JP5947657B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、トラックが細線状の磁性体で形成された磁気記録媒体に関する。
ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置は、扱われる情報量の増大に伴い、高記録密度化ならびに記録や再生の高速化が進められている。高記録密度化に伴い、HDD等に使用される磁気ディスク等の記録媒体のトラックは狭ピッチ化し、さらにトラックにおける1データ(1ビット)分の長さは短くなり、このような微小な領域の磁気を検出するために、記録・再生方式はGMR(Giant MagnetoResistance:巨大磁気抵抗効果)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗)素子のような磁気抵抗効果素子からなる磁気ヘッドによる磁気方式、あるいはレーザー光の照射による光磁気方式が適用されている。
このような磁気ディスクにおける記録および再生は、ディスクをスピンドルモータで回転駆動させ、磁気ヘッドやレーザー光の照射スポットをディスクの径方向のみに移動させることで、トラックに沿って(ディスクの周方向に)所定方向に磁化する(記録する)、または磁気を検出する(再生する)。このようなディスクにおいて記録および再生を高速化するためには、ディスクの回転速度を速くすることが第一に挙げられる。しかし、記録においてはトラックの磁化に要する時間、再生においては磁気の検出に要する時間、さらにディスクの振動による誤動作等の問題から、回転速度の高速化には限界がある。
そこで、記録媒体を駆動させずに記録されているデータを移動する方法として、特許文献1には、細線状の磁性体(以下、適宜磁性細線)をU字型等に形成してトラックとしたメモリデバイスが開示されている。これは、磁性体を細線状に形成すると、その長さ方向に磁区が生成し、さらに当該長さ方向に電流を供給すると磁区同士を区切るように生成している磁壁がすべて磁性細線の長さ方向に等距離移動する、シフト移動を行う特性を利用したものである(非特許文献1,2参照)。すなわち、特許文献1に記載されたメモリデバイスは、トラック(磁性細線)上の所定の一箇所(特許文献1ではU字型の頂部)に記録用および再生用の各磁気ヘッドを固定し、トラック両端から電流を可逆的に供給して磁壁に挟まれた所望の磁区を磁気ヘッドに対向する位置に移動させる。
また、特許文献2〜5には、現行の磁気ディスク等のトラックのように複数の磁性細線を同心円状に形成した磁気記録媒体が開示されている。これらの方法においては、磁性体の形状(線幅等)や供給する電流により異なるが、磁壁の移動速度は数十m/sから約250m/sと極めて高速であるので、現行のディスクの回転による再生速度を超えることが期待される。
米国特許第6834005号明細書 特開2011−100517号公報 特開2011−123943号公報 特開2012−84206号公報 特開2012−53957号公報
T. Koyama et al., "Control of Domain Wall Position by Electrical Current in Structured Co/Ni Wire with Perpendicular Magnetic Anisotropy", Appl. Phys. Express, 2008, Volume 1, Issue 10, pp.101303 Xin Jiang et al., "Enhanced stochasticity of domain wall motion in magnetic racetracks due to dynamic pinning", Nature Communications, 2010, Volume 1, pp.1-5
磁気記録媒体はさらなる高記録密度化が求められ、その1つとしてトラックの狭ピッチ化が挙げられる。しかしながら、特許文献2〜5のような磁区のシフト移動による高速再生を可能とする磁気記録媒体は、磁性細線を1本のトラックとして細線幅方向を単磁区とするために、また電流を供給されて駆動するので、磁性細線を1本ずつ離間して設けて間を絶縁する必要がある。したがって、磁気記録媒体のトラックピッチ、すなわちトラック(磁性細線)幅およびトラック間距離は、リソグラフィ技術やエッチング技術における加工精度により規制される。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、磁性細線で形成したトラック内で磁区をシフト移動させる磁気記録媒体について、加工精度によらずに高記録密度化の可能なものを提供することが課題である。
前記課題を解決するために、本発明者らは、磁性細線について、磁区のシフト移動における移動ズレを防止するために、括れ(ノッチ)等を形成したり、局所的に飽和磁化を高くすることで、電流停止時に定位置に磁壁を係止させていることに着目した(例えば、特許文献1,2,4参照)。これは、細線状等の簡素な形状の磁性体は、疵や屈曲等の微小な変形箇所や、飽和磁化等の磁気特性が局所的に異なる箇所があると、その部分に磁壁が生成し易く、また係止され易いことによる。このことから、本発明者らは、磁性細線を、細線方向に沿った溝等で細線幅方向に区切ることで、従来は1トラックを構成していた1本の磁性細線に2以上のトラックを設けることを見出した。
すなわち本発明に係る磁気記録媒体は、基板上に磁性体を細線状に形成してなる1以上の磁性細線を備えて、2値のデータをそれぞれ異なる磁化方向として前記磁性細線に記録されて磁区が生成されるものに関する。本発明に係る第1の磁気記録媒体は、前記磁性細線が、細線幅方向に区切る境界の1箇所以上に、上面および下面の少なくとも一方が細線方向に延びた溝状または畝状のいずれかに形成された連続記録領域区切部を設けられている。そして、磁気記録媒体は、前記磁性細線が、前記連続記録領域区切部を境界として細線幅方向に分割された領域のそれぞれにおいて、複数の前記磁区が細線方向に連続して生成し、電流が供給されることにより、すべての前記分割された領域において、前記磁区同士を区切る磁壁が細線方向に移動することを特徴とする。
また、本発明に係る第2の磁気記録媒体は、前記磁性細線が、細線幅方向に区切る境界の1箇所以上に、他の領域と飽和磁化の高さが異なる連続記録領域区切部が細線方向に延設されている。そして、磁気記録媒体は、前記磁性細線が、前記連続記録領域区切部を境界として細線幅方向に分割された領域のそれぞれにおいて、複数の前記磁区が細線方向に連続して生成し、電流が供給されることにより、すべての前記分割された領域において、前記磁区同士を区切る磁壁が細線方向に移動することを特徴とする。
かかる構成により、第1、第2の磁気記録媒体は、1本の磁性細線が細線幅方向に2以上の領域に分割され、それぞれの領域をいわゆるトラックとしてデータを連続して記録されることができ、磁性細線の微細加工によらずに、面積あたりのトラック数すなわち記録密度を向上させることができる。
さらに、本発明に係る第1、第2の磁気記録媒体は、前記磁性細線が、細線方向に区切る境界の1箇所以上に、前記電流の停止時に前記磁壁を係止するように、細線方向に垂直な断面の形状が他の領域と異なる変形部、または、飽和磁化の高さが他の領域と異なる飽和磁化変異部が設けられていてもよい。
かかる構成により、パルス電流における電流停止時に、磁性細線に予め設けられた変形部または飽和磁化変異部に磁壁が到達して停止するので、パルス電流による磁区のシフト移動において、微小な移動ズレの累積によるエラー等を防止することができる。
本発明に係る磁気記録媒体によれば、磁性細線の加工限界によらずに1本のトラックを幅狭にして搭載本数を増大させて、高記録密度化することができる。
本発明に係る磁気記録媒体の模式図であり、(a)は平面図、(b)は第1実施形態に係る磁気記録媒体の部分段面図で、(a)のA−A線矢視断面図に相当する。 本発明に係る磁気記録媒体の構成を説明する磁性細線の斜視図である。 本発明に係る磁気記録媒体の磁性細線におけるデータ書込および磁区の移動を説明するための模式図で、平面図である。 図1(a)のA−A線矢視断面図に相当する部分断面図であり、(a)は第1実施形態の変形例に係る磁気記録媒体の模式図、(b)は第2実施形態に係る磁気記録媒体の模式図である。 図1(a)のA−A線矢視断面図に相当する部分断面図であり、(a)は第3実施形態に係る磁気記録媒体の模式図、(b)は第3実施形態の変形例に係る磁気記録媒体の模式図、(c)は第3実施形態の別の変形例に係る磁気記録媒体の模式図である。 実施例の磁性細線のサンプルの写真であり、(a)は原子間力顕微鏡像写真、(b)は磁気力顕微鏡像写真である。 実施例の磁性細線のサンプルの写真であり、(a)は原子間力顕微鏡像写真、(b)は磁気力顕微鏡像写真である。 点状の凹みを形成された磁性細線のサンプルの写真であり、(a)は原子間力顕微鏡像写真、(b)は磁気力顕微鏡像写真である。
以下、本発明に係る磁気記録媒体を実現するための形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体10は、図1(a)に示すように、円盤(円環)形状の基板2上に、磁性体を細線状に形成してなる磁性細線1をデータの記録(格納)領域として備える。この磁性細線1には、後記するように、2値のデータすなわち「0」または「1」のデータを異なる2方向の磁化のいずれかとして記録される。磁気記録媒体10において、磁性細線1,1,…は、平面視で互いに絶縁層6を挟んで離間して同心円状に基板2上に形成されている。詳しくは、1本の磁性細線1は、平面視で円環の一部を欠いたC字型に形成されている。なお、図1(a)においては、磁性細線1を6本に省略して、外周と内周の中間部を空白で示すが、実用的には磁性細線1は幅および間隔(ピッチ)が外形(基板2)に対して極めて小さく形成され、一定のピッチで設けられる。さらに、磁気記録媒体10は、磁性細線1の一端と他端に、正電極31と負電極32を接続して備える。このように、本実施形態において、磁気記録媒体10は、円盤形状の基板2をベースとしてその外形が現行の磁気ディスク等と同様に円盤形状であるので、適宜、磁気ディスク10と称する。そして、磁気記録媒体10は、現行の磁気ディスクと同様に、記録用、再生用の磁気ヘッド等を備えた記録再生装置(図示省略)を用いて、データの書込および再生(読出)が行われる。
図1(b)に示すように、磁性細線1は、上面に当該磁性細線1の長さ方向(以下、細線方向という)に沿った1本の溝(連続記録領域区切部、溝部1d)が形成され、この溝を境界として細線幅方向(磁気記録媒体10の径方向)に2つの領域Tr1,Tr2に分割される。
ここで、磁性細線のサンプルを作製して、この磁性細線の形状により細線幅方向に磁区を分割して生成することができることを調査した。Ru(3nm)からなる下地および[Co(0.3nm)/Pd(1.2nm)]×21の多層膜(合計厚さ約40nm)を、細線幅方向に単磁区を形成する250nm幅の磁性細線に加工した。この磁性細線に、原子間力顕微鏡(AFM)のナノインデンテーション機能に使用されるダイヤモンドプローブを押し込んで、上面の幅方向中心辺りに、深さ約10nmの点状の凹みを複数個形成してサンプルを作製した。図8(a)に、サンプルのAFM像写真を示し、また、図中に矢印で凹みが形成された箇所を示す。サンプルに、初期化として1kGの磁界を上向きに印加して、全体の磁化を飽和させて上向きの磁化とした後、磁性細線(Co/Pd多層膜)の保磁力より少し小さい0.5kGの下向きの磁界を印加した。このサンプルの表面を磁気力顕微鏡(MFM)にて画像化して観察した。図8(b)に示すMFM像写真において、磁性細線は、磁化方向が上向きか下向きかによって磁区毎に白(上向き)/黒(下向き)のコントラストを示す。
図8(b)に示すように、サンプルについて、凹みを形成された箇所で磁区が細線幅方向に2分割されることが確認された。このように、幅方向に単磁区を生成する十分に幅の狭い磁性細線であっても、磁壁を係止する箇所を設けることで、この箇所を境界に細線幅方向に分割された磁区を生成することができる。このことから、磁性細線1に磁壁を係止する作用を有する溝部1dを形成することで、この溝部1dで細線幅方向に分割された2つの領域Tr1,Tr2のそれぞれが、従来の磁性細線のように細線方向に連続した複数の磁区を生成されることができる。
磁気記録媒体10においては、磁性細線1の、これら2つの領域Tr1,Tr2のそれぞれに、細線方向に連続してデータが記録され、図2に示すように、1つのデータを所定の単位長さ(ビット長Lb)の磁区とする。すなわち、領域Tr1,Tr2は、それぞれ、現行の磁気ディスクのデータの記録領域であるトラックに類似するため、適宜、第1トラックTr1、第2トラックTr2と称する。なお、図2および後記の図3においては、説明を簡潔にするために磁性細線1を直線状に表す。以下、磁気記録媒体10を構成する各要素について、詳細に説明する。
(磁性細線)
磁性細線1は、磁性体(磁性材料)を厚さおよび幅に対して十分に長い細線状に形成してなり、細線形状(平面視形状)は、屈曲していない直線、または厚さおよび幅方向長に対して十分に緩やかな曲線とする。磁性細線1は、本実施形態のように外形が円盤形状である磁気記録媒体10においては、その外形と同心円の周に沿った形状とすることで、十分に長く緩やかな曲線となり、磁気記録媒体10の外形寸法に対しても長くすることができ、さらに磁気記録媒体10の上面全体に多数の磁性細線1を効率的に配置して記録密度を高くすることができる。したがって、磁性細線1は、磁気記録媒体10において細線長さを同一としなくてよく、外周寄りに設けられたものほど長くして、磁気記録媒体10の全体としてデータの記録可能な領域(容量)を大きくすればよい。また、磁気記録媒体は円盤形状に限らず、例えば平面視が矩形の板状でもよく、この場合、磁性細線は互いに平行な直線状に形成すればよい。
磁性細線1は、現行の磁気ディスクの記録層等と同様に磁性材料で形成され、特に微細化に好適な垂直磁気異方性材料を適用することが好ましい。このような材料として、公知の強磁性材料を適用でき、具体的には、Co等の遷移金属とPd,Pt,Cuのいずれかとを交互に繰り返し積層したCo/Pd多層膜のような多層膜、またTb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)が挙げられる。これらの材料はスパッタリング法等の公知の方法により成膜され、フォトリソグラフィおよびエッチングまたはリフトオフにより、以下の細線形状に成形されて磁性細線1となる。本実施形態においては、磁性細線1は垂直磁気異方性材料であるので、図2に示すように上向きまたは下向きのいずれかの磁化方向を示す。
磁性細線1は、厚さ(膜厚)70nm以下、幅300nm以下であれば、細線方向にのみ磁区が分割され易く、好ましい。また、磁性細線1は、ピッチが狭いすなわち幅が小さい(細い)ほど、磁気記録媒体10を高記録密度化することができる。なお、磁性細線1は、溝部1dにより幅方向に2つの領域Tr1,Tr2に分割されてそれぞれに磁区を生成させるが、幅方向に単磁区を形成し易い従来の磁性細線と同等またはそれよりも細い幅として、記録密度を倍増させることが好ましい。また、磁区(磁壁)の細線方向への移動は磁性細線1に電流を細線方向に供給することでなされ、その移動速度は断面積あたりの電流密度に比例して速くなるため、磁性細線1の厚さおよび幅(断面積)が小さいほど、小さい電流で磁区を高速で移動させることができる。一方、データの保存(磁化の保持)のために、磁性細線1はある程度の厚さおよび幅とすることが好ましく、具体的には厚さは5nm以上、幅はトラックTr1,Tr2の1あたり(溝部1dを含む)で10nm以上、すなわち20nm以上とすることが好ましい。なお、磁性細線1の厚さおよび幅とは、溝部1dのような変形箇所以外の、上下面や側面が平坦な部分における大きさを指す。
磁性細線1は、図1(b)に示すように、その細線方向全体にわたって、幅方向中心に、1本の溝(溝部1d)が上面に形成されている。前記した通り、幅300nm以下の細線状に形成された磁性体は、幅方向に単磁区を形成し易いが、このような局所的に断面積が小さい箇所には磁壁が生成され易く、また磁壁が係止され易いため、磁性細線1は溝部1dを形成した箇所で区切るように磁区が生成した状態になり易い。したがって、磁性細線1は、この溝部1dを境界として幅方向に二等分された2つの領域(トラック)Tr1,Tr2のそれぞれで磁区を生成させることができる。以下、磁性細線1の溝部1dのように、磁性細線を細線幅方向に区切る部分(境界近傍)を、適宜、トラック区切部と称する。磁性細線1における溝部1dの本数は特に規定されないが、1本であれば1つの磁性細線1に設けられるトラックは2となり、いずれのトラック(Tr1,Tr2)も磁性細線1の側端を含んで絶縁層6に面して設けられる。このような構成とすることで、後記するように磁気記録媒体10は、トラックTr1,Tr2のそれぞれの一方のみに対して、データの書込や再生のための磁気ヘッド(図2の記録ヘッド71,72)を対向させることが容易になる。
溝部1dは、磁性細線1において、少なくともデータの書込および再生が行われる領域(書込領域1w、再生領域1r)を含む、データが記録される領域の全体にわたって連続して形成される。溝部1dは、磁性細線1において、トラックTr1,Tr2の各幅が均等になるように細線幅方向中心に設けることが好ましいが、少なくともトラックTr1,Tr2のそれぞれが書込や再生に対応した幅となる位置に、溝部1dが設けられていればよい。なお、トラックTr1,Tr2は、各幅に偏りがあっても、それぞれにおいて同じ速度で磁区がシフト移動する。
本実施形態に係る磁気記録媒体10は、磁性細線1(トラックTr1,Tr2)において1データが記録される細線方向長さ(ビット長Lb)は特に規定されず、後記するデータ書込方法にて説明するように、パルス電流のパルス幅により設定されることができる。ただし、ビット長Lbは、データの保存のためにはトラックTr1,Tr2の幅と同じく10nm以上とすることが好ましく、さらに、後記の再生領域1rにおいて磁気が正確に検出される長さ以上とすることが好ましい。
ここで、一般的に、磁壁の厚み(細線方向長さ)は磁区に対して極めて狭く(短く)、磁性細線1の厚さ、ならびに磁区の長さ、すなわちトラックTr1,Tr2の幅(ここでは磁性細線1の幅の1/2)および1データの細線方向長さ(ビット長Lb)にもよるが、5〜100nm程度である。このような磁壁を係止させるために、磁性細線1は、変形している領域の細線幅方向長さ、ここでは溝部1dの溝幅(溝部1dの開口部における細線幅方向長さ)を、磁壁の厚み以上とし、10倍以下とすることが好ましい。具体的には、溝部1dの溝幅は、10〜100nm程度の範囲で、トラックTr1,Tr2の幅の1/2以下(磁性細線1の幅の1/4以下)、ビット長Lbの1/10〜2倍程度が好ましい。また、溝部1dが幅広過ぎると、その深さによっては傾斜が緩やか過ぎて磁壁を係止する作用が小さくなる。
磁性細線1において、溝部1dのように変形させた箇所は、磁壁を好適に係止させておく(溝部1dの外へ移動させない)ためには、その変化量を2%以上とすることが好ましい。具体的には、磁性細線1の厚さが50nmであれば、溝部1dの深さは1nm以上(最薄部の厚さが49nm以下)とすることが好ましい。一方、溝部1dは、深さの上限は特に規定されず、磁壁を係止する十分な傾斜で前記の範囲の溝幅に形成されるような深さであればよい。また、溝部1dの断面(細線方向に垂直な断面)視形状は、特に規定されず、V字型(逆三角形)、U字型、矩形、逆台形型等が挙げられる。ただし、溝部1dは、磁性細線1において磁壁を係止する作用を均一にするために、断面視形状が磁性細線1の全長にわたって略一致していることが好ましい。このような溝部1dは、磁性細線1上に、溝部1dを形成する領域を薄くしたまたは空けたレジストマスクやナノインプリントによる樹脂マスクを形成して、エッチングして形成することができる。
書込領域1w1,1w2は、それぞれ磁性細線1のトラックTr1,Tr2にデータを記録するために当該磁性細線1の磁気をデータに対応する磁化方向にするための領域であり、細線方向長さをビット長Lb以上とし、またこの領域においては磁性細線1の構造を必要に応じて記録方式に対応したものとする。なお、図1(a)においては、書込領域1w1,1w2を内包する領域をまとめて書込領域1wとして表す。具体的には、例えば現行の磁気ディスクへの記録方法と同様に、図2に示すように、書込用の磁気ヘッドである第1記録ヘッド71、第2記録ヘッド72(主磁極の部分のみを図示する)を書込手段として外部磁界を印加する場合は、磁性細線1の下(記録ヘッド71,72に対向する側の反対側)の書込領域1w1,1w2を含む領域または磁性細線1全体を、非磁性層を介して軟磁性層が設けられた積層構造とする(図示省略)。軟磁性層により、記録ヘッド71,72からの外部磁界が磁性細線1で垂直な書込み磁束を形成するための磁路を形成する。このような構成とすることで、例えば図2では、初期状態(書込前)の磁化が下方向の磁性細線1を、書込領域1w1において第1記録ヘッド71が上向きの磁界を印加して磁化を上方向に反転させ、書込領域1w2において第2記録ヘッド72が下向きの磁界を印加して磁化を下方向としている。
ここで、第1記録ヘッド71および第2記録ヘッド72は、それぞれが主磁極、副磁極、およびコイル等を備え、ある程度のスペースを要するため、1本の磁性細線1内に隣接したトラックTr1,Tr2の細線方向における同じ位置に主磁極を対向させることは困難であり、また、それぞれからの印加磁界が互いに影響し合うことになる。そのため、図2に示すように、記録ヘッド71,72を対向させる磁性細線1の領域すなわち書込領域1w1,1w2は細線方向にずらして距離を空けて設けられている。このように磁性細線1に書込領域1w1,1w2を細線方向にずらして設ける場合は、1データ分(ビット長Lb)の整数倍ずらすことが好ましい。ここでは、第2トラックTr2の書込領域1w2を、第1トラックTr1の書込領域1w1の、4データ分(4Lb)磁区移動方向における後方(図2における左側)に設けている(図3(a)参照)。このように、書込領域1w1,1w2の細線方向長さや磁性細線1(トラックTr1,Tr2)における位置は、記録方式や加工精度等に対応したものとすればよい。
なお、磁気記録媒体10のすべての磁性細線1は、書込領域1w1,1w2が、それぞれ細線幅方向(磁気記録媒体10の径方向)の1本の線に沿った位置に設けられていることが好ましい(図1(a)参照)。このような磁気記録媒体10であれば、記録再生装置は、記録ヘッド71,72を支持するアーム(図示省略)を磁気記録媒体10の径方向のみに移動させることで、すべての磁性細線1の書込領域1w(1w1,1w2)にデータ書込をすることができる。
再生領域1rは、磁性細線1のトラックTr1,Tr2のデータ書込をされて生成した磁区の磁化方向を検出するために領域であり、図1(a)に示すように書込領域1w(1w1,1w2)と同様に、すべての磁性細線1において磁気記録媒体10の径に沿って一直線上に設けられていることが好ましい。また、再生領域1rは、図1(a)には一体に表されているが、図2に示す書込領域1w1,1w2と同様に、第1トラックTr1における再生領域1r1と第2トラックTr2における再生領域1r2とで、細線方向に4データ分(4Lb)ずらして設けられている(図3(a)参照)。磁性細線1の再生領域1r1,1r2にはそれぞれ、例えばGMR(Giant MagnetoResistance:巨大磁気抵抗効果)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗)素子のような磁気抵抗効果素子からなる再生用の磁気ヘッドを対向させて、磁気を検出する。したがって、磁性細線1は、再生領域1r1,1r2を細線方向にずらして距離を空けて設けることで、磁気ヘッドを微小な再生領域1r1,1r2のそれぞれに対向させて正確に磁気を検出することができる。また、磁性細線1は、再生領域1r(1r1,1r2)に限定して、例えば特許文献5に記載されるような局所的に磁区が拡張する構成とする等、必要に応じて再生方式に対応した構造としてもよい。
磁性細線1は、磁気記録媒体10の製造時におけるダメージから磁性細線1を保護するために、上面に保護膜(図示省略)を積層されていることが好ましい。保護膜は、Ta,Ru,Cuの単層、またはCu/Ta,Cu/Ruの2層等から構成され、2層構造とする場合は、いずれもCuを内側(下層)とする。さらに、磁性細線1は、基板2との密着性を得るために、金属薄膜からなる下地膜の上に形成されてもよい(図示省略)。このような下地膜は、Ta,Ru,Cu,Al,Au,Ag,Cr等の非磁性金属材料を適用することができる。保護膜および下地膜は、それぞれ厚さ1〜10nmとすることが好ましい。厚さが1nm未満であると連続した膜を形成し難く、一方、10nmを超えてもそれ以上に効果が向上しないためである。なお、この厚さは、保護膜については、磁気記録媒体10(完成後)におけるものであり、製造時(成膜時)においては、その後の工程による減肉分を加味する。
(基板)
基板2は、磁性細線1を形成するための磁気記録媒体10の土台であり、広義の基板である。このような基板2として、公知の基板材料が適用でき、具体的には、表面に熱酸化膜を形成されたSi(シリコン)基板、SiO2(酸化ケイ素、ガラス)、MgO(酸化マグネシウム)、サファイア、GGG(ガドリニウムガリウムガーネット)、SiC(シリコンカーバイド)、Ge(ゲルマニウム)単結晶基板等を適用することができる。また、基板2が、Si基板で表面に十分な厚さの酸化膜が形成されていない場合は、表面に絶縁膜を形成した上に磁性細線1を形成すればよい。すなわち基板2は、少なくとも表面(表層)が絶縁性であればよい。
(絶縁層)
絶縁層6は、磁気記録媒体10における磁性細線1,1間、あるいはさらに正電極31,31間および負電極32,32間に配され、さらに基板2と磁性細線1との間や磁性細線1の上に配されてもよい。絶縁層6は、例えばSiO2,Si34,Al23等の公知の絶縁材料からなり、また磁気記録媒体10の全体で同じ材料を適用しなくてもよい。
(電極)
正電極31および負電極32は、一対の電極として磁性細線1にその細線方向の一方向に電流を供給するための端子であり、図1(a)に示すように磁性細線1の両端に接続される。本実施形態では図2に一部(負電極32)を示すように、電極31,32は共に磁性細線1の下面に接続されているが、磁性細線1における接続面はこれに限られず、例えば上面に接続されてもよい。電極31,32は、Cu,Al,Ta,Cr,W,Ag,Au,Pt等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料からなり、スパッタリング法等により成膜、フォトリソグラフィ等によりストライプ状に成形される。また、電極31,32の厚さ、幅および細線方向長さは、磁性細線1,1のピッチ(トラックピッチ)、材料や供給する電圧・電流等に基づいて設定される。
[磁気記録媒体の製造方法]
本発明に係る磁気記録媒体は、公知の方法を用いて製造することができる。図1に示す磁気記録媒体10の製造方法の一例を以下に説明する。基板2上にSiO2やAl23等の絶縁膜を、スパッタリング法等の公知の方法により磁性細線1の厚さに成膜して、その上に、磁性細線1を設ける領域にレジストマスクを形成し、絶縁膜をエッチングする。次に、スパッタリング法等の公知の方法により磁性膜を成膜して、絶縁膜のエッチングされた領域を埋めて磁性細線を形成し、レジストマスクを除去する(リフトオフ)。これにより、基板2上に平坦な磁性細線が形成され、磁性細線同士の間を絶縁層6が磁性細線と同じ厚さに形成された状態となる。
磁性細線および絶縁層6上に、ナノインプリント法により、溝部1dを形成する領域に溝を設けた樹脂膜を形成する。樹脂膜の上からRIE法等のドライエッチングにより、異方性エッチングを行って、樹脂膜の溝部分を除去し、さらにその直下における磁性細線の部分を薄肉化することにより溝部1dを形成して磁性細線1とする。残存する樹脂膜を除去し、金属電極材料で磁性細線1の両端に接続する電極31,32を形成して、磁気記録媒体10を得る。ナノインプリント法を用いることで、微細で寸法精度の高い溝部1dを形成することができる。なお、基板2上に、まず磁性膜を成膜し、溝部1dを形成してから細線状に加工して磁性細線1を形成し、絶縁層6を埋め込んでもよい。あるいは、前記磁性膜上に磁性細線1の形状の樹脂マスクを形成してエッチングすることで、細線状への加工および溝部1dの形成を同時に行うこともできる。
[磁気記録媒体の動作方法]
(データ書込方法)
次に、本発明に係る磁気記録媒体の磁性細線に「0」、「1」の2値のデータを連続して書き込む(記録する)方法を、図2および図3を参照して説明する。図3は磁性細線1の書込領域1w1,1w2および再生領域1r1,1r2を含む両端近傍部分のみを示し、中間部分を破断線で省略する。また、図3は平面図であるが、矢印で示す磁化方向の上下は厚さ方向におけるものとする。磁気記録媒体10におけるデータ書込方法は、記録再生装置の記録ヘッド71,72で書込領域1w1,1w2へ書込をして磁区を生成させ、電極31,32に接続した記録再生装置の走査電流源8(図3(b)参照)から磁性細線1にパルス電流を供給して、磁区を断続的にシフト移動させるものである。
図2に示す磁性細線1は、電流が供給されていない状態であり、第1トラックTr1に「0」を書き込むために第1記録ヘッド71が上向きの磁界を、第2トラックTr2に「1」を書き込むために第2記録ヘッド72が下向きの磁界を、それぞれ対向する領域1w1,1w2に印加してそれぞれの磁化方向とされている。そして図2において磁性細線1は、細線方向に区切るように幅全体にわたる磁壁DW1と、平面視でかぎ型に屈曲した磁壁DW2と、第2トラックTr2で平面視コの字型に屈曲した磁壁DW3と、が生成している。図2に示す磁性細線1を図3(a)に平面図で示す。なお、図3においては、書込領域1w1,1w2について、記録ヘッド71,72から磁界が印加される領域を破線枠で示す。
ここで、十分に細い細線状の磁性体は、通常、磁区が細線方向にのみ区切られて生成し、細線幅方向においては単磁区となる。しかし、本発明に係る磁気記録媒体10の磁性細線1は、磁壁DW2や磁壁DW3の、トラックTr1,Tr2の境界に沿った部分が、溝部1dに係止されているため、隣接したトラックTr1,Tr2同士で異なる磁化方向の磁区が生成した状態が保持される。
記録ヘッド71,72の磁界印加を停止し、図3(b)に示すように、電極31,32に接続した走査電流源8から直流パルス電流を磁性細線1に供給する。磁性細線1においては、負電極32側(左側)から電子e-が注入されて、細線方向に区切る磁壁が右方向へ移動する。このとき、磁壁DW2,DW3のような平面視で屈曲して細線方向に沿った部分を有する磁壁は、細線方向に区切る部分が移動するのに伴って、全体が正電極31側へ、すなわち細線方向に移動する。ここで、磁壁DW2,DW3の細線方向に沿った部分は溝部1dに係止されて、この部分を挟んで磁化方向が異なる磁区のそれぞれの形状が保持されるため、結果、これらの磁壁で区画されたすべての磁区は、それぞれの形状を保持して右方向へ等距離移動する。なお、負電極32側の最端の磁区は、注入された電子e-により移動距離だけ伸長する。
細線方向に形状が一様に形成された磁性細線1は、一定の電流の供給により一定の速度で磁壁が移動し、その移動速度は電流密度に依存する。したがって、同じ磁性細線1におけるトラックTr1,Tr2は、幅(断面積)が不均一であっても、磁性細線1に供給された電流の電流密度は同一であるので、同一の距離だけ磁壁が移動する。そして、1回の移動距離がビット長Lbとなるように直流パルス電流のパルス幅を設定することで、走査電流源8をON状態としたまま、ビット長Lb刻みで断続的に磁区をシフト移動させることができる。
図3(b)に示す直流パルス電流の1パルス供給後の停止時において、図3(c)に示すように、再び記録ヘッド71,72で書込領域1w1,1w2へ書込をする。ここでは、第1トラックTr1の書込領域1w1に「1」を書き込んで磁化方向を下向きに、第2トラックTr2の書込領域1w2に「0」を書き込んで磁化方向を上向きにする。その結果、第2トラックTr2には、書込領域1w2の右隣に、ビット長Lbの長さの、磁化が下向きの磁区が生成する。また、第1トラックTr1には、書込領域1w1の右隣に、ビット長Lbの2倍の細線方向長さの磁化が上向きの磁区が生成する。このように、磁気記録媒体10は、磁性細線1にパルス電流を供給してビット長Lbの距離を磁壁移動させて次のデータを書き込むことで、磁界印加の領域が広くても、1データの長さをビット長Lbにして磁性細線1に格納することができるので、記録密度を高くすることができる。
また、図3(c)においては、第2トラックTr2の書込領域1w2の磁界印加領域(図中の破線枠内)が第1トラックTr1の側へずれているが、磁界印加停止後に、磁壁が溝部1dに係止されるように微小移動するため、第2トラックTr2のみにデータが記録されることになる。このように、磁性細線1は溝部1dで区切ることにより、トラックTr1,Tr2のそれぞれに正確にデータを記録することができる。言い換えると、溝部1dが形成されていない磁性細線では、磁界印加等により一時的に、一方のトラックに他方と異なる磁化方向の磁区を生成し得るが、磁界印加が停止されると、あるいはその後の磁区のシフト移動の際に、細線幅方向に単磁区となるため、それぞれのトラックに個別にデータを記録することが困難である。なお、第2トラックTr2の書込領域1w2への磁界印加は、第1トラックTr1まで及んでもよい。第1トラックTr1は、書込領域1w2の前方の書込領域1w1で書き換えられるからである。
(データ再生方法)
磁性細線1のトラックTr1,Tr2に磁区として格納されたデータは、書込と同様に直流パルス電流を供給して磁区を再生領域1r1,1r2まで移動させることにより、再生領域1r1,1r2に対向させた記録再生装置の再生用の磁気ヘッドで再生することができる。例えば図3(a)においては、第1トラックTr1では再生領域1r1に下向きの磁区が到達しているのでデータ「1」が再生され、第2トラックTr2では再生領域1r2に上向きの磁区が到達しているのでデータ「0」が再生される。そして、直流パルス電流1パルス供給(図3(b)参照)後の図3(c)においては、第1トラックTr1ではデータ「0」が再生され、第2トラックTr2ではデータ「1」が再生される。なお、磁性細線1において、電流供給により正電極31側の端まで到達した磁区は消失する。そこで、再生領域1r1,1r2で再生したデータを先頭から、記録ヘッド71,72で並行して書き込むことで、磁気記録媒体10に記録されていたデータを保存してもよい(例えば特許文献3参照)。
このように、本実施形態に係る磁気記録媒体10は、1つのトラックを構成する従来の磁性細線について、並設された2本を接続して一体の磁性細線1とし、共通の電流にて並行して動作させるものといえる。また、本実施形態においては、磁性細線1の書込領域1w1,1w2および再生領域1r1,1r2は、共に4Lbずれて設けられているため、トラックTr1,Tr2のそれぞれの先頭データを同時に書き込むことができる。一方、書込領域1w1,1w2および再生領域1r1,1r2のずれが互いに異なる場合は、再生領域1r1,1r2のずれに合わせて、トラックTr1,Tr2の各先頭データの書込のタイミングをずらす。例えば書込領域1w1,1w2が4Lb、再生領域1r1,1r2が8Lbずれている場合は、第1トラックTr1にのみ4データ書き込んで、次に、5番目のデータと第2トラックTr2の先頭データを同時に書き込む。このように、本発明に係る磁気記録媒体10は、同じ磁性細線1に設けられたトラックTr1,Tr2を個別に磁壁移動させることができないため、並列(同時)再生、同時書込となる。なお、直流パルス電流の1回の停止時に、書込や再生を、トラックTr1,Tr2について同時に行わずに、順次行ってもよい。例えば、書込においては、記録ヘッド71,72の両方から同時に磁界を印加しないことで、印加磁界が互いに影響し合うことを避けることができる。
書込方式について、記録ヘッド71,72による磁界印加の他に、スピン注入磁化反転が適用されてもよい。磁性細線1の書込領域1w1,1w2にスピン注入磁化反転素子構造を形成することで、これらの領域をスピン注入磁化反転にて所望の磁化方向にすることができる。詳しくは、磁性細線1が、書込領域1w1,1w2において磁化自由層となるように、中間層および磁化固定層を積層し、このスピン注入磁化反転素子構造へ電流を膜面垂直方向に流すための一対の電極を上下に接続する(図示省略)。また、磁性細線1は磁化自由層として好適に磁化反転するように、厚さを5〜30nmとすることが好ましい。このような構成とすることで、書込領域1w1,1w2が微細化されても正確な位置に書き込むことが容易で、また磁界印加よりも高速に書き込むことができる。なお、書込領域1w1,1w2における2つのスピン注入磁化反転素子構造は、磁化自由層を磁性細線1で共有しているので、少なくとも異なるデータを書き込む際には、書込(電流供給)を同時に行わないようにする。
(変形例)
前記第1実施形態においては、磁性細線1は、上面に溝部1dを形成されて磁壁が細線幅方向において係止されるようにしたが、磁性細線をトラックTr1,Tr2に区切るトラック区切部はこれに限られない。図4(a)に示す第1実施形態の変形例に係る磁気記録媒体10Aは、表面に溝が形成された基板2A上に磁性細線1Aが形成されている。磁性細線1Aを形成するための磁性膜は膜厚が均一であるので、下地である基板2Aの表面形状に沿って、磁性細線1Aは、基板2Aの溝の直上に上面が凹んで溝状の溝部(連続記録領域区切部)1fが形成される。この磁性細線1Aは、溝部1fにおける下面が下方に突設した畝状となる。磁性細線1Aの形状は、溝部1dにより局所的に断面積が小さくなる磁性細線1とは異なるが、このように局所的に変形した溝部1fにおいても、磁壁が係止され易く、溝部1dと同様にトラック区切部としての効果が得られる。変形部1fの形状の変化量や細線方向長さは、溝部1dと同様である。なお、溝部1fの変化量は、上面または下面のいずれかが磁性細線1Aの厚さの2%以上であればよく、基板2A表面に形成する溝の形状を制御すればよい。また、基板2A表面に溝に代えて畝を形成して、その上に磁性細線1A(磁性膜)を形成してもよく、この場合は、磁性細線1Aは凹凸が反転した形状となる。
以上のように、第1実施形態およびその変形例に係る磁気記録媒体によれば、磁性細線の幅やピッチを従来のままとして、記録密度を2倍にすることができる。
[第2実施形態]
前記第1実施形態およびその変形例においては、磁性細線の形状を変形させてトラックの境界(トラック区切部)としたが、磁性体において磁壁を係止する作用は、形状以外に、磁気特性が局所的な変化した部位にも有する。以下、本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体について、図4(b)を参照して説明する。第1実施形態(図1〜3参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図4(b)に示すように、第2実施形態に係る磁気記録媒体10Bは、基板2上に上下面が平坦な磁性細線1Bが形成されている。磁性細線1Bは、細線幅方向に区切るように、他の領域よりも飽和磁化の高い高Ms領域(連続記録領域区切部)1sが細線方向に沿って設けられ、高Ms領域1sによって、第1トラックTr1と第2トラックTr2とに二分割されている。
飽和磁化の高低の勾配がある領域においては、磁壁は、飽和磁化の高い方へ移動する。磁性細線1Bは、高Ms領域1sにおいて、細線幅方向に飽和磁化が低〜高〜低という勾配を形成するため、第1実施形態と同様に、トラックTr1,Tr2それぞれで磁区を生成してこれが保持される。
高Ms領域1sの幅(細線幅方向長さ)は、溝部1d,1fと同様である。なお、磁性細線1Bにおいて、飽和磁化が一様である他の領域に対して、飽和磁化が漸増する領域も含めて高Ms領域1sとする。高Ms領域1sの飽和磁化は特に限定しないが、磁壁が好適に係止されるようにするために、最も高い部分で、高Ms領域1s外の領域に対して1.2倍以上とすることが好ましい。一方、高Ms領域1s外の領域すなわちトラックTr1,Tr2の飽和磁化が低くなり過ぎないように、高Ms領域1sの飽和磁化は10倍程度以下とすることが好ましい。このような飽和磁化の変化は、磁性細線(または加工前の磁性膜)にイオンを照射することで得られ、照射量が多いほど飽和磁化が低下する。したがって、第1実施形態に係る磁気記録媒体10の磁性細線1への溝部1dの形成と同様に、レジストマスクやナノインプリントによる樹脂マスクを形成して、イオンを照射すればよい。なお、マスクは、高Ms領域1sを形成する領域を厚く形成する。イオンの照射は、例えば半導体装置の製造に適用されるイオン注入装置を使用することができる。また、イオン種や注入する条件によっても飽和磁化の変化(低下)量は変化する。イオン種としては、Ga,N,O,Ar,Kr,Xe等が挙げられる。
(変形例)
磁性細線1Bは、トラック区切部を相対的に飽和磁化の高い領域(高Ms領域1s)としたが、反対に飽和磁化の低い領域としても同様の効果が得られる。この場合は、飽和磁化が最も低い部分で、当該領域(トラック区切部)外に対して1/1.2倍以下とすることが好ましい。あるいはさらに飽和磁化を低下させて、トラック区切部を非磁性体としてもよい。イオン照射により飽和磁化は低下するため、このような磁性細線1Bは、トラック区切部以外の主な記録領域とする部分にはイオン照射をせずに強磁性体として、データの保存や再生(磁気の検出)等を容易にすることができる。
[第3実施形態]
本発明に係る磁気記録媒体は、磁性細線が、1本で1トラックを構成する従来の磁性細線(例えば、特許文献2,4参照)と同様に、細線方向に区切る境界にも形状や飽和磁化を変化させた領域を設けられることで、細線方向への磁壁の移動(磁区のシフト移動)における移動ズレを防止することができる。以下、本発明の第3実施形態に係る磁気記録媒体について、図5を参照して説明する。第1、第2実施形態(図1〜4参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図5(a)に示すように、第3実施形態に係る磁気記録媒体10Cは、基板2上に、第1実施形態に係る磁気記録媒体10の磁性細線1(図1(b)参照)と同様に、細線幅方向に二分割する1本の溝部1dが上面に形成された磁性細線1Cが設けられている。磁性細線1Cは、さらに、細線方向(磁気記録媒体10Cの外形の周方向)に区切るように、当該磁性細線1Cの幅全体にわたる溝状の凹部(変形部)1cが一定の間隔(ピッチ)で、ここではビット長Lbのピッチで上面に形成されている。すなわち、磁性細線1Cは、上面に、溝部1dと、この溝部1dに直交する複数の凹部1cとが形成されている。
磁性細線1Cにおいて、凹部1cのように当該磁性細線1Cの細線方向に区切って変形させた箇所は、溝部1dと同様に、溝幅(凹部1cの開口部における細線方向長さ)を、磁壁の厚み以上とし、10倍以下とすることが好ましい。具体的には、凹部1cの溝幅は、10〜100nm程度の範囲で、ビット長Lbの1/2以下、トラックTr1,Tr2の幅(磁性細線1Cの幅の1/2)の1/10〜2倍程度が好ましい。また、凹部1cのように変形させた箇所は、磁性細線1Cへのパルス電流の停止時(ベース期間)に磁壁を好適に係止させておくためには、溝部1dと同様にその変化量を2%以上とすることが好ましい。一方、凹部1cは、溝部1d等のトラック区切部と異なり、係止させた磁壁を当該凹部1cの外へ再び移動させる必要があり、変化量が大き過ぎると、この移動のために高い電流密度を要し、さらに本実施形態のように、凹部1cとして断面積が減少している場合、断面積が小さくなると、磁性細線1Cにパルス電流を供給する際の抵抗が増大する。したがって、磁性細線1Cにおいて、凹部1cのように変形させた箇所は、変化量を40%以下(断面積が凹部1c外の60%以上)にすることが好ましい。また、凹部1cは、傾斜が緩やか過ぎると磁壁を係止する作用が小さく動作の安定性を欠き、反対に急峻過ぎると係止させた磁壁を再び移動させるために高い電流密度を要するため、磁壁移動が好適に行われるように溝幅等も併せて設計する。
さらに、磁性細線1Cにおいて、凹部1cのように変形させた箇所は、磁区のシフト移動において一時的に(パルス電流の停止時に)磁壁を係止させるものであるので、磁壁を係止する作用が溝部1dよりも小さいことが好ましい。すなわち、磁性細線1Cにおいては、凹部1cは、溝部1dよりも溝が浅いことが好ましく、さらに傾斜が溝部1dと同程度またはより緩やかであることが好ましい。以下、磁性細線1Cの凹部1cのように、磁性細線を細線方向に区切る境界に設けられて、磁区のシフト移動において磁壁を一時的に係止させる部分を、適宜、磁壁係止部と称する。
図5(a)においては、磁気記録媒体10Cは、隣り合う2以上の磁性細線1C同士(図5(a)においては2本)にわたって、当該磁気記録媒体10Cの外形の径方向に沿った直線状に凹部1cを設けている。円盤形状の磁気記録媒体10Cにおいては、磁性細線1Cのそれぞれの細線長さが磁気記録媒体10Cの外周側と内周側とで異なり、さらには1本の磁性細線1CにおけるトラックTr1,Tr2同士でも厳密には長さが異なる。しかし、ある程度の本数までの隣り合う磁性細線1Cは、その差異が微小であるので、このような本数でまとめて径に沿った直線上に凹部1cを設けることで、それぞれの磁性細線1Cについて凹部1cで磁壁が係止される。そして、磁区の移動ズレがないので、図1(a)に示すように、磁気記録媒体10Cの平面視における径に沿って、すべての磁性細線1Cに書込領域1wや再生領域1rを設けることができる。したがって、磁気記録媒体10Cは、隣り合う複数の磁性細線1Cにわたって、凹部1c,1c,…が平面視で放射状に設けられる。なお、磁気記録媒体が例えば平面視矩形で、磁性細線が互いに平行な直線状に形成されている場合は、凹部1cは細線方向に直交する直線に沿って設けられればよい(図示省略)。
図5(a)においては、磁性細線1Cは、ビット長Lb毎に、すなわち1データの格納領域を区切るように凹部1cを設けているが、これに限られず、ビット長Lbの2以上の整数倍毎に凹部1cを設けてもよい。あるいは、書込領域1wや再生領域1rの近傍等、磁性細線1Cにおける特定の部位にのみ凹部1cを設けてもよい。
凹部1cの断面(細線幅方向に垂直な断面)視形状は、特に規定されず、V字型(逆三角形)、U字型、矩形、逆台形型等が挙げられる。さらに、凹部1cは、トラックTr1,Tr2のそれぞれに形成されていれば、磁性細線1Cの幅全体にわたって形成されていなくてもよく、例えばトラックTr1,Tr2のそれぞれの幅方向中心に形成された平面視で点状の(円錐状等の)凹みであってもよい(図示省略)。すなわち、トラックTr1,Tr2において、磁壁が通過する領域の一部でも変形していれば、磁壁を係止することができる。ただし、凹部1cは、磁壁を係止する作用を同等にするために、形状が磁気記録媒体10Cにおいてすべてが略一致するように、高い寸法精度で形成されることが好ましい。このような凹部1cは、溝部1dと同様に磁性細線1C(磁性膜)をエッチングして形成することができる。例えば、図5(a)においては、磁性細線1C,1Cを細線状に形成し、さらにその間の絶縁層6を形成した後、磁性細線1C,1Cおよび絶縁層6に、磁気記録媒体10Cの径に沿った直線状の溝を形成して、凹部1cとしている。磁性細線1Cに、凹部1cと同時に溝部1fを形成してもよいし、別の工程に分けて形成してもよい。また、凹部1cが点状の凹みであれば、磁性細線1C(磁性膜)の上面に突起状の工具を押し込んで凹ませて形成することもできる。
(変形例)
前記第3実施形態においては、磁性細線1Cは、上面に凹部1cを形成されて磁壁係止部としたが、溝部1d等のトラック区切部と同様、これに限られない。図5(b)に示す第3実施形態の変形例に係る磁気記録媒体10Dは、表面に、当該磁気記録媒体10Dの径方向に沿って溝が形成された基板2B上に、磁性細線1Dが形成され、磁性細線1Dは基板2Bの表面形状に沿って凹部(変形部)1bが形成される。すなわち、凹部1bは、図4(a)に示す第1実施形態の変形例に係る磁気記録媒体10Aの磁性細線1Aの溝部1fと同様の方法で形成されたものである。なお、磁性細線1Dにおいては、トラック区切部として、上面に溝部1dが形成されている。すなわち、磁気記録媒体10Dは、基板2Bの表面に、凹部1bを形成するための径方向に沿った溝のみを形成し、その上に磁性細線1D(磁性膜)を形成した後、磁性細線1Dの表面に溝部1dが形成されたものである。凹部1bの磁性細線1Dにおける位置や形状の変化量等は、凹部1cと同様である。
なお、トラック区切部として、溝部1dに代えて溝部1fを設けてもよく、この場合は、基板2Bに、細線方向(外形の周方向)、径方向にそれぞれ沿った溝を形成し、その上に磁性細線1D(磁性膜)を形成すればよい。あるいは、溝部1fと凹部1cを組み合わせてもよい(図示省略)。
また、前記したように、トラックTr1,Tr2において、磁壁が通過する領域の一部でも変形していればよいので、図5(c)に示すように磁性細線1Eの側面を局所的に凹ませてもよい。第3実施形態の変形例に係る磁気記録媒体10Eは、平面視で両側が括れた形状の磁性細線1Eが設けられている。このような磁性細線1Eの括れ部(変形部)1k1,1k2は、凹部1cや凹部1bと同様に、磁性細線1E全体に対する変化量の割合、すなわちトラックTr1,Tr2の幅(磁性細線1の幅の1/2)に対する括れの深さ(細線幅方向における最大切欠き長さ)を2%以上40%以下とすることが好ましい。このような磁気記録媒体10Eは、例えば、表面に溝を形成した基板2A上に磁性膜を成膜し、マスクを用いて括れ部1k1,1k2を有する細線状に加工して磁性細線1Eを形成して得られる。なお、磁性細線1Eにおいては、トラック区切部として溝部1fが設けられているが、溝部1dを適用してもよい(図示省略)。
本実施形態に係る磁気記録媒体は、磁壁係止部として、飽和磁化の高さを局所的に変化させた領域(飽和磁化変異部)を、細線方向に区切る境界に設けてもよい(図示省略)。このような磁壁係止部における飽和磁化は、第2実施形態に係る磁気記録媒体10B(図4(b)参照)の磁性細線1Bの高Ms領域1sと同様に、高くする場合には当該磁壁係止部外に対して1.2倍以上10倍以下、低くする場合には1/10倍以上1/1.2倍以下とすることが好ましい。さらに、トラック区切部として高Ms領域1sのような飽和磁化を変化させた領域を適用する場合は、磁壁係止部は、磁壁を係止する作用をトラック区切部よりも小さくするために、高Ms領域1sの変化量よりも小さくすることが好ましく、すなわち磁性細線全体で3段階の高さの飽和磁化の領域が設けられる。また、磁性細線において、トラック区切部を飽和磁化の高い高Ms領域1sとした場合に、磁壁係止部を他の領域よりも飽和磁化の低い領域としてもよく、あるいはその逆としてもよい。
磁壁係止部に飽和磁化の高さを変化させた領域を設けた磁性細線においては、トラック区切部として溝部1dや溝部1fを組み合わせてもよい。あるいは、トラック区切部として高Ms領域1sのような飽和磁化の高さを変化させた領域を設けた磁性細線に、磁壁係止部として凹部1c、凹部1b、括れ部1k1,1k2のいずれかを形成してもよい。このように、形状の変化と飽和磁化の変化とを組み合わせる場合も、磁壁係止部の方がトラック区切部よりも磁壁を係止する作用が小さくなるように、溝の深さ等の形状および飽和磁化の変化量を設定することが好ましい。
(実施例1)
本発明の効果を確認するために、第1実施形態に係る磁気記録媒体の磁性細線(図1、図2参照)を模擬するサンプルを作製し、形成される磁区を観察した。表面を熱酸化したSi基板上に、下地としてRu(3nm)、および[Co(0.3nm)/Pd(1.2nm)]×21の多層膜を成膜し(合計厚さ約40nm)、約250nm幅の磁性細線に加工した。この磁性細線に、原子間力顕微鏡(AFM)のナノインデンテーション機能に使用されるダイヤモンドプローブを押し込んで細線方向に摺動させること(スクラッチ)により、幅方向中心辺りに細線方向に沿って深さ約14nmの1本の溝を形成してサンプルを作製した。図6(a)に、サンプルのAFMで観察した表面形状およびAFM像写真を示す。作製したサンプルの磁性細線は、上面にダイヤモンドプローブを押し込んで変形させることにより溝を形成したため、図6(a)に示すように溝の両側が盛り上がり、成膜時よりも厚くなった。
作製したサンプルに、初期化として1kGの磁界を上向きに印加して、全体の磁化を飽和させて上向きの磁化とした後、磁性細線(Co/Pd多層膜)の保磁力より少し小さい0.5kGの下向きの磁界を印加して、複数の磁区を生成させた。このサンプルの表面を磁気力顕微鏡(MFM)にて画像化して観察した。図6(b)に示すMFM像写真において、磁性細線は、磁化方向が上向きか下向きかによって磁区毎に白(上向き)/黒(下向き)のコントラストを示す。
図6(a)、(b)に示すように、磁性細線は、細線方向にのみでなく、溝に沿って細線幅方向にも磁区が分割されることが確認され、2本のトラックを構成することができるといえる。
(実施例2)
前記実施例1と同じCo/Pd多層膜を約300nm幅の磁性細線に加工し、この磁性細線に、幅方向に略3等分するように細線方向に沿って深さ15〜20nmの2本の溝を実施例1と同様の方法で形成してサンプルを作製した。図7(a)に、サンプルのAFMで観察した表面形状およびAFM像写真を示す。さらに実施例1と同様に2段階の磁界の印加により、磁性細線に複数の磁区を生成させた。このサンプルの表面のMFM像写真を図7(b)に示す。
図7(a)、(b)に示すように、磁性細線は、2本の溝が形成された場合も、それぞれの溝に沿って細線幅方向に磁区が分割されることが確認され、2本以上の任意の本数のトラックを構成し得るといえる。
以上の結果から、幅方向に単磁区を生成する十分に幅の狭い磁性細線であっても、細線方向に沿って溝のような磁壁を係止する箇所を設けることで、1本あたりに2以上のトラックとなる記録領域を設けて、記録密度を高くすることができる。
以上、本発明に係る磁気記録媒体を実施するための形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
10,10A,10B,10C,10D,10E 磁気記録媒体
1,1A,1B,1C,1D,1E 磁性細線
1d 溝部(連続記録領域区切部)
1f 溝部(連続記録領域区切部)
1s 高Ms領域(連続記録領域区切部)
1b 凹部(変形部)
1c 凹部(変形部)
1k1,1k2 括れ部(変形部)
2,2A,2B 基板
31 正電極
32 負電極
6 絶縁層

Claims (4)

  1. 基板上に磁性体を細線状に形成してなる1以上の磁性細線を備えて、2値のデータをそれぞれ異なる磁化方向として前記磁性細線に記録されて磁区が生成される磁気記録媒体であって、
    前記磁性細線は、細線幅方向に区切る境界の1箇所以上に、上面および下面の少なくとも一方が細線方向に延びた溝状または畝状のいずれかに形成された連続記録領域区切部が設けられ、
    前記磁性細線は、前記連続記録領域区切部を境界として細線幅方向に分割された領域のそれぞれにおいて、複数の前記磁区が細線方向に連続して生成し、電流が供給されることにより、すべての前記分割された領域において、前記磁区同士を区切る磁壁が細線方向に移動することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 基板上に磁性体を細線状に形成してなる1以上の磁性細線を備えて、2値のデータをそれぞれ異なる磁化方向として前記磁性細線に記録されて磁区が生成される磁気記録媒体であって、
    前記磁性細線は、細線幅方向に区切る境界の1箇所以上に、他の領域と飽和磁化の高さが異なる連続記録領域区切部が細線方向に延設され、
    前記磁性細線は、前記連続記録領域区切部を境界として細線幅方向に分割された領域のそれぞれにおいて、複数の前記磁区が細線方向に連続して生成し、電流が供給されることにより、すべての前記分割された領域において、前記磁区同士を区切る磁壁が細線方向に移動することを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 前記磁性細線は、細線方向に区切る境界の1箇所以上に、細線方向に垂直な断面の形状が他の領域と異なって、前記電流の停止時に前記磁壁を係止する変形部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記磁性細線は、細線方向に区切る境界の1箇所以上に、飽和磁化の高さが他の領域と異なって、前記電流の停止時に前記磁壁を係止する飽和磁化変異部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
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