JP6003523B2 - 車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている技術では、車両に作用する横力に基づいて、サスペンションに発生するフリクションを検出する。そして、車体の挙動を抑制するための抑制目標値から、検出したフリクションを減算して、車体の挙動を抑制するためにサスペンションで発生させるフリクションの目標値を算出する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、車体のロール挙動を抑制するための制御を、車両の走行状態に応じて適切に行なうことが可能な、車両挙動制御装置及び車両挙動制御方法を提供することを目的とする。
これにより、車体のロール挙動を抑制するために発生させるフリクションの目標値を適切に算出して、車体のロール挙動を抑制するための制御を、車体の横方向への加速度の大きさによって異なる車両の走行状態に応じて、適切に行なうことが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車両挙動制御装置1を備える車両Vの概略構成を示すブロック図である。
図1中に示すように、車両挙動制御装置1を備える車両Vは、Gセンサ2と、ヨーレートセンサ4と、操舵角センサ6と、ドライバブレーキ液圧センサ8と、アクセル開度センサ10を備える。これに加え、車両Vは、シフトポジションセンサ12と、ストロークセンサ14と、モードスイッチ16と、車輪速センサ18と、制駆動力コントローラ20と、ブレーキペダル22と、マスタシリンダ24を備える。さらに、車両Vは、ブレーキアクチュエータ26と、動力コントロールユニット28と、動力ユニット30と、ホイールシリンダ32と、車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)と、サスペンションSPを備える。
バネ上上下加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体のバネ上部分における上下方向への加速度を検出する。そして、検出した加速度を含む情報信号(以降の説明では、「バネ上上下加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
横加速度センサの機能を有するブロックは、車両Vに対し、車体の横方向(車幅方向)への加速度(以降の説明では、「実測横加速度」と記載する場合がある)を検出する。そして、検出した実測横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「実測横加速度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ヨーレートセンサ4は、車両Vのヨーレート(車体が旋回する方向への回転角の変化速度)を検出し、検出したヨーレートを含む情報信号(以降の説明では、「ヨーレート信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
また、操舵角センサ6は、中立位置を基準とした操舵操作子の現在の回転角度(操舵操作量)である、現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ6は、検出した現在操舵角を含む情報信号(以降の説明では、「現在操舵角信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
アクセル開度センサ10は、図示しないアクセルペダルの開度を検出し、検出した開度を含む情報信号(以降の説明では、「アクセル開度信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ストロークセンサ14は、サスペンションSPの実測ストローク量(実測変位量)を検出し、検出した実測ストローク量を含む情報信号(以降の説明では、「実測ストローク量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ストロークセンサ14は、各車輪Wに対して設置したサスペンションSPの実測ストローク量を、それぞれ個別に検出して、実測ストローク量信号を生成する。
なお、図1中では、右前輪WFRの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18FRと示し、左前輪WFLの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18FLと示す。同様に、図1中では、右後輪WRRの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18RRと示し、左後輪WRLの回転速度を検出する車輪速センサ18を、車輪速センサ18RLと示す。また、以降の説明においても、各車輪Wや各車輪速センサ18を、上記のように示す場合がある。
また、制駆動力コントローラ20は、入力される各種の情報信号に基づいて後述する各種の処理を行い、ブレーキアクチュエータ26及び動力ユニット30を制御するための指示信号(制動力指令値、駆動力指令値)を出力する。
ブレーキペダル22は、車両Vの運転者が制動操作を行う際に踏込むペダルであり、運転者によるペダル踏力を、マスタシリンダ24に伝達する。
また、ブレーキアクチュエータ26は、ABS制御が作動しているか否かを示すフラグ情報信号(以降の説明では、「ABS作動フラグ信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。なお、ABSとは、「Antilocked Braking System」の略称である。
なお、車両Vが備えるシステムとは、例えば、先行車追従走行制御を行なうシステムであり、車両Vと先行車との車間距離を、車両Vの車速に応じた距離に制御するためのシステムである。
動力コントロールユニット28は、制駆動力コントローラ20から入力を受けた駆動力指令値に応じて、動力ユニット30が発生させる駆動力を制御する。なお、本実施形態では、後述するように、動力ユニット30を、エンジンを用いて形成するため、動力コントロールユニット28は、エンジンが発生させる駆動力に関する値(例えば、駆動トルク、回転数、トランスミッションのギヤ比)を制御する。
また、動力コントロールユニット28は、前輪及び後輪に対するトルクの制御値(トルクコントロール値)を含む情報信号(以降の説明では、「トルクコントロール信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
また、動力コントロールユニット28は、動力ユニット30(エンジン)が発生させている現在のトルク(エンジントルク)を含む情報信号(以降の説明では、「現在トルク信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ20へ出力する。
ホイールシリンダ32は、ディスクブレーキを構成するブレーキパッド(図示せず)を、各車輪Wと一体に回転するディスクロータ(図示せず)に押し付けるための押圧力を発生する。
サスペンションSP(サスペンション装置)は、各車輪Wと車両Vの車体との間に設置した懸架装置である。
なお、図1中では、右前輪WFRに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPFRと示し、左前輪WFLに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPFLと示す。同様に、図1中では、右後輪WRRに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPRRと示し、左後輪WRLに対して設置したサスペンションSPを、サスペンションSPRLと示す。また、以降の説明においても、各サスペンションSPを、上記のように示す場合がある。
次に、図1を参照しつつ、図2から図11を用いて、フリクション検出ブロック34の構成を説明する。
図2は、フリクション検出ブロック34の概略構成を示すブロック図である。
図2中に示すように、フリクション検出ブロック34は、制動力算出部40と、駆動力算出部42と、サスペンション状態算出部44と、サスペンション横力算出部46を備える。これに加え、フリクション検出ブロック34は、制動力フリクション算出部48と、駆動力フリクション算出部50と、サスペンション状態フリクション算出部52と、横力フリクション算出部54と、総フリクション算出部56を備える。
図3中に示すように、制動力算出部40は、ブレーキ液圧合算部58と、ブレーキ液圧値選択部60と、車輪制動力算出部62を備える。
ここで、ブレーキ液圧合算部58、ブレーキ液圧値選択部60及び車輪制動力算出部62で行なう処理は、各車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に対して個別に行なう。
そして、ブレーキ液圧合算部58は、入力を受けたドライバブレーキ液圧信号が含む液圧と、付加機能ブレーキ液圧信号及びVDC液圧信号が含む指令値に応じた液圧を合算する。そして、合算した液圧を含む情報信号(以降の説明では、「液圧合算値信号」と記載する場合がある)を、ブレーキ液圧値選択部60へ出力する。
ブレーキ液圧値選択部60は、例えば、マルチプレクサ(multiplexer)回路を用いて形成する。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキアクチュエータ26から、ABS作動フラグ信号(図中では、「ABS作動フラグ」と示す)の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、ブレーキ液圧合算部58から、液圧合算値信号の入力を受ける。また、ブレーキ液圧値選択部60は、予め記憶しているブレーキ液圧が「0」である場合の液圧値を示す情報信号(図中では、「液圧ゼロ」と示す)の入力を受ける。
以上により、制動力算出部40は、各車輪Wに対し、その制動力を個別に算出する。
図4中に示すように、駆動力算出部42は、推定トルク算出部64と、トルク値選択部66と、車輪駆動力算出部68を備える。
ここで、推定トルク算出部64、トルク値選択部66及び車輪駆動力算出部68で行なう処理は、各車輪Wに対して個別に行なう。
以上により、駆動力算出部42は、各車輪Wに対し、その駆動力を個別に算出する。
また、駆動力算出部42は、車両Vの走行制御に基づく車輪Wの駆動力を算出する。なお、車両Vの走行制御とは、上述した制動力算出部40の説明と同様である。
図5中に示すように、サスペンション状態算出部44は、バネ上側積分処理部70と、バネ下側積分処理部72と、上下加速度加減算処理部74を備える。これに加え、サスペンション状態算出部44は、ストローク速度積分処理部76と、ストローク速度微分処理部78と、車輪ストローク選択部80と、車輪ストローク速度選択部82を備える。
ここで、車輪ストローク選択部80は、例えば、ストロークセンサ14に故障等の異常が発生している場合に、推定ストローク量をサスペンションSPのストローク量として選択する処理を行う。
以上により、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSP(サスペンションSPFR、サスペンションSPFL、サスペンションSPRR、サスペンションSPRL)に対し、そのストローク位置を個別に算出する。
また、サスペンション状態算出部44は、各サスペンションSPに対し、そのストローク速度を個別に算出する。
図6中に示すように、サスペンション横力算出部46は、車両状態算出部84と、横加速度選択部86と、第一車輪サスペンション横力算出部88と、第二車輪サスペンション横力算出部90と、横力決定部92を備える。
ここで、車両状態算出部84、横加速度選択部86、第一車輪サスペンション横力算出部88、第二車輪サスペンション横力算出部90、横力決定部92で行なう処理は、各サスペンションSPに対して個別に行なう。
そして、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、推定横加速度を算出する。そして、算出した推定横加速度を含む情報信号(以降の説明では、「推定横加速度信号」と記載する場合がある)を、横加速度選択部86へ出力する。
また、車両状態算出部84は、車輪速信号が含む車輪Wの回転速度に基づく車速と、現在操舵角信号が含む現在操舵角を用いて、例えば、車輪Wに対し、予め設定した荷重当たりのスリップ角を、車両状態として算出する。そして、算出した車両状態を含む情報信号(以降の説明では、「算出車両状態信号」と記載する場合がある)を、第二車輪サスペンション横力算出部90へ出力する。
ここで、横加速度選択部86は、例えば、Gセンサ2(横加速度センサの機能を有するブロック)に故障等の異常が発生している場合に、推定横加速度を車体の横方向の加速度として選択する処理を行う。
横力決定部92は、第一個別車輪横力信号が含む横力と、第二個別車輪横力信号が含む横力のうち少なくとも一方に基づき、各サスペンションSP別の横力を算出する。そして、算出した各サスペンションSP別の横力を含む情報信号(以降の説明では、「各輪横力信号」と記載する場合がある)を、横力フリクション算出部54へ出力する。
以上により、サスペンション横力算出部46は、各サスペンションSPに対し、その横力を個別に算出する。
なお、上述した制動力フリクション算出マップ、駆動力フリクション算出マップ、ストローク位置フリクション算出マップ、ストローク速度フリクション算出マップ、横力フリクション算出マップは、台上走行や路上走行等で計測したデータを用いて形成する。ここで、台上走行とは、例えば、シャシーダイナモメーター(chassis dynamometer)上の走行である。
次に、図1から図11を参照しつつ、図12を用いて、乗り心地制御ブロック36の構成を説明する。
図12は、乗り心地制御ブロック36の概略構成を示すブロック図である。
図12中に示すように、乗り心地制御ブロック36は、乗り心地制御側車両挙動算出部94と、乗り心地制御側目標フリクション算出部96と、乗り心地制御側制駆動力配分比算出ブロック98と、制動力指令値算出部100と、駆動力指令値算出部102を備える。
そして、乗り心地制御側目標フリクション算出部96は、推定上下挙動と、各輪総フリクションと、車速を用いて、乗り心地制御用各輪目標フリクションを算出する。そして、算出した乗り心地制御用各輪目標フリクションを含む情報信号(以降の説明では、「乗り心地制御用各輪目標フリクション信号」と記載する場合がある)を、乗り心地制御側制駆動力配分比算出ブロック98へ出力する。
乗り心地制御側制駆動力配分比算出ブロック98は、乗り心地制御側目標フリクション算出部96から乗り心地制御用各輪目標フリクション信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、乗り心地制御側制駆動力配分比算出ブロック98は、乗り心地制御側車両挙動算出部94から推定ヨーレート信号の入力を受ける。
ここで、乗り心地制御側制駆動力配分比とは、車両Vの上下挙動を抑制するための、車輪Wの制動力と車輪Wの駆動力との配分比である。すなわち、乗り心地制御側制駆動力配分比は、乗り心地制御用各輪目標フリクション(目標値)に対する各車輪Wのフリクション(実際値)の過不足分を補正するために、車輪Wの制動力及び駆動力を制御するための配分比である。
駆動力指令値算出部102は、乗り心地制御側制駆動力配分比算出ブロック98から入力を受けた乗り心地制御側制駆動力配分比信号が含む制駆動力配分比のうち、車輪Wの駆動力の配分比を用いて、駆動力指令値を算出する。そして、算出した駆動力指令値を、動力コントロールユニット28へ出力する。
次に、図1から図12を参照しつつ、図13を用いて、操縦安定性制御ブロック38の構成を説明する。
図13は、操縦安定性制御ブロック38の概略構成を示すブロック図である。
図13中に示すように、操縦安定性制御ブロック38は、推定前後力算出部104と、操縦安定性制御側車両挙動算出部106と、挙動抑制フリクション算出部112と、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108を備える。これに加え、操縦安定性制御ブロック38は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110と、制動力指令値算出部100と、駆動力指令値算出部102を備える。
また、推定前後力算出部104は、算出した推定前後力を含む情報信号(以降の説明では、「推定前後力信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側車両挙動算出部106へ出力する。
また、操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、車速と現在操舵角を用いて、推定横Gを算出する。ここで、横Gとは、車体の横方向への加速度であり、推定横Gとは、車体の横方向への加速度の推定値である。
そして、操縦安定性制御側車両挙動算出部106は、算出した推定横Gを含む情報信号(以降の説明では、「推定横G信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110へ出力する。なお、推定横Gを算出する処理は、車両諸元を参照して行なってもよい。
ここで、推定ロールレートを算出する際には、例えば、以下の式(1)から(3)を用いる。
操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、挙動抑制フリクション算出部112から挙動抑制フリクション信号の入力を受け、総フリクション算出部56から各輪総フリクション信号の入力を受ける。また、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、上述した車輪速信号の入力を受ける。
そして、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108は、挙動抑制フリクションと、各輪総フリクションと、車速を用いて、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出する。そして、算出した操縦安定性制御用各輪目標フリクションを含む情報信号(以降の説明では、「操縦安定性制御用各輪目標フリクション信号」と記載する場合がある)を、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110へ出力する。
そして、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110では、推定横G、各輪総フリクション及び操縦安定性制御用各輪目標フリクションを用いて、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
なお、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110の具体的な構成については、後述する。
さらに、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110は、算出した操縦安定性制御側制駆動力配分比を含む情報信号(以降の説明では、「操縦安定性制御側制駆動力配分比信号」と記載する場合がある)を、制動力指令値算出部100へ出力する。これに加え、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号を、駆動力指令値算出部102へ出力する。
ここで、制動力指令値は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110で算出した車輪Wの制動力の配分比に基づくフリクションを、車輪Wの制動力によりサスペンションSPに発生させるための指令値(車輪Wの制動力の指令値)である。
ここで、駆動力指令値は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110で算出した車輪Wの駆動力の配分比に基づくフリクションを、車輪Wの駆動力によりサスペンションSPに発生させるための指令値(車輪Wの駆動力の指令値)である。
以下、図1から図13を参照しつつ、図14から図16を用いて、挙動抑制フリクション算出部112が行なう処理について説明する。
挙動抑制フリクション算出部112が行なう処理は、初期ロールを抑制するための挙動抑制フリクションを算出する処理と、ロール挙動をダンピング制御により抑制するための挙動抑制フリクションを算出する処理である。
図14中に示すように、初期ロール抑制フリクション算出処理では、推定ロールレートの絶対値を微分し、その微分値と、予め設定したロール開始閾値とを比較する。
なお、初期ロールとは、車両Vに発生しているロール挙動のうち、発生直後のロール挙動である。
また、初期ロール抑制フリクション算出処理では、推定ロールレートの絶対値に予め設定したロールフリクションゲインを乗算して、初期ロールを抑制するための挙動抑制フリクションを算出する。
算出した挙動抑制フリクションを発生させる各サスペンションSPの設定は、推定ロールレートの符合を参照し、この参照した符合から、車両Vに発生しているロールの方向(車幅方向に沿った方向)を判定する。
図15中に示すように、ダンピング制御用抑制フリクション算出処理では、推定ロールレートの絶対値と、予め設定した定常ロール閾値とを比較する。これに加え、推定ロール角の絶対値と、予め設定したロール角閾値とを比較する。
車両Vに発生しているロール挙動の揺り返しが発生すると判定すると、ロール挙動をダンピング制御により抑制するためのフラグであるロールダンピング抑制フラグを出力する(図中に示す「ロールダンピングON」)。
一方、推定ロールレートの絶対値が定常ロール閾値以上である条件、及び推定ロール角の絶対値がロール角閾値以上である条件のうち、少なくとも一方の条件が成立している場合には、車両Vに発生しているロール挙動の揺り返しが発生しないと判定する。
また、ダンピング制御用抑制フリクション算出処理では、推定ロール角の絶対値を参照し、ロールダンピング抑制フラグを出力すると、推定ロール角の絶対値から最大値を抽出する。なお、抽出した最大値は、ロールダンピング抑制フラグの出力が停止してから、再び、ロールダンピング抑制フラグを出力すると、更新、または、リセットを行なう。
ここで、ダンピング制御用抑制フリクションの算出は、挙動抑制フリクション算出部112が有するダンピング制御用抑制フリクション算出部114において行なう。
図16中に示すように、ダンピング制御用抑制フリクション算出部114で行なう処理では、推定ロール角の最大値に基づくロール挙動の最大値(車体の横方向(車幅方向)への加速度の最大値)を、予め記憶している収束時間算出マップに適合させる。これにより、車両Vに発生しているロール挙動を収束させるまでに要する時間(以降の説明では、「挙動収束時間」と記載する場合がある)を算出する。
また、ダンピング制御用抑制フリクション算出部114で行なう処理では、推定ロール角の最大値に基づくロール挙動の最大値を、予め記憶している必要フリクション算出マップに適合させる。これにより、車両Vに発生しているロール挙動を収束させるために必要な、サスペンションSPで発生させるフリクション(以降の説明では、「必要フリクション」と記載する場合がある)を算出する。
また、挙動抑制フリクション算出部112は、ロール挙動の揺り返しの発生を判定すると、全てのサスペンションSPで発生させる挙動抑制フリクションを算出する。
以下、図1から図16を参照しつつ、図17から図19を用いて、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110の具体的な構成について説明する。
図17は、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110の構成を示すブロック図である。
図17中に示すように、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110は、過不足分フリクション算出部116と、高G判定部118と、横Gレベル設定部120と、制駆動力分配指令演算部122と、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124を備える。
図18中に示すように、横Gが予め設定した高G判定閾値よりも大きいか否かを判定する処理では、推定横Gの絶対値と高G判定閾値とを比較する。
また、横Gが予め設定した高G判定閾値よりも大きいか否かを判定する処理では、推定横Gの絶対値を積算処理し、この積算処理した値を単位時間で平均化処理した値と、高G判定閾値の積算値とを比較する。
横Gレベル設定部120では、図19中に示すように、高G判定部118が出力する高G判定フラグに基づき、制駆動力分配指令演算部122で行なう処理で用いるパラメータである横Gレベルを設定する処理を行う。なお、図19は、横Gレベル設定部120で行なう処理を示す図である。
図19中に示すように、横Gレベルを設定する処理では、高G判定部118から高G判定フラグの入力を受けているか否かを判定する。
そして、高G判定部118から高G判定フラグの入力を受けていると判定すると、横Gレベルを、制駆動力分配指令演算部122で行なう処理を、車体の横Gが高G判定閾値よりも大きい場合の処理とするフラグである高横G制御フラグを生成する。さらに、生成した高横G制御フラグを、制駆動力分配指令演算部122へ出力する。
ここで、制駆動力分配指令値とは、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を、各サスペンションSPに発生させる指令値である。
制駆動力分配指令演算部122は、例えば、図20中に示すように、推定横Gの大きさに応じて、旋回開始時(コーナ進入時)と、定常旋回時と、旋回終了時(コーナ脱出時)で異なる処理を行う。なお、図20は、低中横G制御フラグの入力を受けた場合に制駆動力分配指令演算部122が行なう処理を示す図である。また、図20中には、前進走行中の車両Vが左側へ旋回している状態を示す。
このため、旋回開始時では、旋回時に内側の車輪Wとなる左前輪WFL及び左後輪WRLに設けたサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションのみを発生させるように、制駆動力分配指令値を演算する処理を行う。なお、図20中では、制動力によるフリクションを、破線の矢印で示す。
これにより、車両Vに沈み込み挙動を発生させる。これに加え、サスペンションSPに対して駆動力によるフリクションのみを発生させることにより、旋回終了時における車両Vの加速状態を確保して減速感の発生を抑制するとともに、車両Vの挙動安定性を向上させる。
制駆動力分配指令演算部122は、例えば、図21中に示すように、推定横Gの大きさに応じて、旋回開始時と、定常旋回時と、旋回終了時で異なる処理を行う。なお、図21は、高横G制御フラグの入力を受けた場合に制駆動力分配指令演算部122が行なう処理を示す図である。また、図21中には、前進走行中の車両Vが左側へ旋回している状態を示す。
次に、定常旋回中では、全ての車輪Wに設けたサスペンションSPに対し、制動力及び駆動力によるフリクションを発生させるように、制駆動力分配指令値を演算する処理を行う。なお、図21中では、制動力によるフリクションを、破線の矢印で示し、駆動力によるフリクションを、実線の矢印で示す。
そして、旋回終了時では、旋回時に内側の車輪Wとなる左前輪WFL及び左後輪WRLに設けたサスペンションSPに対し、駆動力によるフリクションのみを発生させるように、制駆動力分配指令値を演算する処理を行う。これに加え、旋回時に外側の車輪Wとなる右前輪WFR及び右後輪WRRに設けたサスペンションSPに対し、制動力によるフリクションのみを発生させるように、制駆動力分配指令値を演算する処理を行う。
以上により、制駆動力分配指令演算部122は、車体の横方向への加速度に基づいて、制駆動力分配指令値を演算する。
操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124は、制駆動力分配指令演算部122から入力を受けた制駆動力分配指令信号と、過不足分フリクション算出部116から入力を受けた過不足分フリクション信号を参照する。そして、制駆動力分配指令信号が含む制駆動力分配指令値と、過不足分フリクション信号が含む過不足分のフリクションに基づき、フリクションを発生させるサスペンションSPにおける、制動力によるフリクションと駆動力によるフリクションの配分比を算出する。これにより、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
操縦安定性制御用制動力フリクションは、過不足分のフリクションを、例えば、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124が予め記憶している制動力側挙動制御用フリクション算出マップに適合させて算出する。
操縦安定性制御用駆動力フリクションは、過不足分のフリクションを、例えば、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124が予め記憶している駆動力側挙動制御用フリクション算出マップに適合させて算出する。
また、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124が操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する際には、例えば、車輪Wの制動力が、車輪Wの駆動力以上となるように、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する処理を行う。
過不足分のフリクション< Kb×Fb_max+Ka×Fa_max … (4)
車輪Wの制動力<Fb_max … (5)
車輪Wの駆動力<Fa_max … (6)
車輪Wの制動力=車輪Wの駆動力= 過不足分のフリクション/Kb+Ka … (7)
車輪Wの駆動力>Fa_max … (8)
車輪Wの駆動力=Fa_max … (9)
車輪Wの制動力=過不足分のフリクション−Fa_max/Kb … (10)
また、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部124は、過不足分フリクション算出部116が算出した過不足分と、制駆動力分配指令演算部122が演算した制駆動力分配指令値に基づいて、操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する。
次に、図1から図23を参照しつつ、図24から図31を用いて、本実施形態の車両挙動制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。
図24は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のフローチャートである。なお、車両挙動制御装置1は、予め設定したサンプリング時間(例えば、50[msec])毎に、以下に説明する処理を行う。
図24中に示すように、車両挙動制御装置1が処理を開始(START)すると、まず、ステップS10において、車両Vの状態を示す情報を取得する処理(図中に示す「車両状態取得」)を行う。ステップS10において、車両Vの状態を示す情報を取得する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS20へ移行する。
ステップS50では、ステップS10で取得した各種情報を用いて、ステップS50では、挙動抑制フリクションに基づくサスペンションSPのフリクション制御を許可するか否かを判定する処理(図中に示す「フリクション制御許可?」)を行う。なお、ステップS50で行なう具体的な処理については、後述する。
一方、ステップS50において、挙動抑制フリクションに基づくサスペンションSPのフリクション制御を許可しない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS10の処理へ復帰する。
ステップS70では、ステップS10で取得した各種情報を用いて、駆動力指令値算出部102からの駆動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理(図中に示す「駆動指令許可?」)を行う。なお、ステップS70で行なう具体的な処理については、後述する。
一方、ステップS70において、駆動力指令値算出部102からの駆動力指令値の出力を許可しない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS90へ移行する。
ステップS80において、制動力指令値算出部100からの制動力指令値の出力を許可する(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS100へ移行する。
ステップS100では、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110から、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号を、制動力指令値算出部100及び駆動力指令値算出部102へ出力する。すなわち、ステップS100では、制動力及び駆動力によるフリクション発生をサスペンションSPに対して実現させるための手段に、操縦安定性制御側制駆動力配分比を分配する処理(図中に示す「フリクション実現手段(制駆動)に分配」)を行なう。なお、ステップS100で行なう具体的な処理については、後述する。
ステップS110では、制動力指令値算出部100により制動力指令値を算出する処理と、駆動力指令値算出部102により駆動力指令値を算出する処理(図中に示す「制駆動力指令値算出」)を行なう。さらに、ステップS110では、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理を行うとともに、駆動力指令値を動力コントロールユニット28へ出力する処理を行う。ステップS110において、制動力指令値をブレーキアクチュエータ26へ出力する処理と、駆動力指令値を動力コントロールユニット28へ出力する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS10の処理へ復帰(RETURN)する。
ステップS90において、制動力指令値算出部100からの制動力指令値の出力を許可する(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS140へ移行する。
ステップS140では、操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック110から、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号を、制動力指令値算出部100のみへ出力する。すなわち、ステップS140では、制動力によるフリクション発生をサスペンションSPに対して実現させるための手段に、操縦安定性制御側制駆動力配分比を分配する処理(図中に示す「フリクション実現手段(制動のみ)に分配」)を行なう。ステップS140において、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号を、制動力指令値算出部100へ出力する処理を行うと、車両挙動制御装置1が行なう処理は、ステップS150へ移行する。
図25は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、挙動抑制フリクションに基づくサスペンションSPのフリクション制御を許可するか否かを判定する処理、すなわち、上述したステップS50で行なう処理を示すフローチャートである。
図25中に示すように、ステップS50で行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS52において、総フリクションが挙動抑制フリクション未満であるか否かを判定する処理(図中に示す「挙動抑制フリクション>推定フリクション?」)を行う。
一方、ステップS52において、総フリクションが挙動抑制フリクション以上である(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS50で行なう処理は、ステップS52からステップS56へ移行する。
図26は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、駆動力指令値算出部102からの駆動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理、すなわち、上述したステップS70で行なう処理を示すフローチャートである。
ステップS72において、VDC制御またはTCS制御が作動している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、ステップS70で行なう処理は、ステップS72からステップS74へ移行する。
ステップS74では、駆動力指令値算出部102からの駆動力指令値の出力を許可しない処理(図中に示す「駆動力指令不許可」)を行う。ステップS74において、駆動力指令値算出部102からの駆動力指令値の出力を許可しない処理を行うと、ステップS70で行なう処理は、ステップS74からステップS72の処理へ復帰(RETURN)する。
以上により、ステップS70で行なう処理では、上述したVDC制御またはTCS制御が作動している場合、すなわち、車両Vの走行に関する不安定な挙動を抑制する制御が作動している場合には、駆動力指令値の出力を許可しない処理を行う。
図27は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、制動力指令値算出部100からの制動力指令値の出力を許可するか否かを判定する処理、すなわち、上述したステップS80で行なう処理を示すフローチャートである。
ステップS82において、VDC制御またはABS制御が作動している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、ステップS80で行なう処理は、ステップS82からステップS84へ移行する。
ステップS84では、制動力指令値算出部100からの制動力指令値の出力を許可しない処理(図中に示す「制動力指令不許可」)を行う。ステップS84において、制動力指令値算出部100からの制動力指令値の出力を許可しない処理を行うと、ステップS80で行なう処理は、ステップS84からステップS82の処理へ復帰(RETURN)する。
以上により、ステップS80で行なう処理では、上述したVDC制御またはABS制御が作動している場合、すなわち、車両Vの走行に関する不安定な挙動を抑制する制御が作動している場合には、制動力指令値の出力を許可しない処理を行う。
図28は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号を制動力指令値算出部100及び駆動力指令値算出部102へ出力する処理、すなわち、上述したステップS100で行なう処理を示すフローチャートである。
ステップS400では、推定横Gの絶対値が高G判定閾値よりも大きいか否かを判定する処理と、ステップS300で処理した値が高G判定閾値の積算値よりも大きいか否かを判定する処理(図中に示す「推定横G>高G判定閾値?」)を行う。
一方、ステップS400において、推定横Gの絶対値とステップS300で処理した値が、共に閾値よりも大きい(図中に示す「Yes」)と判定した場合、ステップS100で行なう処理は、ステップS400からステップS600へ移行する。
なお、ステップS120及びステップS140においても、操縦安定性制御側制駆動力配分比信号の出力先が異なる点を除き、ステップS100で行なう処理と同様の処理を行う。
図29は、車両挙動制御装置1を用いて行なう動作のうち、横Gレベル設定部120から低中横G制御フラグの入力を受けた場合に行なう処理を示すフローチャートである。
図29中に示すように、ステップS500で行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS510において、操縦安定性制御側車両挙動算出部106から入力を受けた推定横G信号を参照する。そして、推定横Gを取得する処理(図中に示す「推定横G取得」)を行う。ステップS510において、推定横Gを取得する処理を行うと、ステップS500で行なう処理は、ステップS510からステップS520へ移行する。
一方、ステップS520において、推定横Gの増加率が旋回開始判定閾値以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS500で行なう処理は、ステップS520からステップS540へ移行する。
ステップS540では、推定横Gが、予め設定した旋回中判定閾値よりも大きいか否かを判定する処理(図中に示す「推定横G>旋回中判定閾値?」)を行う。なお、旋回中判定閾値は、例えば、車両Vの諸元等に基づいて設定する。
一方、ステップS540において、推定横Gが旋回中判定閾値以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS500で行なう処理は、ステップS540からステップS560へ移行する。
一方、ステップS560において、推定横Gの減少率が旋回終了判定閾値以下である(図中に示す「No」)と判定した場合、ステップS500で行なう処理は、ステップS560からステップS510の処理へ復帰(RETURN)する。
なお、ステップS600においても、定常旋回時に制駆動力分配指令値を演算する処理の内容と、旋回終了時に制駆動力分配指令値を演算する処理の内容が異なる点を除き、ステップS500で行なう処理と同様の処理を行う。
なお、図30中では、挙動抑制フリクションのタイムチャートにおいて、制動力によるフリクション(図中では、「制動」と示す)を、破線で示す。また、図30中では、挙動抑制フリクションのタイムチャートにおいて、駆動力によるフリクション(図中では、「駆動」と示す)を、実線で示す。
ここで、右側の車輪Wに設けたサスペンションSP(SPFR、SPRR)に、駆動力によるフリクションのみを発生させる理由を説明する。
また、サスペンションSPFL,SPRLに制動力によるフリクションのみを発生させ、サスペンションSPFR,SPRRに駆動力によるフリクションのみを発生させることにより、車体に旋回方向内側(左側)へ向くヨーモーメントを付加する。
時点t3の後に、操舵角が減少して、車両Vが直進走行となった時点(図中に示す「t4」の時点)において、挙動抑制フリクションをサスペンションSPに発生させる処理を終了する。
なお、図32中では、サスペンションSPFL,SPRLに発生させるフリクションを、基準線よりも上方に示し、サスペンションSPFR,SPRRに発生させるフリクションを、基準線よりも下方に示す。
時点t7の後に、操舵角が減少して、車両Vが直進走行となった時点(図中に示す「t8」の時点)において、挙動抑制フリクションをサスペンションSPに発生させる処理を終了する。
また、上述したブレーキアクチュエータ26、マスタシリンダ24、各ホイールシリンダ32は、制動力付与部に対応する。
なお、運転者による制動力要求の制御に応じた制動力とは、運転者によるブレーキペダル22の操作に応じて制御する制動力である。また、車両Vのシステム制御に応じた制動力とは、例えば、上述した先行車追従走行制御や車線維持走行制御等に応じて制御する制動力である。
ここで、本実施形態の駆動力付与部は、上述したように、運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両Vのシステム制御に応じた駆動力に、駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、車輪Wに制動力を付与する。
また、上述したサスペンション状態算出部44は、ストローク位置算出部と、ストローク速度算出部に対応する。
また、上述したサスペンション状態フリクション算出部52は、ストローク位置フリクション算出部と、ストローク速度フリクション算出部に対応する。
本実施形態の車両挙動制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)総フリクション算出部56が、総フリクションを各サスペンションSPに対して個別に算出し、挙動抑制フリクション算出部112が、挙動抑制フリクションを算出する。また、操縦安定性制御側目標フリクション算出部108が、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを算出し、過不足分フリクション算出部116が、操縦安定性制御用各輪目標フリクションに対する総フリクションの過不足分を算出する。
このため、横力が作用しにくい直進走行時等においても、車輪Wの制動力及び駆動力により、サスペンションSPが入力を受ける前後力に基づいて、各サスペンションSPに発生する総フリクションを適切に算出することが可能となる。これに加え、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、制駆動力分配指令値を演算することが可能となる。
これにより、車両Vの走行時に発生する車体のロール挙動を抑制して、車両Vの乗り心地の低下を抑制することが可能となる。これに加え、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、車体のロール挙動や安定性を制御することが可能となる。
このため、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、フリクションを発生させるサスペンションSPを変更することが可能となる。これに加え、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、サスペンションSPに発生させるフリクションを、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方に変更することが可能となる。
その結果、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、沈み込み挙動の発生、ロール挙動の安定性向上、車両Vの減速度を「±0」に近づける、旋回走行時における車両Vの挙動安定性向上、車両Vの運転者が感じる減速感の低減等が可能となる。
このため、上述した伸び輪と車体とを連結するサスペンションSPに挙動抑制フリクションを発生させ、ロール挙動が発生している車両Vにおいて、車輪Wと車体との上下方向の距離が減少する沈み込み挙動を発生させることが可能となる。
その結果、ロール挙動が発生している車両Vに沈み込み挙動を発生させて、車両Vの走行時に発生する車体のロール挙動を抑制し、車両Vの乗り心地の低下を抑制することが可能となる。また、車両Vに発生するヨーレートに対する応答性を向上させることが可能となる。
このため、上述した縮み輪に設けたサスペンションSPが備える弾性部材が収縮して貯蔵されたエネルギが急激に開放されることを、抑制することが可能となる。これに加え、車両Vに発生しているロール挙動のうち、初期ロールよりも大きなロール挙動である揺り返し発生を判定した場合に、揺り返しを抑制するためのダンパーとしての機能を、全てのサスペンションSPで発揮させることが可能となる。
また、車両Vに発生するヨーモーメントを抑制することが可能となる。さらに、揺り返しを抑制するためのダンパーとしての機能を、各サスペンションSPが有するショックアブソーバとしての機能と協調させることが可能となり、揺り返しの発生時において、車体のロール挙動を抑制することが可能となる。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない車輪Wの制動力及び駆動力を算出することが可能となり、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない制動力に加え、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映した制動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
その結果、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映しない駆動力に加え、車体のロール挙動を抑制するための制御を反映した駆動力を、車輪Wに付与することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク位置に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク位置に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの走行時に変化するサスペンションSPのストローク速度に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPのストローク速度に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
このため、サスペンションSPが入力を受ける前後力に加え、車両Vの旋回走行時においてサスペンションSPに作用する横力に基づいて、総フリクションを適切に算出することが可能となる。
その結果、サスペンションSPに作用する横力に基づいて車両Vの走行状態に応じた算出精度を向上させた総フリクションを用いて、制動力指令値や駆動力指令値を算出することが可能となる。
その結果、操縦安定性制御用各輪目標フリクションを適切に算出して、車体のロール挙動を抑制するための制御を、車体の横方向への加速度の大きさによって異なる車両Vの走行状態に応じて、適切に行なうことが可能となる。これにより、車両Vの走行時に発生する車体のロール挙動を抑制して、車両Vの乗り心地の低下を抑制することが可能となる。これに加え、車体の横方向への加速度の大きさに応じて、車体のロール挙動や安定性を制御することが可能となる。
(1)本実施形態では、制動力フリクション、駆動力フリクション、ストローク位置フリクション、ストローク速度フリクション、横力フリクションを合算して、総フリクションを算出したが、これに限定するものではない。すなわち、少なくとも、制動力フリクション及び駆動力フリクションに基づいて、総フリクションを算出すればよい。
(2)本実施形態では、動力ユニット30を、エンジンを用いて形成したが、動力ユニット30の構成は、これに限定するものではない。すなわち、動力ユニット30を、例えば、モータを用いて形成してもよく、また、エンジン及びモータを用いて形成してもよい。
20 制駆動力コントローラ
34 フリクション検出ブロック
36 乗り心地制御ブロック
38 操縦安定性制御ブロック
40 制動力算出部
42 駆動力算出部
44 サスペンション状態算出部
46 サスペンション横力算出部
48 制動力フリクション算出部
50 駆動力フリクション算出部
52 サスペンション状態フリクション算出部
54 横力フリクション算出部
56 総フリクション算出部
100 制動力指令値算出部
102 駆動力指令値算出部
108 操縦安定性制御側目標フリクション算出部
110 操縦安定性制御側制駆動力配分比算出ブロック
112 挙動抑制フリクション算出部
114 ダンピング制御用抑制フリクション算出部
116 過不足分フリクション算出部
122 制駆動力分配指令演算部
124 操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部
V 車両
W 車輪
SP サスペンション
Claims (11)
- 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、を備える車両に対し、前記車体に発生するロール方向への挙動であるロール挙動を制御する車両挙動制御装置であって、
前記車輪の制動力を算出する制動力算出部と、
前記制動力算出部が算出した制動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである制動力フリクションを算出する制動力フリクション算出部と、
前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出部と、
前記駆動力算出部が算出した駆動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである駆動力フリクションを算出する駆動力フリクション算出部と、
前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクションと、前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションと、を合算して、前記サスペンションに発生するフリクションである総フリクションを、各サスペンションに対して個別に算出する総フリクション算出部と、
前記車体のロール挙動を算出するロール挙動算出部と、
前記ロール挙動算出部が算出したロール挙動に基づいて、前記ロール挙動を抑制するために前記各サスペンションで発生させるフリクションである挙動抑制フリクションを算出する挙動抑制フリクション算出部と、
前記総フリクション算出部が算出した総フリクションと、前記挙動抑制フリクション算出部が算出した挙動抑制フリクションと、に基づいて、前記挙動抑制フリクションに対する前記総フリクションの過不足分を算出する過不足分フリクション算出部と、
前記車体の横方向への加速度を算出する横方向加速度算出部と、
前記横方向加速度算出部が算出した横方向への加速度に基づいて、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を前記各サスペンションに発生させる指令値である制駆動力分配指令値を演算する制駆動力分配指令演算部と、
前記過不足分フリクション算出部が算出した過不足分と、前記制駆動力分配指令演算部が演算した制駆動力分配指令値と、に基づいて、前記過不足分フリクション算出部が算出した過不足分に相当するフリクションを前記制駆動力分配指令値に対応するサスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との配分比である操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出する操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部と、
前記操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを車輪の制動力により前記サスペンションに発生させるための指令値である制動力指令値を算出する制動力指令値算出部と、
前記操縦安定性制御側制駆動力配分比算出部が算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを車輪の駆動力により前記サスペンションに発生させるための指令値である駆動力指令値を算出する駆動力指令値算出部と、
前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づいて、前記車輪に制動力を付与する制動力付与部と、
前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づいて、前記車輪に駆動力を付与する駆動力付与部と、を備えることを特徴とする車両挙動制御装置。 - 前記制駆動力分配指令演算部は、前記横方向加速度算出部が算出した横方向への加速度の大きさに応じて、前記制駆動力分配指令値を変更することを特徴とする請求項1に記載した車両挙動制御装置。
- 前記挙動抑制フリクション算出部は、前記ロール挙動の発生を判定すると、前記車両を車両前後方向から見て前記複数の車輪のうち前記車体との上下方向の距離が大きい側の車輪と車体とを連結するサスペンションで発生させる前記挙動抑制フリクションを算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両挙動制御装置。
- 前記挙動抑制フリクション算出部は、前記ロール挙動の揺り返しの発生を判定すると、全ての前記サスペンションで発生させる前記挙動抑制フリクションを算出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記制動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の制動力を算出し、
前記駆動力算出部は、前記車両の走行制御に基づく前記車輪の駆動力を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記制動力付与部は、前記車両の運転者による制動力要求の制御に応じた制動力及び車両のシステム制御に応じた制動力に、前記制動力指令値算出部が算出した制動力指令値に基づく制動力を合算して、前記車輪に制動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記駆動力付与部は、前記車両の運転者による駆動力要求の制御に応じた駆動力及び車両のシステム制御に応じた駆動力に、前記駆動力指令値算出部が算出した駆動力指令値に基づく駆動力を合算して、前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。
- 前記サスペンションのストローク位置を算出するストローク位置算出部と、
前記ストローク位置算出部が算出したストローク位置に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク位置フリクションを算出するストローク位置フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク位置フリクション算出部が算出したストローク位置フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションのストローク速度を算出するストローク速度算出部と、
前記ストローク速度算出部が算出したストローク速度に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションであるストローク速度フリクションを算出するストローク速度フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記ストローク速度フリクション算出部が算出したストローク速度フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 前記サスペンションの横力を算出するサスペンション横力算出部と、
前記サスペンション横力算出部が算出した横力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである横力フリクションを算出するサスペンション横力フリクション算出部と、を備え、
前記総フリクション算出部は、前記制動力フリクション算出部が算出した制動力フリクション及び前記駆動力フリクション算出部が算出した駆動力フリクションに、前記サスペンション横力フリクション算出部が算出した横力フリクションを合算して、前記総フリクションを各サスペンションに対して個別に算出することを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した車両挙動制御装置。 - 車体と、複数の車輪と、前記車体と各車輪とを連結するサスペンションと、を備える車両に対し、前記車体に発生するロール方向への挙動であるロール挙動を制御する車両挙動制御方法であって、
前記車輪の制動力と、前記車輪の駆動力と、前記車体のロール挙動と、前記車体の横方向への加速度と、を算出し、
前記算出した制動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである制動力フリクションを算出し、
前記算出した駆動力に基づいて前記サスペンションに発生するフリクションである駆動力フリクションを算出し、
前記算出した制動力フリクションと駆動力フリクションを合算して、前記サスペンションに発生するフリクションである総フリクションを、各サスペンションに対して個別に算出し、
前記算出したロール挙動に基づいて、前記ロール挙動を抑制するために前記各サスペンションで発生させるフリクションである挙動抑制フリクションを算出し、
前記算出した総フリクション及び挙動抑制フリクションに基づいて、前記挙動抑制フリクションに対する前記総フリクションの過不足分を算出し、
前記算出した横方向への加速度に基づいて、制動力によるフリクション及び駆動力によるフリクションのうち少なくとも一方を前記各サスペンションに発生させる指令値である制駆動力分配指令値を演算し、
前記算出した過不足分と、前記演算した制駆動力分配指令値と、に基づいて、前記算出した過不足分に相当するフリクションを前記制駆動力分配指令値に対応するサスペンションに発生させるために必要な、前記車輪の制動力と車輪の駆動力との配分比である操縦安定性制御側制駆動力配分比を算出し、
前記算出した前記車輪の制動力の配分比に基づくフリクションを車輪の制動力により前記サスペンションに発生させるための指令値である制動力指令値を算出し、
前記算出した前記車輪の駆動力の配分比に基づくフリクションを車輪の駆動力により前記サスペンションに発生させるための指令値である駆動力指令値を算出し、
前記算出した制動力指令値に基づいて、前記車輪に制動力を付与し、
前記算出した駆動力指令値に基づいて、前記車輪に駆動力を付与することを特徴とする車両挙動制御方法。
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