次に、実施形態について説明する。実施形態において同様の要素については、同じ符号を付してその説明を簡略化または省略することがある。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の表示装置1の概略構成を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態の表示装置1を示す側面図である。図3は、再帰性透過材4の構成を示す図であり、図3(A)は再帰性透過材4の厚み方向から見た平面図、図3(B)は、再帰性透過材4の一部を拡大して示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の表示装置1は、フラットパネルディスプレイ2(画像生成装置)、カメラ3(撮影装置)、再帰性透過材4(結像素子)、照明部5(図2に示す)、及び制御装置6を備えている。表示装置1は、フラットパネルディスプレイ2及び再帰性透過材4により画像(実像M)を表示し、観察者Kの指等の指示体をカメラ3によって撮影し、指示体を検出することによって、表示装置1に対する入力を受け付ける。
フラットパネルディスプレイ2(以下、FPDと略記する)は、制御装置6から入力された画像データに基づいて、画像表示面2a(画像生成面)上に画像Vを表示する。画像Vは、例えば、人物を写した画像、風景を写した画像、文字を示す画像等を含む。FPD2は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどの一般的なディスプレイで構成される。
再帰性透過材4は、図3(A)及び図3(B)に示すように、所定の厚みを持った矩形状のガラスなどの板材7に、光が通過(透過)する複数の四角柱状の開口部8が設けられたものである。板材7は、互いにほぼ平行な2つの主面7a,7bを有し、一方の主面7a側から入射した光は、他方の主面7b側から出射する。
なお、本実施形態において、図1等に示すXYZ直交座標系を参照して、表示装置1の各部の位置関係等を説明する場合がある。このXYZ直交座標系は、再帰性透過材4の素子面S上で互いに直交する2方向がX方向、Y方向であり、再帰性透過材4の厚み方向(素子面Sの法線方向)がZ方向である。また、図1及び図2に示すV1方向は、XY平面においてX方向とY方向のそれぞれに交差する方向であり、例えば矩形板状の再帰性透過材4の対角方向である。
なお、素子面Sは、板材7の主面7aと主面7bとに平行な平面であって、板材7の中心を通る(主面7aからの距離と主面7bからの距離が同じ)仮想的な平面である。素子面Sは、板材7の厚み方向の中心を通り、板材7の厚み方向(Z方向)と直交する平面としてもよい。
開口部8は、板材7上の互いに直交する2方向(X方向、Y方向)に、繰り返し配列されている。素子面Sの法線方向から見た開口部8の平面形状は、例えば正方形である。本実施形態の再帰性透過材4は、板材7の厚み方向(Z方向)から見て(平面視して)、開口部8の各辺が板材7の各辺とほぼ平行である。
このように、再帰性透過材4は、2方向(ここでは、X方向及びY方向)のそれぞれに周期的な構造(開口部8)を有しており、素子面Sは、再帰性透過材4の内部の仮想的な平面であって、周期的な構造が並ぶ2方向のそれぞれに平行な面としてもよい。
開口部8は、その内側を光が通過する光通過部として機能するように、構成されている。開口部8は、その内側が空間(空隙)であってもよいし、その内側に透明性の高い樹脂材料などが充填されていてもよい。
開口部8の4つの内壁面のうち互いに直交する2つの内壁面は、反射面9(第1反射面9a、第2反射面9b)になっている。反射面9は、例えば、開口部8に形成された金属反射膜等で構成される。
第1反射面9a及び第2反射面9bは、いわゆる2面コーナーリフレクターを構成する。第1反射面9a及び第2反射面9bは、複数の開口部8のいずれにおいても、各開口部8の中心を原点として+X方向と+Y方向の間(第1象限)の任意の方向を向いている。
開口部8の内壁面のうち互いに直交する2つの内壁面が反射面である構成を説明したが、開口部8の4つの内壁面が全て反射面9になっていてもよく、本実施形態においては、開口部8の4つの内壁面は、いずれも反射面9になっている。反射面9のうち第3反射面9cは、第2反射面9bと直交し、第1反射面9aとほぼ平行に対向している。反射面9のうち第4反射面9dは、第3反射面9cと直交し、第2反射面9bとほぼ平行に対向している。
反射面9のうち互いに交差して隣接する1対の反射面は、いずれも同じ向きを向いており、この向きから光が入射可能である。例えば、第2反射面9bと第3反射面9cは、+X方向と−Y方向の間(第4象限)の任意の方向を向いている。また、第3反射面9cと第4反射面9dは、−X方向と−Y方向の間(第3象限)の任意の方向を向いている。また、第4反射面9dと第1反射面9aは、−X方向と+Y方向の間(第2象限)の任意の方向を向いている。
図2に示すように、FPD2は、素子面S及び画像表示面2aに平行な側方から見ると、画像表示面2aが再帰性透過材4の素子面Sに対して非垂直に傾くように、配置されている。
また、図3(A)に示すように、FPD2は、再帰性透過材4の素子面Sに垂直な方向から見ると、画像表示面2aの法線方向2bが開口部8の配列方向(X方向、Y方向)のそれぞれと交差するように、配置されている。換言すると、FPD2は、再帰性透過材4の素子面Sに垂直な方向から見ると、画像表示面2aの法線方向が再帰性透過材4の開口部8の2つの反射面9が接する角部の側に向くように傾いて配置されている。
このようなFPD2と再帰性透過材4の位置関係により、FPD2の画像表示面2aから出射した光は、概ね再帰性透過材4の開口部8の2つの反射面9が接する角部の方向に向けて進む。図1では、図面を見易くするため、再帰性透過材4の開口部8の図示を省略した。再帰性透過材4の開口部8の2つの反射面9が接する角部の位置は、再帰性透過材4の4つの角部のうち、図1に符号Rで示した角部の位置に対応する。
ここで、図4(A)〜(E)を用いて、再帰性透過材4の作用を説明する。図4において、点Pは、図2に示した画像V上の光が射出される点、例えばFPD2上の各画素を示す。また、点Tは、点Pから出射した光が再帰性透過材4の反射面9上に入射する点(入射位置)を示す。また、点Qは、点Pから出射して再帰性透過材4を通った光が結像する点を示す。図4(D)、図4(E)は、それぞれ、点Tの近傍を拡大視した平面図、側面図である。
上述したように、再帰性透過材4の2つの反射面9(第1反射面9a及び第2反射面9b)は、互いに直交している。そのため、図4(D)に示すように、第2反射面9bに入射した光は、第2反射面9bで反射した後に、第1反射面9aに入射して第1反射面9aで反射し、第2反射面9bへ入射してくるときの向きと逆向きに進行する。したがって、反射面9に入射した光は、図4(B)に示すように素子面Sと直交する方向(Z方向)から見たときには、一般の再帰性反射材と同様に、入射方向と同じ方向に反射する。そのため、点QをXY平面上に射影した射影点は、点PをXY平面上に射影した射影点とほぼ一致する。
また、反射面9に入射した光は、図4(E)に示すように再帰性透過材4に対する入射面の法線方向(点P、点T、点Qで作る三角形PTQの法線方向)から見ると、第1反射面9a及び第2反射面9bでそれぞれ反射する。そのため、図4(C)に示すように、反射面9に入射した光は、入射面と素子面Sとに直交するように平面ミラーを置いた場合と等価的に、入射角aと同じ反射角aで反射する。
このように、点Pから出射した光は、図4(A)に示すように点Tを経て点Qに向かう。一般に、画像V上の点Pから出射した光は、ある程度の角度範囲内に拡散するため、再帰性透過材4の点T以外の箇所にも入射する。点Pから拡散した光は、点T以外の箇所においても同様に反射するため、点Qに集束することになる。すなわち、素子面Sの一方側に位置する画像Vは、素子面Sの他方側の空間における素子面Sに対する面対称位置(実像面J)に結像する。
ここでは、平面的な画像Vの1点をPから出射した光について説明したが、有限の大きさを持った立体的な物体又は像上の各点から出射した光も同様に結像する。よって、再帰性透過材4の下方に立体物が存在した場合、点Qの周辺に、再帰性透過材4の素子面Sに対して面対称な実像が立体像として形成される。
なお、実像上の点Qを観察する場合、観察点と点Qとを結ぶ直線上からの光線を選択的に見ていることになり、両目で観察することで実像が空間に浮かんで見える。また、上述のように、再帰性透過材4は、素子面Sと垂直な方向に貫通する開口部8を有しているため、再帰性透過材4の素子面Sに対して垂直に入射した光は反射面9に入射することなく、そのまま直進する。
本実施形態においては、図2に示すように、再帰性透過材4の素子面Sの下方にFPD2が傾いて設置されている。そのため、実像面Jは、再帰性透過材4の素子面Sの上方の空間において、FPD2の画像表示面2aの傾きと面対称な方向に傾いて配置される。再帰性透過材4は、このような実像面Jに、画像表示面2a上の画像Vを面対称にした実像Mを形成する。この場合、FPD2の画像表示面2aが平面であるため、形成される実像Mは画像Vと傾きが異なり、形状や寸法がほぼ一致した平面像となる。
したがって、観察者K(ユーザー)は、実像面Jの傾いた方向から実像Mの方向を斜めに覗き込むようにすれば、観察者Kに対して実像Mが略正対した状態となり、実像Mを見やすくなる。実像Mは、再帰性透過材4で反射した光により形成されたものであるため、観察者Kは、再帰性透過材4を見ることができる観察範囲内において、実像Mが空間に浮かんだように見える。
次に、カメラ3について説明する。カメラ3(撮影装置)は、CCDセンサー、CMOSセンサー等の撮像素子、撮影レンズ、オートフォーカス機構等を備え、例えば一般的なカメラで構成できる。カメラ3は、図1に示した制御装置6により撮影タイミングが制御され、撮影した撮影画像を示す撮影画像データを制御装置6に出力する。
図2に示すように、カメラ3は、実像面Jに対して再帰性透過材4から光が入射してくる側に配置されている。すなわち、カメラ3は、実像Mを観察する視点(観察者K)とカメラ3との間に実像面Jを挟むように、配置される。これにより、観察者Kは、例えば実像面Jに形成された実像Mを正面から観察すると、実像Mの背後にカメラ3を見ることになる。
カメラ3は、その少なくとも一部が実像面Jよりも下方に配置されており、例えば再帰性透過材4に固定される。カメラ3は、素子面Sよりも上方を仰ぐように配置されている。すなわち、カメラ3の撮影方向Dp(撮影レンズの入射側光軸)は、素子面Sから実像面Jに近づくように傾いている。この場合に、カメラ3の撮影方向Dpは、カメラ3が実像面Jの上方に配置されている場合と比較して、実像Mを観察する視点(観察者K)と実像M上の点を結ぶ線(視線Kv)に対して平行に近くなる。カメラ3の実像面Jにおける撮影範囲3aは、実像面Jにおいて実像Mが形成される像形成範囲の少なくとも一部を含むように、設定される。ここでは、撮影範囲3aは、像形成範囲のほぼ全域を含むように、設定されている。
また、図3(A)に示すように、カメラ3は、実像面J上の実像Mを形成可能な実像形成範囲Jaを、撮影方向Dpが通るように配置される。例えば、カメラ3の撮影方向Dpは、素子面Sの法線方向から見て、画像表示面2aの法線方向2bとほぼ同軸に設定される。なお、実像形成範囲Jaは、例えば、FPD2の画像表示面2aにおいて画像Vが表示される範囲と光学的に共役な範囲である。
次に、図2及び図5を参照しつつ、照明部5について説明する。照明部5は、制御装置6(図1参照)によって制御され、実像面Jを含む照明領域A1を照明する。カメラ3は、照明部5により照明可能な領域(照明領域A1)を撮影する。
図2に示すように、照明部5は、再帰性透過材4に対して画像表示面2aと同じ側に配置されており、再帰性透過材4の開口部8を介して、照明領域A1を照明する。本実施形態の照明部5は、FPD2の上部に取り付けられており、矩形状の画像表示面2aの2辺のうち素子面Sと平行な辺に沿って延びている。照明部5から射出された照明光は、再帰性透過材4の反射面9で反射して、実像面Jを含んだ空間領域(照明領域A1)を伝播する。
本実施形態において、照明部5が射出する照明光は、再帰性透過材4からの出射方向に直交する面におけるスポット形状が長手方向と短手方向を有するパターン光である。このようなパターン光は、シート光、ライン光等と呼ばれることもある。
図5は、照明部5の構成を示す2面図であり、照明部5からの照明光の出射方向に対する側方の側面図に相当する。詳しくは、図5(A)は、照明部5の長手方向の構成を示す図であり、図2のZ−V1面に直交する面における側面図に相当する。また、図5(B)は、照明部5の短手方向の構造を示す図であり、図5(A)と直交するする側面図に相当する。
図5(A)に示すように、照明部5は、複数の固体光源15と、複数の固体光源15から出射した照明光が入射するシリンドリカルレンズ16と、複数の固体光源15を駆動する駆動回路17とを備える。この駆動回路17は、制御装置6と接続されており、制御装置6からの制御指令に従って複数の固体光源15を駆動する。
複数の固体光源15は、所定方向に一次元的に配列されている。所定方向は、画像表示面2aと素子面Sのそれぞれに対してほぼ平行な方向(長手方向)である。固体光源15は、2次元的に配置されていてもよく、この場合に、2つの配列方向の1つが上記の長手方向であってもよい。
固体光源15は、例えば、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)等で構成される。固体光源15は、例えば、供給された電流に応じた光量の赤外光を、照明光として発する。駆動回路17は、固体光源15に電流を供給して固体光源15を点灯させること、固体光源15への電流の供給を停止して固体光源を消灯させることができる。
制御装置6は、駆動回路17を制御することによって、固体光源15の発光状態(照明部5の照明状態)を制御する。詳しくは、制御装置6は、固体光源15が点灯を開始するタイミング、固体光源15が点灯している期間、固体光源15が発する照明光の光量、固体光源が消灯するタイミング等を制御できる。
シリンドリカルレンズ16は、固体光源15から出射した照明光が入射する位置に配置されている。シリンドリカルレンズ16は、固体光源15からの照明光の出射方向と直交する面において、複数の固体光源15の配列方向(長手方向)に延びており、複数の固体光源15で共通に設けられている。すなわち、複数の固体光源15のうち2以上の固体光源15から出射した照明光は、同じシリンドリカルレンズ16に入射する。
図5(B)に示すように、シリンドリカルレンズ16は、複数の固体光源15の配列方向に直交する面内でパワーを有する。シリンドリカルレンズ16は、短手方向において照明光が実像面J上で集光するように、設けられている。このように、シリンドリカルレンズ16は、複数の固体光源15から出射した照明光が実像面Jに沿って伝播するときの、実像面Jの法線方向における照明光の広がりを制限するように、設けられている。なお、照明部5は、再帰性透過材4の集光作用を利用して、照明光が実像面Jに沿って伝播するときの、実像面Jの法線方向における照明光の広がりを制限するように、設けられていてもよい。
次に、図6を参照しつつ、照明部5による照明方法について説明する。図6(A)は、照明部5の長手方向における照明の様子を示し、実像面Jの正面(図3(A)のカメラ3の撮影方向Dp)から見た図に概ね相当する。また、図6(B)は、照明部5の短手方向における照明の様子を示し、実像面Jの側方から見た図に相当する。
照明部5の固体光源15から出射した光は、再帰性透過材4に対して固体光源15と面対称な位置(光源像の結像位置)に向って収斂し、光源像の結像位置よりも再帰性透過材4から離れるにつれて、広がるように伝播する。ここでは、シリンドリカルレンズ16と再帰性透過材4の集光作用により、光源像の結像位置よりも先における照明光の広がりが制限される。このようにして、照明光は、実像面Jの法線方向における広がりが制限されて、実像面Jに沿うように伝播する。換言すると、照明部5の取り付け位置、姿勢は、実像面Jの法線方向における照明光の広がりが制限されるように、例えば再帰性透過材4に対して、設定される。
ここで、図6(B)に示すように、例えば観察者K等のユーザーが実像面J(実像M)に触れるように、指し棒や指等の指示体Finを配置した状態を想定する。この状態において、照明光は、指示体Finの表面で拡散し、カメラ3は、照明光によって照らされている指示体Finを撮影する。上述のように、照明光の実像面Jに直交する方向の広がりが制限されているので、ユーザーが指した位置と照明光に照らされている部分の指示体Finの位置とのずれが少なくなる。図1に示した制御装置6は、このような撮影画像に基づいて、照明光に照らされている部分の指示体Finの位置を検出し、検出した位置と関連付けられた入力を受け付ける。
なお、例えば再帰性透過材4の構造によっては、照明部5から再帰性透過材4に向かった照明光の一部が再帰性透過材4の反射面9で反射しないで直線的に上部へ抜ける場合がある。本実施形態においては、照明光が、実像面Jからの所定の距離以上離れた位置で指示体Finを照らさないように、照明領域A1を制限するための遮光部材18が設けられている。
次に、図7及び図8を参照しつつ、指示体Finの位置を検出する仕組みについて説明する。図7は、制御装置6の機能構成を示すブロック図である。図8は、制御装置6による制御のタイミングを示すタイミングチャートである。
図7に示すように、制御装置6は、制御部51、及び検出部52を備える。制御部51は、カメラ3の撮影タイミングと照明部5の照明状態を関連付けるように、撮影タイミングと照明状態の一方又は双方を制御する。検出部52は、カメラ3が撮影した撮影画像に基づいて、照明部5により照明されている指示体Finを検出する。ここでは、指示体Finが指先であるものとして、説明する。
制御部51は、同期分離部53、タイミング生成部54、及び照明制御部55を備える。
同期分離部53は、カメラ3から撮影画像を示す撮影画像データを取得する。同期分離部53は、撮影画像データから同期信号(垂直同期信号、水平同期信号)を分離し、分離した同期信号をタイミング生成部54に出力する。
タイミング生成部54は、同期分離部53からの同期信号に基づいて、照明部5の点灯開始と点灯終了(消灯)のタイミングを規定するタイミング信号(図8中の「照明」を参照)を生成する。図8に示すように、本実施形態において、垂直同期信号は、撮影画像の1フレームに相当する映像信号ごとに、ハイとローが切替わる。タイミング生成部は、任意の1フレームの期間においてローとなり、このフレームに続く1フレームの期間においてハイとなるタイミング信号を生成する。タイミング生成部54は、生成したタイミング信号を照明部制御部55と検出部52のそれぞれに出力する。
照明部制御部55は、タイミング生成部54からのタイミング信号に従って、照明部5の固体光源15を所定のタイミングで点灯(第1の照明状態)と消灯(第2の照明状態)とを切り替える。すなわち、照明制御部55は、タイミング信号がローである期間に照明部5を消灯させ、タイミング信号がハイである期間に照明部5を点灯させる。
検出部52は、フレームメモリー56、差分検出部57(比較部)、指先抽出部58、先端検出部59、座標変換部60、及びタッチ検出部61を備える。
フレームメモリー56は、カメラ3からの撮影画像データを記憶する。フレームメモリー56は、タイミング生成部54からのタイミング信号に基づいて、所定の照明状態でカメラ3が撮影した撮影画像データを記憶する。上述のように、タイミング信号は、点灯開始と点灯終了(消灯)のタイミングを規定しており、フレームメモリー56は、タイミング信号を用いることで、各フレームの撮影画像データとこの撮影時の照明状態とを関連付けることができる。フレームメモリー56は、照明部5が点灯している第1の照明状態でカメラ3が撮影した第1撮影画像データと、この撮影の1回前又は1回後に照明部5が消灯している第2の照明状態でカメラ3が撮影した第2撮影画像データとを、差分検出部57に出力する。
差分検出部57は、フレームメモリー56からの第1撮影画像データと第2撮影画像データとを比較する。ここで、照明部5が消灯している第2の照明状態での撮影画像の明るさは、ほぼ環境光による明るさであり、照明部5が点灯している第1の照明状態での撮影画像は、第2の照明状態に照明されている指先の明るさが加わることになる。換言すると、撮影画像の各画素について、第1撮影画像データから第2撮影画像データを差し引くと、主に環境光により照明された背景を除くことができる。差分検出部57は、第1撮影画像データと第2撮影画像データとの差分を示す差分データを指先抽出部58に出力する。
ところで、第1撮影データの撮影時と第2撮影データの撮影時とで、例えば観察者Kが移動すること等によって、背景が変化することがありえる。そこで、例えば、照明部5の出力を大きくして実像面Jでの照明光を環境光よりも十分に明るくすることで、指先の差分出力を背景の差分出力より大きくとることができる。また、照明部5を赤外発光で照明するように構成し、この波長の赤外光を選択的に透過する赤外光フィルターをカメラ3に設けておくことで、背景の分離はより行いやすくなるとともに、照明部5からの光の一部が観察者Kの目に届いたとしても見えなくすることができる。
指先抽出部58は、差分検出部57からの差分データに基づいて、照明光に照らされている指先が写っている撮影画像のうち、指先が占める領域を抽出する。指先抽出部58は、予め設定された閾値(スレッシュホールド)と、撮影画像の各画素について、差分データが示す明るさとを比較することによって、第1撮影画像データと第2撮影画像データとで明るさが閾値以上に異なる撮影画像上の画素を抽出し、このような撮影画像上の画素の集合を指先が写っている領域であるとする。指先抽出部58は、抽出した領域(抽出領域)を示す領域データを、先端検出部59とタッチ検出部61のそれぞれに出力する。
先端検出部59は、指先抽出部58からの領域データに基づいて、指先として抽出された抽出領域の特徴的な位置を検出する。特徴的な位置は、例えば抽出領域の重心位置であってもよいし、例えば指先の先端位置であってもよく、抽出領域と関連付けることが可能な位置から適宜設定される。例えば、先端検出部59は、パターン認識等によって抽出領域が指先のどの部分であるかを判定し、この判定結果に基づいて指先の先端位置等を検出してもよい。先端検出部59は、検出した特徴的な位置をタッチ位置とし、タッチ位置を示す位置データを座標変換部60に出力する。
ところで、位置データが示すタッチ位置は、例えば撮影画像上の画素の位置を示す情報である。画像Vに対応する実像Mの範囲の外側まで撮影画像に写っている場合に、タッチ位置は、実像M上の実際のタッチ位置に相当する画像V上でのタッチ位置(画像表示面2a上での画素の位置)と一般的に異なることになる。また、撮影画像の画像形式(画素配列)と、画像V(画像表示面2a)の画像形式が異なる場合にも、撮影画像による位置データが示すタッチ位置は、画像V上のタッチ位置(画像表示面2a上の画素の位置)とが一般的に異なることになる。
そこで、座標変換部60は、先端検出部59からの位置データに基づいて、画像V上のタッチ位置に相当する座標を算出する。ここで、カメラ3の撮影範囲に占める、実像Mの形成範囲は、カメラ3の配置及びFPD2の配置等により定まるので、撮影画像に写る実像Mの範囲は、既知の情報にすることができる。また、カメラ3による撮影画像の画像形式と、FPD2が表示する画像Vの画像形式は、カメラ3の機種、FPD2の機種などにより定まる既知の情報である。座標変換部60は、上述のような既知の情報を用いて、位置データが示すタッチ位置を、FPD2が表示する画像V上の座標(画像表示面2a上の画素の位置)に変換する。座標変換部60は、この座標を示す情報をユーザーからの入力情報として、図示略の入力処理部に出力する。この入力処理部は、入力情報に応じて、例えばアプリケーションの操作等に関する処理を実行する。
また、タッチ検出部61は、指先抽出部58からの領域データに基づいて、指先が実像面Jに触れたか否かを検出する。例えば、タッチ検出部61は、指先抽出部58から領域データが出力されていない状態を、指先が実像面Jに触れていない状態であると判定する。タッチ検出部61は、その判定結果を示すタッチ有無情報を上述したような入力処理部に出力する。このタッチ有無情報は、例えば、表示装置1を省電力モードから復帰する際の処理等に用いられる。
次に、図9及び図10を参照して、表示装置1に対する入力方向の例を説明する。図9は、入力方法の一例を示す概念図、図10は、入力方法の他の例を示す概念図である。
図9に示す例において、ユーザーは、実像Mとして表示されているボタンPBを押す動作をすることで、このボタンPBに関連付けられた処理を実行させることができる。この例において、制御装置6は、ボタンPBを示す図形を含んだ画像Vを、FPD2に表示させる。制御装置6は、図7を用いて説明したように、ユーザーが触れた実像M上のタッチ位置(検出位置)に相当する画像V上のタッチ位置を取得し、画像V上のタッチ位置とボタンBPとの関係に基づいて、ユーザーがボタンに触れる動作をしたか否かを判定する。制御装置6は、ユーザーがボタンBPに触れる動作をしたと判定した場合に、このボタンBPと関連付けられた処理を実行する。この処理は、例えば表示装置1の外部の装置に処理を実行させるための処理であってもよい。
なお、表示装置1は、ボタンBPが画像Vの所定の領域、例えば画像Vの下部や隅に配置されるように画像Vを表示し、カメラ3は、実像面Jのうち所定の領域に相当する領域のみを撮影してもよい。このように、カメラ3の撮影範囲は、実像面Jの一部であってもよい。
図10に示す例において、ユーザーは、実像面Jで指先を動かすことによって、文字や図形を入力することができる。この例において、制御装置6は、所定の時間間隔で画像V上のタッチ位置を取得し、タッチ位置の時間変化に基づいて、ユーザーの入力を受け付ける。例えば、制御装置6は、ユーザーが指先で描いた文字や図形を示す画像をFPD2に表示させる。
以上のような構成の表示装置1は、再帰性透過材4によって実像Mが形成される照明領域A1を照明部5で照明するとともに、この照明領域A1をカメラ3で撮影するので、実像Mに触れようとした指示体Finを検出することができる。表示装置1は、ユーザーが空間像に触れる動作をすることでユーザーからの入力を容易に検出でき、空間に表示された画面に対する入力を良好に行うことを可能にする。
また、表示装置1は、制御装置6がカメラの撮影タイミングと照明部の照明状態を関連付けるように制御し、照明状態を異ならせた撮影画像を比較するので、撮影画像に写っている指示体Fin以外の背景などを除くことができ、指示体Finを精度よく検出できる。
また、表示装置1は、また、照明部5の固体光源15が点灯している状態を第1の照明状態とし、照明部5の固体光源15が消灯している状態を第2の照明状態としている。そのため、第1の照明状態で撮影した撮影画像に写っている指示体Finの明るさと、第2の照明状態で撮影した撮影画像に写っている指示体Finの明るさとの差を明確にすることができ、指示体Finを精度よく検出することができる。
また、表示装置1は、照明部5が素子面Sに対して画像表示面2aと同じ側に配置されているので、素子面Sに対して画像表示面2aと反対側(実像Mの観察側)に配置される部材が少なくなり、このような部材が実像Mを観察する上での妨げになりにくい。結果として、表示装置1は、見栄えのよい表示を行うことができる。
また、表示装置1は、実像面Jに沿って照明光が伝播するので、照明光に照らされている指示体Finの位置を実像面J上の位置と精度よく関連付けることができる。また、表示装置1は、実像面Jの法線方向において照明光の広がりが制限されているので、照明光に照らされている指示体Finを精度よく検出できる。
また、カメラ3の実像面J上の撮影範囲は、実像面J上に実像Mを結像可能な範囲の全域を含んでいるので、表示装置1は、実像面J上のいずれの位置に配置された指示体Finも検出でき、多様な入力に対応可能である。また、表示装置1は、FPD2によって生成した画像Vを実像Mとして表示するので、装置コストを低減できる。
以上のように、表示装置1は、空間に表示された画面に対する入力を良好に行うことを可能にする。また、表示装置1は、再帰性透過材4の上方にカメラ3しか存在しないようにでき、実像Mを表示しない状態においても装置の見栄えが悪くならないし、通行の邪魔になりにくく、また装置の破損も生じにくい。
また、例えばサイネージ、医療分野など用途において不特定多人数のユーザーが表示装置1を操作するような場合に、表示装置1は、実際のボタンへの接触で入力を行う装置と異なり、空間(実像面J)に触れる動作で入力できるので、例えば衛生的に使用することができる。
なお、本実施形態において制御装置6は、カメラ3に同期して照明部5を制御するが、照明部5に同期してカメラ3を制御してもよい。例えば、照明部5は、所定の間隔で点灯と消灯とを繰り返すように構成され、制御装置6は、照明部5の点灯タイミングを示すタイミング信号に基づいて、カメラ3の撮影タイミングを制御してもよい。この場合に、制御装置6は、タイミング信号に基づいて、照明部5の点灯時と消灯時のそれぞれにおいてカメラ3に撮影を実行させればよい。
次に、再帰性透過材4の変形例について説明する。
図11は、再帰性透過材4の変形例1を示す斜視図である。図11に示す再帰性透過材11は、両面もしくは片面が反射面となった金属もしくはガラスなどの複数の板材12を互いに直交するように格子状に組み合わせたものである。板材12の片面のみが反射面である場合に、板材7は、互いに交差して隣り合う1対の反射面が画像生成装置の画像生成面を向くように、配置される。隣り合う板材12の間の空間は、空気が存在してもよいし、透明性の高い樹脂材料などが充填されていてもよい。
図12は、再帰性透過材4の変形例2を示す斜視図である。図12に示す再帰性透過材13は、角柱状のガラス材料14の長手方向の一面を鏡面として、鏡面が同じ方向を向くように複数のガラス材料14を並べたものを2組作り、鏡面が互いに直交するように2組を積層したものである。
[第2実施形態]
次に、図13を参照しつつ、第2実施形態について説明する。本実施形態の表示装置21は、画像生成装置の構成が第1実施形態と異なり、その他の構成については第1実施形態と同様である。
図13は、本実施形態の表示装置21の概略構成を模式的に示す斜視図である。図13において、第1実施形態と共通する構成要素は、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略することがある。
本実施形態の表示装置21は、プロジェクションシステム22(画像生成装置)と、カメラ3と、再帰性透過材4(結像素子)と、を備えている。プロジェクションシステム22は、透過型のスクリーン23と、スクリーン23に対して画像Vを投射するプロジェクター24と、を備えている。
本実施形態において、スクリーン23は、第1実施形態のFPD2の位置に、FPD2の代わりに配置されている。すなわち、スクリーン23は、スクリーン23の画像表示面23aが再帰性透過材4の素子面Sに対して傾くように配置されている。
以上のような構成の表示装置21は、空間に表示された画面に対する入力を良好に行うことを可能にする。また、表示装置21は、プロジェクションシステム22によって画像Vを生成するので、画面サイズの自由度が高くなる。また、表示装置21は、例えばスクリーンゲインを上げることに等より、明るい実像Mを表示すること等もできる。
[第3実施形態]
次に、図13を参照しつつ、第3実施形態について説明する。本実施形態の表示装置30は、実像を形成するとともに撮影画像を取得する処理部を複数備えている点が第1実施形態と異なる。
図14は、本実施形態の表示装置30の概略構成を模式的に示す斜視図である。本実施形態において、再帰性透過材4は、図3(A)及び図3(B)に示したように、多数の開口部8を有しているが、図14には開口部8の1つを代表的にまた拡大して模式的に図示した。
図14に示す表示装置30は、複数の処理部として、第1処理部31、第2処理部32、第3処理部33、及び第4処理部34を備える。これら処理部は、いずれも同様の構成であるが、再帰性透過材4の反射面9に対する位置関係が互いに異なっている。
再帰性透過材4の第1反射面9a及び第2反射面9bは、開口部8の中心を原点として第1象限内の第1象限方向を向いて、互いに直交している。第1処理部31は、第1反射面9a及び第2反射面9bを利用して実像を形成するように、配置されている。すなわち、第1処理部31の画像生成装置35は、素子面Sの法線方向から見て、画像生成面35aを第1反射面9a及び第2反射面9bに向けて、配置されている。第1処理部31のカメラ36は、画像生成装置35に対する実像面J1を撮影可能に配置されている。
なお、画像生成装置35は、第1実施形態で説明したFPD2であってもよいし、第2実施形態で説明したプロジェクションシステム22であってもよい。第2から第4の処理部32〜34についても同様である。
第2反射面9bと第3反射面9cは、第4象限方向(上記の回転角が270°より大きく360°より小さい方向)を向いて、互い直交している。第2処理部32は、第2反射面9b及び第3反射面9cを利用して実像を形成するように、配置されている。第2処理部32の画像生成装置37は、素子面Sの法線方向から見て、画像生成面37aを第2反射面9b及び第3反射面9cに向けて、配置されている。第2処理部32のカメラ38は、画像生成装置37に対応する実像面J2を撮影可能に配置されている。
また、第3反射面9cと第4反射面9dは、第3象限方向(上記の回転角が180°より大きく270°より小さい方向)を向いて、互いに直交している。第3処理部33は、第3反射面9c及び第4反射面9dを利用して実像を形成するように、配置されている。第3処理部33の画像生成装置39は、素子面Sの法線方向から見て、画像生成面39aを第3反射面9c及び第4反射面9dに向けて、配置されている。第3処理部33のカメラ40は、画像生成装置41に対応する実像面J3を撮影可能に配置されている。
また、第4反射面9dと第1反射面9aは、第2象限方向(上記の回転角が90°より大きく180°より小さい方向)を向いて、互い直交している。第4処理部34は、第4反射面9d及び第1反射面9aを利用して実像を形成するように、配置されている。第4処理部34の画像生成装置41は、素子面Sの法線方向から見て、画像生成面41aを第4反射面9d及び第1反射面9aに向けて、配置されている。第4処理部34のカメラ42は、画像生成装置42に対応する実像面J4を撮影可能に配置されている。
本実施形態において、表示装置30は、複数の処理部31〜34がそれぞれの実像面J1〜J4に像を形成し、複数の像のそれぞれを各処理部に応じた視点から観察することができる。これら4つの視点は、例えば矩形状の再帰性透過材4の角に配置される。本実施形態の表示装置30は、再帰性透過材4の外側に外周が矩形状の補助部材44が設けられており、補助部材44の外周の各辺に再帰性透過材4の角(視点)が配置されるようになっている。
以上のような構成の表示装置30は、例えば4人のユーザーに対応可能であり、利便性が高くなる。また、このような表示装置30は、例えば画像生成装置の数が1つである表示装置1を複数用いて複数のユーザーに対応する構成と比較して、再帰性透過材4を共通化することができる。
なお、本実施形態において、処理部の数は、4つであるが2つでもよいし、3つでもよい。処理部の数が2又は3である場合に、処理部の位置は、上記の第1処理部31〜第4処理部34から適宜選択できる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の少なくとも1つは、省略されることある。
なお、上述の実施形態において、照明部5の固体光源15が点灯している状態を第1の照明状態とし、照明部5の固体光源15が消灯している状態を第2の照明状態としているが、照明状態はこれに限られない。例えば、第2の照明状態は、照明部5の固体光源15が点灯している状態であって、第1の照明状態よりも暗い照明状態(固体光源15からの光の光量が少ない状態)であってもよい。この場合、観察者Kに照明部からの照明光の一部が見えたとしても、点滅よりも照明光の強度差が少ないため違和感を低減することができる。