JP5970350B2 - 防曇剤 - Google Patents

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Description

本発明はビニルアルコール系重合体を含有する防曇剤に関する。
ポリビニルアルコールに代表されるビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある。)は、水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維であるビニロンの原料、紙加工剤、繊維加工剤、接着剤、乳化重合及び懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルムなどの用途に広く用いられている。特に、PVAは他の水溶性合成高分子と比べて強度特性及び造膜性に優れており、この特性を生かして、例えばガラス、金属等の基材の表面に塗工される防曇剤として重用されている。
このようなPVAの特性をさらに高めるために、各種変性がなされたPVAが開発されている。変性PVAの一つとして、シリル基含有PVAが挙げられる。このシリル基含有PVAは、耐水性及び無機物等に対する接着性が高い。しかし、シリル基含有PVAは、(a)水溶液を調製する際に水酸化ナトリウム等のアルカリや酸を添加しなければ、十分に溶解しにくいこと、(b)調製された水溶液の粘度安定性が低下すること、(c)無機物等を含有する塗膜を形成させた場合、得られる塗膜の耐水性と無機物等に対する接着性とを同時に満足させることが困難であること等の不都合がある。そのため、上記シリル基含有PVAを含有する防曇剤は、得られる塗膜の防曇性、防曇効果の持続性(以下、「持続的防曇性」とも称する)及び基材への密着性等を同時に満足させることが困難となる。
そこで、粘度平均重合度(P)とシリル基を有する単量体単位の含有率(S:モル%)との積(P×S)を一定範囲内とすることなどにより、水溶性等が高められたシリル基含有PVA(特開2004−43644号公報参照)が提案されている。しかし、このシリル基含有PVAにおいては、上記積(P×S)の上限が370とされており、シリル基を有する単量体単位の含有率を増やしてシリル基含有PVAとしての特性を高めることと、水溶性等を高めることとのトレードオフの関係が解消されてはいない。すなわち、上記特開2004−43644号公報の段落0009に記載のように、積(P×S)が370以上の場合には、シリル基含有PVAの水溶液を調製する際にアルカリや酸を添加しなければ溶解できない場合があるという取扱上の不都合を有している。つまり、上記シリル基含有PVAも、上述の不都合を十分に解決したものとはいえない。
特開2004−43644号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性に優れる塗膜を得ることができ、取扱性及び粘度安定性も十分な防曇剤の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有する防曇剤である。
Figure 0005970350
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。)
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
当該防曇剤に含有されるPVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、シリル基が炭素数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有している。このため、当該防曇剤は、含まれるPVAのシリル基の変性量を高めても、中性領域における水溶性が高いため取扱性もよく、粘度安定性の低下が抑えられる。また、当該防曇剤によれば、含まれるPVAの粘度平均重合度(P)と上記単量体単位の含有率(S)との積(P×S)が上記範囲であるため、シリル基変性量を高めることができ、防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性に優れる塗膜を得ることができる。
上記PVAが、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように上記PVAの粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性及び粘度安定性が高まり、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性をより高めることができる。
上記式(1)におけるnは6〜20の整数であることが好ましい。nの値を上記範囲とすることで、当該防曇剤の諸性能をより高めることができる。
上記単量体単位は下記式(2)で表されることが好ましい。
Figure 0005970350
(式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、当該防曇剤の諸性能をより高めることができる。
上記式(2)におけるXは下記式(3)で表されることが好ましい。
−CO−NR−*・・・(3)
(式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)
このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置にアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性及び粘度安定性等をより高めることができる。
上記式(3)におけるRは水素原子であり、上記式(2)におけるnは3〜12の整数であることが好ましい。上記単量体単位をこのような構造とすることで、上記PVAの水溶性や粘度安定性が高まり、当該防曇剤により得られる塗膜の諸特性も高めることができ、また、上記PVAの製造を容易に行うことができる。
当該防曇剤は、無機物をさらに含有することが好ましい。当該防曇剤が無機物をさらに含有することで、得られる塗膜の耐水性を高めることができ、その結果、塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性をさらに高めることができる。
本発明の透明部材は、
透明な基材と
当該防曇剤を用い、この基材表面に積層される防曇層と
を備える。当該透明部材は、当該防曇剤を用いて積層される防曇層を有するため、防曇性及び持続的防曇性に優れる。従って、当該透明部材は、窓ガラス、眼鏡用レンズ、浴室の鏡などの用途に好適に用いられる。
以上説明したように、本発明の防曇剤は、十分な取扱性及び粘度安定性を有し、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性に優れる。従って、当該防曇剤を用いて基材表面に積層される防曇層を備える透明部材は、防曇性及び持続的防曇性に優れる。
以下、本発明の防曇剤の実施の形態について詳説する。
<防曇剤>
本発明の防曇剤は、以下に詳説するPVAを含有する。
<PVA>
上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含む。すなわち、上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位とビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)とを含む共重合体であり、さらに他の単量体単位を有してもよい。
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
は、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基(NH)である。上記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。上記アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Rで表されるこれらの基の中でも、アルコキシル基又はOMで表される基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシル基、及びMが水素原子若しくはアルカリ金属であるOMで表される基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びMがナトリウム若しくはカリウムであるOMで表される基がさらに好ましい。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。R及びRとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
なお、R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。
mは、0〜2の整数であるが、0が好ましい。mが0である、すなわち、上記単量体単位が、3つのR基を有することで、変性による効果をより高めることができる。
nは、3以上の整数である。nの上限としては、特に制限されないが、20が好ましく、15がより好ましく、12がさらに好ましい。nの下限としては、4が好ましく、6がより好ましく、8がさらに好ましい。上記PVAは、上記式(1)中のnが3以上、すなわちシリル基が炭素数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有していることで、シリル基の変性量を高めても、水溶性及び粘度安定性の低下が抑えられる。このような効果が発現する理由は十分解明されてはいないが、例えば、疎水性を示す炭素数3以上のアルキレン基が、水溶液中において、Si−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるためであると推測される。
上記単量体単位の具体的構造は、上記式(1)で表される基を有する限り特に限定されないが、上記式(2)で表されることが好ましい。
式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
Xは直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、水溶性及び粘度安定性、並びに得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性をより高めることができる。
上記2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。上記炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等が挙げられる。上記酸素原子を含む2価の有機基としては、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。上記窒素原子を含む2価の有機基としては、イミノ基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。
上記Xで表される基の中でも、酸素原子又は窒素原子を含む2価の有機基が好ましく、アミド基を含む基がより好ましく、−CO−NR−*(Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表される基であることがさらに好ましい。このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置に極性構造、好ましくはアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性や粘度安定性等をより高めることができる。なお、上記Rとしては、上記機能をより高めたり、当該PVAの製造を容易に行うことができる点から、水素原子が好ましい。
は、水素原子又はメチル基である。
上記単量体単位としては、下記式(4)で表されるものがさらに好ましい。
Figure 0005970350
式(4)中、R、R、R、X及びmの定義は、上記式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(4)中、R’及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。R’及びR’としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R’及びR’で表されるアルキル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。なお、R’及びR’がそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R’及びR’は、独立して上記定義を満たす。
上記式(4)中、n’は、1以上の整数である。n’の上限としては、特に制限されないが、18が好ましく、13がより好ましく、10がさらに好ましい。n’の下限としては、2が好ましく、4がより好ましく、6がさらに好ましい。
上記単量体単位が、上記式(4)で表される場合、当該防曇剤の諸機能をより効果的に発現させることができる。この理由も定かではないが、水溶液中においてSi−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるという上述した機能がより効果的に発揮されるためと推測される。
上記PVAは、下記式(I)を満たす。
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
上記粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、上記PVAをけん化度が99.5モル%未満の場合は、けん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
上記単量体単位の含有率(S:モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここで、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、このビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を十分に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解して分析に供する。
粘度平均重合度(P)と上記単量体単位の含有率(S)との積(P×S)は、分子100個あたりの上記単量体単位の数(平均値)に相当する。この積(P×S)が上記下限未満の場合は、当該防曇剤から得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等のシリル基に由来する諸特性を十分に発揮することができない。逆に、この積(P×S)が上記上限を超えると水溶性や粘度安定性が低下する。積(P×S)は、下記式(I’)を満たすことが好ましく、下記式(I’’)を満たすことがより好ましい。
400≦P×S≦3,000 ・・・(I')
500≦P×S≦2,000 ・・・(I’’)
上記PVAは、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性及び粘度安定性、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等をより高めることができる。
さらには、上記粘度平均重合度(P)において、下記式(II’)を満たすことがより好ましく、下記式(II’’)を満たすことがさらに好ましい。
500≦P≦3,000 ・・・(II’)
1,000≦P≦2,400 ・・・(II’’)
粘度平均重合度(P)が上記下限未満の場合は、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等が低下する場合がある。逆に、粘度平均重合度(P)が上記上限を超える場合は、水溶性、粘度安定性等が低下する場合がある。
また、上記単量体単位の含有率においては、下記式(III’)を満たすことがより好ましく、下記式(III’’)を満たすことがさらに好ましい。
0.25≦S≦6 ・・・(III’)
0.5≦S≦5 ・・・(III’')
上記単量体単位の含有率(S)が上記下限未満の場合は、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等が低下する場合がある。逆に、上記単量体単位の含有率(S)が上記上限を超える場合は、水溶性や粘度安定性等が低下する場合がある。
上記PVAのけん化度としては、特に制限はないが、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましい。上記PVAのけん化度が上記下限未満の場合は、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等が低下する場合がある。なお、上記PVAのけん化度の上限としては、特に制限はないが、生産性等を考慮すると、例えば99.9モル%である。ここでPVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法に準じて測定した値をいう。
<PVAの製造方法>
上記PVAの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体と、上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させ、得られる共重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化することにより得ることができる。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
また、上記式(1)で表される基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、得られるPVAの粘度平均重合度(P)を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエタンチオール、n−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類;テトラクロロメタン、ブロモトリクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
上記式(1)で表される基を有する単量体としては、例えば下記式(5)で表される化合物が挙げられる。下記式(5)で表される化合物を使用することにより、最終的に、上記式(2)で表される基を有する単量体単位を含むPVAが容易に得られる。
Figure 0005970350
式(5)中、R〜R、X、m及びnの定義は、式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(5)で表される化合物としては、例えば3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミドブチルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリルアミドヘキシルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリルアミドオクチルトリメトキシシラン、12−(メタ)アクリルアミドドデシルトリメトキシシラン、18−(メタ)アクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−4−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリルアミド−5−メチルヘキシルトリメトキシシラン、4−ペンテニルトリメトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記ビニルエステル系単量体と上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。特に、重合温度が30℃より低い場合には、乳化重合法が好ましく、重合温度が30℃以上の場合には、無溶媒で行う塊状重合法又はアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。
乳化重合法の場合、溶媒としては水が挙げられ、メタノール、エタノール等の低級アルコールを併用してもよい。また、乳化剤としては、公知の乳化剤を使用することができる。共重合の際の開始剤としては、鉄イオン−酸化剤−還元剤を併用したレドックス系開始剤が重合をコントロールする上で好適に用いられる。塊状重合法や溶液重合法の場合、共重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式にても実施可能である。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが挙げられる。この場合の共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5℃〜50℃の範囲が適当である。
この共重合反応の際には、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はその誘導体;アクリル酸又はその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸又はその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体の使用量は、その使用される目的や用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下であり、10モル%以下であることが好ましい。
上記共重合により得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法に従って溶媒中でけん化され、PVAへと導かれる。
けん化反応の触媒としては、通常、アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、及びナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。上記アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル系単量体単位を基準にしたモル比で、0.004〜0.5の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.05の範囲内であることがより好ましい。また、この触媒は、けん化反応の初期に一括して添加してもよいし、けん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加してもよい。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、例えばメタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。また、メタノールの使用にあたり、メタノール中の含水率が好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、特に好ましくは0.005〜0.8質量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間としては、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法及び連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和してもよく、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、及び酢酸メチル等のエステル化合物等が挙げられる。
けん化反応により得られたPVAは、必要に応じて、洗浄することができる。この洗浄の際に用いられる洗浄液としては、メタノール等の低級アルコール、酢酸メチル等の低級脂肪酸エステル、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの洗浄液には、少量の水やアルカリ又は酸等が添加されていてもよい。
当該防曇剤における上記PVAの含有割合としては、特に限定されないが、4質量%以上20質量%以下が好ましい。当該防曇剤によれば、このように比較的高濃度とすることができるため、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性等を効果的に高めることができる。
<無機物>
当該防曇剤は、無機物をさらに含有することが好ましい。これにより、得られる塗膜の耐水性を向上させることができ、その結果、塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性をさらに高めることができる。無機物としては、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、カルシウム等の元素を含むものが挙げられ、具体的には、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、水ガラス、水溶性アルミニウム化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等の水溶性無機物も使用し得る。しかしながら、水溶液無機物を高濃度で使用する場合には、得られる防曇剤の粘度安定性が低くなり、場合によってはゲルを発生するおそれがあるので、必ずしも好ましくない。したがって、本発明の効果をより高めるためには水不溶性の無機物の微粒子を使用することが好ましく、粒子径が200nm以下の微粒子がより好ましく、粒子径100nm以下の微粒子がさらに好ましい。粒子径が200nmを超える場合には、塗膜の透明性が悪化するおそれがある。特に好適なものとしては、コロイダルシリカあるいはコロイダルアルミナが挙げられ、コロイダルシリカが最適である。コロイダルシリカを使用した場合には、塗膜の透明性および吸水時の表面硬度が良好になる。
当該防曇剤において、ビニルアルコール系重合体と無機物との質量比[(ビニルアルコール系重合体)/(無機物)]は、0.1/99.9〜100/0が好ましく、1/99〜95/5がより好ましく、10/90〜90/10がさらに好ましく、25/75〜75/25が特に好ましい。無機物の配合比率が少なすぎる場合には、吸水時の表面硬度が低くなる場合がある。一方、無機物の配合比率が多すぎる場合には、得られる塗膜の基材への密着性および乾燥時の耐擦傷性が低下する場合がある。
<その他の成分等>
当該防曇剤は、通常、上記PVAの水溶液である。但し、他の溶媒を用いた溶液であってもよい。当該防曇剤は、その他、
エタノール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテルなどの他の溶媒;
水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ;
塩酸、酢酸等の酸;
アルブミン、ゼラチン、カゼイン、澱粉、カチオン化澱粉、アラビアゴム、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル、並びにメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体等の水溶性樹脂;
SBR、NBR、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の水分散性樹脂;
グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物、乳酸チタン等のチタン系化合物、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン等のエポキシ化合物、ポリオキサゾリン等の架橋剤;
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン等のカップリング剤;
脂肪酸アミド型界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤あるいはノニオン界面活性剤等の平滑剤;
水、メタノール、アセトン等の希釈剤;
無変性のPVA等の水溶性ポリマー;
等を含有してもよい。
<透明部材>
本発明の透明部材は、当該防曇剤を用いて積層される防曇層を有するため、防曇性及び持続的防曇性に優れる。当該防曇剤が塗布される基材は特に限定されず、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられるが、透明基材であることが好ましい。本発明の透明部材は、具体的には、例えば自動車、電車、ビル等の窓ガラス、眼鏡用レンズ、浴室などの鏡、農業ハウス用プラスチックフィルム、窓ガラス用プラスチックフィルムなどの用途に好適に用いられる。
本発明の防曇剤を基材表面に塗布する方法としては、例えばハケ塗り、浸漬塗り、スピンコーティング、流し塗り、スプレー塗布、ロール塗装、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング等の通常知られている各種の方法を用いることが可能である。上記塗布後、加熱処理を適宜施すことにより、基材への密着力がより高い塗膜を得ることができる。塗膜の厚みは特に限定されないが、通常0.1μm〜50μmであり、0.2μm〜20μmが好ましい。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
なお、実施例及び比較例で用いたシリル基を有する単量体(モノマーA)は、以下のとおりである。
MAmPTMS :3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシラン
MAmPTES :3−メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン
MAmBTMS :4−メタクリルアミドブチルトリメトキシシラン
MAmOTMS :8−メタクリルアミドオクチルトリメトキシシラン
MAmDDTMS:12−メタクリルアミドドデシルトリメトキシシラン
MAmODTMS:18−メタクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン
AMBTMS :3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン
4−PTMS :4−ペンテニルトリメトキシシラン
VMS :ビニルトリメトキシシラン
MAmMTMS :メタクリルアミドメチルトリメトキシシラン
AMPTMS :2−アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン
[シリル基含有PVAの合成]
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)(一部の例では、シリル基を有する単量体単位の含有率)、粘度平均重合度(P)を求めた。また、以下の評価方法にしたがって、防曇剤の性能を評価した。
[PVAの分析方法]
PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法に従って行った。
[合成例1]PVA1の製造
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル1,500g、メタノール500g、上記式(1)で表される基を有する単量体(モノマーA)としてのMAmPTMS1.87gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてMAmPTMSをメタノールに溶解して濃度8%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.8gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとモノマーA(MAmPTMS)の比率)が一定となるようにしながら、60℃で2.7時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液(逐次添加液)の総量は99gであった。また、重合停止時の固形分濃度は29.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、上記式(1)で表される基を有するポリ酢酸ビニル(PVAc)を40%含有するメタノール溶液を得た。さらに、これにPVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.04、PVAcの固形分濃度が30質量%となるように、メタノール及び水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。アルカリ溶液を添加後、約5分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノールを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置し、上記式(1)で表される基を有するPVA1を得た。PVA1の粘度平均重合度(P)は1,700、けん化度は98.6モル%であった。
得られたPVA1の上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(シリル基を有する単量体単位の含有率)は、このPVAの前駆体であるPVAcのプロトンNMRから求めた。具体的には、得られたPVAcの再沈精製をn−ヘキサン/アセトンで3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPVAcを作製した。このPVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定した。酢酸ビニル単位の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とモノマーA単位のメトキシ基のメチルに由来するピークβ(3.4〜3.8ppm)とから、下記式を用いて式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)を算出した。PVA1において、含有率(S)は0.5モル%であった。得られたPVAについて分析した結果を表1に示す。
式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S:モル%)
={(βのピーク面積/9)/(αのピーク面積+(βのピーク面積/9))}×100
[合成例2〜21及び比較合成例1〜15]PVA2〜PVA36の製造
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、モノマーAの種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にしてPVA2〜PVA36を得た。得られた各PVAについて分析した結果を表1に示す。
なお、表1中、比較合成例1〜15の含有率(S)は、式(1)で表される基を有する単量体単位以外の、シリル基を有する単量体単位の含有率も含む。
Figure 0005970350
[実施例1]
<防曇剤の製造と評価>
PVA1の10%水溶液を調製し、この水溶液100部にコロイダルシリカ「スノーテックス20」(日産化学工業製、粒子径10〜20nm、固形分20質量%)を20部加えて防曇剤を得た。この防曇剤を、下記の評価方法にしたがって、ガラス板に塗布し、塗膜の防曇性、塗膜の持続的防曇性および塗膜のガラスへの密着性を評価した。また、防曇剤の粘度安定性も評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、※1は、PVAが水溶液に対して完全に溶解しないため、評価できなかったことを示す。
[塗膜の防曇性]
上記調製した防曇剤を5mm厚のガラス板上に、乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥してコートガラス板を得た。40℃の温水100mLを入れた200mLビーカーの口を上記コートガラス板で覆い、40℃雰囲気中、24時間放置した後、コート面の水滴の付着具合を目視で観察し、以下の基準にしたがって判定した。結果を表2に示す。
A:水がコート面全体に一様に付着し、曇りは認められなかった
B:コート面全体の10%程度に曇りが認められた
C:コート面全体の30%程度に曇りが認められた
D:水滴が付着しており、著しい曇りが認められた
E:塗膜が溶解した
[塗膜の持続的防曇性]
上記調製した防曇剤を5mm厚のガラス板上に、乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、70℃で1分間乾燥してコートガラス板を得た。このコートガラス板を40℃の水に1週間浸漬した後、70℃で1分間乾燥した。40℃の温水100mLを入れた200mLビーカーの口を上記処理を行ったコートガラス板で覆い、40℃雰囲気中、24時間放置した後、コート面の水滴の付着具合を目視で観察し、以下の基準にしたがって判定した。結果を表2に示す。
S:水がコート面全体に一様に付着し、曇りは認められなかった
A:コート面全体の10%程度に曇りが認められた
B:コート面全体の30%程度に曇りが認められた
C:コート面全体の50%程度に曇りが認められた
D:水滴が付着しており、著しい曇りが認められた
E:塗膜が溶解した
[塗膜のガラスへの密着性]
上記調製した防曇剤を5mm厚のガラス板上に、乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、120℃で1分間、乾燥した。室温にて24時間放置後、JIS K5400 8.5.2の方法で密着性試験を行った。塗膜をカットして1mm×1mm×100個の碁盤目部分を作成し、これを粘着テープにより引き剥がし、100個の碁盤目中で剥離せず残っている個数により評価した。「n/100」は、100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示し、「100/100」は全く剥離しておらず、最も密着性の良いことを示す。評価は以下の基準に従って判定した。結果を表2に示す。
A:100/100
B:90/100以上100/100未満
C:80/100以上90/100未満
D:50/100以上80/100未満
E:50/100未満
[防曇剤の粘度安定性]
上記調製した防曇剤を20℃恒温槽中に放置し、この防曇剤の温度が20℃になった直後の粘度と7日後の粘度を測定した。防曇剤の温度が20℃になった直後の粘度で7日後の粘度を除した値(7日後/直後)を求め、これを粘度比(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。結果を表2に示す。
A:2.5倍未満
B:2.5倍以上3.5倍未満
C:3.5倍以上5.0倍未満
D:5.0倍以上であるが、防曇剤はゲル化していない
E:防曇剤は流動性を失いゲル化している
[実施例2〜21及び比較例1〜15]
実施例1において用いたPVA1に代えて、表2に示したPVAを用いた以外は、実施例1と同様にして防曇剤を調製し、評価した。その結果を表2に併せて示す。
Figure 0005970350
表2に示されるように、実施例1〜21で調製した防曇剤(PVA1〜21)は、十分な水溶性及び粘度安定性を有し、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及びガラスへの密着性に優れることが分かる。ここで、粘度安定性はD以上であれば実用上十分な粘度安定性を有しているとし、他の3項目が全てC以上であることがより優れている評価とする。さらに、PVAの粘度平均重合度(P)、けん化度、単量体単位の構造、含有率(S)、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)を特定した、実施例1、9、10、15〜18、21の防曇剤は、得られた塗膜の防曇性、持続的防曇性及びガラスへの密着性、並びに粘度安定性に特に優れている(粘度安定性がC以上の評価であり、他の3項目中、2項目以上がAであり、その他がBである)。なお、実施例2〜8、11〜14、19、20は、得られた塗膜の防曇性、持続的防曇性、ガラスへの密着性、並びに粘度安定性等が若干低下することが分かる。これは粘度平均重合度(P)やけん化度の低下、単量体単位の構造が異なること、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が小さく、または大きくなること等に起因していると考えられる。
一方、PVAが規定の要件を満たさない場合(比較例1〜15)、実用上十分な粘度安定性を有さなかったり、得られた塗膜の防曇性、持続的防曇性及びガラスへの密着性が低下することが分かる。
本発明の防曇剤は、十分な取扱性及び粘度安定性を有し、得られる塗膜の防曇性、持続的防曇性及び基材への密着性に優れる。従って、当該防曇剤を用いて基材表面に積層される防曇層を備える透明部材は、防曇性及び持続的防曇性に優れる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有する防曇剤。
    Figure 0005970350
    (式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、以上20以下の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。)
    370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  2. 上記ビニルアルコール系重合体が、下記式(II)及び(III)をさらに満たす請求項1に記載の防曇剤。
    200≦P≦4,000 ・・・(II)
    0.1≦S≦10 ・・・(III)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  3. 上記単量体単位が下記式(2)で表される請求項1又は請求項2に記載の防曇剤。
    Figure 0005970350
    (式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
  4. 上記式(2)におけるXが下記式(3)で表される請求項に記載の防曇剤。
    −CO−NR−* ・・・(3)
    (式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)
  5. 上記式(3)におけるRが水素原子であり、上記式(2)におけるnが〜12の整数である請求項に記載の防曇剤。
  6. 無機物をさらに含有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の防曇剤。
  7. 透明な基材と
    請求項1から請求項のいずれか1項に記載の防曇剤を用い、この基材表面に積層される防曇層と
    を備える透明部材。
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