以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態と共通又は類似する構成については、既に説明された実施形態と共通の符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
射出装置1は、キャビティ105に連通する射出スリーブ3と、射出スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7とを有している。
また、射出装置1は、射出シリンダ装置7に作動液(例えば油)を供給するために、液圧供給装置9及びアキュムレータ11を有している。また、射出装置1は、液圧供給装置9への作動液の補給、及び、射出シリンダ装置7のサージ圧の吸収のために、補給部12を有している。
さらに、射出装置1は、射出シリンダ装置7、液圧供給装置9、アキュムレータ11及び補給部12の間の作動液の流れを制御する液圧回路13と、液圧供給装置9及び液圧回路13を制御する制御装置15とを有している。
射出スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、射出スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。
射出スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯が射出スリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aが射出スリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
射出シリンダ装置7は、射出シリンダチューブ17と、射出シリンダチューブ17の内部を摺動可能な射出ピストン19及び増圧ピストン21と、射出ピストン19に固定され、射出シリンダチューブ17から延び出る射出ピストンロッド23とを有している。なお、射出ピストン19及び射出ピストンロッド23は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
射出シリンダチューブ17は、射出シリンダ部17aと、射出シリンダ部17aに接続された増圧シリンダ部17bとを有している。射出シリンダ部17a及び増圧シリンダ部17bは、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。
射出シリンダ部17aの内部は、射出ピストン19により、射出ピストンロッド23が延び出る側の射出ロッド側室17rと、その反対側の射出ヘッド側室17hとに区画されている。射出ロッド側室17r及び射出ヘッド側室17hに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン19は射出シリンダチューブ17内を摺動する。
増圧シリンダ部17bは、射出シリンダ部17aの射出ヘッド側室17h側に接続され、また、射出シリンダ部17aよりも大径に形成されている。
増圧ピストン21は、射出シリンダ部17aの内部(射出ヘッド側室17h)を摺動可能な小径部21aと、増圧シリンダ部17bの内部を摺動可能な大径部21bとを有している。増圧シリンダ部17bの内部は、大径部21bにより、射出シリンダ部17a側の前側室17fと、その反対側の後側室17gとに区画されている。
従って、前側室17fの圧抜きを行うと、小径部21aの射出ヘッド側室17hにおける作用面積と、大径部21bの後側室17gにおける作用面積との差に起因して、増圧ピストン21は、後側室17gの作動液から受ける圧力よりも高い圧力を射出ヘッド側室17hの作動液に加えることが可能である。すなわち、射出シリンダ装置7は、増圧機能を有している。
射出シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸的に配置されている。そして、射出ピストンロッド23は、プランジャ5にカップリングを介して連結されている。射出シリンダチューブ17は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン19の射出シリンダチューブ17に対する移動により、プランジャ5は射出スリーブ3内を前進又は後退する。
液圧供給装置9は、回転式の電動機25と、電動機25の回転を並進運動に変換するネジ機構27と、ネジ機構27の並進運動が伝達されて駆動される供給シリンダ装置29とを有している。
電動機25は、直流モータでも交流モータでもよい。また、電動機25は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。電動機25は、例えば、サーボモータとして構成されており、電動機25の回転を検出するエンコーダ31と、電動機25に電力を供給するサーボドライバ(サーボアンプ)33と共にサーボ機構を構成している。
なお、後述する動作の説明において、電動機25が停止しているとき、電動機25は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及び電動機25が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
ネジ機構27は、ネジ軸35と、ネジ軸35に螺合されたナット37とを有している。ナット37は、不図示の型締装置などを含むマシン本体に対して軸回りの回転が規制されている。ネジ軸35は、マシン本体に対して軸方向の移動が規制されている。従って、ネジ軸35が一方向に回転することにより、ナット37は軸方向の一方側に移動し、ネジ軸35が他方向に回転することにより、ナット37は軸方向の他方側に移動する。
ネジ軸35は、例えば、電動機25のロータ若しくは出力軸に固定されており、電動機25のロータとともに回転する。なお、ネジ軸35は、歯車機構若しくはプーリ・ベルト機構を介して電動機25の回転が伝達されてもよい。
供給シリンダ装置29は、供給シリンダチューブ39と、供給シリンダチューブ39の内部を摺動可能な供給ピストン41と、供給ピストン41に固定され、供給シリンダチューブ39から延び出る供給ピストンロッド43とを有している。なお、供給ピストン41及び供給ピストンロッド43は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
供給シリンダチューブ39は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。供給シリンダチューブ39の内部は、供給ピストン41により、供給ピストンロッド43が延び出る側の供給ロッド側室39rと、その反対側の供給ヘッド側室39hとに区画されている。供給ピストン41が供給シリンダチューブ39内を摺動することにより、供給ロッド側室39r又は供給ヘッド側室39hからは作動液が排出される。
供給ピストン41の断面積(πD2)に対する供給ピストンロッド(πd2)の断面積の比は比較的大きく設定されている。例えば、当該比は、30%〜90%である。より好適には、60%〜70%である。D及びdの一例を挙げると、D=100mm、d=80mmであり、面積比は64%である。
ネジ機構27と供給シリンダ装置29とは同軸に配置されている。また、供給シリンダチューブ39は、不図示の型締装置などを含むマシン本体に対して固定されている。一方、供給ピストンロッド43は、ナット37に固定されている。従って、ナット37のネジ軸35に沿った移動により、供給ピストン41は供給シリンダチューブ39内を摺動する。
より具体的には、供給ピストンロッド43及び供給ピストン41の内部には、供給ピストンロッド43の供給ピストン41とは反対側の端面に開口する空洞が形成されており、ナット37は、その空洞の入り口付近において供給ピストンロッド43に固定されている。ネジ軸35は、ナット37及び供給ピストンロッド43が軸方向に移動することにより、供給ピストンロッド43の空洞に出し入れされる。
アキュムレータ11は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ11は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ11内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
補給部12は、補給シリンダ装置81を有している。補給シリンダ装置81は、補給シリンダチューブ83と、補給シリンダチューブ83に摺動可能に収容された補給ピストン85と、補給ピストン85に固定され、補給シリンダチューブ83から延び出る補給ピストンロッド87とを有している。
補給シリンダチューブ83の内部は、補給ピストン85により、気体(例えば空気若しくは窒素)が収容される気体室83gと、作動液が収容される液体室83qとに区画されている。すなわち、補給シリンダ装置81は、アキュムレータとして機能するものである。
補給ピストンロッド87は、補給ピストン85の位置を検出するためのものであり、例えば、補給位置センサ89とともに、磁気式又は光学式等のリニアエンコーダを構成している。すなわち、補給ピストンロッド87には、その軸方向に延びる不図示のスケール部が形成されており、補給位置センサ89は、スケール部との相対移動量に応じた数のパルスを出力する。補給ピストンロッド87は、例えば、気体室83g側から補給シリンダチューブ83の外部へ延び出ている。
補給部12は、この他、気体室83gの圧力を所定の圧力に保つことが可能に、気体室83gの圧力を計測する圧力計91、気体室83gに気体を供給可能な圧力源93、気体室83gの圧力が所定の圧力に到達すると圧力源93から気体室83gへの気体の供給を禁止する圧力制御弁95等を有している。
気体室83gの圧力は、アキュムレータ11の圧力よりも低圧に保持される。例えば、気体室83gの圧力は、高圧ガス保安法において高圧と定義されている圧力(1MPa)よりも低く保持される。
液圧回路13は、射出シリンダ装置7、供給シリンダ装置29、アキュムレータ11及び補給部12を互いに接続する複数の流路、及び、複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。具体的には、液圧回路13は、以下に述べる流路及び弁を有している。
液圧回路13は、供給ヘッド側室39hと射出ヘッド側室17hとを接続する第1流路45と、供給ロッド側室39rと射出ロッド側室17rとを接続する第2流路47とを有している。
従って、射出装置1は、供給ピストン41を供給ピストンロッド43とは反対側へ移動させることにより、供給ヘッド側室39hから射出ヘッド側室17hへ作動液を供給して射出ピストン19を射出ピストンロッド23側へ移動させる(前進させる)ことができる。
また、射出装置1は、供給ピストン41を供給ピストンロッド43側へ移動させることにより、供給ロッド側室39rから射出ロッド側室17rへ作動液を供給して射出ピストン19を射出ピストンロッド23とは反対側へ移動させる(後退させる)ことができる。
液圧回路13は、アキュムレータ11と射出ヘッド側室17hとを接続する第3流路49を有している。なお、第3流路49の射出ヘッド側室17h側の一部は、第1流路45の射出ヘッド側室17h側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
射出装置1は、第3流路49を介して、アキュムレータ11から射出ヘッド側室17hに作動液を供給することにより、射出ピストン19を射出ピストンロッド23側へ移動させることができる。
液圧回路13は、供給ロッド側室39rとアキュムレータ11とを接続する第4流路51を有している。なお、第4流路51のアキュムレータ11側の一部は第3流路49のアキュムレータ11側の一部と共用されており、第4流路51の供給ロッド側室39r側の一部は、第2流路47の供給ロッド側室39r側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
射出装置1は、供給ピストン41を供給ピストンロッド43側へ移動させることにより、供給ロッド側室39rから第4流路51を介してアキュムレータ11に作動液を供給し、アキュムレータ11を蓄圧することができる。
液圧回路13は、アキュムレータ11と後側室17gとを接続する第5流路53と、前側室17fと射出ロッド側室17rとを接続する第6流路55とを有している。なお、第5流路53のアキュムレータ11側の一部は第3流路49のアキュムレータ11側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
射出装置1は、アキュムレータ11から第5流路53を介して後側室17gに作動液を供給するとともに、第6流路55を利用して前側室17fの圧抜きを行うことにより、上述した増圧ピストン21の増圧作用により、アキュムレータ11の圧力よりも高い圧力を射出ヘッド側室17hに付与することができる。
液圧回路13は、後側室17gと供給ヘッド側室39hとを接続する第7流路57を有している。なお、第7流路57の後側室17g側の一部は第5流路53の後側室17g側の一部と共用されており、第7流路57の供給ヘッド側室39h側の一部は第1流路45の供給ヘッド側室39h側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
射出装置1は、供給ピストン41を供給ピストンロッド43側へ移動させることにより、供給ロッド側室39rから、第2流路47、射出ロッド側室17r及び第6流路55を介して、作動液を前側室17fに供給して増圧ピストン21を射出ピストン19とは反対側へ移動させることが可能である。このとき、射出装置1は、後側室17gから排出される作動液を、第7流路57を介して供給ヘッド側室39hに回収することが可能である。
液圧回路13は、射出ヘッド側室17hと射出ロッド側室17rとを接続する第8流路46を有している。なお、第8流路46は、射出ヘッド側室17h側の一部が第1流路45の射出ヘッド側室17h側の一部と共用され、射出ロッド側室17r側の一部が第2流路47の射出ロッド側室17r側の一部と共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
射出装置1は、上述のように、供給ヘッド側室39h若しくはアキュムレータ11から射出ヘッド側室17hに作動液を供給して、射出ピストン19を前進させることができる。このとき、射出装置1は、射出ロッド側室17rから排出される作動液を、第8流路46を介して射出ヘッド側室17hに還流させることができる。すなわち、第8流路46は、いわゆるランアラウンド回路を構成している。
液圧回路13は、液体室83qと射出ロッド側室17rとを連通するとともに、液体室83qと供給ロッド側室39rとを連通する第9流路48を有している。具体的には、第9流路48は、液体室83qに接続されるとともに、第2流路47(供給ロッド側室39rと射出ロッド側室17rとを連通する流路)に接続されている。なお、第9流路48に代えて、液体室83qと射出ロッド側室17rとを連通する流路と、液体室83qと供給ロッド側室39rとを連通する流路とがそれぞれ形成されてもよい。
射出装置1は、上述のように、供給ピストン41を供給ピストンロッド43とは反対側へ移動させ、供給ヘッド側室39hから射出ヘッド側室17hに作動液を供給し、射出ピストン19を前進させる。このとき、射出装置1は、補給シリンダ装置81から第9流路48を介して、供給ピストン41の移動に伴って体積が拡大した供給ロッド側室39rに作動液を補給することができる。
また、射出装置1は、後述するように、射出ピストン19の前進速度を低速から高速に切り換える。このとき射出ロッド側室17rにおいて生じる背圧サージは、第9流路48を介して補給シリンダ装置81により吸収される。
液圧回路13は、第2流路47に設けられたサーボバルブ59を有している。サーボバルブ59は、入力された電圧に応じた開口度で開くことにより、流量を無段階で調整可能である。また、サーボバルブ59は、開口度に応じた信号S3を出力可能であり、その信号S3に基づいてフィードバック制御がなされることによりサーボ機構を構成する。サーボバルブ59は、例えば、圧力補償付の流量制御弁により構成されている。サーボバルブ59は、射出ロッド側室17rから排出される作動液の流量を制御して射出シリンダ装置7の動作を制御可能であり、いわゆるメータアウト回路を構成している。
液圧回路13は、複数のパイロット式の第1逆止弁VLA〜第8逆止弁VLH(パイロットチェックバルブ)を有している。なお、以下では、単に「逆止弁VL」といい、これらを区別しないことがある。これら逆止弁VLには、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ11の圧力がパイロット圧力として入力される。複数の逆止弁VLの配置及び機能は、具体的には以下のとおりである。
第1逆止弁VLAは、第5流路53に設けられている。第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11側から後側室17g側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
第2逆止弁VLBは、第3流路49に設けられている。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ11側から射出ヘッド側室17h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
第3逆止弁VLCは、第4流路51に設けられている。第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されていないときは、供給ロッド側室39r側からアキュムレータ11側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
第4逆止弁VLDは、第1流路45に設けられている。第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されていないときは、供給ヘッド側室39h側から射出ヘッド側室17h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
第5逆止弁VLEは、第7流路57に設けられている。第5逆止弁VLEは、パイロット圧力が導入されていないときは、後側室17g側から供給ヘッド側室39h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第5逆止弁VLEは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
第6逆止弁VLFは、第2流路47に設けられている。第6逆止弁VLFは、パイロット圧力が導入されていないときは、射出ロッド側室17r側から供給ヘッド側室39h側への作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。また、第6逆止弁VLFは、開くためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを許容し、閉じるためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する。
第7逆止弁VLGは、第8流路46に設けられている。第7逆止弁VLGは、パイロット圧力が導入されていないときは、射出ロッド側室17r側から射出ヘッド側室17h側への作動液の流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。また、第7逆止弁VLGは、パイロット圧力が導入されているときは上記の双方の流れを禁止する(閉じられる)。
第8逆止弁VLHは、第9流路48に設けられている。第8逆止弁VLHは、パイロット圧力が導入されていないときは、液体室83qからの作動液の流出を許容し、液体室83qへの作動液の流入を禁止する。また、第8逆止弁VLHは、開くためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを許容し、閉じるためのパイロット圧力が導入されているときは双方の流れを禁止する。
制御装置15は、例えば、CPU61、ROMやRAM等のメモリ63、入力回路65、及び、出力回路67を含んで構成されている。CPU61は、メモリ63に記憶されたプログラムを実行し、入力回路65を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路67を介して出力する。
入力回路65に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置69、エンコーダ31、射出ピストンロッド23の位置を検出する射出位置センサ71、供給ピストンロッド43の位置を検出する供給位置センサ73、補給位置センサ89、サーボバルブ59、射出ヘッド側室17hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ75、射出ロッド側室17rの圧力を検出するロッド側圧力センサ76、及び、アキュムレータ11の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ77である。
出力回路67が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器79、サーボドライバ33、サーボバルブ59、及び、逆止弁VLへのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
射出位置センサ71は、射出シリンダチューブ17に対する射出ピストンロッド23の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。射出位置センサ71は、例えば、射出ピストンロッド23に設けられ、射出ピストンロッド23の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、射出位置センサ71、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
供給位置センサ73は、供給シリンダチューブ39に対する供給ピストンロッド43の位置を検出するものである。供給位置センサ73は、例えば、供給ピストンロッド43に設けられ、供給ピストンロッド43の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、供給位置センサ73、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76は、溶湯をキャビティ105に射出するときにプランジャ5が溶湯に加える圧力(射出圧力)等のプランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。すなわち、制御装置15は、ヘッド側圧力センサ75の検出値と、ロッド側圧力センサ76の検出値と、射出ピストン19の射出ヘッド側室17hにおける受圧面積と、射出ピストン19の射出ロッド側室17rにおける受圧面積とに基づいて、プランジャ5が溶湯に付与する力を算出することができる。
以上の構成を有する射出装置1の動作を説明する。
図2は、射出装置1における射出圧力P及び射出速度Vの変化を示すグラフである。
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
(低速射出)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。すなわち、射出ピストン19、増圧ピストン21及び供給ピストン41は、後退限等の初期位置に位置している。補給シリンダ装置81は、所定量の作動液を所定の圧力で液体室83qに保持している。電動機25は停止している。アキュムレータ11は蓄圧が完了している。第1逆止弁VLA、第2逆止弁VLB及び第8逆止弁VLHは、パイロット圧力が導入されて閉じられ、アキュムレータ11及び補給シリンダ装置81からの作動液の放出は禁止されている。第3逆止弁VLC〜第7逆止弁VLGは適宜な状態とされてよいが、例えば、パイロット圧力の導入により閉じることが可能なもの(VLC、VLE、VLF、VLG)はパイロット圧力が導入されて閉じられ、そうでないもの(VLD)はパイロット圧力が導入されていない。また、サーボバルブ59も適宜な状態とされてよいが、例えば、閉じられている。
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯が射出スリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置15は、電動機25の駆動により供給ピストン41を供給ピストンロッド43とは反対側へ移動させる。また、第7逆止弁VLG及び第8逆止弁VLHへの閉じるパイロット圧力の導入を停止するとともに、サーボバルブ59を適宜な開口度で開く。
これにより、供給ヘッド側室39hから第4逆止弁VLDを介して射出ヘッド側室17hに作動液が供給され、射出ピストン19は前進する。その結果、プランジャ5により射出スリーブ3内の溶湯がキャビティ105に射出される。また、射出ピストン19の前進に伴って射出ロッド側室17rから排出された作動液は、サーボバルブ59、第7逆止弁VLG及び第4逆止弁VLDを介して、射出ヘッド側室17hに還流される。供給ピストン41の移動により体積が拡大した供給ロッド側室39rには、液体室83qから第8逆止弁VLHを介して作動液が補給される。
プランジャ5の速度は、例えば、電動機25の回転数の調整により制御され、図2に示すように、比較的低速の低速射出速度VLとされる。また、このときの射出圧力は、比較的低圧のPLである。なお、サーボバルブ59の開口度の調整によりプランジャ5の速度を制御することも可能である。
(高速射出)
制御装置15は、射出位置センサ71の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、電動機25を停止するとともに、第2逆止弁VLBへのパイロット圧力の導入を停止する。また、制御装置15は、サーボバルブ59の開口度を低速射出時の開口度よりも大きい適宜な開口度とする。
これにより、アキュムレータ11から第2逆止弁VLBを介して射出ヘッド側室17hに作動液が供給され、射出ピストン19は比較的高速で前進する。その結果、プランジャ5により射出スリーブ3内の溶湯がキャビティ105に高速に射出される。なお、低速射出時と同様に、射出ピストン19の前進に伴って射出ロッド側室17rから排出された作動液は、射出ヘッド側室17hに還流される。
プランジャ5の速度は、サーボバルブ59の開口度の調整により制御され、図2に示すように、低速射出速度VLよりも高速の高速射出速度VHとされる。また、このときの射出圧力は、低速射出時の射出圧力PLより高い圧力PHである。
また、制御装置15は、高速射出の開始直前若しくは高速射出の開始と同時に、第6逆止弁VLFへの閉じるパイロット圧力の導入を停止するとともに、第8逆止弁VLHに開くパイロット圧力を導入する。
これにより、低速射出から高速射出への切り換えに伴って射出ロッド側室17rにおいて生じる背圧サージは、射出ロッド側室17rの作動液が第6逆止弁VLF及び第8逆止弁VLHを介して液体室83qに流入可能となっていることにより、補給シリンダ装置81により吸収される。
高速射出への切り換えから所定時間経過後(ただし、高速射出の終了前)、制御装置15は、第6逆止弁VLFへ閉じるパイロット圧力を導入するとともに、第8逆止弁VLHへの開くパイロット圧力の導入を停止し、補給シリンダ装置81による圧力変動の吸収を終了する。
(減速射出)
減速射出は、適宜な事象の発生により開始される。例えば、減速射出は、溶湯がキャビティ105にある程度充填され、その充填された溶湯からプランジャ5が反力を受けて減速されることにより開始される。若しくは、減速射出は、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときに、サーボバルブ59における開口度が小さくされることにより開始される。又は、上記に例示した事象が同時に発生することにより開始される。
減速射出では、射出速度は、高速射出速度VHから減速されて速度Vdとなる。ただし、キャビティ105には、ある程度溶湯が充填されていることから、射出圧力は、高速射出における高速射出圧力PHから上昇して圧力Pdとなる。
(増圧)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置15は、第1逆止弁VLAへのパイロット圧力の導入を停止する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76により検出される射出圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、プランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
また、制御装置15は、第7逆止弁VLGにパイロット圧力を導入してランアラウンド回路をオフとする。さらに、制御装置15は、第6逆止弁VLFへの閉じるパイロット圧力の導入を停止するとともに、第8逆止弁VLHに開くパイロット圧力を導入し、射出ロッド側室17rの作動液を液体室83qへ排出可能とする。
第1逆止弁VLAへのパイロット圧力の導入が停止されることにより、アキュムレータ11から第1逆止弁VLAを介して後側室17gに作動液が供給される。また、前側室17fの作動液は、第6流路55及び射出ロッド側室17rを介して液体室83qへ排出可能である。従って、上述したように、増圧ピストン21の増圧機能により、後側室17gの作動液の圧力よりも高い圧力が射出ヘッド側室17hに付与される。
そして、射出圧力は、圧力Ptを経て終圧Pmaxに到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより、速度Vtを経て0となる。
なお、サーボバルブ59の開口度は予め定められた適宜な開口度とされる。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されて閉じられる。ただし、第2逆止弁VLBは、射出ヘッド側室17hの圧力が、増圧ピストン21の増圧機能によりアキュムレータ11の圧力よりも高くなることにより自閉するから、後述するプランジャ5の後退及びアキュムレータ11の開始までは、パイロット圧力が導入されなくてもよい。
(保圧)
制御装置15は、上記の射出圧力が終圧Pmaxとなっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置15は、第1逆止弁VLAにパイロット圧力を導入して第1逆止弁VLAを閉じる。これにより、アキュムレータ11から後側室17gへの液圧の供給が停止され、保圧は終了する。
なお、制御装置15は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧Pmaxが得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
(プランジャ後退)
保圧終了後、制御装置15は、第4逆止弁VLDにパイロット圧力を導入して第4逆止弁VLDを開き、第5逆止弁VLEへのパイロット圧力の導入を停止し、第8逆止弁VLHへの開くパイロット圧力の導入を停止する。そして、制御装置15は、サーボバルブ59を適宜な開口度とするとともに、供給ピストン41が供給ピストンロッド43側へ移動するように、電動機25を駆動する。
これにより、供給ロッド側室39rの作動液が第6逆止弁VLF及びサーボバルブ59を介して射出ロッド側室17r及び前側室17fに供給される。そして、射出ピストン19は、射出ヘッド側室17hの作動液を第4逆止弁VLDを介して供給ヘッド側室39hに排出しつつ後退する。また、増圧ピストン21は、後側室17gの作動液を第5逆止弁VLE及び第4逆止弁VLDを介して供給ヘッド側室39hに排出しつつ後退する。
(アキュムレータ充填)
保圧終了後、上記のプランジャ5の後退の前若しくは後、又は、プランジャ後退と同時に、制御装置15は、第3逆止弁VLCへのパイロット圧力の導入を停止する。そして、制御装置15は、プランジャ後退時と同様に、供給ピストン41が供給ピストンロッド43側へ移動するように、電動機25を駆動する。
これにより、供給ロッド側室39rの作動液が第3逆止弁VLCを介してアキュムレータ11に供給され、アキュムレータ11の蓄圧が行われる。
(次サイクル準備)
プランジャ5の後退及びアキュムレータ11の充填が完了すると、制御装置15は、逆止弁VL等の各部を、上述した低速射出開始前の状態に制御する。
なお、制御装置15は、射出工程(低速射出、高速射出及び減速)においては、例えば、射出位置センサ71の検出値に基づき、プランジャ5の速度をフィードバック制御する。また、制御装置15は、増圧や保圧においては、ヘッド側圧力センサ75及びロッド側圧力センサ76の検出値に基づき、プランジャ5が溶湯に付与する圧力をフィードバック制御する。そのフィードバックループには、サーボバルブ59のフィードバックループ、供給位置センサ73及びエンコーダ31の検出値に基づく電動機25のフィードバックループが適宜に組み込まれる。
また、プランジャ5の後退及びアキュムレータ11の蓄圧において、各種シリンダのピストン及びピストンロッドの径、並びに、低速射出及び高速射出の前進距離等の設定に応じて、供給シリンダ装置29、射出シリンダ装置7及びアキュムレータ11において、作動液の過不足が生じ得る。このような過不足は、例えば、公知のタンク及びポンプを含む液圧回路が付加されることにより解消されてよい。また、そのような液圧回路を付加することなく、射出装置1内で作動液の不足分と余剰分とが相殺されるように、適宜な流路及び弁が付加されてもよい。
図3は、電動機25の負荷線図の一例を示す図である。図3において、縦軸は電動機25の負荷、横軸は時間(上述した各工程)を示している。なお、スプレイ工程や製品取り出し工程等は省略している。
実線L1で示されるように、電動機25の負荷は、低速射出、プランジャ5の後退及びアキュムレータ11の充填において生じる。そして、アキュムレータ11の充填においては、負荷が低速射出やプランジャ5の後退に比較して高くなる。すなわち、電動機25の最大負荷は、アキュムレータ11の充填において生じる。
2点鎖線L2は、本実施形態とは異なり、供給ヘッド側室39hからアキュムレータ11に作動液を供給したと仮定した場合の電動機25の負荷を示している。
実線L1と2点鎖線L2との比較から理解されるように、本実施形態では、供給ピストン41の受圧面積が供給ヘッド側室39hよりも小さくなる供給ロッド側室39rの作動液を押し出してアキュムレータ11を充填することから、電動機25の最大負荷は小さくなる。
以上の第1の実施形態によれば、ダイカストマシンDC1の射出装置1は、プランジャ5と、プランジャ5を駆動する射出シリンダ装置7と、射出シリンダ装置7に作動液を供給可能なアキュムレータ11とを有している。また、射出装置1は、供給シリンダ装置29と、供給シリンダ装置29を駆動する電動機25とを有している。供給シリンダ装置29は、アキュムレータ11に連通された供給シリンダチューブ39、供給シリンダチューブ39に摺動可能に収容された供給ピストン41、及び、供給ピストン41に固定され、供給シリンダチューブ39から延び出る供給ピストンロッド43を有している。供給シリンダチューブ39の内部は、供給ピストン41により供給ピストンロッド43側の供給ロッド側室39rとその反対側の供給ヘッド側室39hとに区画されている。また、射出装置1は、射出シリンダ装置7、アキュムレータ11及び供給シリンダ装置29の間の作動液の流れを制御する液圧回路13と、電動機25及び液圧回路13を制御する制御装置15とを有する。そして、射出装置1は、制御装置15による制御により、電動機25により供給シリンダ装置29を駆動して、供給ロッド側室39rからアキュムレータ11へ作動液を供給し、アキュムレータ11を蓄圧する。
従って、図3を参照して説明したように、アキュムレータ11を蓄圧するときの電動機25の負荷、換言すれば、全工程を通しての電動機25の最大負荷は小さくなる。その結果、電動機25の容量を小さくすることができる。そして、イニシャルコストの削減が期待される。
射出装置1は、制御装置15による制御により、電動機25を駆動し、供給ヘッド側室39hから射出ヘッド側室17hへ作動液を供給して低速射出を行い、アキュムレータ11から射出ヘッド側室17hへ作動液を供給して高速射出を行う。
従って、アキュムレータ11の充填だけでなく、射出動作にも供給シリンダ装置29を利用して、供給シリンダ装置29の有効利用を図ることができる。そして、この有効利用により、アキュムレータ11の負担を軽減して、アキュムレータ11を小型化することができる。さらに、供給シリンダ装置29は、射出動作においては供給ピストン41を供給ヘッド側室39h側へ移動させ、射出動作後のアキュムレータ11の充填においては供給ピストン41を供給ロッド側室39r側へ移動させることになるから、供給ピストン41をいずれか一方のみへ移動させて低速射出及びアキュムレータ11の充填を行うような場合に比較して、供給シリンダ装置29を効率的に利用することが可能であり、また、供給シリンダ装置29の大型化が抑制される。また、供給ピストン41の受圧面積が大きい供給ヘッド側室39hから作動液を排出することから、電動機25を低速で駆動しつつも、大量の作動液を送出することができる。
射出装置1は、射出ロッド側室17rから排出される作動液を射出ヘッド側室17hに回収するランアラウンド回路(第8流路46)を有する。
従って、射出動作における作動液の必要量を少なくすることができ、ひいては、射出のために作動液を供給するアキュムレータ11及び供給シリンダ装置29の小型化が図られる。また、アキュムレータ11の小型化が図られると、アキュムレータ11の蓄圧における作動液の必要量も少なくなり、ひいては、蓄圧のために作動液を供給する供給シリンダ装置29の小型化が図られる。このように、供給シリンダ装置29の小型化に関して相乗効果が得られる。
射出装置1は、制御装置15による制御により、電動機25を駆動し、供給ロッド側室39rから射出ロッド側室17rへ作動液を供給して、プランジャ5の後退を行う。
従って、供給シリンダ装置29は、プランジャ5の前進(低速射出)と、プランジャ5の後退との双方に利用される。すなわち、供給シリンダ装置29の有効利用が図られる。さらに、プランジャ5の前進時には供給ピストン41を供給ヘッド側室39h側へ移動させ、プランジャ5の後退時には供給ピストン41を供給ロッド側室39r側へ移動させることから、供給ピストン41をいずれか一方のみへ移動させてプランジャ5の前進及び後退を行うような場合に比較して、供給シリンダ装置29を効率的に利用することが可能である。
供給ピストン41の断面積に対する供給ピストンロッド43の断面積の比は30%〜90%である。
このように、供給ピストンロッド43の断面積が供給ピストン41の断面積に対して比較的大きく設定されることにより、供給ヘッド側室39hからアキュムレータ11に作動液を供給する場合の電動機25の負荷に比較して、本実施形態のように、供給ロッド側室39rからアキュムレータ11に作動液を供給する場合における電動機25の負荷は、大幅に低減される。すなわち、電動機25の負荷は、30%〜90%低減されることになる。
射出装置1は、補給シリンダ装置81を更に有する。補給シリンダ装置81は、補給シリンダチューブ83、及び、補給シリンダチューブ83に摺動可能に収容された補給ピストン85を有する。補給シリンダチューブ83の内部は、補給ピストン85により、気体が収容される気体室83gと、作動液が収容される液体室83qとに区画されている。液体室83qは、供給ロッド側室39r及び射出ロッド側室17rに連通されている。
従って、シリンダ装置を一つ追加することにより、供給シリンダ装置29への作動液の補給と、高速射出時における背圧サージの除去との双方がなされることになる。また、タンクから供給シリンダ装置29へ作動液を補給する必要がなくなり、液圧回路を閉ループとすることができる。このように、射出装置1の小型化及びメンテナンスの容易性が図られる。
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態の射出装置201の要部を示す図である。
射出装置201の構成は、サーボバルブ59の配置位置のみが第1の実施形態の射出装置1の構成と相違する。具体的には、射出装置201においては、サーボバルブ59は、アキュムレータ11からの作動液の流出量を調整可能な位置(第3流路49及び第5流路53の共用部分)に設けられ、メータイン回路を構成している。
射出装置201の動作は、サーボバルブ59に係る動作以外は、第1の実施形態の射出装置1の動作と概ね同様でよい。
射出装置201において、サーボバルブ59は、アキュムレータ11から作動液を吐出させるとき(高速射出、増圧及び保圧)、及び、アキュムレータ11を充填するとき、適宜な開口度で開かれる。また、サーボバルブ59は、アキュムレータ11における作動液の流入出を禁止するとき、閉じられる。ただし、アキュムレータ11における作動液の流入出は、第1逆止弁VLA〜第3逆止弁VLCによっても規制されるから、サーボバルブ59は開かれていてもよい。
射出装置201において、低速射出におけるプランジャ5の速度は、電動機25(供給ピストン41)の速度制御により制御される。高速射出におけるプランジャ5の速度は、サーボバルブ59の開口度の制御により制御される。
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態の射出装置301の要部を示す図である。
第3の実施形態は、ランアラウンド回路が設けられていない点が第1の実施形態と相違する。すなわち、第3の実施形態においては、第8流路46及び第7逆止弁VLGは設けられていない。
また、第1の実施形態では、ランアラウンド回路をオンにした状態で供給ピストン41により供給ヘッド側室39hの作動液を射出ヘッド側室17hに供給して低速射出を行ったときにおいて、射出ロッド側室17rから排出された作動液が射出ヘッド側室17hに還流されずに供給ロッド側室39rに収容されることを禁止することなどを目的として、第6逆止弁VLFが設けられたが、第3の実施形態では第6逆止弁VLFは設けられていない。
第3の実施形態では、ロッド側圧力センサ76も省略されており、ヘッド側圧力センサ75のみにより、射出圧力等が算出される。ランアラウンド回路が省略されたことにより、射出ロッド側室17rの圧力は、タンク圧等の比較的低い圧力に保たれることからである。ただし、ロッド側圧力センサ76は、第3の実施形態においても設けられ、射出圧力等の算出に供されてもよい。
第3の実施形態では、補給部12に係る構成も省略されている。ただし、補給部12は、第3の実施形態においても設けられ、作動液の補給及び背圧サージに供されてもよい。
第3の実施形態は、液圧供給部309における、ネジ軸35の供給シリンダ装置329に対する取付方法も第1の実施形態と異なっている。すなわち、第3の実施形態においては、ネジ軸35は、供給ピストンロッド343に固定されており、ナット37は、電動機25のロータに固定されている。なお、ナット37は、歯車機構若しくはプーリ・ベルト機構を介して電動機25の回転が伝達されてもよい。
第3の実施形態において、制御装置15は、第3の実施形態において省略された第6逆止弁VLF〜第8逆止弁VLHの制御を行わない点を除いては、第1の実施形態と概ね同様である。
ただし、ランアラウンド回路及び第6逆止弁VLFが省略されていることから、低速射出、高速射出及び増圧においては、射出ピストン19の前進に伴って射出ロッド側室17rから排出された作動液、若しくは、増圧ピストン21の前進に伴って前側室17fから排出された作動液は、第2流路47を介して供給ロッド側室39rに回収される。
なお、各種シリンダのピストン及びピストンロッドの径等により、供給シリンダ装置29等においては作動液の過不足が生じる。このような過不足は、例えば、第1の実施形態の補給部12、若しくは、公知のタンク及びポンプにより解消されてよい。また、例えば、低速射出において供給ロッド側室39rにおいて作動液が不足する場合においては、供給ロッド側室39rに真空の空間が形成されてもよく、その後、高速射出等において、その真空の空間に作動液が回収されてもよい。
以上の第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、低速射出、又は、低速射出及び高速射出の双方において、射出ロッド側室17rから排出される作動液は供給ロッド側室39rに回収されることから、射出ロッド側室17rから排出される作動液を全てタンクに排出するような場合に比較して、作動液の必要量を少なくし、タンクの小型化若しくは不要化を図ることができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
射出シリンダ装置は、増圧式のものに限定されない。増圧シリンダ部(17b)及び増圧ピストン(21)を有さない、いわゆる単動式のものであってもよい。なお、シリンダ装置が単動式の場合においては、増圧工程及び保圧工程時において、アキュムレータからの作動液は射出ヘッド側室(17h)に供給される。また、シリンダ装置が増圧式の場合において、シリンダ装置は、射出シリンダ部と増圧シリンダ部とが分離したものであってもよい。
供給シリンダ装置は、低速射出及びプランジャの後退に利用されなくてもよい。また、逆に、供給シリンダ装置は、増圧等の他の工程に利用されてもよい。供給シリンダ装置が低速射出に利用される場合、供給ヘッド側室から射出ヘッド側室に作動液が供給されることが好ましいが、供給ロッド側室から射出ヘッド側室に作動液が供給されてもよい。また、供給シリンダ装置がプランジャの後退に利用される場合、供給ロッド側室から射出ロッド側室に作動液が供給されることが好ましいが、供給ヘッド側室から射出ロッド側室に作動液が供給されてもよい。アキュムレータの充填は、供給シリンダ装置から射出ロッド側室に作動液を供給し、射出ピストンの後退に伴って射出ヘッド側室から排出される作動液を利用して行うことも可能である。増圧ピストンの後退は、射出ヘッド側室を密閉した状態で供給シリンダ装置から射出ロッド側室に作動液を供給し、射出ピストンの後退と共に行うことも可能である。
電動機は、回転式のものに限定されない。例えば、リニアモータにより供給ピストンを駆動してもよい。また、電動機が回転式のものである場合に、電動機の回転を並進運動に変換して供給ピストンに伝達する機構はネジ機構に限定されない。例えば、そのような伝達機構はラックピニオン機構であってもよい。
液圧回路は適宜に構成することができる。また、作動液の流れを制御する弁としてパイロット式の逆止弁を多用したが、方向切換弁等の他の制御弁が用いられてもよい。本発明は、アキュムレータ、供給シリンダ装置、射出シリンダ装置及び補給シリンダ装置の間で作動液を供給し合うことにより、作動液の流れがこれらの間で完結した液圧装置を構成することを可能とする。ただし、従来と同様に、ポンプやタンクが設けられても構わない。
補給シリンダ装置において、補給ピストンロッドは省略されてもよい。また、補給ピストンロッドは、液体室と気体室とのいずれから補給シリンダチューブから延び出てもよいし、補給ピストンの軸芯に設けられている必要もない。
第1〜第3の実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第3の実施形態において、第2の実施形態と同様に、メータアウト回路に代えてメータイン回路が構成されてもよい。また、例えば、第1及び第2の実施形態のネジ機構の取付方法と、第3の実施形態のネジ機構の取付方法とは交換されてもよい。なお、供給ピストンロッドの径を大きくして電動機の負荷を軽減しつつ、液圧供給装置(9)の小型化を図る観点では、第1及び第2の実施形態のネジ機構の取付方法が有利である。