JP5975363B2 - 船体流体抵抗低減装置 - Google Patents
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Description
造波抵抗を低減させるための手段としては、船首部の船体底部の形状をバルバスバウ(球状船首)にすることによって、造波抵抗を低減する方法がある。例えば、満載時や軽荷時での造波抵抗を低減する手段が特許文献6に、また喫水の変化や海流条件に対応した船首バルブにフインを装備した形状が特許文献7に開示されている。
いずれにしても、従来の船体の流体抵抗低減装置は、摩擦抵抗と造波抵抗の両方に有効な流体抵抗低減装置ではないことから、抵抗低減効果も限界があり、顕著な流体抵抗の低減効果は期待できない。
従来技術の船体外板に設けた多数の噴出口やノズルなどにより気泡を船体表面に向けて吹き出す方法は、噴出流による流れの乱れが大きく、船体表面を効率よくマイクロバブルで覆うことはできない。このため、本発明では、流れが一様で幅広な吐出し流れを有するマイクロバブル発生貫流ポンプを利用した流体抵抗低減装置を主体に提供する。また、別の方法として船体表面近くの流れの中にノズルを設置する簡易的な流体抵抗低減装置についても提供する。
請求項1に記載の発明は、船体側面における摩擦抵抗の低減と船首部に発生する造波抵抗低減のための流体抵抗低減装置で、羽根車中心部に微細気泡発生機構を有するマイクロバブル発生貫流ポンプを、船首部の水面下の船体側面外板に設置し、その貫流ポンプ本体の上方すぐ上に、前記貫流ポンプ全体を覆う平板翼を船体側面外板に略平行に設置した構成からなる。これにより航行時に船首部に向かう水流が直接船首部に当たらず、平板翼を備えた前記貫流ポンプの吸込み口に吸込まれ、船首部近傍の流れが制御されるため、造波抵抗が低減される。同時に、前記貫流ポンプからのマイクロバブルの船体側面に沿う吐出し流れが側面を覆うことにより、船体側面の摩擦抵抗も低減される。
請求項2に記載の発明は、前記平板翼を前記貫流ポンプの吸込みケーシングの上面に直接取り付けて一体化した流体抵抗低減装置である。
上記くし型タイプの平口ノズルの上方すぐ上に、当該ノズル装置全体を覆う平板翼を船体表面に略平行に設置した構成にすれば、船体表面に沿うノズルの噴出流を安定させる。
上記数種の流体抵抗低減装置のそれぞれを使用条件に合わせて船体に装備すれば、船体の側面と底面の摩擦抵抗、および船首部に発生する造波抵抗を同時に低減できるという高度の省エネ技術を提供できることになる。
本実施例の装置構成は、まず、羽根車中心部に微細気泡発生機構を有するマイクロバブル発生貫流ポンプ50を船首部の船の側面外板に設置したリニアレール30の上を走行するスライドプレート31に取り付けた構成にする。本例は水面下の適正な位置に調整しながらポンプ2台をセットできるようにしたもので、貫流ポンプの吸込み口と吐出し口の方向は水流と同方向で、吐出し流れが船体表面に沿うように、ケーシング形状をアレンジしている。次に前記マイクロバブル発生貫流ポンプ50本体の上方すぐ上に貫流ポンプ全体を覆う平板翼55を船体側面外板に略平行に設置した構成にする。これにより、船首部へ向かう水流は図3の断面図に示すように、平板翼55の内側と外側に分かれて流れるようになる。ポンプ入口部には、ゴミ除けのためにスクリーン60を取り付けている。
また、水中モータ12を含めて全体が矩形にコンパクトにまとまるので、図2に示すようにリニアレール30の上を走行するスライドプレート31に都合よく容易に取り付けられる。スライドプレート31を自走型にすれば、作業効率は良くなる。
図5は、本発明に係るマイクロバブル発生貫流ポンプ50と気液混合加圧液供給装置45の関係を示す概念図である。マイクロバブルの発生機構は、気液混合チャンバー40で気体と液体を合流させて生成された気泡を含む気液混合液を加圧ポンプ42に取り込んで、加圧した微細気泡含有気液混合加圧液を貫流ポンプの羽根車7内に挿入したノズルに供給する構成である(詳細は後述)。
一方、貫流ポンプの吐出し流れの特性は、前述のように幅広のシート状で乱れも少なく、拡散せずに遠くまで達することができること、またコアンダ効果(流れが物体表面に沿って流れる効果)により、図3の断面図および図4の拡大図に示すように貫流ポンプ50から吐出されたマイクロバブルの流れが曲率のある船の側面外板70bに沿って流れるので、船体表面を薄い層のマイクロバブルで効率よく覆うことができる。従って摩擦抵抗を効率よく低減させることができる。
このように、本発明では、従来と異なり、造波抵抗と摩擦抵抗の両方を同時に低減することができるという優れた特徴を持っている。
羽根車を高速回転すると、羽根にキャビテーションが発生しやすくなる。キャビテーションはポンプの性能低下の原因になるが、適度のキャビテーションの発生は、微細気泡の発生源となり、その吐出し気泡流は船体表面の摩擦抵抗を低減するため、本実施例ではプラス効果となる。
ポンプのメンテナンスは、ポンプがリニアレール30上を上下に走行できるので容易である。リニアレール30の替わりにH型鋼タイプを使用してもよい。又は、後述の実施例3に示すようにパイプやポールをガイドにしてスライドして走行するスライドプレート34に、マイクロバブル発生貫流ポンプ50取り付けた構成にしてもよい。(請求項6に関連)
ゴミ除けスクリーン60にゴミが附着した場合は、羽根車を逆回転してポンプの吐出し口から吸込み口へ逆流させれば、取り除くことができる。
本実施例では、図1に示す流体抵抗低減装置80とは異なり、平板翼56をマイクロバブル発生貫流ポンプ50の吸込みケーシング21(図4参照)の上面に直接取り付けて、前記平板翼56で貫流ポンプ全体を覆い、前記貫流ポンプと平板翼を一体化した構成である。
図7に流体抵抗低減装置81を船首部の船体側面に取り付けた場合の断面図およびマイクロバブル流れの状態を示す。第2実施例におけるマイクロバブル発生に関する基本的な装置構成や船体まわりの流れの状況は第1実施例と同様である。
本実施例では、図8に示すようにマイクロバブル発生貫流ポンプ50bを船首部の中空立抗75の垂直壁面76に設置したリニアパイプ32をガイドにしてスライドリング33により走行するスライドプレート34に取付けた構成にし、ポンプの吐出し流れが船の平坦な底面に沿って、船首部から船尾に向かって流れるように該貫流ポンプを横置きにして水面下の船底近くに設置した構成である。マイクロバブル発生に関する基本的な装置構成は、実施例1と同様である。
中空立抗75は、立抗上面が水面より上にあればよく、上甲板を突き抜けなくてもよい。中空立抗75の中を満たす海水は、水流が船首部に当たる衝突圧を緩和するダンパーの役割をし、船の縦揺れや横揺れの揺動を安定化させる働きもある。
本発明のように、平口ノズル4を船底面近傍の流れの中に据付けて、ノズルの噴流が流れと同方向になるように設定することにより、平口ノズルからの噴出流が船体に沿う外流と同方向の流れの中に安定した流れとなって、またコアンダ効果によるマイクロバブルの流れが曲率のある船体表面を覆うことにより、摩擦抵抗が顕著に低減される。
この実施例では、分岐管11bは、剥離渦が生じないように外形を翼型にし、平口ノズル4bからの噴流が船体側面に沿うように調整している。また、本図では、ノズルからの噴出流を安定させるために、くし型ノズル18bの上方すぐ上に、当該くし型ノズル全体を覆う平板翼57を船体側面に略平行に設置した構成を示す。同様に前記実施例4におけるくし型ノズル18においても、平板翼を備えた方がノズルからの噴出流は安定する。
船体側面の摩擦抵抗低減のためには、特に気泡径を十分に小さくして浮力の影響を小さくする必要があることから、平口ノズル4bには、気体のみの供給でなく、実施例1と同様に、気液混合加圧液供給装置45により生成された微細気泡含有気液混合加圧液を供給した方がよい。
従来技術では、前述のように船体外板に設けた多数の噴出口やノズルからマイクロバブルを船体表面に向けて吹き出すため、噴出流の乱れが大きく拡散しやすく、気泡も船体表面から離れやすくなるため、船体表面を効率よくマイクロバブルで覆うことができない。本発明のように、平口ノズル4bを実施例4と同様に船体表面近傍の流れの中に据付けて、ノズルの噴出流が流れと同方向になるように設定して噴流を安定させることにより、また、コアンダ効果により、平口ノズルからの噴出流が曲率のある船体表面をマイクロバブルで覆うことができる。従って、摩擦抵抗が顕著に低減される。
船体側面の摩擦抵抗の低減と船首部の造波抵抗の低減には、実施例1と同様の縦置きのマイクロバブル発生貫流ポンプ50と平板翼55を組み合わせた流体抵抗低減装置80を船首部の船体側面に設置した構成にし、船体底面における摩擦抵抗の低減には、実施例3と同様の横置きのマイクロバブル発生貫流ポンプ50bを中空立抗75の船底部に設置した構成である。
また、船首部側面外板に設置した平板翼55を備えた流体抵抗低減装置80により、前述のように船首部近傍の水流が制御され、水面波を抑制するため、造波抵抗は顕著に低減される。従って、実施例6では、航行時における船体の底面と側面の摩擦抵抗、および船首部における造波抵抗も低減されるため、従来と異なり、航行時の船全体における流体抵抗を総合的に低減することが出来るという優れた省エネ効果を有する。
また、上記実施例では、マイクロバブル発生貫流ポンプ50、50bは、メンテナンスの利便性を考慮して、リニアレール30やリニアパイプ32の上を走行するスライドプレート32、34に設置したが、船首部の船体底面と船体側面外板に直接設置してもよい。
図16(a)と図17(a)は、散気孔タイプのノズル3、3bのノズル先端が羽根車内に突き出した状態、図16(b)と図17(b)は、ノズルの先端を駆動側の羽根車ボス部に差し込んで、ノズルの振れ止め防止と散気孔部が羽根車全体に渡っている状態を示す。図17の専用モータ駆動によるノズル3bのタイプでは、ノズル3bを羽根車の回転に関係なく、自在に高速回転できることから、図17のノズル3bの方が図16のノズル3のタイプより細かな気泡が得られる。これら数種のノズルタイプは、使用状況に応じて、使い分けられる。
加圧ポンプとしては比速度の小さい遠心ポンプや渦流ポンプ(ウエスコポンプ)などの高揚程のポンプが適している。あるいは容積式の偏芯ロ−タを持つベーン形のポンプでも良い。気液混合液を加圧するのは、気液混合液中の微小気泡に圧力をかけて微細化してノズルに供給し、散気孔やノズルからの噴出後の減圧が気泡のマイクロバブル化に非常に有効であることによる。
従来は、主にブロワにより気体を噴出口より吹き出す手法がとられているが、気体のみの噴出では気泡同士が結合しやすいことから、気泡の微細化は十分ではない。気体のみをノズルより噴出させて十分な微細気泡を得るためには、図17(c)に示すように、散気孔タイプのノズル3bをサブモータ20により高速回転させて気体を噴出する必要がある。
4,4b 平口ノズル
5 噴出口(散気孔タイプのノズルの小孔)
6 羽根(貫流ポンプ)
7 貫流ポンプ羽根車
8 ケ−シング舌部
10 筒型タイプのノズル
11,11b 分岐管(くし型ノズル)
12 水中モ−タ
13 供給ホース
14 水面
16,16b 羽根車中空回転軸
18,18b くし型ノズル
20 サブモ−タ(中空回転軸)
21 ポンプ吸込みケーシング
22 ポンプ吐出しケーシング
25,25b 羽根車中空回転軸用軸受
29 散気孔パイプ軸受
30 リニアレール
31,34 スライドプレート
32 リニアパイプ
33 スライドリング
36 二重管ユニット
37 二重管ユニット内管
38 二重管ユニット外管
39 小孔(気体吹込み孔)
40 気液混合チャンバー
42 加圧ポンプ
43 ブロワ
45 気液混合加圧液供給装置
49 段差修正ブロック
50,50b マイクロバブル発生貫流ポンプ
55,56,57 平板翼
60 スクリーン
70 船
70b 船の側面外板
75 船首部中空立抗
76 中空立抗垂直壁面
80,81 流体抵抗低減装置
B 微細気泡(マイクロバブル)
D ポンプの吐出し流れ(船体表面に沿うマイクロバブルの流れ)
F 外流(船の速度や海流に関係する船体近傍を通り過ぎる流れ)
J,J2 ノズルより羽根車内に噴出する微細気泡流
K 後流渦
S 剥離渦
R 水面波
Claims (6)
- 円筒状で多翼の羽根車を有し、羽根車中心部に微細気泡発生機構を有するマイクロバブル発生貫流ポンプを、船首部水面下の船体側面外板に、ポンプの吸込み口と吐出し口の方向が水流と同方向になるように設置した構成において、前記マイクロバブル発生貫流ポンプ本体の上方すぐ上に、該貫流ポンプ全体を覆う平板翼を船体側面外板に略平行に設置した構成にすることによって、航行時に、該貫流ポンプによる吸込み、吐出し流れに伴う、船首部からの水流の制御と前記貫流ポンプ背後に発生する渦による乱れを抑制することにより、船首部に発生する造波抵抗と船体側面に発生する摩擦抵抗の両方を効果的に低減することを特徴とする船体流体抵抗低減装置。
- 請求項1に記載の船体流体抵抗低減装置において、前記平板翼を前記マイクロバブル発生貫流ポンプのポンプ吸込み側ケーシング上面に直接取り付けて、前記貫流ポンプ全体を覆うようにし、該マイクロバブル発生貫流ポンプと該平板翼が一体化した装置にすることを特徴とする船体流体抵抗低減装置
- 船首部の左舷と右舷の間の部分を上甲板方向から水面に向かって中空にした立抗にし、その中空立抗後部の略垂直壁面の船底近傍に、円筒状で多翼の羽根車を有し、羽根車中心部に微細気泡発生機構を有するマイクロバブル発生貫流ポンプを横置きにして設置し、該貫流ポンプからの微細気泡の船体底面に沿う吐出し流れによって、航行時の船体底面の摩擦抵抗を低減することを特徴とする船体流体抵抗低減装置
- 請求項3に記載の船体流体抵抗低減装置において、中空立抗の略垂直壁面の船底面近傍の流れの中に、ノズルの先端口を平口形、又は円形にした、くし型ノズルを設置し、ノズルからの船底面に沿う微細気泡の噴出流により、船体底面表面を微細気泡で覆うことによって、航行時の船体底面の摩擦抵抗を低減することを特徴とする船体流体抵抗低減装置
- 船首部水面下の船首部から船尾へ向かう船体側面近傍の水流の中の船体側面から離れたところに、ノズルの先端口を平口形にした、くし型ノズルを設置し、該ノズルの先端口からの微細気泡の噴出流が、流れと同方向になるようにし、航行時の船体側面の摩擦抵抗を低減することを特徴とする船体流体抵抗低減装置
- 請求項1又は請求項2に記載の船体流体抵抗低減装置において、船首部船体側面外板上、又は請求項3に記載の船体流体抵抗低減装置において、中空立抗の略垂直壁面上、に垂直方向に設置したパイプやポ−ルをガイドにしてスライドして走行するスライドプレ−トに前記マイクロバブル発生貫流ポンプを取り付けた構成にし、マイクロバブル発生貫流ポンプを上下に走行可能として、ポンプの据付け調整やメンテナンスを容易にしたことを特徴とする船体流体抵抗低減装置。
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