JP5975829B2 - モータ制御装置、およびそれを用いた冷凍機 - Google Patents

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Description

本発明は、モータ制御装置、およびそれを用いた冷凍機に関する。
本技術分野の背景技術として、例えば、特開2008−172948号公報(特許文献1)がある。この公報には、「一方の駆動方式から他方の駆動方式への切換えの際に、回転数制御PWMデューティ/変調率演算部と通電切換制御・電圧/電流位相差算出・電圧位相算出部は、一方の駆動方式における切換え直前のブラシレスモータのロータ位置に対する電流位相と切換直後の電流位相が等しくなるように制御する。」と記載されている。
特開2008−172948号公報
前記特許文献1には、一方の駆動方式から他方の駆動方式への切換えの際に、一方の駆動方式における切換え直前のブラシレスモータのロータ位置に対する電流位相と切換直後の電流位相が等しくなるように制御する仕組みが記載されている。しかし、特許文献1のブラシレスモータの制御装置は、ブラシレスモータの負荷トルクの変動について考慮されていない。
そこで、本発明は、通電方式を切替える際に、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えることが可能なモータ制御装置、およびそれを用いた冷凍機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御器と、前記電力変換回路によって駆動される電動機と、前記電動機に接続される負荷とを備え、前記電力変換回路の通電方式を120度通電方式と180度通電方式とを切り替えるモータ制御装置において、前記電力変換回路の直流側または交流側の電流を検出し、前記電動機の1回転中の期間における前記電流がピーク値を越えた時点から再び上昇に転ずるまでの期間に120度通電方式から180度通電方式切替えることを特徴とする。
本発明によれば、通電方式を切替える際に、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えることができるモータ制御装置、およびそれを用いた冷凍機を提供することができる。
上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
モータ制御装置の構成図の例である。 座標軸の関係を示す図の例である。 制御軸と3相軸の関係図の例である。 電力変換回路の構成図の例である。 機構部(圧縮機構部)の構成図の例である。 回転子の位置に対する負荷トルクの変化の例である。 120度通電方式のスイッチング方式の例である。 開放相電圧検出手段の構成図の例である。 モータの2相に電圧を印加する場合の模式図である。 非通電相の起電圧特性図の例である。 回転角度位置に対する開放相起電圧特性の例である。 回転角度位置に対する開放相起電圧と基準電圧の関係図の例である。 基準レベル切替器の例である。 電圧指令値演算手段の構成図の例である。 180度用位置推定手段41の構成図の例である。 速度制御器の例である。 電流制御器の例である。 通電方式切り替え時(無対策)の電流波形の例である。 通電方式切替判定器の構成図の例である。 電流検出値の測定結果の例である。 180度通電方式のスイッチング方式の例である。 別方式による電圧指令値とドライブ信号の関係の例である。 120度用位置推定手段の構成例である。 通電モードと電気角位相の関係図の例である。 電気角位相と通電モードの関係図の例である。 1次遅れフィルタの周波数特性の例である。 処理フローチャートの例である。 q軸電流検出値のフィルタ後の値の例である。 冷蔵庫を示す構成図の例である。 電力変換回路の別の構成図の例である。 起動シーケンスの例である。 通電モード1の電圧印加時の実軸と3相軸の関係図の例である。 通電方式切替判定器の別の構成図の例である。 処理フローチャートの別の例である。 検証手段の例である。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
本実施例では、機構部として圧縮機構部を用いた場合のモータ制御装置1の例を説明する。
<全体構成>
図1は、本実施例におけるモータ制御装置の構成図の例である。モータ制御装置1は、大きく分け、交流電力を出力する電力変換回路5と、その電力変換回路5によって駆動されるモータ6(電動機)と、モータ6に機械的あるいは磁気的に接続されている負荷500と、モータ6に流れる電流またはモータ6の位置あるいは速度を直接的あるいは間接的に検出しモータ6へ印加する電圧指令値を演算する制御部2、等から構成される。なお、負荷500は、例えば後述する圧縮機構部である。
図4は、電力変換回路の構成図の例である。電力変換回路5は、インバータ21、直流電圧源20、ゲートドライバ回路23によって構成される。インバータ21は、スイッチング素子22(例えば、IGBT、MOS−FETなどの半導体スイッチング素子)によって構成される。これらのスイッチング素子22は直列に接続され、U相、V相、W相の上下アームを構成している。各相の上下アームの接続点は、モータ6へ配線されている。
スイッチング素子22は、制御部2で生成されるドライブ信号を基にゲートドライバ回路23が出力するパルス状のゲート信号(24a〜24f)に応じてスイッチング動作をする。直流電圧源20をスイッチングして電圧を出力することで、任意の周波数の3相交流電圧をモータ6に印加することができ、これによってモータを可変速駆動する。
なお、制御部2で生成されるドライブ信号と、ゲートドライバ回路23によって生成(増幅)されるゲート信号は、信号の電圧レベル(例えば、5Vと15V)等が異なるため、両者は異なる信号である。しかし、本実施例においてはゲートドライバ回路23を理想回路として扱ったとしても、効果に影響が無いため、以降に出てくるドライブ信号とゲート信号は、特に断りが無い限り同じ意味として扱う。
電力変換回路5の直流側にシャント抵抗25を付加した場合、過大な電流が流れた際にスイッチング素子22を保護するための過電流保護回路や、後述するシングルシャント電流検出方式などに利用できる。これにより、安全性向上や部品点数削減といった効果が得られる。
<通電方式>
次に、電力変換回路5をスイッチング動作させるためのドライブ信号の生成方法について、通電方式と共に説明する。
図1において、PWM信号作成器33は、通電方式切替指令に応じて、120度通電方式あるいは180度通電方式を選択すると共に、入力された電圧指令値に応じたドライブ信号を生成する。なお、電圧指令値の作成については、後述する。
120度通電方式は、電力変換回路5の3相の上下アームの内、2相に対してスイッチング動作をさせる。電気角で180度の位相中120度の期間スイッチングをするため、120度通電方式と呼ぶ。モータに印加される電圧の波形から、方形波駆動とも呼ぶ。
スイッチングさせる方法にはいくつか方式があり、例えば、図7に示した方式の内、いずれかを用いればよい。図7は電気角1周期における上下アームのドライブ信号を概念的に示している。図中のGpは上アームのドライブ信号、Gnは下アームのドライブ信号を意味している。
モータ6に印加する電圧を決定するためには、電圧の大きさ、電圧の波形、モータ6の回転子位置に対する電圧の位相、の3点を考慮する必要がある。決定法については、後述する。
次に、180度通電方式は、基本的に電力変換回路5の3相の上下アームを全てスイッチング動作させる。図21に標準的な三角波比較方式によるドライブ信号の生成方法を示す。図21は、電気角360度における電圧指令値と、ドライブ信号を生成するための三角波キャリア信号を示している。両者を比較し、大小関係により図中のように上アームのドライブ信号Gpおよび下アームのドライブ信号Gnを生成する。
180度通電方式は、電気角一周期にわたり上下アーム共にスイッチングを行うため、180度通電と呼ぶ。この方式は、モータに正弦波上の電圧が印加されることから、正弦波駆動とも呼ぶ。
ゲートドライバ回路23やスイッチング素子自体の遅れに起因して、上下アームのスイッチング素子が短絡する恐れがあるため、実際には上下アームの両方がスイッチングオフとなるデッドタイム(数マイクロ秒〜十数マイクロ秒程度)を付加して最終的なドライブ信号とする。なお、デッドタイムに関しては効果に影響が無いため、理想的なドライブ信号を示している。もちろん、デッドタイムを付加した構成としてもよい。
電力変換回路5の直流電圧源20を最大限に利用するため、電気角60度の区間、片方のアームのスイッチング素子をオン状態で維持するドライブ信号生成方法もある。図22は、この方式による電圧指令値とドライブ信号の関係の例である。この方法では、一定区間ドライブ信号の変化が無いため、一見すると、120度通電のドライブ信号に似ているが、実質的にモータに印加される電圧は正弦波状に近いため、この方式も180度通電と呼ぶ。
<モータ、座標軸>
本実施例は、モータ6として、回転子に永久磁石を有する永久磁石同期モータを用いた例である。そのため、制御軸の位置と回転子の位置は、基本的に同期しているとして説明する。なお、実際は加減速時や負荷変動時の過渡状態において、制御軸の位置と回転子の位置にズレ(軸誤差)が生じる場合がある。軸誤差が生じた場合、モータが実際に発生するトルクが減少したり、電流歪みや跳ね上がりが生じたりすることもある。
回転子の回転角度位置情報は、モータに流れる電流およびモータ印加電圧からモータの推定位置を出力する位置センサレス制御によって得るものとしている。その際、図2に示すように、回転子の主磁束方向の位置をd軸とし、d軸から回転方向に電気的に90度(電気角90度)進んだq軸とからなるd−q軸(回転座標系)を定義する。回転子の回転角度位置θdは、d軸の位相を示す。これに対し、制御上の仮想回転子位置をdc軸とし、そこから回転方向に電気的に90度進んだqc軸とからなるdc−qc軸(回転座標系)も定義する。本実施例では、この回転座標系である制御軸上で電圧や電流を制御することを基本としているが、単に電圧の振幅と位相を調整してモータを制御することも可能である。なお、これ以降の説明において、d−q軸を実軸、dc−qc軸を制御軸、実軸と制御軸のズレである誤差角を軸誤差Δθcと呼ぶ。
固定座標系である3相軸と制御軸との関係を図3に示す。U相を基準に、dc軸の回転角度位置(推定磁極位置)θdcと定義する。dc軸は図中の円弧状の矢印の方向(反時計方向)に回転している。そのため、回転周波数(後に示す、インバータ周波数指令値ω1)を積分することで、推定磁極位置θdcを得られる。
<負荷(圧縮機構部)>
次に、負荷500として、圧縮機構を用いた場合について、説明する。図5に示すように、機構部500(圧縮機構部)は、モータ6を動力源としてピストン501を駆動している。これにより、圧縮動作を行う。モータ6のシャフト502に、クランクシャフト503が接続され、モータ6の回転運動を直線運動に変換している。モータ6の回転に応じて、ピストン501も動作し、吸込み、圧縮、吐出、といった一連の工程を行う。モータ6とピストン501の間の動力伝達は、図5のように機械的に接続する構成が多いが、潤滑油の給油の構成や、圧縮あるいは搬送対象(例えば有害ガス)によっては、磁気的に接続された機構を含むことで、安全性やメンテナンス性を上げられるという効果がある。
圧縮機構の工程は、まずシリンダ504に設けられた吸込み口505から冷媒を吸い込む。その後、弁506を閉じて圧縮を行い、吐出口507から圧縮した冷媒を吐出する。
一連の工程において、ピストン501にかかる圧力が変化する。これは、ピストンを駆動するモータ6から見ると、周期的に負荷トルクが変化していることを意味する。図6は、機械角1回転における、回転子の回転角度位置θdに対する負荷トルクの変化の例を示している。図6では、モータ6として4極モータの例を示しているため、電気角2周期が機械角1周期に相当する。例えば、モータ6が6極の場合は、電気角3周期が機械角1周期に相当する。回転子の位置とピストンとの位置関係は組み付けによって決まるが、図6ではピストンの下死点が機械角の0°として、ピストン位置に対する負荷トルクの変化を示している。圧縮工程が進むにつれ負荷トルクが大きくなり、吐出工程では、急激に負荷トルクが小さくなるのが特徴的である。図6から、1回転中において負荷トルクが変動している事が分かる。回転する度に負荷トルクが変動するため、モータ6から見ると周期的に負荷トルクが変動していることになる。
たとえ同じ圧縮機構部500を用いても、モータ6の回転数、吸込み口505や吐出口507の圧力、吸込み口505と吐出口507の圧力差などによって、負荷トルクの変動は変化する。弁506の開閉タイミングとピストンの位置の関係は、弁506の構成によって変わる。例えば、吸い込み口505とシリンダ504内の圧力差で作動する簡易的な弁を使用した場合には、圧力条件によって弁の開閉タイミングが変わる。すなわち、負荷トルクが一回転中で最大となるピストン位置も変化する。
電力変換回路の通電方式の切替えを考えた場合、前述のように負荷トルクの変動が大きい場合には、通電方式の切替えを起因の1つとして、モータ6に流れる電流に跳ね上りが生じたり、モータ6の回転速度変動が生じたりする恐れがある。この結果、振動や騒音が発生する場合もある。これらの現象を切替ショックと呼ぶ。したがって、本願の目的の一つは、負荷トルクの変動が大きい場合に、電力変換回路の通電方式を切り替える際においても、電流跳ね上りや速度変動が生じない切替ショックレスを実現するモータ制御装置を提供することである。
本実施例では、圧縮機構部500のピストン501は、直線的に動くレシプロ式を例に説明しているが、圧縮機構の別な方式として、ピストンが回転することで圧縮するロータリー式や、渦巻状の旋回翼からなるスクロール式などがある。それぞれの圧縮方式によって周期的な負荷変動の特性は異なるものの、いずれの圧縮方式においても圧縮工程に起因する負荷変動がある。これらの負荷トルク変動特性はそれぞれ異なるが、後述する手段を備えるモータ制御装置およびそれを用いた駆動装置、冷凍機、空調機は圧縮機構が異なる場合にも同様に適用でき、いずれにおいても本願の目的を達成可能である。
<制御部>
図1において、制御部2は、電圧を印加しない非通電相(開放相)の起電圧(端子電圧)を入力し、回転子の推定回転角度位置および推定回転速度を出力する120度用位置推定手段40と、モータ6に流れる交流電流または電力変換回路の直流側に流れる電流を入力し、回転子の推定回転角度位置および推定回転速度を出力する180度用位置推定手段41と、通電方式切替指令信号と、120度用位置推定手段40および180度用位置推定手段41の推定回転角度位置および推定回転速度を入力し、通電方式切替指令信号に応じた推定回転角度位置および推定回転速度を出力する通電方式切替器31と、電圧指令値演算手段34と、モータ6に流れる交流電流または電力変換回路の直流側に流れる電流を入力し、通電方式切替指令信号を出力する通電方式切替判定器30と、通電方式切替指令信号と電圧指令値を入力しドライブ信号を出力するPWM信号作成器33、等から構成される。
制御部2の多くは、マイコン(マイクロコンピュータ)やDSPなどの半導体集積回路(演算制御手段)によって構成され、ソフトウェアなどで実現している。
<電流検出手段>
180度用位置推定手段41でモータ6に流れる電流を使用する場合、電流検出手段7を用いて、モータ6または電力変換回路5に流れる3相の交流電流の内、U相とW相に流れる電流を検出する。電流検出手段の構成例を図4に示す。例えば、CT(Current Transformer)等で構成できる。この構成を採用した場合、電力変換回路5のスイッチング状態を気にせず、任意のタイミングで電流検出できるという利点がある。
なお、全相の交流電流を検出しても構わないが、キルヒホッフの法則から、3相のうち2相が検出できれば、他の1相は検出した2相から算出できる。
モータ6または電力変換回路5に流れる交流電流を検出する別方式として、例えば、電力変換回路5の直流側に付加されたシャント抵抗25に流れる直流電流から、電力変換回路5の交流側の電流を検出するシングルシャント電流検出方式がある。この方式は、電力変換回路5を構成するスイッチング素子の通電状態によって、電力変換回路5の各相の交流電流と同等の電流がシャント抵抗25に流れることを利用している。シャント抵抗25に流れる電流は時間的に変化するため、ドライブ信号が変化するタイミングを基準に適切なタイミングで電流検出する必要がある。図示はしていないが、電流検出手段7に、シングルシャント電流検出方式を用いても問題ない。
<モータ端子電圧検出手段>
開放相電圧検出手段の構成図の例を図8に示す。モータ6の端子電圧を検出する場合、例えば、開放相電圧検出手段60を用いる。多くの場合、モータ6の端子電圧が制御部の電源電圧(例えば、5Vや3.3V)を超えるため、分圧抵抗(61および62)を用いる。その後、オペアンプで増幅したり、制御部の保護を目的として、バッファ回路63を入れたりする。もちろん、モータ6の端子電圧を直接制御部2に入力しても構わない。
<各構成要素の詳細>
以下、各構成要素の詳細を説明する。まず、モータ6を120度用位置推定手段40の動作と、180度用位置推定手段41の動作についてそれぞれ説明し、次に電圧指令値演算手段34の動作について説明する。その後、2つの駆動状態の切替え、言い換えると、2つの通電方式(120度通電、180度通電)を切替える際の課題について説明する。
<120度通電>
以下の説明を実現する120度用位置推定手段40の構成例を図23に示す。
モータ6を120度通電で駆動する際は、モータ6の3相巻線の内、通電する2相を選択してパルス電圧を印加してトルクを発生させる。通電する2つの相の組み合わせは6通り考えられ、それぞれを通電モード1〜通電モード6と定義する。
図9にモータの2相に電圧を印加する場合の模式図を示す。図9(a)はV相からW相へ通電している状態の通電モード(後述の通電モード3に対応)を示し、図9(b)は反対にW相からV相へ通電している状態の通電モードを示す図である。
これらに対し、回転子の回転角度位置を電気角1周期分変化させた場合の非通電相(図10ではU相)に現れる起電圧は、図10のようになる。図10は、非通電相の起電圧特性図の例である。回転角度位置によって、U相の起電圧(U相の端子電圧)が変化することがわかる。
この起電圧はV相とW相に生じる磁束の変化率の差異が、非通電相であるU相にて電圧として観測されたものであり、速度起電圧と異なる。速度起電圧と区別して、開放相起電圧と呼ぶ。
図10において、実線で示す正パルス印加時の開放相起電圧、および破線で示す負パルス印加時の開放相起電圧は、いずれも速度誘起電圧Emuに比べて大きい。速度起電圧は、その名の通り回転子の回転速度に比例して変化する起電圧である。したがって、低速域における速度起電圧と非通電相の起電圧の大小関係は、図10に示す関係になる。
したがって、この開放相起電圧を検出すれば、モータ6の回転速度が零速度近傍から低速度域に亘って、比較的大きな回転子の位置信号が得られる。
図11は、U相、V相、およびW相を非通電相とした場合の回転子の回転角度位置θdに対する開放相起電圧特性、電力変換器2を構成するスイッチング素子のゲート信号、モータ6の回転子の回転角度位置θd、通電モード、およびスイッチング相関係を示している。
図11に、回転角度位置に対する開放相起電圧特性の例を示す。図11から分かるように、図9(a)および(b)に示した電圧パルスは120度通電方式の通常の動作中に印加される。通電モード3において、図9の状態となる。モード回転角度位置θdに応じて電気角60度毎に通電する2相が切り替えられている。つまり、非通電相も順次切り替えられる。
図11において、図9(a)および(b)の状態は、通電モードが通電モード3もしくは通電モード6に対応する。通電モード3もしくは通電モード6においては、U相が非通電相であるため、開放相起電圧はU相の起電圧波形に示した太線のように検出できる。すなわち、回転角度位置θdが増えるにつれ、通電モード3ではマイナス方向に減少し、通電モード6ではプラス方向に増加する開放相起電圧が検出できる。
同様に、通電モード2および通電モード5では、V相の起電圧波形が検出でき、通電モード1および通電モード4では、W相の起電圧波形が検出できる。
図12は、回転角度位置に対する開放相起電圧と基準電圧の関係図の例である。図12に、回転角度位置θdに対する、通電モード、非通電相、通電モードに対応した非通電相の開放相起電圧、および基準電圧の関係を示す。通電モードが切り替わる毎に非通電相の開放相起電圧が、正と負でそれぞれに上昇と減少を繰り返す波形となる。そこで、正側および負側それぞれに、閾値となる基準電圧(Vhp、Vhn)を設定し、この基準電圧と非通電相の開放相起電圧の大小関係から回転角度位置θdを推定でき、これによって通電モード切替のトリガ信号を発生させる。
つまり、基準電圧が通電モードを切り替える所定の位相を表す値として見做され、これを検出した非通電相の開放相起電圧が超えると、その時点でモード切替トリガ信号を発生させ通電モードを順に切り替える。
通電モードを切り替える動作はモード切替トリガ発生器51にて実現しており、非通電相電位選択器52(図23参照)にて通電モードに応じた非通電相を選択し、選択した相の開放相起電圧を検出している。
図13、図23に示す基準レベル切替器53にて、通電モード指令に従って正側基準電圧Vhpと負側基準電圧Vhnを切替スイッチ113によって選択して出力する。つまり、通電モード2、4、6では正側基準電圧Vhp111を出力し、通電モード1、3、5では負側基準電圧Vhn112を出力する。
通電モードに応じた開放相起電圧と、選択した正側基準電圧Vhpまたは負側基準電圧Vhnを閾値として比較器54に入力してその値の比較を行い、非通電相の起電圧が閾値に到達した時点でモード切替トリガ信号を発生する。通電モード切替器55は、モード切替トリガ信号を入力し、モード切替トリガ信号に応じて通電モードを正回転方向に進め、通電モードを出力する。
位相変換器56は、通電モードの情報(通電モード1〜通電モード6)を入力し、で電気角位相(回転角度位置θd)を出力する。120度通電では電気角60度毎の回転角度位置を検出すれば良いが、例えば、通電モードから、図24に示す関係の位相を出力する。
図24の関係の位相を採用すると、通電方式切替に好適となる。本実施例の目的を考えると、ドライブ信号の生成方法は同じとするのが良い。
3相正弦波状の電圧指令値を考えると、電気角が0度、60度、120度、180度、240度の位置は、中間相の電圧がゼロで、最大相と最小相の絶対値は同じとなる位置である。これらの電圧指令値を、図21で示したPWMキャリア信号生成方法(つまり180度通電方式と同じドライブ信号生成方法)を用いると、120度通電方式時のドライブ信号を得られる。
駆動方式切替器45に、電圧指令値と、通電方式切替指令信号と、通電モード指令と、を入力する。120度通電方式で駆動している場合は、通電モードに応じて非通電相のドライブ信号は上下アームとも非アクティブとして出力する。180度通電方式で駆動している際は、駆動方式切替器45は、入力された電圧指令値をそのまま出力すればよい。120度通電方式では、最大相と最小相に電圧を印加する。そのため、通電モードに応じた非通電相とは、中間相となる。中間相の上下アームとも非アクティブとすることで、図7の相補スイッチング方式のドライブ信号と同様の電圧がモータに印加されることになる。
このように、各通電モードにおける位相を図24に示した様に決定することで、180度通電方式と同じドライブ信号生成方法を用いて、120度通電方式でのドライブ信号を生成することができる。同じドライブ信号生成方法を用いるため、ドライブ信号生成方法に起因する切替時のショックを無くすことができる。従って、通電方式切替に好適な方式である。
速度変換器57は、1つの通電モードが継続した時間を例えば三角波キャリア信号の山または谷の割込みタイミングでカウントをし、そのカウント値から次式で速度ω1_120を算出する。
ここで、N_pwmは三角波キャリア信号の山または谷の割込みタイミングでカウントしたカウント数、T_count_smplはカウントする周期である。6倍しているのは、電気角1周期相当の速度を求めるためである。
前述の通り、開放相起電圧は速度起電圧と異なり、モータが停止または極低速で回転している際にも検出可能である。したがって、モータ6の回転速度が零速度近傍から低速度域に亘って、位置センサレス駆動が可能である。このように、非通電相の開放相起電圧を検出することで、モータ6が停止した状態や極低速時においても回転子位置を精度良く検出することができる。また、これに基づいて回転速度も求められる。
以上が、120度用位置推定手段40の基本的な動作である。
<180度通電>
ところが、モータ6の回転速度が大きくなるにつれて、非通電相の開放相起電圧よりも速度起電圧の方が支配的となる。つまり、速度起電圧に基づいて回転子位置情報や回転速度を検出する方が精度良くなる。そのため、中高速域においては、180度通電でモータ6を駆動するのが良い。
モータ6を180度通電で駆動するためには、前述の通りdc−qc軸(回転座標系)で制御するのが好適である。回転座標上で制御するために3相交流軸から座標変換する必要があるが、回転座標上では電圧や電流を直流量として扱えるという利点がある。
そのため、推定磁極位置θdcを用いて、電流検出手段7で検出した3相交流軸のモータ電流検出値122をdc−qc軸に座標変換し、d軸およびq軸の電流検出値(IdcおよびIqc)を得える。同様に、推定磁極位置θdcを用いて、後述する電圧指令値作成器3で生成したdc−qc軸上の電圧指令値を3相交流電圧指令値に座標変換する。
次に、180度用位置推定手段41の動作について説明する。図15は、180度用位置推定手段41の構成図の例である。180度用位置推定手段41は、主に軸誤差演算器10と、PLL制御器13と、積分器15、等から構成されている。
本実施例の180度用位置推定手段41は、軸誤差Δθcの演算値を基にしている。軸誤差演算器10は、制御軸上の電流検出値(IdcおよびIqc)と、後述する電圧指令値(Vd*およびVq*)を入力して、次式により実軸と制御軸との軸誤差Δθcを出力する。
PLL制御器13は、軸誤差Δθcが軸誤差指令値Δθ*(通常はゼロ)になるようにインバータ周波数指令値ω1を出力する。軸誤差指令値Δθ*と軸誤差Δθcの差を減算器17aで求め、これに乗算器18aで比例ゲインKp_pllを乗じ比例制御した演算結果と、乗算器18bで積分ゲインKi_pllを乗じそれを積分器15bで積分し積分制御した演算結果とを加算器16aで加算し、インバータ周波数指令値ω1_180を出力する。
定常状態においては、軸誤差Δθcはゼロとなる点、永久磁石同期モータでは制御軸の位置と回転子の位置は基本的に同期している点から、インバータ周波数指令値ω1_180がモータの速度に相当する。
回転子の回転角度位置θd(電気角位相)は速度を積分することで得られる。そのため、積分器15aの出力が回転角度位置θd_180となる。
次に電圧指令値演算手段34の動作について説明する。図14は、電圧指令値演算手段34の構成図の例である。電圧指令値演算手段34は、例えば、速度制御器14と、電流制御器12と、通電方式切替スイッチ59と、電圧指令値作成器3と、dq/3φ変換器4、等から構成されている。
通電方式の切り替えは通電方式切替スイッチ59で行う。図14中に複数通電方式切替スイッチ59があるが、全て同じタイミングにおいて同じ接点に切り替わる。
説明の便宜上、180度通電駆動時の動作について先に説明する。180度通電駆動時においては、図14中の複数通電方式切替スイッチ59を下側接点にする。
電圧指令値作成器3は、後述する速度制御器14や電流制御器12から得られるd軸およびq軸電流指令値(Id*およびIq*)と、回転角速度指令値ω*または後述するインバータ周波数指令値ω1とを電圧指令値作成器3に入力し、次式の様にベクトル演算を行い、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*を得る。
ここで、Rはモータ6の巻線抵抗値、Ldはd軸のインダクタンス、Lqはq軸のインダクタンス、Keは誘起電圧定数である。
上述のようにモータを駆動する制御は一般的にベクトル制御と呼ばれ、モータに流れる電流を界磁成分とトルク成分に分離して演算し、モータ電流位相が所定の位相になるように、電圧の位相と大きさを制御する。ベクトル制御の構成にはいくつか方式があり、例えば、特開2005−39912号公報に記載の構成がある。これを用いて例えば図14のような構成とする。
本実施例のモータ6は、非突極型の永久磁石モータとしている。すなわち、d軸とq軸のインダクタンス値は同じである。つまり、d軸とq軸のインダクタンスの差によって発生するリラクタンストルクは考慮していない。したがって、モータ6の発生トルクはq軸を流れる電流に比例する。そのため、本実施例においては、d軸電流指令値Id*はゼロを設定している。なお、突極型モータ(d軸とq軸のインダクタンス値が異なるモータ)の場合は、q軸電流によるトルクの他に、d軸とq軸のインダクタンスの差に起因するリラクタンストルクが発生する。そのため、リラクタンストルクを考慮してd軸電流指令値Id*を設定することで、同じトルクをより小さいq軸電流で発生できる。この場合、効率向上の効果が得られる。
<速度制御器>
q軸電流指令値は、上位制御系などから得てもよいが、速度指令値への追従性を良くするため、図14は速度制御器を用いてq軸電流指令値を得る構成として示した。
速度制御器14の構成例を図16に示す。周波数指令値ω*とインバータ周波数指令値ω1の差を減算器17bで求め、これに乗算器18cで比例ゲインKp_asrを乗じて比例制御した演算結果と、乗算器18dで積分ゲインKi_asrを乗じ積分器15cで積分し積分制御した演算結果とを加算器16bで加算し、q軸電流指令値Iq*を出力する。
<電流制御器>
図17は電流制御器の構成図の例である。d軸およびq軸電流指令値への追従性を上げるため、電流制御を行う。d軸およびq軸電流値(Id*およびIq*)とd軸およびq軸電流検出値との差をそれぞれ減算器(17cおよび17d)で求め、これらに乗算器(18eおよび18f)で比例ゲイン(Kp_dacrおよびKp_qdacr)を乗じて比例制御した演算結果と、乗算器(18gおよび18h)で積分ゲイン(Ki_dacrおよびKi_qacr)を乗じ積分器(15dおよび15e)で積分し積分制御した演算結果とを加算器(16cおよび16d)で加算し、第2のd軸およびq軸電流指令値(Id**およびIq**)を出力する。
<電圧指令値演算>
次に、120度通電駆動時の動作について説明する。120度通電駆動時においては、図14中の複数通電方式切替スイッチ59を上側接点にする。
本実施例では、120度通電駆動時と180度通電駆動時において、動作を変更する例を示す。もちろん、120度通電駆動においても、180度通電駆動と同様に、速度制御器14と電流制御器12を付加した構成としてもよい。
本実施例では、120度通電駆動時の電流指令値(Id**およびIq**)は、図示しない上位制御等から入力された電流指令値(Id*_120およびIq*_120*)を用いる。上位制御等から入力された電流指令値を使う際、乗算器および積分器の数が減るため、制御部2の演算負荷を低減できる効果がある。
最も簡素な方法としては、d軸およびq軸電流指令値をゼロとし、所定の速度指令値のみを与え、次式のように電圧指令値は固定として駆動しても良い。
dq/3φ変換器4は、上述の電圧指令値作成器3が出力するd軸およびq軸電圧指令値(Vd*およびVq*)と回転角度位置を入力し、3相電圧指令値(Vu*、Vv*、Vw*)出力する。
通常、上位制御系等から与えられる周波数指令値ω*は、インバータ周波数指令値ω1に比べると変化の周期は非常に長いため、モータが1回転する間においては一定値と見ても良い。そのため、速度制御器によって、モータはほぼ一定周波数で回転する。この時、インバータ周波数指令値ω1を積分することで得られる推定磁極位置θdcは、ほぼ一様に増加する。
以上が、電圧指令値演算手段34の基本動作である。
<通電方式切替>
モータ6の状態量(位置、速度、トルクなど)を制御する場合、状態量の変化に対して感度が高い情報もしくは線形に変化する情報を用いることが適している。
前述の通り、非通電相の開放相起電圧は、モータが停止または極低速で回転している際にも検出可能である。一方、速度起電圧は、モータの回転速度に比例する起電圧であるため、回転速度が大きくなるにつれて速度起電圧は大きくなり、中高速域では非通電相の開放相起電圧よりも速度起電圧の方が支配的となる。
このことから、モータが停止時から高速域において、モータの位置検出を行ってモータの状態量(位置、速度、トルクなど)を制御する場合には、開放相起電圧に基づいて制御する120度通電方式と、速度起電圧に基づいて制御する180度通電方式とを組み合わせることで、高精度な制御を実現できる。
通電方式切替を判断する値の例として、ここでは上位制御系等から与えられる周波数指令値ω*(モータの回転数指令に相当)を使用する。例えば、予め速度起電圧が十分に大きくなり、速度起電圧を精度良く検出できる周波数指令値に達したら(定格速度の10〜20%程度が目安)、開放相起電圧に基づいて制御する120度通電方式から速度起電圧に基づいて制御する180度通電方式へ切り替える。
通電方式を切り替える際、図18のように電流跳ね上りや速度変動などが生じた。電流の跳ね上がりが大きい場合、過電流保護回路によってモータが停止したり、最悪の場合はスイッチング素子22やその他の電気品を損傷したりする恐れがある。モータ停止や破損に至らなくとも、通電方式切り替え時にモータの発生トルクが急に変わることで、急加減速したり、それによる振動や不快な音が発生したりする原因となる。
このような課題を解決するため、通電方式を120度通電方式から180度通電方式に切り換える際に、電流跳ね上り、モータ発生トルクの不連続によるトルクショック、速度変動、などが生じない切替ショックレスを実現するモータ制御装置を提供することが、目的の1つである。
通電方式を切り替えた際に電流跳ね上がり等の原因の1つは、通電方式切替直後の過渡状態において、周期的な負荷変動によって一時的に負荷が大きくなるタイミングが重なることで、制御系(速度制御器や電流制御器)が不安定になることである。
図6に示したように、特に圧縮機は、周期的な負荷変動が大きいため、機械角1周期の平均負荷トルクは小さくとも、周期的な負荷変動によって一時的に負荷が大きくなるタイミングがある。このタイミングと通電方式を切り替えるタイミングが重なった場合、起動失敗する可能性が高くなる。そのため、周期的な負荷変動が大きい場合にも起動失敗せず、安定にモータ6を起動させることが目的の一つである。
本実施例では、圧縮機構部500のピストン501は、直線的に動くレシプロ式を例に説明しているが、圧縮機構の別な方式として、ピストンが回転することで圧縮するロータリー式や、渦巻状の旋回翼からなるスクロール式などがある。それぞれの圧縮方式によって周期的な負荷変動の特性は異なるものの、いずれの圧縮方式においても圧縮工程に起因する負荷変動がある。そのため、周期的な負荷変動によって一時的に負荷が大きくなるタイミングと通電方式の切替タイミングとが重なることによって、起動失敗をする恐れがある。
そこで、いずれの圧縮方式にも適用可能な解決策を提供することが本願の目的の一つである。負荷トルクの変動は、圧縮機の形式でも変わり、同じ圧縮機でも運転条件(吸込み口や吐出口の圧力、圧縮機の温度など)やモータの回転数によっても変化する。
そのため、予め切替タイミングを決めておくよりも、実際の負荷変動から切替タイミングを決定するのが良い。
負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えるようにすることで、通電方式の切替前後において、安定に駆動することができるようになる。
<通電方式切替判定器>
上記の目的を実現する手段の1つである、通電方式切替判定器30について説明する。
通電方式切替判定器30の構成図の例を図19に示す。通電方式切替判定器30は、1次遅れフィルタ71と、切替タイミング判定器72と、等から構成され、速度指令値と電流検出値を入力し、通電方式切替指令を出力する。
図20は、モータをおよそ667rpmで駆動した際の電流検出値の測定結果の例であり、上部の波形はU相電流(モータの相電流)を電流プローブで測定した波形であり、下部の波形は制御器2で検出したq軸電流検出値(点線)と1次遅れフィルタ処理後のq軸電流検出値(実線)である。図20の電流波形の内、U相電流とq軸電流検出値(点線)に注目すると、どちらも90msの周期で変化をしている。この周期は、機械角1周期(90ms)と等しく、このことから、電流の変化は負荷変動に一致していることが分かる。すなわち、電流の変化から負荷の変動を検出できることを意味する。
なお、図20のq軸電流検出値(点線)は、櫛歯状の波形となっているが、これは、120度通電方式で駆動中に通電モードが変化したことに起因している。
図20のq軸電流検出値(点線)と、図6に示した負荷トルクの変化の例を比較すると、両者の波形は似ている。図20の電流波形に、本実施例の圧縮機構の工程を記載すると、電流が増加する期間が圧縮工程に相当し、その後、電流が減少する期間が吐出および吸込み工程に相当する。なぜなら、圧縮工程では冷媒を圧縮するために、大きな負荷トルクが必要で、そのためにq軸電流を流して、モータのトルクを増加させているためである。
通電方式切替を考えると、負荷トルクが小さい期間あるいは減少している期間、すなわち、吐出から吸込工程の期間に、通電方式を切替えると影響を受けにくい。なぜなら、負荷トルクが小さい期間あるいは減少している期間は、軸誤差が減少するためである。
吐出から吸込工程の期間を検出する手段の1つとして、1次遅れフィルタを用いた方式を説明する。
図20にはq軸電流検出値(Iqc)を1次遅れフィルタ処理した電流値(Iqc_fil)を示している。両波形の大小関係に注目すると、次式の関係が成り立つ時が通電方式切替タイミングとして好適な期間となっていることが分かる。
これは、1次遅れフィルタの原理を応用している。1次遅れフィルタ(低域通過フィルタ)は、次式の周波数特性(ゲイン特性および位相特性)を有する。また、次式の周波数特性を用いて、遮断周波数を100Hzとした場合の1次遅れフィルタの周波数特性の例を図26に示す。
ここで、Iinは1次遅れフィルタの入力値、Ioutは1次遅れフィルタの出力値、fcは遮断周波数、fは周波数、θLPFは位相(遅れ位相)である。
数6式および図26の具体例としては、1次遅れフィルタの入力値(図19の例ではq軸電流検出値)の内、遮断周波数と同じ周波数成分は、1/√2に減衰し、位相が45°遅れた波形が出力される。
遮断周波数を通電方式切替周波数(回転数)に近い値を設定すると、位相が45°近く遅れることになり、フィルタ前後の値を比較すると、フィルタ後の値の方が大きくなる期間は、フィルタ前の値がピークを過ぎ、減少に転じ次に増加に転ずるまでの期間となる。
図20の例は、モータがおよそ667rpm(11.1Hz)で駆動しており、遮断周波数15.9Hzの1次遅れフィルタを通した結果である。
q軸電流検出値(Iqc)と1次遅れフィルタ処理したq軸電流検出値(Iqc_fil)を切替タイミング判定器72で比較し、数5式の関係を満たす期間において通電方式切替指令を出力し(図20中で、通電方式切替指令が1の期間)、通電方式を切り替えることとする。
前述の通り、120度通電方式で駆動している際は、通電モードが変化したことに起因し櫛歯状の波形となっている。そのため、通電モードを変化させる直前、もしくは、通電モードを変化させてから所定時間待った後に数5式の関係が成り立つ際に、通電方式切替指令を出力する。
図20では、通電モードを変化させる直前に、q軸電流検出値と1次遅れフィルタ処理したq軸電流検出値を比較し、数5式の関係が成り立つ際に、通電方式切替指令を出力する場合の例である。一点鎖線の矢印は、数5式の関係が成立/不成立となる分岐点を示す。
上記の処理をソフトウェアで実現する際の処理フローチャートの例を図27に示す。図27は、通電方式切替指令の出力に関する処理のみを抽出している。そのため、他の処理、例えば、位置推定処理や電圧指令値演算処理は省略している。従って、条件判定後の分岐処理の戻り先は、必ずしも図27の通りで無くても良い。
以上のように通電方式切替判定器30を用いることにより、電流跳ね上り、モータ発生トルクの不連続によるトルクショック、速度変動、などが生じない切替ショックレスを実現するモータ制御装置を提供することができる。
本実施例で説明した通電方式切替判定器30は、1次遅れフィルタ71と、大小比較器からなる切替タイミング判定器72とで構成されているため、非常に容易に実現できるという効果がある。
<1次遅れフィルタの遮断周波数>
1次遅れフィルタ71の遮断周波数は、通電方式を切り替える際の目標(指令)周波数を目安にする。しかし、必ずしも同じ値にする必要は無い。なぜなら、本実施例のモータ制御装置、およびそれを用いた駆動装置、冷凍機、空調機の負荷は、何らかの周期的な負荷変動を有することを前提としている。負荷変動がある場合、制御部2の制約等により、少なからず速度変動を生じてしまう。そのため、1次遅れフィルタ71の遮断周波数を決定する際もその速度変動を考慮する必要がある。
たとえば、機械角1周期(回転子が1回転する周期)で1回の負荷変動がある場合、機械角1周期中の最小周波数から最大周波数の範囲に、1次遅れフィルタ71の遮断周波数を設定すればよく、本実施例の効果を得られる。
120度通電方式では、60度毎に速度演算を行うため、通電方式切替付近で駆動させ、機械角1回転中における、各通電モードの最小時間もしくは最大時間を予め求め、そこから算出した周波数を遮断周波数に設定しても良い。
さらに、1次遅れフィルタ71を実現する際の誤差を考えれば、1次遅れフィルタ71の遮断周波数は2倍もしくは1/2倍までずれても問題ない。なぜなら、数6式より、遮断周波数が2倍になった場合の位相遅れは−60度程度であり、十分目的を達成できるためである。
例えば、簡略化のため、q軸電流検出値が振幅1の正弦波であったと仮定し、周波数が変化した場合の1次遅れフィルタ後のq軸電流検出値の波形を図28に示す。
図28は、1次遅れフィルタ71の遮断周波数を100Hzとし、1/3倍、1/2倍、1倍、2倍、3倍のそれぞれの周波数成分が、フィルタ処理によって、どう変化するかを示している。すなわち、1次遅れフィルタ71の遮断周波数が、3倍から1/3倍にずれてしまった場合の影響を見るのと等価である。
図中の点線はq軸電流検出値を簡略化した波形であり、実線は1次遅れフィルタ処理後の波形である。上から順に、q軸電流検出値が33Hzとした場合(つまり、1次遅れフィルタ71の遮断周波数の1/3倍の周波数)、50Hz(1/2倍)、100Hz(1倍)、200Hz(2倍)、300Hz(3倍)、である。
なお、図28では、フィルタ処理前後の振幅差と位相差に注目して、各波形を比較したいため、横軸は位相で示している。実際は、周波数が変化しているため、各波形の周期は異なる。
図28の波形で注目すべきは、q軸電流検出値を簡略化した波形と1次遅れフィルタ処理後の波形の交差する点である。図28の(a)〜(d)の波形は、q軸電流検出値が上昇に転じてから少したった時点で交差している。従って、この時点より前で、通電方式を切り替えれば、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えることができる。
図28の(e)は、q軸電流検出値を簡略化した波形と1次遅れフィルタ処理後の波形の交差する点が、q軸電流検出値の−0.5よりも大きいところで、交差している。q軸電流検出値の−0.5よりも大きいと、通電方式のショックレスの切替が難しくなってくる。しかし、負荷の特徴、つまりq軸電流検出値の変化の変化によっては、本実施例の効果を得られる。
前述の通り、モータ6の回転速度が高くなると速度起電圧に基づいて回転子位置情報や回転速度を検出する方が精度良くなる。そのため、モータの位置検出を行う手段として、本実施例のように、120度通電方式として開放相起電圧に基づいた構成とし、180度通電方式では速度起電圧に基づいた構成の場合は、低回転数領域では、120度通電方式の方がモータの位置検出精度が良いため、通電方式切替判定については、数5式に加え、次の条件を追加しても良い。
ここで、ω_judgeは、通電方式切替判定を開始する周波数である。回転周波数(インバータ周波数指令値ω1)が通電方式切替判定開始周波数ω_judge未満の場合は、通電方式切替判定を行わない事により、処理時間短縮等の効果を得られる。
このように、通電方式切替判定器30を用いることで、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えるため、起動失敗せず安定にモータ6を起動させることができる。負荷トルクの変動を推定するため、特定の圧縮機の方式に限定されることなく、いずれの圧縮方式においても適用可能なことは明らかである。
モータ6の圧縮機の一工程での吸込み圧力Psと吐出圧力Pdは、圧縮機が繋がるシステム(例えば、冷凍サイクル)の状態によって変化するが、一工程における負荷トルク変動は発生する。そのため、負荷トルク変動を推定し、その情報を運転モードの切替判断に用いることで、様々な負荷特性のモータ制御装置へ適用可能である。
圧縮機だけでなく、周期的に変動する負荷トルク特性を有するモータ制御装置、およびそれを用いた駆動装置、冷凍機、空調機にも適用可能で、同様の効果があることは言うまでもない。
以上の説明では、負荷トルクの変動が大きい場合について説明をしたが、負荷トルクの変動が小さくとも、例えば、モータ6や機構部500の慣性モーメントが小さい場合には、電流に跳ね上りが生じたり、モータ6の回転速度変動が生じたりする恐れがある。この場合も、本実施例に記載の内容を適用可能で、同様の効果を得られる。
本実施例では1次遅れフィルタを用いた例を示したが、高次の遅れフィルタを用いても同様の効果を得られる。例えば2次の遅れフィルタを用いた場合は、遮断周波数より離れた周波数成分をより減衰させるため、例えば、複数の負荷変動が含まれているが、支配的な負荷変動を考慮して通電方式を切替えたい際により効果的である。
本実施例では、通電モードを変化させる直前、もしくは、通電モードを変化させてから所定時間待った後に数5式の関係が成り立つ際に、通電方式切替指令を出力するとしたが、例えば、1つの通電モードに居る間において数5式の関係が成り立つ際に、通電方式切替指令を出力するとしても良い。例えば、支配的な機械角1周期で1回の負荷変動に加え、被支配的な周期的な負荷変動が加わっている場合により効果的である。なぜなら、非支配的な負荷変動も含めて、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えるように出来るためである。
以上の説明では、120度通電方式から、180度通電方式に切り替える際について説明をしたが、もちろん180度通電方式から120度通電方式に切り替える際も本実施例に記載の内容を適用することができる。
本実施例では、モータ制御装置を用いた冷凍機および空調機の例を説明する。
なお、実施例1に示した、同一の符号を付された構成と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
図29は、実施例2におけるモータ制御装置を用いた冷凍機および空調機の例として、冷蔵庫を示す構成図の例である。
冷蔵庫301は、図29に示すように、熱交換機302、送風機303、圧縮機304、圧縮機駆動用モータ305、などにより構成されている。また、冷蔵庫制御装置306は、各種センサ情報により、送風機や庫内灯などを制御する庫内制御装置307とモータ制御装置1から構成される。
冷蔵庫においては、真空断熱材等により、冷蔵庫内の熱が外気に漏れる熱漏洩量が非常に少ない。そのため、圧縮機を駆動するモータ制御装置1の消費電力量を削減するためには、定常時の消費電力量を削減すると共に、過渡時(起動時)の消費電力(消費電力量)も重要になってくる。
冷凍機および空調機で使われる圧縮機の内部は、高温・高圧となるため、圧縮機駆動用モータの回転角度位置を検出する位置センサ等を設置するのが難しい。圧縮機駆動用モータ駆動する場合、回転子の回転角度位置情報は、モータに流れる電流およびモータ印加電圧からモータの推定位置を出力する位置センサレス制御によって得る。
速度起電圧に基づいた位置センサレス制御を採用した場合、低速においては速度起電圧が小さくなるため、位置推定が困難になる。なお、ここでの低速とは、速度起電圧が、電力変換回路5の直流電圧源20の10%程度以下の電圧となる速度を意味する。低速においては、例えば、位置フィードバックは行わず、予め決定した電流指令値と速度指令値から電圧指令値を決定する同期運転と呼ぶ手法で駆動する。
同期運転中は位置検出ができないため、トルクに直接寄与する電流だけを与えることはできず、無駄な電流も流れてしまう。従って、冷蔵庫の圧縮機駆動用モータを起動するために必要なトルクを得るためには、余裕をもった電流を流す必要がある。
消費電力量削減するためには、ゼロ速度を含む極低速域においても位置検出を行い、トルクに直接寄与する電流だけを与えることが必要になる。つまり、必要最小限の電流によって起動することにより、消費電力量低減が可能なモータ制御装置およびそれを用いた冷凍機および空調機を提供することが目的の一つである。さらに、広い速度範囲においてモータを位置センサレスで駆動が可能なモータ制御装置およびそれを用いた冷凍機および空調機を提供することが目的の一つである。
本実施例におけるモータ制御装置の構成図の例は、図1の実施例1と同じである。図30は、電力変換回路5aの構成図の例である。電力変換回路5aは、図3の電力変換回路5に比べ、ダイオードブリッジ82と、平滑コンデンサ83と、整流回路切替手段84とが追加された構成になっている。
交流電源81をダイオードブリッジ82で整流して直流電力に変換する際、全波整流回路と倍電圧整流う回路を整流回路切替手段84によって切替できる構成となっている。
前述の通り、冷蔵庫においては、真空断熱材等の技術革新により、冷蔵庫内の熱が外気に漏れる熱漏洩量が非常に少ないため、一旦庫内が冷えると、その後は小さい冷力(庫内を冷やす能力)で良い。つまり、圧縮機304の回転数は低い状態で運転される。
一方、初めて電源を投入して庫内を速く冷やしたい場合や、熱い食品を庫内に入れたため急速に庫内を冷やしたい場合等では、圧縮機304の回転数を高くし、大きい冷力を確保する必要がある。
こういった場合、整流回路を切替えることによって、必要となる冷力が大きい場合も小さい場合も、電力変換回路の効率を高くでき、消費電力量低減が可能になる。
次に、消費電力量低減に好適な起動シーケンスを図31に示す。
図31に示す通り、運転モードとしては期間A〜期間Dの4つに分けられる。
区間Aは、モータの回転速度がゼロである。つまり、直流の電流が流れることになる。
例えば、通電モード1に固定して電圧を印加した場合は、回転子は−30度の位置に位置決めされる。図32は、通電モード1の電圧印加時の実軸と3相軸の関係図の例である。
ここで、図11の通電モード、およびスイッチング相関係を改めて見ると、通電モード1では、U相+からV相−に電圧が印加される。つまり、U相からV相に電流が流れる。
図32では、この電流を太線矢印で示している。この図から、回転子は−30度の位置に位置決めされることが明らかである。
次に期間Bに移行する際、通電モード3に電圧を印加する。回転子が−30度〜+30度の位置にいる場合は、図11から分かるように、通電モード3の電圧を印加することで、最大トルクが発生し、これによってモータは加速する。
なお、ここでは、期間Aにおいて印加する電圧を通電モード1としたが、もちろん他の通電モードの電圧を印加しても良く、期間Bに移った際に、2モード分、回転方向に通電モードを増加させればよい。
前述した方式によって、通電モードを順次変更することで、モータは加速して回転速度が上昇する。モータの回転速度がN1に達した時点で、通電方式を180度通電方式に切り替える。
さらにモータが加速し、回転速度がN2に達した時点で、整流回路を倍電圧整流回路に切り替える。
上記のように、低速域では、開放相起電圧に基づいた位置推定の120度通電方式を行い、その後、速度起電圧に基づいた位置推定の180度通電方式に切替、さらにその後、整流回路を倍電圧整流回路に切り替えるといった、起動シーケンスによって、冷蔵庫の圧縮機駆動用モータを起動する。これにより、必要最小限の電流によって起動することで消費電力量を低減ができ、かつ、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えることができ、起動失敗せず安定にモータ6を起動させることができ、さらに、整流回路を倍電圧整流回路に切り替えることにより、幅広い速度域でのモータ駆動を実現できるといった効果を得られる。
次に本実施例における、通電方式切替判定器30aについて説明する。
通電方式切替判定器30aの構成図の例を図32に示す。通電方式切替判定器30aは、切替タイミング判定器73と、等から構成され、速度指令値と、電流検出値と、モード切替トリガ信号を入力し、通電方式切替指令を出力する。
通電方式切替判定器30aは、モード切替トリガ信号が発生した際のq軸電流検出値(今回値)Iqc(n)と、前回モード切替トリガ信号が発生した際のq軸電流検出値(前回値)Iqc(n−1)とを比較し、1回、または複数回連続して、q軸電流検出値(今回値)Iqc(n)の方が小さい場合、通電方式切替指令を出力し、通電方式を切替える。
上記の処理をソフトウェアで実現する際の処理フローチャートの例を図34に示す。図34は、通電方式切替指令の出力に関する処理のみを抽出している。そのため、他の処理、例えば、位置推定処理や電圧指令値演算処理は省略している。従って、条件判定後の分岐処理の戻り先は、必ずしも図32の通りで無くても良い。
図34の「m回以上か?」という条件分岐は、1回、または複数回連続して、q軸電流検出値(今回値)Iqc(n)の方が、q軸電流検出値(前回値)Iqc(n−1)より小さいかどうかを判定している。
このように、通電方式切替判定器30aを用いることで、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えるため、起動失敗せず安定にモータ6を起動させることができる。
本実施例の方法によれば、1次遅れフィルタを用いる必要が無いため、フィルタ時定数の設定を気にする必要が無い。つまり、通電方式を切替える回転数が他の条件(例えば、冷蔵庫が置かれている部屋の温度)によって変更する場合などに適した方式である。
また、仮に、通電モードを切り替える所定の位相を表す基準電圧(Vhp、Vhn)の設定が不適切で、力率が悪い状態でモータを駆動している場合は、図20の櫛歯状のq軸電流検出値がより顕著になる。つまり、同じ通電モード間のq軸電流検出値が、通電モードの開始時と終了時で乖離した値になる。こういった場合においても、通電モードを次に進める際のq軸電流検出値の値が、負荷に応じて変化していれば、負荷トルクの影響を受けにくいタイミングで通電方式を切替えることができ、起動失敗せず安定にモータ6を起動させることができる。
ゼロ速度を含む極低速域においても位置検出を行い、トルクに直接寄与する電流だけを与えることが必要になる。つまり、必要最小限の電流によって起動することにより、消費電力量低減が可能なモータ制御装置およびそれを用いた冷凍機および空調機を提供することができる。
以上の説明では、整流回路切替手段を用いた構成について説明した。これ以外にも、例えば、電力変換回路に昇降圧コンバータを付加し、直流電圧を最適な値に制御する方式も有効で、本願のモータ制御装置と組み合わせることで同様の効果を得られる。
この場合、図31の期間A〜期間Cにおいては降圧コンバータとして動作させ、期間Dにおいて昇圧コンバータとして動作をさせると、効果的である。
各実施例に関わるモータ制御装置、およびそれを用いた駆動装置、冷凍機、空調機の制御部2の多くは、マイコン(マイクロコンピュータ)やDSPなどの半導体集積回路(演算制御手段)によって構成され、ソフトウェアなどで実現していることが多い。そのため、制御部2が正しく構成されているか、検証することが難しいという課題がある。そこで、本実施例においては、各実施例に関する構成が正しく動作しているかを検証する方法について、図35を用いて説明する。図35は、検証する際の構成図の例である。
なお、実施例1および2に示した、同一の符号を付された構成と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
以下、検証手段90について説明する。測定が必要な値は、モータまたは電力変換回路の交流出力の3相電流、または電力変換回路5の直流側のシャント抵抗25に流れる電流と、ドライブ信号(ゲート信号)、またはモータの端子電圧か電力変換回路の出力電圧、モータ6の磁極位置、である。
3相電流は、例えば、CT91(91a、91b、91c)で測定できる。シャント抵抗25に流れる電流は、シャント抵抗の両端の電圧を電圧検出器92で測定し、シャント抵抗の値で除算し電流値を求める。ドライブ信号(ゲート信号)は、制御部2もしくはゲートドライバ回路23の基準電位からの電位差で測定できる。出力電圧は、直流電圧源20のN側と各端子間の電圧を電圧計93(93a、93b、93c)で測ることで測定できる。もしくは、各相の線間電圧を測定してそこから算出しても良い。モータ6の磁極位置は、例えば、エンコーダ等を用いた磁極位置センサ94を取り付けることで測定できる。
3相電流値またはシャント抵抗に流れる電流と、磁極位置を3φ/dq座標変換器95に入力し、q軸電流を得る。3φ/dq座標変換器95は、例えば、数9式を用いて3相軸上の電流をd−q軸上の電流に座標変換でき、q軸電流を得る。
ここで、θdは、モータ6の磁極位置である。
検出したq軸電流値を電流判定手段96に入力する。電流判定手段96は、通電方式切替判定器30または通電方式切替判定器30aと同じ構成とする。
例えば、通電方式切替判定器30と同じ構成とした場合、検出したq軸電流値とそれを1次遅れフィルタ処理をしたq軸電流値を比較し、数5式を満たす期間を得る。同時に、電圧判定手段97入力した、ドライブ信号(ゲート信号)、またはモータの端子電圧か電力変換回路の出力電圧の波形から、120度通電方式か180度通電方式かを判別する。
通電方式の判別は、例えば、図7、図21、図22を参考にすれば良い。
以上のように、3相電流またはシャント抵抗に流れる電流、およびドライブ信号(ゲート信号)またはモータの端子電圧か電力変換回路の出力電圧を測定することにより、各実施例に関わる構成をソフトウェアなどで実現した場合においても、正しく動作しているかを検証することができる。
なお、本実施例では、モータ6の磁極位置を検出する方式について説明したが、磁極位置の情報は必須では無い。なぜなら、q軸電流値は3相交流電流の振幅に等しい、もしくは比例する。従って、例えば、シャント抵抗25に流れる電流を観測しても、図20のq軸電流検出値と略同じ波形を得られる。そのため、シャント抵抗25に流れる電流を電流判定手段96に入力しても、各実施例に関わる構成を検証することができる。シャント抵抗25に流れる電流を用いると、検証手段90の入力値を減らせるため、部品点数、基板面積縮小、信頼性向上、等といった効果が得られる。
また、電流判定手段96は、ハードウェアで実現することも可能である。例えば、1次遅れフィルタを抵抗とコンデンサによるアナログ回路で実現できる。また、オシロスコープといった測定器には、フィルタ演算機能を有する測定器がある。こういった測定器を用いれば、3相電流値のみを検出すれば、最も簡便に各実施例に関わる構成をソフトウェアなどで実現した場合においても、正しく動作しているかを検証することができる。
実施例2に記載した、起動シーケンスについて確認する場合は、磁極位置またはドライブ信号を速度変換手段98に入力し、モータの回転速度を同時に得ることで容易に検証できる。整流回路切替を検証するためには、直流電圧源20の電圧値を測定すれば良い。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手続き等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記の各構成や機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現しても良い。
モータは、永久磁石モータとして説明したが、その他の電動機(例えば、誘導機、同期機、スイッチトリラクタンスモータ、シンクロナスリラクタンスモータなど)を用いても構わない。その際、電動機によっては電圧指令値作成器での演算方法が変わるが、それ以外については同様に適用でき、本願の目的を達成可能である。
モータの位置検出を行う手段は、120度通電方式として開放相起電圧に基づいた構成について説明し、180度通電方式では速度起電圧に基づいた構成について説明した。しかし、各実施例の構成から分かるように、各通電方式におけるモータ6の回転角度位置の検出(あるいは推定)手段や方法は上記の実施例に記載の方式に限らない。例えば、120度通電方式では開放相で速度起電圧を検出する方式や、180度通電方式では高調波を重畳して回転角度位置を検出する方式など、モータの位置検出を行う手段は他の方式を用いても、本願の目的を達成可能である。
1 モータ制御装置
2 制御部
3 電圧指令値作成器
5 電力変換回路
6 モータ(電動機)
7 電流検出手段
30 通電方式切替判定器
31 通電方式切替器
40 120度用位置推定手段
41 180度用位置推定手段
51 切替トリガ発生器
52 非通電相電位選択器
53 基準レベル切替器
54 比較器
55 通電モード切替器
60 開放相電圧検出手段
301 冷蔵庫
500 負荷(圧縮機構部)
502 シャフト

Claims (6)

  1. 直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御器と、前記電力変換回路によって駆動される電動機と、前記電動機に接続される負荷とを備え、前記電力変換回路の通電方式を120度通電方式と180度通電方式とを切り替えるモータ制御装置において、
    前記電力変換回路の直流側または交流側の電流を検出し、前記電動機の1回転中の期間における前記電流がピーク値を越えた時点から再び上昇に転ずるまでの期間に120度通電方式から180度通電方式切替えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1において、
    前記負荷は、ピストン及びシリンダを備える圧縮機構部であることを特徴とするモータ制御装置。
  3. 直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御器と、前記電力変換回路によって駆動される電動機と、前記電動機に接続される負荷とを備え、前記電力変換回路の通電方式を120度通電方式と180度通電方式とを切り替えるモータ制御装置において、
    前記電動機のトルクに比例する電流を検出し、該電流を遅れ要素を備える低域通過フィルタ処理した値を取得し、前記電流の検出値よりも前記低域通過フィルタ処理した値が大きい期間に通電方式を切替えることを特徴とするモータ制御装置。
  4. 直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御器と、前記電力変換回路によって駆動される電動機と、前記電動機に接続される負荷とを備え、前記電力変換回路の通電方式を120度通電方式と180度通電方式とを切り替えるモータ制御装置において、
    通電方式を120度通電から180度通電に切り替える際、120度通電の通電モード切替トリガ信号が発生した時の電流が、この時の1回前に通電モード切替トリガ信号が発生した時の電流よりも小さい場合に通電方式を切替えることを特徴とするモータ制御装置。
  5. 直流電力を交流電力に変換する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御器と、前記電力変換回路によって駆動される電動機と、前記電動機に接続される負荷とを備え、前記電力変換回路の通電方式を120度通電方式と180度通電方式とを切り替えるモータ制御装置において、
    通電方式を120度通電から180度通電に切り替える際、120度通電の通電モードが切替トリガ信号が発生した時の電流が、この時の1回前に発生した通電モード切替トリガ信号が発生した時の電流よりも小さいことが複数回連続で生じた場合に通電方式を切替えることを特徴とするモータ制御装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のモータ制御装置を備えた冷凍機。
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