JP5997719B2 - 美容組成物 - Google Patents
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また、本発明者は、麹菌抽出物が、セラミド輸送に関連する遺伝子ABCA12の発現をも促進できることを見出した。更に、本発明者は、麹菌抽出物がセラミド産生を促進することも見出した。更に、本発明者は、麹菌抽出物が保湿作用を有することも見出した。
・表皮タイトジャンクション関連遺伝子(CLDN1、OCLN)
タイトジャンクションは、角化細胞間を接着させる細胞間接着構造である。細胞と細胞をシールすることで物質の透過を制御し、皮膚のバリア機能の1つとして働く。CLDN1にコードされるクローディン1及びOCLNにコードされるオクルディンは、タイトジャンクションの構成タンパクである。
なお、CLDN1のアクセッションナンバーとして、NM_021101などが知られている。
また、OCLNのアクセッションナンバーとして、XM_001128133, NM_001205254, NM_001205255, NM_002538, XM_003118540, XM_003118541, XM_003118543, XM_003118544, XM_003118545, XM_003118546, XM_003118548, XM_003118549などが知られている。
・角化関連遺伝子(TGM1、IVL)
TGM1にコードされるトランスグルタミナーゼ1は、周辺帯前駆物質の重合を行う酵素である。TGM1の欠損により周辺帯が欠如し、皮膚バリア機能に障害をもたらす。IVLにコードされるインボルクリンは、周辺帯の主な構成要素であり、角化の際にトランスグルタミナーゼ等の酵素により架橋される。
なお、TGM1のアクセッションナンバーとして、NM_000359などが知られている。
また、IVLのアクセッションナンバーとして、NM_005547, XM_001130659などが知られている。
・セラミド合成関連遺伝子(SPTLC2、UGCG、GBA)
SPTLC2にコードされるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ2は、セラミドのde novo合成経路で働き、パルミトイルCoAとL−セリンの縮合反応を触媒し、スフィンゴイド塩基を形成する。また、この反応はセラミド合成の律速反応である。UGCGにコードされるUDP-グルコースセラミドグルコシルトランスフェラーゼは、セラミドの前駆体となるグルコシルセラミドを合成する。層板顆粒内に貯蓄されたグルコシルセラミドは、GBAにコードされるβ-グルコセレブロシダーゼの作用により、セラミドへと分解され角層へと分泌される。
また、UGCGのアクセッションナンバーとして、NM_003358などが知られている。
さらに、GBAのアクセッションナンバーとして、NM_000157, NM_001005741, NM_001005742, NM_001005749, NM_001005750, NM_001171811などが知られている。
・その他(ACBA12)
ABCA12にコードされるATP結合カセット輸送体12(ATP-binding cassette transporter 12)は、顆粒層の層板顆粒の表面に局在し、層板顆粒内への脂質の輸送に関与するトランスポーターであり、細胞間脂質の形成に寄与する。ABCA12の欠損により角層細胞間脂質の低形成及びバリア機能障害を来し、ABCA12は道化師様魚鱗癬の原因遺伝子とされている。
なお、ABCA12のアクセッションナンバーとして、NM_015657, NM_173076などが知られている。
上記アクセッションナンバーは、NCBI RefSeqに基づくものである。
Laura L. Mitic, Christina M. Van Itallie and James M. Anderson, Molecular Physiology and Pathophysiology of Tight Junctions I. Tight junction structure and function: lessons from mutant animals and proteins, 2000, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 279, 250-254
また、セラミド輸送に関連する遺伝子ABCA12も、皮膚バリア機能において重要な遺伝子であり、皮膚バリア機能の改善作用が期待できる。
更に、本発明の美容組成物に用いる麹菌又は麹菌抽出物は、保湿作用を有することが確認されており、本発明の美容組成物を保湿剤として使用できる。
1.白麹菌抽出物の調製例
以下の手順i)〜x)に従い、白麹菌抽出物を調製した。
i)ポリデキストロース培地にて、白麹菌(Aspergillus Kawachii,NITE Biological Resoucce Center 製)を2日間液体培養する。
ii)菌体を回収するため、回収物から培地を除去し、その後、菌体を純水で2〜3回洗浄する。
iii)菌体をオートクレーブにより滅菌処理を行い、その後、凍結乾燥し、乾燥菌体を得る。
iv)スクリューキャップ付き試験管に、乾燥菌体0.6gを入れる。
v)上記試験管に、クロロホルムとメタノールの混合溶媒(体積比1:1)8.0mLを加える
vi)上記試験管の内容物に対して、5分間の超音波処理を行う。
vii)上記試験管の内容物に対して、振盪しながら42℃で30分間加熱処理を行う。
viii)上記試験管に、クロロホルム10.0mLとの蒸留水4.5mLとを加えて混合し、上記試験管の内容物に対して、2000rpmで5分間遠心分離処理を行う。
ix)下層(有機層)を回収し、濃縮乾固し、白麹菌抽出物を得る。
2−1.試験方法
以下の手順i)〜vi)に従い、遺伝子発現量を測定した。
i)Normal Human Epidermal Keratinocytes,adult pooled(継代数P4)(以下、角化細胞と称する)(Promo Cell製)をKeratinocyte Basal Medium 2 Kit(以下、KBMと略す)(Promo Cell製)で培養する。
ii)75cm2フラスコ中で培養された角化細胞をトリプシン処理により浮遊させ、これを、5×104cells/wellとなるように、24ウェルプレートに播種した。
iii)24ウェルプレートに播種された角化細胞を、37℃の5%CO2インキュベーター内で24時間前培養する。
iv)前培養後、培地を除去し、所定濃度(10μg/mL、20μg/mL、50μg/mL)に調整された白麹菌抽出物を含有するKBM培地500μLを24ウェルプレート中の角化細胞に添加し、37℃の5%CO2インキュベーター内で48時間培養する。また、比較のため、白麹菌抽出物を含有しないKBM培地500μLを用い、同様の条件で培養する(コントロール)。
v)培養後、培養上清を除去し、RNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いて、角化細胞からRNAを回収し、次いで、QuantiTect Reverse Transcription kit(QIAGEN社製)を用いて、回収したRNAからcDNAを合成する。
vi)得られたcDNAを用いて、各遺伝子のmRNA発現量を測定する。なお、内部標準として、GAPDHのmRNA発現量も測定する。
結果を表1に示す。表1は、角化細胞における遺伝子CLDN1、OCLN、TGM1、IVL、SPTLC2、UGCG及びABCA12の相対的発現量を示す。なお、表中の値は、白麹菌抽出物を含まない培地を用いた場合(コントロール)の遺伝子の発現量を1としたときの相対的発現量である。
表皮角化細胞への白麹菌抽出物の添加により、タイトジャンクションタンパク遺伝子であるCLDN1及びOCLN、角層形成に関連する遺伝子IVL及びTGM1、セラミド産生に関連する遺伝子SPTLC2及びUGCG、並びにセラミド輸送に関連する遺伝子ABCA12の有意な発現増加が認められた。これらの発現増加が認められた遺伝子は、表皮細胞の分化と共に発現が上昇し、皮膚バリア機能において重要な遺伝子であるため、白麹菌抽出物による皮膚バリア機能の改善作用が期待される。
3−1.試験方法
ヒト3次元培養皮膚モデルLabCyte EPIMODEL12(6日培養品)(J−TEC製)を、アッセイ培地(J−TEC製)中、37℃の5%CO2インキュベーター内で24時間前培養した。各ウェルより培地を除去した後、所定濃度(100μg/mL、500μg/mL)に調整された白麹菌抽出物を含有するアッセイ培地を1ml培養カップの外側に添加し、CO2インキュベーター内で7日間培養した。被験物質含有培地を一日おきに交換した。
7日間培養の後、皮膚モデルをPBSで3回洗浄し、RNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いて、皮膚モデルからRNAを回収し、次いで、QuantiTect Reverse Transcription kit(QIAGEN社製)を用いて、回収したRNAからcDNAを合成した。得られたcDNAを用いて、各遺伝子のmRNA発現量を測定した。なお、内部標準として、GAPDHのmRNA発現量も測定した。
結果を表2に示す。表2は、ヒト3次元培養皮膚モデルにおける遺伝子SPTLC2、GBA、CLDN1、OCLN、TGM1、IVL、ABCA12及びUGCGの相対的発現量を示す。なお、表中の値は、白麹菌抽出物を含まない培地を用いた場合(コントロール)の遺伝子の発現量を1としたときの相対的発現量である。
1.白麹菌抽出物の調製例
上述した「白麹菌抽出物が皮膚バリア機能関連遺伝子に及ぼす影響」における「1.白麹菌抽出物の調製例」に従って、白麹菌抽出物を調製した。
2−1.細胞からの脂質の抽出
以下の手順i)〜v)に従い、脂質サンプルの調製を行った。
i)上述した「白麹菌抽出物が皮膚バリア機能関連遺伝子に及ぼす影響」における「2−1.試験方法」の手順i)〜iv)に従い、角化細胞の培養を行う。
ii)Phosphate Buffered Saline(以下PBSと略す)で3倍希釈したトリプシン500μLを添加し、細胞を浮遊させた。
iii)3ウェル分(N=3)の細胞浮遊液を1本の5mlチューブに回収し、2000rpmで3分間遠心分離を行う。
iv)上清を除去後、PBS 1mL/wellで2回洗浄する。
v)Brigh−Dyer法に従って脂質の抽出を行う。
・まず、回収した細胞にPBS 500μlを添加し、超音波処理を行う。
・次いで、メタノール1250μL、クロロホルム625μLを加え、42℃、125rpmにて20分間振とうする。
・振とう後、3000rpmで5分間遠心分離を行う。
・上清を回収し、回収した上清にクロロホルム625μLを加え攪拌する。
・攪拌後、PBS 625μLを加えよく攪拌する。
・上層中の白い沈殿物が中間層に沈むまで3000rpmで15分間遠心分離を行う。
・下層を回収し、窒素ガスを吹きつけ乾固した後、得られた固形物をクロロホルム:メタノール(体積比2:1)溶液100μLに溶解し、これを脂質サンプルとする。
i)TLC展開槽の壁面にろ紙を張り、HPTLCプレートのスポット位置に触れない程度の展開液(クロロホルム:メタノール:酢酸(体積比190:9:1)溶液)を加えた。
ii)HPTLCプレートのガラス下から1.5cm部分にマイクロシリンジを用いて各脂質サンプルを10μLずつスポットした。また、標準品としてCeramides non−hydroxy fatty acid(以下、Ceramide IIと表記)(Avanti Polar Lipids製)、Ceramide III(製造元:EVONIK INDUSTRIES)、Ceramide VI(製造元:EVONIK INDUSTRIES)を0.8、4、20、100、500μg/mLの濃度となるようにクロロホルム:メタノール(体積比2:1)溶液に溶解し、これらを5μLずつスポットした。
iii)HPTLCプレートを静かに展開槽に入れ、上端まで(スポットから8.5cm)展開した。展開後、HPTLCプレートを乾燥させた。乾燥後、再び展開層に入れ、もう一度展開を行った。
iv)展開溶媒を乾燥後、10質量%CuSO4−8体積%H3PO4溶液をHPTLCプレートに満遍なく噴霧し、180℃で10分間加熱した。
v)HPTLCプレートを常温まで冷却した後、Chemi Doc XRS+ with Image Lab Software(BIO RAD製)を用いてHPTLCプレートをスキャンした。
vi)得られた画像データからImage Lab Softwareを用いて、各バンドのシグナル強度を算出した。標準品のシグナル強度を元に、セラミド量とシグナル強度に関する検量線を作成し、各バンドにおけるセラミド量を算出した。サンプルの定量値は、3ウェル分(n=3)から調製されたサンプル10μLであるため、脂質サンプルの全量100μL分のセラミド量を求め、更に1ウェル当りのセラミド量に換算した。
TLC展開図について説明する。標準品(Standard)のTLC展開図、並びにコントロール(Control)及び白麹菌抽出物(濃度10、20、50μg/ml)を用いて得られた脂質サンプルのTLC展開図を図1に示す。
図1から分かるように、疎水性側に位置するCeramide IIと親水性側に位置するCeramide VIの間(傍線範囲内)に3つのバンド(1〜3)が存在し、これらをサンプル中のceramideとして定量した。また、バンド1とバンド3は標準品と同位置にあることからCeramide IIとCeramideVであると推測される。また、他文献よりバンド1の上部に位置する濃いバンドはコレステロールであり、バンド3の下部に位置するバンドはグルコシルセラミドであると推測される。
Image Labによってバンド1〜3を定量し、1ウェル当りのセラミド量に換算した(表3)。
3−1.細胞からの脂質の抽出
i)上述した「白麹菌抽出物が皮膚バリア機能関連遺伝子に及ぼす影響」における「3−1.試験方法」に従い、ヒト3次元培養皮膚モデルの培養を行った。
ii)ヒト3次元培養皮膚モデルをPBS中に懸濁させた。
iii)上述した「2.角化細胞におけるセラミド産生への影響」における「2−1.細胞からの脂質の抽出」の手順v)に従い、Brigh−Dyer法による脂質の抽出を行った。なお、得られる固形物は、クロロホルム:メタノール(体積比2:1)溶液200μLに溶解した。
上述した「2.角化細胞におけるセラミド産生への影響」における「2−2.セラミドの展開及び定量」の手順i)〜vi)に従い、各バンドのシグナル強度を算出した。次いで、標準品のシグナル強度を元に、セラミド量とシグナル強度に関する検量線を作成し、各バンドにおけるセラミド量を算出した。サンプルの定量値は、スポットしたサンプルは10μlであるため、全量200μl分のセラミド量を求め、tissue当りのセラミド量として解析した。
標準品(Standard)のTLC展開図、並びにコントロール(Control)及び白麹菌抽出物(濃度100、200、500μg/ml)を用いて得られた脂質サンプルのTLC展開図を図2に示す。文献より、点線枠内に位置するバンドがセラミドであることが知られている(図2)。
なお、Image Labによって、点線枠内に位置するバンドを定量し、総セラミド量を算出した(表4及び図3)。その結果、白麹菌抽出物の用量に依存して、セラミド量の増加傾向が認められ、特に、白麹菌抽出物の濃度が500μg/mLである場合に有意な産生増加が認められた。これらの結果から、白麹菌抽出物の添加により、細胞内の脂質産生が亢進しているのではないかと考えられる。
1.試験方法
20〜30代の健常成人女性を被験者として、試験品を皮膚に適用した前後の角層水分量の比較を行った。
被験者に腕を洗浄させ、測定室にて15分間馴化させた後、腕の角層水分量の測定を行った。測定後、以下に記載する試験品20μlを腕に塗布し、塗布後5、10、15、20、25、30、45、60分経過時点の角層水分量の測定を行った。角層水分量の測定には、SKICON−200EX((株)ヤヨイ)を用いた。
試験は、単盲検クロスオーバーにて実施した。
2−1.白麹菌抽出物の調製例
上述した「白麹菌抽出物が皮膚バリア機能関連遺伝子に及ぼす影響」における「1.白麹菌抽出物の調製例」に従って、白麹菌抽出物を調製した。
2−2.化粧水の調製例
表5に従う配合処方に従い、化粧水を調製した。
・化粧品のみを試験品(コントロール群)として用いた。
・試験品中の白麹菌抽出物の濃度が0.1質量%となるように白麹菌抽出物を化粧品と混合し、試験品(0.1%群)を調製した。
・試験品中の白麹菌抽出物の濃度が1質量%となるように白麹菌抽出物を化粧品と混合し、試験品(1%群)を調製した。
角層水分量の測定結果を図4に示す。0.1%群及び1%群は、コントロール群と比較して、高い値を示した。
本試験では、白麹菌抽出物が優れた保湿効果を有することを検証するため、白麹菌抽出物の塗布前後で角層水分量を比較した。その結果、白麹菌抽出物を塗布した群は、コントロール群と比較して、高い値を示した。よって、白麹菌抽出物は保湿作用を有することが示された。
Claims (6)
- 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤。
- 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とするタイトジャンクション形成促進
剤。 - 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とする角層形成促進剤。
- 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とするセリンパルミトイルトランスフ
ェラーゼ2(SPTLC2)、UDP−グルコースセラミドグルコシルトランスフェラ
ーゼ(UGCG)及び/又はβ−グルコセレブロシダーゼ(GBA)発現促進剤。 - 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とするクローディン1(CLDN1)
及び/又はオクルディン(OCLN)発現促進剤。 - 白麹菌又は白麹菌抽出物を含有することを特徴とするトランスグルタミナーゼ1
(TGM1)及び/又はインボルクリン(IVL)発現促進剤。
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