JP5954272B2 - サブマージアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 - Google Patents

サブマージアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼板のサブマージアーク溶接方法に関するものである。
また、本発明は、上記のサブマージアーク溶接方法によって形成される溶接継手に関するものである。
鋼板を溶接する際に用いられるサブマージアーク溶接は、大電流を供給して溶込み深さおよびワイヤ溶着量を増加することができるので、高能率の溶接技術として広く普及している。特にサブマージアーク溶接により厚鋼板を突合せて溶接する場合では、多電極を採用して、厚鋼板の下面側と上面側をそれぞれ1パスで溶接(いわゆる両面一層盛り溶接)することも可能である。
この両面一層盛り溶接では、下面側の溶接金属と上面側の溶接金属が十分に重なり、未溶融部が生じないように、溶込み深さを確保する必要があるので、1000A以上の大電流を供給して溶接を行うのが一般的である(たとえば特許文献1、2)。
また、アンダーカット等の表面欠陥を抑制するために、幅の広いビードを形成する必要があるので、電圧を増加する等の溶接条件の調整も行われている。
しかしながら、電流や電圧が増加すると、溶接入熱の増大を招き、溶接熱影響部の靭性が劣化するという問題が生じる。このような問題に対して、溶接熱影響部の靭性を向上するために、鋼板の特性を改善する技術(たとえば特許文献3、4、5)、溶接施工にて細径ワイヤを使用する技術(たとえば特許文献6、7)、ビード形状を制御する技術(たとえば特許文献8、9)等が検討されている。
ところが、これら特許文献3〜9に開示された技術は、溶接熱影響部の靭性を安定して高めることが困難である。
つまり、鋼板の下面側を溶接した際の溶接熱影響部(特に粗粒域)が上面側の溶接によって再び加熱されるので、局所脆化域と呼ばれる靱性劣化領域が生じるが、溶接熱影響部の形状によっては脆化域の寸法や形状が変化するため、靱性にばらつきが生じる。
特開平11-138266号公報 特開平10-109171号公報 特開2002-146471号公報 特開2004-52104号公報 特開2009-91653号公報 特開2006-272377号公報 特開2009-241128号公報 特開2010-274275号公報 特開2010-274276号公報
上記の問題を解決するものとして、発明者らは先に、PCT/JP2013/003307において、
「サブマージアーク溶接で突合せ溶接を行うに際し、鋼板の下面側を溶接した後に上面側を溶接する溶接方法であって、
下面側溶接金属の溶融境界線と上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる会合点と、該会合点から前記鋼板の上表面の方向へ5mmの位置を通り該上表面に平行な第1平行線と前記上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第1交点と、を結ぶ上面側境界直線が、前記第1平行線に垂直な線となす角をθ1(°)とするとき、該θ1が下記の(1)式を満足し、
かつ前記会合点と、前記会合点から前記鋼板の下表面の方向へ5mmの位置を通り該下表面に平行な第2平行線と前記下面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第2交点と、を結ぶ下面側境界直線が、前記第2平行線に垂直な線となす角をθ2(°)とするとき、該θ2が下記の(2)式を満足するとともに、
前記鋼板の下面側の溶接入熱と上面側の溶接入熱との合計入熱Q(kJ/cm)が、前記鋼板の板厚t(mm)との間で(3)式の関係を満足することを特徴とするサブマージアーク溶接方法。

θ1≧15 ・・・(1)
θ2≧15 ・・・(2)
Q≦1.3×t1.37 ・・・(3)」
を提案した。
上記の技術により、溶接熱影響部の靭性を安定して高めることが可能になったが、溶接条件によっては、全体での入熱量などの観点から上記したθ1およびθ2について所定の関係を満足させることが困難な場合もあり、この点に課題を残していた。
本発明は、上掲したPCT/JP2013/003307に開示の技術の改良に係るもので、鋼板の下面側を溶接した後に上面側を溶接する両面各一層の多電極サブマージアーク溶接を行うにあたり、下面側の溶接における第1電極のアーク電圧、さらには上面側の溶接における第1電極のワイヤ径を調整することによって、高靭性の溶接熱影響部をより安定して得ることができるサブマージアーク溶接方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記のサブマージアーク溶接方法で形成される溶接継手を提供することを目的とする。
なお、本発明では、溶接する鋼板の両面のうち、先に溶接する側の面を下面、その後で溶接する側の面を上面としている。
さて、発明者は、種々の溶接条件にて、鋼板の下面側を溶接した後に上面側を溶接する両面各一層の多電極サブマージアーク溶接を行い、得られた溶接継手の溶接熱影響部の靭性を調査した。
その結果、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を一定以上とすることで、上記したθ1、θ2およびQについて、より容易に所定の関係を満足させることができ、これによって、溶接継手の溶接熱影響部の靭性を一層安定して高められるとの知見を得た。
また、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ径を一定の範囲内に調整することで、θ1を大きくし易くなり、溶接継手の溶接熱影響部の靭性をさらに安定して高められるとの知見を得た。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼板の下面側を溶接した後に上面側を溶接する両面各一層の多電極サブマージアーク溶接方法であって、
該鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を40V以上として溶接するものとし、
下面側溶接金属の溶融境界線と上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる会合点と、該会合点から前記鋼板の上表面の方向へ5mmの位置を通り該上表面に平行な第1平行線と前記上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第1交点と、を結ぶ上面側境界直線が、前記第1平行線に垂直な線となす角をθ1(°)とするとき、該θ1が下記の(1)式を満足し、
かつ前記会合点と、前記会合点から前記鋼板の下表面の方向へ5mmの位置を通り該下表面に平行な第2平行線と前記下面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第2交点と、を結ぶ下面側境界直線が、前記第2平行線に垂直な線となす角をθ2(°)とするとき、該θ2が下記の(2)式を満足するとともに、
前記鋼板の下面側の溶接入熱と上面側の溶接入熱との合計入熱Q(kJ/cm)が、前記鋼板の板厚t(mm)との間で(3)式の関係を満足することを特徴とするサブマージアーク溶接方法。

θ1≧15 ・・・(1)
θ2≧15 ・・・(2)
Q≦1.3×t1.37 ・・・(3)
2.前記鋼板の上面側の溶接における第1電極として、直径:2.0〜3.2mmのワイヤを使用することを特徴とする前記1に記載のサブマージアーク溶接方法。
3.前記θ1と前記θ2とが、次式(4)
θ1+θ2≧50 ・・・(4)
を満足することを特徴とする前記1または2に記載のサブマージアーク溶接方法。
4.前記鋼板の上面側の溶接入熱が、前記鋼板の下面側の溶接入熱よりも大きいことを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法。
5.前記鋼板の下面側および上面側の溶接を、それぞれ3電極以上で行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法。
6.前記1〜5のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法により、溶接継手を形成することを特徴とする溶接継手の製造方法
本発明によれば、鋼板のサブマージアーク溶接において靭性に優れた溶接熱影響部を安定して得ることができるので、産業上格段の効果を奏する。
本発明で形成される溶接継手の例を模式的に示す断面図である。 靭性劣化領域の例を模式的に示す断面図である。 鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧と、吸収エネルギーV-30(J)との関係を示す図である。 鋼板の開先形状の例を模式的に示す断面図である。 シャルピー衝撃試験片の採取位置を模式的に示す断面図である。
以下、図面に基づき本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明で形成される溶接継手の例を模式的に示す断面図であり、ここで示した溶接継手は、所定の開先形状とした鋼板1同士を突合せ、鋼板1の下面側をサブマージアーク溶接で溶接して溶接金属2(以下、下面側溶接金属という)を得て、次に、鋼板1の上面側をサブマージアーク溶接で溶接して溶接金属3(以下、上面側溶接金属という)を得ることで、形成される。
この溶接継手において、下面側の溶融境界線4と上面側の溶融境界線5とが交わる点6(以下、会合点という)から鋼板1の上表面の方向へ5mmの位置を通り上表面に平行な線7を第1平行線とする。その第1平行線7が、上面側の溶融境界線5と交わる点8を第1交点とする。そして、会合点6と第1交点8とを結ぶ直線9を上面側境界直線とし、その上面側境界直線9と第1平行線7に垂直な線とのなす角をθ1(°)とする。
なお、会合点は2ヶ所に形成されるが、基準としての会合点は板厚中心寄りの点を採用することが望ましい。
また、会合点6から鋼板1の下表面の方向へ5mmの位置を通り下表面に平行な線10を第2平行線とする。その第2平行線10が、下面側の溶融境界線4と交わる点11を第2交点とする。そして、会合点6と第2交点11とを結ぶ直線12を下面側境界直線とし、その下面側境界直線12と第2平行線10に垂直な線とのなす角をθ2(°)とする。
なお、会合点6と第1平行線7および第2平行線10との距離は、靭性を評価するためのシャルピー衝撃試験の試験片の採取位置にあわせて、それぞれ5mmに設定したものである。
そして、本発明の溶接方法では、溶接継手の溶接熱影響部の靭性を安定して高めるため、上記のθ1とθ2について、それぞれ以下の関係を満足させることが必要である。
θ1:15°以上
角度θ1を15°以上とすることにより、溶接熱影響部の靭性が向上する。その理由は、上面側境界直線9が水平に近づくとき裂の伝播経路が複雑化し、き裂が進展する際に必要な伝播エネルギーが高くなるためであると考えられる。
したがって、θ1は以下の(1)式に示すとおり、15°以上とする。しかしながら、θ1が50°を超えるような溶接部を形成するには、多大な溶接入熱が必要となる。そのため、θ1は、15〜50°の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30〜50°の範囲である。
θ1≧15 ・・・(1)
θ2:15°以上
角度θ2を15°以上とすることにより、溶接熱影響部の靭性が向上する。その理由は、上述したところと同様で、下面側境界直線12が水平に近づくとき裂の伝播経路が複雑化し、き裂が進展する際に必要な伝播エネルギーが高くなるためであると考えられる。
したがって、θ2も以下の(2)式に示すとおり、15°以上とする。しかしながら、θ2が50°を超えるような溶接部を形成するには、多大な溶接入熱が必要となる。そのため、θ2は、15〜50°の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30〜50°の範囲である。
θ2≧15 ・・・(2)
ここに、板厚が25.4mm以上の厚鋼板の溶接では、溶接金属の形状が板厚方向により伸長した形状となるので、角度θ1ならびに角度θ2が15°以下になりやすい。したがって、このような厚鋼板では、特に靭性の向上が期待できる。
なお、本発明を適用して特に有効な鋼板の板厚は、20〜40mm程度である。
θ1+θ2:50°以上
また、θ1とθ2の合計は、以下の(4)式に示すように50°以上とすることが好ましい。θ1+θ2を50°以上とすれば、図2に示すような下面側の溶接によって生じる溶接熱影響部13の靭性が上面側の溶接において再加熱されて劣化する領域、いわゆる靭性劣化領域14の面積を小さくすることができ、その結果、靭性の劣化が抑制されるからである。したがって、θ1+θ2は50°以上とすることが好ましい。一方、θ1+θ2が90°を超えると、溶接入熱が過大となるので、θ1+θ2は90°以下とすることが好ましい。
θ1+θ2≧50 ・・・(4)
以上、θ1とθ2について、所定の関係を満足させる意義について説明したが、本発明では、これらθ1、θ2に加え、鋼板の下面側の溶接入熱と上面側の溶接入熱との合計入熱Qを一定以下に抑えることが、溶接継手の溶接熱影響部の靭性を安定して高めるために必要である。
Q:1.3×t1.37kJ/cm以下
鋼板1の下面側と上面側を溶接する際の溶接入熱は、鋼板1の板厚に応じて設定する必要がある。というのは、板厚が大きい鋼板、特に板厚が25.4mm以上の厚鋼板では、入熱が増大し、溶接熱影響部の靭性が劣化しやすいからである。
したがって、鋼板の下面側の溶接入熱と上面側の溶接入熱との合計入熱Q(kJ/cm)が鋼板1の板厚tに対して以下の(3)式を満たす範囲内で、溶接を行うものとする。
Q≦1.3×t1.37 ・・・(3)
ただし、厚鋼板のサブマージアーク溶接においては、Qがt1.37 kJ/cm未満では、十分な溶込み深さと溶着量を確保するのが困難になる。そのため、このような厚鋼板、特に板厚が25.4〜40mmの厚鋼板のサブマージアーク溶接では、Qはt1.37〜1.3×t1.37kJ/cmの範囲内とすることが好ましい。
なお、下面側と上面側の溶接入熱は、同一にする必要はなく、上面側の溶接入熱を下面側の溶接入熱よりも大きくすることが好ましい。その理由は、下面側の溶接における溶接入熱を低く抑えることによって、下面側の溶融境界線4近傍の溶接熱影響部の粗粒化を防止することができ、その結果、上面側を溶接する際の再加熱による靭性劣化を防止できるからである。
以上説明した通り、本発明では、溶接熱影響部において優れた靭性を安定して得るために、上記したθ1、θ2およびQについて所定の関係を満足させるのであるが、より容易にこれらの関係を満足させるには、以下に示す溶接条件、特に鋼板の下面側の溶接における溶接進行方向の先頭の電極(以下、第1電極という)のアーク電圧を適正に制御することが肝要である。
なお、本発明は、鋼板の下面側を溶接した後に上面側を1パスで溶接する両面各一層の多電極サブマージアーク溶接方法であるが、電極数は上面側、下面側とも2電極以上、好ましくは3電極以上とする。より好ましくは3電極または4電極である。
鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧:40V以上
まず、本発明の溶接方法において、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を40V以上とすることに至らしめた実験について説明する。
後述する実施例で示す溶接記号3、4、5および6の条件をベースとして、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を種々変化させて、両面各一層のサブマージアーク溶接を行い、種々の溶接継手を形成した。
ついで、得られた溶接継手について、後述する実施例と同様の方法で、試験温度:−30℃における吸収エネルギーV-30(J)を測定した。
測定した吸収エネルギーV-30(J)を、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧に対してプロットしたものを図3に示す。なお、ここでは、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径毎に、測定した吸収エネルギーV-30(J)をプロットしている。
図3に示したように、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径がいずれであっても、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧が40V以上となると、靭性が大きく向上する。
発明者は、上記の実験結果に基づき、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を40V以上とすることに想到したのである。
ここに、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を40V以上とすることで靭性が向上する理由は、電圧を高くすることでアークが広がり、そのため、下面側の溶融境界線がその先端で広がって、θ2が大きくなり易いためであると考えられる。
一方、電圧が高すぎると、溶接入熱が増大するため良好な靭性を得られず、さらには溶接電流が不安定化し溶接欠陥が生じるおそれがある。このため、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧の上限は60Vとすることが好ましい。より好ましくは50V以下である。
なお、鋼板の上面側の溶接では、第1電極のアーク電圧は特に限定されることはないが、例えば30〜38V程度とすれば、上記のθ1、θ2およびQを適正範囲内に好適に制御することができる。
鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径:2.0〜3.2mm
また、鋼板の上面側の溶接における第1電極には、直径:2.0〜3.2mmのワイヤを使用することが好ましい。直径:3.2mm以下のワイヤを使用することで、アークが狭くなり、図1に示すような深い溶け込みが鋼板の上面側の溶接で得られるため、θ1を大きくすることが容易になる。一方、ワイヤ直径が2.0mm未満になると、アーク幅が狭くなり過ぎ、上面側の溶融境界線が先鋭になって、却ってθ1が小さくなる。加えて、ワイヤ径に対して溶接電流が過大になるため、ジュール発熱によるワイヤ溶融が不安定になり、結果としてアーク長が不安定になる。したがって、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径は2.0〜3.2mmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは2.0〜2.4mmの範囲である。
なお、鋼板の下面側の溶接における第1電極で使用するワイヤ直径は特に限定する必要はないが、3電極以上で溶接を行う場合には、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径以上とすることが好ましい。
また、第2電極(溶接進行方向の2番目の電極)以降の各電極のアーク電圧およびワイヤ直径については、鋼板の下面側および上面側の溶接とも特に限定されることはなく、例えばアーク電圧を37〜44V程度とし、直径:3.2〜4.0mm程度のワイヤを使用すればよい。
以上、θ1、θ2およびQについて、より容易に所定の関係を満足させるための溶接条件について説明したが、上記以外の溶接条件は特に限定されず、本発明の効果は、開先形状や溶接電流、溶接速度、電極配置に拘らず、発揮される。
また、ワイヤは、一般のサブマージアーク溶接にて広く用いられているソリッドワイヤを本発明でも使用できるが、金属粉等の充填材を内包したコアードワイヤも使用でき、さらにフラックスとしては、高塩基性の溶融型フラックス等が好適である。
なお、溶接に供する鋼材については、特に限定されることはないが、とりわけ低炭素の高強度鋼等が有利に適合する。
表1に示す成分を有する鋼板(板厚t:39mm)に、図4に示すような形状の開先を形成した後、下面側のサブマージアーク溶接(1パス)を行い、次いで上面側のサブマージアーク溶接(1パス)を行った。
Figure 0005954272
鋼板1の開先形状を表2に示す。表2中の下面側の開先角度は図4に示す角β(°)、上面側の開先角度は図4に示す角α(°)である。また、表2中の下面の開先深さは図4に示すV(mm)、上面の開先深さは図4に示すU(mm)である。
Figure 0005954272
サブマージアーク溶接の溶接条件を表3、4に示す。表3に示すように、ここでは全て4電極(1パス)で溶接を行った。また、表3に示す電流は、いずれも第1電極を直流とし、第2電極以降を交流とした。
表4中の極間距離は、鋼板1の表面(下面または上面)での各電極におけるワイヤ先端の間隔(mm)であり、母材−電極間距離は、鋼板1の表面(下面または上面)とコンタクトチップ下面との間隔(mm)である。また、電極角度は、鋼板に垂直な線とワイヤとがなす角であり、前進角(°)を正、後退角(°)を負としている。
ここで、前進角は、ワイヤ先端がトーチよりも溶接進行方向の前方に位置するようにワイヤを傾斜させた場合における、鋼板に垂直な線とワイヤのなす角であり、後退角は、ワイヤ先端がトーチよりも溶接進行方向の後方に位置するようにワイヤを傾斜させた場合における、鋼板に垂直な線とワイヤのなす角である。
Figure 0005954272
Figure 0005954272
これらの各条件(溶接記号1〜11)で溶接を行い、それぞれ5個ずつ溶接継手を作製した。次に、図5に示す試験片採取位置15からシャルピー衝撃試験片および断面マクロ試験片を採取した。
シャルピー衝撃試験片は、JIS Z 3111に規定する4号試験片として、各溶接継手から20個ずつ(すなわち溶接記号ごとに100個ずつ)採取した。シャルピー衝撃試験片は、ノッチが鋼板の板厚方向に平行となり、かつ会合点6を含む面(鋼板1の表面に平行な面)が試験片の板厚方向中央となるように採取した。そのノッチの位置は、ノッチ底における溶接金属と溶接熱影響部の比率が50%ずつとなる位置とした。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠(試験温度:−30℃)して行い、吸収エネルギーV-30(J)を測定した。
その結果を表5に示す。ここで、表5中の吸収エネルギーV-30は、溶接記号ごとに100個のシャルピー衝撃試験片に対するシャルピー衝撃試験で得られた測定値のうち、最も低い値を示している。
なお、この値が56J以上であれば、溶接熱影響部において優れた靭性が安定して得られていると言える。
また、断面マクロ試験片は、各溶接継手から3個ずつ(すなわち溶接記号ごとに15個ずつ)採取した。それぞれの断面マクロ試験片から角度θ1(°)とθ2(°)を測定した結果を表5に示す。なお、表5中のθ1、θ2は、溶接記号ごとに15個の試験片を測定したときの平均値である。
Figure 0005954272
表5に示した溶接記号3〜6および8〜11は発明例である。これらの溶接記号3〜6および8〜11では、いずれも安定して優れた靭性が得られた。
特に、鋼板の上面側の溶接における第1電極のワイヤ直径が2.0〜2.4mmの範囲である溶接記号3、4、8、9では、いずれもθ1+θ2が(4)式を満足し、86J以上の高い靭性が安定して得られた。
一方、比較例である溶接記号1は、鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧が40Vに満たず、θ1およびθ2がいずれも15°未満であるから、溶接熱影響部において優れた靭性が安定して得られなかった。
また、溶接記号2、7は、θ1がいずれも15°未満であるから、溶接熱影響部において優れた靭性が安定して得られなかった。
1 鋼板
2 下面側溶接金属
3 上面側溶接金属
4 下面側の溶融境界線
5 上面側の溶融境界線
6 会合点
7 第1平行線
8 第1交点
9 上面側境界直線
10 第2平行線
11 第2交点
12 下面側境界直線
13 下面側の溶接によって生じる溶接熱影響部
14 靭性劣化領域
15 試験片採取位置

Claims (6)

  1. 鋼板の下面側を溶接した後に上面側を溶接する両面各一層の多電極サブマージアーク溶接方法であって、
    該鋼板の下面側の溶接における第1電極のアーク電圧を40V以上として溶接するものとし、
    下面側溶接金属の溶融境界線と上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる会合点と、該会合点から前記鋼板の上表面の方向へ5mmの位置を通り該上表面に平行な第1平行線と前記上面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第1交点と、を結ぶ上面側境界直線が、前記第1平行線に垂直な線となす角をθ1(°)とするとき、該θ1が下記の(1)式を満足し、
    かつ前記会合点と、前記会合点から前記鋼板の下表面の方向へ5mmの位置を通り該下表面に平行な第2平行線と前記下面側溶接金属の溶融境界線とが交わる第2交点と、を結ぶ下面側境界直線が、前記第2平行線に垂直な線となす角をθ2(°)とするとき、該θ2が下記の(2)式を満足するとともに、
    前記鋼板の下面側の溶接入熱と上面側の溶接入熱との合計入熱Q(kJ/cm)が、前記鋼板の板厚t(mm)との間で(3)式の関係を満足することを特徴とするサブマージアーク溶接方法。

    θ1≧15 ・・・(1)
    θ2≧15 ・・・(2)
    Q≦1.3×t1.37 ・・・(3)
  2. 前記鋼板の上面側の溶接における第1電極として、直径:2.0〜3.2mmのワイヤを使用することを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接方法。
  3. 前記θ1と前記θ2とが、次式(4)
    θ1+θ2≧50 ・・・(4)
    を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のサブマージアーク溶接方法。
  4. 前記鋼板の上面側の溶接入熱が、前記鋼板の下面側の溶接入熱よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法。
  5. 前記鋼板の下面側および上面側の溶接を、それぞれ3電極以上で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のサブマージアーク溶接方法により、溶接継手を形成することを特徴とする溶接継手の製造方法
JP2013145793A 2013-07-11 2013-07-11 サブマージアーク溶接方法および溶接継手の製造方法 Active JP5954272B2 (ja)

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