JP5916568B2 - 電子ビーム加工機及びその電子ビーム加工機の調整方法 - Google Patents

電子ビーム加工機及びその電子ビーム加工機の調整方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子ビームを磁場偏向で2段偏向する電子ビーム加工機及びその電子ビーム加工機の調整方法に関する。
従来の電子ビーム加工機は、主に半導体基板へのビーム照射に適用されていた。偏向領域は10mm角程度と小さいため、静電偏向による偏向が可能であった。また、偏向器の内径に対して偏向領域が小さいため、偏向収差の発生量も小さく、第一偏向器と第二偏向器は同じ形状、同じ内径の偏向器を組み合わせていた。
例えば、特許文献1では、集束レンズの後段に同じ径の2つの偏向器を設けそれぞれX軸、Y軸の2軸の偏向機能を有する電子ビーム装置が開示されている。偏向は静電偏向、電磁コイルによる磁場偏向の両方について示されている。
また、特許文献2では、軸方向に長い集束レンズ内に同じ径の2つの偏向器を設け電子ビームを2段偏向した電子ビーム装置が示されている。
特開平3−89440号公報(第3頁、図1〜図3) 特開平1−213948号公報(第7頁〜第10頁、第1図)
溶接や熱加工に使われる電子ビーム加工機では、ビームを照射するワークが10mm〜100mmと大きく、広い偏向領域と高いビーム照射位置の精度が必要である。
また、偏向歪、偏向収差を少なくし加工位置誤差を低減するために、内径の大きな偏向器が必要になる。また、大きな偏向領域を得やすい電磁コイルを用いた磁場偏向を適用する。
上記のような100mmといった大きな偏向領域を実現するためには、偏向器の内径φは200mm程度になる。
上記特許文献1及び特許文献2のように、同じ径の大きな偏向器を2段にした場合、電子ビーム加工機が大きくなるので、重くなる、組立てが困難になる、偏向器のコスト、電子ビーム加工機のコストが高くなるという問題がある。
この問題に対して、第一偏向器の内径を小さくし第二偏向器の内径を大きくした構成が効率的である。しかし、この構成では、それぞれの偏向器の電気特性、偏向感度が異なるため、高速偏向において、それぞれの偏向器の応答性に差が生じ、電子ビームの過渡的な照射位置誤差が大きくなるという問題がある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、大きな偏向領域が実現でき、小型化でき、電子ビーム照射位置を高速移動させた時の、過渡的な電子ビーム位置決め精度を向上させることができる電子ビーム加工機を得ることを目的とする。
本発明に係る電子ビーム加工機は、被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備えた電子ビーム加工機において、
上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、かつ、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数を上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数より少なくし、
上記第一偏向器及び第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧を同じとし、
上記第一偏向器の偏向コイルの内径をd1、巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの内径をd2、巻き数をn2としたときに、
下記式(1)の関係を満たすようにしたことを特徴とする電子ビーム加工機。
0.8≦(n1・d1)/(n2・d2)≦1.2・・・式(1)
また、被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備えた電子ビーム加工機において、
上記第一偏向器の偏向コイルの内径d1に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径d2が大きく、
上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数と上記第二偏向器のコイルの巻き数とを同じにし、
上記第一偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧をVom1、上記第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧をVom2とし、上記Vom1及びVom2が下記式(2)の関係を満たすようにしたものである。
Vom2/Vom1=d2/d1・・・式(2)
また、被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きい電子ビーム加工機において、
上記偏向電源の同じ出力電圧を与えた時の上記第一偏向器の偏向コイルのインダクタンスL1、上記第二偏向器の偏向コイルのインダクタンスL2と、同じ偏向角を偏向するのに必要な、上記第一偏向器の電流I1及び上記第二偏向器の電流I2と、上記第一偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧Vom1及び第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧Vom2とに、
下記式(3)の関係を有するものである。
Vom2/Vom1=(I2・L2)/(I1・L1)・・・式(3)
本発明に係る電子ビーム加工機の調整方法は、被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向キルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2とした電子ビーム加工機において、
上記第一偏向器の目標偏向角θへの到達時間t1及び上記第二偏向器の上記目標偏向角θへの到達時間t2を計測し、
上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1からn1・(t2/t1)または上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2からn2・(t1/t2)に調整するものである。
また、被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2とした電子ビーム加工機において、
上記第一偏向器の偏向コイルのインダクタンスL1、上記第二偏向器の偏向コイルのインダクタンスL2、同じ偏向角を偏向するのに必要な、上記第一偏向器の電流I1及び上記第二偏向器の電流I2を測定し、
上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1からn1・(I2・L2)/(I1・L1)または上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2からn2・(I1・L1)/(I2・L2)に調整するものである。
本発明の電子ビーム加工機は上記のように構成されているため、大きな偏向領域が実現でき、小型化できる電子ビーム加工機が得られ、また、電子ビーム照射位置を高速移動させた時の、過渡的な電子ビーム位置決め精度を向上させることができる。
また、本発明の電子ビーム加工機の調整方法は上記のように構成されているため、大きな偏向領域が実現でき、小型化できる電子ビーム加工機が得られ、また、電子ビーム照射位置を高速移動させた時の、過渡的な電子ビーム位置決め精度を向上させることができる。
本発明に係る電子ビーム加工機の実施の形態1を示す構成図である。 1段偏向溶接を示す模式図である。 2段偏向溶接を示す模式図である。 偏向電源と偏向器の電気回路構成の例を示す図である。 偏向電源の入力電圧Vin、出力電圧Vout、出力電流Iの時間変化を示す図である。 第一偏向器の断面の模式図である。 第二偏向器の断面の模式図である。 偏向器の偏向器コア内径と偏向器の磁路長との関係を説明するための側面断面図(a)及び平面図(b)である。 コイルの巻数を同じにした場合の第一偏向器、第二偏向器の偏向信号X1,X2、偏向電源6の出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2を示す図である。 コイルの巻数を同じにした場合の電子ビーム偏向の過渡的変化を示す図である。 コイルの巻数を同じにした場合のワーク上の電子ビーム軌跡を示す図である。 実施の形態1の第一偏向器、第二偏向器を用いた場合の第一偏向器、第二偏向器の偏向信号X1,X2、偏向電源6の出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2を示す図である。 実施の形態1の電子ビーム偏向の過渡的変化を示す図である。 実施の形態1のワーク上の電子ビーム軌跡を示す図である。 本発明の実施の形態1で用いた偏向器の例を示す平面図である。 本発明の実施の形態1で用いた偏向器の例を示す平面図である。 第一偏向器4及び第二偏向器5の入力信号X1,X2、出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2の応答を示す図である。 本発明に係る電子ビーム加工機の実施の形態3を示す構成図である。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る電子ビーム加工機の実施の形態1を示す構成図である。図1に示したように、本実施の形態1の電子ビーム加工機は、真空容器9内の被加工物であるワーク8上に照射する電子ビーム2を発生する電子銃1、電子ビーム2を集束させる集束レンズ3、集束レンズ3で集束された電子ビーム2を偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器4及び第一偏向器4で偏向した電子ビームを偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器5を備えている。また、偏向信号を発生する信号発生器7、偏向信号をもとに偏向電流を発生し偏向電流を第一偏向器4及び第二偏向器5の偏向コイルに供給する偏向電源6を備えている。
電子銃1は、熱電子を発生するためのフィラメント、電子ビーム2を成形しビーム電流を制御するための電極、電子ビーム2を加速するための電極等で構成される。これらの電極は図1では省略している。
信号発生器7、偏向電源6、第一偏向器4及び第二偏向器5はX軸方向及びY軸方向の2軸の偏向機能を有する。なお、本実施の形態1では、2軸の偏向機能を有する場合について説明しているが、本発明は、少なくとも一軸の偏向機能を有するものに適用できる。
図1においては、真空容器9内を真空に排気する真空排気装置、電子ビーム2を加速するための加速電源、フィラメント加熱電源、電子ビーム電流制御電源の電源、集束レンズの電源は省略している。また、偏向収差を補正するためのスティグメータ、ダイナミックフォーカス等の補正レンズ、これらの信号発生器や電源も省略している。
電子ビーム2を機械部品や電子部品の溶接や熱加工に適用する場合、部品の大きさは10mm〜100mmが対象となり、偏向領域として100mm×100mmの領域または円形のφ100mmの領域が必要になる。静電偏向の場合、このような大きな偏向領域を実現するためには電子ビームの加速電圧に相当する10kV程度の電圧が偏向に必要になり、偏向電源や偏向電極及び配線系の絶縁等が複雑になってしまう。そのため、電子ビーム加工機では大きな偏向角が容易に得られる磁場偏向が用いられ、電磁コイルの偏向器が使われる。
1段偏向の場合、電子ビームは偏向器の中心軸近くを通るため、大きな収差も発生しない。収差の補正も容易である。一般的に偏向器の内径として40〜60mmが使われる。2段偏向の場合、1段目の偏向器は1段偏向の場合と同様とし、内径40〜60mmの偏向器を適用し、2段目の偏向器は1段目の偏向器で偏向された電子ビームが通過し、偏向器の中心軸から離れた位置を通過し、内径が小さい場合は大きな収差が発生するため、2段目の偏向器の内径を大きくし、偏向領域100mm×100mmを得ようとする場合は内径200mm程度の偏向器が必要になる。
また、第一偏向器4を第二偏向器5と同等の大きな内径にすると、偏向系が大型になり電子ビーム加工機が大きくなり、製造費用が高くなる等の問題が生じるため、第一偏向器4は小径にし、第二偏向器5の径を大きくすることによって小型化を実現することができる。
図2は、1段偏向溶接を示す模式図であり、図3は、2段偏向溶接を示す模式図であり、円柱状の部品を四角ブロック内の円筒状くりぬき部に嵌め合わせたワーク8の溶接例である。図2に示した1段偏向の場合、溶接ビードの溶け込み方向が偏向により傾くため、大出力の電子ビームを照射して溶け込み深さを深くすると、溶け込みが所定の位置から径方向外側に外れる目はずれが生じる。
図3に示した2段偏向の場合、第一偏向器4と第二偏向器5を連動させた偏向溶接が可能であり、大出力の電子ビームを照射し溶け込み深さが深くなっても、目はずれなく、部品同士の接合面積を大きくでき信頼性の高い溶接が可能になる。
従来のように、XYステージや回転ステージでワーク8を動かしながら、電子ビーム2を照射して加工していた場合に比べ、電子ビーム2の2段偏向を用いることで、加工時間の短縮や入熱量の細かな制御が可能となる。
すなわち、電子ビーム偏向では、電子ビーム2の照射位置を高速に移動させる高速偏向が可能である。通常の溶接での電子ビーム移動速度は0.5〜3m/min(8.3〜50mm/s)であるが、高速偏向の電子ビーム移動速度は10000m/minに達する。また、偏向により電子ビーム移動速度を通常の溶接速度から高速偏向速度に容易に切り替えることができる。また、高速偏向時はワーク8への熱影響はきわめて小さくなる。電子銃1の制御による電子ビーム電力のON−OFF制御は電力のスロープアップ、スロープダウンに時間がかかる。電子ビーム偏向では、ビーム照射位置の移動速度を変え、高速で移動させることによって等価的にビームOFFとし、移動速度を遅くすることによって等価的にビームONにすることができる。ビーム高速偏向を用いると、偏向領域内の多数の小物ワークを配置して、連続して溶接する多数個の一括溶接や、1本のビームを偏向により時分割により2箇所あるいは3箇所に高速移動して照射することにより2ビードあるいは3ビード溶接が可能である。
2段偏向においても高速偏向が有効であるが、溶接実験の結果、次の課題が生じることがわかった。第一偏向器4と第二偏向器5の内径が異なるために偏向特性、偏向電流の立ち上がり特性に差が生じ、電子ビームの移動が乱れることにより、過渡的な照射位置誤差が大きくなるという問題がある。
この問題に対して、本発明は、第二偏向器5の偏向コイルの内径を第一偏向器4の偏向コイル内径より大きくし、かつ、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数を第一偏向器4の偏向コイルの巻き数より少なくしたものである。
以下に、詳細に説明する。偏向量の指令値が高速で移動する指令(ステップ波形)を与えた場合、偏向電源6は最大電圧を出力する。このとき、電流の立ち上がり速度は電圧と偏向器のインダクタンスで決まる。この電流の立ち上がり速度が最大偏向速度に相当する。
1段目の第一偏向器4と2段目の第二偏向器5の内径が異なる場合、コイル巻数が同じであれば、内径の大きな第二偏向器5のインダクタンスが大きくなる。偏向電源6の共通化のために、第一偏向器4と第二偏向器5の電源電圧は通常同一であり、インダクタンスの大きな第二偏向器5の偏向速度が遅くなるという問題がある。
この問題に対して、偏向電源6の最大出力電圧を高くしようとすると、偏向電源6への供給電源の電圧の高電圧化による解決策もあるが、本実施の形態1では、偏向電源6への供給電源の電圧は高圧化せず、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数を第一偏向器4の偏向コイルの巻き数より少なくすることによってこの問題を解決するものである。
偏向器のインダクタンスと電流スルーレートの関係について詳細に説明する。
図4は、偏向電源と偏向器の電気回路構成の例を示す図である。偏向電源は、定電流制御したOPアンプ回路で構成している。図4に示したように、OPアンプ11、入力抵抗12、フィードバック抵抗13、電流検出抵抗14を備え、偏向コイル15に出力電流Iを供給する。偏向コイル15のインダクタンスはLである。
図4において、電流検出抵抗14は偏向コイル15に流れる偏向電流を検出し、偏向電流が指令値である入力電圧Vinに相当する出力電流Iとなるようにフィードバック抵抗13によりフィードバック制御されている。図5は、偏向電源の入力電圧Vin、出力電圧Vout、出力電流Iの時間変化を示す図である。出力電圧Voutが偏向コイル15に加えられる電圧であり、出力電流Iが偏向電流である。OPアンプ11の定電流回路が反転増幅の場合、入力電圧と出力電圧の極性が反転するが、4図では説明の簡略化のため、同極性で示している。図5に示したように、ステップ電圧Vinが入力された場合、出力電流Iを立ち上げようと出力電圧Voutはステップ状に応答する。この時の電流検出抵抗14に流れる電流iと出力電圧の最大値Vomとの関係は次のようになる。
Vom=L(dI/dt)+R・I
(Vom:出力電圧の最大値
R:電流検出抵抗14と偏向コイル15の合計の抵抗値)
ここで、Rは電力ロスを少なくするために数Ω以下に選ばれ、L(dI/dt)に比べて十分小さいのでR・Iを無視すると、
dI/dt=Vom/L・・・式(4)
となる。
上記式(4)のように、電流立上り速度dI/dtは、出力電圧Voutの最大値Vomと偏向器のインダクタンスLで決まる。
次に、偏向器の偏向感度(偏向電流Iと偏向角θの関係)、インダクタンスL、巻数nの関係を説明する。
図6は、第一偏向器4の断面の模式図である。図6に示したように、第一偏向器4は、偏向コイル15、偏向器コア22を備え、偏向磁場23を形成する。図中の矢印方向の電流Iにより、紙面に垂直な上向き方向に磁束が発生し電子ビーム2が偏向される。θは偏向角である。
図7は、第二偏向器5の断面の模式図であり、断面積が異なる以外は第一偏向器4の構成と同様であり、紙面に垂直な下向き方向に磁束が発生し電子ビーム2が偏向される。
偏向コイル15が発生する磁束密度Bは、下記式(5)〜式(8)より下記式(9)となる。
Vm=n・I・・・式(5)
Rm=(μ・l)/S・・・式(6)
Φ=Vm/Rm・・・式(7)
B=Φ/S・・・式(8)
(Vm:偏向コイル起磁力
Rm:偏向器磁気回路の磁路抵抗(コア内の比透磁率が十分大きいため、空隙分 のみを考慮すればよい)
S:偏向器の空隙ギャップの磁路断面積
l:偏向器の空隙ギャップの磁路長
n:偏向コイルの巻数
I:偏向電流
μ:空気の透磁率
Φ:磁束)
B=(n・I)/(μ・l)・・・式(9)
偏向角θは、下記式(10)となる。
θ∝(e・v・B・l)/v
=(e・n・I)/μ・・・式(10)
(v:電子の速度(加速電圧で決まる)
e:電子の荷電価)
また、電気回路上で計算される偏向コイル15にたまるエネルギー(左辺)と磁場のエネルギー(右辺)とは等しいので、下記式(11)となる。
(1/2)・L・I=(1/(2μ))・B・Vol・・・式(11)
(Vol:偏向器の空隙の磁束が通過する領域の体積)
また、Vol≒S・l・・・式(12)
と近似できる。
図8は、偏向器の偏向器コア内径と偏向器の磁路長との関係を説明するための側面断面図(a)及び平面図(b)である。
図8に示したように、偏向コイル15の内径φをdとすると、
S≒d・・・式(13)
l≒d・・・式(14)
と近似できる。
すなわち、電子ビーム加工機では通常、集束レンズ3とワーク8間の距離が大きくならないように、偏向コイル15の厚さは小さく設定される。そのため偏向コイル15の磁路抵抗である空隙の磁路長lはほぼ偏向器内径dと等しくなり、l≒dとなる。
また、偏向器の磁路抵抗である空隙の断面積Sは、幅は偏向器内径dと等しく、高さも磁束の広がりが偏向器内径d程度となるため、断面積=幅×高さとなり、S≒dと近似できる。
上記式(9)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)より、偏向コイル15のインダクタンスLは、下記式(15)となる。
L=(d・n)/μ ・・・式(15)
これら偏向コイル15のインダクタンスL及び偏向角θの関係は下記式(16)及び式(17)のようにまとめられる。
θ=kθ・n・I・・・式(16)
L=k・d・n・・・式(17)
θ:偏向器コア形状で決まるアンペアターンと偏向角の定数
:偏向器コア形状で決まるターン数とインダクタンスの定数
次に、指定した偏向位置へ高速偏向する場合の応答時間を算出する。
偏向角の目標値をθoとする。この偏向角に必要な偏向電流Ioは、下記式(18)で表される。
Io=θo/(kθ・n)・・・式(18)
偏向コイル15にステップ状に立上る偏向電流Ioを流そうとした場合の時間を求める。上記式(4)及び式(17)から、電流立ち上がり(電流スルーレート)は下記式(19)となる。
dI/dt=Vom/L
=Vom/(k・n・d)・・・式(19)
偏向角が0から目標値θoに到達するまでの偏向角到達時間toは、下記式(20)となる。
to=θo/(dθ/dt)
=θo/(n・(dI/dt))
=(k・θo・n・d)/(kθ・Vom)・・・式(20)
これより、第一偏向器4と第二偏向器5のkは同じ値で、n及びdは異なり、Vomは同等の電源を使用するため同じとすると、第一偏向器4と第二偏向器5のtoを同等にするためには、第一偏向器4の内径をd1、偏向コイルの巻数をn1、第二偏向器5の偏向コイルの内径をd2、偏向コイルの巻数をn2とした時に、下記式(21)の関係があればよい。
n1・d1=n2・d2・・・式(21)
また、この関係は厳密な関係ではなく、実験結果によれば、20%程度のずれは加工精度の許容範囲であることが分かった。すなわち、下記式(22)の関係があればよい。
0.8≦(n1・d1)/(n2・d2)≦1.2・・・式(22)
次に、偏向電流Iの応答波形について説明する。
上述したように、第一偏向器4の偏向コイルの内径が第二偏向器5の偏向コイルの内径より小さい場合、コイルの巻数を同じにすると、第二偏向器5のインダクタンスが、第一偏向器4のインダクタンスより大きくなり、インダクタンスLが大きい第二偏向器5は偏向電流Iの応答が遅くなる。図9は、コイルの巻数を同じにした場合の第一偏向器4、第二偏向器5の偏向信号X1,X2、偏向電源6の出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2を示す図である。図10は、この時の電子ビーム偏向の過渡的変化を示す図であり、図11は、この時のワーク8上の電子ビーム軌跡25を示す図である。電子ビーム軌跡25は、始点26から目標点27を一度行き過ぎてから目標点27に戻るというオーバーシュートのある軌跡を描く。2段偏向の場合、深い溶け込みを狙い、大電力のビームを使用しているとオーバーシュートの電子ビーム軌跡25がワーク8上に残る、あるいは、熱容量の小さい部分があった場合には損傷を与えてしまうことがある。
図12は、本実施の形態1の第一偏向器4、第二偏向器5を用いた場合の第一偏向器4、第二偏向器5の偏向信号X1,X2、偏向電源6の出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2を示す図である。すなわち、偏向コイルの巻き数を上記式(22)の関係が成り立つように決めた場合である。図13は、この時の電子ビーム偏向の過渡的変化を示す図であり、図14は、この時のワーク上のビーム軌跡を示す図である。第一偏向器4、第二偏向器5の偏向電流Iの応答速度が同じになり、電子ビーム軌跡25は、オーバーシュートなく始点26から目標点27への軌跡を描き、精度の高いビーム位置決めが可能となり、ワーク8への熱影響がなくなる。
図9、図12の偏向電源6の出力電圧波形では、出力電圧がステップ状に立ち上がるように示したが、実際には有限の立ち上がり速度(電圧スルーレート)になる。
次に、具体的な電子ビーム加工機の例を示す。電子ビームの加速電圧を60kV、ビームの最大電流を100mA、出力6kWの電子ビーム加工機である。
第一偏向器4の偏向コイルの内径φが60mm、偏向コイル15の巻数が400T、インダクタンスLが5.2mHであり、第二偏向器5の偏向コイルの内径φが200mm、偏向コイル15の巻数が120T、インダクタンスLが1.48mHである。偏向器の詳細な構成は、後述する。
この構成により、目標偏向角θ=15°を得るために必要な偏向電流Iは第一偏向器4が2A、第二偏向器5が6.6Aとなり、目標偏向角を0から15°に高速で変化させるために要する時間は、第一偏向器4で0.66ms、第二偏向器5で0.65msが得られ、同期した2段偏向による高速偏向を行うことができ、ワーク8への熱的な損傷を与えることなく、また、オーバーシュートによる位置誤差を低減できた。
本発明で用いた偏向器の構成について説明する。図15、図16は、本発明の実施の形態1で用いた偏向器の例を示す平面図である。
図15及び図16に示したように、偏向器コア22に8個の極P1〜極P8を有する。図中の巻線は偏向器コア22上部の渡り線のみを示している。
また、図15及び図16では、X軸偏向用巻線21XとY軸偏向用巻線21Yを分けて示したが、X軸偏向用巻線21XとY軸偏向用巻線21Yとが1つの偏向器コア22に重ねて巻線されている。
偏向器コア22には、直行する2軸(X,Y)の偏向のための磁場を発生するX軸偏向用巻線21XとY軸偏向用巻線21Yが設けられる。具体的には、偏向器のX軸偏向用巻線21Xは、極P3に巻線N3、極P2、極P3、極P4に共通の巻線N234、極P7に巻線N7、極P6、極P7、極P8に共通の巻線N678が巻かれる。巻線N3、巻線N234、巻線N7、巻線N678は、図15に示したように、下向きに磁束が発生するような電流が流れるように直列接続される。
同様に、Y軸偏向用巻線21Yは、極P1に巻線N1、極P2、極P1、極P8に共通の巻線N218、極P5に巻線N5、極P4、極P5、極P6に共通の巻線N456が巻かれる。巻線N1、巻線N218、巻線N5、巻線N456は、図16に示したように、右向きに磁束が発生するような電流が流れるように直列接続される。
巻線は均一磁場を発生させるために、巻線角度αが大きい場合は巻き数を多くするコサイン巻が施されている。図15及び図16において、第一偏向器4の場合、X軸偏向用巻線21Xは、巻線N3及び巻線N7は60ターン、巻線N234及び巻線N678は140ターンが巻線されており、その結果、極P2及び極P8は140ターン、極P3は200ターン、極P4及び極P6は140ターン、極P7は200ターンの巻線が巻かれており、コサイン巻となっている。Y軸偏向用巻線21Yは、巻線N1、巻線N5は60ターン、巻線N218,巻線N456は140ターンである。
第二偏向器5の場合、巻線N3,巻線N7,巻線N1,巻線N5は18ターン、巻線N234、巻線N678,巻線N218,巻線N456は42ターンである。
以上、8極の偏向器で説明したが、偏向器は8極以外にも例えば24極などの他の極数で構成してもよい。その場合でも本発明と同様の効果が得られる。
以上の説明では、図11及び図14に示したように、1軸偏向(X軸偏向のみ)を示したが、実際は、X軸及びY軸の合成した偏向が第一偏向器4及び第二偏向器5で行われる。
また、図9に示したように、偏向信号X1,X2は所定の偏向位置、偏向角度になるように予め計算されており、信号発生器7から発生される。
上記の偏向電源6の最大出力電圧の説明において、偏向電流が正側に増加する場合を示した。電子ビームの偏向方向が逆方向の場合は、偏向電流を立ち下げるため、上記と同じ値で極性が反対である負の電圧を偏向電源6が発生することになる。
また、この例では、偏向電源6はOPアンプ11で構成した例で説明したが、ディスクリート構成した定電流制御の偏向電源等でも同等の効果が得られる。また、定電圧制御の偏向電源を用いた場合も時定数が同等になるため同様の効果が得られる。但しこの場合、応答性が定電流制御に比べ低いため、電子ビームの制御性が悪くなる。
実施の形態2.
上記実施の形態1において示した偏向位置への到達時間toの式(20)を再録すると、その式(20)において、
to=(k・θo・n・d)/(kθ・Vom)・・・式(20)
第二偏向器5の偏向コイルの内径dの大きさに比例して、偏向電源の最大出力電圧Vomを大きくすると、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数が第一偏向器4の偏向コイルの巻き数と同じでも第二偏向器5による偏向位置への到達時間を第一偏向器4による偏向位置への到達時間と同じにすることができる。
すなわち、第一偏向器4及び第二偏向器5の偏向コイルの巻き数が同じで、第一偏向器4の偏向コイルの内径がd1、偏向電源の最大出力電圧Vom1で、第二偏向器5の偏向コイルの内径がd2、偏向電源6の最大出力電圧Vom2として、下記式(23)の関係を満たすように偏向電源6の最大出力電圧Vom1,Vom2を決めればよい。
Vom2/Vom1=d2/d1・・・式(23)
図17は、その時の第一偏向器4及び第二偏向器5の入力信号X1,X2、出力電圧Vx1,Vx2、偏向電流Ix1,Ix2の応答を示す図である。
具体的には、例えば、第一偏向器4の偏向コイルの内径φを60mm、偏向コイルの巻き数は400T、インダクタンス5.2mHとし、第二偏向器5の偏向コイルの内径φを200mm、偏向コイルの巻き数は400T、インダクタンス16mHとし、偏向電源の最大出力電圧を、第一偏向器4の偏向電源6では15V、第二偏向器5の偏向電源6では48Vで構成した場合、偏向角度を0から15°に高速で変化させるために要する時間は、第一偏向器4で0.69ms、第二偏向器5で0.67msが得られ、同期した2段偏向による高速偏向を行うことができ、ワーク8への熱的な損傷を与えることがなく、また、溶接ビードのオーバーシュートによる位置誤差を低減できた。
実施の形態3.
図18は、本発明に係る電子ビーム加工機の実施の形態3を示す構成図である。図18に示したように、電子ビーム加工機の真空容器9内に組み込んだ第二偏向器5はこれらの偏向器周辺にある筐体や偏向器の固定具31等が鉄等の磁性体の場合、偏向器が発生した磁束32がそれらの磁性体へ流れ込んでしまう場合がある。
磁束32の流れ込みの量により、偏向器のインダクタンスや、偏向感度、偏向電流に対する偏向角が変わる。その場合は、電子ビーム加工機へ偏向器を組み込んだ状態でのインダクタンスと、電流に対する偏向角度により、偏向速度が一定になるように偏向コイルの巻数を調整する必要がある。
上記実施の形態1では、再録する
θ=kθ・n・I・・・式(16)
L=k・n・d・・・式(17)
において、kθ、kの値が第一偏向器4と第二偏向器5で同じ値になる場合、nとdの関係を決めることができた。ここでは、第二偏向器5内の磁場分布が偏向器近傍の磁性材の影響を受け、kθ、kが変わる場合について示す。
上記式(16)及び式(17)のk及びkθを上記式(20)に代入して消去することによって目標偏向角への到達時間は、下記式(24)が求められる。
to=I・L/Vom・・・式(24)
磁場計算や実測により、第一偏向器4と第二偏向器5の、インダクタンスL1,L2や、偏向感度を求めた上で、第一偏向器4と第二偏向器5の目標偏向角への到達時間toが同等になるように偏向コイルの巻き数や偏向電源の電圧の最大値を設定することで同等の効果を得ることができる。
第一偏向器4の偏向コイルの巻数をn1とし、計測したインダクタンスがL1であり、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数をn2とし、計測したインダクタンスがL2である。第一偏向器4及び第二偏向器5で同じ偏向角が得られる電流を計測し、第一偏向器4の電流がI1であり、第二偏向器5の電流がI2である。
偏向電源6の最大出力電圧はともにVomとする。目標偏向角への到達時間を第一偏向器4でt1、第二偏向器5でt2とすると、
t1=(I1・L1)/Vom・・・式(25)
t2=(I2・L2)/Vom・・・式(26)
t1とt2が等しくない場合、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数を調整し、調整後の偏向角への到達時間t2xがt1と等しくなるようにする。調整後の巻き数をn2x、インダクタンスをL2x、同じ偏向角度が得られるコイル電流をI2xとする。
巻き数n2及びコイル電流I2と巻き数n2x及びコイル電流I2xとでは同じ偏向角であるため、下記式(27)となる。
I2・n2=I2x・n2x・・・式(27)
したがって、I2xは下記式(28)となる。
I2x=(n2/n2x)・I2・・・式(28)
また、偏向器のインダクタンスは、巻き数の2乗に比例することから下記式(29)となる。
L2x=(n2x/n2)・L2・・・式(29)
上記式(28)及び式(29)より、t2xは下記式(30)となる。
t2x=I2x・L2x/Vom
=(n2x/n2)・I2・L2/Vom
=(n2x/n2)・t2=t1・・・式(30)
したがって、n2xを下記式(31)または下記式(32)に調整すればよい。
n2x=n2・(t1/t2)・・・式(31)
n2x=n2・(I1・L1)/(I2・L2)・・・式(32)
上記実施の形態3の例では、第二偏向器5の磁場分布が偏向器近傍の磁性材の影響により変わる場合について示したが、第一偏向器4の磁場分布が偏向器近傍の磁性材の影響により変わる場合には、第一偏向器4の巻き数をn1からn1・(t2/t1)またはn1・(I2・L2)/(I1・L1)にすればよい。
次に、具体的な例を示す。電子ビーム加速電圧は60kVとする。
第一偏向器4の偏向コイルの巻き数を400T、インダクタンス5mHとし、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数を400T、インダクタンス20mH、第一偏向器4の偏向感度(偏向角/偏向電流)は15°/2Aであり、第二偏向器5の偏向感度は15°/2.1Aであった。偏向電源6の最大出力電圧はともに24Vである。
この場合の計測結果は、第一偏向器4の偏向角15°への到達時間が0.42ms、第二偏向器5の偏向角15°への到達時間が1.75msであった。
上記式(31)より、第二偏向器5の偏向コイルの巻き数n2を、n2x=400×(0.42/1.75)=96Tに調整した。この調整により、偏向感度は15°/8A、インダクタンスは1.2mH、偏向角15°で、到達時間は、0.4msとなり、ワーク8への熱的な損傷を与えることなく、また、溶接ビードのオーバーシュートによる位置誤差を低減できた。
第二偏向器5の偏向コイルの巻き数を変更した例を示したが第一偏向器4で同じことを行ってもよい。
インダクタンスや偏向感度の変動として、電子ビーム加工機の筐体の磁性体との干渉の例を示したが、偏向器コア22の形状の違いによる磁気抵抗の差も影響する。この場合も、本実施の形態3により、同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態1では、偏向器の高さが偏向器内径に比べ小さい場合の近似を用いた。偏向器の高さが、内径に比べて小さくない場合も、本実施の形態3のようにインダクタンス、偏向感度をもとに偏向コイルの巻き数を決定することで、ビーム照射位置誤差を低減できる。
なお、上記式(25)及び式(26)において、同じ出力電圧を与えて、計測された第一偏向器4の偏向コイルのインダクタンスがL1であり、第二偏向器5の偏向コイルのインダクタンスがL2であり、第一偏向器4及び第二偏向器5で同じ偏向角が得られる電流が、第一偏向器4でI1であり、第二偏向器5でI2であるとき、下記式(33)及び(34)のようにVomを第一偏向器4ではVom1、第二偏向器5ではVom2というように偏向器毎に変えるように構成し、t1=t2、すなわち、下記式(35)の関係を満たすようにそれぞれの偏向電源6の最大出力電圧を選ぶことでも同様の効果を得ることができる。
t1=(I1・L1)/Vom1・・・式(33)
t2=(I2・L2)/Vom2・・・式(34)
t1=t2より
Vom2/Vom1=(I2・L2)/(I1・L1)・・・式(35)
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
本発明に係る電子ビーム加工機は、溶接、熱処理等に有効に利用することができる。
1 電子銃、2 電子ビーム、3 集束レンズ、4 第一偏向器、5 第二偏向器、
6 偏向電源、7 信号発生器、8 ワーク、9 真空容器、15 偏向コイル、
22 偏向器コア、23 偏向磁場、25 電子ビーム軌跡、31 固定具、
32 磁束。

Claims (5)

  1. 被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備えた電子ビーム加工機において、
    上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、かつ、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数を上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数より少なくし、
    上記第一偏向器及び第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧を同じとし、
    上記第一偏向器の偏向コイルの内径をd1、巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの内径をd2、巻き数をn2としたときに、
    下記式(1)の関係を満たすようにしたことを特徴とする電子ビーム加工機。
    0.8≦(n1・d1)/(n2・d2)≦1.2・・・式(1)
  2. 被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備えた電子ビーム加工機において、
    上記第一偏向器の偏向コイルの内径d1に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径d2が大きく、
    上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数と上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数とを同じにし、
    上記第一偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧をVom1、上記第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧をVom2とし、上記Vom1及びVom2が下記式(2)の関係を満たすようにしたことを特徴とする電子ビーム加工機。
    Vom2/Vom1=d2/d1・・・式(2)
  3. 被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きい電子ビーム加工機において、
    上記偏向電源の同じ出力電圧を与えた時の上記第一偏向器の偏向コイルのインダクタンスL1、上記第二偏向器の偏向コイルのインダクタンスL2と、同じ偏向角を偏向するのに必要な、上記第一偏向器の電流I1及び上記第二偏向器の電流I2と、上記第一偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧Vom1及び第二偏向器に対する上記偏向電源の最大出力電圧Vom2とに、
    下記式(3)の関係を有することを特徴とする電子ビーム加工機。
    Vom2/Vom1=(I2・L2)/(I1・L1)・・・式(3)
  4. 被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向コルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2とした電子ビーム加工機において、
    上記第一偏向器の目標偏向角θへの到達時間t1及び上記第二偏向器の上記目標偏向角θへの到達時間t2を計測し、
    上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1からn1・(t2/t1)または上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2からn2・(t1/t2)に調整することを特徴とする電子ビーム加工機の調整方法。
  5. 被加工物であるワーク上に照射する電子ビームを発生する電子銃、上記電子ビームを集束させる集束レンズ、上記集束レンズで集束された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第一偏向器及び上記第一偏向器で偏向された電子ビームを少なくとも一軸方向に偏向するための偏向コイルを卷回してなる第二偏向器、偏向信号を発生する信号発生器、上記偏向信号をもとに偏向電流を発生し、該偏向電流を上記第一偏向器及び第二偏向器の偏向コイルに流す偏向電源を備え、上記第一偏向器の偏向コイルの内径に対して上記第二偏向器の偏向コイルの内径が大きく、上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1とし、上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2とした電子ビーム加工機において、
    上記第一偏向器の偏向コイルのインダクタンスL1、上記第二偏向器の偏向コイルのインダクタンスL2、同じ偏向角を偏向するのに必要な、上記第一偏向器の電流I1及び上記第二偏向器の電流I2を測定し、
    上記第一偏向器の偏向コイルの巻き数をn1からn1・(I2・L2)/(I1・L1)または上記第二偏向器の偏向コイルの巻き数をn2からn2・(I1・L1)/(I2・L2)に調整することを特徴とする電子ビーム加工機の調整方法。
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