JP5942547B2 - Iii族窒化物結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、基板の主面上にホモエピタキシャル成長を行ったときに、特に極性面に平行な方向の積層欠陥の発生を顕著に抑えることができれば、高性能で高効率な発光デバイスの製造に極めて有用であると考えられる。しかしながら、そのようなIII族窒化物結晶を提供する方法は従来まったく提供されていなかった。
[1] 非極性面または半極性面を主面とする下地基板上に、気相法によりIII族窒化物層を成長させる成長工程を有するIII族窒化物結晶の製造方法であって、前記成長工程の初期において、前記III族窒化物層を2次元成長あるいはステップフロー成長させる、III族窒化物結晶の製造方法。
[2] III族窒化物からなり、(10−10)面から[0001]または[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面を主面とする下地基板上に、気相法によりIII族窒化物層を成長させる成長工程を有するIII族窒化物結晶の製造方法であって、前記成長工程では全体のガス流量の40体積%以上の不活性ガスを含有する雰囲気にてIII族窒化物層を成長させる、III族窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記下地基板の主面が、(10−10)面から[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面である、[1]または[2]に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記気相法が、ハライド気相成長法(HVPE法)である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
[5]前記下地基板が、単一のIII族窒化物単結晶からなる、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
[6]前記成長工程における成長温度が1040℃以下である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
[7]前記成長工程において、III族原料と窒素原料とをガスで供給し、該III族原料を含むガス(III族原料ガス)と窒素原料を含むガス(窒素原料ガス)との密度の比(III族原料ガス密度/窒素原料ガス密度)を1未満とする、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。
なお、本願において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本願におけるミラー指数は、指数が負である場合に当該指数の前にマイナス記号をつけて表記している。また、本明細書において<・・・・>との表記は方向の集合表現、[・・・・]との表記は方向の個別表現を表す。それに対して{・・・・}との表記は面の集合表現、(・・・・)との表記は面の個別表現を表す。
本明細書において「オフ角」とは、ある面の指数面からのずれを表す角度である。
また、本願明細書において、「A面」とは{2−1−10}面と等価な面であり、具体的には(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面、或いは(11−20)面であり、a軸に直交する面である。かかる面は非極性面である。本明細書において「c軸」「m軸」「a軸」とは、それぞれC面、M面、A面に垂直な軸を意味する。
成長工程の初期とは、時間は特に限定されないが、例えば成長開始から1分〜30分の間をさす。成長工程の初期においては、通常、下地基板上にIII族窒化物層が成長し始める結晶成長モードとして、3次元成長モード、2次元成長モードあるいはステップフロー成長モードがある。3次元成長モードでは、下地基板上に結晶核として島状のIII族窒化物結晶が成長し、島状(3次元)成長が促進され、島同士のコアレス時に多量の欠陥を導入してしまう可能性が、本発明者らの検討によって明らかとなった。このため、下地基板上にIII族窒化物層を成長させる際には、特に成長工程の初期において、下地基板に対する原料の濡れ性が高く、2次元成長あるいはステップフロー成長モードが促進するような結晶成長モードとすることで、たとえ厚膜成長を行ったとしても、積層欠陥が低減された、高品質のIII族窒化物結晶を得られることが明らかとなった。
(イ)下地基板として(10−10)もしくは(10−10)面から[0001]または[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面を主面として使用する
(ロ)成長工程で全体のガス流量の40体積%以上の不活性ガス種を含有する雰囲気とする
(ハ)成長工程における成長温度を1040℃以下とする
(ニ)成長開始時のガス導入に際して、所定のガス供給量に達するまでにかかる時間(以下、ガス導入時間と称する)を10分以下とする
本発明の第2の態様の製造方法は、III族窒化物からなり、(10−10)面から[0001]または[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面を主面とする下地基板上に、気相法によりIII族窒化物層を成長させる成長工程を有し、該成長工程では全体のガス流量の40体積%以上の不活性ガス種を含有する雰囲気としてIII族窒化物層を成長させる。
従来、極性面を主面とする下地基板を使用して、HVPE法にてIII族窒化物結晶の成長を行う場合に、キャリアガスとして窒素などの不活性ガスを用いると、リアクター内に大量の多結晶が付着してリアクター劣化の原因となったり、結晶性悪化の原因となったりすることから、キャリアガスとして水素などを用いることが一般的であった。しかしながら、驚くべきことに、本発明者らの検討によれば、極性面以外の面方位を主面とする下地基板を使用する場合、結晶成長を行う雰囲気ガスを全体のガス流量の40体積%以上の不活性ガス種を含む雰囲気とすることで、積層欠陥の発生や伝播を抑制し得ることが明らかとなった。さらに、下地基板の主面を(10−10)面としたとき、特定のオフ角を有するようにすれば、得られる結晶中の積層欠陥を低減できるだけでなく、従来問題となっていた多結晶の発生も効果的に抑制することをも可能となった。これによって、大口径で積層欠陥の低減された高品質のIII族窒化物結晶を、簡便に作製することが可能である。
本発明の製造方法において使用する下地基板は、III族窒化物で構成される。III族窒化物としては、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、又はこれらの混晶などを挙げることができる。本発明では、本発明の製造方法によって製造するIII族窒化物結晶層と同種のIII族窒化物で構成されるシードを選択することが好ましい。例えば、本発明によって窒化ガリウム(GaN)半導体基板を製造する場合は、窒化ガリウム(GaN)で構成される下地基板を用いる。ただし、前記下地基板と前記III族窒化物結晶層とは、完全に同一の組成である必要はなく、99.75%(原子比)以上の組成が一致していれば同種のIII族窒化物であるとする。例えば、GaNで構成されるシード上にSiや酸素などをドーピングしたIII族窒化物結晶層を成長させる場合は、同種のIII族窒化物を成長させているとしてホモエピタキシャル成長と称する。
本発明の製造方法においては、複数のIII族窒化物シードを用いて下地基板としてもよい。上述の下地基板として大型のものを準備できない場合でも、複数のIII族窒化物シードの非極性面または半極性面を並べて配置し、大面積の主面を作製すればよい。複数のIII族窒化物シードを用いた場合でも、後述のホモエピタキシャル成長を行った場合には、複数のIII族窒化物シード上に一体となった結晶が成長するため、大面積のIII族窒化物結晶を得ることが可能となる。複数のIII族窒化物シードを並べて形成した下地基板の主面は、全体として非極性面または半極性面、好ましくは(10−10)面から[0001]または[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面を成していればよく、面内は不均一であっても、均一であってもよい。
本発明の製造方法における成長工程は、下地基板上を構成するIII族窒化物と同種のIII族窒化物層を気相法により成長させるものである。このとき、下地基板の主面以外の面にも成長が行われてもよい。また、成長させるIII族窒化物層は、下地基板の主面上に成長するものであれば、主面に対して必ずしも垂直な方向に成長させるものでなくてもよい。また、成長の方向は成長工程中に変わってもよい。
下地基板の主面上に成長させる結晶の厚さは、最終的に取得したいIII族窒化物結晶のサイズ等に応じて適宜決定することができる。本発明の製造方法によれば、積層欠陥の発生や拡大を抑制できるため、下地基板の主面上に成長させる結晶の厚さは、例えば1mm以上とすることができ、3mm以上が好ましく、10mm以上がよりこましく、51mm以下であることが好ましく、24mm以下とすることが好ましく、14mm以下であってもよい。ここでいう厚さは、下地基板の主面に対して垂直な方向の厚さを意味する。
1)ハライド気相成長法(HVPE法)、
2)有機金属化学蒸着法(MOCVD法)
3)有機金属塩化物気相成長法(MOC法)
4)昇華法
などの公知の気相成長法を適宜採用することができる。本発明のIII族窒化物結晶の製造方法には1)〜4)のような気相成長法を採用することが好ましく、量産性の観点からHVPE法またはMOCVD法を採用することがより好ましく、HVPE法を採用することが特に好ましい。
<製造装置と製造条件>
1)基本構造
図1には、HVPE法を採用した製造方法に用いられる製造装置の概念図を示す。図1に図示したHVPE装置は、リアクター100内に、下地基板(シード)を載置するためのサセプター107と、成長させるIII族窒化物結晶の原料を入れるリザーバー105とを備えている。また、リアクター100内にガスを導入するための導入管101〜104と、排気するための排気管108が設置されている。さらに、リアクター100を側面から加熱するためのヒーター106が設置されている。
リアクター100の材質としては、石英、焼結体窒化ホウ素、ステンレス等が用いられる。好ましい材質は石英である。リアクター100内には、反応開始前にあらかじめ雰囲気ガスを充填しておく。雰囲気ガス(キャリアガス)としては、例えば、水素、窒素、He、Ne、Arのようなガス等を挙げることができる。
全体のガス流量における不活性ガスの含有割合を40体積%以上とすることにより、下地基板の主面上の成長において、成長中の下地基板表面(成長初期)及び結晶成長表面(厚膜成長中)の分解を低減し、且つ供給原料の下地基板表面への濡れ性が向上し、高品質の結晶成長が可能な2次元成長を実現することができる。また、積層欠陥は成長膜厚が増加するに連れて拡張する特徴があるが、成長工程の初期において2次元成長あるいはステップフロー成長を実現すれば、成長するIII族窒化物結晶層中で積層欠陥が拡張しにくくなるため、厚膜化しても高品質な状態を維持し易い。
(DT:混合ガスの密度、Dn:各々のガスの単独の密度、Ln:各々のガスの供給流量)
サセプター107の材質としてはカーボンが好ましく、SiCで表面をコーティングしているものがより好ましい。サセプター108の形状は、本発明で用い下地基板(シード)を設置することができる形状であれば特に制限されないが、結晶成長する際に結晶成長面付近に構造物が存在しないものであることが好ましい。結晶成長面付近に成長する可能性のある構造物が存在すると、そこに多結晶体が付着し、その生成物としてHClガスが発生して結晶成長させようとしている結晶に悪影響が及んでしまう。シード110とサセプター107の接触面は、シードの主面(結晶成長面)から1mm以上離れていることが好ましく、3mm以上離れていることがより好ましく、5mm以上離れていることがさらに好ましい。
リザーバー105には、成長させるIII族窒化物半導体の原料を入れる。具体的には、III族源となる原料を入れる。そのようなIII族源となる原料として、Ga、Al、Inなどを挙げることができる。リザーバー105にガスを導入するための導入管103からは、リザーバー105に入れた原料と反応するガスを供給する。例えば、リザーバー105にIII族源となる原料を入れた場合は、導入管103からHClガスを供給することができる。このとき、HClガスとともに、導入管103からキャリアガスを供給してもよい。キャリアガスとしては、例えば水素、窒素、He、Ne、Arのようなガス等を挙げることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。
導入管104からは、窒素源となる原料ガスを供給する。通常はNH3を供給する。また、導入管101および導入管102からは、キャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、導入管103から供給するキャリアガスと同じものを例示することができる。このキャリアガスは原料ガス同士の気相での反応を抑制し、ノズル先端にポリ結晶が付着することを防ぐ効果もある。また、導入管102からは、ドーパントガスを供給することもできる。例えば、SiH4やSiH2Cl2、H2S等のn型のドーパントガスを供給することができる。
導入管101〜104から供給する上記ガスは、それぞれ互いに入れ替えて別の導入管から供給しても構わない。また、窒素源となる原料ガスとキャリアガスは、同じ導入管から混合して供給してもよい。さらに他の導入管からキャリアガスを混合してもよい。これらの供給態様は、リアクター100の大きさや形状、原料の反応性、目的とする結晶成長速度などに応じて、適宜決定することができる。
ガス排気管108は、リアクター内壁の上面、底面、側面に設置することができる。ゴミ落ちの観点から結晶成長端よりも下部にあることが好ましく、図1のようにリアクター底面にガス排気管108が設置されていることがより好ましい。
本発明の製造方法における成長工程での結晶成長は、通常は800℃〜1200℃で行う。島状成長を抑制し、下地基板表面での供給原料の濡れ性を向上させるために、好ましくは900℃〜1100℃、さらに好ましくは950℃〜1050℃、より好ましくは920℃〜980℃である。
リアクター内の圧力は10kPa〜200kPaであるのが好ましく、30kPa〜150kPaであるのがより好ましく、50kPa〜120kPaであるのがさらに好ましい。
成長初期の所定のH2キャリアガス量は、1.00×103Pa以上、好ましくは5.00×103Pa以上、より好ましくは1.00×104Pa以上である。また、成長初期の所定のH2キャリアガス量は、通常7.00×104Pa以下、好ましくは6.00×104Pa以下、より好ましくは5.00×104Pa以下である。
これらの各ガス導入時のガス導入時間は、通常10分間以下であることが好ましく、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは2分間以下である。また、ガス導入時間は、通常10秒以上、好ましくは20秒以上、より好ましくは30秒以上である。ガス導入時間を上記の範囲にすることで、成長工程の初期に下地基板の表面荒れが少なくなり、島状成長を効果的に抑制することができる。また、所望のガス条件に短時間で到達することにより、積層欠陥や転位の発生を抑制することができると考えられる。
上記の製造装置を用いた結晶成長の成長速度は、成長方法、成長温度、原料ガス供給量、結晶成長面方位等により異なるが、一般的には5μm/h〜500μm/hの範囲であり、30μm/h以上が好ましく、70μm/h以上がより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。成長速度は、上記の他、キャリアガスの種類、流量、供給口−結晶成長端距離等を適宜設定することによって制御することができる。
本発明者らの検討では、III族窒化物種結晶の主面である半極性面又は非極性面上にIII族窒化物結晶層を従来の方法で成長させると、成長した結晶に内在する主たる積層欠陥は極性面と平行な面として観測される。積層欠陥は極性面である(0001)面[すなわちC面]に平行に存在する面欠陥であるため、極性面に交差する断面(特に極性面に垂直な断面)を観察すれば積層欠陥を直線状の輝線として確認することができる。積層欠陥は、例えば結晶表面を蛍光顕微鏡や低温CL(カソードルミネッセンス法)で観察することにより観察することができる。具体的には、積層欠陥を観察したい結晶表面に405nmの発光を示すようなLED構造を作製し、この表面を蛍光顕微鏡で像観察すると積層欠陥部位に輝線が見える。または、低温PLで観察されるスペクトルには3.41eV(364nm)付近に積層欠陥(基底面積層欠陥;BSF)由来のピーク(BSFピーク)が見える。これを利用して、LED構造を作製せず積層欠陥を観察したい結晶そのものであっても、波長分光可能な低温CLで像観察すると、積層欠陥部位に輝線を観察することができる。
1)特徴
本発明の製造方法により得られたIII族窒化物結晶から下地基板の少なくとも一部を除去してIII族窒化物結晶基板とすることができる。III族窒化物結晶基板は、非極性面または半極性面を主面とすることが好ましく、極性面と主面の交差線方向の基板の反りが、前記交差線に直交する方向の基板の反りよりも小さくて、前記交差線に直交する方向の基板の反りが40mmあたり1°未満であることを特徴とする。ここでいう交差線方向とそれに直交する方向は、いずれも基板の面内に想定される方向である。
本発明のIII族窒化物結晶基板は、自立基板であることが好ましい。具体的には、厚さが0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.4mm以上であることがさらに好ましい。基板の厚さやサイズは、研磨、切断、エッチング等を調節したりすることにより、所望の範囲内に調整することができる。
本発明のIII族窒化物結晶基板の主面は、非極性面または半極性面のいずれであってもよいが、低指数面であることが好ましい。例えば、下地基板が六方晶であってその主面が(hklm)で表される場合、h、k、l、mはそれぞれ独立に−3〜3のいずれかの整数であることが好ましく、−2〜2のいずれかの整数であることがより好ましい。本発明のIII族窒化物結晶基板の主面の具体例として、{20−21}面、{20−2−1}面、{30−31}面、{30−3−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面、{10−12}面、{10−1−2}面、{11−22}面、{11−2−2}面、{11−21}面、{11−2−1}面などを挙げることができ、なかでも{20−21}面、{20−2−1}面、{30−31}面、{30−3−1}面、{10−11}面、{10−1−1}面が好ましい。
極性面と主面の交差線方向の基板の反り(W1)と、その交差線に直交する方向の基板の反り(W2)の比(W1/W2)は、1未満であることが好ましく、0.8未満であることがより好ましく、0.5未満であることがさらに好ましい。また、下限値は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.04以上であることがさらに好ましい。
本発明のIII族窒化物半導体基板の主面上にIII族窒化物半導体結晶をホモエピタキシャル成長させると、成長した結晶内に発生する主たる積層欠陥は極性面に平行となる。積層欠陥は、例えば下記実施例に記載されるように結晶表面を低温下においてカソードルミネッセンス(CL)測定で観察することにより確認することができる。
本発明のIII族窒化物半導体基板および、該基板上に形成される結晶は、積層欠陥が少なく、よってLEDなどの半導体発光素子として用いた場合に良好な発光を示す。積層欠陥の程度は、前述の本発明の製造方法で得られるIII族窒化物層と同様である。
上記の本発明のIII族窒化物結晶基板を用いることにより、半導体発光デバイスを製造することができる。通常は、本発明のIII族窒化物結晶基板の主面上にIII族窒化物半導体結晶を成長させることにより、LEDなどの半導体発光デバイスを製造する。成長させるIII族窒化物半導体結晶としては、例えばGaN、GaAlAs、AlInGaP、AlInGaP、InGaNなどを挙げることができる。結晶成長の方法は特に制限されず、例えば有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)などを挙げることができる。本発明の III族窒化物結晶基板上に結晶を成長させれば、例えば従来のサファイアベースの基板や積層欠陥の多いIII族窒化物結晶基板上に結晶を成長させた場合に比べて結晶欠陥が少なくなるため、高出力で耐久性のある半導体発光デバイスを提供することができる。
<実施例1>
図1に示すHVPE法による結晶製造装置を用いて、結晶成長を行った。(0001)面成長により作製された、<0001>(c軸)方向に5mm、<11−20>(a軸)方向に25mmの長方形で、主面が(10−10)面から[000−1]方向に1°傾斜した面であるGaN自立基板を下地基板としてサセプター107上に置いた。並べた下地基板を搭載したサセプター107を図1に示すようにリアクター100内に配置した。引き続き、リアクター内をN2ガスで置換した後に、前記雰囲気下においてIII族原料用リザーバー106の温度を900℃、反応室の温度を成長温度である950℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶層を15時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を2.85×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を9.13×103Paとし、全体のガス流量中の不活性ガス(N2)の割合を91体積%とした。このときのIII族原料ガス密度/窒素原料ガス密度は、1.09であり、ガス導入時間は1分間とした。
主面の[000−1]方向へのオフ角、および成長温度を表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様にしてGaNバルク結晶を得た。下地基板上に成長した結晶は[10−10]方向に約1mmの平均成膜厚であった。結果を表1にまとめた。
実施例1と同様の条件にてIII族窒化物層の成長を1分間だけ行い、1分後に成長を終了して得られたIII族窒化物層の表面をSEM観察した。結果を図2(a)に示す。本サンプルの表面には、下地基板の全面に均一にIII族窒化物層が形成されており、2次元成長が進んでいることが明らかであった。このことから、上述の実施例においても、成長工程の初期において、2次元成長モードとなっていることが示唆された。
図1に示すHVPE法による結晶製造装置を用いて、結晶成長を行った。(0001)面成長により作製された、<0001>(c軸)方向に5mm、<11−20>(a軸)方向に25mmの長方形で、主面が(10−10)面から[000−1]方向に1°傾斜した面であるGaN自立基板を下地基板としてサセプター107上に置いた。基板を搭載したサセプター107を図1に示すようにリアクター100内に配置した。引き続き、リアクター内をN2ガスで置換した後に、前記雰囲気下においてIII族原料用リザーバー106の温度を900℃、反応室の温度を成長温度である1040℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶層を15時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を3.26×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を1.04×104Paとし、全体のガス流量中の不活性ガス(N2)の割合を12体積%とした。このときのIII族原料ガス密度/窒素原料ガス密度は、0.83であり、ガス導入時間は1分間とした。
得られたGaNバルク結晶の積層欠陥密度を低温フォトルミネッセンス(PL)測定(LTPL測定)にて評価した。測定温度は10K、励起光源に中心波長325nmのHe−Cdレーザーを用いた。積層欠陥由来の3.41eVのピーク強度I(BSF)とバンド端発光由来の3.47eVのピーク強度I(D0XA)の強度I(BSF)/I(D0XA)に着目すると、0.63であった。実施例1〜6の結果と比較して、成長膜厚約1mm程度の箇所における積層欠陥密度は悪い結果であった。
比較例1と同様の条件にてIII族窒化物層の成長を1分間だけ行い、1分後に成長を終了して得られたIII族窒化物層の表面をSEM観察した。結果を図2(b)に示す。本サンプルの表面には、島状にIII族窒化物が成長しており、下地基板が露出領域が多く見られた。III族窒化物層の成長は不均一であり、2次元成長はしていないことが明らかであった。このことから、上述の比較例1においても、成長工程の初期において、2次元成長モードでなく3次元成長モードとなっていることが示唆された。
HVPE法による結晶製造装置により、結晶成長を行った。(0001)面成長により作製された、<0001>(c軸)方向に5mm、<11−20>(a軸)方向に30mmの長方形で、主面が(10−10)面から[000−1]方向に2°傾斜した面であるGaN自立基板を22枚準備した。22枚の基板を<0001>(c軸)方向に2列、<11−20>(a軸)方向に11列に並べたものを用意し、サセプター上に置いた。並べた基板を搭載したサセプターをリアクター内に配置して、III族原料用リザーバー106の温度を900℃、反応室の温度を成長温度である950℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶層を53時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を3.54×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を1.13×104Paとし、全体のガス流量中の不活性ガス(N2)の割合を49体積%とした。このときのIII族原料ガス密度/窒素原料ガス密度は、0.72であり、ガス導入時間は1分間とした。
得られたGaNバルク結晶の転位密度をas−grownの状態で3kV、500pA、500倍視野でカソードルミネッセンス(CL)観察にて評価した。CL観察にて結晶内の貫通転位を暗点密度より算出したところ、9.0×105cm−2と良好な値を示した。
101 キャリアガス用導入管
102 ドーパントガス用導入管
103 III族原料用導入管
104 窒素原料用導入管
105 III族原料用リザーバー
106 ヒーター
107 サセプター
108 排気管
109 下地基板(シード)
G1 キャリアガス
G2 ドーパントガス
G3 III族原料ガス
G4 窒素原料ガス
Claims (6)
- GaNからなり、(10−10)面から[0001]または[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面を主面とする下地基板上に、ハライド気相成長法(HVPE法)により成長速度30μm/h以上でGaN層を成長させる成長工程を有し、
前記成長工程では全体のガス流量の40体積%以上の不活性ガスを含有する雰囲気にてGaN層を成長させることを特徴とする、GaNバルク結晶の製造方法。 - 前記成長工程ではGaN層を1mm以上の厚さに成長させる、請求項1に記載の製造方法。
- 前記成長工程では全体のガス流量の70体積%以上の不活性ガスを含有する雰囲気にてGaN層を成長させる、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記成長工程では全体のガス流量の90体積%以上の不活性ガスを含有する雰囲気にてGaN層を成長させる、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記下地基板の主面が、(10−10)面から[000−1]方向に1.5°以上傾斜した面である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 励起光源に中心波長325nmのHe−Cdレーザーを用い、温度10Kで測定した、前記GaNバルク結晶の低温フォトルミネッセンス・スペクトルにおいて、積層欠陥由来のピーク強度I(BSF)とバンド端発光由来のピーク強度I(D 0 X A )の強度比であるI(BSF)/I(D 0 X A )が0.1以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
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