JP5927818B2 - 光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
〔1〕
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して17〜40質量%の下記一般式(I):
CH 2 =CR 1 −COOR 2 −O−CH=CH−R 3 ・・・(I)
(式中、R 1 は水素原子又はメチル基であり、R 2 は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R 3 は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、
該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、
色材と、を含み、
前記単官能(メタ)アクリレートが、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレートからなる群より選択される1種以上を、これらの総含有量が、前記インク組成物の総質量に対して、20〜60質量%となるよう含み、
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して6〜13質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、
光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔2〕
前記単官能(メタ)アクリレートは、該インク組成物の総質量に対して10〜60質量%の前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、〔1〕に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔3〕
前記単官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜40質量%である、〔1〕又は〔2〕に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔4〕
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜30質量%である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔5〕
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm 2 以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔6〕
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔7〕
前記単官能(メタ)アクリレートの皮膚一次刺激指数が0〜4である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔8〕
前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートを、前記インク組成物の総質量に対して、20〜60質量%で含む、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔9〕
前記光重合開始剤が、チオキサントン化合物を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いたインクジェット記録方法であって、
前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体に付着させ、付着させた光硬化型インクジェット記録用インク組成物に、発光ダイオードを用いて、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を照射する、インクジェット記録方法。
〔11〕
前記紫外線の照射エネルギーは、300mJ/cm 2 以下である、〔10〕に記載のインクジェット記録方法。
本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。これらのうち重合性化合物は、当該インク組成物の総質量(100質量%)に対して10〜40質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、当該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、上記の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、当該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、を含むものである。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、上記一般式(I)で示される。
本実施形態のインク組成物は単官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、特に硬化膜の伸張性を優れたものとすることができる。ただし、当該単官能(メタ)アクリレートは、上記の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除くものとする。
本実施形態のインク組成物は多官能(メタ)アクリレートを含む。インク組成物が多官能(メタ)アクリレートを含有することにより、特に硬化シワの発生を防止することができる。なお、本明細書における多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートを意味する。
また、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、単官能(メタ)アクリレート、及び多官能(メタ)アクリレート以外に、従来公知の、単官能及び多官能の種々のモノマー及びオリゴマーもさらに使用可能である(以下、「その他の重合性化合物」という。)。上記モノマーとしては、例えば、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、上記のモノマーから形成されるオリゴマーが挙げられる。
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等〔商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、重合禁止剤、スリップ剤(界面活性剤)、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
また、300mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物が好ましく、200mJ/cm2以下の紫外線の照射エネルギーで硬化するインク組成物がより好ましい。このようなインク組成物を用いることにより、低コストで画像を形成することができる。なお、照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。
本実施形態のインク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。後述する実施形態のインクジェット記録方法は、水性インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水性インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、上記のインク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。上記実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、本実施形態のインクジェット記録方法に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
吐出工程において、被記録媒体上にインク組成物が吐出され、インク組成物が被記録媒体に付着する。吐出時におけるインク組成物の粘度は、5〜30mPa・sが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出され付着したインク組成物が、光(紫外線)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
〔ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
〔単官能(メタ)アクリレート〕
・2−MTA(2−メトキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、以下では「2MEA」と略記した。)
・3−MBA(3−メトキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「3MBA」と略記した。)
・V#160(ベンジルアクリレート、日立化成化学工業社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製商品名、以下では「BZA」と略記した。)
・FA−THFA(テトラヒドロフルフリルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「THFA」と略記した。)
・SR395(イソデシルアクリレート、Sartomer社製商品名、以下では「IDA」と略記した。)
・LA(ラウリルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「LA」と略記した。)
・MEDOL10((2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、大阪有機化学社製商品名)
・V#150D(テトラヒドロフルフリルオリゴアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「THFOA」と略記した。)
・IBXA(イソボルニルアクリレート、大阪有機化学社製商品名、以下では「IBXA」と略記した。)
・4−HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、以下では「4HBA」と略記した。)
・ACMO(アクリロイルモルホリン、興人社(Kohjin co.,Ltd.)製商品名、以下では「ACMO」と略記した。)
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社製商品名、以下では「PEA」と略記した。)
・ライトアクリレートP2H−A(フェノキシジエチレングリコールアクリレート、共栄社化学社(Kyoeisha Chemical Co., Ltd .)製商品名、以下では「PDEGA」と略記した。)
・FA−513AS(ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPtaA」と略記した。)
・FA−511AS(ジシクロペンテニルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPteA」と略記した。)
・FA−512AS(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業社製商品名、以下では「DCPteOEA」と略記した。)
・DA−141(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ナガセケムテックス(Nagasechemtex)社製商品名、以下では「HPPA」と略記した。)
〔その他の単官能の重合性化合物〕
・NVF(N−ビニルホルムアミド、荒川化学工業社(Arakawa Chemical Industries, Ltd.)製商品名、以下では「NVF」と略記した。)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISPジャパン社(ISP Japan Ltd.)製商品名、以下では「NVC」と略記した。)
〔多官能(メタ)アクリレート〕
・NKエステル APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下では「2PGA」と略記した。)
・NKエステル APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「3PGA」と略記した。)
・R−684(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、日本化薬社製商品名、以下では「DMTCDDA」と略記した。)
・A−DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「DPHA」と略記した。)
・EBECRYL8402(ウレタンアクリレートオリゴマー、ダイセルサイテック社(DAICEL-CYTEC Co, Ltd.)製商品名、以下では「UA」と略記した。)
〔その他の多官能の重合性化合物〕
・TDVE(トリエチレングリコールジビニルエーテル、丸善石油化学社(Maruzen Petrochemical CO, LTD.)製商品名、以下では「TEG−DVE」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX−S」と略記した。)
〔顔料〕
・MICROLITH−WA Black C−WA(カラーインデックス名:C.I.ピグメントブラック 7、BASF社製商品名、以下では「ブラック」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「SOL36000」と略記した。)
下記表1〜表5に記載の成分を、表1〜表5に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、ブラック色の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を得た。なお、各実施例で使用した単官能アクリレートは、いずれもP.I.I.が0〜4である。また、表中、数値が空欄の部分は無添加であることを表す。
各実施例及び各比較例で調製した光硬化型インクジェット記録用インク組成物について、以下の方法により硬化性、伸張性、及び硬化シワを評価した。
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製商品名)を用いて、各実施例及び各比較例の光硬化型インクジェット記録用インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20〔商品名〕、東レ社製)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が10μmとなるような塗膜、即ちベタパターン画像(記録解像度720dpi×720dpi)を印刷した。次にプリンターから排出した印刷済みのPETフィルムに紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1,500mW/cm2であり、且つ波長が395nmである紫外線を200mJ/cm2照射してベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PETフィルム上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。なお、ベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。
塗膜(膜厚10μm)に関する硬化性は、タックフリー時の照射エネルギーを指標として評価した。ここで、タックフリーといえるか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付くか否かで判断し、綿棒にインクが付着せず、かつ被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付かない場合をタックフリーとした。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:タックフリー時の照射エネルギー:200mJ/cm2以下、
B:タックフリー時の照射エネルギー:200mJ/cm2超300mJ/cm2以下、
C:タックフリー時の照射エネルギー:300mJ/cm2超。
各実施例及び各比較例の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を、10mm×100mm試験片 IJ−180−10(3M社製商品名、PVC(塩ビ)メディア)の全面に厚さ10μmとなるよう塗布した。この塗膜に対し、発光ピーク波長が395nmであるUV−LEDの紫外線を200mJ/cm2照射しインクを硬化させて硬化膜を作製した。
引張り試験機 TENSILON(ORIENTEC社製商品名)を用いて、硬化膜が作製された各試験片を長手方向に両方から引張り、硬化膜にクラック(ひび)が発生したときの伸び率(2倍に伸びたら100%の伸び率とする。)を測定した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:伸び率が100%以上、
B:伸び率が50%超100%未満、
C:伸び率が50%以下。
上記の硬化性評価において得られた、硬化終了後のベタパターン画像の表面にどの程度シワが発生したかという指標で評価した。シワの発生の程度は目視及び光学顕微鏡で観察した。
なお、タックフリー状態の確認方法、ベタパターン画像、並びに照射エネルギー及び照射強度の測定・算出については、上記の硬化性評価の項で述べたとおりである。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表6〜表10に示す。
A:目視及び顕微鏡観察のいずれにおいてもシワが確認できなかった。
B:目視ではシワが確認できないが、顕微鏡観察でシワが確認できた。
C:目視でシワが確認できた。
ここで、単官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上(但し60質量%以下)であるインク組成物は、単官能の重合性化合物の含有量が20質量%以上(但し60質量%以下)であるものの単官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%未満であるインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることも分かった(各実施例、比較例18,19)。このように、比較例18及び19は、伸張性の結果が良好な一方で硬化シワの結果が悪いことが分かる。この結果は、NVFやNVCに起因するものと推測される。具体的に言えば、NVFやNVCの重合性反応基はビニル基であり、アクリル基含有モノマーに比べて反応性が非常に優れる(但し、アクリレートと併用することが前提である。)。したがって、ビニル基とアクリル基との間の反応速度の違いから、硬化ムラが起こりやすくなり、シワが発生しやすくなるものと推測される。同様に、VEEAもビニルエーテル基を含有するため、過剰に添加すると、アクリル基との反応速度の違いに起因して硬化シワを生じ得る(比較例13)。
また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が60質量%以下(但し20質量%以上)であるインク組成物は、そうでないインク組成物と比較して、硬化シワの発生を防止できることが分かった(各実施例及び比較例17、さらに比較例4,5,10,12も参照)。
さらに、比較例17に対して顔料及び分散剤を含まない参考例1は、比較例17が硬化シワの発生防止の点で優れないものであったのにもかかわらず、硬化シワの発生防止の点で優れたものであったが、色材を含まないインク組成物でありカラー画像の記録に用いることのできないものであった。このことから、上記の各実施例のインク組成物は、硬化性、伸張性、硬化シワの発生防止に優れ、カラー画像の記録に用いることができるインク組成物であることが分かった。
なお、参考例2及び参考例3はそれぞれ、比較例11及び比較例17のインク組成物を用いて、上述の各評価用のサンプル作成時に、UV−LEDを用いて照射させる代わりに、メタルハライドランプ(照射強度1,000mW/cm2)を用いて照射を行ったこと以外は、比較例11及び比較例17と同様の方法で評価を行ったものである。比較例11及び比較例17が硬化シワの発生防止の点で優れないものであったのにかかわらず、硬化シワの発生防止の点で優れたものであったが、メタルハライドからの発熱のため、PETフィルムに変形が見られた。このことから、上記の各実施例のインク組成物は、硬化性、伸張性、硬化シワの発生防止に優れ、LEDを照射に用いることにより、フィルムの熱変形のない優れた記録物の作成に用いることができるインク組成物であることが分かった。
Claims (11)
- 重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して17〜40質量%の下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
該インク組成物の総質量に対して20〜60質量%の単官能(メタ)アクリレート(ただし、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)と、
該インク組成物の総質量に対して10〜40質量%の多官能(メタ)アクリレートと、
色材と、を含み、
前記単官能(メタ)アクリレートが、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレートからなる群より選択される1種以上を、これらの総含有量が、前記インク組成物の総質量に対して、20〜60質量%となるよう含み、
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して6〜13質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、
光硬化型インクジェット記録用インク組成物。 - 前記単官能(メタ)アクリレートは、該インク組成物の総質量に対して10〜60質量%の前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記単官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜40質量%である、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が、該インク組成物の総質量に対して20〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記単官能(メタ)アクリレートの皮膚一次刺激指数が0〜4である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートを、前記インク組成物の総質量に対して、20〜60質量%で含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤が、チオキサントン化合物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いたインクジェット記録方法であって、
前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体に付着させ、付着させた光硬化型インクジェット記録用インク組成物に、発光ダイオードを用いて、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を照射する、インクジェット記録方法。 - 前記紫外線の照射エネルギーは、300mJ/cm2以下である、請求項10に記載のインクジェット記録方法。
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