JP5918529B2 - ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法、予備発泡粒子の製造方法、及び、ビーズ発泡成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
この種のビーズ発泡成形体は、例えば、発泡剤を含有させたポリスチレン系樹脂粒子を一旦発泡させて予備発泡粒子を作製し、この予備発泡粒子を型内で加熱して予備発泡粒子どうしを熱融着させる型内成形が実施されて形成されたりしている。
また、この種の用途に利用される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、下記特許文献1に示されているように、発泡剤を含有していないポリスチレン系樹脂粒子を予め作製した後に発泡剤を含浸させる方法や、押出機で発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練して、得られた溶融混練物を水中に押出しつつペレット状に切断する方法などによって作製されている。
そのために、これらの出発材料となるポリスチレン系樹脂粒子に界面活性剤や高分子型帯電防止剤を含有させることが従来行われている。
なかでも、高分子型帯電防止剤は、ポリスチレン系樹脂などに対して親和性の高いブロックと、ポリスチレン系樹脂などに対しては親和性の低い帯電防止効果を発揮するブロックとを有するブロック共重合体などを主成分としており、例えば、ポリスチレン系樹脂粒子に含有させた際には、帯電防止効果を発揮するブロックを樹脂粒子の表面に存在させながらもポリスチレン系樹脂に対して親和性の高いブロックを有することでポリスチレン系樹脂粒子からブリードアウトされてしまうことが抑制される。
したがって、高分子型帯電防止剤を含有させることでポリスチレン系樹脂粒子やビーズ発泡成形体の表面における帯電防止機能を長期持続させることができる。
即ち、予備発泡粒子やビーズ発泡成形体に高分子型帯電防止剤によって帯電防止効果を付与しようとするとビーズ発泡成形体の強度を低下させるおそれを有する。
従って、ポリスチレン系樹脂粒子が用いられてなるビーズ発泡成形体に高分子型帯電防止剤を含有させた際に強度を低下させるおそれを有するという問題はこれまでに解決されてはいない。
融点が190℃以上であることが好ましく、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエーテル
エステルアミドとの合計に占める前記ポリエーテルエステルアミドの割合が5質量%以上
30質量%以下であることが好ましい。
しかも、前記高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドがポリスチレン系樹脂粒子に含有されることから型内成形における予備発泡粒子どうしの熱融着を良好なものとすることができビーズ発泡成形体の強度低下を抑制させ得る。
まず、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成している原材料について説明する。
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のベース樹脂となる前記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂としては、上記のようなホモポリマーやコポリマーを一種単独でのみ用いる必要はなく複数種類のものを混合して用いることができる。
なお、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)とは、前記スチレン系単量体など以外にブタジエンなどのゴム成分を含有するものであり、例えば、該ゴム成分がスチレン系単量体と共重合しているコポリマーや、該コポリマーと他のホモポリマーあるいはコポリマーとのブレンド樹脂などが挙げられる。
また、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とは、添加剤等を除いた殆どの成分が実質上スチレンモノマーのみで構成されたものである。
これらのポリスチレン系樹脂は、いずれも、多くの種類が市販されており、求める特性のものが入手容易であるばかりでなく比較的安価である点においても好適である。
なお、メルトフローレートが、20g/10minを超えるようなポリスチレン系樹脂は一般的に溶融張力が低く、発泡させるには不適なものとなることがある点においても、前記ポリスチレン系樹脂は、メルトフローレートが20g/10min以下であることが好ましい。
なお、ポリエーテルエステルアミドとは、ポリアミドをハードセグメント、ポリオキシアルキレングリコールをソフトセグメントとし、下記のような構造を有している。
しかし、ポリエーテルエステルアミドを過度に含有させると予備発泡粒子どうしを十分に熱融着させることが難しくなる。
また、高分子型帯電防止剤は、通常、ポリスチレン系樹脂に比べて高価であるため、コスト面からもポリスチレン系樹脂粒子への過度の添加は好ましいものではない。
一方で、予備発泡粒子やビーズ発泡成形体に帯電防止性を発揮させる上においてはある程度の割合となるようにポリエーテルエステルアミドをポリスチレン系樹脂粒子に含有させることが好ましい。
通常、ポリスチレン系樹脂が用いられてなるビーズ発泡成形体は、見掛け密度が0.1g/cm3以下(0.01g/cm3以上)となるように発泡されており、帯電防止性が求められる際においては、その表面抵抗率を1×108Ω/□〜1×1013Ω/□程度とすることが求められる。
従って、ポリエーテルエステルアミドは、例えば、上記のような見掛け密度となるように発泡がされたビーズ発泡成形体に前記のような表面抵抗率を付与させうる程度にポリスチレン系樹脂粒子に含有されることが好ましい。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂粒子には、ビーズ発泡成形法において用いられているその他の発泡剤を適宜含有させてもよい。
例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、顔料、充填剤などを適宜含有させることができる。
また、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては、帯電防止性能を高めるために必要に応じてポリエーテルエステルアミド以外の高分子型帯電防止剤や、アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、界面活性剤等を本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させてもよい。
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、従来、ビーズ発泡成形用の樹脂粒子を作製するのに用いられている方法を採用することができ、一旦発泡剤以外の材料を溶融混練して該溶融混練物を造粒し発泡剤を含有していないポリスチレン系樹脂粒子を作製した後に該ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる含浸法や、発泡剤を含んだポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練して該溶融混練物を冷却水中に押し出して造粒する押出法を採用することができる。
この押出法においては、一旦、ストランド(紐)状に押し出した後にペレタイズする方法、水中でホットカットして造粒する所謂水中ホットカット法のいずれをも採用可能である。
通常、球状の場合の粒径は、通常、直径0.3〜2.0mm程度であり、円柱状の場合は、直径0.5〜1.5mm、長さ2.0〜8.0mm程度の大きさとされる。
例えば、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を常圧下、100℃程度の水蒸気にて加熱する方法を採用して予備発泡粒子を作製することができる(予備発泡工程)。
また、例えば、この予備発泡粒子を成形型に充填し、該成形型内で加熱膨張させて発泡粒子どうしを熱融着させる型内成形工程を実施することによりビーズ発泡成形体を得ることができる。
しかも、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドが用いられていることから型内成形に際して予備発泡粒子どうしの熱融着性が他の高分子型帯電防止剤を用いる場合に比べて良好なものとなり、得られるビーズ発泡成形体を強度に優れたものとすることができる。
評価用のポリスチレン系樹脂粒子の作製にあたっては、以下の材料を用いた。
(A)ポリスチレン系樹脂
A1:東洋スチレン社製、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、商品名「トーヨースチロールHRM26」、MFR 1.4g/10min(JIS K 7210の条件H)
A2:東洋スチレン社製、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)、商品名「トーヨースチロールE641N」、MFR 2.7g/10min(JIS K 7210の条件H)
(B)高分子型帯電防止剤
B1:三洋化成工業社製、商品名「ペレスタットNC6321」(ポリエーテルエステルアミド)、融点203℃、MFR 20g/10min(215℃、21.18N)
B2:三洋化成工業社製、商品名「ペレスタット300」(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとを有するブロック共重合体)、融点163℃、MFR 12g/10min(190℃、21.18N)
B3:三洋化成工業社製、商品名「ペレスタット230」(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとを有するブロック共重合体)、融点135℃、MFR 30g/10min(190℃、21.18N)
B4:三井・ディポンポリケミカル社製、商品名「エンティラMK400」(アイオノマー樹脂)、融点91℃、MFR 1g/10min(190℃、21.18N)
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製)
GPPS(A1:東洋スチレン社製「トーヨースチロールHRM26」)を88質量%、高分子型帯電防止剤(B1:三洋化成工業社製「ペレスタットNC6321」)を12質量%の割合で含む混合樹脂に対して該混合樹脂100質量部に対する割合が0.3質量部となるように微粉末タルクを加え、これを予めタンブラーミキサーにて均一に混合した上で毎時150kgの割合で口径90mm(L/D=35)の単軸押出機へ供給し、該単軸押出機で溶融混練を行った。
この溶融混練に際しては押出機内の最高温度を220℃に設定して前記混合樹脂を溶融させた後、該混合樹脂100質量部に対する割合が5質量部となるように発泡剤(イソペンタン)を押出機の途中より圧入した。
そして、押出機先端部での樹脂温度が180℃となるように冷却しながら溶融樹脂をこの発泡剤圧入箇所よりも押出機の先端側に移動させ、該移動中に溶融樹脂と発泡剤とをさらに混練させた。
次いで、前記押出機の先端に設けられたダイバーター(押出機とダイスの連結部:温度185℃に保持)を通じて溶融樹脂を造粒用ダイスに搬送し、該造粒用ダイスに円周状に配置した8個の目皿(直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルが25個設けられている目皿)を通じて40℃の冷却水が循環するチャンバー内に前記溶融樹脂を押出させた。
そして、前記目皿の設置箇所に沿って回転する10枚の回転刃を有する高速回転カッターを前記チャンバー側に配置し、前記ノズルから押出され前記冷却水で冷却された溶融樹脂を毎分3000回の回転数で回転させた前記回転刃によって切断し、脱水乾燥して略球形状の実施例1のポリスチレン系樹脂粒子(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)を作製した。
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を20℃で1日放置した後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.1質量部を添加、混合して樹脂粒子表面に被覆した後、小型バッチ式予備発泡機(内容積40L)に投入して、撹拌しながら、吹込み圧0.05MPa(ゲージ圧)の水蒸気により加熱して、嵩発泡倍数10倍(嵩密度0.1g/cm3)の予備発泡粒子を作製した。
前記予備発泡粒子を23℃で1日熟成させた後、400×300×30mmの内部寸法を有するテスト用金型を取り付けた自動成形機(積水工機製作所製、ACE−3SP2型)を用いて、下記成形条件で型内成形して発泡倍数10倍(密度0.1g/cm3)のビーズ発泡成形体を作製した。
成形条件(ACE3−SP2)
成形蒸気圧:0.08MPa(ゲージ圧)
金型加熱 :5秒
一方加熱 :15秒
逆一方加熱:5秒
両面加熱 :20秒
水冷 :300秒
設定取出し面圧:0.02MPa
(表面抵抗率)
得られたビーズ発泡成形体に対して、
JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法により表面抵抗率の値を測定した。
具体的には、一辺が10cm、厚みが5mmとなる平面正方形状の試験片を温度22℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置した後、温度22℃、湿度60%の環境下、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ただし、
ρs:表面抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
また、測定は3回実施し、それぞれの算術平均値を求めた。
長さ400mm、幅300mm、厚み30mmの扁平直方体形状の試験体(ビーズ発泡成形体)を作製し、該試験体の表面(400mm×300mmの面)に長辺の中心どうしを結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約3mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って試験体を手で2分割し、この切り込みを入れた部分以外の破断面において、発泡粒子自体が破断している数(a)と隣接する粒子との界面で破断している粒子の数(b)とを数え、下記式(1)を計算して得られた値を融着率(%)とした。
〔(a)/((a)+(b))〕×100 ・・・式(1)
ビーズ発泡成形体として、底部に長さ90mm×巾80mm×高さ20mmのブロック状の突起が複数個所に設けられている長さ550mm×巾400mmのトレーを実施例1のポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を用いて作製した。
このトレーは、底部の肉厚が6mmと比較的ビーズ発泡成形体としては薄手になっているが、手に取って普通に扱うことができる強度上問題のないものであった。
高分子型帯電防止剤とポリスチレン系樹脂との配合割合、或いは、用いる高分子型帯電防止剤を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にポリスチレン系樹脂粒子を作製し、ビーズ発泡成形体の評価を実施した。
このことからも本発明によればビーズ発泡成体に高分子型帯電防止剤で帯電防止性を付与しながらも当該ビーズ発泡成形体の強度が低下することを抑制させ得ることがわかる。
Claims (5)
- ポリスチレン系樹脂とともに高分子型帯電防止剤が含有されており、発泡されてビーズ発泡成形体の形成に用いられるポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂、前記高分子型帯電防止剤、及び、発泡剤を含み、且つ、該発泡剤としてブタン又はペンタンを含む溶融混練物を水中に押し出しつつ切断することによって造粒し、
該造粒によって作製されるポリスチレン系樹脂粒子は、
前記発泡剤が含有されている発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であり、
且つ、前記高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドが含有されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。 - 前記ポリエーテルエステルアミドの融点が190℃以上である請求項1記載のポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 作製されるポリスチレン系樹脂粒子は、
前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエーテルエステルアミドとの合計に占める前記ポリエーテルエステルアミドの割合が5質量%以上30質量%以下である請求項1又は2記載のポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。 - 発泡剤を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて、ビーズ発泡成形体の形成に用いられる予備発泡粒子を作製する予備発泡粒子の製造方法であって、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させることを特徴とする予備発泡粒子の製造方法。 - 発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を型内成形してビーズ発泡成形体を作製するビーズ発泡成形体の製造方法であって、
請求項4に記載の予備発泡粒子を型内成形することを特徴とするビーズ発泡成形体の製造方法。
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