以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、同一又は相当する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。以下の説明における方向の概念は、本発明の実施形態に係る自動二輪車に騎乗した運転者から見た方向を基準としている。
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、前後方向において前後輪2,3間に配置された車体フレーム4とを備える。車体フレーム4は、ヘッドパイプ5と、ヘッドパイプ5から後方に延びてから屈曲し、後傾しながら下方へ延びる左右のメインフレーム6とを有している。前輪2は、フロントフォーク7の下端部に回転可能に支持され、また、フロントフォーク7及びステアリングシャフト(図示せず)等を介してヘッドパイプ5に転向可能に支持される。左右のメインフレーム6は、下端部且つ後端部にて、左右のピボットブラケット8それぞれに連結されており、左右のピボットブラケット8は、スイングアーム9の前端部を揺動可能に支持している。後輪3は、スイングアーム9の後端部に回転可能に支持され、これによりスイングアーム9を介して車体フレーム4に揺動可能に支持される。
本実施形態に係る自動二輪車1は、後輪3(駆動輪)を回転駆動する駆動源の一例として、エンジン10を搭載している。エンジン10は、メインフレーム6に接合されたハンガーブラケット11に支持され、これによりメインフレーム6に懸架される。エンジン10は、メインフレーム6よりも下方であってピボットブラケット8よりも前方の領域に配置される。なお、駆動源には、エンジン10に替えて又は加えて電気モータが適用されてもよい。
メインフレーム6上には燃料タンク12が支持されており、燃料タンク12の後方には運転者が騎乗するシート13が設けられている。燃料タンク12の前方には運転者が把持するハンドル14が設けられており、ハンドル14の前方には車両前方を照明するヘッドランプ15が配置されている。
自動二輪車1は、いわゆるフルカウル式カウリングを備えている。カウリングは、車体前部を全体的に覆っており、空力部品としての性質だけでなく車両外観を成す意匠部品としての性質を備えている。以降の説明では、本実施形態に係る自動二輪車1に適用されたフルカウル式カウリングのうち、車体の前部左側面及び右側面それぞれを覆うものを左右のサイドカウル構造20と称する。左右のサイドカウル構造20は対称に構成及び配置されるので、左右いずれか一方について説明した場合、他方についての説明は省略する。
カウリングは、複数のカウル部材を組み合わせることによって構成される。カウル部材には、アッパーカウル17、アッパー部材の一例としての左右一対のサイドアッパーカウル21、カバー部材の一例としての左右一対のサイドカバーカウル22、左右一対のロアカウル18等が含まれる。アッパーカウル17は、カウリングの上端部且つ前端部を構成しており、ヘッドランプ15の周囲(一例としてヘッドランプ15の前方及び側方)を覆う。
サイドアッパーカウル21は、アッパーカウル17から下方に延び且つ後方に延びるように配置され、フロントフォーク7の上部側方、ヘッドパイプ5の側方、エンジン10の側方、エンジン10の前部から下方に延びる排気管(図示せず)の側方など、車体の側面前部を広く覆っている。サイドカバーカウル22は、サイドアッパーカウル21の後部に取り付けられ、エンジン10の側方を部分的に覆っている。ロアカウル18は、サイドアッパーカウル21の下端部から後方に延びるようにして設けられており、エンジン10の下方で前後方向に延びるようにして取り回された排気管の側方を覆っている。
サイドカウル構造20は、主として、左右のサイドアッパーカウル21と、当該左右のサイドアッパーカウル21とは別体である左右のサイドカバーカウル22とを備え、これらを組み合わせることによって構成される。車体側面を覆うという機能に照らし、左右のサイドカウル構造20が、ロアカウル18を含むとしてもよい。
サイドカウル構造20は、エンジン10の側方を覆うようにして設けられる。また、自動二輪車1は、走行風でエンジン冷却用の冷却水を放熱するラジエータ19を備え、ラジエータ19は、左右のサイドカウル構造20の間又は左右のサイドカウル構造20の前方に配置される。ラジエータ19を通過した走行風は、左右のサイドカウル構造20の内側を後方に流れる。
サイドカウル構造20は、エンジン10の一部を側面視で露出させる開口23を有している。このため、ラジエータ19を通過して左右のサイドカウル構造20の内側を流れた走行風を開口23から外側へ逃がすことができる。同時に排気管から放射される熱を走行風と共に外側へ逃がすことができる。左右のサイドカバーカウル22は、開口23の後方に隣接して配置されている。左右のサイドカバーカウル22は、前端部から後方に向かうにつれて車幅方向外側に傾斜している。このため、サイドカウル構造20の内側で後方に流れる走行風をサイドカウル構造20の外側に案内しやすくなる。
図2は、図1に示すサイドカウリング構造20を右前から見て示す分解斜視図であり、図2には、アッパーカウル17を併せて示している。図2に示すように、アッパーカウル17は、ヘッドパイプ5に固定されたカウルステー(図示せず)に取り付けられる。アッパーカウル17は、前端部から後に向かって略水平に延びる左右の下端縁部17aを有し、各下端縁部17aには、複数の係止爪17bが前後方向に離れて設けられている。
サイドアッパーカウル21は、アッパーカウル17の左右いずれかの下縁部17aと整合する上縁部31を有し、上縁部31には、係止爪17と嵌合するスリット32が上方に開口している。サイドアッパーカウル21は、係止爪17をスリット32に嵌合することによりアッパーカウル17に係止され、これら2つのカウリング部材17,21が組み付けられる。係止爪17bもスリット32も、アッパーカウル17と左サイドアッパーカウル21との分割線PL1よりも車幅方向中心側に位置するので、これら2つのカウリング部材17,21を組み付けた状態では車体外側に露出しない。
図3は、図1に示す左側のサイドカウリング構造20の左側面図である。図4は、図2に示す左側のサイドアッパーカウル21の単品左側面図である。図2〜図4に示すように、サイドアッパーカウル21は、上縁部31からやや下に傾きながら後方に延びるアッパー部33と、上縁部31からやや後に傾きながら下方に延びるダウン部34とを一体に有し、側面視で前方に凸に形成されている。なお、ダウン部34は、サイドアッパーカウル21の前縁を形成するフロント部と称してもよい。上縁部31周辺は、主としてヘッドパイプ5の側方を覆い、アッパー部33は、主としてメインフレーム6の側方を覆い、ダウン部34は、主としてエンジン10前部の側方、排気管のうちエンジン10から下方に延びる部分の側方を覆う。
サイドアッパーカウル21のうち、アッパー部33とダウン部34とは後方に進むにつれて上下方向に間隔をあけて延びる。アッパー部33は、メインフレーム6に結合される。本実施形態では、アッパー部33の後端部が、メインフレーム6から突出固定される中継部材に締結部材を用いて結合される。ダウン部34は、前端部から後方に進むにつれて車幅方向外側に膨らみ、運転者に対する風防としても機能する。また、ダウン部34の下端部がロアカウル18に結合される。
ダウン部34の下端部にはロアカウル18との分割線PL2が規定され、この分割線PL2から車幅方向中心側且つ下側に突出するフランジ35に、ロアカウル18との締結のためのボルト穴36が形成される。このため、フランジ35をロアカウル18で隠した状態にして、サイドアッパーカウル21をロアカウル18と強固に組み付けることができる。ダウン部34の前部には、ウインカー24を取り付けるための取付穴37と、ウインカー24を締結するためのボルト穴38とが形成され、ボルト穴38は内面に開口しているが外面には露出しない。このため、美観を損なわずにウインカー24をサイドカウル構造20に組み付けることができる。
図2及び図3に示すように、サイドカバーカウル22は、アッパー部33の下部とダウン部34の後部との上下間を架け渡すようにして上下方向に延びて設けられ、アッパー部33の下方且つダウン部34の後方に配置される。開口23は、アッパー部33、ダウン部34及びサイドカバーカウル22で囲まれ、アッパー部33は開口23の上方に隣接して配置され、ダウン部34は開口23の前方に隣接して配置され、サイドカバーカウル22は開口23の後方に隣接して配置される。
図2〜図4に示すように、アッパー部33の下縁部には、下端よりも上方にサイドカバーカウル22との分割線PL3が規定され、分割線PL3は前後方向に延びている。サイドアッパーカウル21は、このアッパー部33の分割線PL3よりも下側部分に、アッパー部33を車体に固定するための構造や、サイドカバーカウル22の上部をアッパー部33に取り付けるための構造を有している。分割線PL3にサイドカバーカウル22の上縁部が沿う。したがって、アッパー部33のうち分割線PL3よりも下側部分はサイドカバーカウル22で覆われる。
具体的には、アッパー部33は、分割線PL3よりも下側且つ車幅方向中心側に突出して前後方向に帯状に延びる突出部39を有している。突出部39には、車幅方向に貫通したアッパー貫通穴40が形成されている。アッパー貫通穴40は、突出部39の後端部に設けられて開口23の上方に隣接して配置されている。アッパー貫通穴40には、サイドアッパーカウル21を車体に固定するための締結部材91(例えば、ボルト)が挿入される。アッパー貫通穴40は、アッパー部33の後端部に位置することになる。
突出部39には、爪嵌合部41が設けられている。爪嵌合部41は、前後方向に延びるスリット状に形成されて突出部39を車幅方向に貫通しており、アッパー貫通穴40よりも前方に設けられている。爪嵌合部41には、後述の係止爪64が嵌め込まれる。突出部39には、車幅方向内側に突出するフランジ42が設けられ、このフランジ42には上下方向の貫通穴43が形成されている。フランジ42は、突出部39の前端部に設けられている。貫通穴43には、サイドカバーカウル22をフランジ42に固定するための締結部材92(例えば、樹脂リベット)が挿入される。
サイドアッパーカウル21は、ダウン部34の後下部に、サイドカバーカウル22の下部をサイドアッパーカウル21に取り付けるための構造や、ダウン部34を車体に固定するための構造を有する。具体的には、ダウン部34の後下部には、ダウン部34の後縁から前方に延びる溝44が設けられている。溝44の底面には、スリット45が貫通形成されている。また、ダウン部34には、ダウン部34の後縁(開口23を規定する後辺縁)から後方に突出するブロック46が設けられ、ブロック46には車幅方向に貫通したダウン貫通穴47が形成されている。ダウン貫通穴47には、サイドカバーカウル22を車体に固定するための締結部材93(例えば、ボルト)が挿入され、この締結部材93を用いてダウン部34も車体に固定される。
図5は左側のサイドカバーカウル22の単品左側面図、図6は左側のサイドカバーカウル22の単品平面図である。図2、図3及び図5に示すように、サイドカバーカウル22は、サイドアッパーカウル21の突出部39を車体外方から覆う被覆部61を有している。被覆部61は、前後方向に長尺であり、被覆部61の上縁にはアッパー部33の下縁部との分割線PL3が規定されている。突出部39は、分割線PL3よりも下側に設けられており、被覆部61は、この突出部39に設けられたアッパー貫通穴40、爪嵌合部41及びフランジ42を車体外方から覆う。
サイドカバーカウル22は、サイドカバーカウル22を車体又は車体に固定された部材に係止させるための係止部62を有している。係止部62は、サイドカバーカウル22の上部に設けられ、被覆部61及びアッパー部33の下縁部で隠される。本実施形態において、「車体に固定された部材」には、例えば、後述のカウルブラケット80や、締結部材93を用いて車体に固定されるサイドアッパーカウル21が含まれる。
被覆部61で隠される係止部62には、係止突起63と係止爪64とが含まれる。係止突起63は、被覆部61の後端部内面から車幅方向中心側に突出している。係止突起63は、車体に固定されたカウルブラケット80に車幅方向外側から嵌め込まれ、カウルブラケット80に係止される。係止爪64は、被覆部61の内面から車幅方向中心側に突出している。係止爪64は、アッパー部33の爪嵌合部41に車幅方向外側から嵌まり込み、サイドアッパーカウル21に係止される。
係止突起63及び係止爪64は、被覆部61の内面、すなわち被覆部61の上縁に規定された分割線PL3よりも下側に設けられる。このため、係止突起63及び係止爪64は、被覆部61及びアッパー部33の下縁部によって隠される。
被覆部61には、被覆部61の前端部内面から車幅方向中心側に突出するフランジ65が設けられており、フランジ65には上下方向の貫通穴66が形成されている。フランジ65は、突出部39のフランジ42と上下に重ね合わされ、それにより貫通穴43,66が互いに整合される。前述の締結部材92は、貫通穴43,66に下から挿入される。
サイドカバーカウル22は、被覆部61から下方に延びる延在部67を有している。延在部67は、被覆部61の後端部から前に傾きながら下方に延びており、開口23の後方に隣接して配置される。延在部67は、前後方向に延びる被覆部61と共に、90度回転したV字を成している。被覆部61は、略上下方向に延びる延在部67の上端部から前方に向かって延び、それにより突出部39を覆うようにしてアッパー部33の下側に配置され、アッパー貫通穴40等を覆っているとも言える。
延在部67の下端部は、被覆部61の前端部と共に、サイドカバーカウル22全体として一対の前端部を形成している。延在部67の上端部は、延在部65の後端部でもあるところ、延在部67は、下端部(前端部)から上方(後方)に向かうにつれて車幅方向外側に傾斜している。このように、開口23の後方に隣接して配置された延在部67が、傾斜形状を有しているので、前述したとおり、サイドカウル構造20の内側の走行風を開口23から外側へと案内しやすくなる。
サイドカバーカウル22の下部には、サイドカバーカウル22をサイドアッパーカウル21に取り付けるための構造が設けられている。具体的には、延在部67の下端部には、車幅方向に貫通したカバー貫通穴68が形成されている。カバー貫通穴68は、被覆部61よりも下方に配置され、サイドカバーカウル22をサイドアッパーカウル21のダウン貫通穴47に固定するための締結部材93(例えば、ボルト)が挿入される。
延在部67の下端部には、前方に先鋭に突出した挿入部69が設けられている。挿入部69は、ダウン部43の溝44に嵌合される。挿入部69の内面からは車幅方向中心側に突出する爪70が設けられており、この爪70はダウン部34に設けられたスリット45に係止される。挿入部69の外面は車幅方向外側に突出しており、その突出端が挿入部69の延在方向(前後方向)に延び、延在部67を前後方向に横断している。カバー貫通穴68は、このような挿入部69の下方に配置されている。
図7は、図3から左側のサイドカウリング構造20を省略して示す車体の左側面図、図8は、図7のVIII−VIII線に沿って切断して示す断面図である。図7及び図8に示すように、メインフレーム6には、サイドアッパーカウル21とは別体のカウルブラケット80が固定され、サイドカバーカウル22の係止突起63は、カウルブラケット80に係止される。カウルブラケット80は、鋼等の金属材料から製作され、樹脂成型品であるサイドアッパーカウル21やサイドカバーカウル22等のカウリング部材と比べて剛性が高い。このため、係止突起63をサイドアッパーカウル21に係止させる場合と比べ、サイドカバーカウル22の支持剛性が高くなり、サイドカウル構造20の取付信頼性が高くなる。
カウルブラケット80は、サイドアッパーカウル21とは別体の高剛性部材であってメインフレーム6に固定された部材である。このカウルブラケット80に、メインフレーム6に沿って配置されたアッパー部33が締結される。つまり、アッパー貫通穴40に挿入された締結部材91がカウルブラケット80に螺合し、これによりサイドアッパーカウル21のアッパー部33がカウルブラケット80に締結される。
カウルブラケット80は、メインフレーム6の車幅方向中心側の端面に締結される締結部81と、締結部81の下端から屈曲してメインフレーム6の下方で車幅方向外側へと延びる突出部82と、突出部82の車幅方向外側端部からメインフレーム6の車幅方向外側で前後方向に延びる取付部83とを有する。取付部83の前端部は、上方に向けられ、メインフレーム6の車幅方向外側の端面と側面視でオーバーラップしている。カウルブラケット80は、取付部83のうち当該オーバーラップ部分にて、車幅方向に貫通したボルト穴84を有し、このボルト穴84に挿通されるボルト(図示せず)によりメインフレーム6の車幅方向外側の端面に締結される。このように、カウルブラケット80は、締結部81及び取付部83の前端部から構成される一対の車体固定部を有し、この一対の車体固定部がメインフレーム6の車幅方向両側の端面を挟むようにして締結されるので、メインフレーム6に対して強固に固定される。
カウルブラケット80は、取付部83の後端部にて、サイドカバーカウル22の係止突起63が嵌まり込む凹所85を有している。凹所85は、カウルブラケット80よりも車幅方向外側から車幅方向中心側に向けて突出している係止突起83を嵌込み可能に形成されていればよい。凹所85は、少なくとも取付部83の車幅方向外側の端面から車幅方向中心側に向かって凹むようにして形成されていればよい。本実施形態では、凹所85が車幅方向に取付部83に形成された車幅方向の貫通穴であるが、凹所85は、非貫通の窪みでもよい。また、カウルブラケット80の取付部83にはナット86が溶接され、このナット86は締結部材91と螺合する。
取付部83は、後方に向かうにつれて下向きに傾斜しており、ナット86は、前後方向においても上下方向においても、ボルト穴84と凹所85との間に配置されている。凹所85は、取付部83の後端部(すなわち、下端部)に設けられており、メインフレーム6よりも下方に離れて配置され、また、アッパー部33の突出部39(アッパー部33において開口23と隣接する部分)から後方且つ下方に離れて配置される。
カウルブラケット80は、サイドアッパーカウル21のアッパー部33及びサイドカバーカウル22の被覆部61によって車体外側から隠される。このため、メインフレーム6にサイドカウル構造20を構成するカウリング部材21,22とは別体の高剛性の取付部材(すなわち、カウルブラケット80)を設け、当該取付部材にカウリング部材21,22を締結又は係止させることでカウリング部材21,22の取付信頼性を向上しながら、車両の美観が損なわれるのを防ぐことができる。
以下、サイドカウル構造20の組付け手順に沿って、主として図2及び図3を参照しながら、上記サイドカウル構造20及びその周辺構造の配置等について説明する。サイドカウル構造20の組付手順は、一例として、(1)サイドアッパーカウル21で車体側面を覆い、(2)締結部材91でサイドアッパーカウル21をカウルブラケット80に固定し、(3)サイドカバーカウル22の係止部62をカウルブラケット80及びサイドアッパーカウル21に係止させ且つサイドカバーカウル22の挿入部69をサイドアッパーカウル21の溝44に嵌め込み、(4)締結部材92でサイドカバーカウル22をサイドアッパーカウル21に固定し且つ締結部材93でサイドカバーカウル22を車体に固定する、というものである。なお、サイドカウル構造20を組み付けようとする段階では、予め、カウルブラケット80はメインフレーム6に固定されており、エンジン10は車体フレーム4に懸架されている。
サイドアッパーカウル21で車体側面を覆うときに、アッパー部33はメインフレーム6に沿って配置される。カウルブラケット80はアッパー部33によって車体外方から部分的に覆われ、アッパー貫通穴40がカウルブラケット80のナット86と車幅方向に整合される。
次に、締結部材91が、アッパー貫通穴40に車幅方向外側から中心側に向けて挿入され、ナット86に螺合される。これにより、サイドアッパーカウル21が、カウルブラケット80に締結され、カウルブラケット80を介してメインフレーム6に固定される。アッパー貫通穴40は、前述のとおり、サイドアッパーカウル21の突出部39に車幅方向に貫通しており、サイドカバーカウル22を取り付けなければ、車幅方向外側に露出する。このため、サイドアッパーカウル21をカウルブラケット80に締結する作業を簡便に行うことができる。
アッパー貫通穴40は、サイドアッパーカウル21の上部に設けられる。このため、締結部材91でサイドアッパーカウル21をカウルブラケット80に締結しておけば、サイドアッパーカウル21から手を離しても、サイドアッパーカウル21が車幅方向外側に傾倒しなくなり、その後の作業が煩雑にならない。なお、サイドアッパーカウル21の車体に対する変位を防ぐため、サイドカウル構造20の組付け前に、アッパーカウル17を車体に固定してもよい。この場合、サイドアッパーカウル21で車体側面を覆うときに、係止爪17aをスリット32に嵌め込み、サイドアッパーカウル21をアッパーカウル17に取り付けてもよい。スリット32はサイドアッパーカウル21の上縁部32に設けられているため、このようにすれば締結部材91をアッパー貫通穴40に挿入する作業も簡便になるし、締結部材91を挿入した後のサイドアッパーカウル21の車体に対する位置及び姿勢が安定する。
サイドアッパーカウル21をカウルブラケット80に締結すると、カウルブラケット80の取付部83の前端部は、サイドアッパーカウル21のアッパー部33で隠される。このため、美観が損なわれるのを防ぐことができる。一方、取付部83の後端部は、サイドアッパーカウル21で隠されず、車幅方向外側に露出する。
この状態から続いて、サイドカバーカウル22がサイドアッパーカウル21に係止される。本実施形態では、係止爪64が爪嵌合部41に嵌め込まれ、挿入部69が溝44に嵌め込まれる。爪嵌合部41は、係止爪64を係止位置に案内する案内機構を有する。
図3に示すように、本実施形態では、爪嵌合部41が、案内機構の一例として、係止位置に形成されたスリット41aと、スリット41aの後側に連通した嵌合開口41bとを有する。スリット41aは、上下方向に係止爪64と略同じ大きさであり、嵌合開口41bは、スリット41a及び係止爪64よりも上下方向に大きい。係止爪64を爪嵌合部41に嵌め込むときには、係止爪64を嵌合開口41b内へと車幅方向外側から中心側に向けて挿し込んだ後、サイドカバーカウル22を前方にスライドさせ、係止爪64をスリット41a内に後から前向きに嵌め込んでいく。嵌合開口41bは係止爪64よりも大きいので、係止爪64の挿込み作業を簡便に行うことができる。導入開口41bに係止爪64を一旦嵌め込めば、嵌合開口41b内で係止爪64を動かすだけで、係止位置のスリット41aを簡単に探し当てることができ、係止爪64を係止位置に容易に配置することができる。このような案内機能があれば、スリット41aと係止爪64との間のバックラッシを小さめに設定しても、係止爪64を爪嵌合部41に嵌め込む作業が煩雑にならない。よって、係止爪64を爪嵌合部41に嵌め込む作業を簡便にすることと、係止爪64による取付信頼性を向上することとを両立することができる。
挿入部69は、サイドカバーカウル22の下端部から前方に突出し、溝44は、サイドアッパーカウル21のダウン部34の後縁で開放されている。このため、係止爪64を前にスライドさせながら、挿入部69を溝44の開放部分から前向きに挿入することにより、係止爪64をアッパー部33に係止させる作業と、挿入部69をダウン部34に係止させる作業とを同時並行することができる。挿入部69を溝44に挿入し終えると、爪70がちょうどスリット45内に嵌め込まれるようになっている。
このように、サイドカバーカウル22は、サイドアッパーカウル21の後から前向きに挿し込まれ、これにより開口23が形成される。サイドカバーカウル22は開口23の後方に隣接して配置されており、開口23の後方には他のカウリング部材が配置されていない。このため、係止爪64のスライド動作が簡便に行われる。
係止爪64を爪嵌合部41に嵌め込むときには、サイドカバーカウル22の被覆部61の後端部を車幅方向外側に撓ませておく。サイドカバーカウル22は、樹脂成型品のためある程度の弾性を有しており、サイドカバーカウル22を撓ませながら係止爪64を爪嵌合部41に嵌め込む作業は煩雑ではない。被覆部61の後端部を車幅方向外側に撓ませておくと、係止突起63をカウルブラケット80から車幅方向外側に逃がすことができ、係止爪64のスライド動作を干渉しない。
次に、係止突起63がカウルブラケット80の凹所85に嵌め込まれる。係止爪64が係止位置に位置していると、被覆部61の後端部は、アッパー部33よりも後方に配置され、それにより、アッパー部33によっては隠されなかった取付部83の後端部が、被覆部61で車幅方向外側から覆われる。そして、予め撓ませてあった係止突起63を車幅方向中心側に押し戻すだけで、係止突起63を凹所85に嵌め込むことができる。
凹所85は、取付部83の後端部に設けられ、取付部83の後端部は、突出部39から後方に離れて配置されるので、係止突起63をアッパー部33と干渉させることなく凹所85に簡便に嵌め込むことができる。また、取付部83の後端部は、メインフレーム6から下方に離れて設けられている。このため、被覆部61の後端部も比較的下方に位置させることができ、サイドカバーカウル22が上下方向に大型化するのを防ぐことができる。
係止突起63の凹所85への挿入方向は、車幅方向である。一方、係止爪64は、鉤状又はフック状に形成されており(図6参照)、そのため、係止爪64の前端部は、スリット41aの前端よりも前方に位置して突出部39の車幅方向中心側の端面に係止される。このように係止爪64は、サイドカバーカウル22が車体に対して車幅方向に相対移動するのを阻止するようにしてサイドアッパーカウル21に係止されており、係止突起63の凹所85への挿入方向に対する変位を阻止する。このように係止爪64が係止突起63の抜け止め効果を発揮し、サイドカバーカウル22の取付信頼性が向上する。
係止突起63が凹所85に嵌め込まれると、サイドカバーカウル22の車体に対する位置が安定し、被覆部61の下縁部とアッパー部33の下縁部とが、この順で下方から上下方向に並べられ、開口23の上側に隣接して配置される。サイドカバーカウル22のフランジ65はサイドアッパーカウル21のフランジ42と上下方向に重ねられ、貫通穴66,43が上下方向に互いに整合される。貫通穴66,43は、被覆部61及びアッパー部33で隠されているが、これら被覆部61及びアッパー部33は開口23に隣接して配置されているので、貫通穴66,43には開口23を介して容易にアクセス可能である。そこで、開口23を介してサイドカウル構造20の内側に手を差し入れ、締結部材92(例えば、樹脂リベット)が下から貫通穴66,43に挿入される。これにより、締結部材92でサイドカバーカウル22をサイドアッパーカウル21に簡便に固定することができる。締結部材92は被覆部61及びアッパー部33で隠されるので、美観は損なわれない。
サイドカバーカウル22がサイドアッパーカウル21に取り付けられた後、締結部材93(例えば、ボルト)をカバー貫通穴68に車幅方向外側から中心側に向けて挿入されて車体に螺合される。上記のようにサイドカバーカウル22を取り付けると、カバー貫通穴68は、ダウン部34のダウン貫通穴47と車幅方向に整合するので、締結部材92は、ダウン貫通穴47にも挿入される。このように、サイドカバーカウル22の下部は、締結部材93で車体にダウン部34と共締めされる。2つのカウリング部材21,22が1つの締結部材93で車体に固定されるので、作業効率が向上する。
上記のようにしてサイドカウル構造20が車体に組み付けられる。本実施形態に係るサイドカウル構造20では、サイドアッパーカウル21をアッパー貫通穴40に挿入された締結部材91で車体にしっかりと取り付けることができる。アッパー貫通穴40はサイドアッパーカウル21の被覆部61で隠される。このため、開口23の上方に隣接した目立ちやすい箇所に締結部材91が設けられていても、自動二輪車1の美観が損なわれない。サイドカバーカウル22は、係止部62によって車体に固定された部材(すなわち、サイドアッパーカウル21及びカウルブラケット80)に係止され、カバー貫通穴68に挿入された締結部材93でロアカウル18に固定される。係止部62は、サイドアッパーカウル21のアッパー部33又はサイドカバーカウル22の被覆部22で隠される。このように、アッパー部33又は被覆部61が設けられたサイドカウル構造20の上部では、サイドカバーカウル22の固定に係止を採用して係止部62を隠している。一方、サイドカウル構造20の下部の目立ちにくい箇所では、サイドカバーカウル22の固定に締結を採用している。このように、サイドカバーカウル22の目立ちやすい箇所では締結部材を設けなくて済むので、自動二輪車1の美観が損なわれない。サイドカバーカウル22の目立ちにくい箇所で締結部材93を設けているので、自動二輪車1の美観を損なうことなくサイドカバーカウル22を車体にしっかりと取り付けることができる。
特に、本実施形態では、挿入部69が、カバー貫通穴68の真上に配置されると共に車幅方向外側に突出している。挿入部69は、この車幅方向外側への突出部により、ダウン部34の車幅方向外側の端面よりも車幅方向外側に突出している。このため、挿入部69が庇のようになり、カバー貫通穴に挿入された締結部材がより目立ちにくくなって、自動二輪車1の美観が向上する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記構成は単なる一例であり、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、アッパー部とダウン部とは一体であるとしたが、これら2つの部分は必ずしも一体的に設けられていてなくてもよい。