以下、感光性樹脂組成物、保護膜および半導体装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物を説明するのに先立って、感光性樹脂組成物を用いて形成された膜を保護膜(チップコート膜)として備える半導体装置について説明する。
<半導体装置>
図1は、半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、QFP(Quad Flat Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ(半導体素子)20と、半導体チップ20を接着層60を介して支持するダイパッド30と、半導体チップ20を保護する保護膜70と、半導体チップ20と電気的に接続されたリード40と、半導体チップ20を封止するモールド部50とを有している。
ダイパッド30は、金属基板で構成され、半導体チップ20を支持する支持体として機能を有するものである。
このダイパッド30は、例えば、Cu、Fe、Niやこれらの合金(例えば、Cu系合金や、Fe−42Niのような鉄・ニッケル系合金)等の各種金属材料で構成される金属基板や、この金属基板の表面に銀メッキや、Ni−Pdメッキが施されているもの、さらにNi−Pdメッキの表面にPd層の安定性を向上するために設けられた金メッキ(金フラッシュ)層が設けられているもの等が用いられる。
また、ダイパッド30の平面視形状は、通常、半導体チップ20の平面視形状に対応し、例えば、正方形、長方形等の四角形とされる。
ダイパッド30の外周部には、複数のリード40が、放射状に設けられている。
このリード40のダイパッド30と反対側の端部は、モールド部50から突出(露出)している。
また、リード40についてモールド部50からの露出部には、その表面に金メッキ、錫メッキ、半田メッキ、半田コート等の表面処理が施されていてもよい。これにより、マザーボードが備える端子に半田を介して半導体装置10を接続する場合に、半田とリード40との密着性を向上させることができる。
さらに、このようなリード40の表面処理は、モールド部50からの露出部に限らず、リード40全体に施されていてもよい。
リード40は、導電性材料で構成され、例えば、前述したダイパッド30の構成材料と同一のものを用いることができる。
ダイパッド30には、樹脂組成物(液状樹脂組成物)の硬化物で構成される接着層60を介して半導体チップ20が固着(固定)されている。
接着層60は、ダイパッド30と半導体チップ20とを接続する機能を有するとともに半導体チップ20の駆動時に生じる熱をダイパッド30側に伝達(放熱)する機能を有するものである。
この接着層60には、例えば、銀粉、アルミニウム粉、ニッケル粉のような金属粉や、シリカ粉末、アルミナ粉末、チタニア粉末のようなセラミック粉末を充填材として含有する、エポキシ樹脂、アクリル系化合物、ポリイミド樹脂のような熱硬化性樹脂で構成されるもの等が好適に用いられる。
半導体チップ20は、その上面に、電極パッド21を有しており、この電極パッド21とリード40とが、ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各リード40とが電気的に接続されている。
このワイヤー22の材質は、特に限定されないが、ワイヤー22は、例えば、Au線やAl線で構成することができる。
また、半導体チップ20には、電極パッド21が露出するように保護膜(チップコート膜)70が形成されている。
この保護膜70は、モールド部を硬化収縮させて形成する際に半導体チップを保護する機能、この半導体チップを基板上に実装する半田リフロー工程における熱衝撃およびモールド材の急激な熱膨張ストレスから保護する機能等を有するものである。
本発明では、この保護膜70が本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されるが、この感光性樹脂組成物の構成材料については、後に詳述する。
さらに、ダイパッド30、ダイパッド30の上面側に設けられた各部材およびリード40の内側の部分は、モールド部50により封止されている。そして、その結果として、リード40の外側の端部がモールド部50から突出している。
このモールド部50は、例えば、エポキシ系樹脂等の各種樹脂材料で構成することができる。
<半導体装置の製造方法>
このような半導体装置10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
[1]まず、ダイパッド(支持体)30と、複数のリード(端子)40とを備えるリードフレームを用意する。
[2]次に、これとは別に、電極パッド21が露出するようにパターニングされた保護膜70が設けられた半導体チップ20を用意する。
このような保護膜70の半導体チップ20上への形成は、例えば、次のようにして行うことができる。
[2−1]まず、本発明の感光性樹脂組成物を液状材料(ワニス)として用意し、半導体チップ20の上面のほぼ全体を覆うように、この液状材料を、塗布法を用いて供給する。
塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布(スピンコート)法、スプレーコーターを用いた噴霧塗布法、浸漬法、印刷法、ロールコーティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、スピンコート法を用いた場合に、本発明の感光性樹脂組成物が好ましく用いられる。すなわち、感光性樹脂組成物の粘度の経時変化が少ないことから、均一な膜厚の保護膜70を得るための供給条件を粘度変化に応じて変更する手間が省けるため、保護膜70を形成する際の作業性を向上させることができる。
また、塗布量は、形成される保護膜70の最終平均膜厚が1〜20μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体チップ20の保護表面膜としての機能を十分に発揮することができなくなるおそれがあり、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるおそれがあるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。
[2−2]次いで、この液状材料を乾燥することにより、半導体チップ20の上面に、感光性樹脂組成物に含まれる構成材料を含有する膜を形成する。
なお、液状材料を乾燥させる際の乾燥温度は、好ましくは40〜150℃程度、より好ましくは80〜130℃程度に設定される。これにより、感光剤[B]が熱分解してしまうのを効果的に防止しつつ、膜中に残留する溶媒を確実に除去することができる。
また、乾燥する際の処理時間は、1〜30分程度であるのが好ましく、2〜5分程度であるのがより好ましい。
[2−3]次いで、電極パッド21に対応する位置に形成された前記膜を、電極パッド21の形状に対応したマスクを用いて、選択的に露光・感光した後、アルカリ水溶液でエッチングすることで現像する。
これにより前記膜が電極パッド21を露出した形状にパターニングされる。
露光・感光の際に、感光性樹脂組成物を用いて形成された膜に照射する光は、特に限定されないが、通常g線(436nm)およびi線(365nm)が用いられるが、特に、i線(365nm)が好適に用いられる。これにより、膜を微細な形状に、確実にパターニングすることができる。さらに、i線を室温で照射する場合、エネルギー量は100〜5000mJ/cm2程度に設定される。
なお、感光性樹脂組成物を用いて形成された膜は、その膜厚を10μmとした際、i線(365nm)における光透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。これにより、電極パッド21を露出した形状に前記膜をより確実にパターニングすることができる。
また、アルカリ水溶液(アルカリ現像液)としては、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、エタノールアミン等の有機アルカリの他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、半導体プロセスで使用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好適に用いられる。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液では、分子構造中に金属原子が含まれず、形成された半導体装置10中に金属原子が残留することがないため、残留金属が電気特性に悪影響をおよぼすおそれがない。この際、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の濃度は、0.05〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度、より好ましくは2.38重量%に設定される。そして、このアルカリ水溶液を用いて室温で10秒〜10分間現像し、さらに純水でリンスすることにより鮮明なポジ型パターンを得ることができる。
なお、場合によっては上記アルカリ水溶液にアルコール類を添加してもよい。使用可能なアルコール類として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が例として挙げられる。
[2−4]次いで、このパターニングされた前記膜に含まれるポリアミド樹脂、すなわちベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有する樹脂を、閉環反応(硬化反応)して、ベンゾオキサゾール構造および/またはイミド構造を有する樹脂とすることにより、保護膜70を得る。
なお、ベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有する樹脂の閉環反応は、例えば、パターニングされた膜を加熱することにより、円滑に進行させることができる。
膜を加熱する温度は、180〜400℃の範囲であるのが好ましく、250〜350℃の範囲であるのがより好ましい。
加熱時間は、1〜60分の範囲であるのが好ましく、10〜30分の範囲であるのがより好ましい。
また、加熱する際の雰囲気は、大気雰囲気であってもよいが、窒素等の不活性雰囲気または減圧雰囲気であるのが好ましい。これにより、閉環反応をより確実に進行させることができる。
保護膜70の平均膜厚は、1〜20μm程度であるのが好ましく、5〜10μm程度であるのがより好ましい。これにより、前述した保護膜としての機能を確実に発揮させることができる。
[3]次に、例えば、市販のダイボンダー等の吐出装置を用いて、ダイパッド30上に、硬化前の接着層60の構成材料を供給する。
[4]次に、この硬化前の接着層60の構成材料が介在するように、ダイパッド30上に、保護膜70が設けられている面を上側にして、半導体チップ20を載置し、加熱する。これにより、硬化前の接着層60の構成材料が硬化して、その硬化物で構成される接着層60が形成される。その結果、接着層60を介して、ダイパッド(支持体)30上に半導体チップ20が接合される。
[5]次に、ワイヤーボンディングにより、保護膜70から露出する電極パッド21とリード40との間に導電性ワイヤー22を形成する。これにより、電極パッド21とリード40とが電気的に接続される。
[6]次に、例えば、トランスファー成形等によりモールド部50を形成する。
その後、リードフレームから樹脂止めのタイバーを打ち抜き、トリム&フォーム工程を行い、半導体装置10が製造される。
<保護膜70>
さて、このような半導体装置10において、保護膜70は、前述した保護膜70としての機能を発揮させることを目的に、より高い弾性率さらにはより低い吸水率を有するもの、また、より微細な形状にパターニングし得るように、より優れた透光性を有するものが求められている。
かかる特性に優れたものを得ることを目的に、近年、この保護膜(チップコート膜)として、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成される、ポリベンゾオキサゾールを含有する膜について種々の研究がなされている。
具体的には、前記背景技術で説明したように、感光性樹脂組成物を、ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)と、感光剤と、密着助剤とを含有する構成とするものが提案されている。
かかる感光性樹脂組成物では、感光性樹脂組成物を用いて形成される膜の弾性率、吸水率および透光率の改善が図られるとともに、さらに、その半導体チップ(基板)20への密着性を向上させることができる。
しかしながら、本発明者の検討により、感光性樹脂組成物を、密着助剤を含有する構成とすることにより、密着助剤の種類によっては、感光性樹脂組成物の粘度が経時的に変化することが判ってきた。
このように粘度が経時的に変化すると、前記工程[2−1]、[2−2]で説明したように、半導体チップ20の上面に、感光性樹脂組成物をスピンコート法のような塗布法を用いて供給した後、乾燥することにより形成した膜の成膜精度が低下する。なお、塗布法を用いて半導体チップ20の上面に感光性樹脂組成物を供給する際に、その粘度変化に応じて供給条件を変更することで、均一な膜厚の膜を形成することができるが、この場合、粘度変化の大きさに応じて供給条件を設定する必要があり、その作業性が複雑化するという問題が生じる。
かかる問題点について、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、感光性樹脂組成物を、ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)、感光剤および密着助剤の他に、さらに後述する式(C1)で表わされる反復単位(構造単位)と、式(C2)で表わされる反復単位(構造単位)とを有するフェノール樹脂を含有する構成とすることにより、感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化を的確に抑制または防止することができることを見出した。
すなわち、ベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有するポリアミド樹脂(A)と、光により酸を発生する感光剤(B)と、下記式(C1)で表される反復単位と下記式(C2)で表わされる反復単位とを有するフェノール樹脂(C)と、酸無水物または酸二無水物と、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物との反応物を含む密着助剤(D)とを含有する構成とすることにより、前記問題点を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[式(C1)中、Z
1は芳香族環を少なくとも1つ含む基を表し、水酸基は直接芳香族環に結合するものとする。]
[式(C2)中、Z
2は芳香族環を少なくとも1つ含む基を表し、R
1’、R
2’、R
3’およびR
4’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のフッ素原子を含んでもよい炭化水素基である。]
以下、感光性樹脂組成物に含まれる各構成材料について、順次、説明する。
[ポリアミド樹脂(A)]
ポリアミド樹脂(A)は、本発明では、ベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有するアルカリ可溶性樹脂であり、感光性樹脂組成物の主材料として含まれるものである。
また、ポリアミド樹脂は、ベンゾオキサゾール前駆体構造およびイミド前駆体構造の他、ベンゾオキサゾール前駆体構造の一部が閉環反応することにより生じるベンゾオキサゾール構造、イミド前駆体構造の一部が閉環反応することにより生じるイミド構造を有していてもよく、さらに、アミド酸エステル構造を有していてもよい。
なお、ベンゾオキサゾール前駆体構造とは、下記式(A2)で表される構造を言い、イミド前駆体構造とは、下記式(A3)で表される構造を言い、ベンゾオキサゾール構造とは、下記式(A4)で表される構造を言い、イミド構造とは、下記式(A5)で表される構造を言い、アミド酸エステル構造とは、下記式(A6)で表される構造を言う。なお、下記式(A2)〜(A6)中のDおよびR’は、それぞれ、有機基を表す。
ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5000以上20000以下であることが好ましく、6000以上、18000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が、上記下限値未満では露光・感光後のエッチングに際して、膜減りが大きくなるおそれがあり、重量平均分子量が、上記上限値を超えると、エッチング条件によっては、エッチングすべき露光部の露光後残渣が多くなるおそれがある。
また、ポリアミド樹脂(A)は、その合成反応をより安定的に完結させるために、重合反応後に樹脂末端が封止されているものであってもよい。
例えば、樹脂末端がアミン残基の場合には、カルボン酸無水物や活性エステル等により封止させることが可能である。アミン末端を封止することにより、感光性樹脂組成物の保存性を向上することが可能である。
なお、カルボン酸無水物で封止した場合は、その末端構造がアミド結合を形成する場合とイミド結合を形成する場合とがあるが、末端構造はそのいずれの結合であっても構わない。
カルボン酸無水物としては、アルケニル基またはアルキニル基を有する脂肪族または環式化合物が好ましい。
活性エステルとしては、アルケニル基またはアルキニル基を有する脂肪族または環式カルボン酸化合物と、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。
さらに、樹脂末端がカルボン酸の場合は、アミン含有化合物等により封止することが可能である。アミン含有化合物としては不飽和基を有するアニリン化合物や含窒素複素環化合物が好ましい。これにより、保護膜70の半導体チップ20の上面に対する密着性を向上させることが可能である。
これらポリアミド樹脂(A)の中でも、特に、下記一般式(A1)で示される構造を有するものであるのが好ましい。
[式(A1)中、X、Yは有機基である。R
1は水酸基、カルボキシル基、−O−R
3、−COO−R
3のいずれかであり、R
1が複数ある場合は、同一でも異なっていてもよい。R
2は、水素原子、炭素数1〜15の有機基である。lは0〜8の整数である。また、R
3は、炭素数1〜15の有機基である。また、aは重合度を示し、2〜500である。]
ポリアミド樹脂(A)として、前記一般式(A1)で示される構造を有するものを用いることにより、感光性樹脂組成物を加熱、硬化することにより得られた保護膜70中において、イミド環および/またはオキサゾール環が生成する。その結果、保護膜(硬化膜)70の耐熱性の向上を図ることができ、ひいては、保護膜70を備える半導体装置10の信頼性が向上する。
なお、前記一般式(A1)で示される構造を有するポリアミド樹脂は、例えば、基Xを含むビス(アミノフェノール)誘導体、ジアミノフェノール誘導体等から選ばれる化合物と、基Yを含むテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、ジカルボン酸またはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体、ヒドロキシジカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とが反応して得られるポリアミド樹脂である。
なお、基Yを含むジカルボン酸誘導体を用いる場合には、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いるのが好ましい。これにより、前記一般式(A1)で示される構造を有するアミド樹脂の反応収率等を高めることができる。
また、前記一般式(A1)中において、基R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15の有機基であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。これらを適宜選択することにより、ポリアミド樹脂(A)のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節することができる。
また、一般式(A1)中の基Yの置換基R1として挙げられる−O−R3、−COO−R3のR3も、上記R2と同様の機能を有するものであり、R2と同様のものが例示として挙げられる。
前記一般式(A1)で示される構造を有するポリアミド樹脂を加熱すると脱水閉環し、その結果、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、または両者の共重合という形で硬化後の樹脂が保護膜70中に形成される。これにより、保護膜70は、優れた耐熱性を有するものとなる。
また、前記一般式(A1)で示される構造を有するポリアミド樹脂において、基Xは、有機基であり、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物が挙げられ、より具体的には、好ましくは下記(A7)式で示されるものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
[式(A7)中、*はNH基に結合することを示す。Eは、−CH
2−、CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、―C(CF
3)
2―または単結合である。R
4は、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示し、R
4が複数ある場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R
5は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかである。R
5が複数ある場合は、同じでも異なっていてもよい。R
6は、水素原子、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを示す。yは0〜2の整数、zは0〜3の整数である。R
7〜R
10は、有機基である。]
上記式(A7)で示した、式(7−1)〜(7−7)で表される基Xの中でも、下記式(A8)で示される基Xであることが好ましい。これにより、ポリアミド樹脂(A)の脱水閉環後に得られるポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、または両者の共重合体を含む保護膜70は、優れた機械特性を備えるものとなる。
[式(A8)中、*はNH基に、※は−OR
2基に結合することを示す。F、Gは、それぞれ、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、 −NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。aは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、R
11は、アルキル基、 アルコキシル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基の内から選ばれた1つを表す。 R
11が複数ある場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。]
また、一般式(A1)で示される構造を有するポリアミド樹脂において、基Yは、有機基であり、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には、好ましくは下記式(A9)で示されるものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
[式(A9)中、*はC=O基に結合することを示す。J、Kは、それぞれ独立して、−CH
2−、CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、 −NHCO−、−C(CF
3)
2−、または単結合である。R
12 はアルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、R
12が複数ある場合は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。また、R
13は水素原子、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子から選ばれた1つを表す。bは0〜4の整数である。R
14 〜R
17は有機基である。]
なお、ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体の配合量は、ポリアミド樹脂(A)の総量を100重量部としたとき、ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体を1重量部以上99重量部以下とすることが好ましく、5重量部以上80重量部以下とすることがより好ましい。上記範囲とすることにより、ポリアミド樹脂(A)を含有する膜を高感度で、かつ保護膜(硬化膜)70を機械特性に優れるものとすることができる。
また、かかる構成のポリアミド樹脂(A)は、後述する溶媒に対して優れた溶解性を示すことから、このポリアミド樹脂(A)を含有する液状材料を用いて、半導体チップ20上に供給して乾燥することにより、ポリアミド樹脂(A)を含有する膜を形成することができる。
なお、ポリアミド樹脂(A)は、ベンゾオキサゾール前駆体構造および/またはイミド前駆体構造を有するものであればよく、ベンゾオキサゾール前駆体構造またはイミド前駆体構造が単独で構成される重合体であってもよいし、ベンゾオキサゾール前駆体構造およびイミド前駆体構造で構成される共重合体であってもよいし、さらには、ベンゾオキサゾール前駆体構造およびイミド前駆体構造とは異なるアミド構造および/またはイミド構造を含む共重合体であってもよい。
[感光剤(B)]
感光剤(B)は、光により酸を発生する化合物である。
感光性樹脂組成物中に感光剤が含まれることにより、この感光性樹脂組成物を乾燥させることにより得られた膜に対して光を選択的に照射することで、光の照射領域に位置する膜のアルカリ水溶液に対する溶解性を、光の非照射領域に位置する膜のアルカリ水溶液に対する溶解性と比較して向上させることができる。そのため、このアルカリ水溶液を用いたエッチングにより、光の照射領域に位置する膜を選択的に除去(エッチング)することができるようになる。すなわち、感光性樹脂組成物を、ポジ型の感光性樹脂組成物とすることができる。
感光剤(B)としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩等のオニウム塩類、2−ニトロベンジルエステル類、N−イミノスルホネート類、アリールスルホン酸エステル類、塩素等のハロゲンを有する複素環式化合物類、感光性ジアゾキノン化合物類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの化合物の中でも、感光性ジアゾキノン化合物が好ましい。かかる化合物は、露光の際に主に用いられる化学線の波長域で最も感度と解像度に優れることから、優れたパターニング精度で保護膜70を形成することができるようになる。
感光性ジアゾキノン化合物としては、例えば、フェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられ、具体的には、式(B10)〜式(B14)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
[式(B10)中、R
20は、水素原子、またはメチル基である。]
[式(B12)中、R
21は、それぞれ独立して、水素原子、またはメチル基である。]
[式(B13)中、R
22は、それぞれ独立して、水素原子、またはメチル基である。]
[式(B14)中、R
23は、それぞれ独立して、水素原子、またはメチル基である。]
なお、式(B10)〜式(B14)中Qは、水素原子、または下記式(B15)、式(B16)のいずれかから選ばれるものであり、各化合物のQのうち、少なくとも1つは下記式(B15)、または下記式(B16)である。
これらの中でも、特に、上記式(B12)、(B13)、(B14)の感光剤が好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度および解像度をより向上させることができる。
感光剤(B)の含有量は、特に限定されないが、前記ポリアミド樹脂[A]100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下であるのが好ましく、10重量部以上40重量部以下であるのがより好ましい。これにより、光の照射領域(露光部)と、光の非照射領域(非露光部)とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差を確実に発現させることができる。
[フェノール樹脂(C)]
フェノール樹脂(C)は、下記式(C1)で表される反復単位と下記式(C2)で表わされる反復単位とを有するものである。
[式(C1)中、Z
1は芳香族環を少なくとも1つ含む基を表し、水酸基は直接芳香族環に結合するものとする。]
[式(C2)中、Z
2は芳香族環を少なくとも1つ含む基を表し、R
1’、R
2’、R
3’およびR
4’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のフッ素原子を含んでもよい炭化水素基である。]
かかる構成のフェノール樹脂(C)が感光性樹脂組成物中に含まれることにより、後述する密着助剤(D)の補助剤としてフェノール樹脂(C)が機能する。そのため、感光性樹脂組成物を露光・現像させることにより得られる膜と半導体チップ20との結合強度(密着性)、さらにかかる膜を硬化させることにより得られる保護膜70と半導体チップ20との結合強度をより確実に向上させることができる。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物では、後述する密着助剤(D)として酸無水物または酸二無水物と、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物との反応物を用いることで、感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化が的確に抑制されているが、前記フェノール樹脂(C)が感光性樹脂組成物中に含まれる構成とすることにより、前記密着助剤(D)の感光性樹脂組成物中における含有量を低く設定することができるようになる。そのため、かかる観点からも、感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化を、より的確に抑制または防止することができる。
このようなフェノール樹脂(C)の機能がより好適に発揮されるように、上記一般式(C1)および一般式(C2)中の、基Z1、基Z2、基R1’〜基R4’が適宜選択される。
基Z1は、少なくとも1つの芳香族環を含むものであれば、特に限定されないが、直線構造を有しているものが好適に用いられ、1〜3つの芳香族環を有しているのが好ましく、1つの芳香族環を有しているのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性、密着性および透明性を優れるものとすることができる。
なお、基Z1に含まれる芳香族環は、置換または無置換のいずれのものであってもよく、置換基を備える場合、この置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシル基、炭素数1〜20のフッ素原子を含んでもよい炭化水素基、ハロゲン原子、エステル基、カルボニル基、アミノ基、芳香族基等が挙げられる。また、置換基を複数備える場合、これらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
具体的には、このような基の構造としては、例えば、下記式(C3)に示すものが挙げられる。
また、基Z1は、炭素原子と水素原子とからなる芳香族炭化水素環で構成されているのが好ましい。これにより、エーテル結合、スルホニル結合等の屈曲結合を含むものと比較して主骨格の直線性を向上させることができる。そのため、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性、密着性および透明性の向上を図ることができる。
これらのことを考慮すると、基Z1としては、フェニレン基またはその誘導体が特に好ましい構造である。これにより、特に、密着性に優れたフェノール樹脂(C)とすることができる。
なお、Z1に連結する水酸基は、Z1に含まれる芳香族環に直接結合している。
また、基Z2は、少なくとも1つの芳香族環を含むものであれば、特に限定されないが、基Z1と同様に、直線構造を有しているものが好適に用いられ、1〜4つの芳香族環を有しているのが好ましく、1または2つの芳香族環を有しているのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性を維持しつつ、特に密着性に優れるものとすることができる。
なお、基Z2に含まれる芳香族環は、置換または無置換のいずれのものであってもよく、置換基を備える場合、この置換基としては、例えば、アルコキシル基、炭素数1〜20のフッ素原子を含んでもよい炭化水素基、ハロゲン原子、エステル基、カルボニル基、アミノ基、芳香族基等が挙げられる。また、置換基を複数備える場合、これらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。ただし、芳香族環に水酸基が直接連結する置換基は除かれる。
具体的には、このような基の構造としては、例えば、前記式(C3)に示すものが挙げられる。
また、基Z2は、炭素原子と水素原子とからなる芳香族炭化水素環で構成されているのが好ましい。これにより、エーテル結合、スルホニル結合等の屈曲結合を含むものと比較して主骨格の直線性を向上させることができる。そのため、フェノール樹脂(C)の溶解性および密着性のうち、特に密着性の向上を図ることができる。
さらに、芳香族環が2つ以上含まれる場合、複数の芳香族環は、連結多環系および縮合多環系のいずれの構造をなしていてもよいが、連結多環系の構造をなしているのが好ましい。これにより、フェノール樹脂(C)を溶解性および密着性の双方に優れるものとすることができる。
これらのことを考慮すると、基Z2としては、フェニレン基、ビフェニレン基またはその誘導体が特に好ましい構造である。これにより、特に、密着性に優れたフェノール樹脂(C)とすることができる。
さらに、基R1’〜基R4’は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のフッ素原子を含んでもよい炭化水素基である。これらの中でも、基R1’〜基R4’としては、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。これにより、フェノール樹脂(C)を溶解性および密着性の双方に優れるものとすることができる。
以上のことから、フェノール樹脂(C)は、特に、下記一般式(C4)〜(C6)で示される構造を有するものであるのが好ましい。
[式(C4)〜(C6)中、nは0以上の整数を表す。]
なお、フェノール樹脂(C)において、上記一般式(C1)で表わされる反復単位と、上記一般式(C2)で表わされる反復単位とは、不規則(ランダム)に連結していてもよいが、これら反復単位(C1)、(C2)が交互に連結しているのが好ましい。これにより、フェノール樹脂(C)としての機能を、フェノール樹脂(C)中においてムラなく均一に発揮させることができるようになる。
フェノール樹脂(C)の添加量は、ポリアミド樹脂[A]100重量部に対して5重量部以上、70重量部以下であることが好ましく、10重量部以上、60重量部以下であることがより好ましい。添加量を上記範囲とすることで、保護膜70と半導体チップ20との結合強度をより確実に向上させることができるとともに、感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化をより的確に抑制または防止することができる。
[密着助剤(D)]
密着助剤(D)は、酸無水物または酸二無水物と、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物との反応物(アミノ基含有シランカップリング剤)を含むものである。
かかる構成の密着助剤(D)が感光性樹脂組成物中に含まれることにより、感光性樹脂組成物を乾燥させることにより得られる膜と半導体チップ20との結合強度(密着性)、さらにかかる膜を硬化させることにより得られる保護膜70と半導体チップ20との結合強度の向上を図ることができる。
また、通常、保護膜70と半導体チップ20との密着性を向上させるためには、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなシランカップリング剤が用いられるが、密着助剤としてこのような化合物を用いると、感光性樹脂組成物の粘度が経時的に変化すると言う問題がある。これに対して、本発明では、感光性樹脂組成物を密着助剤(D)として酸無水物または酸二無水物と、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物との反応物が含まれることから、感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化を的確に抑制することができる。
このような密着助剤(D)としては、例えば、下記一般式(D1)、(D2)で示される有機ケイ素化合物が挙げられる。
[式(D1)中、R
15、R
16は、互いに独立して、1価の有機基を表す。R
17、R
18は、互いに独立して、2価の有機基を表す。lは0〜2の整数を表す。]
[式(D2)中、R
19は4価の有機基を表す。R
20は2価の有機基を表す。R
21、R
22は、互いに独立して、1価の有機基を表す。lは0〜2の整数を表す。]
なお、上記一般式(D1)、(D2)で示される有機ケイ素化合物は、酸無水物または酸二無水物と、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物とを有機溶媒中で20〜100℃で30分〜10時間反応させることにより容易に得ることが可能である。
前記酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6,−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2”,3,3”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3”,4”−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物(アミノ基を有するケイ素化合物)としては、特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジエチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノブチルジメチルメトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記一般式(D1)として示される化合物としては、例えば、下記式(D11)〜(D14)のような化合物が挙げられる。
[式(D11)〜(D14)中、R
18は、下記式(D15)〜(D17)のうちのいずれかである。]
さらに、前記一般式(D2)として示される化合物としては、例えば、下記式(D21)〜(D24)のような化合物が挙げられる。
[式(D21)〜(D24)中、R
19は、下記式(D25)〜(D28)のうちのいずれかである。]
密着助剤(D)の添加量は、ポリアミド樹脂[A]100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。添加量を上記範囲とすることで、半導体チップ20上に形成される保護膜70の機械的強度を向上させることができるとともに、保護膜70に発生する応力を緩和することができる。また、密着助剤(D)が含まれることに起因する感光性樹脂組成物の粘度の経時的変化をより的確に抑制することができる。
[溶解促進剤(E)]
また、感光性樹脂組成物中には、前記構成材料(A)〜(D)の他、溶解促進剤(E)が含まれていてもよい。
溶解促進剤(E)は、感光性樹脂組成物を用いて形成された膜の光の照射領域(露光部)におけるアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性を向上させる機能を有する。これにより、前記膜をエッチングしてパターニングする際に、スカムが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
このような溶解促進剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(E1)〜式(E7)で表されるものを挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのフェノール性水酸基を有する化合物の中でも、式(E8)より選ばれるものが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を乾燥することにより得られる膜の特に光に対する感度を向上させることができる。
溶解促進剤(E)の含有量は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂[A]100重量部に対して、1〜30重量部であるのが好ましく、1〜20重量部であるのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を乾燥して得られる膜のエッチング時におけるスカムの発生をより効果的に抑制することができ、また、露光部の溶解性が促進されることにより感度がより向上する。
[溶媒]
また、感光性樹脂組成物に含まれる溶媒、すなわち、前記構成材料[A]〜[E]を溶解する際に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネートが挙げられ、これらのうちの単独溶媒または混合溶媒として用いることができる。中でも、PHAに対する溶解力、毒性、引火性等、様々な扱いやすさの観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)が好適に用いられる。
なお、感光性樹脂組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤、フィラー、界面活性剤、光重合開始剤、架橋剤、末端封止剤および増感剤等の添加物を添加してもよい。
以上、本発明の感光性樹脂組成物、保護膜および半導体装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の半導体装置は、QFP型の半導体パッケージに適用した場合ついて説明したが、このような場合に限定されず、例えば、DIP(Dual In−line Package)型、SOP(Small Out−line Package)型、LF−CSP(Lead Frame Chip Scale Package)型およびBGA(Ball Grid Array)型の半導体パッケージにも適用することができる。
さらに、本発明の半導体装置は、1つの半導体チップ(半導体素子)がダイパッド(支持体)上に固定されている場合について説明したが、これに限定されず、複数の半導体素子が支持体上に固定されていてもよい。
また、半導体チップを支持する支持体としては、ダイパッドの他、ヒートシンク、ヒートスプレッダーのような放熱部材等であってもよい。
さらに、本発明の半導体装置の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.感光性樹脂組成物の調製
≪実施例1≫
[ポリアミド樹脂(A−1)の合成]
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸21.43g(0.083モル)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール22.43g(0.166モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物40.87g(0.083モル)と、ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン36.62g(0.100モル)とを、温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン296.96gを加えて溶解させた。その後、オイルバスを用いて75℃にて15時間反応させた。
次に、N−メチル−2−ピロリドン34.88gに溶解させた3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物6.98g(0.0425モル)を加え、さらに3時間攪拌して反応を終了した。
反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(容積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のポリアミド樹脂(A−1)を得た。なお、得られた化合物の重量平均分子量は、13,040であった。
[感光剤(Q−1)の合成]
式(C−1)のフェノール11.00g(0.026モル)と、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド18.78g(0.070モル)とアセトン170gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。
次に、反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.78g(0.077モル)とアセトン5.5gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1.05g(0.017モル)を添加し、さらに30分反応させた。次いで、反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(990ml/10ml)の混合溶液に投入し、その後、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥することで、式(Q−1)の構造で示される感光剤を得た。
[(ポジ型)感光性樹脂組成物の作製]
上記で合成したポリアミド樹脂(A−1)8.5g、フェノール樹脂としてミレックスXLC−4L(三井化学株式会社製)1.5g、上記で合成した感光剤(Q−1)1g、および式(D−1)の構造で示されるケイ素化合物(密着助剤)0.1gを、γ−ブチロラクトン16gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、実施例1の感光性樹脂組成物を得た。
≪実施例2≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、フェノール樹脂としてミレックスXLC−4Lの代わりにミレックスXLC−3L(三井化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に、実施例2の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例3≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、フェノール樹脂としてミレックスXLC−4Lの代わりにMEH−7800SS(明和化成株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に、実施例3の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例4≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の添加量を8.5gから6.5g、ミレックスXLC−4Lの添加量を1.5gから3.5gにした以外は、実施例1と同様に、実施例4の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例5≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の添加量を8.5gから4.5g、ミレックスXLC−4Lの添加量を1.5gから5.5gにした以外は、実施例1と同様に、実施例5の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例6≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、感光剤(Q−1)の添加量を1gから1.2gにした以外は、実施例1と同様に、実施例6の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例7≫
[ポリアミド樹脂(A−2)の合成]
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸21.43g(0.083モル)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール22.43g(0.166モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物40.87g(0.083モル)と、ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン21.98g(0.060モル)と4,4’−メチレンビス(2−アミノフェノール)9.21g(0.040モル)とを、温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン296.96gを加えて溶解させた。その後、オイルバスを用いて75℃にて15時間反応させた。
次に、N−メチル−2−ピロリドン34.88gに溶解させた3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物6.98g(0.0425モル)を加え、さらに3時間攪拌して反応を終了した。
反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(容積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のポリアミド樹脂(A−2)を得た。なお、得られた化合物の重量平均分子量は、21,170であった。
[感光性樹脂組成物の作製]
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様に、実施例7の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例8≫
実施例4の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−2)を用いた以外は、実施例4と同様に、実施例8の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例9≫
[ポリアミド樹脂(A−3)の合成]
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン30.0g(0.082モル)を温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、アセトン400mlを加えて溶解させた。
次に、アセトン100mLに溶解したパラ−ニトロベンゾイルクロリド12.4g(0.18モル)を、温度が20℃未満になるよう冷却しながら30分かけて滴下し、混合物を得た。滴下後、混合物の温度を40℃に加熱し、2時間撹拌し、次に、炭酸カリウム30.0g(0.218モル)を徐々に添加して、さらに2時間撹拌した。加熱をやめて、混合物を、さらに室温にて18時間撹拌した。その後、混合物を激しく撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、添加後55℃に加温して、さらに30分間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、37重量%の塩酸水溶液と水500mlを加え、溶液のpHが6.0〜7.0の範囲になるよう調整した。次いで、得られた析出物を、ろ別し、ろ過液を水で洗浄後、60〜70℃にて乾燥を行い、ビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの固体を得た。
得られた固体51.0gに、アセトン316gとメタノール158gを加え、50℃に加熱し完全に溶解させた。そこに、300mLの50℃の純水を30分かけて加え、65℃まで加熱した。その後室温まで、ゆっくり冷却して析出した結晶を濾過し、結晶を70℃にて乾燥を行うことで精製し、ビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを得た。
上記で得たビス−N,N’−(パラ−ニトロベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20gを1Lのフラスコに入れ、5%パラジウム−炭素1.0gと酢酸エチル180.4gを加え、懸濁状態とした。そこに、水素ガスをパージし、50〜55℃に加熱しながら、35分間振盪させ還元反応を行った。反応終了後35℃まで冷却し、懸濁液に窒素をパージした。ろ別により触媒を取り除いた後、ろ液をエバポレーターにかけ、溶媒を蒸発させた。得られた生成物を90℃にて乾燥して、ビス−N,N’−(パラ−アミノベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを得た。
上記で得たビス−N,N’−(パラ−アミノベンゾイル)ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン14.27g(0.024mol)を、温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、γ−ブチロラクトン40gを加え溶解し、撹拌しながら15℃まで冷却した。そこに、4,4’−オキシジフタル酸無水物6.86重量部(0.022mol)とγ−ブチロラクトン12.0重量部を加え、20℃にて1.5時間撹拌した。その後、50℃まで加温し3時間撹拌後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール5.27g(0.044mol)とγ−ブチロラクトン10.0gを加え、50℃にて、さらに1時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却し、目的のポリアミド樹脂(A−3)を得た。なお、得られた化合物の重量平均分子量は、13200であった。
[感光性樹脂組成物の作製]
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様に、実施例9の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例10≫
実施例4の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−3)を用いた以外は、実施例4と同様に、実施例10の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例11≫
[感光剤(Q−2)の合成]
式(C−2)で示されるフェノール11.02g(0.026モル)と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド18.78g(0.070モル)とアセトン170gとを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れて撹拌、溶解させた。
次に、反応溶液の温度が35℃以上にならないようウォーターバスでフラスコを冷やしながら、トリエチルアミン7.78g(0.077モル)とアセトン5.5gの混合溶液を、ゆっくり滴下した。そのまま室温で3時間反応させた後、酢酸1.05g(0.017モル)を添加し、さらに30分反応させた。反応混合物をろ過した後、ろ液を水/酢酸(990ml/10ml)の混合溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥することで、式(Q−2)の構造で示される感光剤を得た。
[感光性樹脂組成物の作製]
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、感光剤(Q−1)の代わりに感光剤(Q−2)を用いた以外は、実施例1と同様に、実施例11の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例12≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ケイ素化合物(D−1)の添加量を0.1gから0.05gにした以外は、実施例1と同様に、実施例12の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪実施例13≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ケイ素化合物(D−1)の添加量を0.1gから0.3gにした以外は、実施例1と同様に、実施例13の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例1≫
ポリアミド樹脂(A−1)10g、感光剤(Q−1)1g、および式(D−1)の構造で示されるケイ素化合物0.1gを、γ−ブチロラクトン16gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、比較例1の感光性樹脂組成物を得た。
≪比較例2≫
ポリアミド樹脂(A−1)10g、感光剤(Q−1)1g、式(D−1)の構造で示されるケイ素化合物0.1g、および式(D−2)の構造で示されるケイ素化合物0.05gを、γ−ブチロラクトン16gに溶解した後、0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、感光性樹脂組成物を得た。
≪比較例3≫
比較例2の感光性樹脂組成物の作製において、ケイ素化合物(D−2)の添加量を0.05gから0.1gにした以外は、比較例2と同様に、比較例3の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例4≫
比較例2の感光性樹脂組成物の作製において、ケイ素化合物(D−2)の添加量を0.05gから0.3gにした以外は、比較例2と同様に、比較例4の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例5≫
実施例1の感光性樹脂組成物の作製において、ケイ素化合物(D−1)の代わりに式(D−3)の構造で示されるケイ素化合物を用いた以外は、実施例1と同様に、比較例5の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例6≫
比較例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−2)を用いた以外は、比較例1と同様に、比較例6の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例7≫
比較例1の感光性樹脂組成物の作製において、ポリアミド樹脂(A−1)の代わりにポリアミド樹脂(A−3)を用いた以外は、比較例1と同様に、比較例7の感光性樹脂組成物の作製を行った。
≪比較例8≫
比較例1の感光性樹脂組成物の作製において、感光剤(Q−1)の代わりに感光剤(Q−2)を用いた以外は、比較例1と同様に、比較例8の感光性樹脂組成物の作製を行った。
なお、表1に合成したポリアミド樹脂[A]の式(A1)のX、Yの構造と末端の構造を記載した。
[式(A1)中、X、Yは有機基である。R
1は水酸基、カルボキシル基、−O−R
3、−COO−R
3のいずれかであり、R
1が複数ある場合は、同一でも異なっていてもよい。R
2は、水素原子、炭素数1〜15の有機基である。lは0〜8の整数である。また、R
3は、炭素数1〜15の有機基である。また、aは重合度を示し、2〜500である。]
2.評価
各実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。また、得られた結果を表1に示す。
2−1.i線感度および解像度
各実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で2分間プリベークし、膜厚約9μmの塗膜を得た。
この塗膜に、凸版印刷(株)製マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターンおよび抜きパターンが描かれている)を通して、(株)ニコン製i線ステッパNSR―4425iを用いて、露光量を50mJ/cm2から10mJ/cm2ステップで増やして露光を行った。
次に、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、プリベーク後の膜厚と現像後の膜厚の差が1.5μmになるように現像時間を調節して2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水で20秒間リンスした。
そして、100μmの正方形のビアホールのパターンが形成される最低露光量の値を感度として評価した。
2−2.保存安定性の評価
まず、各実施例および比較例の感光性樹脂組成物について、それぞれ、作製時にE型粘度計(TV−22形,東機産業製)により、粘度(T1)を測定した。
次に、これら感光性樹脂組成物を、それぞれ室温放置し、7日後に再度、前記と同様にして同様に粘度(T2)を測定し、((T2)−(T1)/(T1))×100(%)により粘度上昇率を算出した。
そして、得られた粘度上昇率を、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
◎: 粘度上昇率が2.5%未満
○: 粘度上昇率が2.5%以上、5.0%未満
×: 粘度上昇率が5.0以上
2−3.現像後の密着性評価
各実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で2分間プリベークし、膜厚約9μmの塗膜を得た。
この塗膜に、凸版印刷(株)製マスク(テストチャートNo.2:5μmの正方形の残しパターンが100個描かれている)を通して、(株)ニコン製i線ステッパNSR―4425iを用いて、最低露光量に100mJ/cm2加えた露光量で露光を行った。
次に、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、プリベーク後の膜厚と現像後の膜厚の差が1.5μmになるように現像時間を調節して2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水で20秒間リンスした。
そして、5μmの正方形の残しパターンが剥がれた数を数えて現像後の密着性を、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
◎: 剥がれ数が 5個以下
○: 剥がれ数が 6個以上、10個以下
×: 剥がれ数が11個以上
2−4.湿度処理後の密着性評価
各実施例および比較例で得られた感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で2分間プリベークし、膜厚約9μmの塗膜を得た。
次に、クリーンオーブンを用いて酸素濃度1,000ppm以下で、150℃/30分+320℃/30分で加熱硬化を行い、硬化膜を得た。
この硬化膜に、JIS K5400に準拠してカッターナイフにて1×1(mm)サイズの正方形が縦横10列ずつ計100個の碁盤目を作成した。
このサンプルをプレッシャークッカー試験;125℃、100%、0.2MPaの条件下24時間連続処理した後、JIS D0202に準拠して、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
◎: 剥がれ数が 5個以下
○: 剥がれ数が 6個以上、10個以下
×: 剥がれ数が11個以上
表2に示すように、実施例1〜13で得られた感光性樹脂組成物は、比較例1〜8で得られた感光性樹脂組成物と比較して、i線に対する感度に優れていることが分かる。さらに、粘度上昇率も低減され、かつ、現像後および硬化後における下地密着性も良好であることが確認された。