生産方法
分岐度50〜100%のβ-1,3-1,6グルカンは、例えば、これを産生する微生物の培養上清に有機溶媒を添加することにより沈殿物として得ることができる。
また、オーレオバシジウム属の微生物を培養して、β-1,3-1,6グルカンを産生させる方法は種々報告されている。培養培地に使用できる炭素源としては、シュークロース、グルコース、フラクトースなどの炭水化物、ペプトンや酵母エキスなどの有機栄養源などを挙げることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウムや硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機窒素源などを挙げることができる。場合によってはβ-グルカンの産生量を上昇させるために適宜、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの無機塩、更には鉄、銅、マンガンなどの微量金属塩やビタミン類などを添加するのも有効な方法である。
オーレオバシジウム属微生物を、炭素源としてシュークロースを含むツアペック培地にアスコルビン酸を添加した培地で培養した場合、高濃度のβ-1,3-1,6グルカンを産生することが報告されている(Arg.Biol.Chem.,47,1167-1172(1983));科学と工業,64,131-135(1990);特開平7−51082号公報)。しかし、培地は、微生物が生育し、β-1,3-1,6グルカンを生産するものなら特に限定されない。必要に応じて酵母エキスやペプトンなどの有機栄養源を添加してもよい。
オーレオバシジウム属の微生物を上記培地で好気培養するための条件としては、10〜45℃程度、好ましくは20〜35℃程度の温度条件、3〜7程度、好ましくは3.5〜5程度のpH条件などが挙げられる。
効果的に培養pHを制御するためにアルカリ、あるいは酸で培養液のpHを制御することも可能である。更に培養液の消泡のために適宜、消泡剤を添加してもよい。培養時間は通常1〜10日間程度、好ましくは1〜4日間程度であり、これによりβ−グルカンを産生することが可能である。なお、β-グルカンの産生量を測定しながら培養時間を決めてもよい。
上記条件下オーレオバシジウム属の微生物を4〜6日間程度通気攪拌培養すると、培養液にはβ-1,3-1,6グルカンを主成分とするβ-グルカン多糖が0.1%(w/v)〜数%(w/v)含有されており、その培養液の粘度はBM型回転粘度計(東機産業社製)により30℃では数百cP(mPa・s)から数千cP(mPa・s)という非常に高い粘度を有する。この培養を遠心分離して得られる上清に例えば有機溶媒を添加することにより、β-1,3-1,6グルカンを沈殿物として得ることができる。
<低粘度β-1,3-1,6グルカンの製造方法>
上記の高粘度のβ-1,3-1,6グルカンを含む培養液を、常温で攪拌しながら、これにアルカリを添加すると、急激に粘度が低下する。
アルカリは、水溶性で、かつ医薬品や食品添加物として用いることができるものであればよく、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液などの炭酸アルカリ水溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などの水酸化アルカリ水溶液;あるいはアンモニア水溶液などを使用できる。アルカリは、培養液のpHが12以上、好ましくは13以上になるように添加してもよい。例えば水酸化ナトリウムを使用して培養液のpHを上げる場合は、水酸化ナトリウムの最終濃度が好ましくは0.5%(w/v)以上、より好ましくは1.25%(w/v)以上になるように添加すればよい。培養液にアルカリを添加し、良く攪拌すると、瞬時に培養液の粘度が低下する。
次いで、アルカリ処理後の培養液から菌体などの不溶性物質を分離する。培養液の粘度が低いため、菌体を自然沈降させて上澄みを回収する方法(デカント法)、遠心分離、ろ紙あるいはろ布を利用した全量ろ過、フィルタープレス、更に膜ろ過(MF膜などの限外ろ過)などの方法で、容易に不溶性物質とグルカンとを分離できる。ろ紙あるいはろ布による全量ろ過の場合は、セライトなどろ過助剤を利用するのも一つの手段である。工業的にはフィルタープレスによる菌体除去が好ましい。また、不溶性物質除去前のβ-グルカン液は必要に応じて水で希釈しても良い。濃度が高すぎると不溶性物質除去が困難であり、低すぎても効率的でない。β-グルカン濃度は、0.1mg/ml〜20mg/ml程度、好ましくは0.5mg/ml〜10mg/ml程度、さらに好ましくは1mg/ml〜5mg/ml程度が良い。
次いで、グルカンを含む溶液に酸を添加して中和する。中和は、不溶物の除去前に行ってもよい。酸は、医薬や食品添加物として使用できるものであればよく、特に限定されない。例えば、塩酸、燐酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸などを使用できる。酸の使用量は、溶液又は培養液の液性が中性(pH5〜8程度)になるような量とすればよい。即ち、中和はpH7に合わせることを必ずしも要さない。
pH12以上のアルカリ処理後、中和して得られるβ-1,3-1,6グルカンは、30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が通常200cP以下、場合によっては、100cP以下、50cP以下、又は10cP以下である。粘度は製造方法ないしは精製方法によって変動する。
アルカリ処理された低粘度のβ-1,3-1,6グルカンは、中和しても粘度が高くなることがない。さらに、常温(15〜35℃)では、液性をpHが4を下回るような酸性にしても、粘度が高くなることがない。
また、培養上清をアルカリ処理、及び中和した後に、菌体などを除去するのに代えて、培養上清から菌体などを除去した後に、アルカリ処理、及び中和を行うこともできる。
得られるグルカン水溶液からグルカンより低分子量の可溶性夾雑物(例えば塩類など)を除去する場合は、例えば限外ろ過を行えばよい。
また、アルカリ処理、除菌した後、中和せずに、アルカリ性条件下で限外ろ過することもでき、これにより透明性、熱安定性、長期保存性に一層優れる精製β−1,3−1,6グルカンが得られる。アルカリ性条件は、pH10以上、好ましくは12以上であり、pHの上限は通常13.5程度である。
このようにして得られる水溶液に含まれるβ-1,3-1,6グルカンは、乾燥させて固形製剤にする場合も、また水溶液のまま製剤として使用する場合も、一旦、水溶液から析出させることができる。β-1,3-1,6グルカンの析出方法は、特に限定されないが、例えば、限外ろ過などにより濃縮してグルカン濃度を1w/w%以上にした水溶液に、エタノールのようなアルコールを、水溶液に対して容積比で等倍以上、好ましくは2倍以上添加することにより、β-1,3-1,6グルカンを析出させることができる。この場合にpHをクエン酸などの有機酸によりpHを酸性、好ましくはpH4未満、さらに好ましくはpH3−3.7に調製して、エタノールを添加すると高純度のβ-1,3-1,6グルカンの粉末を得ることができる。
β-1,3-1,6グルカンを低粘度化することにより、限外ろ過などによる濃縮を容易に行えることから、アルコール沈殿に使用するアルコール量を少なくすることができる。
固形物として得る場合は、低粘度β-1,3-1,6グルカン水溶液を直接乾燥させてもよく、析出させたβ-1,3-1,6グルカンを乾燥させてもよい。乾燥は、噴霧乾燥法、凍結乾燥法など公知の方法で行うことができる。
(2)金属ナノ粒子の水分散液の製造方法
上記説明した本発明の金属ナノ粒子の水分散液は、以下の態様によって製造することができる。
一の態様としては、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)を混合することによって水分散液が得られる。即ち、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)を混合する工程を含む製造方法である。上記方法にて作成した水分散液は、そのまま使用することができ、また、後述する中和工程によって中和して用いることもできる。
別の態様としては、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とを混合することによって水分散液が得られる。即ち、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とを混合する工程を含む方法、又は金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてアルカリ性((好ましくはpH9以上、さらに好ましくはpH10以上)に調整した溶液中で混合する工程(混合工程)と、得られる溶液に中和剤(d)を添加して中和する工程(中和工程)とを含む方法によって製造することができる。なお、中和後の分散液のpHとしては、pH4〜9の範囲であればよく、特に、医薬品・化粧品向けの用途に用いるものは、pH5〜7.5の範囲であることが好ましい。
水分散液の製造方法において、β-1,3-1,6グルカン(c)を用いる場合、β-1,3-1,6グルカン(c)は、アミン類を用いて調整したアルカリ条件下(好ましくはpH9以上、さらに好ましくはpH10以上)に付すことが好ましい。また、アミン類を用いて溶液のpHを調整する際に、アミン類以外のアルカリを合わせて用いてもよい。
(2−1)混合工程
本発明の混合工程は、金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)を混合する工程、又は金属ナノ粒子(a)と、アミン類(b)とβ-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とを混合する工程、若しくは金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてアルカリ性に調整した溶液中で混合する工程を例示することができる。
混合工程において、β-1,3-1,6グルカン(c)を用いる場合は、アミン類を用いてpHを調整したアルカリ性(好ましくはpH9以上、さらに好ましくはpH10以上)の溶液中に金属ナノ粒子(a)とβ-1,3-1,6グルカン(c)をそれぞれ添加した後、後述する攪拌方法によって攪拌混合させてもよく、或いはアミン類を用いてpHを調整したアルカリ性のβ-1,3-1,6グルカン溶液を調製し、そのアルカリ溶液中に金属ナノ粒子を直接添加し、又は金属ナノ粒子を懸濁した懸濁液を添加して攪拌混合させてもよく、或いは金属ナノ粒子の懸濁液を調製し、β-1,3-1,6グルカンの粉体及びアミン類を添加、又はアミン類を用いてpHを調整したアルカリ性のβ-1,3-1,6グルカン溶液を添加して攪拌混合させてもよい。ここでいう、金属ナノ粒子の「懸濁液」とは、金属ナノ粒子を溶液に添加し、攪拌することで一時的に溶液中に分散状態となっているものを意味し、一定時間が経過すると金属ナノ粒子が沈降し、分散状態を保持することができないものをいう。
また、混合工程においては、金属ナノ粒子の懸濁液を調製し、その懸濁液にアミン類を添加して混合してもよい。この場合、調製した懸濁液をディスパーなどの攪拌機を用いて攪拌しながら、アミン類を添加することにより混合することもできる。さらに、混合した後に、必要に応じて適宜、溶液のpHを調整してもよい。
本発明の混合工程における攪拌方法は、金属ナノ粒子とβ-1,3-1,6グルカンをアルカリ溶液中で均一に分散できる方法であれば、特に限定されない。具体的には、メカニカルスターラー、ディスパー、マグネティックスターラー、超音波分散機、遊星ミル、ボールミル、三本ロール、ビーズミルなどを例示することができる。なかでも、分散性の点で、ビーズミル、ディスパー、ボールミル、超音波分散機が好ましい。
混合工程における温度は10〜40℃であればよく、攪拌時間は0.1〜2時間であればよい。上記範囲であれば、溶液中で均一に金属ナノ粒子とβ-1,3-1,6グルカンを混合することができる。
(2−2)金属ナノ粒子の懸濁液の調製方法
本発明において、混合工程において金属ナノ粒子の懸濁液を用いる場合、混合する際の溶液のpH調整のし易さの点で、懸濁液のpHを、アミン類を用いてアルカリ性(好ましくはpH9以上、さらに好ましくはpH10以上)に調整したものであることが好ましい。pH調整に用いるアミン類として、例えば、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、アルキレンアミン類などを例示することができ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、アミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルエタノールアミン、アミノエトキシエタノール、及びN,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−n−ブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジ−n−ペンタノールアミン、ジ−n−ヘキサノールアミン、トリプロパノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトライソプロパノールエチレンジアミンシクロヘキシルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類;エチレンジアミン,トリメチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミン,ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキレンアミン類を例示することができる。中でも作業環境の点で、アルカノールアミン類が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンがより好ましい。
また、金属ナノ粒子の懸濁液の調製方法としては、溶液に金属ナノ粒子を添加し、上述した攪拌方法によって、調製することができる。中でも、高速攪拌機による攪拌方法が好ましい。攪拌条件(温度、時間など)は使用する金属ナノ粒子の種類や量に応じて適宜選択しておこなえばよい。上記方法により調製した金属ナノ粒子の懸濁液を混合工程に用いることができる。
(2−3)β-1,3-1,6グルカンの溶液の調製方法
本発明の混合工程において、β-1,3-1,6グルカン(c)を用いる場合、β-1,3-1,6グルカンの溶液は、混合する際の溶液のpH調整のし易さの点で、溶液のpHを、アミン類を用いてアルカリ性(好ましくはpH9以上、さらに好ましくはpH10以上)に調整したものであることが好ましい。pH調整に用いるアミン類として、例えば、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、アルキレンアミン類などを例示することができ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、アミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルエタノールアミン、アミノエトキシエタノール、及びN,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−n−ブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジ−n−ペンタノールアミン、ジ−n−ヘキサノールアミン、トリプロパノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトライソプロパノールエチレンジアミンシクロヘキシルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類;エチレンジアミン,トリメチレンジアミン,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,テトラエチレンペンタミン,ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキレンアミン類を例示することができる。中でも作業環境の点で、アルカノールアミン類が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンがより好ましい。
β-1,3-1,6グルカンの溶液の調製方法としては、溶液に粉体、又は水溶液のβ-1,3-1,6グルカンを添加し、上述した攪拌方法によって調製することができる。なお、溶液のpH調整は、β-1,3-1,6グルカンを添加する前の水にアミン類を添加して調製してもよく、β-1,3-1,6グルカンを添加しながら、同時にアミン類を添加して調製してもよく、β-1,3-1,6グルカンを添加した後に、アミン類を添加して調製してもよい。
(2−4)中和工程
本発明における中和工程は、上述した混合工程で得られるアルカリ性の溶液に中和剤(d)を添加して中和することによって、金属ナノ粒子の水分散液が得られる。なお、中和の際の攪拌は、上述した攪拌方法によって行うことができる。
中和工程に用いる中和剤(d)としては、一般に市販されているものを用いることができ、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、不飽和脂肪族カルボン酸、飽和脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、アルドン酸、ウロン酸などをの有機酸を例示することができる。
飽和脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などのモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸、クエン酸、イソクエン酸などのトリカルボン酸を例示することができる。
不飽和脂肪族カルボン酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸など例示することができる。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸などを例示することができる。アルドン酸としては、グルコン酸、マンノン酸、ガラクトン酸、リボン酸、キシロン酸、アラボン酸、セロビオン酸、マルトビオン酸、マルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトペンタオン酸、メリビオン酸、ラクトビオン酸などを例示することができる。ウロン酸としては、グルクチュロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸などを例示することができる。
中和に使用する中和剤(d)の添加量は、目的とするpHに応じて適宜選択すればよい。また、中和の際に発熱するため、必要に応じて冷却しながら中和をおこなってもよい。また、中和に用いる酸の添加方法としては、必要量を一括で添加してもよく、少量ずつ分けて添加して行うことができる。また、上述した酸を2種以上組合せて用いることもできる。
以上の操作により、金属ナノ粒子が分散した水溶液(水分散液)が得られる。本発明において、金属ナノ粒子が「分散した水溶液(水分散液)」とは、一定時間が経過しても水溶液中に金属ナノ粒子が均一に分散した状態で保たれたものを意味する。
(3)その他
本発明の水分散液は、安全性が高く、医薬外用剤、医薬部外品外用剤、又は化粧品に一般に使用されている基剤及び添加剤に配合して、医薬外用組成物、医薬部外品外用組成物、又は化粧品組成物として応用可能なものである。
また、本発明の水分散液は、触媒材料、磁気記録材料、導電膜形成材料、半導体膜形成材料、顔料などの各種用途に使用することができる。例えば、本発明の水分散液を基板に塗布した後、20〜600℃の温度で乾燥、焼成し被膜を形成することができる。この基板は、電極、配線、回路などを構成するのに一般に用いられている、乾燥・焼成によって焼失、劣化しない耐熱性のものであれば良い。具体的には、例えば、鉄、銅、アルミニウムなどの金属基板、ポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂基板、ガラス基板などを挙げることができる。塗布方法は公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法などが挙げられる。また、インクジェットヘッドを用いて水分散液を基板上の必要な部分のみに塗布することもできる。塗布後に約20〜600℃、好ましくは約100〜450℃、更に好ましくは約100〜350℃で乾燥、焼成することができる。焼成時の雰囲気は、不活性雰囲気または還元性雰囲気であることが好ましい。焼成時間は約0.1〜3時間、好ましくは約0.2〜2時間である。得られた被膜は配線として用いることができる。
以下、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例(精製β-1,3-1,6グルカンの製造)
(1)低粘度β-1,3-1,6グルカンの調製
(1-1)β−グルカンの培養産生
後掲の表1に示す組成を有する液体培地100mlを500ml容量の肩付きフラスコに入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌を行った後、オーレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)GM-NH-1A1株(FERM P-19285)を同培地組成のスラントより無菌的に1白金耳植菌し、130rpmの速度で通気攪拌しつつ、30℃で24時間培養することにより種培養液を調製した。
次いで、同じ組成の培地200Lを300L容量の培養装置(丸菱バイオエンジ製)に入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌し、上記のようにして得られた種培養液2Lを無菌的に植菌し、200rpm、27℃、40L/minの通気攪拌培養を行った。なお、培地のpHは水酸化ナトリウム及び塩酸を用いてpH4.2〜4.5の範囲内に制御した。96時間後の菌体濁度はOD660nmで23ODで、多糖濃度は0.5%(w/v)で、硫黄含量から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
<多糖濃度測定>
多糖濃度は、培養液を数mlサンプリングし、菌体を遠心分離除去した後、その上清に最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを加えて多糖を沈殿させて回収した後、イオン交換水に溶解し、フェノール硫酸法で定量した。
<置換スルホ含量測定>
同様にして菌体を除去した培養上清にエタノールを最終濃度が66%となるように添加し、β−グルカンを沈殿回収した。その後、再度イオン交換水に溶解し、再度遠心分離後、その上清に最終濃度が0.9%になるように食塩を加えた後、再度66%エタノールでβ−グルカンを回収した。このβ−グルカン回収精製操作を更に2回繰り返し、得られたβ−グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ−グルカン粉末を得た。
このβ−グルカン粉末を燃焼管式燃焼吸収後、イオンクロマト法で組成分析した結果、S含量は239mg/kgであり、この値から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
Figure 0006008424
(1−2)アルカリ処理
上記のようにして得られた培養液の粘度をBM型回転粘度計(東京計器製)を用いて、30℃、12rpmで測定したところ、1500cP(mPa・s)であった。測定に用いるロータは粘度にあわせて適当なものを選択した。
この培養液に水酸化ナトリウム最終濃度が2.4%(w/v)となるように25%(w/w)水酸化ナトリウムを添加し攪拌したところ(pH13.6)、瞬時に粘度が低下した。引き続いて50%(w/v)クエン酸水溶液でpH5.0となるように中和してから、濃度0.5(w/v%)における粘度を測定したところ、そのときの粘度(30℃)は20cP(mPa・s)であった。
次いで、この培養液にろ過助剤としてKCフロック(日本製紙社製)を1wt%添加し、薮田式ろ過圧搾機(薮田機械製)を用いて菌体を除去し、最終的に培養ろ液(約230L)を得た。その多糖濃度は0.5%(w/v)で、ほぼ100%の回収率であった。
(1−3)β−グルカン水溶液の脱塩
上記のβ−グルカン水溶液(培養ろ液)を0.3%に希釈後、限外ろ過(UF)膜(分子量カット5万、日東電工社製)を用いて脱塩を行い、最終的にナトリウムイオン濃度を20mg/100mlに落とした後、50%(w/v)クエン酸水溶液によりpHを3.5に調整した。
引き続いて、ホット充填用加熱ユニット(日阪製作所製)を用いて95℃で、3分間保持することにより殺菌処理を行い、最終製品のβ−グルカン水溶液を得た。この時のβ−グルカンの濃度をフェノール硫酸法により測定したところ0.22%(w/v)であった。また、培養液からのトータル収率は約73%であった。
<硫黄含有量の測定>
また、得られたβ-グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ−グルカン粉末を得た。本β-グルカンの組成分析結果からS含量は330mg/kgであり、これから計算される置換スルホ酢酸含量は0.12%であった。
<結合状態の確認>
また、脱塩を行った上記培養ろ液について、コンゴーレッド法によって、480nmから525nm付近への波長シフトを確認することができたのでβ−1,3結合を含むグルカンを含有していることが証明された(K. Ogawa, Carbohydrate Research, 67, 527-535 (1978)、今中忠行 監修, 微生物利用の大展開, 1012-1015, エヌ・ティー・エス(2002))。そのときの極大値へのシフト差分はΔ0.48/500μg多糖であった。
上記培養ろ液15mlを取り出し、30mlのエタノールを添加し、4℃、1000rpm、10minで遠心して、沈殿する多糖を回収した。66%エタノールで洗浄し、4℃、1000rpm、10分間遠心して、沈殿する多糖に2mlのイオン交換水と、1mlの1N水酸化ナトリウム水溶液を添加撹拌後、60℃、1時間保温して沈殿を溶解させた。次に-80℃にて凍結後、一晩、真空凍結乾燥を行い、乾燥後の粉末を1mlの1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、2次元NMRに供した。
2次元NMR(13C−H COSY NMR)106ppmと相関関係を有するH NMRスペクトルを図1に示す。このスペクトルにおいて4.7ppmと4.5ppm付近との2つのシグナルが得られた。
この結果、本β−グルカンがβ-1,3-1,6グルカンであることが証明された(今中忠行 監修、微生物利用の大展開、1012-1015、エヌ・ティー・エス(2002))。それぞれのH NMRシグナルの積分比から、β-1,3結合/β-1,6結合の比は1.15であることが判明した。従って、主鎖のβ-1,3結合に対する側鎖のβ-1,6結合の分岐度は、約87%である。
<粒度測定>
次に、レ−ザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製LA−920)を用いて培養液の粒度を測定したところ、粒子としては0.3μmと100μm程度の大きさのところにピ−クが見られた。続いて、超音波を照射しながら、粒度測定を行うと、100μmのピ−クはみるみるうちに消失し、0.3μmのピ−クが増え、最終的に0.3μmのみとなった。超音波照射したときの培養液の粒度分布を図2に示す。
0.3μmのピークはβ-1,3-1,6グルカンの一次粒子によるピークであり、100〜200μmのピークはβ-1,3-1,6グルカンの一次粒子が凝集した二次粒子によるピークであると考えられる。
また、二次粒子はマグネチックスターラ−による攪拌、軽い振とうでも同じように消失し、容易に砕けて一次粒子になることが確認された。よって、二次粒子は非常に緩い凝集(緩凝集状態)と考えられる。
<分子量測定>
また、東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))を用いて、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、溶解β-1,3-1,6グルカンとβ-1,3-1,6グルカンの1次粒子とを含む溶液の分子量を測定したところ、溶解β-1,3-1,6グルカンに由来する2〜30万のピークの低分子画分と、1次粒子に由来する見かけ上50〜250万の高分子画分との二種類が検出された。分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
水溶性β-1,3-1,6グルカンと微粒子とを分離するため、上記の微粒子画分と可溶性画分とを含むβ-1,3-1,6グルカン溶液をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。このことから、高分子画分はβ-1,3-1,6グルカンの一次粒子や一次粒子が凝集した二次粒子に相当することが判明した。よって、水溶性β-1,3-1,6グルカンの分子量は2〜30万と考えられる。
(2)粉末化β-グルカンの調製
(1−2)において、アルカリ処理及び菌体除去処理により調製された微粒子β-1,3-1,6グルカンを含むβ-1,3-1,6グルカン水溶液に、最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを添加して、多糖グルカンを沈殿させ、遠心分離法により回収した。次いで凍結乾燥法によりエタノールと水分を除去し、乾燥β-1,3-1,6グルカンを得た。そのときの収率はエタノール沈殿前の全糖濃度と比較して95%以上であった。
次いで、得られた乾燥β-1,3-1,6グルカンを最終濃度が0.3%(w/v)となるように水に溶解分散後、前述したと同様にして東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ 75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))により0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルクロマトグラフィーを行い、分子量を測定したところ、得られた多糖の分子量は2〜30万のピークの低分子画分と見かけ上50〜250万の高分子画分の二種類からなることが判明した。ここで、分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
一方、水溶性β-1,3-1,6グルカンと微粒子を分離するため、本法で調製したβ-1,3-1,6グルカン水溶液(微粒子と可溶化グルカンを含むもの)をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。よって、本法により得られたβ-1,3-1,6グルカンを乾燥させても、再溶解させれば乾燥前のβ-1,3-1,6グルカンと同様の物理的挙動を再現することが実証された。
(3)高純度β-1,3-1,6グルカン粉末の製造
(1)においてアルカリ処理を行い低粘度化した培養液(多糖濃度0.5%(5mg/ml))90Lを50%クエン酸水溶液9kgで中和後、ろ過助剤(日本製紙ケミカル製粉末セルロ−スKCフロック)を1.8kgプレコートした薮田式濾過圧搾機40D-4を通して、菌体を取り除いた。ろ液を限外ろ過スパイラルエレメント(日東電工製NTU3150−S4)で9Lまで濃縮した。本濃縮液を攪拌しながら、pHを3.0-3.5にクエン酸により調整して、エタノール18Lを加え、グルカン/エタノール/水スラリーを得た。スラリーの粘度はBM型粘度計で22mPa・s(30℃)であった。室温で3時間静置し、上澄み液(エタノール/水)約17Lを取り除いた。残ったスラリーの粘度は45mPa・s(30℃)であった。本濃縮スラリー10Lを坂本技研型の噴霧乾燥装置R-3を用いて噴霧乾燥し、360gのβ-1,3-1,6グルカン粉末を得た(回収率80%)。得られたβ-1,3-1,6グルカンの純度はNMRスペクトルの解析の結果、90%以上であった。
なお、得られたβ-1,3-1,6グルカン粉末を1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、NMRスペクトルを測定したところ、H NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを得た。また、得られたβ-1,3-1,6グルカン粉末の濃度0.5(w/v%)の水溶液の粘度は200cP以下であった(pH5.0、30℃)。上記記載の方法によって得られた精製β-グルカンを下記の試験に供した。
(4)水分散液の製造方法
以下に実施例及び比較例に用いた金属ナノ粒子を示す。
金属ナノ粒子1;シリカ被覆酸化チタンSTR-100W(堺化学工業(株)製)(結晶型ルチル、平均粒子径;16nm)
金属ナノ粒子2;シリカ被覆酸化チタンMT-100WP(テイカ(株)製)(結晶型ルチル、平均粒子径;11nm)
金属ナノ粒子3;酸化チタンTTO-55A(石原産業(株)製)(結晶型ルチル、平均粒子径;35nm;)
金属ナノ粒子4;シリカ被覆酸化亜鉛 FINEX 30W(堺化学工業(株)製)(平均粒子径;35nm)
(実施例1)
水分散液1(酸化チタンとアミンを含む水分散液)の製造
イオン交換水64mlに2−アミノ−2メチル−1−プロパノールを1gと金属ナノ粒子1を35g添加し、ビーズミル(大平システム(株)製;ビーズ径0.8mmのジルコニアビーズ150mlを使用)を用いて、攪拌条件1000rpm、温度35℃で、120分間混合し、水分散液1 100ml(水分散液の金属濃度35%、アミン濃度1%)を得た。得られた水分散液1の分散性を測定した。結果を表2に示す。
(実施例2)
水分散液2(酸化チタンとアミンとβ-グルカンを含む水分散液)の製造
(β-グルカン溶液の調製)
以下の方法を用いてβグルカン溶液を調製した。
2−アミノ−2メチル−1−プロパノールを1.0g用いて、pH10.5に調整したイオン交換水96mlに上述した方法によって得られたβ-1,3-1,6グルカン粉末3.0gを添加し、ホモディスパー(プライミクス(株)製)を用いて、回転数1000rpm、温度85℃で、3時間攪拌処理を行い、3%β-グルカン溶液100mlを得た。
(酸化チタンの水分散液の調整)
以下の方法を用いて酸化チタンの水分散液2を調製した。
イオン交換水123.2mlに上記方法により調整した3%β-グルカン溶液6.8mlと金属ナノ粒子1(シリカ被覆酸化チタンSTR-100W 堺化学工業(株)製)を70.0g添加し、ビーズミル(太平システム(株)製;ビーズ径0.8mmのジルコニアビーズ150mlを使用)を用いて、攪拌条件1000rpm、温度35℃で、120分間混合し、水分散液2 200ml(水分散液の酸化チタン濃度35%、グルカン濃度0.1%、アミン濃度0.034%、pH10.0)を得た。得られた水分散液2(中和前)の分散性を測定した。結果を表2に示す。
中和工程
上記で得られた水分散液2 100mlをホモディスパー(プライミクス(株)製)を用いて、回転数800rpmで撹拌しながら、中和剤として25%クエン酸溶液を使用して、中和を実施し、酸化チタンとβ-グルカンとアミンを含む水分散液2 100ml(水分散液のpH6.7)を得た。得られた水分散液2(中和後)の分散性を測定した。結果を表2に示す。
(実施例3)
水分散液3の製造
金属ナノ粒子1を金属ナノ粒子2(シリカ被覆酸化チタンMT-100WPテイカ(株)製、使用量70.0g)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で酸化チタン水分散液3 200ml(水分散液のpH10.0)を得た。
中和工程
上記で得られた水分散液3 100mlをホモディスパー(プライミクス(株)製)を用いて、回転数800rpmで撹拌しながら、中和剤として25%クエン酸溶液を使用して、中和を実施し、酸化チタンとβ-グルカンとアミンを含む水分散液3 100ml(水分散液のpH7.0)を得た。得られた水分散液3の分散性を測定した。結果を表2に示す。
(実施例4)
水分散液4の製造
金属ナノ粒子1を金属ナノ粒子3(酸化チタンTTO-55A 石原産業(株)製、使用量70.0g)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で水分散液4 200ml(水分散液のpH10.0)を得た。
中和工程
上記で得られた水分散液4 100mlをホモディスパー(プライミクス(株)製)を用いて、回転数800rpmで撹拌しながら、中和剤として25%クエン酸溶液を使用して、中和を実施し、酸化チタンとβ-グルカンとアミンを含む水分散液4 100ml(水分散液のpH6.9)を得た。得られた水分散液4の分散性を測定した。結果を表2に示す。
(実施例5)
水分散液5(酸化亜鉛とアミンとβ-グルカンを含む水分散液)の製造
金属ナノ粒子1を金属ナノ粒子4(シリカ被覆酸化亜鉛FINEX 30W 堺化学工業(株)製、使用量69.2g)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で水分散液5 200ml(水分散液のpH9.0)を得た。
中和工程
上記で得られた水分散液5 100mlをホモディスパー(プライミクス(株)製)を用いて、回転数800rpmで撹拌しながら、中和剤として25%クエン酸溶液を使用して、中和を実施し、酸化亜鉛とβ-グルカンとアミンを含む水分散液5 100ml(水分散液のpH7.2)を得た。得られた水分散液5の分散性を測定した。結果を表2に示す。
(比較例1)
水懸濁液(酸化チタンを含む懸濁液)
イオン交換水130gと金属ナノ粒子1(酸化チタンSTR-100W(堺化学工業製))70.0gを添加し、ビーズミル(太平システム(株)製;ビーズ径0.8mmのジルコニアビーズ150mlを使用)を用いて、攪拌条件1000rpm、温度35℃で、120分間混合し、水懸濁液(溶液のpHは7.2)を得た。得られた水懸濁液の分散性を測定した。結果を表2に示す。
評価方法
(水分散性の評価)
各水分散液50mlを100mlのガラス瓶に秤量し密栓した。50℃の恒温器で14日間静置した後、粒子の沈降状態を観察し、以下のように評価した。
○・・・沈降なし。
×・・・沈降が確認され、底部に粘土質の沈殿が発生する。
各実施例、及び比較例の評価結果を表2に示す。
Figure 0006008424
表2に示すように、アミンと金属ナノ粒子、又はアミンと金属ナノ粒子とβグルカンを含む分散液は、良好な分散性を保持していた。また、中和によって、分散性への影響は確認されなかった。
本発明の金属ナノ粒子の水分散液は、有機溶剤を用いず製造でき、水中での分散性に優れるため、医薬及び化粧品、として利用可能なものである。

Claims (4)

  1. 金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてpH10以上に調整した溶液中で混合する工程とを含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法であって、
    金属ナノ粒子(a)が、白金、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウムのいずれかであり、
    アミン類(b)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、及びトリプロパノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
  2. 金属ナノ粒子(a)と、β-1,3結合に対するβ-1,6結合の分岐度が50〜100%であるβ-1,3-1,6グルカン(c)とをアルカリとしてアミン類(b)を用いてpH10以上に調整した溶液中で混合する工程と、混合した溶液に中和剤(d)を添加して中和する工程とを含む、金属ナノ粒子の水分散液の製造方法であって、
    金属ナノ粒子(a)が、白金、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウムのいずれかであり、
    アミン類(b)が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパール、ジプロパノールアミン、及びトリプロパノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
  3. 前記金属ナノ粒子(a)が、酸化チタン又は酸化亜鉛である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記β-1,3-1,6グルカン(c)が、オーレオバシジウム属に属する微生物由来である。請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
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