JP5958736B2 - アクリル系重合体の製造方法、アクリル系重合体及びプラスチゾル組成物 - Google Patents
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一方、近年、二酸化炭素の排出量削減が社会的要請となってきている。そのため、二酸化炭素の排出量削減を達成するための手法の一つとして、焼付けラインの低温化が進められている。
しかしながら、接着成分としてブロックイソシアネートを用いた自動車アンダーコート材は、例えば100℃程度の低温焼付条件下では、ブロック材の脱離が不十分で得られる接着性も不十分となる傾向があった。
接着成分を用いることなく、基材に接着するアクリル系プラスチゾルとして、塩基性窒素原子を有する単量体を共重合したアクリル系重合体粒子の製造方法が開示されている(特許文献2、特許文献3参照)。
<工程(1)>
本発明では、単量体混合物(W)が、t−ブチルメタクリレート(t−BMA)を含むことで、得られる重合体を含むのプラスチゾル組成物の低温焼付条件での接着性と貯蔵安定性のバランスが良好になる。t−BMAは単量体混合物(m)中に5質量%以上含有することが好ましく、接着性と貯蔵安定性のバランスが良好になることから20質量%がより好ましい。
単量体混合物(W)に含まれるt−BMA以外の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;等を挙げることができる。これらのうち、1種以上を使用できる。
これらのうちメチルメタクリレート、及びi―ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートは、容易に入手でき、工業的実用化の点から好ましい。特に、メチルメタクリレートを含有していることが工業的入手の容易さから好ましい。メチルメタクリレートを含有する場合、30質量%以上含有していると貯蔵安定性が良好になることから好ましい。
さらに、前記単量体と共重合可能な単量体を使用してもよく、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸2−サクシノロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸2−マレイノイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フタロイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有不飽和モノマー;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和モノマー;2−(メタ)アクリロイキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミドおよびその誘導体;ウレタン変性アクリレート;エポキシ変性アクリレート;シリコーン変性アクリレート;(ポリ)エジレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート類等の多官能モノマー等を挙げることができる。
さらに、単量体混合物(W)を重合して得られる重合体のFoxの式から求められるガラス転移温度(Tg)は90℃以上であることが好ましい。
式(1)中、Tgは共重合体のガラス転移温度(℃)、Tgiはi成分の単独重合体のガラス転移温度(℃)、Wiはi成分の質量比率、ΣWi=1を示す。
また、単量体混合物(W)を重合して得られる重合体の溶解度パラメーター(Sp値)は可塑剤との相溶性が得られる点から19.90(J/cm3)1/2以下であることが好ましい。
表1に、「SP値 基礎・応用と計算方法、p67、Table13、山本秀樹、(株)情報機構(2005)」から算出された(代表的な単量体単位のSp値(Sp(Ui))を示す。
溶解度パラメーター=[(ΣEcoh/ΣV)]1/2 ・・式(2)
式(2)中、Ecoh は凝集エネルギー密度(J/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表す。
また、前記工程(1)は、シード粒子を得る工程(W0)を行った後に行っても良い。シード粒子を得る方法は公知の方法で行えばよく、必要に応じて酸基等の官能基を有するモノマーを、分散媒中で界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度未満となる条件で重合し、シード粒子を得ることが好ましい。臨界ミセル濃度未満の濃度でモノマーを重合することにより、ソープフリー重合が可能となり、100nm以上の比較的大きな粒子径のシード粒子を得ることができる。使用する分散媒としては、水等を挙げることができる。
塩基性窒素原子を有する単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ(メタ)アクリレート;脂環式アミノ(メタ)アクリレート、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニルピロリドン等の複素環を有するビニル化合物;ビニルアニリン、ビニルベンジルアミン、アリルアミン、アミノスチレン等を挙げることができる。この中で複素環を有するビニル化合物が、少量の添加で基材との接着性を発現することから好ましく用いられる。特に、N−ビニルイミダゾールのような、窒素原子上の非共有電子対の立体障害が小さい複素環を有するビニル化合物が最も好ましい。特に、N−ビニルイミダゾールが好ましい。
この中でも、臭気が低くなる傾向が見られることからチオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類が好ましい。
さらに本発明では、(メタ)アクリル系重合体を製造した後、(メタ)アクリル系重合体を粒子として回収する。回収方法としては、スプレードライ法などの公知の方法を選択することができる。スプレードライ法で(メタ)アクリル系重合体粒子(以下、重合体粒子という場合もある。)を回収する方法によれば、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態を容易に形成しやすく、分散性に優れた重合体粒子が得られやすい。
このようにして得られた重合体粒子を公知の可塑剤に分散させることにより、プラスチゾル組成物とすることができる。
本発明のアクリルゾル組成物に用いられる可塑剤は特に限定されず、公知の可塑剤から適宜選択して使用すれば良い。これらの可塑剤としては、具体的には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジー2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバチン酸エステル系可塑剤;ポリ−1,3−ブタンジオールアジペート等の脂肪族系ポリエステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アルキルスルホン酸フェニルエステル等のアルキルスルホン酸フェニルエステル系可塑剤;脂環式二塩基酸エステル系可塑剤;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル系可塑剤;クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類等を挙げることができる。これらの可塑剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。この中でも、相溶性、経済性、入手のしやすさの観点から、ジイソノニルフタレートを主成分として用いることが好ましい。ここで主成分とは、用いる可塑剤の全体量中、50質量%以上であることを指す。
25mm×140mm×0.8mmのカチオン電着版(日本ルートサービス(株)製)を上下2枚用い、25mmの長さでオーバーラップさせ、オーバーラップした間に25mm×25mmの面積で厚さ3mmになるようにプラスチゾル組成物を充填し、100℃×30分の低温焼付条件にて加熱したものを試験片とした。該試験片を用いて25℃の雰囲気下で、引張速度50mm/min.で剪断接着強度を測定した。
A:1.0MPa以上
B:0.6以上1.0MPa未満
C:0.6MPa未満
[接着破断面]
上記接着強度を測定した後の接着破断面の様子を目視で観察した。
A:凝集破壊している(CF)。
B:薄膜でプラスチゾル組成物が基材表面に残っている(TCF)。
C:基材とプラスチゾル組成物の間で界面剥離している(AF)。
プラスチゾル組成物の初期粘度(α)と、該プラスチゾル組成物を40℃雰囲気下で10日間保管した後の粘度(β)を測定し、αおよびβから下記式(5)により増粘率(%)を求めた。得られた増粘率から、以下の基準により貯蔵安定性を評価した。
増粘率(%)=〔(β−α)/α〕×100 式(5)
A:増粘率30%未満
B:増粘率30%以上100%未満
C:増粘率100%以上、測定不可、あるいはゲル化
(実施例1)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を装備した1リットルの4つ口フラスコに、純水68gを入れ、60分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、単量体混合物(W0)として、メチルメタクリレート3.3gとn−ブチルメタクリレート2.5gの混合物を入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、2gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.05gを一度に添加し、重合を開始した。そのまま80℃にて攪拌を60分継続し、単量体混合物W0が重合した重合体粒子の分散液を得た。
引き続きこの粒子分散液に対して、単量体混合物(W)(メチルメタクリレート32.1g、t−ブチルメタクリレート30.4g、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスO−TP)0.63g及び純水31.3gを混合攪拌して乳化したもの)を3.5時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、第一滴下重合体分散液を得た。
得られた重合体の分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、L−8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数20000rpmにて噴霧乾燥し、アクリル系重合体微粒子(A1)を得た。
炭酸カルシウム(NS200:日東粉化工業製)200部、炭酸カルシウム(CCR:白石工業製)50部と、可塑剤としてジイソノニルフタレート((株)ジェイプラス製)200部を計量し、真空ミキサーARV−200((株)シンキー製)にて10秒間大気圧(0.1MPa)で混合した後、2.7kPaに減圧し、170秒間混合して、炭酸カルシウムと可塑剤の混練物を得た。
続いてこれにアクリル系重合体微粒子(A1)100部を加えて、真空ミキサーにて10秒間大気圧下(0.1MPa)で混合した後、2.7kPaに減圧し、110秒間混合して、プラスチゾル組成物を得た。
得られたプラスチゾル組成物の接着強度、接着破断面、貯蔵安定性(増粘率)について評価結果を表2に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜3]
表2に示す構成(各単量体混合物、乳化剤、連鎖移動剤、純水)とした以外は、実施例1と同様の手順により、アクリル系重合体微粒子(A2)〜(A9)を製造した。
その後、実施例1と同様にしてプラスチゾル組成物を調製し同様に評価した。評価結果を表2に示す。
nBMA:n−ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製)
iBMA:i−ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製)
tBMA:t−ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製)
Nvimd:N−ビニルイミダゾール(BASF社製)
OTG:チオグリコール酸オクチル(淀化学工業(株)製)
ペレックスOTP:ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製)
比較例1では、塩基性窒素原子を有する単量体を含む単量体混合物(X)の割合が、全単量体中に10質量%未満のため、接着強度が不十分となった。
Claims (3)
- t−ブチルメタクリレートを含む単量体混合物(W)を重合する工程(1)と、前記工程(1)を行った後に、塩基性窒素原子を有する単量体を含む単量体混合物(X)を重合する工程(2)を行う(メタ)アクリル系重合体の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル系重合体の重合に用いた全単量体中に前記単量体混合物(X)が13.0質量%以上19.5質量%未満含まれる(メタ)アクリル系重合体の製造方法。 - 単量体混合物(W)中にt−ブチルメタクリレートを5質量%以上含む請求項1記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法で得られた(メタ)アクリル系重合体を含む、プラスチゾル組成物の製造方法。
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