≪吐出システム10の装置構成について≫
以下、本発明の一実施形態に係る吐出システム10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、吐出システム10は、吐出装置20と、充填装置100と、流動体供給源160と、制御装置170とを主要な構成として備えている。吐出システム10は、吐出装置20を充填装置100に対して接続することにより、流動体供給源160から供給されてきた流動体を吐出装置20に対して充填可能とされている。また、吐出システム10は、吐出装置20を充填装置100から分離させた状態で作動させることにより、充填されている流動体を塗布等のために吐出可能とされている。すなわち、吐出システム10は、吐出装置20に対して流動体供給用の配管あるいはホース等を非接続の状態において、充填装置100や流動体供給源160に対して独立的に吐出装置20を作動させ、流動体を塗布等することができるシステム構成とされている。
図2に示すように、吐出装置20は、吐出側緩衝部22(緩衝装置)と、吐出部24と、吐出側脱着部26とを具備している。吐出側緩衝部22は、吐出用の流動体を吐出部24に充填するために吐出装置20と充填装置100とを接続あるいは分離することに伴う吐出装置20の内圧変動を緩衝するために設けられたものである。吐出側緩衝部22は、タンク等の容器によって構成することが可能であるが、本実施形態では、本実施形態では吐出側緩衝部22として図3に示すようなシリンダ機構30を備えたものが採用されている。
具体的には、図3(b)に示すように、吐出側緩衝部22は、いわゆるエアシリンダによって構成されたシリンダ機構30を備えている。シリンダ機構30は、ケーシング32と、ピストン34とを備えている。図3(c)に示すように、吐出側緩衝部22は、駆動源たる空気供給源から圧縮空気を供給可能とされている。
図3(b)に示すように、ケーシング32は、下側ケーシング38と、上側ケーシング40との組み合わせによって構成される容器である。下側ケーシング38と上側ケーシング40との接続部分には、それぞれ雌ネジ38a及び雄ネジ40aが形成されており、両者を螺合させることによりケーシング32が組み立てられている。また、下側ケーシング38の下端部(雌ネジ38aとは反対側)には、接続部38bが設けられている。
ピストン34は、ケーシング32の内部において、ケーシング32の軸線方向に自由にスライド可能とされている。ピストン34は、ピストン本体34aに対してピストンアダプタ34bを介してピストンロッド34cを接続した構成とされている。ピストン34は、ケーシング32内の空間を上側ケーシング40側の第一室42と、下側ケーシング38側の第二室44とに区画している。第一室42は、駆動源たる空気供給源から供給された圧縮空気がケーシング32に設けられたポート46を介して導入される区画であり、第二室44は、流動体が流出入する区画である。シリンダ機構30は、駆動源を作動させることにより、第二室44の容積を変動させうる。第二室44は、接続部38bと連通しており、接続部38bを介して第二室44に対して流動体を流出入させることができる。
また、吐出緩衝部22には、ピストン34の位置により充填量を検出するための充填量検出手段(図示せず)が設けられている。充填量検出手段は、いかなるものによって構成されていても良い。具体的には、ピストン34に設けられたマグネット(図示せず)が検知範囲内に出入りすることにより接点がオン状態、及びオフ状態に切り替わるオートスイッチを充填量検出手段として採用し、ピストン34の可動範囲の上限位置及び下限位置に設けた構成とすることができる。また、吐出緩衝部22の内圧を検知可能な圧力センサを充填量検出手段として採用することができる。この場合、内圧の上限値及び下限値を予め規定しておくことにより、内圧が上限値に達することでピストン34が上限位置に到達したものと判断し、内圧が下限値に達することでピストン34が上限位置に到達したものと判断することができる。
吐出部24は、回転容積式のポンプによって構成されている。本実施形態において、吐出部24は、いわゆる一軸偏心ねじポンプによって構成されている。吐出部24は、ケーシング50の内部に、ロータ52、ステータ54、及び動力伝達機構56等を収容した構成とされている。ケーシング50は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部60が設けられている。また、ケーシング50の外周部分には、第二開口部62が設けられている。第二開口部62は、ケーシング50の長手方向中間部分に位置する中間部64においてケーシング50の内部空間に連通している。
第一開口部60及び第二開口部62は、それぞれ吐出部24をなす一軸偏心ねじポンプの吸込口及び吐出口として機能する部分である。吐出部24は、ロータ52を正方向に回転させることにより、第一開口部60を吐出口、第二開口部62を吸込口として機能させることができる。また、メンテナンス等のためにロータ52を逆方向に回転させることにより、第一開口部60を吸込口、第二開口部62を吐出口として機能させ、ケーシング50の内部空間等の洗浄等を行うことができる。
ステータ54は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ54の内周壁66は、n条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ステータ54は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。また、ステータ54の貫通孔68は、ステータ54の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
ロータ52は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雄ねじ形状とされている。本実施形態においては、ロータ52は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ52は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ52は、上述したステータ54に形成された貫通孔68に挿通され、貫通孔68の内部において自由に偏心回転可能とされている。
ロータ52をステータ54に対して挿通すると、ロータ52の外周壁70とステータ54の内周壁66とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ54の内周壁66とロータ52の外周壁70との間に流体搬送路72(キャビティ)が形成される。流体搬送路72は、ステータ54やロータ52の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
流体搬送路72は、ロータ52をステータ54の貫通孔68内において回転させると、ステータ54内を回転しながらステータ54の長手方向に進む。そのため、ロータ52を回転させると、ステータ54の一端側から流体搬送路72内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路72内に閉じこめた状態でステータ54の他端側に向けて移送し、ステータ54の他端側において吐出させることが可能である。
動力伝達機構56は、駆動機74から上述したロータ52に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構56は、動力伝達部76と偏心回転部78とを有する。動力伝達部76は、ケーシング50の長手方向の一端側に設けられている。また、偏心回転部78は、中間部64に設けられている。偏心回転部78は、動力伝達部76とロータ52とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部78は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸98を備えている。そのため、偏心回転部78は、駆動機74を作動させることにより発生した回転動力をロータ52に伝達させ、ロータ52を偏心回転させることが可能である。
図2に示すように、吐出側脱着部26は、上述した吐出部24をなすケーシング50に対して接続されている。図2(c),(d)に示すように、吐出側脱着部26は、吐出側脱着部本体80に対し、吐出側接続具82とピン84とを取り付けた構成とされている。吐出側脱着部本体80は、円筒状の筒部80aの基端部に矩形状の接続部80bを設けた構成とされている。筒部80aの先端側には、吐出側接続具82を嵌め込むための嵌込部80cが設けられている。また、筒部80aの内部には、嵌込部80cから接続部80bに亘って貫通するように連通路80dが形成されている。吐出側脱着部本体80は、連通路80dと、吐出部24に設けられた第二開口部62とが連通した状態になるように位置決めされた状態でケーシング50に対して取り付けられている。また、筒部80aの先端側の外周部には、Oリング等のシール部材86が取り付けられている。
吐出側接続具82は、後に詳述するように、充填装置100に設けられた充填側接続具134との組み合わせにより、吐出装置20と充填装置100とを接続するための接続装置140を構成するものである。吐出側接続具82は、充填側接続具134に差し込まれる雄型のプラグである。吐出側接続具82は、吐出側脱着部本体80の筒部80aに設けられた嵌込部80cに嵌め込まれ、連通路80dと連通している。
ピン84は、後に詳述するように、充填装置100側に設けられた鉤溝144との組み合わせにより離反防止機構150を構成するものであり、吐出装置20と充填装置100とを接続する際に両者を位置決めし、吐出装置20と充填装置100との離反を抑制するために使用される。ピン84は、筒部80aの基端側(接続部80b側)の位置において、筒部80aの外周面に対して略垂直方向に突出するように設けられている。ピン84は、筒部80aに対して2本、周方向に略180度の間隔を開けて設けられている。
図1に示すように、吐出装置20は、いわゆる多関節ロボット等のように複数軸の自由度を有するマニピュレータ90に対して取り付けられている。そのため、吐出装置20をマニピュレータ90により移動させつつ、吐出装置20から流動体を吐出させることにより、予め規定されている流動体の塗布パターンに則って流動体を各種部品等に塗布することができる。また、図9〜図12に示す順でマニピュレータ90により吐出装置20を移動等させ、吐出側接続具82と後に詳述する充填側接続具134とを位置合わせした状態で近接させることにより、吐出装置20と充填装置100とを接続することができる。またこれとは逆の動作をさせることにより、吐出装置20と充填装置100とを分離させることができる。
充填装置100は、吐出装置20に対して流動体を充填するための充填ステーションとして機能するものである。図1及び図5に示すように、充填装置100は、充填側緩衝部102(緩衝装置)と、充填側脱着部104と、バルブ106とを備えている。充填側緩衝部102は、吐出部24に対する流動体の充填のために吐出装置20及び充填装置100を接続及び分離することに伴う充填装置100内の内圧変動を緩衝するために設けられたものである。充填側緩衝部102は、タンク等の容器、あるいは上述した吐出側緩衝部22と同様にシリンダ機構30を備えたものとすることが可能であるが、本実施形態では図6(d)に示すようなアブソーバ機構110を備えたものとされている。
具体的には、アブソーバ機構110は、ケーシング112と、ピストン114と、スプリング116とを備えており、スプリング116の弾性力を利用して作動させうる構成とされている。ケーシング112は、円筒状の筒体であり、軸線方向一端側に接続部118を有する。また、ピストン114は、ケーシング112の内部において軸線方向に自由にスライド可能とされている。ピストン114は、ピストン本体114aに対してピストンロッド114bを接続した構成とされている。ケーシング112の内部空間は、ピストン本体114aを介して一方側の第一室122と、他方側において接続部118と連通した第二室120とに区画されている。スプリング116は、第一室122内に設けられている。これにより、ピストン本体114aが第二室120側に付勢されている。接続部118を介して流動体が流入すると、スプリング116の付勢力に反してピストン本体114aが第一室122側に押し戻され、第二室120が拡張する。
図5に示すように、充填側脱着部104は、充填側脱着部本体130に対して密閉空間形成体132を接続して一体化した構成とされている。図6(d)に示すように、充填側脱着部本体130は、中空の嵌込部130aを有すると共に、嵌込部130aと連続し天面側に突出するように形成された接続部130bとを備えている。嵌込部130aには、後に詳述する充填側接続具134が嵌め込まれ、一体化されている。また、接続部130bの外周部には、Oリング等のシール部材136が装着されている。
また、充填側脱着部本体130は、嵌込部130aと連通するように形成された連通路130cを備えている。さらに、連通路130cの両端には、接続用ポート130d,130eが設けられている。接続用ポート130dには、充填側緩衝部102の接続部118が配管接続されている。また、接続用ポート130eには、バルブ106が配管接続されている。
充填側接続具134は、吐出装置20側に設けられた吐出側接続具82との組み合わせにより吐出装置20と充填装置100とを接続するための接続装置140を構成するものである。充填側接続具134は、吐出側接続具82が差し込まれる雌型のソケットである。充填側接続具134には、ストップバルブ機構等のバルブ機構(図示せず)が内蔵されている。充填側接続具134は、充填側脱着部本体130の嵌込部130aに嵌め込まれて一体化され、充填側脱着部本体130内に形成された連通路130cと連通している。
図5に示すように、密閉空間形成体132は、上述した充填側脱着部本体130の天面側に着脱可能なように接続される筒状の部材である。具体的には、密閉空間形成体132は、周方向に複数(本実施形態では4つ)、軸線方向に延びるように設けられたボルト挿通孔132aにボルト138を挿通し、充填側脱着部本体130の天面に設けられているネジ孔130fに各ボルト138を締結させることにより、充填側脱着部本体130と一体化されている。充填側脱着部本体130及び密閉空間形成体132の一体化に際し、密閉空間形成体132の底面(充填側脱着部本体130側)に設けられたピン孔(図示せず)、及び充填側脱着部本体130の天面側に設けられたピン孔130gに亘って位置決ピン142が装着される。これにより、充填側脱着部本体130及び密閉空間形成体132が周方向に一定の位置関係となるように位置決めされた状態で接続されている。また、接続部130bの外周部に装着されているシール部材136により、充填側脱着部本体130及び密閉空間形成体132の間がシールされている。
密閉空間形成体132をなす筒体の上端部(充填側脱着部本体130とは反対側の端部)には、鉤溝144が形成されている。鉤溝144は、吐出装置20側に設けられているピン84との組み合わせにより、離反防止機構150を構成するものである。離反防止機構150は、充填装置100から吐出装置20に向けて流動体を充填する際に作用する力により、吐出装置20と充填装置100とが離反しないように保持するための機構である。具体的には、鉤溝144は、正面視が略「L」字型の溝であり、密閉空間形成体132の上端部に向けて解放された溝部分と、密閉空間形成体132の周方向に延びるように形成された溝部分とが連続したものである。従って、吐出装置20の吐出側脱着部26に設けられたピン84と鉤溝144とを位置合わせした状態において、吐出側脱着部26を密閉空間形成体132内に差し込んで周方向に回転させることにより、ピン84が鉤溝144から抜けないように係合させることができる。
密閉空間形成体132の外周部には、排気ポート(図示せず)が設けられている。排気ポートは、密閉空間形成体132の内外を連通するように接続されている。図1に示すように、密閉空間形成体132は、排気ポートを介して真空ポンプ等の減圧装置148に対して接続されている。
流動体供給源160は、流動体が貯留された貯留槽162から流動体を汲み上げ、充填装置100に圧送することができる。流動体供給源160は、充填装置100に設けられたバルブ106に対して配管接続されている。そのため、バルブ106を適宜開閉することにより、充填装置100に対する流動体の供給制御を実施できる。
制御装置170は、吐出システム10を構成する吐出装置20、マニピュレータ90、充填装置100、流動体供給源160等、各部の動作制御を実施するためのものである。制御装置170は、吐出装置20による流動体の吐出動作、マニピュレータ90の動作、吐出装置20及び充填装置100を中心として実施される流動体の充填動作等について、動作制御することができる。
≪吐出システム10の動作について≫
以下、図7に示すフローチャート、及び図8に示すタイミングチャートを参照しつつ、上述した吐出システム10の動作について吐出装置20に対する流動体の充填動作を中心に説明する。吐出システム10は、ステップ1において吐出装置20が作動し、流動体の吐出動作が実施される。吐出装置20の作動後、ステップ2において流動体を吐出装置20に対して充填すべきであるとの要求が出力されたとの判断が制御装置170によってなされた場合には、制御フローがステップ3に移行する。ここで、吐出装置20への流動体の充填要求の有無についての判断は種々の判断基準に基づいて実施することが可能であるが、例えば吐出装置20に設けられた吐出側緩衝部22の内圧を検知可能とされた圧力センサ(図示せず)が所定の圧力以下になることを条件として、吐出側緩衝部22内においてピストン34が下限位置に到達し、流動体の充填要求がオン状態になったものと判断することが可能である。また、ピストン34の位置に応じてオンオフするオートスイッチを充填量検出手段として採用した場合には、このオートスイッチの検知結果に基づきピストン34が下限位置に到達したとの判断がなされた場合に、流動体の充填要求がオン状態になったものと判断することができる。
ステップ2において流動体充填要求が有るものと判断され、制御フローがステップ3に移行すると、図9に示すようにマニピュレータ90により吐出装置20が充填装置100側に移動される。その後、図10に示すように、吐出装置20側に設けられた吐出側脱着部本体80の筒部80aが、充填装置100側に設けられた筒状の密閉空間形成体132の上端部から差し込まれる。本段階(ステップ3)においては、図10(b)に示すように吐出装置20側の吐出側接続具82と充填側接続具134とが未接続の状態とされる。この状態においては、密閉空間形成体132の上端側において、筒部80aの外周に装着されているシール部材86によって筒部80aの外周面と密閉空間形成体132の内周面との隙間がシールされた状態になる。一方、密閉空間形成体132の下端側においては、接続部130bの外周に装着されているシール部材136によって、接続部130bの外周面と密閉空間形成体132の内周面との隙間がシールされた状態になる。従って、ステップ3の状態においては、密閉空間形成体132の内側に密閉空間135が形成され、この密閉空間135内において吐出側接続具82及び充填側接続具134が非接続状態で配置された状態とされる。
上述したようにして密閉空間形成体132内に密閉空間135が形成されると、制御フローがステップ4に移行する。ステップ4においては、密閉空間135を略真空状態とすべく、密閉空間形成体132の排気ポート146に配管接続された減圧装置148を作動させ、真空引きを開始する。なお、真空引きの開始の契機となる、筒部80aと密閉空間形成体132との接続状態の検知は、種々の方法により実施することが可能である。具体的には、筒部80aが密閉空間形成体132内に挿入されたことを検出するための真空リミットスイッチ172を図13に示すように充填装置100に隣接する位置に設けておき、この真空リミットスイッチ172から出力される信号に基づいて制御装置170が筒部80aが密閉空間形成体132に挿入され、密閉空間135が形成されたものと判断するようにすることができる。
ステップ4における真空引きの開始後、ステップ5において密閉空間135の真空度を検知するための真空センサ(図示せず)により目標とする真空度に到達したことが確認されると、制御フローがステップ6に移行する。ステップ6においては、制御装置170によるマニピュレータ90の動作制御により、吐出装置20が吐出側接続具82の軸線方向に移動し、充填装置100に近接する。この際、制御装置170からマニピュレータ90には、充填装置100に対して吐出装置20を所定の速度V1で近接するように動作速度を制御する信号(動作速度制御信号)が出力される。これにより、図11に示すように、密閉空間135内において、吐出側接続具82及び充填側接続具134が速度V1で近接し、両接続具82,134(接続装置140)が接続状態とされる。
接続装置140が接続状態とされると、ステップ7において離反防止機構150がロック状態とされる。具体的には、ステップ6において吐出側接続具82と充填側接続具134とが接続される際には、図12(c)に示すように吐出側脱着部本体80の外周部に設けられたピン84についても密閉空間形成体132の軸線方向に進行し、密閉空間形成体132に設けられた鉤溝144に進入した状態になる。ステップ7においては、図12(a)において矢印で示すようにマニピュレータ90によって吐出装置20を密閉空間形成体132の周方向に旋回させることにより、図12(b)に示すように吐出装置20が回転すると共に、図12(d)に示すように鉤溝144内に沿ってピン84が移動して係合した状態になる。これにより、離反防止機構150がロック状態になる。ピン84が鉤溝144の終端部近傍に到達して離反防止機構150がロック状態になったことの検知は、種々の方法によって実施することが可能である。具体的には、ピン84が鉤溝144の終端部近傍に到達する位置まで吐出装置20が回動したことを検出するためのドッキング完了リミットスイッチ174を図13に示すように充填装置100に隣接する位置に設けておき、このドッキング完了リミットスイッチ174から出力される信号に基づいて離反防止機構150がロック状態であるのか否かを検出できる。
上述したようにして接続装置140の接続が完了し、離反防止機構150がロック状態とされると、ステップ8において減圧装置148が停止され、真空引きが終了される。その後、制御フローがステップ9に進み、充填装置100から吐出装置20への流動体の充填が開始される。具体的には、ステップ9においては、充填装置100に設けられたバルブ106が開状態とされ、流動体供給源160から圧送されてきた流動体が吐出側接続具80及び充填側接続具134からなる接続装置140を介して吐出装置20側に圧送される。吐出装置20側に圧送された流動体は、吐出側脱着部26を介して吐出部24のケーシング50内に充填される。ここで、上述したように、吐出装置20及び充填装置100には吐出側緩衝部22及び充填側緩衝部102が設けられている。これにより、充填装置100から吐出装置20への流動体の充填に伴う内圧変動が緩衝され、吐出装置20及び充填装置100の内圧が大気圧近傍の低圧に維持される。
上述したようにして流動体の充填が開始されると、制御フローがステップ10に進み、流動体が満状態になるまで吐出装置20側に充填されたか否かの確認が制御装置170によってなされる。ここで、吐出装置20に流動体が十分充填されたことを検出する方法等については、種々のものとすることができる。具体的には、吐出装置20の吐出側緩衝部22の内圧検知用の圧力センサ(図示せず)が所定の圧力以上を検出することを条件として流動体が十分に充填され、充填要求がオフ状態になったものと判断することが可能である。また、ピストン34の位置に応じてオンオフするオートスイッチを充填量検出手段として採用した場合には、ピストン34が上限位置に設けられたオートスイッチの検知領域に到達し、上限位置のオートスイッチがオン状態になった場合に、流動体の充填要求がオフ状態になったものと判断することができる。
ステップ10において、吐出装置20に対して流動体が満状態になるまで充填されたことが確認されると、制御フローがステップ11に進められ、バルブ106が閉止状態とされる。これにより、充填装置100から吐出装置20への流動体の充填が完了する。このようにして流動体の充填が完了すると、制御フローがステップ12に進められ、離反防止機構150が解除状態とされる。具体的には、マニピュレータ90を作動させることにより、ステップ7において離反防止機構150をロック状態とした場合とは逆方向に向けて吐出装置20を旋回させた後、吐出装置20を充填装置100から軸線方向に離反させる。このようにして、なすピン84が鉤溝144から抜けた状態になると、離反防止機構150のロックが解除された状態になる。
離反防止機構150のロック解除が完了すると、制御フローがステップ13に進む。ステップ13においては、さらに吐出装置20が充填装置100から軸線方向に離反する方向に移動する。この際、制御装置170からマニピュレータ90には、充填装置100から吐出装置20を所定の速度V2で離反させるように動作速度を制御する信号(動作速度制御信号)が出力される。この離反速度V2は、上述したステップ6における接続速度V1以下(|V1|≧|V2|)とされる。これにより、吐出側接続具82及び充填側接続具134が接続動作時以下の速度V2で離反し、吐出側接続具82が充填側接続具134から抜けて接続解除された状態になる。以上により、一連の動作フローが完了する。
上述したように、本実施形態の吐出システム10においては、流動体を充填するために吐出装置20側の吐出側接続具82と充填装置100側の充填側接続具134とを接続する接続動作が、減圧装置148により負圧状態とされた密閉空間135内において実施される。これにより、接続動作に伴って空気が吐出装置20内及び充填装置100内に進入する可能性を低減できる。従って、吐出システム10によれば、空気混入に伴う流動体の吐出不良を最小限に抑制しうる。
上述した本実施形態の吐出システム10は、吐出装置20及び充填装置100に、吐出装置20及び充填装置100の接続及び分離に伴う内部圧力の変動を緩衝するための緩衝装置として、吐出側緩衝部22及び充填側緩衝部102が設けられている。これにより、吐出装置20と充填装置100との接続分離作業に際し、吐出装置20内及び充填装置100内が負圧になることを抑制し、両装置20,100内への空気の進入に伴う流動物の吐出不良をより一層確実に抑制しうる。
また、吐出システム10においては、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22が、吐出装置20側の緩衝装置として設けられている。吐出側緩衝部22においては、充填作業時に第二室44に流動物が流入するに連れてシリンダ34が上昇し、第二室44の容積が拡大する。吐出側緩衝部22をこのように作動させることにより、吐出装置20内が負圧になることを回避し、吐出装置20内への空気の進入を抑制することができる。これにより、流動体の吐出不良をより一層確実に抑制しうる。
また、本実施形態の吐出システム10においては、スプリング116の付勢力を利用して作動するアブソーバ機構を備えた充填側緩衝部102が、充填装置100側の緩衝装置として設けられている。これにより、吐出装置20を充填装置100に対して接続及び分離することにに伴い、充填装置100内が負圧になることを抑制することが可能となり、充填装置100内への空気の進入を抑制できる。
本実施形態においては、シリンダ機構を備えた緩衝装置を吐出装置20側の吐出側緩衝部22として採用し、アブソーバ機構を備えた緩衝装置を充填装置100側の充填側緩衝部102として設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、吐出装置20側に設ける緩衝装置として、アブソーバ機構を備えた充填側緩衝部102に相当するものを設けても良い。同様に、充填装置100側に設ける緩衝装置として、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22に相当するものを設けても良い。さらに、吐出側緩衝部22、及び充填側緩衝部102のうちいずれか一方又は双方を設けない構成としても良い。
本実施形態においては、吐出側緩衝部22をなす緩衝装置、及び充填側緩衝部102をなす緩衝装置を、それぞれ吐出装置20及び充填装置100に対して一基ずつ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、図14に示すように、吐出装置20は、吐出側緩衝部22をなす緩衝装置を2基以上備えた構成であっても良い。
本実施形態においては、吐出装置20及び充填装置100に設ける緩衝装置の例として、シリンダ機構を備えた吐出側緩衝部22及びアブソーバ機構を備えた吐出側緩衝部22を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく他の形式のアキュムレータ、あるいは流動体を流出入させることが可能なタンクによって緩衝装置を構成しても良い。このような構成とすることによっても、接続分離作業に伴って吐出装置20や充填装置100の内部が負圧になることを抑制し、空気の混入に伴う流動物の吐出不良を回避しうる。
本実施形態の吐出システム10は、位置決めピン142及び鉤溝144からなる離反防止機構150を備えている。これにより、充填装置100に対して流動体の充填のために接続された状態において、吐出装置20が充填装置100から離反することを確実に阻止することができる。なお、本実施形態で例示した離反防止機構150は一例に過ぎず、従来公知のボールキャッチをはじめとするキャッチや、フック、ファスナー等を離反防止機構150として用いることも可能である。
上述した吐出システム10は、吐出装置20の吐出部24に一軸偏心ねじポンプを採用したものである。そのため、充填装置100から吐出装置20に充填された流動体を脈動等させることなく、定量的かつ安定的に吐出させることができる。また、吐出システム10においては、空気の混入に伴う流動体の吐出不良が殆ど生じない。従って、吐出システム10は、流動体の吐出性能が極めて高く、自動車組立工場等においてシール剤や接着剤等の流動体を各種部品に塗布する等の用途に好適に利用することができる。
上述した吐出システム10においては、吐出装置20の吐出側脱着部26に設けられた吐出側接続具82の軸線方向が、吐出部24の軸線方向に対して交差(略直交)している。そのため、床などに設置された充填装置100に対して吐出装置20を接続する際には、吐出部24が略水平となる姿勢にした上で、吐出装置20を充填装置100側に下降させることにより吐出側接続具82を充填側接続具134に押し込むこととなる。従って、吐出装置20を上述したような構成とした場合に、マニピュレータ90の複雑な動作を伴うことなく吐出側接続具82を充填側接続具134に対して確実に押し込み可能とするためには、マニピュレータ90のアームを吐出部24において吐出側接続具82の軸線上の位置に取り付けることが望ましい。
これに対し、マニュピレータ90のアームを吐出部24の上端部等、吐出部24の軸線上に取り付けた場合には、図15に示すように吐出側接続具82の軸線方向が吐出部24の軸線方向に沿う(図示状態では略並行)となるように配置することが望ましい。かかる構成とした場合には、図16(a)〜(i)に示すように、吐出部24を略垂直となる姿勢にした上で、吐出装置20を充填装置100側に下降させることにより、マニピュレータ90の複雑な動作を伴うことなく吐出側接続具82を充填側接続具134に押し込み、両者を接続した状態とし、流動体の充填作業を実施することができる。
また、本実施形態の吐出システム10においては、充填装置100側において、ボルト138を取り外すことにより、密閉空間形成体132を充填側脱着部本体130から取り外して充填側接続具134の清掃等のメンテナンスを行うことができる。なお、本実施形態においては、密閉空間形成体132を着脱可能とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、充填側着脱部本体130と密閉空間形成体132とが一体的に形成されたものであっても良い。
なお、本実施形態の吐出システム10においては、流動体の充填のために吐出装置20と充填装置100との接続動作及び離反動作を実行する際に、離反動作時の動作速度が接続動作時の動作速度よりも高速であると、接続装置140において流動体を掻き取れずに外部に漏洩し、付着してしまうとの知見に基づき、吐出装置20と充填装置100との離反速度V2を接続速度V1以下(|V1|≧|V2|)となるように制御する例を示したが、必ずしもかかる制御を実行する必要はない。すなわち、接続装置140における流動物の外部漏洩等を考慮する必要がない場合、あるいは流動物の漏洩に対して他の方策を講じる場合には、吐出装置20と充填装置100との離反速度V2を接続速度V1よりも高速にする等しても良い。