JP5983615B2 - アニオン性含フッ素乳化剤の回収方法 - Google Patents
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Description
一方、含フッ素ポリマーの乳化重合に用いられるアニオン性含フッ素乳化剤は、自然界で容易に分解されない。このため、近年では工場排水のみならず、含フッ素ポリマー水性乳化液や含フッ素ポリマー水性分散液等の製品中に含まれるアニオン性含フッ素乳化剤を低減することが望まれている。
また、特許文献2には、無機酸と非水溶性含フッ素媒体とを用いて、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を非水溶性含フッ素媒体に溶出させて回収する方法が開示されている。
しかしながら、アニオン性含フッ素乳化剤の吸着能力が高い強塩基型イオン交換樹脂から当該乳化剤を溶出させて回収する場合、アニオン性含フッ素乳化剤の回収率が低く、70%程度であった。また、これらの有機溶媒は、引火性であることから、取り扱いに対する安全対策が必要とされる。また、アニオン性含フッ素乳化剤の種類によっては、当該乳化剤がアルコールと反応してエステル体を生成し、乳化剤として有用なアンモニウム塩等に変換するのが困難となる場合があった。
また、特許文献2では、不燃性の有機溶媒である非水溶性含フッ素媒体を用いて、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤を回収しているが、一回の抽出操作で回収されるアニオン性含フッ素乳化剤の回収率が50%程度と低かった。
したがって、本発明の目的は、塩基型イオン交換樹脂が吸着したアニオン性含フッ素乳化剤を、簡便で効率よく回収できるアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法を提供することにある。
[1]アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤を溶離して、アニオン性含フッ素乳化剤の酸として回収するアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法であって、前記塩基型イオン交換樹脂に、無機酸水溶液と含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液を接触させた後、塩基型イオン交換樹脂と液相とに分離して液相を回収し、該液相からアニオン性含フッ素乳化剤の酸を回収することを特徴とするアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[3]前記塩基型イオン交換樹脂に無機酸水溶液を接触させた後、塩基型イオン交換樹脂を分離回収し、分離回収した塩基型イオン交換樹脂に、含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液を接触させる上記[2]に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[5]前記混合液中の含フッ素媒体と非フッ素媒体の割合が、質量比で5/95〜95/5である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[6]前記塩基型イオン交換樹脂と、無機酸水溶液、含フッ素媒体および非フッ素媒体の混合液との割合が、質量比で1/99〜99/1である上記[1]、[4]または[5]に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[7]前記塩基型イオン交換樹脂と、含フッ素媒体および非フッ素媒体の混合液との割合が、質量比で1/99〜80/20である上記[2]〜[5]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[8]前記無機酸水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸の水溶液からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[10]前記非フッ素媒体が、水溶性であり、かつ、前記含フッ素媒体に対して溶解性を有するものである上記[1]〜[9]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[11]前記非フッ素媒体が、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、およびtert−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[10]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[13]含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液が、不燃性である上記[2]または[3]に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[14]前記アニオン性含フッ素乳化剤の酸が、含フッ素カルボン酸である上記[1]〜[13]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[15]前記アニオン性含フッ素乳化剤の酸が、エーテル性酸素原子を1〜3個含有してもよい、炭素数5〜7の含フッ素カルボン酸である上記[14]に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
[16]前記塩基型イオン交換樹脂が強塩基型イオン交換樹脂である上記[1]〜[15]のいずれかに記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
パーフルオロカルボン酸としては、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸等が挙げられる。
エーテル性酸素原子を有するパーフルオロカルボン酸としては、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、C4F9OC2F4OCF2COOH、C3F7OC2F4OCF2COOH、C2F5OC2F4OCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2CF2OCF2COOH、C2F5O(CF2)5COOH、CF3OC2F4OCF2COOH、CF3OCF2OCF2OCF2COOH、CF3OCF2OCF2OCF2OCF2COOH、CF3O(CF2CF2O)2CF2COOH、CF3OCF2CF2CF2OCF2COOH、C4F9OCF2COOH、C4F9OCF2CF2COOH、CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、C4F9OCF(CF3)COOH等が挙げられる。
水素原子を有する含フッ素カルボン酸としては、ω−ハイドロパーフルオロオクタン酸、C3F7OCF(CF3)CF2OCHFCOOH、CF3CFHO(CF2)5COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、CF3O(CF2)3OCHFCOOH、C3F7OCHFCF2COOH、CF3CFHO(CF2)3COOH等が挙げられる。
含フッ素スルホン酸としては、パーフルオロオクタンスルホン酸、C6F13CH2CH2SO3H等が挙げられる。
弱塩基型イオン交換樹脂としては、ジメチルアンモニウム基やアミノ基などの1〜3級アミノ基をイオン交換基として樹脂母体に導入したものが挙げられる。
塩基型イオン交換樹脂の樹脂母体の材質としては、特に限定はない。スチレン−ジビニルベンゼン架橋樹脂、アクリル−ジビニルベンゼン架橋樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。
塩基型イオン交換樹脂の種別は、特に限定は無く、ポーラス型、ゲル型のいずれも好ましく用いることができる。
塩基型イオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.1〜3(eq/L)が好ましく、0.5〜2.5(eq/L)がより好ましい。塩基型イオン交換樹脂のイオン交換容量が上記範囲内であれば、被処理液中のアニオン性含フッ素乳化剤を効率よく吸着できる。
アニオン性含フッ素乳化剤を含む被処理液としては、例えば、以下の(1)〜(3)が一例として挙げられる。
(1)含フッ素モノマーをアニオン性含フッ素乳化剤の存在下で乳化重合し、得られた含フッ素ポリマー水性乳化液に非イオン系界面活性剤を添加して安定化し、必要に応じて濃縮した含フッ素ポリマー水性分散液。
(2)前記含フッ素ポリマー水性乳化液を凝集させた後に排出されるアニオン性含フッ素乳化剤を含有する排水。
(3)前記含フッ素ポリマー水性乳化液を凝集して得られた含フッ素ポリマー凝集物を乾燥する過程で、大気中に排出されたアニオン性含フッ素乳化剤を吸収した水溶液。
上記含フッ素ポリマー水性分散液は、含フッ素ポリマー水性乳化液を非イオン系界面活性剤で安定化した含フッ素ポリマー水性分散液が好ましい。
R1−O−A−H ・・・(A)
(式(A)中、R1は炭素数8〜18のアルキル基であり、Aはオキシエチレン基数5〜20およびオキシプロピレン基数0〜2より構成されるポリオキシアルキレン鎖である。)
R2−C6H4−O−B−H ・・・(B)
(式(B)中、R2は炭素数4〜12のアルキル基であり、Bはオキシエチレン基数5〜20より構成されるポリオキシエチレン鎖である。)
一般式(B)の非イオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、C8H17−C6H4−(OC2H4)10−OH、C9H19−C6H4−(OC2H4)10−OH等の分子構造をもつ非イオン系界面活性剤が挙げられる。市販品としては、ダウ社製トライトン(登録商標)Xシリーズ、日光ケミカル社製ニッコール(登録商標)OPシリーズまたはNPシリーズ等が挙げられる。
含フッ素ポリマー水性分散液中における一般式(A)および/または一般式(B)で示される非イオン系界面活性剤の含有量は、含フッ素ポリマーの質量に対して1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜8質量%が特に好ましい。
塩基型イオン交換樹脂にアニオン性含フッ素乳化剤を含む被処理液を接触させる際の接触温度は特に限定はない。適宜選定すればよいが、10〜40℃の室温付近が好ましい。また、接触時間は特に限定はなく、適宜選定すればよい。例えば、撹拌方式で接触させる場合には、10分〜200時間の範囲が好ましく、30分〜50時間の範囲がより好ましい。また、接触時の圧力は、大気圧が好ましいが、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂に、溶離抽出媒体を接触させると、アニオン性含フッ素乳化剤が無機酸水溶液によって酸型化されて、塩基型イオン交換樹脂から溶離し易くなる。アニオン性含フッ素乳化剤は、含フッ素媒体や非フッ素媒体との相溶性が良好なので、塩基型イオン交換樹脂に吸着されたアニオン性含フッ素乳化剤は、アニオン性含フッ素乳化剤の酸として溶離し、含フッ素媒体や非フッ素媒体に抽出される。そして、本発明では、含フッ素媒体と非フッ素媒体とを併用することにより、含フッ素媒体と非フッ素媒体とをそれぞれ単独で使用した場合よりも、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を効率よく抽出できる。このため、塩基型イオン交換樹脂から高い収率でアニオン性含フッ素乳化剤の酸を回収できる。
塩基型イオン交換樹脂と、溶離抽出媒体との割合は、質量比で、塩基型イオン交換樹脂/溶離抽出媒体=1/99〜99/1が好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、15/85〜50/50が最も好ましい。塩基型イオン交換樹脂と、溶離抽出媒体との割合が上記範囲であれば、塩基型イオン交換樹脂と溶離抽出媒体とを効率よく接触させることができる。
溶離抽出媒体の接触時の温度は5〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。5℃以上であれば、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を効率よく抽出できる。100℃以下であれば、好ましい溶媒の常圧における沸点を超えないため、常圧下で抽出工程を実施できるので、上限は100℃が好ましい。
無機酸水溶液の濃度は、一般的に高い程、塩基型イオン交換樹脂から溶離するアニオン性含フッ素乳化剤の酸が増加する傾向にあるので、高いことが好ましい。好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上であり、特に好ましくは10〜38質量%である。
ヒドロクロロフルオロカーボンとしては、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
ヒドロフルオロカーボンとしては、CF3CF2CF2CF2CF2CHF2、CF3CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CHFCHFCF3、CF3CH2CF2CH3、CF3CF2CF2CFHCH3等が挙げられる。
ヒドロフルオロエーテルとしては、CF3CH2OCF2CF2H、CF3CH2OCF2CFHCF3、(CF3)2CHOCF2CF2H、CF3CH2OCHFCHF2、CF3(CF2)3OCH3、CF3(CF2)4OCH3、CF3(CF2)3OCH2CH3、CF3(CF2)4OCH2CH3、(CF3)2CFCF2OCH2CH3等が挙げられる。
ヒドロフルオロアルコールとしては、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール等が挙げられる。
なお、塩基性イオン交換樹脂から抽出するアニオン性含フッ素乳化剤がヒドロフルオロアルコールと反応し、エステル体を生成しない場合、もしくはエステル体を生成しても問題無い場合については、ヒドロフルオロアルコールを使用することができる。
なかでも、アニオン性含フッ素乳化剤および非フッ素媒体の両者との親和性が良好なため、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、CF3CF2CF2CF2CF3CHF2、CF3CH2OCF2CF2Hが好ましく用いられる。
非フッ素媒体の25℃における水への溶解度は、50%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、非フッ素媒体の25℃における含フッ素媒体への溶解度は、50%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
上記した非フッ素媒体は、いずれも水溶性であり、かつ、含フッ素媒体に対して溶解性を有する。なかでも、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、tert−ブタノールが好ましく、アセトン、アセトニトリルが最も好ましい。なお、塩基性イオン交換樹脂から抽出するアニオン性含フッ素乳化剤の酸が、アルコール類と反応してエステル体を生成し、乳化剤として有用なアンモニウム塩等に変換する際に問題となる場合は、アルコール類の使用は控えることが好ましい。また、アニオン性含フッ素乳化剤の酸とエステル体を生成しない場合、もしくはエステル体を生成しても問題無い場合は、アルコール類を使用してもよい。
また、溶離抽出媒体は、含フッ素媒体と非フッ素媒体の割合が、質量比で、含フッ素媒体/非フッ素媒体=5/95〜95/5が好ましく、10/90〜95/5がより好ましく、15/85〜95/5が特に好ましい。含フッ素媒体と非フッ素媒体の質量比が上記範囲であれば、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の回収率が高い。
さらに、含フッ素媒体と非フッ素媒体の質量比を、75/25〜95/5、好ましくは85/15〜95/5とすることにより、溶離抽出媒体が不燃性になり易く、取り扱い性に優れる。例えば、含フッ素媒体として1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンを用い、非フッ素媒体としてアセトンを用いた場合、質量比で、含フッ素媒体/非フッ素媒体=85/15〜95/5とすることで、溶離抽出媒体が不燃性となる。また、含フッ素媒体として1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンを用い、非フッ素媒体としてアセトニトリルを用いた場合、質量比で、含フッ素媒体/非フッ素媒体=75/25〜95/5とすることで、溶離抽出媒体が不燃性となる。
また、含フッ素媒体として非水溶性のものを用い、非フッ素媒体として水溶性で、かつ、含フッ素媒体に対して溶解性を有するものを用いた場合においては、無機酸水溶液に非フッ素媒体が溶解した上層と、含フッ素媒体に非フッ素媒体が溶解した下層とに二層分離する。上層にもアニオン性含フッ素乳化剤の酸が僅かながら存在するが、含フッ素媒体を含む下層にアニオン性含フッ素乳化剤の酸が高濃度に存在し、下層に比べてごく少量であるため、下層のみを分取することで、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を効率よく回収できる。
こうして回収したアニオン性含フッ素乳化剤の酸は、そのままアニオン性含フッ素乳化剤として使用してもよく、中和してアンモニウム塩、アルカリ金属塩等として用いてもよい。
第二の実施形態では、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂に無機酸水溶液を接触させ、次いで、含フッ素媒体と非フッ素媒体の混合液(以下、含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液を抽出媒体という)を接触させる。
上述したように、塩基型イオン交換樹脂に無機酸水溶液を接触させると、アニオン性含フッ素乳化剤は酸型化して、溶離し易い形で塩基型イオン交換樹脂に吸着される。アニオン性含フッ素乳化剤は、無機酸水溶液との相溶性が低いので、酸型化されても無機酸水溶液中に溶出することは殆どない。しかし、アニオン性含フッ素乳化剤は、含フッ素媒体や非フッ素媒体との相溶性が良好なので、無機酸水溶液を接触させた塩基型イオン交換樹脂に抽出媒体を接触させると、塩基型イオン交換樹脂に吸着されたアニオン性含フッ素乳化剤が、抽出溶媒にアニオン性含フッ素乳化剤の酸として溶離して抽出される。その後、塩基型イオン交換樹脂を分離除去して液相を回収し、回収した液相が単一相になっている場合は、回収した液相の蒸留操作などを行うことでアニオン性含フッ素乳化剤の酸を回収できる。また、回収した液相が二層分離している場合は、含フッ素媒体を含む下層にアニオン性含フッ素乳化剤の酸が高濃度に存在するため、下層のみを分取することで、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を効率よく回収できる。
第二の実施形態においては、無機酸水溶液、含フッ素媒体、および非フッ素媒体は、上記第1の実施形態で説明したものと同様のものを用いることができる。
無機酸水溶液の接触時の温度は5〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。5℃以上であれば、アニオン性含フッ素乳化剤を酸型化して、塩基型イオン交換樹脂から溶離させ易くできる。100℃以下であれば、無機酸水溶液の常圧における沸点を超えないため、常圧下で無機酸水溶液による処理を実施できるので、上限は100℃が好ましい。
抽出媒体の接触時の温度は5〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。5℃以上であれば、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を効率よく抽出できる。100℃以下であれば、好ましい溶媒の常圧における沸点を超えないため、常圧下で抽出工程を実施できるので、上限は100℃が好ましい。
第二の実施形態において、抽出媒体の含フッ素媒体と非フッ素媒体の割合は、質量比で、含フッ素媒体/非フッ素媒体=5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、20/80〜90/10が特に好ましい。含フッ素媒体と非フッ素媒体の質量比が上記範囲であれば、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の回収率が高い。さらに、含フッ素媒体と非フッ素媒体の質量比を、75/25〜95/5、更には85/15〜95/5とすることにより、抽出媒体は不燃性になり易く、取り扱い性に優れる。
JIS K 2265−1に記載のタグ密閉法若しくは、JIS K 2265−4に記載のクリーブランド開放式により、各例で使用した溶離抽出媒体および抽出媒体の燃焼性の有無を確認した。
抽出処理後の回収した液相について、1H−NMRおよび19F−NMRによる定量分析により、アニオン性含フッ素乳化剤の酸を定量し、液相中のアニオン性含フッ素乳化剤の酸の含有量(g)を測定した。次いで、下式に基づき、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の回収率を求めた。
回収率(%)=(液相中のアニオン性含フッ素乳化剤の酸の含有量(g)/塩基型イオン交換樹脂に吸着していたアニオン性含フッ素乳化剤の量(g))×100
アニオン性含フッ素乳化剤(CF3CF2OCF2CF2OCF2COO−(NH4)+)の水溶液と塩基型イオン交換樹脂とを接触させて、塩基型イオン交換樹脂にアニオン性含フッ素乳化剤を吸着させた。
次に、内容積50mlのふた付きビーカーに、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着させた塩基型イオン交換樹脂と、塩酸と、非フッ素媒体と、含フッ素媒体とを表1に記す通り仕込み、恒温水槽で温度を40℃に保ちながら、マグネチックスターラーで内容物を10〜60分撹拌して、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の抽出を行った。
撹拌終了後、塩基型イオン交換樹脂を分離除去した。次いで、例1−1〜1−13においては、塩基型イオン交換樹脂を分離除去して残った液相が二層分離していたので、下層のみを回収した。また、例1−14においては、塩基型イオン交換樹脂を分離除去して残った液相は単一相をなしていたので、該液相をそのまま回収した。
その後、回収した液相(下層のみを回収した場合は下層)に含まれるアニオン性含フッ素乳化剤の酸を上記の方法で定量し、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の回収率を測定した。結果を表1にまとめて記す。
例1と同様にして、アニオン性含フッ素乳化剤(CF3CF2OCF2CF2OCF2COO−(NH4)+)の水溶液と塩基型イオン交換樹脂とを接触させて、塩基型イオン交換樹脂にアニオン性含フッ素乳化剤を吸着させた。
次に、内容積50mlのふた付きビーカーに、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着させた塩基型イオン交換樹脂と、塩酸とを表2に記す通り仕込み、恒温水槽で温度を15〜60℃に保ちながら、マグネチックスターラーで内容物を30〜60分撹拌した後、塩酸のみをビーカーから抜き出した。
続いて、塩酸で処理されて塩基型イオン交換樹脂が入った前記ビーカーに、表2に示すとおり非フッ素媒体と、含フッ素媒体とを仕込み、恒温水槽で温度を15〜60℃に保ちながら、マグネチックスターラーで内容物を30〜300分撹拌してアニオン性含フッ素乳化剤の酸の抽出を行った。
撹拌終了後、塩基型イオン交換樹脂を分離除去した。次いで、例2−1〜2−21のいずれにおいても、塩基型イオン交換樹脂を分離除去して残った液相は、二層分離していたので、下層のみを回収した。
その後、回収した液相に含まれるアニオン性含フッ素乳化剤の酸を上記の方法により定量し、アニオン性含フッ素乳化剤の酸の回収率を測定した。結果を表2にまとめて記す。
なお、2011年9月13日に出願された日本特許出願2011−199724号の明細書、特許請求の範囲、および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (12)
- アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤を溶離して、アニオン性含フッ素乳化剤の酸として回収するアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法であって、
前記アニオン性含フッ素乳化剤が、エーテル性酸素原子を1〜3個含有してもよい炭素数5〜7の含フッ素カルボン酸およびその塩であり、
塩酸、硫酸および硝酸の水溶液からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる無機酸水溶液と、
25℃での水への溶解度が、0.1%未満である、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテルおよびヒドロフルオロアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる含フッ素媒体と、
分子中にフッ素原子を含有せず、25℃における水への溶解度は、50%以上であり、かつ、25℃における含フッ素媒体への溶解度は、50%以上である非フッ素媒体とを用い、
前記塩基型イオン交換樹脂に、前記無機酸水溶液と前記含フッ素媒体と前記非フッ素媒体との混合液を接触させた後、塩基型イオン交換樹脂と液相とに分離して液相を回収し、該液相からアニオン性含フッ素乳化剤の酸を回収することを特徴とするアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。 - アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤を溶離して、アニオン性含フッ素乳化剤の酸として回収するアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法であって、
前記アニオン性含フッ素乳化剤が、エーテル性酸素原子を1〜3個含有してもよい炭素数5〜7の含フッ素カルボン酸およびその塩であり、
塩酸、硫酸および硝酸の水溶液からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる無機酸水溶液と、
25℃での水への溶解度が、0.1%未満である、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテルおよびヒドロフルオロアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる含フッ素媒体と、
分子中にフッ素原子を含有せず、25℃における水への溶解度は、50%以上であり、かつ、25℃における含フッ素媒体への溶解度は、50%以上である非フッ素媒体とを用い、
前記塩基型イオン交換樹脂に前記無機酸水溶液を接触させ、次いで、前記含フッ素媒体と前記非フッ素媒体との混合液を接触させた後、塩基型イオン交換樹脂と液相とに分離して液相を回収し、該液相からアニオン性含フッ素乳化剤の酸を回収することを特徴とするアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。 - 前記塩基型イオン交換樹脂に無機酸水溶液を接触させた後、塩基型イオン交換樹脂を分離回収し、分離回収した塩基型イオン交換樹脂に、含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液を接触させる請求項2に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記塩基型イオン交換樹脂の平均粒径が0.1〜5mmであり、イオン交換容量が0.1〜3(eq/L)である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記混合液中の含フッ素媒体と非フッ素媒体の割合が、質量比で5/95〜95/5である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記塩基型イオン交換樹脂と、無機酸水溶液、含フッ素媒体および非フッ素媒体の混合液との割合が、質量比で1/99〜99/1である請求項1、4または5に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記塩基型イオン交換樹脂と、含フッ素媒体および非フッ素媒体の混合液との割合が、質量比で1/99〜80/20である請求項2〜5のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記含フッ素媒体が、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、CF3CF2CF2CF2CF2CHF2、およびCF3CH2OCF2CF2Hからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記非フッ素媒体が、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、およびtert−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 無機酸水溶液と含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液が、不燃性である請求項1に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 含フッ素媒体と非フッ素媒体との混合液が、不燃性である請求項2または3に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
- 前記塩基型イオン交換樹脂が、強塩基型イオン交換樹脂である請求項1〜11のいずれか1項に記載のアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法。
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