JP5998030B2 - 太陽電池用又はディスプレイ用ガラスとその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池用又はディスプレイ用のガラスとその製造方法に関する。本発明は、特に、太陽電池の入射光側に配置されるカバーガラス及びディスプレイの前面に配置されるガラスとこれらの製造方法に関する。
環境への負担を軽減する観点から、クリーンエネルギーを生成する太陽電池が注目されている。太陽電池のカバーガラスとしては、型板ガラスが使用されることが多い。型板ガラスの表面の凹凸は、入射光を散乱させる防眩(アンチグレア)機能を発揮する。この機能によって、型板ガラスは、太陽電池からの反射光により周囲の建築物の居住者が眩しさを感じることを防止する。型板ガラスは、周囲の風景がカバーガラスに写り込んで太陽電池が設置された建築物の美観が損なわれることも防止する。
太陽電池のカバーガラスには、光電変換部への入射光量を増加させるために、反射抑制(アンチリフレクション)機能も求められている。この機能の実現には、一般に、型板ガラスの表面の凹凸よりも小さな凹凸が適している。反射抑制機能を付与するために、シリカ微粒子とバインダーとから構成された低反射膜をガラス板の表面に形成することが提案されている(例えば特許文献1)。
近年、太陽電池に対しては、軽量化の要請も顕著になってきている。軽量の太陽電池であれば、太陽電池を設置するための支持体の構造を簡素にできるためであり、重量物を乗せることを考慮して設計されていない支持体(例えばガソリンスタンドの屋根)の上にも設置しやすくなるためである。
他方、スマートフォンやタブレット端末の液晶画面に用いられるディスプレイ用ガラスにおいても、周囲の写り込みを防止して見やすくするための防眩機能が求められると同時に、液晶部の光源からの入射光量を増加させるための反射抑制機能が求められる。
特開2001−278637号公報
太陽電池やディスプレイを軽量化するためにはガラスを薄くすることが望まれる。しかし、型板ガラスの量産に用いられているロールアウト法は、薄いガラス板、具体的には3mm未満の厚さを有するガラス板の製造には適しておらず、1.5mm未満の厚さを有するガラス板を製造することはできない。他方、薄いガラス板の量産に適している製造方法としてはフロート法及びフュージョンダウンドロー法が挙げられる。しかし、これらの製造方法を用い、制御された表面凹凸を有する薄いガラス板を量産することは難しい。
フロート法などにより得た薄く平滑な表面を有するガラス板の上にシリカ微粒子とバインダーとからなる低反射膜を形成すれば、少なくとも反射抑制機能を付与することはできる。しかし、この場合は、薄いガラス板の強度不足を補ってガラスとしての実用的な強度を付与するために実施するべき強化処理が問題となる。自動車用窓ガラスに多用されている風冷強化処理は薄いガラス板には適用できない(適用したとしても十分な強度が得られない)。このため、上記で述べた程度に薄い、すなわち厚さが3mm未満程度のガラス板を強化するためには、ガラス表面におけるイオン交換を伴う化学強化処理を実施する必要がある。低反射膜を形成した後にはガラス表面でイオン交換を実施できないため、薄いガラス板の表面には、まず化学強化処理が施され、その後低反射膜が形成されることになる。
特許文献1に詳しく説明されているように、シリカ微粒子とバインダーとからなる低反射膜は、いわゆるゾルゲル法により成膜される。ゾルゲル法により形成した低反射膜に実用上望まれる程度の強度を付与するためには、バインダーを600℃程度以上の高温で焼成する必要がある。しかし、この程度の高温にまで加熱すると、化学強化処理によってガラス表面近傍に導入されたイオンが拡散し、向上した強度が低下してしまう。このように、低反射膜を形成するためのゾルゲル法と化学強化処理とは、同一のガラス板表面に適用するには互いに相性が良くない。このため、薄いガラス板に実用的な強度とシリカ微粒子による反射抑制機能とをともに付与することは難しい。
また、反射抑制機能に適したシリカ微粒子の粒径と防眩機能に適したシリカ微粒子の粒径とが相違することから、シリカ微粒子を用いて両方の機能を付与することも容易ではない。粒径が相対的に小さく反射抑制に適したシリカ微粒子及び粒径が相対的に大きく防眩に適したシリカ微粒子をガラス板の表面の同一領域に配置すると、粒径が小さいシリカ微粒子が粒径が大きいシリカ微粒子の間に埋没して小さいシリカ微粒子による凹凸が現れにくくなるためである。
そうであるにもかかわらず、軽量化しつつ、反射抑制機能に加え、防眩機能を付与した太陽電池用カバーガラスやディスプレイ用ガラスへの需要は高くなる一方である。そこで、本発明は、防眩機能及び反射抑制機能を有しながらも化学強化処理された薄いガラス板を備えた太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造に適した方法を提供することを目的とし、さらに、この方法により得られる、防眩機能及び反射抑制機能の双方に優れた太陽電池用又はディスプレイ用ガラスを提供することを目的とする。
本発明は、厚さが0.1mm〜1.5mmであって酸化珪素を含むガラス板の表面に、フッ酸とフッ化物塩とを含むエッチング液を接触させることにより、珪フッ化物塩を前記表面に析出させながら、前記表面を浸食して当該表面に凹凸を付与するエッチング工程と、前記ガラス板の表面に付着した前記珪フッ化物塩を除去する付着物除去工程と、前記付着物除去工程の後に実施される、前記ガラス板を化学強化処理する強化工程と、を具備する、太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造方法、を提供する。
本発明は、厚さが0.1mm〜1.5mmであって酸化珪素を含むガラス板を備え、前記ガラス板の表面が、エッチング処理を受けて凹凸を有するとともに、化学強化処理を受けて圧縮応力層を有し、前記凹凸による入射光の散乱により、前記凹凸が形成された表面に入射する波長域380nm〜1100nmの入射光についてのヘイズ率が10%以上であり、前記凹凸が形成された表面に入射する波長域380nm〜1100nmの入射光についての透過率が、前記凹凸及び前記圧縮応力層を有しないことを除いては前記ガラス板と同一であるガラス板の表面に入射する前記波長域の入射光についての透過率よりも、0.1%以上高い、太陽電池用又はディスプレイ用ガラス、を提供する。
本発明の方法によれば、防眩機能及び反射抑制機能の双方の付与に適した凹凸をエッチング処理によりガラス板の表面に形成することができる。フッ酸(フッ化水素酸)のみを用いたエッチング処理では、防眩機能が十分に発揮される程度にまで、凹凸が大きくならない。ガラス板の表面に析出した珪フッ化物塩は、エッチング処理によるガラス板の表面の浸食を不均一に進行させて防眩機能が得られる程度にまで凹凸を大きくすることに寄与していると考えられる。珪フッ化物塩を析出させながら進行するエッチング処理により、防眩機能とともに反射抑制機能を発揮する凹凸の形成が可能となる。
ガラス板の表面に析出した珪フッ化物塩は、化学強化処理において当該表面におけるイオン交換により導入される圧縮応力層の均一な形成を妨げる。このため、珪フッ化物塩は、化学強化処理の前にガラス板の表面から除去される。珪フッ化物塩を除去してから実施される化学強化処理により、ガラス板の表面には均一性に優れた圧縮応力層が形成される。この圧縮応力層が、薄いガラス板に、太陽電池用又はディスプレイ用ガラスとしての用途において要求される実用的な強度を与える。化学強化処理後にエッチング処理を実施すると、化学強化処理により導入された圧縮応力層の一部が失われるが、エッチング処理後に析出した珪フッ化物塩を除去してから化学強化処理を実施すると、圧縮応力層は削られることなくそのまま残る。本発明によれば、圧縮応力層の導入による強度向上の効果の低下を防止できる。なお、本発明の方法では、析出した珪フッ化物塩によってではなくガラス板の表面の浸食により凹凸が形成されるため、珪フッ化物塩を除去しても防眩機能及び反射抑制機能が失われることはない。
本発明によれば、ヘイズ率が10%以上となる程度に防眩機能が発揮され、透過率が0.1%以上高くなる程度に反射抑制機能が発揮される太陽電池用又はディスプレイ用ガラスを提供することができる。ここで、透過率の比較の対象は、具体的には、ガラス板の表面に凹凸及び圧縮応力層が導入されていない同一組成同一厚さのガラス板、より具体的には化学強化処理を受けていない平滑な表面を有する同一組成同一厚さのガラス板である。後述するとおり、エッチング処理の後に実施する化学強化処理により透過率の上昇幅は縮小することがある。しかし、これを考慮しても、エッチング処理前と比較したときの表面凹凸による透過率の上昇幅ΔT1を0.5%以上としておけば、強化処理を実施した後の透過率の上昇幅ΔT2を0.1%以上とすることは可能である。なお、表面に付着した珪フッ化物塩の影響を除外するために、表面凹凸による上昇幅ΔT1は、表面凹凸によるヘイズ率とともに、珪フッ化物塩を除去した状態で測定することによって特定されることになる。
本発明によるガラスの一形態をその主表面の部分拡大図とともに示す斜視図である。 ガラス面の表面粗さ曲線の一例を示す図である。 実施例により作製したガラスの主表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した状態を示す図である。 実施例におけるエッチング処理後化学強化処理前のガラスの主表面を、SEMを用いて観察した状態を示す図である。 実施例におけるエッチング処理後化学強化処理前のガラスの主表面を、SEMを用いて観察した状態を示す別の図である。 実施例におけるエッチング処理後化学強化処理前のガラスの主表面を、SEMを用いて観察した状態を示すまた別の図である。 実施例におけるエッチング処理後化学強化処理前のガラスの主表面を、SEMを用いて観察した状態を示すまたさらに別の図である。
太陽電池では、防眩機能及び反射抑制機能が、主として、可視域から近赤外域にかけての波長域、典型的には380nm〜1100nmの波長域において求められている。ディスプレイのガラスにおいても可視域における防眩機能及び反射抑制機能が重視されている。したがって、太陽電池又はディスプレイに用いるガラスとしては、380nm〜1100nmの波長域における光学特性を評価するのが適切である。これに鑑み、本明細書における「光」は、基本的に、上記波長域内の光を対象とする。
図1に、本発明によるガラスの一例を示す。ガラス10は、エッチング処理され、かつ化学強化処理されたガラス板1により構成されている。ガラス板1の厚さは0.1mm〜1.5mm、好ましくは0.3mm〜1.1mmである。ガラス板1の厚さは、一対の主表面11,12の間の距離により規定され、正確な値は、例えばマイクロメータを用いて測定することができる。主表面11,12は、ガラス板1の表面のうち、面積が最も広い表面である。
主表面11,12には、エッチング処理によって表面凹凸が形成されている。この表面凹凸には、凹凸を特徴づける高さ、周期などのパラメータが明らかに相違する2種類の凹凸が含まれている。以降、相対的に大きいパラメータにより記述される凹凸20を「長周期凹凸」、相対的に小さいパラメータにより記述される凹凸30を「短周期凹凸」と呼ぶことがある。後述するエッチング処理によれば、これらの凹凸20,30を、別の領域にではなく、同じ領域に重畳的に形成することができる。
長周期凹凸20は、エッチング処理により主表面11を後退させることにより形成された表面テクスチャーであり、凸部21とその間の空間を形成する凹部22とにより構成されている。凸部21は、ガラス板1を構成するガラス組成物と異なる材料を付加して形成されたものではなく、ガラス組成物そのものによって構成されている。主表面11は、エッチング処理及び化学強化処理の適用による変性を受け、その組成がやや変化している可能性はあるものの(例えば主表面11の表層のアルカリ金属イオンが溶出して減少したり別種のアルカリ金属イオンにより置換されたりすることがある)、基本的にはガラス面により構成されている。長周期凹凸20は、光入射面として機能する主表面11の全域に形成することができる。
後述するとおり、短周期凹凸30が光を散乱させるためには小さすぎることから、主表面11における光の散乱は、実質的に、長周期凹凸20によってもたらされていると考えられる。他方、長周期凹凸20が疑似光学層を形成するには大きすぎることから、主表面11における光の反射抑制は、実質的に短周期凹凸30によってもたらされていると考えられる。ただし、長周期凹凸20も、その形状などによっては、光の多重散乱、ガラス面の表面積の拡大その他を通じて入射光の反射抑制に貢献している可能性がある。主表面11に入射した光は、長周期凹凸20により光路の変更を受けながらガラス板1の内部へと入射し、あるいは反射する(要するに散乱する)。表面の凹凸による光の散乱の程度は、一般に、ヘイズ率に基づいて評価され、ヘイズ率が高くなるほど、その表面は光の散乱の程度が高く防眩効果に優れているとみなすことができる。よく知られているように、ヘイズ率は、全光線透過率に対する拡散光透過率の比率である。
主表面11における長周期凹凸20により、主表面11に入射する光のヘイズ率Hzを、例えば10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上、最も好ましくは60%以上にまで高くすることができる。ヘイズ率の上限を制限するべき理由は特にないが、ヘイズ率Hzは、例えば95%以下、さらには90%以下である。
長周期凹凸20を構成する凸部21の平均高さHavは、0.1μm〜5.0μm、好ましくは0.2μm〜3.0μm、さらに好ましくは0.3μm〜2.5μmである。また、長周期凹凸20を構成する凸部21の平均底部長さLavは、0.2μm〜10.0μm、好ましくは0.3μm〜7.0μm、さらに好ましくは0.4μm〜5.0μmである。
ここで、図2を参照して、凸部21の高さH及び底部長さLの測定方法を説明する。図2は、ガラス板1の断面方向から主表面11を観察したときに当該断面に現れるガラス面のプロファイルである。このプロファイルは、例えば、所定方向に沿ってガラス表面を走査することによって得られる表面粗さ曲線として測定することができる。図2において、中心線40は面積基準により設定される。すなわち、中心線40は、当該中心線40より上方に突出する山部41と下方に突出する谷部とが等面積となるように設定される。より詳しく述べると、中心線40は、当該中心線40の上下において曲線と当該中心線40とにより区画される領域の合計面積が等しくなるように設定される。そして、中心線40よりも上方に頂点を有するとともに中心線40よりも下方に底部を有する山部41に関し、底部の間を結ぶ線分の長さを底部長さLとし、山部41の頂点とその線分との間の距離(最短距離)を高さHとする。平均高さHav及び平均底部長さLavは、高さH及び底部長さLの平均値(個数平均値)により定まる。
中心線40よりも頂部が下方にある山部42は、凸部21の裾野の下部近傍におけるプロファイルである場合が多く、当該凸部21の高さを適切に反映していない可能性が高い。このため、上記では、高さH及び底部長さLを定めるに際し、中心線40よりも上方に頂部が存在する山部41のみを凸部として取り扱っている。
高さH及び底部長さLを定めるに際しては、主表面11の任意の部位において測定した測定長さ50μm(中心線40の長さが50μm)の表面粗さ曲線に基づくこととする。この長さの範囲に存在する山部41の個数(凸部個数N)は、3〜15個、特に5〜10個が存在することが好ましい。表面粗さ曲線は、例えば、Z軸の高さ測定用のレーザオートフォーカス顕微鏡と高精度XYZステージとを備えたステージ走査型レーザプローブ方式の非接触三次元測定装置(例えば、三鷹光器社製NHシリーズ)を用いて得ることができる。
長周期凹凸20は、以下の特徴を有することが好ましい。なお、以下のパラメータは、いずれも、JIS B0601:2001に規定されており、例えば上述の非接触三次元測定装置を用い、主表面11を測定することにより得ることができる。
・算術平均粗さRa:0.05μm〜1.0μm、好ましくは0.08μm〜0.8μm、さらに好ましくは0.09μm〜0.5μm
・最大高さRy:0.2μm〜8.0μm、好ましくは0.3μm〜7.0μm、さらに好ましくは0.5μm〜5.0μm
・平均間隔Sm:0.2μm〜10.0μm、好ましくは0.3μm〜8.0μm、さらに好ましくは0.8μm〜6.0μm
長周期凹凸20を構成する個々の凸部21には、後述するエッチング処理に由来すると考えられる特徴的な形状が現れることがある(図1参照)。凸部21は、個数基準で、その50%以上、さらには70%以上、場合によっては80%以上が、頂部25から場合によっては分岐しながら下方へと延びる複数の直線状の峰部24と、峰部24を上辺として下方へ広がる平面状の山腹部(斜面)23とを有する。
長周期凹凸20を構成するガラス面には、より微細な短周期凹凸30が形成されている。図1では、領域Dのみに短周期凹凸30を示したが、この凹凸30も、長周期凹凸20と同様、光入射面となる主表面11の広い範囲にわたって形成することができる。すなわち、主表面11に露出しているガラス面は、長周期凹凸20と短周期凹凸30とを、別の領域に個別に有するのではなく、同一領域に重畳的に有することができる。
短周期凹凸30も、長周期凹凸20と同様、エッチング処理により主表面11を後退させることにより形成された、ガラス自体によって構成された表面テクスチャーである。短周期凹凸30を形成するためのエッチング処理は、長周期凹凸20を形成するためのエッチング処理と別に実施する必要はない。すなわち、後述する実施例に示すように、長周期凹凸20及び短周期凹凸30は、単一のエッチング処理により主表面11に形成することが可能である。
例えばSEMを用いて高倍率で観察すると、凸部21の一部が、平坦な台地状の面であることが確認される場合がある。この平坦な面は、ガラス板の厚さ方向にほぼ垂直に広がっていることが多い。この面は、珪フッ化物塩が厚く付着したためにエッチングによる表面の浸食が進行せずに残存したものと考えられる。この台地状の面においては、通常は短周期凹凸30が発達せず、場合によっては短周期凹凸30が観察されない平滑な面となる。
短周期凹凸30の高さ及び周期が本明細書で問題とする光の波長(上述の波長域参照)よりも十分に小さいため、短周期凹凸30が形成されたガラス面は、ガラス板1のバルク部分よりも見かけの屈折率が小さい疑似光学層として機能すると考えられる。疑似光学層は、当該層内におけるガラスとガラスに接する物質(通常は空気)との界面の微小な揺らぎにより、揺らぎの程度よりも十分に大きい波長を有する光に対し、ガラスの屈折率(典型的には1.52)と当該物質の屈折率(空気の場合は1)との間の屈折率を有する低屈折率層として機能する。低屈折層がガラス板の表層に存在すれば、主表面11に入射する光の反射は抑制される傾向にある。ただし、これまでに実施した種々の実験結果を参照すると、主表面11における光の反射の抑制には長周期凹凸20による多重散乱が寄与している可能性がある。実際に得られた反射抑制効果の程度からは、長周期凹凸20による多重散乱と短周期凹凸30による疑似光学層とが相乗的に反射抑制効果を増大させていることも考えられる。
主表面11に形成された凹凸に由来する反射抑制機能により、主表面11へと入射する光の透過率を向上させることが可能となる。化学強化処理後の圧縮応力層が導入されたガラスにおける透過率の上昇幅ΔT(ΔT2)は、0.1%以上、好ましくは0.2%以上、さらには0.3%以上、特に0.5%以上、とりわけ0.7%以上、場合によっては1.0%以上、とすることができる。なお、透過率の上昇幅ΔT2は、主表面11,12が平滑面で圧縮応力層を有しないことを除いては、ガラス板1と同様のガラス板、具体的には、エッチング処理及び化学強化処理が施されていない同一のガラス組成及び厚さを有するガラス板、を基準として評価することができる。なお、本明細書で使用する「平滑面」は、具体的には、フロート法、フュージョンダウンドロー法などの製法により製造されるいわゆる「火造り面」であってその後の処理(エッチング処理及び強化処理を含む)を受けていないガラス面、を指す。
ヘイズ率を10%以上にまで引き上げ、透過率の上昇幅ΔT2を0.1%以上とするガラス面自体により構成された表面凹凸を有し、化学強化処理により導入された圧縮応力層を有する薄いガラス板は、その防眩効果、反射抑制効果及び実用的強度から、太陽電池用カバーガラスやディスプレイ用ガラスに極めて適している。
短周期凹凸30を構成する凸部31の径DTは、好ましくは20nm〜250nm、より好ましくは50nm〜200nmの範囲内にある。短周期凹凸30を構成する凸部31の高さPVは、好ましくは30nm〜150nm、より好ましくは50nm〜100nmの範囲内にある。凸部31の個数TNは、主表面1μm2当たり、好ましくは50個〜2000個、より好ましくは100〜1000個である。
上記径DT、高さPV及び個数TNは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果に基づいて定めることができる。なお、凸部31の径DTは、当該凸部の外縁を等面積の円とみなしたときの直径により定めることとする。また、高さPVは、SEMによるガラス板の主表面の断面観察から得られたプロファイルに基づき、図2を参照して説明した方法により定めることとする。このプロファイルは、ガラス面に沿って合計0.5μmの長さにわたって測定したものを用いることとする。
なお、短周期凹凸30を凸部31とともに構成する凹部32には、後述するエッチング処理に由来すると考えられる特徴的な形状が現れることがある。すなわち、凹部32は、ガラス面に現れた孔の外縁がほぼ円形となるクレーター状の陥没孔となることがある。
長周期凹凸20及び短周期凹凸30を区別している「周期」は、厳密には、表面粗さ曲線における山部41の頂点の間隔W(図2参照)の平均値により特定することができる。山部41としては、上述と同様、等面積線である中心線40よりも頂部が上方に位置するとともに底部が下方に位置するもののみを選択する。なお、短周期凹凸30についての表面粗さ曲線は、SEMを用いたガラス面の断面観察により得た測定長さ0.5μmの曲線を用いることとする。
長周期凹凸20の周期は、ミクロンオーダーであり、例えば0.5μm〜8.0μmである。これに対し、短周期凹凸30の周期は、サブミクロンオーダーであり、例えば50nm〜200nmである。両凹凸20,30は、その周期及び高さが上記程度に異なるため、明瞭に区別することができる。
光の入射面となる主表面11の反対側の主表面12は、通常、光の出射面となる。この主表面12は、長周期凹凸20及び短周期凹凸30のような表面凹凸が形成されていない平坦な面、例えば平滑面、であってもよいし、主表面11と同様、長周期凹凸20及び短周期凹凸30を有する面であってもよい。なお、ガラス板の主表面11,12は、ガラス板の面の中で最大の面積を有する一対の面であり、その間の距離によりガラス板の厚さが定まることになる。
以下、本発明による製造方法を説明する。上述したように、この製造方法では、エッチング工程、付着物除去工程及び強化工程がこの順に実施される。
まず、ガラス板を準備する。ガラス板としては、量産されている汎用組成のガラス板、典型的にはフロート法により製造されたソーダライムシリカガラスからなるガラス板(フロートガラス)を用いれば足りる。ただし、ガラス板は、これに限らず、各種製法、例えばフュージョンダウンドロー法などにより得たガラス板を用いてもよい。ガラス板の種類も上記に限らず、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラスなど各種組成を有するガラス板を用いることもできる。ガラス板は、後述する化学反応の進行に必要な珪素を供給するために、酸化珪素を含むガラス組成を有する必要があり、酸化珪素が網目形成成分の主成分(50質量%以上を占める成分)であるガラス組成を有することが好ましく、全成分中においても酸化珪素が主成分であるガラス組成を有することがさらに好ましい。ガラス板の厚さは、カバーガラスの軽量化のために、0.1mm〜1.5mmの範囲が適切である。エッチング処理により凹凸が付与されるため、ガラス板としては、両主表面が平滑面であってヘイズ率が1%未満、さらには0.5%未満、特に0.1%未満であるガラス板、特に量産されているフロートガラスを準備すれば足りる。
ガラス板に適したガラス組成の例としてソーダライムシリカガラスの組成を以下に示す。以下において各成分の含有率は質量%により表示されている。SiO2:65〜80%
、Al23:0〜5%、MgO:0〜10%、CaO:5〜15%、MgO+CaO:5〜15%、Na2O:10〜18%、K2O:0〜5%、Na2O+K2O:10〜20%、B23:0〜5%、その他微量成分:0〜1%。ここで、「その他微量成分」としては、Fe23に代表される着色成分、SO3に代表される清澄成分などが挙げられる。
ガラス板とともに準備するべきエッチング液(エッチャント)は、フッ酸(フッ化水素酸)とフッ化物塩とを含むものを準備する。フッ化物塩は、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム及びフッ化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。このエッチング液は、例えば、フッ酸とフッ化物塩水溶液とを混合して調製することができる。
エッチング工程においては、珪フッ化物塩を析出させながらガラス板の表面の浸食が行われる。例えば、フッ酸及びフッ化カリウムを含むエッチング液をガラス板の表面と接触させると、ガラス板からエッチング液へと溶出した酸化珪素が関与する式(1)の反応が進行し、生成した珪フッ化カリウムが沈殿する。フッ酸及びフッ化アンモニウムを含むエッチング液とガラス板とを接触させると、式(2)の反応が進行し、生成した珪フッ化アンモニウムが沈殿する。同様に、フッ化ナトリウムを用いると、式(3)の反応が進行し、生成した珪フッ化ナトリウムが沈殿する。
SiO2+4HF+2KF→K2SiF6↓+2H2O (1)
SiO2+4HF+2NH4F→(NH42SiF6↓+2H2O (2)
SiO2+4HF+2NaF→Na2SiF6↓+2H2O (3)
珪フッ化カリウム、珪フッ化アンモニウムなどである珪フッ化物塩がガラス表面に析出した状態でエッチングを進行させると、ガラス板の表面に微細な凹凸が現れる。この微細な表面凹凸は珪フッ化物塩が付着した領域においても形成される。この事実から見ると、微細の表面凹凸は、多孔体としてガラス板の表面に付着した珪フッ化物塩がエッチングによる浸食を不均一に進行させることによって形成されたと考えられる。
従来、フッ酸とフッ化カリウムなどのフッ化物塩とを含むエッチング液の使用によりガラス板上に形成される微小な凸部は、主として、磁気ディスク用基板の製造に利用されてきた。この用途では、5nm〜70nm程度の高さを有する微小な凸部が、磁気ヘッドが基板に付着することを防止するための突起として利用される。磁気ディスク用基板としてのガラス板に要求されるのは基本的には平滑な表面であるため、磁気ディスクの技術分野では、上記エッチング液を用いたエッチング処理は、上記程度の微小凸部を超える凸部が形成されないような条件において実施するのが適切とされてきた。
珪フッ化カリウムなどの珪フッ化物塩がガラス板の表面に析出した状態でエッチングをさらに進行させると、珪フッ化物塩の析出量の局所的な相違に応じてエッチングによる浸食が不均一に進行し、上述の微細な表面凹凸よりも大きな凹凸が現れる。こうして、ガラス表面の浸食をさらに進行させると、相対的に大きく周期が長い表面凹凸(長周期凹凸20)が、相対的に小さく周期が短い表面凹凸(短周期凹凸30)とともに形成される。析出した珪フッ化物塩が付着したガラス面においてエッチングによる浸食が十分かつ適切に進行する条件を適用することが、両表面凹凸20,30を有する主表面を備えたガラス板を得る上では重要である。エッチングによる浸食は、エッチング液の温度、エッチング処理の時間、エッチング液におけるフッ酸及びフッ化物塩の濃度、ガラス板の組成などを、相互の影響を考慮しながら総合的に調整することにより、十分かつ適切に進行させることができる。
エッチング処理による透過率の上昇幅ΔT1は、0.5%以上、さらには0.6%以上、特に0.8%以上、とりわけ1.0%以上、場合によっては1.3%以上、とすることができる。エッチング処理によってヘイズ率Hzは、10%以上、さらには30%以上、特に35%以上、とりわけ40%以上、場合によって50%以上、必要に応じて60%以上にまで、高めることができる。ΔT1は、エッチング処理工程の前のガラス板(比較の基準とするガラス板については既に説明したとおりである)の透過率と、エッチング工程及び付着物除去工程後であって強化工程前のガラス板の透過率との差分により定まる透過率の上昇幅である。ヘイズ率Hz及びΔT1が、付着物除去工程によって付着物(珪フッ化物塩)の実質的にすべてを取り除いてからでなければ確定できないことに留意するべきである。
エッチング処理の際のエッチング液の温度は、常温(20〜25℃)よりもやや高い温度、例えば28℃以上、さらには30〜35℃が好ましい。エッチング処理の時間は、適用する温度にもよるが、例えば10秒以上、さらには30〜600秒が適切である。エッチング液におけるフッ酸の濃度は1〜10質量%が好ましい。また、フッ化カリウムなどのフッ化物塩の濃度は、10〜20質量%が好ましい。ただし、フッ酸及びフッ化物塩の濃度は、適用する温度及び時間に応じて適宜調整するべきである。
エッチング処理により、ガラス面には珪フッ化カリウムなどの珪フッ化物塩が付着し、場合によってはガラス面の全面を珪フッ化物塩が被覆する。この珪フッ化物塩は、エッチング処理を実施するエッチング工程に引き続いて実施される付着物除去工程において除去される。付着物除去工程は、例えば、洗浄液を用いた洗浄により実施することができる。洗浄液としては、酸性の洗浄液、具体的には各種の酸、例えば塩酸、硝酸、硫酸が適している。付着物除去工程を経て露出したガラス面には表面凹凸20,30が形成されている。酸を用いた洗浄の後、ガラス面は、付着した酸を洗い流すために適宜水洗するとよい。必要に応じてさらに実施されるガラス板の乾燥工程を経て、表面凹凸20,30が主表面11に形成されたガラス板1が得られる。なお、水を洗浄液とすると、物理的な力を印加しながら長時間洗浄しなければ付着物を完全に除去することはできないため、洗浄液としては上記に例示した酸が適している。
付着物除去工程においては、珪フッ化物塩の実質的にすべてを除去することが好ましい。本明細書では、SEMを用いて倍率1万倍で観察して珪フッ化物塩の存在が認められない場合に、珪フッ化物塩の実質的にすべてが除去されたものとみなす。
エッチング工程において形成され、付着物除去工程により露出した長周期表面凹凸及び短周期表面凹凸を有する主表面の一例を図4A〜Dに示す。
なお、エッチング工程及び付着物除去工程は、ガラス板1の両主表面11,12に適用してもよく、主表面11のみに適用してもよい。後者の場合、主表面11には表面凹凸20,30が付与され、主表面12は平滑面として保持されることになる。
付着物除去工程の後、化学強化工程が実施される。化学強化処理は、ガラス板に含まれるイオン半径が相対的に小さい1価イオンと処理液に含まれるイオン半径が相対的に大きい1価イオンとをイオン交換することにより、ガラス板の表面に圧縮応力層を導入するそれ自体は公知の強化処理である。化学強化工程は、通常、両主表面11,12に対して適用される。
化学強化されたガラス板の表面には、イオン交換により導入された1価イオンが含まれる圧縮応力層が存在する。化学強化処理は、一般に、アルカリ金属イオンの交換、例えばガラス板の表面近傍に含まれるリチウムイオン(Li+)をナトリウムイオン(Na+)に置換することにより、あるいはガラス板の表面近傍に含まれるナトリウムイオンとカリウムイオン(K+)との交換により行われ、典型的には、ガラス板に含まれるナトリウムイ
オンと処理液に含まれるカリウムイオンとのイオン交換により実施される。このイオン交換を実施するための処理液としては、硝酸カリウムに代表されるカリウム塩の熔融塩を例示できる。すなわち、化学強化処理は、好ましくはカリウムイオンを含む熔融塩にガラス板を浸漬してカリウムイオンとガラス板に含まれるナトリウムイオンとのイオン交換により実施することができる。化学強化処理の条件、例えば熔融塩の温度及びガラス板の浸漬時間は、公知の条件から適宜選択すればよいが、例えば熔融塩の温度は380〜480℃、特に380〜460℃、ガラス板の浸漬時間は30分〜1440分である。化学強化処理は、薄いガラス板にも圧縮応力層を導入できる処理であって、薄いガラス板が用いられる太陽電池用又はディスプレイ用ガラスに実用的な強度を付与するための処理として適している。
こうして、上述したエッチング処理によって実現された特徴的な表面凹凸20,30を有するとともに、化学強化処理におけるイオン交換により圧縮応力が導入された主表面を有するガラス板が得られる。短周期凹凸30の形状は、化学強化処理により、そのピッチが広がる傾向がある。透過率の上昇幅は、化学強化処理により、やや低下することがあるため、エッチング処理はこの低下を見込んで実施することが好ましい。ヘイズ率は、化学強化処理により、やや上昇する場合が多い。
化学強化処理後の主表面の一例を図3に示す。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。特性の評価方法は以下のとおりとした。
[ヘイズ率Hz、透過率T]
測定波長域を380〜1100nmとして、島津製作所社製分光光度計「UV3100」を用いて測定した。
[算術平均粗さRa、最大高さRy、平均間隔Sm]
三鷹光器社製非接触三次元測定装置「NH−3N」を用いて測定及び解析を行い特定した。
[(長周期凹凸の)凸部の平均高さHav、平均底部長さLav、凸部個数N]
上記非接触三次元測定装置を用いて得た表面粗さ曲線に基づいて、上述の算出方法に従って特定した。表面粗さ曲線は、主表面を長さ50μmにわたって走査して得たものである。
[(短周期凹凸の)凸部の径DT、凸部高さPV、凸部個数TN]
SEMを用いた観察結果から、上述の算出方法に従って特定した。ここで、径DT及び個数TNは、主表面上の1.2μm×0.9μmの領域を倍率10万倍で観察した結果に基づいて定めた。高さPVは、主表面近傍を倍率10万倍で断面観察して得たプロファイルから定めた。このプロファイルは、測定長さを0.5μmとして得たものである。
参照例1)
エッチングの対象とするガラス板としてフロート法により製造した厚さ1.1mmのソーダライムシリカガラス板(ヘイズ率Hz:0.05%、透過率T:89.1%)を、エッチング液として5質量%のフッ酸(フッ化水素酸)及び20質量%のフッ化カリウムを含む水溶液をそれぞれ準備した。エッチング液を30℃に保持し、このエッチング液にガラス板を30秒間浸漬して、エッチング処理を実施した。エッチング処理の間、ガラス板は静置し、エッチング液の撹拌も実施しなかった。次いで、エッチング液から取り出したガラス板を5質量%の硫酸に浸漬し、付着した珪フッ化カリウムを除去する洗浄処理をした。洗浄処理の間、ガラス板は硫酸中で揺動させた。さらに、硫酸から取り出したガラス板を水洗し、両主表面に表面凹凸が形成されたガラス板を得た。このガラス板のヘイズ率Hzは32.4%、透過率Tは89.8%(ΔT1:0.7%)であった。
引き続き、エッチング処理後のガラス板について化学強化処理を実施した。この処理は、ガラス板を460℃に保持した硝酸カリウム熔融塩に30分間浸漬することにより実施した。硝酸カリウム熔融塩から取り出したガラス板を水洗し、表面凹凸が形成され、かつ化学強化されたガラス板を得た。化学強化後のガラス板のヘイズ率Hzは33.4%、透過率Tは89.3%(ΔT2:0.2%)であった。
(実施例
エッチング処理の時間を2分間とした以外は参照例1と同様にして、表面凹凸が形成され、化学強化されたガラス板を得た。実施例において、エッチング処理及び洗浄処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは72.6%、透過率Tは90.9%(ΔT1:1.8%)であった。また、実施例において化学強化処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは73.6%、透過率Tは90.4%(ΔT2:1.3%)であった。
参照例2
エッチング液におけるフッ酸の濃度を1.2%、フッ化カリウムの濃度を11.6%とした以外は実施例と同様にして、表面凹凸が形成され、化学強化されたガラス板を得た。参照例2において、エッチング処理及び洗浄処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは30.8%、透過率Tは90.2%(ΔT1:1.1%)であった。また、参照例2において化学強化処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは31.8%、透過率Tは89.7%(ΔT2:0.6%)であった。
(比較例1)
エッチング液におけるフッ化カリウムの濃度を40%とした以外は実施例と同様にして、化学強化されたガラス板を得た。比較例1において、エッチング処理及び洗浄処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは0.05%、透過率Tは89.1%(ΔT1:0.7%)であった。また、比較例1において化学強化処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは0.05%、透過率Tは88.9%(ΔT2:−0.2%)であった。
(参照例
エッチング処理、洗浄処理及び化学強化処理を実施する前のガラス板(フロート法により製造した厚さ1.1mmの未処理のソーダライムシリカガラス板)をそのまま参照例とした。
(参照例
エッチング処理及び洗浄処理を実施しないことを除いては参照例1と同様にして化学強化されたガラス板を得た。
(実施例
エッチング液におけるフッ酸の濃度を5%、フッ化カリウムの濃度を5%、エッチング処理の時間を10分間とした以外は参照例1と同様にして、表面凹凸が形成され、化学強化されたガラス板を得た。実施例において、エッチング処理及び洗浄処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは83.8%、透過率Tは90.6%(ΔT1:1.5%)であった。また、実施例において化学強化処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは85.0%、透過率Tは90.4%(ΔT2:1.3%)であった。
(実施例
エッチング液におけるフッ酸の濃度を5%、フッ化カリウムの濃度を10%、エッチング処理の時間を10分間とした以外は参照例1と同様にして、表面凹凸が形成され、化学強化されたガラス板を得た。実施例において、エッチング処理及び洗浄処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは74.3%、透過率Tは90.8%(ΔT1:1.7%)であった。また、実施例において化学強化処理をした後のガラス板のヘイズ率Hzは76.0%、透過率Tは90.6%(ΔT2:1.5%)であった。
エッチング処理の条件を表1に示す。また、化学強化処理を実施した後の各実施例、各比較例及び各参照例についての測定結果を表2にまとめて示す。ただし、各比較例及び参照例3、4については、表面凹凸が実質的に形成されなかったため、凹凸に関する測定は実施しなかった。
参照例1〜2及び実施例1〜3により得たガラス板をSEMにより観察したところ、その主表面には、長周期の表面凹凸及び短周期の表面凹凸が形成されていた。実施例により得たガラス板のSEMによる観察結果を図3として示す。また、実施例における洗浄処理後のガラス板のSEMによる観察結果を図4A〜Dとして示す。実施例において上述の方法に従って定めた長周期凹凸の周期は3.2μm、短周期凹凸の周期は80nmであった。また、洗浄処理により珪フッ化物(フッ化カリウム)が除去されていることが確認できた。
化学強化処理によって透過率Tはやや低下するが(参照例)、エッチング処理により適切な凹凸を付与することにより、この低下を十分に補うことができる透過率Tの上昇が得られることがわかる(参照例1〜2、各実施例)。比較例1において、凹凸がほとんど形成されなかったのは、フッ化カリウムの濃度が高すぎたために、ガラス表面が浸食されるエッチング反応が十分に進行しなかったためであると考えられる。
フッ化カリウムに代えてフッ化アンモニウムを用いた以外は参照例1と同様のエッチング処理を実施したところ、さらにはフッ化カリウムに代えてフッ化ナトリウムを用いた以外は参照例1と同様のエッチング処理を実施したところ、ともに、参照例1と同様に、長周期表面凹凸及び短周期表面凹凸が形成されることが確認できた。
(応用例)
参照例1と同様にして得た2枚のガラス板(681mm×979mm)を準備した。このガラス板の一方の表面上に樹脂製中間膜(エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA))を置き、さらにこの中間膜の上にリード線で連結したシリコン製太陽電池セルを均等に配置した。次いで、この太陽電池セルの上に上記樹脂製中間膜を置き、さらにこの中間膜の上に上記ガラス板の他方を置いた。なお、中間膜に接するガラス板の表面は予めエタノールで拭いておいた。こうして得た積層体を、テープを用いてその周囲を仮止めした後に真空引きしながら加熱して一体化し、引き続き、泡抜き等のために160℃に保持して、合わせガラスを作製した。冷却後、テープを外してからホットメルトブチルを内部に充填したアルミ枠を合わせガラスの四周の端部に嵌め込み、アルミ枠をビス止めして、太陽電池セルの間から光が透過する透光性の太陽電池モジュールを得た。この太陽電池モジュールについて、IEC61215「10.16 Mechanical load test」に規定されている耐荷重試験を実施したところ、ガラス破損及び出力低下のいずれもが観察されず試験に合格したことが確認できた。
1 ガラス板
10 (太陽電池用又はディスプレイ用)カバーガラス
11,12 主表面
20 長周期凹凸
21,31 凸部
22,32 凹部
23 山腹部
24 峰部
25 頂部
30 短周期凹凸
40 中心線
41,42 山部

Claims (6)

  1. 厚さが0.1mm〜1.5mmであって酸化珪素を含むガラス板を備え、
    前記ガラス板の表面が、エッチング処理を受けて凹凸を有するとともに、化学強化処理を受けて圧縮応力層を有し、
    前記凹凸による入射光の散乱により、前記凹凸が形成された表面に入射する波長域380nm〜1100nmの入射光についてのヘイズ率が60%以上であり、
    前記凹凸が形成された表面に入射する波長域380nm〜1100nmの入射光についての透過率が、前記凹凸及び前記圧縮応力層を有しないことを除いては前記ガラス板と同一であるガラス板の表面に入射する前記波長域の入射光についての透過率よりも、1.0%以上高い、
    太陽電池用又はディスプレイ用ガラス。
  2. 請求項1に記載の太陽電池用又はディスプレイ用ガラスを製造する方法であって、
    厚さが0.1mm〜1.5mmであって酸化珪素を含むガラス板の表面に、フッ酸とフッ化物塩とを含むエッチング液を接触させることにより、珪フッ化物塩を前記表面に析出させながら、前記表面を浸食して当該表面に凹凸を付与するエッチング工程と、
    前記ガラス板の表面に付着した前記珪フッ化物塩を除去する付着物除去工程と、
    前記付着物除去工程の後に実施される、前記ガラス板を化学強化処理する強化工程と、
    を具備し、
    前記エッチング工程において、前記強化工程を実施した後の前記表面に入射する波長域380nm〜1100nmの入射光についてのヘイズ率が60%以上となり、前記強化工程を実施した後の前記表面に入射する前記波長域の入射光についての透過率が前記エッチング工程を実施する前の前記表面に入射する前記波長域の入射光についての透過率より1.0%以上高くなるように、前記表面に前記凹凸を発達させる、太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造方法。
  3. 前記付着物除去工程において、酸性の洗浄液を用いて前記ガラス板の前記表面を洗浄することにより前記珪フッ化物塩を除去する、請求項2に記載の太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造方法。
  4. 前記付着物除去工程において、前記珪フッ化物塩の実質的にすべてを除去する、請求項2又は3に記載の太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造方法。
  5. 前記フッ化物塩が、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム及びフッ化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項2〜4のいずれかに記載の太陽電池用カバーガラス又はディスプレイ用ガラスの製造方法。
  6. 前記強化工程において、カリウムイオンを含む熔融塩に前記ガラス板を浸漬して前記カリウムイオンと当該ガラス板に含まれるナトリウムイオンとのイオン交換により前記ガラス板の表面に圧縮応力層を形成する、請求項2〜5のいずれかに記載の太陽電池用又はディスプレイ用ガラスの製造方法。
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