以下に添付図面を参照して、この発明に係る制御装置、プログラムおよび制御システムの実施の形態を詳細に説明する。以下では、この発明に係る制御装置を、制御対象領域である室内で特定の業務活動を実施する人間(以下、従業者という。)の位置等に応じて従業者が使用するノイズキャンセリング機能付きヘッドホンを制御する機器制御システムの一部の装置として実現する例を説明する。なお、実施可能な形態はこのような機器制御システムに限られるものではない。
図1は、本実施の形態の機器制御システムのネットワーク構成図である。本実施の形態の機器制御システムは、図1に示すように、複数のスマートフォン300と、撮像装置としての複数の監視カメラ400と、測位サーバ装置100と、制御サーバ装置200と、制御対象の機器としての複数のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500とを備えている。
複数のスマートフォン300および複数の監視カメラ400と、測位サーバ装置100とは、例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)等の無線通信ネットワークで接続されている。なお、無線通信の方式は、Wi−Fiに限定されるものではない。また、監視カメラ400と測位サーバ装置100とは有線で接続されていてもよい。
測位サーバ装置100と制御サーバ装置200とは、インターネットやLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されている。
また、制御サーバ装置200と、複数のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500とは、例えば、Wi−Fi等の無線通信ネットワークで接続されている。
なお、制御サーバ装置200と、複数のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500との通信方式はWi−Fiに限定されるものではなく、その他の無線通信方式を利用してもよい他、Ethernet(登録商標)ケーブルやPLC(Power Line Communications)等の有線通信方式を利用することもできる。
スマートフォン300は、従業者に所持されて、従業者の動作を検知する情報機器である。また、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500は、従業者が頭部に装着して外部の音を遮断する機器である。図2は、スマートフォン300およびノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500の装着状態を示す図である。スマートフォン300は、従業者が手等で所持する他、図2に示すように、従業者の腰に装着されてもよい。
図1に戻り、スマートフォン300のそれぞれには、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサが搭載されており、1秒等の一定時間ごとに、各センサでの検知データを測位サーバ装置100に送信している。ここで、加速度センサの検知データは、加速度ベクトルである。角速度センサの検知データは、角速度ベクトルである。地磁気センサの検知データは、磁気方位ベクトルである。
なお、本実施の形態では、従業者の動作を検知する情報機器としてスマートフォン300を用いているが、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサを備えて人間の動作を検知できる情報機器であれば、スマートフォン300等の携帯端末に限定されるものではない。
また、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサ等の従業者の動作を検知する情報機器をスマートフォン300に備えるとともに、スマートフォン300とは別個に従業者の動作を検知する情報機器を装着するように構成してもよい。
例えば、図3は、従業者の動作を検知できる情報機器をスマートフォン300と別個に装着した例を示す図である。図3に示すように、スマートフォン300とは別個に、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサを備えた小型のヘッドセットタイプのセンサ群301を、例えば、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500とともに頭部に装着することができる。この場合、センサ群301で検知した検知データは、センサ群301が直接、測位サーバ装置100に送信する他、スマートフォン300経由で測位サーバ装置100に送信することができる。このように、従業者の頭部にスマートフォン300の各センサとは別個にセンサ群301を装着することにより、種々の姿勢検出を行うことが可能となる。
図4は、各センサが検知する方向を示す図である。図4(a)は、加速度センサ、地磁気センサが検知する方向を示している。図4(a)に示すように、加速度センサ、地磁気センサにより、進行方向、鉛直方向、水平方向の加速度成分、地磁気方位成分のそれぞれの検知が可能となる。また、図4(b)は、角速度センサにより検知される角速度ベクトルAを示している。ここで、矢印Bが、角速度の正方向を示している。本実施の形態では、角速度ベクトルAの、図4(a)に示す進行方向、鉛直方向、水平方向への射影を考え、それぞれ、進行方向の角速度成分、鉛直方向の角速度成分、水平方向の角速度成分という。
図1に戻り、監視カメラ400は、制御対象領域である室内を撮像するものであり、制御対象領域である室の上部付近等に設置される。図5は、監視カメラ400の設置状態の一例を示す図である。図5の例では、室内の扉付近の2か所に監視カメラ400が設置されているが、これに限定されるものではない。監視カメラ400は、制御対象領域である室内を撮像して、その撮像画像(撮像映像)を、測位サーバ装置100に送信する。
図5に示すように、室内には、6個の机で一つのグループが形成され、3つのグループが設けられている。そして、各机に一人ずつ、合計18名の従業者が特定の業務活動を実施しており、従業者の室内外への出入りは2つの扉で行われる。ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500は、これら各机で特定の業務活動を実施する従業者が頭部に装着して使用するものであり、各机に関連付けられている。このようなノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500は、一般的なアクティブノイズキャンセリング機能を持つものであればよく、ノイズキャンセリング機能のオン/オフを切り替えることができるものであれば、必ずしもノイズキャンセリング機能の強度(ノイズキャンセル強度)を調整する機能は備えていなくてもよい。
なお、本実施の形態では、制御対象領域のレイアウトや機器類やユーザ数等を限定しているが、より多種多様なレイアウト並びに機器類へ適用することができる。さらに、空間規模やユーザ数のスケーラビリティにおける任意性や、個人単位もしくは集団単位で見た場合のユーザ属性や携わる業務種のバリエーションにおける任意性に対しても、幅広く拡張して適用することができる。また、図5に示すような屋内空間に限らず、屋外等で本実施の形態を適用してもよい。
複数のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のそれぞれは、制御サーバ装置200により、ネットワークを介して遠隔制御される。
例えば、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500は、ノイズキャンセリング機能のオン/オフおよびノイズキャンセル強度が、制御サーバ装置200により遠隔制御される。具体的には、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500には、個別に遠隔制御可能なノイズキャンセリング機能のオン/オフスイッチとノイズキャンセル強度調整部とが設けられており、オン/オフ制御およびノイズキャンセル強度の制御はWi−Fiによる無線制御方式で制御サーバ装置200により行われる。
なお、本実施の形態では、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を制御対象としているが、ヘッドホン以外にも、例えばイヤホンなどの機器、あるいは、耳に直接装着する形態ではなくとも、ノイズキャンセリング機能を有する機器であれば、いずれの機器を制御対象としてもよい。
図1に戻り、測位サーバ装置100は、各センサの検知データを受信して、各センサを装着した従業者の位置や動作状況を検出し、当該位置や動作状況を制御サーバ装置200に送信する。
図6は、測位サーバ装置100の機能的構成を示すブロック図である。測位サーバ装置100は、図6に示すように、通信部101と、位置特定部102と、動作状況検出部103と、補正部104と、記憶部110とを主に備えている。
記憶部110は、ハードディスクドライブ装置(HDD)やメモリ等の記憶媒体であり、制御対象領域である室内の地図データ等、測位サーバ装置100の処理に必要な各種情報を記憶している。
通信部101は、一定時間ごとに、スマートフォン300に搭載された加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサのそれぞれ、あるいはスマートフォン300とは別個のセンサ群301の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサのそれぞれから検知データを受信する。すなわち、通信部101は、加速度センサから加速度ベクトルを受信し、角速度センサから角速度ベクトルを受信し、地磁気センサから磁気方位ベクトルを受信する。
また、通信部101は、監視カメラ400から撮像画像を受信する。さらに、通信部101は、後述する従業者の絶対位置、および方向、姿勢等の動作状況を、制御サーバ装置200に送信する。
位置特定部102は、受信した検知データを解析して、室内での従業者の絶対位置を人間の肩幅または歩幅の精度で特定する。位置特定部102による従業者の絶対位置の特定手法の詳細については後述する。
動作状況検出部103は、受信した検知データを解析して、従業者の動作状況を検出する。本実施の形態では、動作状況検出部103は、動作状況として、従業者が静止状態か歩行状態かを検出する。また、動作状況検出部103は、動作状況が静止状態である場合に、検知データに基づいて、制御対象領域内の機器に対する従業者の方向、従業者の姿勢が起立状態か着座状態かの動作状況を検出する。
すなわち、動作状況検出部103は、監視カメラ400からの撮像画像により、従業者が扉から入室したことを検知した場合に、当該入室した従業者に装着されたスマートフォン300の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ、あるいはスマートフォン300とは別個のセンサ群301の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサから逐次受信している検知データのうち加速度ベクトルと角速度ベクトルのそれぞれの時系列データを用いて、従業者の動作状況が歩行状態か静止状態かを逐次判定する。ここで、加速度ベクトルと角速度ベクトルを用いて従業者の動作状況が歩行状態かを判定する手法は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置による処理で実現することができる。そして、動作状況検出部103は、この手法により人間が歩行状態でないと判断された場合に、人間が静止状態であると判定することができる。
より具体的には、動作状況検出部103は、特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置による処理と同様に、以下のように人間の動作状態を検出することができる。
すなわち、動作状況検出部103は、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力加速度ベクトルを求めて、加速度ベクトルから重力加速度ベクトルを差し引き、鉛直方向の加速度を除去して、残差加速度成分の時系列データを得る。そして、動作状況検出部103は、この残差加速度成分の時系列データに対して主成分解析を行って、歩行動作の進行方向を求める。さらに、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の山ピークと谷ピークのペアを探索し、進行方向の加速度成分の谷ピークと山ピークのペアを探索する。そして、動作状況検出部103は、進行方向の加速度成分の勾配を算出する。
さらに、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分が山ピークから谷ピークに変化する当該谷ピークの検出時刻における、上記進行方向の加速度成分の勾配が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上である場合に、従業者の動作状況は歩行状態であると判定する。
一方、上記処理において、鉛直方向の加速度成分の山ピークと谷ピークのペアが探索されず、あるいは、進行方向の加速度成分の谷ピークと山ピークのペアが探索されず、若しくは、鉛直方向の加速度成分が山ピークから谷ピークに変化する当該谷ピークの検出時刻における、上記進行方向の加速度成分の勾配が所定値未満である場合には、動作状況検出部103は、従業者の動作状況は静止状態であると判定する。
そして、従業者が静止状態であると判定されたら、位置特定部102は、加速度ベクトル、角速度ベクトルおよび磁気方位ベクトルを用いて、扉の位置を基準位置として、当該基準位置から静止状態であると判定された位置までの相対移動ベクトルを求める。ここで、加速度ベクトル、角速度ベクトルおよび磁気方位ベクトルを用いた相対移動ベクトルの算出手法は、例えば特開2011−47950号公報のデッドレコニング装置の処理で開示されている手法を用いることができる。
より具体的には、位置特定部102は、特開2011−47950号公報のデッドレコニング装置の処理と同様に、以下のように相対移動ベクトルを求めることができる。
すなわち、位置特定部102は、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力方位ベクトルを求め、重力方位ベクトルと、角速度ベクトルまたは地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルとから人間の姿勢角を移動方位として算出する。また、位置特定部102は、加速度ベクトルと角速度ベクトルとから重力加速度ベクトルを求め、重力加速度ベクトルと加速度ベクトルとから、歩行動作によって発生している加速度ベクトルを算出する。そして、位置特定部102は、重力加速度ベクトルと、歩行動作によって発生している加速度ベクトルとから、歩行動作を解析して検出し、検出結果に基づいて、歩行動作の大きさを、重力加速度ベクトルと歩行動作によって発生している加速度ベクトルとに基づいて計測して、計測結果を歩幅とする。そして、位置特定部102は、このようにして求めた移動方位と歩幅とを積算することにより、基準位置からの相対移動ベクトルを求める。すなわち、人間の歩幅あるいは肩幅、例えば、略60cm以下(より具体的には略40cm程度以下)の精度で、リアルタイムに従業者の位置を検出していることになる。
このようにして相対移動ベクトルが算出されたら、位置特定部102は、扉からの相対移動ベクトルと、記憶部110に記憶されている室内の地図データとから、従業者の移動後の絶対位置を特定する。
これにより、位置特定部102は、従業者が室内に配置されたどの机の位置にいるかまでを特定することができ、その結果、人間の肩幅、例えば、略60cm以下(より具体的には略40cm程度以下)の精度で、従業者の位置を特定することが可能となる。
このような位置精度は、高ければ高いほどよいというものではない。例えば、2人以上が会話をしている場面を想定すると、体を接して話しをすることは少なく、ある程度の距離は離れている。そこで、精度を考える場合、人間の肩幅または歩幅相当の精度、立っているか、座っているかは、腰から膝までの長さ相当を本実施の形態では適切な精度としている。
厚生労働省の公表している人体計測データ(河内まき子,持丸正明,岩澤洋,三谷誠二(2000):日本人人体寸法データベース1997−98,通商産業省工業技術院くらしとJISセンター)によれば、青年、高齢者の男女の肩幅に相当するデータ(肩峰幅)は、平均値の幅が最も低い高齢者女性で約35cm(34.8cm)、最も高い青年男性で約40cm(39.7cm)となっている。また、腰から膝までの長さ(恥骨結合上縁高―大腿骨外側上顆高)の差は、同様に、約34cm〜約38cmである。一方、人間が移動する場合の歩幅は、50m歩いた場合、95歩となり、これから約53cm(50÷95×10)となり、本実施の形態による位置検出方法は、歩幅相当の精度が可能である。従って、上記データから、精度としては、60cm以下、好ましくは40cm以下が妥当であるとして本実施の形態を構成している。これらデータは精度を考えるための基準の目安になるが、日本人に基づいたものであり、この数値に限定されるものではない。
また、従業者の絶対位置を特定し、従業者が机の前の席で静止状態である場合には、動作状況検出部103は、地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルの向きにより、従業者のディスプレイ装置に対する方向(向き)を判定する。また、動作状況検出部103は、従業者が机の前の席で静止状態である場合には、加速度ベクトルの鉛直方向の加速度成分から、従業者の姿勢、すなわち起立状態か着座状態かを判定する。
ここで、起立状態か着座状態かの判定は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置と同様に、加速度センサから受信した加速度ベクトルと角速度センサから受信した角速度ベクトルから重力加速度ベクトルを求めて、鉛直方向の加速度成分を求めることができる。そして、動作状況検出部103は、例えば特許第4243684号公報に開示されているデッドレコニング装置と同様に、鉛直方向の加速度成分の山と谷のピークを求めることができる。
図7は、着座動作と起立動作のそれぞれを行った場合における鉛直方向の加速度成分の波形を示す図である。図7に示すように、着座動作の場合には、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が約0.5秒前後である。一方、起立動作の場合には、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が約0.5秒である。このため、動作状況検出部103は、かかるピークの間隔により、従業者が着座状態か起立状態かを判断している。すなわち、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、従業者の動作状態は着座状態であると判定する。また、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、従業者の動作状態は起立状態であると判定する。
このように、動作状況検出部103が従業者の動作状態が起立状態か着座状態かを判定することにより、従業者の高さ方向の位置を、略50cm以下(より具体的には、略40cm以下)の精度で検出したことを意味する。
さらに、図3に示した例のように、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサ等の人間の動作を検知する情報機器を搭載したスマートフォン300を腰に装着し、さらに、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサを備えた小型のヘッドセットタイプのセンサ群301を頭部に装着した場合には、動作状況検出部103は、さらに、以下のような従業者の姿勢や動作を検出することができる。
図8は、しゃがむ動作と起立動作とをそれぞれ行った場合における水平方向の角速度成分の波形を示す図である。加速度センサからの加速度データからは、図7に示す着座動作と起立動作と類似の波形が検出されるが、加速度データのみでしゃがむ動作と起立動作を判別することは困難である。
このため、動作状況検出部103は、図7の波形に基づく、上述した着座動作と起立動作の判別の手法とともに、角速度センサから受信した水平方向の角速度データの経時的変化が図8の波形に一致するか否かを判断することにより、しゃがむ動作と起立動作の判別を行っている。
具体的には、動作状況検出部103は、まず、加速度センサから受信した加速度ベクトルに基づく鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内であるか否かを判断する。
そして、鉛直方向の加速度成分の山のピークから谷のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図8に示す波形のように、0から徐々に増加した後急激な増加で山のピークに達し、山のピークから急激に下がった後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約2秒である場合に、従業者の動作がしゃがむ動作であると判定する。
また、動作状況検出部103は、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内であるか否かを判断する。そして、鉛直方向の加速度成分の谷のピークから山のピークまでの間隔が0.5秒から所定範囲内である場合には、動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図8に示す波形のように、0から段階的に谷のピークに達し、谷のピークから徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約1.5秒である場合に、従業者の動作が起立動作であると判定する。
このような動作状況検出部103におけるしゃがむ動作と起立動作の判定で用いる角速度ベクトルとしては、頭部に装着した角速度センサから受信した角速度ベクトルを用いることが好ましい。しゃがむ動作と起立動作において、頭部に装着した角速度センサからの角速度ベクトルに基づく水平方向の角速度成分が、図8に示す波形を顕著に示すからである。
図9は、従業者が静止状態で方向をほぼ90度変化させる動作を行った場合の鉛直方向の角速度成分の波形を示す図である。鉛直方向の角速度成分が正であれば右側に向きを変える動作であり、負であれば左側に方向を変化させる動作である。
動作状況検出部103は、角速度センサから受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分の経時的変化が、図9に示す波形のように、0から徐々に山のピークに達した後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約3秒である場合に、方向が右に変化する動作と判定する。
また、動作状況検出部103は、鉛直方向の角速度成分の経時的変化が、図9に示す波形のように、0から徐々に谷のピークに達した後徐々に0に戻り、かつその間の時間が約1.5秒である場合に、方向が左に変化する動作と判定する。
動作状況検出部103は、頭部の角速度センサおよび腰のスマートフォン300の角速度センサの双方から受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、共に、上述のような判断で図9の波形と類似する経時的変化を示す場合には、体全体の向きが右若しくは左に変わる動作と判定する。
一方、動作状況検出部103は、頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、上述のような図9の波形に類似する経時的変化を示すが、腰のスマートフォン300の角速度センサからの角速度ベクトルの鉛直方向の角速度成分が、図9の波形と全く異なる経時的変化を示す場合には、頭部だけ方向を右若しくは左に変える動作と判定する。このような動作としては、例えば、従業者が着座したまま、隣の従業者とコミュニケーションをとる場合の姿勢動作が考えられる。
図10は、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した場合の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分の波形を示す図である。
位置特定部102が従業者の絶対位置を机の前であると特定し、かつ動作状況検出部103が当該机の前にいる従業者が着座状態であることを検出した場合を考える。そして、このような場合に、動作状況検出部103は、その従業者の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図10に示す波形のように、0から徐々に谷のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつその間の時間が約1秒である場合に、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した動作(見上げる動作)であると判定する。そして、さらに、動作状況検出部103は、水平方向の角速度成分が、図10に示す波形のように、0から徐々に増加しながら山のピークに達し、その後徐々に0に戻り、かつこの間の時間が約1.5秒である場合に、着座状態でディスプレイから上方向に目線を外した状態からディスプレイに目線を戻した動作であると判定する。
図11は、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した場合の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分の波形を示す図である。
位置特定部102が従業者の絶対位置を机の前であると特定し、かつ動作状況検出部103が当該机の前にいる従業者が着座状態であることを検出した場合を考える。そして、このような場合に、動作状況検出部103は、その従業者の頭部の角速度センサから受信した角速度ベクトルの水平方向の角速度成分が、図11に示す波形のように、0から急激に山のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつその間の時間が約0.5秒である場合に、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した動作(見下げる動作)であると判定する。
そして、さらに、動作状況検出部103は、水平方向の角速度成分が、図11に示す波形のように、0から急激に減少しながら谷のピークに達し、その後急激に0に戻り、かつこの間の時間が約1秒である場合に、着座状態でディスプレイから下方向に目線を外した状態からディスプレイに目線を戻した動作であると判定する。
このように、動作状況検出部103は、オフィスの従業者が日常取り得る姿勢や動作、すなわち、歩く(立った状態)、起立する(静止状態)、椅子に着座する、作業時にしゃがむ、着座状態あるいは起立状態で向き(方向)を変える、着座状態あるいは起立状態で天を仰ぐ、着座状態あるいは起立状態で俯く等を、上述の手法で判定することが可能になる。
なお、特許第4243684号公報のデッドレコニング装置の手法を用いる場合、特許第4243684号公報に開示されているように、エレベータによる人間の昇降動作も、鉛直方向の加速度成分を用いて判断している。
このため、本実施の形態では、動作状況検出部103は、例えば特開2009−14713号公報に開示されているマップマッチング装置の機能を用い、エレベータのない場所で、鉛直方向の加速度成分が図7に示す波形で検出された場合には、特許第4243684号公報のデッドレコニング装置によるエレベータによる昇降動作とは異なり、起立動作または着座動作であることを高精度に判定することができる。
補正部104は、監視カメラ400からの撮像画像や記憶部110に保存された地図データに基づいて、特定された絶対位置や動作状況(方向、姿勢)を補正する。より具体的には、補正部104は、上述のように判断された従業者の絶対位置、方向、姿勢を、監視カメラ400の撮像画像の画像解析等により正しいか否かを判断したり、地図データと、例えば特開2009−14713号公報に開示されているマップマッチング装置の機能とを用いて正しいか否かを判断する。そして、誤っている場合には、補正部104は、撮像画像やマップマッチング装置の機能から得られる、正しい絶対位置、方向、姿勢に補正する。
なお、補正部104は、監視カメラ400からの撮像画像に限らず、RFIDやBluetooth(登録商標)等の短距離無線、光通信等の限定的な手段を用いて補正を行うように構成してもよい。
また、本実施の形態では、特許第4243684号公報および特開2011−47950号公報に開示されたデッドレコニング装置と同様の技術、特開2009−14713号公報に開示されたマップマッチング装置と同様の技術を用いて、従業者の動作状態、基準位置からの相対移動ベクトル、姿勢(起立状態か着座状態か)を検出しているが、検出手法はこれらの技術に限定されるものではない。
なお、人間の位置を検出可能な技術としては、加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサの検知データに基づいて測位サーバ装置100が実施する上述した方法の他に、例えば、ICカード等による入退室管理、人感センサによる人間の検知、無線LANを用いる方法、屋内GPS(IMES:Indoor MEssaging System)を用いる方法、カメラの撮像画像を画像処理する方法、アクティブRFIDを用いる方法、および可視光通信を用いる方法等が知られている。
ICカード等による入退室管理は、個人識別は可能であるが、測位精度が管理対象のエリア全体となり極めて低い。そのため、誰がそのエリアにいるかを知ることはできるものの、そのエリア内での人間の活動状況を把握することができない。
人感センサによる人間の検知は、人感センサの検知範囲となる1〜2m程度の測位精度が得られるが、個人識別を行うことができない。また、エリア内での人間の活動状況を把握するためには、多数の人感センサを分散してエリア内に配置する必要がある。
無線LANを用いる方法は、人間が所持する1台の無線LAN端末とエリア内に設置された複数台のLANアクセスポイントとの間の距離を測定し、三角測量の原理によりエリア内における人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度の環境依存性が大きく、一般的に測位精度は3m以上と比較的低い精度となる。
屋内GPSを用いる方法は、GPS衛星と同じ周波数帯の電波を発する専用の送信機を屋内に設置し、その送信機から通常のGPS衛星が時刻情報を送信する部分に位置情報を埋め込んだ信号を送信する。そして、その信号を屋内の人間が所持する受信端末で受信することにより、屋内における人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度が3〜5m程度と比較的低い精度となる。また、専用の送信機を設置する必要があり導入コストが嵩む。
カメラの撮像画像を画像処理する方法は、数十cm程度の比較的高い測位精度が得られるが、個人識別を行うことが難しい。このため、本実施の形態の測位サーバ装置100では、従業者の絶対位置、方向、姿勢を補正する場合にのみ、監視カメラ400の撮像画像を用いている。
アクティブRFIDを用いる方法は、電池を内蔵するRFIDタグを人間が所持し、RFIDタグの情報をタグリーダで読み取ることで人間の位置を特定する。この方法は、個人識別は可能であるが、測位精度の環境依存性が大きく、一般的に測位精度は3m以上と比較的低い精度となる。
可視光通信を用いる方法は、個人識別が可能であり、しかも数十cm程度の比較的高い測位精度が得られるが、可視光が遮られる場所では人間を検知できず、また、自然光や他の可視光等のノイズ源、干渉源が多いため、検出精度の安定性を維持することが難しい。
これらの技術に対し、本実施の形態の測位サーバ装置100が実施する方法は、個人識別が可能で、しかも人間の肩幅または歩幅相当の高い測位精度が得られ、その上、人間の位置だけでなく、人間の動作状況を検出することができる。具体的には、本実施の形態の測位サーバ装置100が実施する方法によれば、人間の動作状況として、オフィスの従業者が日常取り得る姿勢や動作、すなわち、歩く(立った状態)、起立する(静止状態)、椅子に着座する、作業時にしゃがむ、着座状態あるいは起立状態で向き(方向)を変える、着座状態あるいは起立状態で天を仰ぐ、着座状態あるいは起立状態で俯く等を検知することができる。
このため、本実施の形態では、測位サーバ装置100が、スマートフォン300やセンサ群301の加速度センサ、角速度センサおよび地磁気センサの検知データに基づいて、上述した方法により、制御対象領域であるオフィス内の従業者の絶対位置および従業者の動作状況を検出するようにしている。しかし、制御対象領域である室内における従業者の位置を検出する方法は、測位サーバ100が実施する上述した方法に限定されるものではなく、例えば、上述した他の方法の一つまたは複数の組み合わせにより従業者の位置を検出するようにしてもよく、また、測位サーバ装置100が実施する上述した方法に上述した他の方法の一つまたは複数を組み合わせて、従業者の位置を検出するようにしてもよい。
次に、制御サーバ装置200の詳細について説明する。制御サーバ装置200は、制御対象領域である室内の従業者の位置、方向、姿勢に基づいて、当該室内で従業者が使用するノイズキャンセル機能付きヘッドホン500を、ネットワークを介して遠隔制御する。
図12は、本実施の形態の制御サーバ装置200の機能的構成を示すブロック図である。本実施の形態の制御サーバ装置200は、図13に示すように、通信部201と、職務情報管理部202と、制御対象特定部203と、機器制御部204と、記憶部220とを主に備えている。
記憶部220は、HDDやメモリ等の記憶媒体であり、制御対象領域である室内の机の位置を示す位置データや、室内で業務活動を実施する従業者同士の職務上の関係性を示す職務情報等、制御サーバ装置200の処理に必要な各種情報を記憶している。
通信部201は、測位サーバ装置100から、従業者の絶対位置、動作情報(方向、姿勢)を受信する。また、通信部201は、複数のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のうち、制御対象特定部203により特定された制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセリング機能をオンするための制御信号やノイズキャンセル強度を設定するための制御信号を送信する。なお、本実施の形態では、制御対象領域である室内における従業者の位置、方向、姿勢を測位サーバ装置100が検出する構成であるが、この従業者の位置、方向、姿勢を検出する機能を制御サーバ装置200に持たせるようにしてもよい。また、従業者の位置、方向、姿勢を検出する機能をノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に持たせることも可能である。
職務情報管理部202は、受信した従業者の位置等と、記憶部220が記憶する職務情報とに基づいて、職務上関連がある従業者同士の位置関係を監視する。具体的には、職務情報管理部202は、例えば、制御対象特定部203により特定された制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいてきているか否かを判断する。
制御対象特定部203は、受信した従業者の位置に基づいて、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を特定する。具体的には、制御対象特定部203は、記憶部220が記憶する位置データを参照して、従業者の位置が室内の机が置かれた位置の近傍であれば、その机で使用されるノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を制御対象として特定する。例えば、室内の各机の位置に対して、対応するノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500の情報を関連付けておくことで、従業者の位置から制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を特定することができる。
機器制御部204は、受信した従業者の位置と方向と姿勢の少なくとも一つに基づいて、制御対象特定部203により制御対象として特定されたノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を制御する。具体的には、機器制御部204は、まず制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセリング機能をオンする制御信号を、通信部201を介して送信する。この際、制御対象により制御対象として特定されていないノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のうち、ノイズキャンセリング機能がオンになっているものがあれば、そのノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセリング機能をオフする制御信号を合わせて送信するようにしてもよい。
次に、機器制御部204は、受信した従業者の方向と姿勢の少なくとも一方に基づいて、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を制御する。例えば、機器制御部204は、受信した従業者の向きが机に正対する方向(前方)であり、かつ、受信した従業者の姿勢が着座状態である場合、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセル強度を閾値より高く設定する制御信号を、通信部201を介して送信する。一方、受信した従業者の向きが机に正対する方向(前方)ではない、あるいは、受信した従業者の姿勢が起立状態である場合には、機器制御部204は、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセル強度を閾値より低く設定する制御信号を、通信部201を介して送信する。
これにより、着座状態で机に正対して作業を行っている従業者に対して、周囲の会話や様々な音が気にならない快適な作業環境を提供し、作業の効率化を高めることができるとともに、机に正対していない作業者や起立状態の作業者等、作業を中断していることが想定される従業者に対しては、周囲の音を完全に遮断せずに有益な情報が得られる環境を提供することができる。なお、上記の例では、従業者の向きと姿勢の双方に基づいてノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を制御しているが、いずれか一方に基づいてノイズキャンセル強度を制御するようにしてもよい。例えば、従業者の向きが机に正対する方向であればノイズキャンセル強度を高く、机に正対する方向でなければノイズキャンセル強度を低く設定するようにしてもよい。また、作業者が着座状態であればノイズキャンセル強度を高く、起立状態であればノイズキャンセル強度を低く設定するようにしてもよい。
また、機器制御部204は、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者だけでなく、制御対象領域である室内における他の従業者の位置等に基づいて、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を制御することもできる。例えば、機器制御部204は、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者の位置と、他の従業者の位置等に基づいて、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいてきていると職務情報管理部202が判断した場合に、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、ノイズキャンセル強度を低下させる制御信号を、通信部201を介して送信する。
これにより、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいていなければ作業に集中できる環境を提供しつつ、職務上関連のある他の従業者が近づいてきたときには外部の音が聞き取れる環境を提供し、例えば、他の従業者に話しかけられたときにすぐに反応できるようにすることが可能となる。なお、上記の例では、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいてきていると判断される場合にノイズキャンセル強度を低下させるようにしているが、職務上関連のある従業者か否かに関わらず、他の従業者が近づいてきていると判断される場合に、ノイズキャンセル強度を低下させるように制御してもよい。また、上記の例では、他の従業者が近づいてきていると判断される場合にノイズキャンセル強度を低下させるように制御しているが、他の従業者が近づいてきていると判断される場合にノイズキャンセリング機能をオフするように制御してもよい。
次に、以上のように構成された本実施の形態の測位サーバ装置100による検出処理について説明する。図13は、本実施の形態の測位サーバ装置100による検出処理の手順を示すフローチャートである。かかるフローチャートによる検出処理は、複数のスマートフォン300のそれぞれに対応して実行される。
なお、測位サーバ装置100は、このフローチャートによる検出処理とは別個に、複数のスマートフォン300に搭載された加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサあるいはスマートフォン300とは別個の加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサのそれぞれの各センサから検知データ(加速度ベクトル、角速度ベクトル、磁気方位ベクトル)を一定間隔で受信し、複数の監視カメラ400から撮像画像を受信している。
まず、従業者が制御対象領域である室内に入室したか否かを、例えば、開閉する扉の撮像画像等により判断する(ステップS11)。そして、入室した場合には(ステップS11:Yes)、動作状況検出部103は、入室した従業者の動作状況を、上述した手法により検出する(ステップS12)。そして、動作状況検出部103は、従業者の動作状況が歩行状態であるか否かを判断し(ステップS13)、歩行状態である間は(ステップS13:Yes)、動作状況の検出を繰り返し行う。
一方、ステップS13で従業者の動作状況が歩行状態でない場合には(ステップS13:No)、動作状況検出部103は、従業者の動作状況が静止状態であると判断する。そして、位置特定部102は、基準位置を扉として、扉からの相対移動ベクトルを、上述の手法で算出する(ステップS14)。
そして、位置特定部102は、記憶部110に保存されている室の地図データと、扉からの相対移動ベクトルにより、静止状態となった従業者の絶対位置を特定する(ステップS15)。これにより、位置特定部102は、従業者が室内に配置されたどの机の位置にいるかまでを特定することができ、その結果、従業者の肩幅(略60cm以下、より具体的には略40cm以下)の精度で、従業者の位置を特定することになる。
次に、動作状況検出部103は、さらに静止状態の従業者の動作状況として、従業者のディスプレイ装置に対する方向(向き)を、地磁気センサから受信した磁気方位ベクトルから検出する(ステップS16)。
次いで、動作状況検出部103は、従業者の動作状況として、着座状態か起立状態かという姿勢を、上述の手法で検出する(ステップS17)。これにより、動作状況検出部103は、従業者の高さ方向の位置を、略50cm以下(より具体的には、略40cm以下)の精度で検出したことになる。
さらに、動作状況検出部103は、従業者の動作状況として、しゃがむ動作か起立動作か、着座状態で向きを変更する動作か戻す動作か、着座状態で目線を上げる動作か目線を戻す動作か、着座状態で目線を下げる動作か目線を戻す動作か、をそれぞれ検出してもよい。
次に、補正部104は、特定された絶対位置、検出された方向および姿勢に対して、上述のとおり、補正が必要か否かを判断して、必要であれば補正する(ステップS18)。
そして、通信部101は、絶対位置、検出された方向および姿勢(補正された場合には、補正後の絶対位置、検出された方向および姿勢)を、検出結果データとして、制御サーバ装置200に送信する(ステップS19)。
次に、制御サーバ装置200による機器制御処理について説明する。図14は、本実施の形態の機器制御処理の手順を示すフローチャートである。
まず、通信部201は、測位サーバ装置100から、検出結果データとしての従業者の絶対位置、方向、姿勢を受信する(ステップS31)。次に、制御対象特定部203は、受信した検出結果データの絶対位置から、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を特定する(ステップS32)。
より具体的には、制御対象特定部203は、例えば、記憶部220に保存された位置データを参照して、絶対位置に相当する机に関連付けられたノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を制御対象として特定する。
次に、機器制御部204は、特定したノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセリング機能をオンにする制御を行う(ステップS33)。
次に、機器制御部204は、受信した検出結果データの方向が前方であり、かつ当該検出結果データの姿勢が着座状態であるか否かを判断する(ステップS34)。そして、方向が前方であり、かつ姿勢が着座状態である場合には(ステップS34:Yes)、機器制御部204は、ステップS32で特定したノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を閾値よりも高く設定する制御を行う(ステップS35)。
一方、ステップS34において、方向が後方であるか、または、姿勢が起立状態である場合には(ステップS34:No)、機器制御部204は、ステップS32で特定したノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を閾値よりも低く設定する制御を行う(ステップS36)。
次に、職務情報管理部202は、受信した検出結果データに基づいて、ステップS32で特定したノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいているか否かを判断する(ステップS37)。そして、職務上関連のある他の従業者が近づいていると判断される場合には(ステップS37:Yes)、機器制御部204は、ステップS32で特定したノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500のノイズキャンセル強度を低くする制御を行う(ステップS38)。
一方、ステップS37において、職務上関連のある他の従業者が近づいていないと判断される場合には(ステップS37:No)、ステップS35またはステップS36で設定されたノイズキャンセル強度を維持したまま処理を終了する。
なお、機器制御部204は、制御対象となる各ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対して、上述した制御以外の制御を行うように構成してもよい。
また、従業者の位置、向き、姿勢だけでなく、従業者の動作が、しゃがむ動作か起立動作か、着座状態で向きを変更する動作か戻す動作か、着座状態で目線を上げる動作(見上げる動作)か目線を戻す動作か、着座状態で目線を下げる動作(見下げる動作)か目線を戻す動作かにより、制御対象となる各ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500に対する制御を行うように、機器制御部204を構成してもよい。
以上のように本実施の形態では、従業者の位置を肩幅の精度で特定し、従業者の方向や姿勢を検出して、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500の制御を行っているので、より細かい精度でのノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500の制御が可能となり、有益な情報を遮断することなく、快適な環境を実現することができる。すなわち、本実施の形態によれば、着座状態で机に正対して作業を行っている従業者に対して、周囲の会話や様々な音が気にならない快適な作業環境を提供し、作業の効率化を高めることができるとともに、机に正対していない作業者や起立状態の作業者等、作業を中断していることが想定される従業者に対しては、周囲の音を完全に遮断せずに有益な情報が得られる環境を提供することができる。また、制御対象のノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用する従業者に対して、職務上関連のある他の従業者が近づいていなければ作業に集中できる環境を提供しつつ、職務上関連のある他の従業者が近づいてきたときには外部の音が聞き取れる環境を提供し、例えば、他の従業者に話しかけられたときにすぐに反応できるようにすることが可能となる。
本実施の形態の測位サーバ装置100、制御サーバ装置200は、CPU等の制御装置と、ROMやRAM等の記憶装置と、HDD、CDドライブ装置等の外部記憶装置と、ディスプレイ装置等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラム、本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
本実施の形態の測位サーバ装置100で実行される検出プログラムは、上述した各部(通信部101、位置特定部102、動作状況検出部103、補正部104)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から検出プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部101、位置特定部102、動作状況検出部103、補正部104が主記憶装置上に生成されるようになっている。
本実施の形態の制御サーバ装置200で実行される制御プログラムは、上述した各部(通信部201、職務情報管理部202、制御対象特定部203、機器制御部204を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部201、職務情報管理部202、制御対象特定部203、機器制御部204が主記憶装置上に生成されるようになっている。
本実施の形態による効果を確認すべく、以下のような実験を行った。すなわち、上述した構成の機器制御システムによりノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を制御した場合を実施例とし、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用するが上述した構成の機器制御システムによる制御は行わない場合を比較例1、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を使用しない場合を比較例2として、実施例、比較例1および比較例2のそれぞれで被験者が体感する快適性を確認した。
(実験の条件)
実施例、比較例1および比較例2のそれぞれについて、被験者に連続した5日間(月曜日から金曜日)で通常業務を実施してもらい、被験者に対してアンケートによる調査を実施した。アンケートの項目としては、(1)業務に集中することができたか、(2)業務に必要な音情報を得られたか(たとえば話かけられてすぐに気づいたかなど)を設け、それぞれ、「はい」、「いいえ」、「どちらともいえない」の3つの中から回答を選択させるようにした。なお、実施例および比較例1では、被験者には自らの机で業務をする場合には必ずノイズキャンセリング機能付きヘッドホン500を装着するように指示した。
実験結果を図15に示す。この図15に示す実験結果から分かるように、比較例1の場合は業務に集中することはできるが業務に必要な音情報を得られなくなり、また、比較例2の場合は業務に必要な音情報を得ることはできるが業務に集中することができなくなるのに対し、実施例では、業務に集中しながら業務に必要な音情報を得ることができる。このように、本実施の形態によれば、有益な情報を遮断することなく、快適な環境を実現することができるという、従来にない顕著な効果が得られる。
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。つまり、上述した実施の形態の具体的な構成や動作はあくまで一例であり、用途や目的に応じて様々な変形や変更が可能である。