以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態の構成と同一若しくは類似する構成については、既に説明された実施形態の符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
(射出装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
なお、以下において、絶対座標系における移動(ダイカストマシンDC1の不動部分に対する移動。不動部分は、例えば、不図示の型締装置のベース、射出装置1の射出シリンダチューブ17である。)については、「〜に対して」若しくは「相対的に」等の修飾をせずに、単に、移動の語を使用することがあるものとする。
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
射出装置1は、キャビティ105に連通するスリーブ3と、スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7と、射出シリンダ装置7を作動液(例えば油)の供給により駆動するための液圧装置9と、プランジャ5を駆動する駆動装置11と、駆動装置11によって生じるモーメントを低減するためのバランスシリンダ装置12と、駆動装置11及びバランスシリンダ装置12のプランジャ5に対する連結及びその解除を行う着脱部13と、各装置を制御する制御装置15を有している。
以下、概ね上記の列挙順に詳細を説明する。
スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。なお、本願において、2以上の部材の固定は、2以上の部材が一体的に形成されて固定されている場合を含むものとする。
スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
(直列配置の駆動系の構成:射出シリンダ装置7、液圧装置9等)
射出シリンダ装置7は、例えば、単動式のシリンダ装置により構成されており、射出シリンダチューブ17と、射出シリンダチューブ17の内部を摺動可能な射出ピストン19と、射出ピストン19に固定され、射出シリンダチューブ17から延び出る射出ピストンロッド21とを有している。
射出シリンダチューブ17は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。射出シリンダチューブ17の内部は、射出ピストン19により、射出ピストンロッド21が延び出る側の射出ロッド側室17rと、その反対側の射出ヘッド側室17hとに区画されている。射出ヘッド側室17hに作動液が供給されることにより、射出ピストン19は前進(プランジャ5側へ移動)可能であり、射出ロッド側室17rに作動液が供給されることにより、射出ピストン19は後退可能である。
射出シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸(直列)に配置され、射出ピストンロッド21は、プランジャ5に継手23を介して連結され、射出シリンダチューブ17は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン19の射出シリンダチューブ17に対する前進移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進する。
なお、プランジャ5及び射出ピストンロッド21は同軸に連結されているから、「プランジャ5に平行(又は並列)」と「射出ピストンロッド21(又は射出シリンダ装置7)に平行(又は並列)」とを特に区別せずに言及することがあり、また、「プランジャ5に連結」と「射出ピストンロッド21に連結」とを特に区別せずに言及することがあるものとする。
液圧装置9は、作動液を貯留するタンク25と、タンク25の作動液を送出するポンプ27と、ポンプ27を駆動するポンプ用電動機29と、射出シリンダ装置7に作動液を供給するアキュムレータ31と、これら及び射出シリンダ装置7を互いに接続する液圧回路33とを有している。
タンク25は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク25は、射出シリンダ装置7から排出される作動液を液圧回路33を介して受け入れ、また、ポンプ27及び液圧回路33を介してアキュムレータ31に作動液を供給する。
ポンプ27は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。ポンプ27は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が固定された定容量ポンプによって構成されていてもよいし、当該吐出量が可変とされた可変容量ポンプによって構成されていてもよい。また、ポンプ27は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
ポンプ用電動機29は、回転式の電動機である。ポンプ用電動機29は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。ポンプ用電動機29は、オープンループにおいて設けられた定速電動機として機能するものであってもよいし、クローズドループにおいて設けられたサーボモータとして機能するものであってもよい。
なお、後述する動作の説明において、ポンプ用電動機29が停止しているとき、ポンプ用電動機29は、トルクフリーの状態とされてもよいし、(サーボモータの場合は)一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及びポンプ用電動機29が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
アキュムレータ31は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ31は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ31内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
液圧回路33は、特に図示しないが、射出シリンダ装置7、タンク25、ポンプ27及びアキュムレータ31を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。複数の弁は、例えば、パイロット式でない若しくはパイロット式の逆止弁、切換弁、流量制御を行うサーボバルブである。液圧回路33は、後述する作動液の流れが実現されるように適宜に構成されてよい。
図1では、射出ロッド側室17rから排出される作動液の流量を制御するサーボバルブ34を例示している。サーボバルブ34は、メータアウト回路を構成している。すなわち、サーボバルブ34により射出ロッド側室17rから排出される作動液の流量が制御されることにより、射出ピストンロッド21の前進速度は制御される。
(並列配置の駆動系の構成:駆動装置11、バランスシリンダ装置12等)
駆動装置11は、プランジャ5を駆動する駆動力を生じる駆動内部装置35を有している。また、駆動装置11は、プランジャ5の直接的な駆動だけでなく、バランスシリンダ装置12の駆動にも寄与しており、駆動内部装置35によって駆動され、バランスシリンダ装置12への作動液の送出に寄与する駆動シリンダ装置37を有している。
駆動内部装置35は、駆動電動機39と、駆動電動機39の駆動力をプランジャ5(射出ピストンロッド21)に伝達する伝達機構41とを有している。
駆動電動機39は、回転式の電動機であり、その回転軸が射出ピストンロッド21に平行になるように配置されている。駆動電動機39は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。なお、駆動電動機39は、ブレーキ付きの電動機であることが好ましい。駆動電動機39は、サーボモータとして構成されており、駆動電動機39の回転を検出するエンコーダ43と、駆動電動機39に電力を供給するサーボドライバ45と共にサーボ機構を構成している。
なお、後述する動作の説明において、駆動電動機39が停止しているとき、射出装置の具体的な構成及び駆動電動機39が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよいことは、ポンプ用電動機29と同様である。
伝達機構41は、駆動電動機39の回転を並進運動に変換してプランジャ5に伝達する。伝達機構41は、例えば、ボールねじ機構等のねじ機構により構成され、駆動電動機39により回転駆動されるナット47と、ナット47に螺合されたねじ軸49とを有している。伝達機構41は、射出シリンダ装置7に対して並列に配置されており、また、駆動電動機39に対して同軸状乃至は同心状に配置されている。
ナット47は、例えば、駆動電動機39に内蔵されて、駆動電動機39のロータと一体化されており、射出ピストンロッド21に平行な軸回りに回転可能である。また、ナット47は、射出ピストンロッド21に平行な方向に移動不可能とされている。なお、ナット47は、駆動電動機39とは別個に設けられて、適宜なカップリング等を介して駆動電動機39の出力軸と連結されてもよい。
ねじ軸49は、射出ピストンロッド21に平行に配置されている。また、ねじ軸49は、軸方向の移動が許容されているとともに、後に詳述するように、軸回りの回転が規制されている。
そして、ナット47が駆動電動機39により回転駆動されると、ナット47に螺合したねじ軸49は、その軸方向に移動する。すなわち、ねじ軸49は、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動される。なお、ねじ軸49の並進運動は、後述するように、駆動シリンダ装置37の一部の部材及び着脱部13を介してプランジャ5に伝達される。
駆動シリンダ装置37は、駆動シリンダチューブ51と、駆動シリンダチューブ51の内部を摺動可能な駆動ピストン53と、駆動ピストン53に固定され、駆動シリンダチューブ51から延び出る駆動ピストンロッド55とを有している。
駆動シリンダチューブ51は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。駆動シリンダチューブ51の内部は、駆動ピストン53により、駆動ピストンロッド55が延び出る側の駆動ロッド側室51rと、その反対側の駆動ヘッド側室51hとに区画されている。駆動ピストン53が、駆動ロッド側室51r及び駆動ヘッド側室51hのうちの一方のシリンダ室側へ移動することにより、当該一方のシリンダ室からは作動液が排出され、他方のシリンダ室は作動液を受け入れ可能となる。
駆動シリンダ装置37は、伝達機構41(ねじ機構)に対して直列に配置されている。換言すれば、駆動シリンダ装置37は、射出シリンダ装置7に対して並列に配置されている。また、駆動シリンダ装置37は、駆動ピストンロッド55を前方に、駆動シリンダチューブ51を後方に向けて配置されている。駆動シリンダチューブ51は、ねじ軸49に固定されてねじ軸49と共にねじ軸49の軸方向に移動可能とされている。一方、駆動ピストンロッド55は、ダイカストマシンDC1の不動部分に固定されてその軸方向に移動不可能とされている。従って、ねじ軸49の軸方向への移動により、駆動ピストン53は、駆動シリンダチューブ51内を相対的に駆動ロッド側室51r側若しくは駆動ヘッド側室51h側へ移動する。
バランスシリンダ装置12は、バランスシリンダチューブ57と、バランスシリンダチューブ57の内部を摺動可能なバランスピストン59と、バランスピストン59に固定され、バランスシリンダチューブ57から延び出るバランスピストンロッド61とを有している。
バランスシリンダチューブ57は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。バランスシリンダチューブ57の内部は、バランスピストン59により、バランスピストンロッド61が延び出る側のバランスロッド側室57rと、その反対側のバランスヘッド側室57hとに区画されている。射出シリンダ装置7と同様に、バランスロッド側室57r及びバランスヘッド側室57hに選択的に作動液が供給されることにより、バランスピストン59とバランスシリンダチューブ57とは相対的に移動する。
バランスシリンダ装置12は、射出シリンダ装置7に対して駆動シリンダ装置37とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。また、バランスシリンダ装置12は、バランスシリンダチューブ57を前方に、バランスピストンロッド61を後方に向けて配置されている。バランスピストンロッド61は、ダイカストマシンDC1の不動部分に固定されてその軸方向に移動不可能とされている。一方、バランスシリンダチューブ57は、その軸方向への移動が許容されている。従って、バランスシリンダ装置12では、作動液が供給されることにより、バランスシリンダチューブ57がその軸方向へ移動する。
図1において2ヶ所に付された符号aにより示されるように、駆動ヘッド側室51hと、バランスヘッド側室57hとは連通されている。また、図1において2ヶ所に付された符号bにより示されるように、駆動ロッド側室51rとバランスロッド側室57rとは連通されている。
従って、駆動内部装置35の駆動力により駆動シリンダチューブ51が前進(図1の紙面左側へ移動)し、駆動ヘッド側室51hから作動液が排出されると、その作動液は、バランスヘッド側室57hに供給される。その結果、バランスシリンダチューブ57も駆動シリンダチューブ51と同一方向(図1の紙面左側)へ移動する。この際、バランスロッド側室57rから排出された作動液は、駆動ロッド側室51rに収容される。
同様に、駆動内部装置35の駆動力により駆動シリンダチューブ51が後退(図1の紙面右側へ移動)し、駆動ロッド側室51rから作動液が排出されると、その作動液は、バランスロッド側室57rに供給され、バランスシリンダチューブ57も駆動シリンダチューブ51と同一方向(図1の紙面右側)へ移動する。また、バランスヘッド側室57hから排出された作動液は、駆動ヘッド側室51hに収容される。
駆動シリンダチューブ51の径Dとバランスシリンダチューブ57の径Dとは同一である。また、駆動ピストンロッド55の径dとバランスピストンロッド61の径dとは同一である。換言すれば、駆動ヘッド側室51hにおける駆動ピストン53の受圧面積とバランスヘッド側室57hにおけるバランスピストン59の受圧面積とは同一であり、また、駆動ロッド側室51rにおける駆動ピストン53の受圧面積とバランスロッド側室57rにおけるバランスピストン59の受圧面積とは同一である。
従って、上述したように駆動シリンダ装置37からバランスシリンダ装置12へ作動液が供給されてバランスシリンダチューブ57が駆動される場合、バランスシリンダチューブ57は、駆動シリンダチューブ51と同一の速度で移動する(同一の距離を移動する。)。また、この際、バランスシリンダ装置12から排出された作動液は、過不足なく、駆動シリンダ装置37に収容される。
プランジャ5の軸心と駆動シリンダ装置37(駆動装置11)の中心軸との距離と、プランジャ5の軸心とバランスシリンダ装置12の中心軸との距離とは同一である。従って、後述するように、駆動装置11から着脱部13を介してプランジャ5に推力が付与されるときに生じるモーメントと、バランスシリンダ装置12から着脱部13を介してプランジャ5に推力が付与されるときに生じるモーメントとは相殺されやすくなっている。
着脱部13は、駆動シリンダチューブ51及びバランスシリンダチューブ57の射出ピストンロッド21に対する相対的な前進を規制するための当接部材63と、駆動シリンダチューブ51及びバランスシリンダチューブ57の射出ピストンロッド21に対する相対的な後退を規制し、また、当該規制を解除するフック装置65とを有している。
当接部材63は、駆動シリンダチューブ51及びバランスシリンダチューブ57に固定されている。換言すれば、当接部材63は、これらシリンダチューブに対する前進及び後退が規制され、また、これらシリンダチューブを互いに連結している。また、当接部材63は、継手23に対して前進方向に当接可能且つその当接位置から継手23(射出ピストンロッド21)に対して相対的に後退可能である。
従って、駆動内部装置35の駆動力により駆動シリンダチューブ51及びバランスシリンダチューブ57が前進すると、当接部材63は継手23に対して当接する。これにより、駆動内部装置35の駆動力によりプランジャ5を前進させることができる。また、射出ヘッド側室17hへ作動液を供給して射出ピストンロッド21を比較的高速に移動させることなどにより、プランジャ5を当接部材63に対して相対的に前進させることが可能である。
当接部材63の具体的な形状及び固定方法等は適宜に設定されてよい。例えば、当接部材63の形状は、概略板状の形状に、駆動シリンダチューブ51、バランスシリンダチューブ57及び射出ピストンロッド21が挿通される穴部が形成された形状とされている。当接部材63には、継手23に当接する部分に、反発係数が比較的小さい部材が設けられてもよい。
図2は、フック装置65の構成を示す一部に断面図を含む側面図である。
フック装置65は、例えば、フック67と、フック67を駆動するアクチュエータ69とを有している。
フック67は、例えば、概ねL字状に形成されるとともに、一端が当接部材63によって回転可能に支持されている。そして、フック67は、継手23に形成された被係合部27aに対してプランジャ5の後退方向に係合可能な位置(「ON」の位置)と、当該係合が解除される位置(「OFF」の位置)との間で移動可能である。
フック67がOFF(係合解除)されることにより、プランジャ5を当接部材63に対して相対的に前進させることが可能である。また、フック67がON(係合)されることにより、当接部材63の後退に伴ってプランジャ5を後退させることができる。すなわち、駆動内部装置35の駆動力によりプランジャ5を後退させることができる。
アクチュエータ69は、例えば、往復動(別の観点では伸縮)を行うアクチュエータにより構成されている。アクチュエータ69は、例えば、リニアモータ、空圧シリンダ若しくは液圧シリンダである。アクチュエータ69は、一端側(例えば本体)が当接部材63に支持されるとともに、他端側(例えば可動部)がフック67に連結されている。そして、アクチュエータ69の往復動によって、フック67はON若しくはOFFされる。
図2では、駆動シリンダ装置37側に配置されたフック装置65のみを示しているが、バランスシリンダ装置12側においても同様に、フック67及びアクチュエータ69が設けられている(図1参照)。なお、駆動シリンダ装置37側及びバランスシリンダ装置12側の一方のみにアクチュエータ69が設けられ、適宜なリンク機構を介して双方のフック67が駆動されてもよい。
なお、本実施形態では、当接部材63及びフック装置65の全体を着脱部13として捉えている。ただし、フック装置65のみを着脱部として捉えてもよい。
(制御系の構成)
図1に戻って、制御装置15は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置、入力回路、及び、出力回路を含んで構成されている。制御装置15は、入力された各種の入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力する。
制御装置15に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける不図示の入力装置、エンコーダ43、サーボドライバ45、射出ピストンロッド21の位置を検出する第1位置センサ71、ねじ軸49の位置を検出する第2位置センサ73、液圧回路33(サーボバルブ34含む)、適宜な位置において作動液の圧力を検出する圧力センサ(例えばバランスヘッド側室57hの圧力を検出する第1圧力センサ75)である。
制御装置15が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する不図示の表示器、サーボドライバ45、液圧回路33(サーボバルブ34含む)である。
第1位置センサ71は、射出シリンダチューブ17に対する射出ピストンロッド21の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。第1位置センサ71は、例えば、射出ピストンロッド21に固定され若しくは形成され、射出ピストンロッド21の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第1位置センサ71、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
第2位置センサ73は、ナット47に対するねじ軸49の位置を検出するものであり、駆動装置11の被駆動部(駆動シリンダチューブ51)の位置を間接的に検出するものである。第2位置センサ73は、例えば、ねじ軸49に固定され若しくは形成され、ねじ軸49の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第2位置センサ73、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
圧力センサは、適宜な位置に設けられる。例えば、特に図示しないが、射出ヘッド側室17hの圧力を検出する圧力センサ及び射出ロッド側室17rの圧力を検出する圧力センサが設けられ、制御装置15は、これらの圧力センサの検出値に基づいて、プランジャ5が溶湯に加える圧力を特定可能である。また、例えば、特に図示しないが、アキュムレータ31の圧力を検出する圧力センサが設けられ、制御装置15は、その検出値に基づいて、アキュムレータ31の充填完了を判定可能である。
(射出装置の動作)
図3は、射出装置1の動作を説明する図である。図3において、横軸は時間を示している。また、実線Lvは射出速度の変化を示し、実線Lpは射出圧力の変化を示している。実線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、射出ピストン19、駆動電動機39、着脱部13(フック装置65)、サーボバルブ34、ポンプ用電動機29及びアキュムレータ31の動作を示している。図3のさらに下方においては、駆動電動機39の負荷を示している。
なお、サーボバルブ34の「ON/OFF」は、開口度が制御されている状態/開口度が制御されずに開かれている若しくは閉じられている状態を示している。また、アキュムレータ31の「充填」は、アキュムレータ31を充填可能な状態を示している(「充填」とされた範囲全体に亘って充填が行われている必要は無い)。
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1及び図2に示す状態となっている。すなわち、射出ピストン19及びねじ軸49は、後退限等の初期位置に位置している。この初期位置において、当接部材63は継手23に当接しており、また、フック67は継手23に係合可能である。ただし、必ずしも係合がなされている必要はなく、本実施形態では、係合は解除(OFF)されているものとする。また、駆動電動機39は停止している。ポンプ用電動機29は、アキュムレータ31の充填が完了しているのであれば停止されており、充填が完了していないのであれば駆動されている。液圧回路33は、アキュムレータ31からの作動液の放出を禁止している。サーボバルブ34は閉じられている。
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置15は、駆動電動機39を駆動し、ねじ軸49及び駆動シリンダチューブ51を前進させる。その駆動力は、当接部材63及び継手23を介してプランジャ5及び射出ピストンロッド21に伝達され、これらを前進させる。すなわち、駆動装置11の駆動力によって低速射出が行われる。
このとき、駆動シリンダチューブ51が駆動ピストン53(駆動ピストンロッド55)に対して前進することにより、駆動ヘッド側室51hの作動液は、バランスヘッド側室57hへ供給される。従って、バランスシリンダチューブ57は、駆動シリンダチューブ51と同じ速度で前進する。その駆動力は、駆動シリンダチューブ51と同様に、当接部材63及び継手23を介してプランジャ5及び射出ピストンロッド21に伝達される。その結果、駆動装置11(駆動シリンダチューブ51)からプランジャ5に加えられるモーメントは、バランスシリンダ装置12(バランスシリンダチューブ57)からプランジャ5に加えられるモーメントによって打ち消される。
バランスシリンダチューブ57の前進に伴ってバランスロッド側室57rから排出される作動液は、駆動シリンダチューブ51の前進に伴って容積が拡大する駆動ロッド側室51rに過不足なく収容される。
また、制御装置15は、射出ピストン19の前進に伴って、射出ロッド側室17rからの作動液の排出及び射出ヘッド側室17hへの作動液の補給が適宜に行われるように、液圧回路33を制御する。
例えば、液圧回路33は、射出ロッド側室17rから排出される作動液をタンク25に排出し、又は、不図示のランアラウンド回路を介して射出ヘッド側室17hに還流する。低速射出の間、サーボバルブ34は、例えば全開とされる。なお、ランアラウンド回路を利用する場合においても、射出ヘッド側室17hは、射出ロッド側室17rよりも受圧面積が大きいから、射出ヘッド側室17hへの作動液の補給は必要である。
また、例えば、液圧回路33は、タンク25から射出ヘッド側室17hへの作動液の流れを許容し、射出ヘッド側室17hへ作動液を補給する。アキュムレータ31の充填を低速射出前に終了させ、ポンプ27から射出ヘッド側室17hへ作動液を補給してもよい。若しくは、不図示のアシスト用のアキュムレータから射出ヘッド側室17hへ作動液を補給してもよい。なお、ポンプ27若しくはアキュムレータから作動液を補給する場合、射出ヘッド側室17hに負圧が生じない程度に作動液が補給されてもよいし(この場合も駆動装置11のみにより低速射出を行っているといえる)、駆動装置11によるプランジャ5の駆動をアシストするように(例えばプランジャ5を駆動する駆動力の数十%を生じるように)作動液が補給されてもよい。
プランジャ5の速度は、駆動電動機39の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置15は、第2位置センサ73(第1位置センサ71でもよい)により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、駆動電動機39の回転数をフィードバック制御する。
アキュムレータ31の充填は、アキュムレータ31の圧力を検出する不図示の圧力センサの検出値が所定の充填完了圧力に到達したときに、ポンプ用電動機29が停止(OFF)されることにより終了する。ポンプ27の容量、ポンプ用電動機29の回転数及び/又は充填完了圧力等は、後述するアキュムレータ31の充填開始時点後、低速射出が終了するまでの適宜な時期において、アキュムレータ31の充填が完了するように適宜に設定されている。
なお、図3では、着脱部13(フック装置65)がOFF(係合解除)された状態で低速射出が行われている場合を例示しているが、着脱部13はONされていてもよい。この場合、例えば、減速を含む多段制御を行ったときに、慣性力によってプランジャ5が当接部材63から離間して前進してしまうことを防止できる。
(高速射出:t1〜t2)
制御装置15は、第2位置センサ73(第1位置センサ71でもよい)の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、アキュムレータ31から射出ヘッド側室17hへ作動液が供給されるように液圧回路33を制御する。また、制御装置15は、サーボバルブ34を適宜な開度に調整する。さらに、制御装置15は、低速射出から引き続き着脱部13をOFF(係合解除)とし、若しくは、低速射出においてONであった着脱部13をOFFとする。
これにより、射出ピストン19、射出ピストンロッド21及びプランジャ5は比較的高速で前進する。このとき、着脱部13の係合が解除されているから、プランジャ5等は、比較的低速で移動する当接部材63や駆動シリンダチューブ51等を置き去りにして前進する。従って、駆動装置11は、プランジャ5等の前進を妨げる負荷とはならない。そして、スリーブ3の溶湯が高速でキャビティ105に射出される。
なお、射出シリンダ装置7によってプランジャ5が駆動されることにより、駆動装置11の駆動電動機39の負荷は低速射出時よりも低下する。
プランジャ5の速度は、サーボバルブ34の開口度の調整により制御される。なお、制御装置15は、第1位置センサ71により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、サーボバルブ34の開口度をフィードバック制御してもよい。
(減速射出:t2〜t3)
溶湯がキャビティ105にある程度充填されると、プランジャ5は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときにサーボバルブ34の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
(増圧:t3〜t4)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置15は、増圧工程を開始するように液圧回路33を制御する。増圧開始条件は、例えば、射出ヘッド側室17hの圧力を検出する不図示の圧力センサ(及び必要に応じて射出ロッド側室17rの圧力を検出する不図示の圧力センサ)の検出値に基づく射出圧力が所定の値に到達したこと、又は、第1位置センサ71により検出されるプランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
液圧回路33は、増圧開始のために、例えば、射出工程においてランアラウンド回路により射出ロッド側室17rから排出される作動液を射出ヘッド側室17hへ還流していたのであれば、ランアラウンド回路をオフし、射出ロッド側室17rをタンク25に接続してタンク圧とする。これにより、射出ヘッド側室17hの圧力はアキュムレータ31の圧力と同等となるまで上昇し、射出圧力は終圧に到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより0となる。なお、射出工程において射出ロッド側室17rが既にタンク圧とされているような場合においては、増圧工程において射出工程と異なる動作が特に行われなくてもよい。
(保圧:t4〜t6)
制御装置15は、射出圧力が終圧となっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置15は、アキュムレータ31から射出ヘッド側室17hへの液圧の供給を停止するとともに、射出ロッド側室17rからタンク25への作動液の排出を停止するように液圧回路33を制御し、保圧は終了する。
なお、制御装置15は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧が得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
(被駆動部の到達:t5)
増圧が開始されてプランジャ5の速度が低下し、さらには、保圧が開始されてプランジャ5が停止することにより、駆動装置11によって低速射出から引き続き駆動されていた当接部材63は継手23に追いつく。換言すれば、着脱部13は、係合可能な状態となる。当接部材63が継手23に到達する時点は、好ましくは保圧完了前である。
制御装置15は、第1位置センサ71及び第2位置センサ73の検出値に基づいて当接部材63の継手23への到達を検出すると、駆動電動機39を停止させる。
なお、高速射出開始から当接部材63が継手23に到達するまでの当接部材63の速度は、低速射出時の速度と同等であってもよいし、異なっていてもよい。また、当接部材63がプランジャ5に衝撃を与えないように、適宜に減速制御が行われてもよい。
(押出追従:t7〜t9)
保圧終了後、制御装置15は、不図示の型締装置に型開きを行わせるとともに、不図示の押出装置により固定金型101から成形品を押し出す。このとき、制御装置15は、駆動電動機39を駆動シリンダチューブ51を前進させる方向に駆動して、プランジャ5によりビスケットを押し出す。このときにも、低速射出時と同様に、駆動装置11(駆動シリンダチューブ51)からプランジャ5に付与されるモーメントは、バランスシリンダ装置12(バランスシリンダチューブ57)からプランジャ5に付与されるモーメントによって打ち消される。なお、射出シリンダ装置7及び液圧回路33等における作動液の流れは、例えば、低速射出時と同様とされてよい。
制御装置15は、サーボドライバ45の検出する、駆動電動機39に流れる電流(負荷)が所定の設定値以上となる場合は、射出シリンダ装置7を併用してプランジャ5を前進させる。具体的には、例えば、アキュムレータ31から射出ヘッド側室17hに作動液を供給するように液圧回路33を制御する。なお、射出ロッド側室17rの作動液は、射出ヘッド側室17hに還流されてもよいし、タンク25に排出されてもよい。
一方、制御装置15は、サーボドライバ45の検出する負荷が設定値未満となる場合は、射出シリンダ装置7を併用せずに、駆動電動機39のみによるプランジャ5の前進を行う。
なお、試運転において設定値以上か否かの判定が行われ、その後の複数の成形サイクルに対して一律に併用するか否かが決定されてもよいし、成形サイクル毎に設定値以上か否かの判定が行われ、各成形サイクルにおいて設定値以上となった以後若しくは設定値以上となっている間において併用が行われてもよい。
また、併用は、押出追従の全体に亘って行われてもよいし、負荷が大きくなる初期のみにおいて行われてもよい。なお、ここでいう押出追従の初期は、押出追従において、プランジャ5が前進を開始する時点を含み、プランジャ5の前進が停止する時点を含まない範囲であり、例えば、押出追従におけるプランジャ5のストロークのうち最初の1/5〜1/2の範囲に相当する期間である。
なお、図3では、射出シリンダ装置7を併用している場合を例示するとともに、予め射出シリンダ装置7が併用されることが決定され、駆動電動機39の回転開始と同時にアキュムレータ31の放出が開始され、また、押出追従の初期(t7〜t8)のみにおいて併用が行われる場合を例示している。
(プランジャ後退:t10〜t11)
制御装置15は、当接部材63が継手23に到達した以後(t5以後)からの適宜な時期、好適には、保圧終了後(t6後)、より好適には押出追従の開始時(t7)において、着脱部13をON(係合)状態とする。そして、制御装置15は、押出追従が完了すると、駆動シリンダチューブ51を後退させる方向に駆動電動機39を駆動する。これにより、プランジャ5が後退する。
このとき、駆動ロッド側室51rから排出された作動液は、バランスロッド側室57rに供給され、バランスシリンダチューブ57は、駆動シリンダチューブ51と同一の速度で後退する。駆動シリンダチューブ51の後退に伴ってバランスヘッド側室57hから排出される作動液は、駆動シリンダチューブ51の後退に伴って容積が拡大する駆動ヘッド側室51hに収容される。そして、低速射出時と同様に、駆動装置11(駆動シリンダチューブ51)からプランジャ5に付与されるモーメントは、バランスシリンダ装置12(バランスシリンダチューブ57)からプランジャ5に付与されるモーメントにより打ち消される。
なお、射出ピストン19の後退に伴って射出ヘッド側室17hから排出される作動液は、例えば、液圧回路33を介して射出ロッド側室17rへ還流される。射出ロッド側室17rにおける作動液の余剰分は、例えば、液圧回路33を介してタンク25へ排出される。射出ヘッド側室17hから排出される作動液は、アキュムレータ31の充填に供されることも可能である。
(アキュムレータ充填:t9〜t11〜t1)
アキュムレータ31の充填は、アキュムレータ31の放出が行われる高速射出、増圧及び保圧、並びに、アキュムレータ31の放出が行われる可能性のある押出追従を除いて、適宜な時期に行われてよい。
例えば、制御装置15は、押出追従が完了すると(t9)、ポンプ用電動機29の駆動を開始し、アキュムレータ31の充填を開始する。アキュムレータ31の充填完了時期は、既に述べたように、低速射出終了までの間の適宜な時期とされる。
以上のとおり、本実施形態では、射出装置1は、プランジャ5、射出シリンダ装置7、駆動装置11及びバランスシリンダ装置12を有している。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。射出シリンダ装置7は、プランジャ5と直列に連結された射出ピストンロッド21を有する。駆動装置11は、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制されるとともに、射出ピストンロッド21に対する相対的な後退が許容される駆動シリンダチューブ51(第1被駆動部)を有する。また、駆動装置11は、射出シリンダ装置7に並列に配置されており、駆動シリンダチューブ51を射出ピストンロッド21の移動方向に駆動可能である。バランスシリンダ装置12は、バランスピストンロッド61、当該バランスピストンロッド61に固定されたバランスピストン59及び当該バランスピストン59を収容するバランスシリンダチューブ57を有する。また、バランスシリンダ装置12は、射出シリンダ装置7に対して駆動装置11とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。バランスピストンロッド61及びバランスシリンダチューブ57の一方(第2被駆動部、本実施形態ではバランスシリンダチューブ57)は、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、また、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制されるとともに、射出ピストンロッド21に対する相対的な後退が許容される。
従って、まず、基本的な効果として、既に述べたように、駆動装置11からプランジャ5に駆動力を付与する際に、バランスシリンダ装置12からもプランジャ5に駆動力を付与することにより、プランジャ5に付与されるモーメントを全体として低減することができる。その結果、プランジャ5の円滑な駆動が可能となり、ひいては、移動速度の正確な制御も可能となる。また、バランス力を生じる駆動源(バランスシリンダ装置12)としてシリンダ装置を用いていることから、大型化によって高額となりやすい電動機(駆動電動機39)を増設する必要がない。
さらに、バランスシリンダ装置12も、駆動装置11と同様に、プランジャ5に対して相対的な前進が規制され、相対的な後退が許容されるから、バランスシリンダ装置12は、高速に駆動可能に構成されたり、若しくは、高速に駆動されるように作動液が供給される必要がない。すなわち、バランスシリンダ装置12及び当該バランスシリンダ装置12を駆動するための液圧回路は、プランジャ5に生じるモーメントを低減するのに必要十分なものとされてよい。その結果、例えば、コストを抑制した好適化が図られる。
また、本実施形態では、駆動装置11は、駆動シリンダ装置37と、駆動シリンダ装置37を駆動可能な駆動内部装置35とを有している。駆動シリンダ装置37は、駆動ピストンロッド55、当該駆動ピストンロッド55に固定された駆動ピストン53及び当該駆動ピストン53を収容する駆動シリンダチューブ51を有している。また、駆動シリンダ装置37は、射出シリンダ装置7に対してバランスシリンダ装置12とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。駆動ピストンロッド55及び駆動シリンダチューブ51の一方(第1被駆動部、本実施形態では駆動シリンダチューブ51)は、駆動内部装置35によって射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、他方(支持部、本実施形態では駆動ピストンロッド55)は射出シリンダチューブ17に対して射出ピストンロッド21の移動方向に移動不可能である。そして、駆動シリンダチューブ51とバランスシリンダチューブ57とは連通されており、射出装置1は、駆動内部装置35の駆動力により第1被駆動部(駆動シリンダチューブ51)を駆動することにより、駆動シリンダ装置37からバランスシリンダ装置12へ作動液を供給して、第2被駆動部(バランスシリンダチューブ57)を第1被駆動部(駆動シリンダチューブ51)と同一方向へ駆動可能である。
従って、バランスシリンダ装置12へ作動液を送出するポンプ若しくはアキュムレータを省略し、又は、その負担を低減することができ、また、作動液の必要量を低減することができる。さらに、駆動装置11とバランスシリンダ装置12との同期制御も容易化され、ひいては、プランジャ5に付与されるモーメントの相殺が容易化される。
また、本実施形態では、駆動シリンダ装置37及びバランスシリンダ装置12は、ヘッド側のシリンダ室(駆動ヘッド側室51h及びバランスヘッド側室57h)同士が連通されるとともにロッド側のシリンダ室(駆動ロッド側室51r及びバランスロッド側室57r)同士が連通されており、ヘッド側のシリンダ室におけるピストンの受圧面積が互いに同一であり、且つ、ロッド側のシリンダ室におけるピストンの受圧面積が互いに同一である。
従って、バランスシリンダ装置12を駆動シリンダ装置37と同一の速度で駆動することができ、プランジャ5に付与されるモーメントの相殺が好適になされる。さらに、バランスシリンダ装置12と駆動シリンダ装置37との間で過不足なく作動液が送受されることから、作動液の必要量を低減することができ、また、余剰な作動液を貯留したり、不足する作動液を補給したりするための液圧回路を設ける必要がない。
なお、上記の駆動シリンダ装置37とバランスシリンダ装置12との間で作動液を送受する好適な構成は、それ自体でも(着脱部13を要せずに)、好適な効果を奏する。すなわち、上記とは別の観点において、射出装置1は、以下のように、好適な構成を備えている。射出装置1は、プランジャ5、射出シリンダ装置7、駆動装置11及びバランスシリンダ装置12を有している。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。射出シリンダ装置7は、プランジャ5と直列に連結された射出ピストンロッド21を有する。駆動装置11は、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制される駆動シリンダチューブ51(第1被駆動部)を有する。また、駆動装置11は、射出シリンダ装置7に並列に配置されており、駆動シリンダチューブ51を射出ピストンロッド21の移動方向に駆動可能である。バランスシリンダ装置12は、バランスピストンロッド61、当該バランスピストンロッド61に固定されたバランスピストン59及び当該バランスピストン59を収容するバランスシリンダチューブ57を有する。また、バランスシリンダ装置12は、射出シリンダ装置7に対して駆動装置11とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。バランスピストンロッド61及びバランスシリンダチューブ57の一方(第2被駆動部、本実施形態ではバランスシリンダチューブ57)は、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、また、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制される。駆動装置11は、駆動シリンダ装置37と、駆動シリンダ装置37を駆動可能な駆動内部装置35とを有している。駆動シリンダ装置37は、駆動ピストンロッド55、当該駆動ピストンロッド55に固定された駆動ピストン53及び当該駆動ピストン53を収容する駆動シリンダチューブ51を有している。また、駆動シリンダ装置37は、射出シリンダ装置7に対してバランスシリンダ装置12とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。駆動ピストンロッド55及び駆動シリンダチューブ51の一方(第1被駆動部、本実施形態では駆動シリンダチューブ51)は、駆動内部装置35によって射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、他方(支持部、本実施形態では駆動ピストンロッド55)は射出ピストンロッド21の移動方向に移動不可能である。そして、駆動シリンダチューブ51とバランスシリンダチューブ57とは連通されており、射出装置1は、駆動内部装置35の駆動力により第1被駆動部(駆動シリンダチューブ51)を駆動することにより、駆動シリンダ装置37からバランスシリンダ装置12へ作動液を供給して、第2被駆動部(バランスシリンダチューブ57)を第1被駆動部と同一方向へ駆動可能である。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係るダイカストマシンDC201の射出装置201の要部の構成を示す図である。
第2の実施形態は、駆動シリンダ装置237の配置が第1の実施形態と異なり、ひいては、駆動シリンダ装置237及びバランスシリンダ装置12の動作が第1の実施形態と異なる。具体的には、以下のとおりである。
駆動シリンダ装置237は、第1の実施形態と同様に、射出シリンダ装置7に対して並列に配置されている。ただし、第1の実施形態とは異なり、駆動シリンダ装置237は、駆動シリンダチューブ251を前方に、駆動ピストンロッド255を後方に向けて配置されている。駆動シリンダチューブ251は、第1の実施形態と同様に、プランジャ5(射出ピストンロッド21)の移動方向に移動可能とされており、また、当接部材63と固定されている。一方、駆動ピストンロッド255は、第1の実施形態とは異なり、ダイカストマシンDC201の不動部分に固定されず、プランジャ5の移動方向に移動可能とされている。
なお、図4において2ヶ所に付した符号c及び2ヶ所に付した符号dにより示されるように、第1の実施形態と同様に、駆動ヘッド側室251hとバランスヘッド側室57hとは連通されており、駆動ロッド側室251rとバランスロッド側室57rとは連通されている。
駆動装置211において、駆動内部装置235は、第1の実施形態とは異なり、駆動ピストンロッド255を駆動するように構成されている。具体的には、駆動ピストンロッド255は、ねじ溝が切られて、ねじ機構241のねじ軸に兼用されている。また、駆動ピストンロッド255は、不図示の回り止め部材によって軸回りの回転が規制されている。そして、駆動電動機39によりナット47が回転すると、駆動ピストンロッド255は、その軸方向に移動する。
駆動内部装置235により、駆動ピストンロッド255を前進させると、駆動ヘッド側室251hの圧力が上昇する。従って、駆動シリンダチューブ251を前進させる力が生じるとともに、駆動ヘッド側室251hからバランスヘッド側室57hに作動液が供給され、バランスシリンダチューブ57を前進させる力が生じる。駆動シリンダチューブ251及びバランスシリンダチューブ57は互いに連結されているから、互いに同一の速度で進む。なお、駆動シリンダチューブ251及びバランスシリンダチューブ57は、互いに連結されていない場合においても、プランジャ5から反力を受けるまでは容易に前進するから、プランジャ5を押しながら互いに同一の速度で進むことになる。
駆動ピストンロッド255は、駆動シリンダチューブ251とバランスシリンダチューブ57とが同一の速度で進み、且つ、駆動ヘッド側室251hの容積の縮小量とバランスヘッド側室57hの容積の拡大量とが等しくなる条件を満たす量で前進する。例えば、以下のとおりである。
バランスピストン59のバランスヘッド側室57hにおけるバランスピストン59の受圧面積をS2とする。バランスシリンダチューブ57が距離L前進したときのバランスヘッド側室57hの容積の拡大量をV(=S2×L)とする。このとき、駆動ヘッド側室251hからバランスヘッド側室57hへ上述の容積の拡大量Vに相当する量の作動液が送出される必要がある(駆動ヘッド側室251hは、縮小量Vで縮小される必要がある。)。従って、駆動ヘッド側室251hにおける駆動ピストン53の受圧面積をS1とすると、駆動ピストン53は、駆動シリンダチューブ251に対して、V/S1で相対的に前進する。ここで、上述のように、駆動シリンダチューブ251は、バランスシリンダチューブ57と同一の距離Lで前進している。従って、駆動ピストンロッド255は、ダイカストマシンDC201の不動部分に対して、L+V/S1の距離を前進することになる。また、本実施形態では、S1=S2であるから、駆動ピストンロッド255は、距離2L前進することになる。換言すれば、駆動ピストンロッド255は、駆動シリンダチューブ251及びバランスシリンダチューブ57の2倍の速度で前進することになる。
バランスロッド側室57rから排出された作動液は、第1の実施形態と同様に、駆動ロッド側室251rに収容される。駆動シリンダ装置237及びバランスシリンダ装置12は、ヘッド側(駆動ヘッド側室251h及びバランスヘッド側室57h)の受圧面積が互いに同一であり、且つ、ロッド側(駆動ロッド側室251r及びバランスロッド側室57r)の受圧面積が互いに同一であることから、作動液の過不足は生じない。
駆動内部装置235により駆動ピストンロッド255を前進させた場合について説明したが、駆動内部装置235により駆動ピストンロッド255を後退させた場合も同様である。すなわち、駆動シリンダチューブ251及びバランスシリンダチューブ57は同一の速度で後退し、駆動ピストンロッド255は駆動シリンダチューブ251の2倍の速度で後退し、また、駆動シリンダチューブ251及びバランスシリンダチューブ57の間において作動液の送受が過不足なく行われる。
以上の構成を有する射出装置201の動作は、図3を参照して説明した第1の実施形態の射出装置1の動作と同様である。ただし、駆動装置11によりプランジャ5を駆動するとき、プランジャ5の所望の速度に対して、2倍の速度で駆動ピストンロッド255は駆動される。
以上のとおり、第2の実施形態では、射出装置201は、第1の実施形態の射出装置1と同様に、バランスシリンダ装置12を有していることから、第1の実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、基本的な効果として、モーメントの低減等が得られ、また、バランスシリンダ装置12における第2被駆動部(本実施形態ではバランスシリンダチューブ57)のプランジャ5に対する相対的な後退の許容により、バランスシリンダ装置12及び液圧回路の好適化が図られる。
また、第2の実施形態では、駆動装置211は、駆動シリンダ装置237と、駆動シリンダ装置237を駆動可能な駆動内部装置235とを有している。駆動シリンダ装置237は、駆動ピストンロッド255、当該駆動ピストンロッド255に固定された駆動ピストン53及び当該駆動ピストン53を収容する駆動シリンダチューブ251を有している。また、駆動シリンダ装置237は、射出シリンダ装置7に対してバランスシリンダ装置12とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。駆動ピストンロッド255及び駆動シリンダチューブ251の一方(第1被駆動部、本実施形態では駆動シリンダチューブ251)は、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、また、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制され且つ相対的な後退が許容され、他方(支持部、本実施形態では駆動ピストンロッド255)は、駆動内部装置235により、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動される。そして、駆動シリンダチューブ51とバランスシリンダチューブ57とは連通されており、射出装置1は、駆動内部装置35の駆動力により支持部(駆動ピストンロッド255)を駆動することにより、駆動シリンダ装置37からバランスシリンダ装置12へ作動液を供給して、第2被駆動部(バランスシリンダチューブ57)を第1被駆動部(駆動シリンダチューブ251)と同一方向へ駆動可能である。
従って、まず、第1の実施形態の駆動装置11と同様に、バランスシリンダ装置12へ作動液を送出するポンプ若しくはアキュムレータを省略し、又は、その負担を低減することができ、また、作動液の必要量を低減することができる。さらに、駆動装置11とバランスシリンダ装置12との同期制御も容易化され、ひいては、プランジャ5に付与されるモーメントの相殺が容易化される。
さらに、第1の実施形態の駆動装置11とは異なり、駆動ピストンロッド255は、プランジャ5よりも移動距離が長い(本実施形態では2倍)。従って、第1の実施形態と同一の仕事量を行うときに、第1の実施形態に比較して、駆動装置11の力(駆動電動機39のトルク)を小さくすることができる。その結果、駆動電動機39の小型化、低コスト化を図ることができる。
なお、上記の駆動シリンダ装置237とバランスシリンダ装置12との間で作動液を送受する好適な構成は、第1の実施形態と同様に、それ自体でも(着脱部13を要せずに)、好適な効果を奏する。すなわち、射出装置1は、以下のように、好適な構成を備えている。射出装置1は、プランジャ5、射出シリンダ装置7、駆動装置211及びバランスシリンダ装置12を有している。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。射出シリンダ装置7は、プランジャ5と直列に連結された射出ピストンロッド21を有する。駆動装置211は、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制される駆動シリンダチューブ251(第1被駆動部)を有する。また、駆動装置211は、射出シリンダ装置7に並列に配置されており、駆動シリンダチューブ251を射出ピストンロッド21の移動方向に駆動可能である。バランスシリンダ装置12は、バランスピストンロッド61、当該バランスピストンロッド61に固定されたバランスピストン59及び当該バランスピストン59を収容するバランスシリンダチューブ57を有する。また、バランスシリンダ装置12は、射出シリンダ装置7に対して駆動装置211とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。バランスピストンロッド61及びバランスシリンダチューブ57の一方(第2被駆動部、本実施形態ではバランスシリンダチューブ57)は、射出ピストンロッド21の移動方向に駆動され、また、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制される。駆動装置211は、駆動シリンダ装置237と、駆動シリンダ装置237を駆動可能な駆動内部装置235とを有している。駆動シリンダ装置237は、駆動ピストンロッド255、当該駆動ピストンロッド255に固定された駆動ピストン53及び当該駆動ピストン53を収容する駆動シリンダチューブ251を有している。また、駆動シリンダ装置237は、射出シリンダ装置7に対してバランスシリンダ装置12とは反対側において射出シリンダ装置7に並列に配置されている。駆動ピストンロッド255及び駆動シリンダチューブ251の一方(第1被駆動部、本実施形態では駆動シリンダチューブ251)は、射出ピストンロッド21に対する相対的な前進が規制され、他方(支持部、本実施形態では駆動ピストンロッド255)は射出ピストンロッド21の移動方向に移動可能である。そして、駆動シリンダチューブ51とバランスシリンダチューブ57とは連通されており、射出装置1は、駆動内部装置35の駆動力により支持部(駆動ピストンロッド255)を駆動することにより、駆動シリンダ装置37からバランスシリンダ装置12へ作動液を供給して、第2被駆動部(バランスシリンダチューブ57)を第1被駆動部(駆動シリンダチューブ251)と同一方向へ駆動可能である。
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態に係るダイカストマシンDC301の射出装置301の要部の構成を示す図である。
第3の実施形態は、バランスヘッド側室57hへ作動液を補給可能になっている点のみが第2の実施形態と相違する。作動液の補給は、例えば、ポンプ27から液圧回路33を介してバランスヘッド側室57hへ作動液が供給されることにより行われる。なお、その経路には、ポンプ27からバランスヘッド側室57hへの作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する逆止弁81が設けられていることが好ましい。
理論的には、既に述べたように、駆動シリンダ装置237とバランスシリンダ装置12との間において作動液の過不足は生じない。しかし、実際には、作動液のリークが生じ、バランスシリンダ装置12への駆動力の伝達ロス乃至はバランスシリンダ装置12の応答性の低下が生じ得る。そこで、バランスヘッド側室57hへ作動液を補給することにより、このような不都合を解消できる。
バランスヘッド側室57hへの作動液の補給は、バランスシリンダ装置12の利用前(例えば低速射出開始前)に行われてもよいし、バランスシリンダ装置12の利用中(例えば低速射出中)に行われてもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
射出シリンダ装置は、単動式のものに限定されず、増圧式のものであってもよい。例えば、射出シリンダ装置は、小径部と大径部とを有する射出シリンダチューブと、射出ピストンロッドに固定され、小径部を摺動する射出ピストンと、その後方にて小径部と大径部とを摺動する増圧ピストンとを有するものであってもよい。
駆動装置(若しくは駆動内部装置)は、好適には電動機を含むものである。ただし、駆動装置は、必ずしも電動機を含むものに限定されず、駆動力を生じる種々の方式のものとされてよい。また、駆動内部装置は、電動機、ポンプ及びシリンダ装置がユニット化された電動シリンダ(ハイブリッドシリンダ)であってもよい。
電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、リニアモータの場合には、伝達機構を介さずに、リニアモータの駆動力が直接に射出ピストンロッドに伝達されてもよい。電動機が回転式のものである場合において、電動機の回転を並進運動に変換する伝達機構はねじ機構に限定されず、例えば、ラック・ピニオン機構であってもよい。電動機とねじ機構等との間には、歯車機構やプーリベルト機構が介在してもよい。
なお、このように、駆動装置は、種々の態様が可能であるが、第1被駆動部の直近の、並進運動を生じている機構(ねじ機構やラック・ピニオン機構)乃至は並進運動を生じている駆動源(リニアモータ)における運動がプランジャ(射出ピストン)に対して並列であれば、駆動装置は並列であるものとする。例えば、実施形態においては、伝達機構41が射出シリンダ装置7に並列であれば、伝達機構41に駆動力を付与する回転式の電動機が射出シリンダ装置7に並列に配置されていなくても(この場合、歯車機構やプーリベルト機構を介して駆動力はナット47に伝達される)、駆動装置は、射出装置に並列であるといえる。
駆動シリンダ装置は設けられなくてもよい。別の観点では、バランスシリンダ装置は、駆動装置の駆動力により作動液が送られるものでなくてもよい。例えば、駆動装置のねじ軸若しくはナットが直接にプランジャ5(射出ピストンロッド)と連結され、バランスシリンダ装置には、ポンプ若しくはアキュムレータから作動液が供給されてもよい。
駆動シリンダ装置と、バランスシリンダ装置との間において作動液が送受される場合において、駆動シリンダ装置とバランスシリンダ装置とは、ヘッド側室における受圧面積及び/又はロッド側室における受圧面積が互いに同一でなくてもよい。作動液の過不足は、ポンプ、アキュムレータ若しくはタンクによって吸収可能であり、また、駆動シリンダ装置とバランスシリンダ装置との間で作動液の送受が行われることにより、作動液の必要量が低減される効果は奏される。また、作動液の送受は、プランジャの前進及び後退のうちの一方のみにおいて行われてもよい。
駆動シリンダチューブ及び駆動ピストンロッドの向き(前後方向)は実施形態と逆であってもよい。また、駆動シリンダチューブ及び駆動ピストンロッドの役割(第1被駆動部であるか否か)も実施形態と逆であってもよい。向きと役割との組み合わせは全4通りのいずれであってもよい。バランスシリンダチューブ及びバランスピストンロッドの向きと役割(第2被駆動部であるか否か)についても同様である。
また、駆動シリンダチューブ及び駆動ピストンロッドの向き及び役割と、バランスシリンダチューブ及びバランスピストンロッドの向き及び役割との組み合わせも、(各実施形態につき)全16通りのいずれであってもよい。ただし、第1被駆動部と第2被駆動部とが同一方向へ駆動されたときに、駆動シリンダ装置及びバランスシリンダ装置の一方のシリンダ装置におけるヘッド側室が縮小する(ロッド側室が拡大する)ときに他方のシリンダ装置のヘッド側室が拡大する(ロッド側室が縮小する)組み合わせであることが、作動液の過不足を抑制する観点からは好ましい。
駆動装置(及びバランスシリンダ装置)並びに射出シリンダ装置は、適宜に単独で又は共に利用されてよい。例えば、駆動装置は、プランジャの後退及び押出追従に利用されなくてもよい。具体的には、特許文献1において開示されているように、駆動装置は、低速射出から高速射出への切り換えのときに停止され、プランジャの後退及び押出追従は、シリンダ装置のみによって行われてもよい。この場合、駆動装置は、低速射出のストロークで駆動可能であればよく、小型化が図られる。例えば、ねじ機構のねじの長さを短くすることができる。また、逆に、駆動装置は、射出シリンダ装置を補助するように、増圧及び/又は保圧に利用されてもよい。駆動装置及びシリンダ装置の協働は、一の工程の一部分のみにおいて行われてもよい。
上述のように、駆動装置(及びバランスシリンダ装置)は、必ずしもプランジャの後退に供されなくてもよいから、射出装置は、(第1及び第2)被駆動部のプランジャに対する相対的な前進を規制可能且つ被駆動部のプランジャに対する相対的な後退を許容可能に構成されればよく、被駆動部のプランジャに対する相対的な後退を規制する構成は必須ではない。例えば、実施形態において、フック装置65は省略可能である。
また、着脱部は、少なくとも被駆動部のピストンロッドに対する相対的な後退を許容するように連結を解除できれば十分であるが、被駆動部のピストンロッドに対する相対的な前進及び後退の双方を許容するような連結解除を行うものであってもよい。例えば、着脱部は、被駆動部に支持され、プランジャに対して前進方向及び後退方向の双方に対して係合する位置と当該係合位置から退避した位置との間で移動可能な係合部材と、当該係合部材を駆動するアクチュエータとを有するものであってもよい。
当接部材(被駆動部若しくは着脱部の一部であってよい)は、ピストンロッドに固定された部材に対して前進方向へ当接可能でなくてもよい。例えば、着脱部は、ピストンロッド若しくはピストンロッドに固定された所定部材を側方から挟持したり、所定部材に側方から吸着したりして、摩擦力のみによってピストンロッドと被駆動部との相対移動を規制するものであってもよい。その他、被駆動部とピストンロッドとの相対移動は適宜に規制若しくは許容されてよい。例えば、特許文献1に開示されている種々の態様が適用されてよい。
当接部材は、駆動装置(駆動シリンダ装置)の第1被駆動部(実施形態では駆動シリンダチューブ)と、バランスシリンダ装置の第1被駆動部(実施形態ではバランスシリンダチューブ)とを連結していなくてもよい。換言すれば、駆動装置と、バランスシリンダ装置とは、それぞれ別個に当接部材乃至は着脱部が設けられ、個別に移動可能であってもよい。ただし、実施形態のように連結しておいたほうが、いずれかに制御遅れが生じたような場合においても、好適にプランジャを駆動できると期待される。
液圧装置は、適宜に構成することができ、種々の流路の接続及び共用、並びに、種々の弁の配置は、適宜に変更可能である。例えば、実施形態では、メータアウト回路を構成するサーボバルブ34を設けたが、サーボバルブ34に代えて若しくは追加してメータイン回路を構成するサーボバルブが設けられてもよい。
実施形態においても述べたように、駆動シリンダ装置を設けて、駆動シリンダ装置とバランスシリンダ装置との間で作動液を送受する構成は、駆動シリンダ装置及びバランスシリンダ装置の被駆動部の射出ピストンロッドに対する相対的な後退が許容されない射出装置(例えば実施形態において駆動シリンダチューブ及びバランスシリンダチューブが射出ピストンロッドに対して成形サイクル中に連結を解除不可能に連結されている射出装置)においても適用可能である。
なお、本願発明の範囲外であるが、上記の作動液を送受する構成は、射出シリンダ装置を並列な2本のねじ機構により移動させる射出装置(例えば特開2006−315050号公報)において、1のねじ機構をバランスシリンダ装置に置き換えて適用可能である。また、上記の作動液を送受する構成は、射出シリンダ装置を有さずに、駆動シリンダ装置及びバランスシリンダ装置のみによりプランジャを駆動する射出装置にも適用可能である。また、上記の送受する構成は、射出装置のみならず、型開閉を行う型締装置の移動ダイプレートの移動にも利用可能である。