JP5922561B2 - 導電性ペーストの調製条件評価システム - Google Patents

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本発明は、導電性ペーストの調製条件評価システムに関する。より詳細には、本発明は、電極等の導電性物質を形成するために用いられる導電性ペーストの調製条件を評価するシステムに関する。
電池部材や電子デバイス等の製造に用いられるIC回路形成材料、電極形成材料、抵抗体形成材料、導電性接着剤、電磁波シールド材料等として、従来より、導電性ペーストが広く利用されている。かかる導電性ペーストを、印刷等の手法により基板等の表面に供給し、焼成することで、所定の機能および特性を有する導電性膜を得ることができる。近年では、電池部材および電子デバイス等の性能と品質の向上に伴い、この導電性ペーストについても、焼成後に得られる導電性膜の電気伝導率あるいは抵抗率等の特性を厳しく管理することが求められている。例えば、電極形成用の導電性ペーストの場合、焼成して得られる導電性膜の電気伝導率は、対象とする製品ごとに、あるいはペーストの使用部位ごとに所定の値が設定されており、さらにその電気伝導率についても、例えば±0.01Ω・cm程度の精度が求められている。
導電性ペーストは、一般的に、その目的に応じた機能および特性を有する導電性粒子がバインダと共に溶媒に分散されて調製されている。例えば、所望の電気伝導率あるいは抵抗率(以下、特に言及のない限り、「電気伝導率あるいは抵抗率」を単に「電気伝導率」という。)に応じて導電性粒子を選択し、1種の導電性粒子を単独であるいは2種以上の導電性粒子を混合して用いるなどしている。このような導電性ペーストに関する電気伝導率等の特性の調整は、その都度、導電性粒子を選択してバインダと溶媒とを混合することで行うことも可能であるが、効率の面から、実際には特性が既知の基本となる数種類の導電性ペーストを調合することで目的の性能のペーストを得ていることが多い。
この基本となるペースト試料(すなわち、所望の導電性ペーストを調製するための、配合前の個々のペースト状試料をいう。以下同じ。)の配合割合は、通常、例えば以下の通りの手順を経て決定される。すなわち、まず、基本となる複数のペースト状試料を幾通りかの配合で混合し、ローラーで混練して導電性ペーストを調製する。次いで、この導電性ペーストを基板に印刷して焼成し、幾通りかの導電性膜を作製する。そして、作製した導電性膜について、目的の特性を備えているかの特性評価を行うことで、その特性を実現するに最適な基本となるペースト試料の配合割合を決定する。ここで、調製される導電性ペーストは、原料の製造条件やペーストの製造方法のわずかな違いによりその特性に大きな影響を受けることがあり得る。そのため、上記のような導電性ペーストの配合割合の調製は、例えば、一日に一度は行う必須の工程とされている。そしてこの導電性ペーストの配合割合の決定は、ほぼ全ての工程が手作業により行われている。
特開2002−033283号公報 特表2003−531370号公報 特開2001−219052号公報 特開2003−083855号公報 特開2008−246328号公報 特許第4009712号 特開2003−215069号公報
ところで、医薬品等に代表される有機材料の分野においては、薬効成分等の網羅的探索を目的としてコンビナトリアル手法が活用されてきた。そして近年では、無機固体材料および金属材料の分野においても、新規材料の探索の手法としてコンビナトリアル手法を利用することが提案されてきている(例えば、特許文献1〜5参照)。無機固体材料および金属材料の分野においてもコンビナトリアル手法を採用することで、多成分かつ様々な量比の原料の組み合わせから特異な機能を発現する材料組成の網羅的な探索を、短時間で達成できるとされている。
しかしながら、導電性ペーストは、例えば25℃での粘度が10〜2000Pa・sであるような高粘性の懸濁物であり得ること、またペースト中に含まれる導電性粒子が経時的に沈降して懸濁状態を保てない状態となり得ること等から、誤差の少ないサンプリングを自動的に行うことは困難であった。そのため、目的の配合割合とは異なる割合でペースト試料が配合された場合には、配合割合のずれた導電性ペーストについて電気伝導率等の特性の測定を行うこととなり、正しい評価を行うことができない可能性があった。一方、誤差の少ないサンプリングを自動的に実施するには、例えばサンプリング速度を十分に低減したり、サンプリング中にサンプリング量を重量計等の複数の機能で監視してその場でサンプリング量の補正を行うなどする必要があり、コンビナトリアル手法であっても時間を要するものとならざるを得なかった。
一方で、手作業による基本のペースト試料の配合割合の決定手法は、作業に長時間を要し、また、ある程度まとまった量でサンプル調製を行うことから廃棄ロスも増大するため、時間的およびコストの面で改善すべき課題があった。また、一つ一つの作業を人の手により進めているため、人為的な誤差の発生が避けられないという問題もあった。かかる誤差を抑制するには、さらに長時間かつ慎重な作業を行わなければならなかった。したがって、現実的に評価できる数の条件が限られていることから、得られる導電性膜の特性を管理できる幅が比較的粗いものになってしまうという問題もあった。
本発明は、上述したような従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、2種類以上のペースト試料の配合割合を、コンビナトリアル手法を利用して、信頼性高く、かつ、効率的に行うことができる導電性ペーストの調製条件評価システムを提供することを課題としている。
ここに開示する導電性ペーストの調製条件評価システム(以下、単に「評価システム」などと略して言う場合もある。)は、導電性物質を作製するための導電性ペーストの調製条件を評価するシステムである。かかる評価システムは、導電性ペーストを構成するための2種類以上のペースト試料の配合割合を少なくとも一つのパラメータとし、該パラメータを変化させて上記2種類以上のペースト試料を混合することで組成の異なる複数の導電性ペーストを基板上の所定の位置に調製するコンビナトリアル試料調製手段と、上記複数の導電性ペースト焼成して複数の焼成体を形成する焼成手段と、上記複数の焼成体の電気伝導率を測定する手段と、上記複数の焼成体の組成分析を行う手段と、上記焼成体の各々について、上記2種類以上のペースト試料の配合割合を前記組成分析の結果に基づき補正し、該補正後の配合割合と上記電気伝導率の測定結果との関係から、上記導電性ペーストの調製条件を評価する手段、とを備えることを特徴とする。
上記のコンビナトリアル試料調製手段においては、導電性ペーストの構成材料であるペースト試料の配合割合を少なくとも一つのパラメータとし、このパラメータを変化させて様々な組成の導電性ペーストを調製することができる。しかしながら、ペースト試料のサンプリングに際して従来より用いられているコンビナトリアル試料調製装置等の手段を利用すると、ペースト試料の正確なサンプリングが困難となる場合があり、実際には目的の組成の導電性ペーストが得られていない事態が生じ得る。また、調製の精度を上げるために複数の手段によりサンプリング量を監視したり補正したりする場合には、サンプリング時間の長大化を招くものとなってしまっていた。
これに対し、ここに開示される調製条件評価システムによると、形成される焼成体(例えば、導電性膜)について、電気伝導率の測定と組成分析とを行うようにしている。そのため、たとえ焼成体の配合割合が設定していた値からランダムに外れた場合であっても、実際の組成を基に配合割合を補正することができる。したがって、精度よく導電性ペーストの調製条件を評価することができる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様においては、上記ペースト試料は、導電性粒子と、バインダと、溶媒とを含み、25℃、10rpmでの粘度が10Pa・s〜2000Pa・sであることを特徴としている。
導電性ペーストを調製するのに用いるペースト試料の構成は様々であり、粘性の低いものから高いものまで存在する。ここに開示される調製条件評価システムは、上記のとおりの範囲の比較的粘性の高いペースト試料を用いる場合に適用することで、その効果を明瞭に得ることができるために好ましい。ペースト試料の粘度は、その用途にもよるが10Pa・s以上であってよく、例えば、50Pa・s以上、さらには100Pa・s以上のものとすることができる。ペースト試料の粘度の上限については、使用するコンビナトリアル試料調製手段の性能にも因るため一概には言えないが、おおよその目安として2000Pa・s程度以下とすることができ、例えば1500Pa・s程度以下、さらには1000Pa・s以下であることがより好ましい。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様において、上記コンビナトリアル試料調製手段は、上記複数の導電性ペーストのそれぞれを10g以下の量で調製可能に構成されていることを特徴としている。
かかる構成によると、たとえペースト試料のサンプリング量に誤差やバラつき等が生じても配合割合を補正できるため、調製される一つの導電性ペーストの量を10g以下と少量にした場合であっても十分精度よく調製条件の評価を行うことができる。より限定的には、かかる導電性ペーストは、例えば、1g以下の量に調製することができる。また、導電性ペーストはサンプリング精度を考慮せずに試験や分析等に必要な量だけ調製すればよく、導電性ペーストの廃棄ロスを低減することができる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様において、上記電気伝導率を測定する手段は、上記複数の焼成体に対する測定を、1回の測定操作で同時に測定可能に構成されていることを特徴としている。
かかる電気伝導率を測定する手段(以下、電気伝導率測定手段という場合もある。)は、基板上の所定の試料位置に配置された焼成体の電気伝導率をすべて同時に測れるように、電気伝導率を測定する機能を複数備えている。例えば、基板上の各試料位置と対応する位置に電気伝導率を測定する機能が配設されている。これにより、瞬時に複数の焼成体の電気伝導度を測定し、調製条件の評価をより短時間で行うことが可能となる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様において、上記電気伝導率を測定する手段は、上記複数の焼成体の電気伝導率を500℃以上の高温で測定可能に構成されていることを特徴としている。導電性ペーストは、その焼成体の用途に応じて、例えば、低温領域(例えば−20℃程度)から500℃以上の高温領域等の様々な温度域で使用され得る。より具体的には、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は動作温度が500℃〜1000℃程度と比較的高い。かかる構成の調製条件評価システムによると、電気伝導率測定手段は500℃以上の高温での電気伝導率の測定を可能としていることから、例えば焼成体の用途がSOFCの構成部材であって、500℃以上の高温で使用される場合であってもその使用状況における特性を評価することができる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様においては、さらに複数の焼成体の熱膨張率を測定する手段を備え、上記調製条件を評価する手段は、上記熱膨張率の測定結果を含めて上記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されていることを特徴としている。導電性ペーストは、典型的には、セラミックス材料や金属材料、さらにはこれらの複合材料などの様々な材料を基材とし、そこに塗布して導電性膜の積層構造を形成することで用いられる。例えば、かかる積層構造の製造において、反り等の変形を生じないよう熱膨張率を管理することは重要である。かかる構成によると、導電性ペーストを焼成して得られる焼成物について、上記のとおりの電気伝導率に加え熱膨張率をも含めて導電性ペーストの調製条件を評価することができる。したがって、より所望の特性および機能を備える導電性ペーストの調製条件の評価を行うことが可能とされる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様においては、上記熱膨張率を測定する手段は、大気雰囲気および還元雰囲気における上記焼成体の熱膨張率を測定する機能を備え、上記調製条件を評価する手段は、上記焼成体の大気雰囲気および還元雰囲気における熱膨張率の測定結果から次式(1):
Figure 0005922561
で定義される還元膨張率の算出が可能であるとともに、上記還元膨張率を含めて上記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されていることを特徴とする。
還元膨張率は、上記式(1)で表されるとおり、酸化雰囲気(例えば、大気雰囲気)と還元雰囲気とにおける熱膨張状態の差を、酸化雰囲気における熱膨張状態を基準として表した値である。例えば、SOFCは複数の無機固体材料が例えば層状に接合された複雑な構造を有しており、また、動作温度が高いため、起動および停止等の際に温度勾配が生じると熱膨張差により各材料の界面に応力が発生する。また、SOFCは、固体電解質膜を挟んでカソードが還元雰囲気、アノードが酸化雰囲気となるため、上記式(1)で示される還元膨張率が大きいと製品に反り等をもたらし得る。そのため、SOFCの開発において還元膨張率は無視することのできない特性である。ここに開示される評価システムによると、例えば、SOFC用途の導電性ペースト等のように還元膨張率が重要な評価指標とされる場合にこの還元膨張率を考慮して導電性ペーストの調製条件の評価を行うことができる。なお、還元膨張率は、例えば室温(典型的には25℃)を基準とすると、室温状態が1で表され、一般的には温度が高くなるほど値が1より大きくなる。かかる還元膨張率は、1に近い値であるか、接合される材料同士で近似した値であることが好ましい。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様においては、上記熱膨張率を測定する手段は、測定雰囲気の制御が可能で、少なくとも室温から1200℃程度の高温までの領域における結晶構造解析が可能な機能を備え、前記調製条件を評価する手段は、測定温度範囲における格子定数の変化に基づき上記還元膨張率を算出し、該還元膨張率を含めて前記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されていることを特徴としている。
無機固体材料の熱膨張率の測定は、一般的には、熱機械分析装置(TMA)等による測定が行われているが、この測定方法はコンビナトリアル手法により用意される極少量の焼成体試料に適用することは難しい。これに対し、結晶構造解析により求められる格子定数から還元膨張率を求める手法によると、コンビナトリアル手法による微小な焼成体試料(いわゆる、ライブラリー状の試料)であっても、酸化雰囲気および還元雰囲気における所定の温度範囲で結晶構造解析を行うことで、複数の焼成体について連続的かつ迅速に高精度で還元膨張率を算出することができる。かかる結晶構造解析の手法としては、例えば、代表的には、X線や中性子線を用いた結晶構造解析法が知られている。ここに開示される調製条件評価システムにおいては、上記結晶構造解析が可能な機能としてより汎用的なX線回折分析装置を用いるのを好ましい態様としている。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの好ましい態様においては、上記焼成手段は、焼成温度を少なくとも一つのパラメータとし、該パラメータを変化させて上記複数の混合試料を焼成することで複数の焼成体を形成可能に構成されており、上記調製条件を評価する手段は、上記2種類以上の導電性ペーストの調製条件として上記パラメータを含めて評価可能に構成されていることを特徴とする。かかる構成によると、焼成体試料の組成のみならず、焼成温度を含む焼成条件をも評価の対象として導電性ペーストの調製条件を評価することができる。
また、かかる導電性ペーストの調製条件評価システムを用いた導電性ペーストの調製条件の評価方法もが提供される。
本発明の一実施形態に係る導電性ペーストの調製条件評価システムの構成を示した概念図である。 本発明の導電性ペーストの調製条件評価システムにより導電性ペーストの調製条件を評価した場合のフローの一例を示した図である。 本発明の導電性ペーストの調製条件評価システムに用いることができる電気伝導率測定装置の構成の一例を示した図である。 (a)(b)は、電気伝導率測定装置に備えられる電気伝導率測定機能の構成のを例示した図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、導電性ペーストの調製条件評価システムを構築する各要素の特徴)以外の事項であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、評価装置を構成する各構成要素の作製方法、作動方法および作動条件等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
図1は、ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの構成を概念的に示している。また、図2は、本評価システムにより導電性ペーストの調製条件を評価する際のフローの一例を示した図である。以下、図2に示したフローに沿って、ここに開示される評価システムについて詳しく説明する。
この評価システム500には、大略的に、制御部100、試料調整部200、計測部300から構成されており、各部に本評価システムの主要な構成要素が配設されている。かかる例では、制御部100には評価手段40が入力手段10と共に備えられ、試料調整部200にはコンビナトリアル試料調製手段20と焼成手段22とが備えられ、計測部300には電気伝導率を測定する手段(以下、単に電気伝導率測定手段という。)30と、組成分析を行う手段(以下、単に組成分析手段という。)32とが備えられている。なお、本評価システムはかかる構成に限定されることなく、例えば一例として、入力手段10および評価手段40が試料作製部200および計測部300にそれぞれ配設されて、相互にデータを送受信可能とする態様や、試料作製部200における焼成手段22が計測部300における試験・分析手段の一部の機能を担う等の様々な態様を考慮することができる。
以上の評価システムは、2種類以上のペースト試料を混合し、焼成して得られる焼成体である導電性膜が、所望の機能を備えるよう、2種類以上のペースト試料の配合割合を評価するものである。
ここで使用されるペースト試料は、導電性ペーストを構成するための基本となるペースト状(スラリー状、インク状を包含する。)の材料であって、このペースト試料を混合することで所望の機能および特性を示す導電性ペーストを構築するものである。かかるペースト試料の構成および特性は特に制限なく、例えば、目的の導電性ペーストの構成の一部から構成されるものとすることができる。かかる試料ペーストは、基本的には、導電性粒子と、バインダと、溶媒とを含んでいる。かかるペースト試料の構成について、以下にその代表的なものを例示して説明する。
導電性粒子は、導電性ペーストを焼成した後に得られる焼成体(典型的には導電性膜)の導電性を担う物質である。かかる導電性粒子の種類等については特に制限はなく、目的の導電性ペーストに従来用いられている各種の導電性粒子を特に制限なく用いることができる。目的とする導電性ペーストは、電極形成用、印刷回路用、接合用、抵抗体用、異方導電性インク用等の様々な導電性ペーストであってよく、かかる導電性粒子の一例としては、金(Au),銀(Ag),銅(Cu),白金(Pt),パラジウム(Pd),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir),オスミウム(Os),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)等の金属およびそれらの合金、カーボンブラック等の炭素質材料、LaSrCoFeO系酸化物(例えばLaSrCoFeO)、LaMnO系酸化物(例えばLaSrGaMgO)、LaFeO系酸化物(例えばLaSrFeO)、LaCoO系酸化物(例えばLaSrCoO)等として表わされる遷移金属ペロブスカイト型酸化物に代表される導電性セラミックス等が例示される。
粒子の形状や粒径に厳密な制限はなく、例えば、代表的には、平均粒径が数nm〜数μm程度、例えば、10nm〜10μm程度の範囲のものから用途等に応じて選択される平均粒径を有する粒子を用いることができる。なお、本明細書における「平均粒径」とは、平均粒径がおおよそ0.5μm以上となる範囲では、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)として求めることができ、平均粒径がおおよそ0.5μm程度以下の範囲では、電子顕微鏡等の観察手段により観察される観察像内の複数の粒子の円相当径に基づき作成された粒度分布における積算値50%での粒径として求めることができる。なお、これらの平均粒径の算出手法を適用する粒径範囲に厳密な臨界はなく、採用する装置の精度等に応じて算出方法を適宜選択することができる。
導電性ペーストの他の構成成分として、上記導体性粒子を分散させておくビヒクルとも呼ばれる媒質が挙げられる。かかる媒質は、典型的には、バインダおよび溶媒とから構成されている。かかるビヒクルは導電性粒子を適切に分散させ得るものであればよく、従来の導体ペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。
かかるバインダとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等をベースとするものが挙げられる。また、導電性ペーストの基材への固着能(バインダ機能)を担う成分として、あるいは固着性および耐久性等の他の機能を担う成分として、ガラスフリットを含んでいても良い。
また溶媒としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ブチルカルビトール、ターピネオール等の高沸点有機溶媒又はこれらの二種以上の組み合わせを構成成分として含む有機ビヒクルを用いることができる。
その他、ペースト試料には、導電性ペーストを構成するに良好な粘性および塗膜(基材に対する付着膜)形成能等の所望の特性を付与し得る各種の添加剤が、必要に応じて含まれていても良い。かかる添加剤の一例をあげると、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、種々の光重合性化合物および光重合開始剤、重合禁止剤や、セラミック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタネート系およびアルミニウム系等の各種カップリング剤等が挙げられる。
以上のペースト試料は、例えば、目的とする導電性ペーストと同一の組成ないしはその一部の組成を有するものとすることができる。具体的には、例えば、ペースト試料の組成を導電性ペーストと同一にする場合には、例えば、その濃度を適宜変更して2種以上の濃度のペースト試料を用意することができる。ペースト試料の組成を導電性ペーストと異ならせる場合には、例えば、目的の導電性ペーストの構成成分を2以上のパートに分け、そのパートを含む2種以上のペースト試料を用意することができる。
これらのペースト試料は、非ビンガム流動を示す粘塑性流体であって、高粘性に調整され得る。かかる粘度は、使用するコンビナトリアル試料調製手段20の性能に因るため一義的に示すことはできないが、例えば10Pa・s以上とすることができる。ここに開示される評価システムにおいては、粘度は、10Pa・s〜2000Pa・s程度の比較的粘性の高いペースト試料に適用することで、その効果を明瞭に得ることができるために好ましい。さらに限定的には、ペースト試料の粘度は50Pa・s〜1500Pa・s程度、例えば、100Pa・s〜1000Pa・s程度であるのが好ましい。
なお、導電性ペーストの粘度は、粘塑性流体の粘度計測が可能な粘度計あるいはレオメータにより計測することが可能である。本明細書における粘度は、HBTタイプのブルックフィールド型粘度計を用い、25℃において10rpmの条件で計測される値を示している。
この実施形態の評価システムにおいては、先ず、ステップS10に示したように、入力手段10において、コンビナトリアル試料調製手段20と焼成手段22の動作条件の設定を行う。
コンビナトリアル試料調製手段20の設定としては、コンビナトリアル手法に基づき試料調製に際して必要な条件の入力を行う。例えば、2種類以上の基本となるペースト試料の配合割合を決定する。かかる配合割合は、評価に必要な数および組成範囲の混合ペーストが調製できるよう、該必要数および必要組成範囲の複数の配合割合を決定する。ここで、例えば一つのペースト試料の配合割合を少なくとも一つのパラメータとし、これを連続的にあるいは離散的に変化させることで、残りのペースト試料の配合割合(残りの基本となるペースト試料の合計の配合割合であり得る。)を決定するのが好ましい。残りの基本となるペースト試料が複数となる場合は、さらにそれらの配合割合を設定することができる。たとえば、一部のペースト試料の配合割合のみを変化させて残りの一部のペースト試料の配合割合は一定にしても良いし、すべてのペースト試料の配合割合を網羅的に変化させるようにしても良い。用意する導電性ペーストの数(すなわち、配合割合の数、導電性ペーストの組成の数であり得る。)については特に制限されないが、5種類以上であることが好ましく、例えば8種類以上であることがより好ましい。例えば、10種類以上とすることや、30種類以上とすること等も可能である。
焼成手段22の設定としては、例えば、焼成における昇温速度、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等の条件の設定を行うことができる。かかる焼成条件は、コンビナトリアル手法に基づき変化させても良いし、全ての導電性ペーストについて一定の条件に設定するようにしても良い。さらには、導電性ペーストの焼成に加えて、付加的にヒートサイクルを施すよう設定しても良い。
かかる入力手段10としては、所定の情報出入力機能および演算処理機能等を備えるコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)等を好適に用いることができる。以上の入力手段10において入力された情報は、試料作製部200のコンビナトリアル試料調製手段20と焼成手段22に送られる。本評価システムにおける情報(各種の信号を含む。以下同じ。)の送受信は、有線通信で行っても良いし、無線通信で行っても良い(以下同じ)。
試料作製部200においては、ステップS20に示したように、入力手段10において入力された調製条件等の情報に基づき、2種類以上の導電性ペーストから複数の配合割合(すなわち、複数の組成)の混合ペーストを基板上に調製する。その後、ステップS30で示したように、基板上の混合ペーストを焼成して焼成体を形成する。この試料作製部200で形成される焼成体が、評価の対象物である導電体(典型的には、導電性膜)となる。
コンビナトリアル試料調製手段20は、コンビナトリアル手法に基づいて組成の異なる複数の混合試料を調製する。ここに開示される評価システムにおいては電気伝導率の異なる2種以上の基本のペースト試料を混合することで、組成の異なる複数の混合ペーストを調製する。具体的には、2種類以上の基本のペースト試料の配合割合を少なくとも一つのパラメータとし、このパラメータを連続的に、あるいは離散的に変化させて、かかる基本のペースト試料を混合することで、網羅的に組成の異なる混合ペーストを調製する。混合ペーストは、基板上の所定の試料位置で或いは所定の混合容器内で均一に混合されて、基板上の所定の試料位置に配置される。
基板としては、所定の試料配設位置が用意されている平板状のライブラリプレートを用いることができる。かかる基板は、試料が配設される表面の一面が平滑なものであっても良いし、この試料配設位置に窪みが設けられたものであっても良い。基板の材質については特に制限はなく、例えば、導電性ペーストとの反応が生じない材質のものや、導電性ペーストと所望の反応が生じる材質のもの、あるいは、かかる導電性ペーストの塗布対象である材質のもの等から任意に構成することができる。
ここで、コンビナトリアル試料調製手段20は、例えば、混合ペーストの調製量を10g以下(例えば、1g以下)の量として調製可能とされていることが好ましい。本評価システムは、後で詳しく説明するが、たとえサンプリングに誤差やバラつき等が生じても配合割合を補正できるため、一つの混合ペーストの量を10g以下と少量にした場合であっても十分精度よく導電性ペーストの調製条件の評価を行うことができる。また、混合ペーストはサンプリング精度を考慮せずに必要な量のみ調製すればよく、導電性ペーストの廃棄ロスを低減することができる。
かかるコンビナトリアル試料調製手段20は、例えば、コンビナトリアル手法に基づいたサンプリングを行うことのできる各種の自動湿式試料作製装置、サンプリング装置等を利用すること等で実現することができる。自動湿式試料作製装置およびサンプリング装置としては、液体ないしはスラリー状の湿式試料を扱うことのできるものであって、上記の粘性を有するペースト試料を物理的にサンプリングできるものであれば、そのサンプリング精度および構成等は特に制限されず、各種のものを利用することができる。このような装置の好ましい一例として、ピペットとこれに接続されるシリンジポンプによるペースト試料の吸引および排出によりサンプリングを行うものが例示される。具体的には、例えば、特許文献6に開示される秤量混合装置および化学反応処理装置等を例示することができる。
焼成手段22は、上記で用意された混合ペーストを焼成し、基板上の所定の位置に焼成体を形成する。かかる焼成手段22は、公知の各種の加熱装置等を用いることで実現することができる。加熱装置としては、例えば、具体的には、高周波誘導コイル等を用いたマッフル炉や、トンネル式加熱炉、レーザ加熱装置、局所加熱装置等が例示される。基板上の全ての混合ペーストの焼成条件を揃え、焼成雰囲気や焼成温度の制御を正確に行うためには、マッフル炉等の密閉式の加熱装置を用いるのが好適である。また、トンネル式加熱炉等を採用すると、多数の基板を連続的に加熱でき、加熱の温度履歴等を変化させやすい点で好ましい。さらに、同一の基板上の混合ペーストの加熱条件を変更する場合等には、例えば、レーザ加熱装置やセラミックス発熱体等による局所的な加熱を可能とする加熱装置を採用することが考慮される。
このようにして調製される組成の異なる焼成体は、電気伝導性についても異ならしめられる。
その後、計測部300において、ステップS30〜S36に示したように、上記で形成された組成の異なる焼成体について、例えば制御部100からの情報に基づき、自動的に所望の機能および特性についての試験・分析等を行うことができる。この図1に例示した評価システム500の場合、例えば、計測部300に電気伝導率測定手段30、組成分析手段32、結晶構造解析手段34および熱膨張率測定手段36を備え、例えば、焼成体の電気伝導率(抵抗率)、組成、結晶性、熱膨張率等の測定および分析を行うことができる。この試験、分析は、必要に応じて、入力手段10および評価手段40と情報を送受信しながら実施することができる。
電気伝導率測定手段30は、上記で用意された複数の焼成体(導電性膜)の電気伝導率(抵抗率)を、例えば制御部100からの情報に基づき、自動的に測定可能としている。即ち、電気伝導率測定手段30に送られてきた複数の焼成体(導電性膜)を例えば基板ごと所定の測定位置に設置し、各焼成体の電気伝導率(抵抗率)の測定を行う。電気伝導率の測定は、例えば、四探針法、二端子法、四端子法等による電気伝導率の測定機能を有する装置により実現することができる。電気伝導率の測定においては、複数の焼成体を一つずつ順に測定するようにしてもよいが、例えば、基板上に形成された焼成体の全ての電気伝導率を一度に測定する構成とされているのがより好ましい。
かかる複数の焼成体の電気伝導率の測定を一度に行うには、例えば、図3に示したように、上記の基板の試料位置にそれぞれ対応するように、複数の電気伝導率測定機能30B(図3では電気伝導率測定機能30Bの一部を省略して示している。)が備えられた電気伝導率測定装置30Aを用いるのが好ましい例として示される。この電気伝導率測定機能30B、例えば、四探針法プローブより構成されていることで、焼成体が微小な薄膜状等であっても、基板上に形成された全ての試料の電気伝導率を同時かつ瞬時に測定可能とすることができる。また、例えば、各々の電気伝導率測定機能30Bにおける四本の探針(プローブ)の先端が各々の針軸方向で移動可能とされていることで、四探針法プローブを試料に押し当てるだけで試料表面の凹凸や試料ごとの表面高さの違い等を探針の移動により吸収でき、すべての試料の電気伝導率の測定を同時かつ瞬時に行うことができる。かかるプローブの先端部の移動は、例えば図4(a)(b)に示したように、具体的には、例えば、(a)針軸方向でのスライドにより、あるいは、(b)探針の微小な湾曲により、実現することができる。さらに、この電気伝導率測定手段30が、マッフル炉等の温度および測定雰囲気の制御を可能とする機能を備えることで、例えば、高温環境における電気伝導率の測定を行うことが可能とされる。この電気伝導率測定装置30により測定された電気伝導率の情報は評価手段40に送られる。
組成分析手段32は、上記で用意された複数の焼成体(導電性膜)の化学組成を、例えば制御部100からの情報に基づき、自動的に測定可能としている。化学組成の分析は、例えば、蛍光X線分析法による分析機能を有する蛍光X線分析装置や、X線光電子分光法、二次イオン質量分析法等の固体無機物の組成分析を非破壊で行える分析手法による分析装置等を好ましく採用することができる。なお、蛍光X線分析装置としては、例えば、エネルギー分散型のものと波長分散型のもののいずれを用いるようにしても良い。組成分析においては、例えば、複数の焼成体が形成されている基板を水平方向で移動させることで測定対象の焼成体を測定位置に移動させるようにし、全ての焼成体について順次自動的に組成分析を行うようにしてもよい。なお、用いる組成分析手段32の構成によっては、組成分析の手順および手法はかかる例示に限定されることはない。組成分析手段32における組成分析の結果は、評価手段40に送られる。
結晶構造解析手段34は、上記で用意された複数の焼成体(導電性膜)の結晶構造に関する情報を、例えば制御部100からの情報に基づき、自動的に解析可能としている。結晶構造の解析は、例えば、X線回折分析法による分析機能を有するX線回折分析装置等を用いることで好適に実現することができる。かかるX線回折分析においても、例えば、複数の焼成体が形成されている基板を水平方向で移動させることで測定対象の焼成体を測定位置に移動させるようにし、全ての焼成体について順次自動的に組成分析を行うことができる。なお、用いる結晶構造解析手段34の構成によっては、組成分析の手順および手法はかかる例示に限定されることはない。結晶構造解析手段34における組成分析の結果は、評価手段40に送られる。
熱膨張率測定手段36は、上記で用意された複数の焼成体(導電性膜)の熱膨張率を、例えば制御部100からの情報に基づき、自動的に測定可能としている。熱膨張率は、線熱膨張率と体積熱膨張率のいずれであっても良い。かかる熱膨張率測定手段36は、例えば、光干渉法、X線回折法、望遠測微法等の精密絶対測定手法による測定機能を有する装置を採用することで好適に実現することができる。かかる測定は、例えば、所定の温度範囲で、所定の測定雰囲気で測定可能であることが望ましい。例えば、測定雰囲気を酸化雰囲気と還元雰囲気の二通りとし、各々の測定雰囲気における室温から500℃以上程度の所望の測定温度範囲の熱膨張率を測定することにより、その差である還元膨張率を後述の評価手段40において算出することが可能とされる。還元膨張率は、例えば、上記の式(1)により算出することができる。例えば、熱膨張率測定手段36としてX線回折分析装置を採用する場合は、かかる熱膨張率測定手段36と上記の結晶構造解析手段34として同一のX線回折分析装置を用いるようにしても良い。X線回折法による熱膨張率の測定は、結晶格子の格子間隔(すなわち格子定数)の温度変化をX線の回折角の変化として読み取り、熱膨張率を算出するものである。また、X線回折法は結晶性試料であれば他の測定方法では測定が困難なごく僅かな量の試料についても測定を行うことが出来るため、かかるコンビナトリアル手法により作成される焼成体の熱膨張率の測定に適用するのは好ましい。かかる熱膨張率測定手段36における熱膨張率の結果は、評価手段40に送られる。
評価手段40では、以上の通り計測部300から送られた情報と、上記の入力手段10で設定された情報とを基に、導電性ペーストの調製条件の評価を行うことができる。具体的には、評価手段40では、導電性ペーストの配合と、上記で試験・分析を行った機能又は特性との関係性を解析し、所望の機能又は特性を実現し得る導電性ペーストの組成を算出する。かかる解析は、公知の解析ソフトを用いて実施することができる。例えば、各試験・分析装置等に付属の解析ソフトであってよい。そして本発明では、この解析を行う際に、組成分析手段32から送られた組成分析の結果を基にして実際のペースト試料の配合割合を算出し、この算出値を入力手段10において設定した配合割合に代えて解析に用いるようにしている。以下、組成分析の結果から算出された配合割合の算出値を単に「補正値」という場合がある。導電性ペーストの調製においては、コンビナトリアル試料調製手段20による導電性ペーストの調製の精度よりも、組成分析手段32による導電性ペーストの組成分析の精度の方が、より高いと考えられるからである。そして補正後の導電性ペーストの配合と、上記で試験・分析を行った機能又は特性との関係性を解析することで、所望の機能又は特性を実現し得る導電性ペーストのより精確な組成(あるいは組成範囲)を算出し、評価することができる。なお、かかる補正値の解析への導入は、常に評価に反映させるようにしても良いし、例えば、入力手段10で設定した基本のペースト試料の配合割合と補正値との差が、あらかじめ設定しておいた閾値より大きい場合に、予め入力手段10において設定した配合割合を補正値に置き換えて補正するようにしてもよい。
また、計測部300から送られた焼成体の機能(特性であり得る)に関する情報は、例えば、上記の焼成体の電気伝導率(抵抗率)、結晶性、熱膨張率、還元膨張率等が例示されるが、これらの機能ごとに予め閾値等を設け、この閾値で示される範囲内の焼成体を「可」と評価し、この閾値で示される範囲外の焼成体を「不可」と評価すること等が例示される。かかる評価は、「可」「不可」の2段階に限定されることなく、複数の段階を設けるなどしてより詳細に評価することもできる。そしてこの評価結果と焼成体の配合割合とを関連付け、より望ましい特性を備える焼成体を形成可能な導電性ペーストの配合割合を決定することができる。
以上の各機能の評価結果と焼成体の配合割合との関係は、例えば、組成マップ上に表すこともできる。例えば、ガラス組成と、接触角との関係を示すマップを作製すること等も可能である。これにより導電性ペーストの配合割合と、かかる配合割合により達成される焼成体の機能との関係を視覚的に明確に評価することができる。
なお、焼成体の機能評価は、上記に例示した機能の試験および分析等に限定されることなく、その他の公知あるいは今後開発されるであろう各種の測定手段であってよい。また、複数の測定機能が一つの測定手段に複合化された測定手段が備えられていても良い。計測部300に備えられる各種機能および特性の評価分析手段としては、例えば、焼成体の誘電率の測定を行う誘電率測定手段や、レーザーラマン分光光度計等を備えるレーザーラマン分析手段等が備えられ、各焼成体の誘電率や分子構造の評価等を配合割合の決定に考慮することができる。
また、計測部300に設けられた複数の測定および/または分析手段の間には、本質的に、焼成体(試料)を基板ごと自動的に移送可能な移送手段を備えることができる。かかる移送手段としては、例えば、リフトやロボットアーム等の移送物を上下方向に移送可能な垂直移送手段、ローラコンベアやベルトコンベア等の移送物を水平方向に移送可能な水平移送手段、および、移送物の移動に基づきこれらの移送手段の動作を制御する制御手段を備える等した、公知の各種の搬送システム等を採用することができる。しかしながら、自動的に移送可能な移送手段の設置には比較的広いスペースが必要となるため、場合によって、かかる移送手段としては、必ずしも自動的に(機械的に)実施されるものに限らず、人の手による移送を利用するようにしても良い。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[実施態様1]
以下に説明する導電性ペーストの調製条件評価システムを用いて、電気伝導率の異なる2種類のペースト試料Aおよびペースト試料Bから、所定の抵抗率を有する抵抗ペーストを調製するためのペースト試料AおよびBの最適な配合割合を調べた。本実施形態で用いた導電性ペーストの調製条件評価システムは、ペースト試料AおよびBを所定の配合割合で混合した混合ペーストを基板上に調製して試料ライブラリを作成するコンビナトリアル試料調製手段と、調製した混合ペーストをライブラリごと所定の焼成条件で焼成する自動焼成炉と、焼成後の複数の焼成体の抵抗率(電気伝導率)を測定する手段と、複数の焼成体の組成分析を行う手段と、各手段から受け取った情報からペースト試料AおよびBの配合割合を評価する手段とを備えている。
[コンビナトリアル試料調製手段]
コンビナトリアル試料調製手段としては、コンビナトリアル手法に基づき、複数の液体試料を所定の量ずつ採取し、混合した後、所定の試料位置に配置することができる自動試料作成装置を用いた。この実施形態では、ペースト試料AおよびBの配合割合をパラメータとし、このパラメータを一定の割合で変化させることで、下記の表1に示した9通りの配合で混合試料を調製した。
なお、ペースト試料AおよびBとしては、電子デバイスの抵抗体形成用のペーストであって、導電性を有する酸化ルテニウム(RuO)粉末とバインダとしてのガラス粉末とを、溶媒としてのテルピネオールに分散させたものを用意した。ペースト試料Aとペースト試料Bとは、RuO粉末とガラス粉末の配合等を調整することで、予め異なる抵抗率に調製されている。なお、これらのペースト試料AおよびBの粘性を測定したところ、25℃10rpmにおいてそれぞれ100Pa・sと120Pa・sであった。基板としては、アルミナ製であって、平板状基板の表面の所定の試料位置に皿状の凹みが設けられたものを用いた。
上記の自動試料作成装置では、各々50mg〜100mg程度のペースト試料Aおよびペースト試料Bをピペットにて自動的に採取して混合用アンプルに吐出する。混合用アンプル中のペーストは、超音波と振動とが加えられて攪拌される。攪拌された混合ペーストは、再びピペットにて採取され、例えば、10mg〜20mg程度の所定量が基板上の所定の位置に供給される。基板上には、この例では、6×6の格子状に試料位置が設定されており、この所定の試料位置に、所定の順で試料が配置される。このようにして2種類の抵抗ペーストから9通りの混合ペーストを基板上に用意するのに要した時間は約10分間であった。調製された混合ペーストは、基板ごと焼成手段に送られる。
[焼成手段]
焼成手段としては、焼成条件をすべて自動で制御可能な焼成炉を用いた。この実施形態では、9通りの混合ペーストを基板ごと空気雰囲気中で、800℃で焼成することで、焼成体としての9通りの組成の抵抗体試料を得た。得られた抵抗体試料は、空冷後、組成分析を行う手段に送られる。
[組成分析手段]
組成分析手段としては、基板を所定の測定位置に自動的に移動可能な基板ホルダを備えたエネルギー分散型微少部蛍光X線分析装置を用いた。本実施形態では、この蛍光X線分析装置により抵抗体試料中のルテニウム(Ru)の濃度(質量%)を調べた。各抵抗体試料のRu濃度に関する情報は、評価手段に送られる。参考のために、各抵抗体試料のRu濃度の測定結果を表1に示した。組成分析を終えた抵抗体試料は、基板ごと、電気伝導率(体積抵抗率)測定手段に送られる。
[電気伝導率測定手段]
電気伝導率測定手段としては、上記の基板の試料位置にそれぞれ対応するように、複数(この場合は36個)の電気伝導率測定装置が配設されている電気伝導率測定装置を用いた。この電気伝導率測定装置は、四探針法プローブより、微小な薄膜状の試料等であっても、基板上に形成された全ての試料の抵抗率(電気伝導率)を同時に測定することができる。また、四本の探針(プローブ)の各々が針軸方向で移動可能とされており、四探針法プローブを試料に押し当てるだけで試料表面の凹凸や試料ごとの表面高さの違い等を吸収して、正確な抵抗率(電気伝導率)の測定が瞬時に可能とされる。さらに、測定部はマッフル炉内に設置されており、最高1400℃程度の高温における電気伝導率の測定を可能としている。この電気伝導率測定装置により、25℃における抵抗体試料の体積抵抗率を測定し、その情報は評価手段に送られる。参考のために、各抵抗体試料の体積抵抗率の測定結果を表1に示した。なお、表中、ペースト試料Aとペースト試料Bの配合割合は、それぞれ、ペーストA,ペーストBとした欄に示した。
Figure 0005922561
[評価手段]
以上のとおり組成分析手段および電気伝導率測定手段から送られた測定結果から、調製した混合ペーストの組成と得られた電極膜試料の体積抵抗率との関係を求めた。この両者の関係は、理論的には線形関係を示すが、実際に製造された電極膜において完全な線形性を示すことは極めて稀である。そのため、調製された混合ペーストの配合割合の補正を行った。本実施形態では、既知のペースト試料AおよびBの体積抵抗率と、上記の実測値(体積抵抗率、Ru含有量)とから、表1の補正値の欄に示すような配合割合が実際の導電性ペースト配合であると算出された。したがって、設定条件である配合割合を、Ru含有量から算出される配合割合(補正値)に置き換えて、体積抵抗率との関係を評価することで、より信頼性の高い評価を行うことができる。
また以上の測定結果についても、この導電性ペーストの調製条件評価を実施する日の天候等の影響を受けて微妙に変化するため、その日ごとの調製が欠かせない。この補正後の配合割合と体積抵抗率との関係から、例えば、この日、体積抵抗率が1.20Ω・cmの抵抗ペーストを調製するには、ペースト試料Aおよびペースト試料Bを(A)53.8:(B)46.2の割合で混合すればよいことがわかった。
また、本システムを利用した場合に各工程に要した時間を下記の表2に示した。また、参考のために、従来の手作業による抵抗ペーストの調製条件の評価に要する時間についても、併せて表2に示した。
Figure 0005922561
以上のようにここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムを用いれば、従来では導電性ペーストの調製条件の最適化評価を一配合ずつあるいは一サンプルずつ成膜し分析または試験することで時間を費やしてしまっていたところを、複数サンプル同時に成膜し、複数サンプル同時または連続的に分析または試験することで所要時間を大幅に短縮できることが確認できた。また、サンプル作成に用いる基本のペーストも、従来は人の手による秤量・混合等の誤差を小さく抑えて調製可能な量だけ使用する必要があり、廃棄ロスも多量となってしまっていたが、かかるシステムによると少量でも誤差を小さく抑えてサンプルを作製することが可能となり、廃棄ロスも削減することができた。これにより、例えば毎日の導電性ペーストの調製条件を最適化するための膨大な試験時間およびコストを低減することができる。
この例では、2種類の導電性ペーストとしていずれもRu系の抵抗ペーストを用いるようにしているが、導電性ペーストとしては導電性粒子の成分および組成が異なるものを用いても良いし、2種類以上、例えば3種類や4種類の導電性ペーストを配合するようにしても良い。
また、形成された複数種の抵抗体の評価内容は、組成分析および抵抗率の測定に限定されず、その他の評価を行っても良い。
[実施態様2]
以下に説明する導電性ペーストの調製条件評価システムを用いて、電気伝導率の異なる2種類の導電ペーストCおよび導電ペーストDから、所定の特性(電気伝導率、結晶構造、還元膨張率)を有する導電ペーストを調製するためのペーストCおよびDの配合割合を調べた。本実施形態で用いた導電性ペーストの調製条件評価システムは、上記の実施形態1で用いたのと同じコンビナトリアル試料調製手段と、調製した混合試料をライブラリごと所定の焼成条件で焼成する焼成手段と、焼成後の複数の焼成体の電気伝導率を測定する手段と、複数の焼成体の還元膨張率の測定を行う手段と、各手段から受け取った情報から導電ペーストCおよびDの配合割合を評価する手段を備えている。
[コンビナトリアル試料調製手段]
コンビナトリアル試料調製手段としては、上記実施態様1と同じ自動試料作成装置を用いた。この実施形態では、導電ペーストCおよびDの配合割合をパラメータとし、このパラメータを一定の割合で変化させることで、下記の表2に示した9通りの配合で混合試料を調製した。
なお、導電ペーストCおよびDとしては、固体酸化物形燃料電池における電極形成用のペーストであって、ペーストCは導電性酸化物としてLaSrCoFeOを含み、ペーストDは導電性酸化物としてLaSrTiFeOを含み、これをバインダとしてのガラス粉末と共に溶媒としてのテルピネオールに分散させたものを用いた。導電ペーストCと導電ペーストDとは、予め異なる電気伝導率に調製されている。これらの導電ペーストCおよびDの粘性を測定したところ、それぞれ130Pa・sと150Pa・sであった。基板としては、8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)製の、平板状基板の表面の所定の試料位置に皿状の凹みが設けられたものを用いた。
上記の自動試料作成装置では、各々50mg〜100mg程度の導電ペーストCおよび導電ペーストDをピペットにて自動的に採取して混合用アンプルに吐出する。混合用アンプル中のペーストは、超音波と振動とが加えられて攪拌される。攪拌された混合ペーストは、再びピペットにて採取され、例えば、10mg〜20mg程度の所定量が基板上の所定の位置に供給される。基板上には、この例では、6×6の格子状に試料位置が設定されており、この所定の試料位置に、所定の順で試料が配置される。このようにして2種類の導電ペーストから9通りの混合ペーストを基板上に用意するのに要した時間は約10分間であった。調製された混合ペーストは、基板ごと焼成手段に送られる。
[焼成手段]
焼成手段としては、焼成条件をすべて自動で制御可能な焼成炉を用いた。この実施形態では、9通りの混合ペーストを、基板ごと空気雰囲気中で、1000℃で焼成することで、焼成体としての9通りの組成の電極膜試料を得た。得られた焼成体は、空冷後、還元膨張率の測定を行う手段に送られる。
[組成分析手段]
組成分析手段としては、基板を所定の測定位置に自動的に移動可能な基板ホルダを備えたエネルギー分散型微少部蛍光X線分析装置を用いた。本実施形態では、この蛍光X線分析装置により電極膜試料中のコバルト(Co)の濃度(質量%)を調べた。電極膜試料のCo濃度に関する情報は、評価手段に送られる。参考のために、電極膜試料のCo濃度の測定結果を表3に示した。組成分析を終えた電極膜試料は、基板ごと、還元膨張率測定手段に送られる。
[還元膨張率測定手段]
還元膨張率測定手段としては、基板を所定の測定位置に自動的に移動可能な基板ホルダを備え、所望の雰囲気条件で複数の電極膜試料のX線回折分析を連続的に行うことのできるX線回折分析装置を用いた。本実施形態では、このX線回折装置により室温と1273Kの高温での電極膜試料の単位結晶格子の大きさ(すなわち、結晶格子定数a、b、c)をそれぞれ求め、これらの値から算出される単位格子の体積変化から、室温から1273Kにかけての体積熱膨張係数を求める。また、この体積熱膨張係数を、酸化(大気)雰囲気および還元雰囲気の両方で求め、酸化(大気)雰囲気における熱膨張体積を基準とした場合の、還元雰囲気における熱膨張係体積の増加具合を、還元膨張率とした。すなわち、かかる還元膨張率は、上記の式(2)により表される。酸化(大気)雰囲気および還元雰囲気において測定した電極膜試料の室温と1273Kにおける格子定数に関する情報は、評価手段に送られる。参考のために、各電極膜試料の格子定数の測定結果を表3に示した。X線回折分析を終えた電極膜試料は、基板ごと、電気伝導率測定手段に送られる。
[電気伝導率測定手段]
電気伝導率測定手段としては、上記の実施態様1で用いたのと同じ電気伝導率測定装置を用いた。この実施態様では、かかる電気伝導率測定装置により800℃における電極膜試料の高温電気伝導率を測定し、その情報を評価手段に送った。参考のために、各電極膜試料の高温電気伝導率の測定結果を表3に示した。なお、表中、電極膜試料における導電性ペーストCと導電性ペーストDの配合割合は、それぞれ、ペーストC,ペーストDとした欄に示した。
Figure 0005922561
[評価手段]
以上のとおり組成分析手段および電気伝導率測定手段から送られた測定結果から、調製した導電性ペーストの組成と得られた電極膜試料の高温電気伝導率との関係を求めた。この両者の関係は、理論的には線形関係を示すが、実際に製造された電極膜において完全な線形性を示すことは極めて稀である。そのため、調製された導電性ペーストの配合の補正を行った。本実施形態では、既知の導電性ペーストCおよびDの高温電気伝導率と上記の測定結果(高温電気伝導率、Co含有量)とから、表3の補正値の欄に示すような配合割合が実際の導電性ペースト配合と算出された。したがって、この配合割合を基に各種特性を評価する。すなわち、設定条件である配合割合を、Co含有量から算出される配合割合(補正値)に置き換えて、高温電気伝導率との関係を評価することで、より信頼性の高い評価を行うことができる。
以上のとおり還元膨張率測定手段から送られた格子定数のデータから還元膨張率を算出し、還元膨張率−高温導電率の関係を求めた。電極膜の特性として、高温での電気伝導率は高い方が好ましいが、還元膨張率は小さい方が好ましい。表3の結果から、例えば、高温導電率が100S/cm以上で、還元膨張率が0.1%以下の導電ペーストを調製するには、ペーストCおよびペーストDを(C)44.6:(D)55.9〜(C)58.4:(D)40.6の範囲で混合すればよいことがわかった。
また、本システムを利用した場合に各工程に要した時間を下記の表4に示した。参考のために、従来の手作業による導電性ペーストの調製条件の評価に要する時間についても、併せて表4に示した。
[評価手段]
また以上の測定結果についても、この導電性ペーストの調製条件評価を実施する日の天候等の影響を受けて微妙に変化するため、その日ごとの調製が欠かせない。この補正後の配合割合と高温導電率との関係から、例えば、この日、高温導電率が120S/cmの抵抗ペーストを調製するには、ペースト試料Cおよびペースト試料Dを(C)55:(D)45の割合で混合すればよいことがわかった。
また、本システムを利用した場合に各工程に要した時間を下記の表4に示した。また、参考のために、従来の手作業による抵抗ペーストの調製条件の評価に要する時間についても、併せて表4に示した。
Figure 0005922561
以上のようにここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムを用いれば、従来では導電性ペーストの調製条件の最適化評価を一配合ずつあるいは一サンプルずつ成膜し分析または試験することで時間を費やしてしまっていたところを、複数サンプル同時に成膜し、複数サンプル同時または連続的に分析または試験することで、所要時間を大幅に短縮することができた。還元膨張率の測定は、X線回折分析装置を利用することにより、極微小のサンプルでも高精度に測定が行えることが確認できた。また、サンプル作成に用いる基本のペーストも、従来は人の手による秤量・混合等の誤差を小さく抑えるためにある程度まとまった量を調製する必要があり廃棄ロスも多量となってしまっていたが、かかるシステムによると少量でも誤差を小さく抑えてサンプルを作製することが可能となり、廃棄ロスも削減することができた。これにより、例えば毎日の導電性ペーストの調製条件を最適化するための膨大な試験時間およびコストを低減することができる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、ここに開示される導電性ペーストの調製条件評価システムの評価対象は、上記に例示されたようなSOFCの電極材料や、電子デバイスの抵抗材料に限定されることなく、例えば、各種の微小電気機械システム(MEMS:Microel-Ectro-Mechanical System)や積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi-Layer Ceramic Capacitor)等におけるプリント配線用の電極ペーストおよび導電性接着材等の調製条件の評価にも適用することができる。また、この評価システムは、評価の対象となる導電性ペーストに含まれる導電性粒子が上記のRuOや遷移金属ペロブスカイト型酸化物に限定されることはなく、他の種々の成分からなる導電性粒子をふくむ導電性ペーストに適用することができる。また、導電性ペーストとしては2種類のものを配合することに限定されず、例えば3種類や4種類以上の導電性ペーストの配合割合を評価するようにしても良い。形成された導電性膜を評価するために、上記に具体的に開示された分析手段以外の、他の試験、分析または評価手段が備えられて良いことはいうまでもない。
10 入力手段
20 コンビナトリアル試料調製手段
22 焼成手段
30 電気伝導率測定手段
30A 電気伝導率測定装置
30B 電気伝導率測定機能
32 組成分析手段
34 結晶構造解析手段
36 熱膨張率測定手段
40 評価手段
100 制御部
200 試料作製部
300 計測部
500 導電性ペーストの調製条件評価システム

Claims (10)

  1. 導電性物質を作製するための導電性ペーストの調製条件を評価するシステムであって、
    導電性ペーストを構成するための2種類以上のペースト試料の配合割合を少なくとも一つのパラメータとし、該パラメータを変化させて前記2種類以上のペースト試料を混合することで組成の異なる複数の導電性ペーストを基板上の所定の位置に調製するコンビナトリアル試料調製手段と、
    前記複数の導電性ペーストを焼成して複数の焼成体を形成する焼成手段と、
    前記複数の焼成体の電気伝導率を測定する手段と、
    前記複数の焼成体の組成分析を行う手段と、
    前記焼成体の各々について、前記2種類以上のペースト試料の配合割合を前記組成分析の結果に基づき補正し、該補正後の配合割合と前記電気伝導率の測定結果との関係から、前記複数の導電性ペーストの調製条件を評価する手段、
    とを備える、導電性ペーストの調製条件評価システム。
  2. 前記ペースト試料は、導電性粒子と、バインダと、溶媒とを含み、
    25℃、10rpmでの粘度が10Pa・s〜2000Pa・sである、請求項1に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  3. 前記コンビナトリアル試料調製手段は、前記複数の導電性ペーストのそれぞれを10g以下の量で調製可能に構成されている、請求項1または2に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  4. 前記電気伝導率を測定する手段は、前記複数の焼成体に対する測定を、1回の測定操作で同時に測定可能に構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  5. 前記電気伝導率を測定する手段は、前記複数の焼成体の電気伝導率を500℃以上の高温で測定可能に構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  6. さらに複数の焼成体の熱膨張率を測定する手段を備え、
    前記調製条件を評価する手段は、前記熱膨張率の測定結果を含めて前記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  7. 前記熱膨張率を測定する手段は、酸化雰囲気および還元雰囲気における前記焼成体の熱膨張率を測定する機能を備え、
    前記調製条件を評価する手段は、前記焼成体の酸化雰囲気および還元雰囲気における熱膨張率の測定結果から次式(1):
    Figure 0005922561
    で定義される還元膨張率の算出が可能であるとともに、
    前記還元膨張率を含めて前記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されている、請求項6に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  8. 前記熱膨張率を測定する手段は、測定雰囲気の制御が可能で、少なくとも室温から1200℃の高温までの領域における結晶構造解析が可能な機能を備え、
    前記調製条件を評価する手段は、測定温度範囲における格子定数の変化に基づき前記還元膨張率を算出し、
    該還元膨張率を含めて前記複数の導電性ペーストの調製条件を評価可能に構成されている、請求項7に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  9. 前記結晶構造解析が可能な機能は、X線回折分析装置である、請求項8に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
  10. 前記焼成手段は、焼成温度を少なくとも一つのパラメータとし、該パラメータを変化させて前記複数の混合試料を焼成することで複数の焼成体を形成可能に構成されており、
    前記調製条件を評価する手段は、前記複数の導電性ペーストの調製条件として前記パラメータを含めて評価可能に構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性ペーストの調製条件評価システム。
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