以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
(1)第1実施形態
本実施形態に係る3相回転電機の波巻き巻線は、コイル導体がヘリカル状につながり波巻き構成となるようにしたヘリカル巻シート状コイルである。まず、ヘリカル巻シート状コイルについて詳説する。図1は、ヘリカル巻シート状コイルの1相の単位コイル分を示す模式図である。(b)は、コイル導体が巻芯に巻装された状態を示しており、(c)は、(b)において、巻芯を取り除いた状態を示している。(d)は、紙面奥側(A側)のコイル導体の巻装状態(B側からの透視図)を示しており、(e)は、紙面手前側(B側)のコイル導体の巻装状態を示している。
図1の実線は、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。実線で示すコイルユニット1aは、巻線ピッチS10の位置において、紙面手前側(B側)から紙面奥側(A側)の方向に巻装されており、巻線ピッチS10、S16、S22、S28及びS34において、コイルユニット1aは、巻芯の短手方向(巻芯軸に垂直な方向)に直線状に延びるコイル辺部10aが形成されている。図1のB側からA側に向けてコイル導体が巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを往き導体部11aと呼称し、A側からB側に向けて巻装されるときに形成されるコイル辺部10aを還り導体部12aと呼称する。往き導体部11a及び還り導体部12aの同一側端部は、コイル辺部10aと一体に形成されるコイル端部20aによって接続されている。コイル端部20aは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31及びS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21aがそれぞれ形成されている。
図1に示すように、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、往き導体部11aと、1磁極ピッチ分のコイル端部20aと、還り導体部12aと、半磁極ピッチ分のコイル端部20aと、を有するコイル導体をコイル要素4aと呼称する。コイル要素4aが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1aと呼称する。
図1の破線は、実線で示すコイルユニット1aと同様に、巻線ピッチS10の位置から6巻線ピッチ(1磁極ピッチ)毎にコイル導体が巻装された状態を示している。破線で示すコイルユニット1bは、巻線ピッチS10の位置において、紙面奥側(A側)から紙面手前側(B側)の方向に巻装されている点が実線で示すコイルユニット1aと異なる。破線で示すコイルユニット1bは、実線で示すコイルユニット1aと同様に巻線ピッチS10、S16、S22、S28及びS34においてコイル辺部10bが形成されており、コイル辺部10bは、往き導体部11b及び還り導体部12bからなる。また、往き導体部11b及び還り導体部12bの同一側端部は、コイル辺部10bと一体に形成されるコイル端部20bによって接続されている。コイル端部20bは、巻線ピッチS13、S19、S25、S31及びS37において巻き曲げられて、巻き曲げ部21bがそれぞれ形成されている。
コイルユニット1aと同様に、本明細書では、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、往き導体部11bと、1磁極ピッチ分のコイル端部20bと、還り導体部12bと、半磁極ピッチ分のコイル端部20bと、を有するコイル導体をコイル要素4bと呼称する。コイル要素4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されて接続された状態のコイル導体をコイルユニット1bと呼称する。実線で示すコイルユニット1aと破線で示すコイルユニット1bは、シート厚さ方向に対をなしている。
コイルユニット1aのコイル辺部10aとコイルユニット1bのコイル辺部10bとが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形すると、コイル辺部10a及びコイル辺部10bは、巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に2層に亘って2磁極ピッチずつ離間された状態で整列する。紙面奥側(A側)に形成されるコイル辺部10a及びコイル辺部10bを第1層と呼称し、紙面手前側(B側)に形成されるコイル辺部10a及びコイル辺部10bを第2層と呼称する。図1(a)及び(f)は、(b)に示すC側視又はD側視の第1層及び第2層におけるコイル導体の層渡り状態を示している。これらの図では、層間を接続する部分が最短となるようにコイル導体の層渡り状態を模式的に図示している。なお、コイルユニット1a、1bがステータコアに取り付けられた際には、図1に示す巻芯の長手方向(巻芯軸方向)は、可動子磁極の移動方向に相当する。
図2は、ヘリカル巻シート状コイルの3相分を示す模式図である。図2は、図1の(a)〜(f)にそれぞれ対応しており、図2に示す巻線ピッチSは、図1に示す巻線ピッチSに対応している。図3は、図2のAA−AA断面図を示している。本実施形態では、同一スロット内で隣接する実線で示すコイル要素4aと破線で示すコイル要素4bとを一対として、一対のコイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に巻芯の長手方向(巻芯軸方向)に配されている。例えば、図2及び図3に示すように、巻線ピッチS10の第2層と巻線ピッチS16の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS10の第1層と巻線ピッチS16の第2層との間で形成されている。同様にして、1巻線ピッチ進んだ巻線ピッチS11の第2層と巻線ピッチS17の第1層との間でコイル要素4aが形成され、これと対になるコイル要素4bは、巻線ピッチS11の第1層と巻線ピッチS17の第2層との間で形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、可動子磁極の移動方向に、U相(順方向U1)、U相(順方向U2)、W相(逆方向W1)、W相(逆方向W2)、V相(順方向V1)、V相(順方向V2)、U相(逆方向U1)、U相(逆方向U2)の順にコイルが形成されている。本実施形態では、同相のコイルユニット1a、1bが可動子磁極の移動方向に2本隣接しており、同相コイルの巻線単位は4本からなる。同相のコイルユニット1a、1b、1a、1bは、3相回転電機の駆動時に流れる電流方向が一致するように接続されており、12本の巻線単位からなる3相巻線が構成されている。なお、同図に示すように、可動子磁極の移動方向の隣接する各コイル辺部間は、ステータコアの磁極歯部を収容可能に所定間隔1W離間されている。
同図に示すように、X1相(XはU、V、Wのいずれか。以下同じ。)のコイル辺部とX2相のコイル辺部は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、X1相のコイルユニット1a、1bとX2相のコイルユニット1a、1bは、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間している。仮に、X1相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5X1を形成し、X2相のコイルユニット1a、1bを直列接続して相単位コイル5X2を形成し、相単位コイル5X1、5X2を並列接続して、相コイル6Xを形成する場合を想定する。この場合、相単位コイル5X1、5X2は可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチ分、離間しているので、相単位コイル5X1、5X2に発生する誘起電圧は、同相(X相)ではあるが、正確には位相が異なる。これを本明細書では、「電磁気的に位相が異なる」という。そのため、相単位コイル5X1、5X2にそれぞれ発生する誘起電圧が異なり、相内循環電流が生じて3相回転電機の出力が低下する。
図4は、ヘリカル巻シート状コイルの相構成を示す模式図である。図5は、図4におけるU相コイルの接続状態を示す模式図である。本実施形態では、X1相のコイルユニット1aと、X2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X1が形成されている。また、X2相のコイルユニット1aと、X1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X2が形成されている。相単位コイル5X1、5X2は並列接続されて、相コイル6Xが形成されている。3相の相コイル6XはΔ結線されており、同図では、相端子を5T1〜5T3で示している。つまり、相端子5T1、5T2の間にU相コイル6Uが形成され、相端子5T2、5T3の間にV相コイル6Vが形成され、相端子5T3、5T1の間にW相コイル6Wが形成されている。
例えば、所定時刻において、X1相のコイル辺に発生する誘起電圧がX2相のコイル辺に発生する誘起電圧と比べて高いと仮定する。この場合、誘起電圧が相対的に高いX1相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に低いX2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X1が形成される。また、誘起電圧が相対的に低いX2相のコイルユニット1aと、誘起電圧が相対的に高いX1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5X2が形成される。そのため、相単位コイル5X1の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E1とし、相単位コイル5X2の巻線端部間に発生する誘起電圧を5E2とすると、誘起電圧5E1、5E2は等しくなり、X相内に循環電流は生じない。そのため、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。このことは、X1相のコイル辺に発生する誘起電圧がX2相のコイル辺に発生する誘起電圧と比べて低い場合についても同様に言える。
図6は、相コイルに発生する誘起電圧に偏差が生じている状態を示す模式図である。同図は、例えば、ロータの偏芯等によって界磁磁束にばらつきが発生したときに、相コイル6Uに発生する誘起電圧に偏差が生じている状態を示している。界磁磁束にばらつきが生じると、相コイル6Uには、誘起電圧が相対的に高い(誘起電圧5E3)コイル部分6UHと、誘起電圧が相対的に低い(誘起電圧5E4)コイル部分6ULと、が生じる。コイル部分6UHは、ロータの偏芯等によってロータとステータが近づく部分であり、コイル部分6ULは、ロータとステータが遠ざかる部分である。よって、コイル部分6UH、6ULは、可動子磁極の移動方向に180°(機械角)離間しており、誘起電圧5E3、5E4を加算すると増加分と減少分が打ち消しあい、ロータが偏芯していないときの誘起電圧5E1、5E2に対する偏差分は小さくなる。そのため、ロータの偏芯等による界磁磁束のばらつきの影響を受けにくい。また、相コイル6V、6Wに発生する誘起電圧は、相順に120°(電気角)位相がずれるだけなので、相コイル6Uと同様に、ロータの偏芯等による界磁磁束のばらつきの影響を受けにくい。
本実施形態では、相単位コイル6Xの周方向長がステータの周方向長の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成になっている。そのため、例えば、ロータの偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル6Xには、相順に120°(電気角)の位相差を有する略均等な誘起電圧が発生する。よって、相コイル6XをΔ結線にしても内部循環電流は発生しにくい。その結果、3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。
図7は、ヘリカル巻シート状コイルの端部構成(シート端接続)を示す模式図である。同図は、シート厚さ方向視におけるシート両端部の巻線の接続状態を示している。(a)〜(c)は、順にU相〜W相の1相分の接続状態を示しており、(d)は、3相分の接続状態を示している。同図では、図1及び図2と同様に、コイルユニット1aを実線で示し、コイルユニット1bを破線で示している。図中の丸数字は、U相〜W相の相毎の巻線の接続順を示している。相単位コイル5X1、5X2は並列接続されているので、説明の便宜上、相単位コイル5X1の巻線の接続順を1番から始まる丸数字で示し、相単位コイル5X2の巻線の接続順を100番から始まる丸数字で示している。以下、同図(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相及びW相についても同様である。
U1相のコイルユニット1aと、U2相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U1が形成されている。U1相のコイルユニット1aは、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装されている(丸数字1〜5)。U1相のコイルユニット1aは、シート端部の接続点5JU1において、U2相のコイルユニット1bと接続されている。U2相のコイルユニット1bは、接続点5JU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(丸数字6〜11)、相端子5T2に接続されている。
U2相のコイルユニット1aと、U1相のコイルユニット1bと、が直列接続されて相単位コイル5U2が形成されている。U2相のコイルユニット1aは、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装されている(丸数字100〜104)。U2相のコイルユニット1aは、シート端部の接続点5JU2において、U1相のコイルユニット1bと接続されている。U1相のコイルユニット1bは、接続点5JU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(丸数字105〜110)、相端子5T2に接続されている。そして、相単位コイル5U1と相単位コイル5U2とが並列接続されて、相コイル6Uが形成されている。なお、U2相のコイルユニット1a、1bは、U1相のコイルユニット1a、1bに対して可動子磁極の移動方向(紙面右方向)に1巻線ピッチ分、離間しており、コイルユニット1a、1bは、シート厚さ方向に対をなしている。
相端子5T1〜5T3側のシート端部において、3相の相コイル6Xは、Δ結線されている。具体的には、相単位コイル5U1のU2相のコイルユニット1b及び相単位コイル5U2のU1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5V1のV1相のコイルユニット1a及び相単位コイル5V2のV2相のコイルユニット1aに接続されている。同様に、相単位コイル5V1のV2相のコイルユニット1b及び相単位コイル5V2のV1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5W1のW1相のコイルユニット1a及び相単位コイル5W2のW2相のコイルユニット1aに接続されている。また、相単位コイル5W1のW2相のコイルユニット1b及び相単位コイル5W2のW1相のコイルユニット1bは、可動子磁極の移動方向に隣接する相単位コイル5U1のU1相のコイルユニット1a及び相単位コイル5U2のU2相のコイルユニット1aに接続されている。つまり、相端子5T1〜5T3側のシート端部において、隣接する4本のコイル辺部をひとつの単位として、隣接する12本のコイル辺部が相順にΔ結線されている。
本実施形態では、3相の相コイル6XがΔ結線されているので、コイルエンド部において巻線を3箇所で取りまとめることができ、巻線の端部処理が簡単・シンプルであり、コイルエンド部をコンパクトにすることができる。そのため、図15(d)に示す参考形態のように、同相内や相間を引回す引回し線が交差して配線が複雑になることがない。また、中性点を有しないので、中性点を回避する配線が不要である。そのため、中性点を有する場合と比べてコイルエンド部を簡素化、コンパクト化することができる。これらにより、3相回転電機を小型化及び低コスト化することができる。
また、本実施形態では、可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイルの端部において、コイル辺部のつなぎ替えを行うことができるので、コイル製作が容易であり、作業性が向上する。また、コイル辺部をつなぎ替える同相のコイル端部がシート厚さ方向に積み重ならないので、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部をコンパクトにすることができる。さらに、本実施形態では、可動子磁極の移動方向のシート端部でコイル同士が接続されているので、相単位コイル5X1、5X2のコイルユニット1a、1bをそれぞれ巻装した後にコイルユニット1a、1b間の接続をすることができ、コイル製作が容易であり、作業性が向上する。
次に、ヘリカル巻シート状コイルの巻線について説明する。本実施形態では、巻線の導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。巻線の断面形状は、特に限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の巻線を用いることができる。また、複数のより細い巻線素線を組み合わせたものでも良い。コイルユニット1a、1bは、例えば、巻芯に巻線をヘリカル状に巻装して成形することができる。巻線は、1本毎に巻芯に巻装しても複数本を同時に巻装しても良い。巻線ピッチSを確保するために、巻芯にピンや溝等を設けて、ピンや溝をガイドにして巻装することもできる。そして、図2に示すように、すべての巻線を巻装後に巻芯を巻線から取り除き、一対のコイルユニット1a、1bを形成するコイル辺部10a及び10bが紙面垂直方向に隣接して密着するように加圧成形する。加圧成形の際に巻線が損傷する場合を考慮して、加圧成形後に補修用樹脂コーティング等を施しても良い。
本節最後に、ステータコアへのヘリカル巻シート状コイルの装着方法を説明する。図8は、ヘリカル巻シート状コイルがステータコアの径方向に巻き重ねられている状態を示す模式図である。本実施形態では、2層からなるヘリカル巻シート状コイル3がステータコアの径方向に巻き重ねられており、ロータ及びステータが径方向に同芯に配されるラジアル型の円筒状3相回転電機として用いることができる。
ステータコアにヘリカル巻シート状コイル3を装着する場合には、まず、ヘリカル巻シート状コイル3を渦巻き状に巻き上げて、ステータコアの内周側に収容し、渦巻き状ヘリカル巻シート状コイル3の外周側シートから巻きほどきながらステータコアに取り付ける。また、渦巻き状ヘリカル巻シート状コイル3の全てをステータコアの内周側に収容することができない場合は、収容できない部分又は全てをステータコアの軸方向端部の外側より、平面状ヘリカル巻シート状コイルにて供給して、渦巻き状に巻きとりつつステータコアに取り付けても良い。
ステータコアにヘリカル巻シート状コイル3を装着後は、相端子5T1〜5T3における接合及び引き出し処理を行う。本実施形態では、図7に示すように、シート端接続によってヘリカル巻シート状コイル3の端部構成がなされるので、シート端部の接続点5JX1、5JX2における巻線の接合も併せて行う。3相分の接合後に接合部を絶縁処理して、ワニスの含浸、樹脂モールド等によって巻線をステータコアに固定する。
本実施形態では、同一スロット内で隣接するコイル要素4a、4bを一対として、コイル要素4a、4bが2磁極ピッチ毎に可動子磁極の移動方向に配されているので、可動子磁極の移動方向のコイル要素4a、4b間の相対的な位置関係を保持することができる。さらに、厚さ方向に2層に形成されるコイル辺部10a、10bの異なる層に配される往き導体部11a、11b及び還り導体部12a、12bは、コイル端部20a、20bによってヘリカル状につながり波巻き構成となるように順に接続されてコイルユニット1a、1bが形成されているので、コイル端部20a、20bにて構成導体毎に整列して規則正しく層間を渡らせることができる。そのため、コイル端部20a、20b同士の重なりを3次元的に、きめ細かく回避することができ、コイル端部20a、20bの占積率が向上してコイル端部20a、20bの占有スペースを小さくすることができる。また、コイル端部20a、20bを短くしてコンパクトにできるので、漏れリアクタンスを減少させることができる。さらに、コイル辺部10a、10bがつなぎ替えられる可動子磁極の移動方向のシート端部を除いて、全節巻の波巻き構成となるように巻装されているので、全節巻部分のコイル端部高さを均一にすることができる。
また、本実施形態では、相単位コイル5X1、5X2が並列接続されているので、直列接続の場合と比べて巻線の素線断面積を半減させることができ、コイル導体部に発生する渦電流損を低減させることができる。さらに、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になり、ステータコアへの組付け作業等の作業性も向上する。
(2)第2実施形態
本実施形態は、第1実施形態と比べて、ヘリカル巻シート状コイルの端部構成が異なる。図9は、ヘリカル巻シート状コイルの端部構成(シート端引回し)を示す模式図である。同図に示す端部構成は、図7に示す端部構成と比べて、紙面右方向のシート端部にコイルユニット1a、1bの接続点を有しない点が異なる。図9の(a)〜(d)は、図7の(a)〜(d)にそれぞれ対応しており、共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。また、図9では、コイルユニット1a、1bは、説明の便宜上、実線及び破線により区別して記載されているが、実際は一体に形成されている。以下、(a)に基づいてU相を例に説明するが、V相及びW相についても同様である。
相単位コイル5U1は、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU1相のコイルユニット1aに相当。丸数字1〜5)、コイル引回し点5RU1で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU2相のコイルユニット1bに相当。丸数字6〜11)、相端子5T2に接続されている。相単位コイル5U2は、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装された後(実線で示すU2相のコイルユニット1aに相当。丸数字100〜104)、コイル引回し点5RU2で巻き返されて紙面左方向に巻装されており(破線で示すU1相のコイルユニット1bに相当。丸数字105〜110)、相端子5T2に接続されている。そして、相単位コイル5U1と相単位コイル5U2とが並列接続されて、相コイル6Uが形成されている。
本実施形態では、紙面右方向のシート端部に巻線の接続点を有しないので、シート端部でコイル同士を接続する第1実施形態と比べて、シート端部をコンパクトにすることができる。同図(a)に示すように、ステータコアのスロット収容部からコイル引回し点5RU1、5RU2までのコイル端部高さを、それぞれ5H1、5H2とすると、コイル端部高さ5H2は、コイル端部高さ5H1と比べて低いので、コイル引回し点5RU1、5RU2近傍の同相の巻線同士がシート厚さ方向にもコイル端部高さ方向にも交差しない。そのため、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部をコンパクトにすることができる。さらに、コイル引回し点5RU1、5RU2近傍の巻線は、可動子磁極の移動方向である同図(a)に示す矢印5P方向に略平行でコイル辺部方向にずらして配されているので、コイル辺部のつなぎ替えを行うコイル端部のコイル辺部方向高さを他のコイル端部と略同じ高さにすることができる。よって、コイル端部のコイル辺部方向高さを均一にすることができる。
(3)第3実施形態
本実施形態に係るヘリカル巻シート状コイルは、第1実施形態及び第2実施形態と比べて、可動子磁極の移動方向の両端部が重なり同芯円筒状を呈している点が異なる。図10は、同芯円筒状のヘリカル巻シート状コイルを示すコイル辺部の断面図である。(a)は、円筒化前のヘリカル巻シート状コイルの両端部を示し、(b)は、円筒化後の状態を示している。ヘリカル巻シート状コイル3の一端側は、同図(a)に示す領域Bで囲まれる6巻線ピッチ分のコイル辺部が第1層のみに形成されている。他端側は、領域Cで囲まれる6巻線ピッチ分のコイル辺部が第2層のみに形成されている。ヘリカル巻シート状コイル3の両端部を同図(a)に示す矢印方向に近接させると、同図(b)に示すようにヘリカル巻シート状コイル3は、同芯円筒状を呈する。
ここで、例えば、同図(a)において、領域Bの順方向U1のコイル辺部を起点にして、領域Cの方向に順方向U1、逆方向U1、順方向U1、逆方向U1を繰り返し波巻でつなぎ、領域Cの順方向U2につなげる。そして、領域Bの方向に順方向U2、逆方向U2、順方向U2、逆方向U2を繰り返し波巻でつなぎ、領域Bに隣接する逆方向U2につなげる。また、領域Bの順方向U2のコイル辺部を起点にして、領域Cの方向に順方向U2、逆方向U2、順方向U2、逆方向U2を繰り返し波巻でつなぎ、領域Cの順方向U1につなげる。そして、領域Bの方向に順方向U1、逆方向U1、順方向U1、逆方向U1を繰り返し波巻でつなぎ、領域Bに隣接する逆方向U1につなげる。次に、同図(b)において、領域Bで囲まれる順方向U1、順方向U2のコイル辺部に相端子5T1を接続し、逆方向U1、逆方向U2のコイル辺部に相端子5T2を接続する。V相及びW相についても、同様にコイル辺部の接続を行い、相端子を接続して3相の相コイル6XをΔ結線する。
これにより、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、内部循環電流の発生を防止することができる。なお、複数のヘリカル巻シート状コイル3を同芯円筒状に配することもできる。その場合は、各ヘリカル巻シート状コイル3の各相端部を相毎に直列接続又は並列接続すれば良い。
(4)第4実施形態
本実施形態に係るヘリカル巻シート状コイルは、第1実施形態〜第3実施形態と比べて、毎極毎相4個のコイル辺種類を有する点が異なる。つまり、本実施形態では、ヘリカル巻シート状コイルは、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチずつ離間するX1相〜X4相のコイル辺部を有している。図11は、毎極毎相4個のコイル辺種類を有するヘリカル巻シート状コイルのU相コイルの接続状態の一例を示す模式図である。(a)は、相単位コイル5U1の接続状態を示し、(b)は、相単位コイル5U2の接続状態を示している。以下、同図に基づいてU相を例に説明するが、V相及びW相についても同様である。
同図(a)に示すように、相単位コイル5U1は、U1相のコイルユニット1a、U2相のコイルユニット1b、U3相のコイルユニット1a及びU4相のコイルユニット1bが直列接続されている。U1相のコイルユニット1aは、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装されており、シート一端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1bと接続されている。U2相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、シート他端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1aと接続されている。U3相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、シート一端側で巻き返されて、U4相のコイルユニット1bと接続されている。U4相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、シート他端側で相端子5T2に接続されている。
同図(b)に示すように、相単位コイル5U2は、U4相のコイルユニット1a、U3相のコイルユニット1b、U2相のコイルユニット1a及びU1相のコイルユニット1bが直列接続されている。U4相のコイルユニット1aは、相端子5T1を起点にして紙面右方向に巻装されており、シート一端側で巻き返されて、U3相のコイルユニット1bと接続されている。U3相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、シート他端側で巻き返されて、U2相のコイルユニット1aと接続されている。U2相のコイルユニット1aは、紙面右方向に巻装されており、シート一端側で巻き返されて、U1相のコイルユニット1bと接続されている。U1相のコイルユニット1bは、紙面左方向に巻装されており、シート他端側で相端子5T2に接続されている。
第1実施形態〜第3実施形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を1回往復するように直列接続されて、相単位コイル5X1、5X2が形成されている。一方、本実施形態では、コイルユニット1a、1bがシート内を2回往復するように直列接続されて、相単位コイル5X1、5X2が形成されている。毎極毎相のコイル辺種類数をn(nは自然数)とすると、第1実施形態〜第3実施形態では、nは2であり、本実施形態では、nは4である。このように、毎極毎相のコイル辺種類数nが偶数の場合は、コイルユニット1a、1bをシート内でn/2回往復するように直列接続して、相単位コイル5X1、5X2を形成することができる。そのため、相単位コイル5X1、5X2の巻始め端及び巻終り端を周方向近傍に配することができる。
本実施形態では、毎極毎相のコイル辺種類数nが偶数であるので、並列接続される各相単位コイルの巻始め端及び巻終り端を周方向近傍に配することができる。そのため、可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイルの端部においてコイル辺部のつなぎ替えを行う場合に、各相単位コイルの巻始め端間の配策及び巻終り端間の配策が容易であり、作業性が向上する。
なお、毎極毎相のコイル辺種類数nが奇数の場合は、可動子磁極の移動方向のシート途中において、コイル辺部をつなぎ替えても良い。但し、ステータ周倍単位でコイル辺部のつなぎ替えを行うものとする。また、可動子磁極の移動方向のヘリカル巻シート状コイルの端部において、コイル辺部のつなぎ替えを行う場合は、並列接続される各相単位コイルの巻始め端及び巻終り端がヘリカル巻シート状コイルの両端部に反転して配される。そのため、各相単位コイルの巻始め端同士及び巻終り端同士をつなぐ配策が必要である。
また、第1実施形態〜第4実施形態に示すように、コイル辺部がつなぎ替えられる可動子磁極の移動方向のシート端部を除いて、全節巻の波巻き構成となるように巻装されていると好適である。これにより、全節巻部分のシート厚さ方向のコイル端部高さを均一にすることができる。
(5)参考形態
説明の便宜上、2つの相単位コイルが並列接続される場合について説明したが、並列接続される相単位コイルの数が異なる3相回転電機についても適用することができる。まず、本参考形態において、毎極毎相3個のコイル辺種類を有し、3つの相単位コイルが並列接続されている3相回転電機について説明し、次節において一般化して説明する。
図12は、毎極毎相3個のコイル辺種類を有する3相回転電機のU相コイルの接続状態の一例を示す周方向展開図である。同図は、6極の3相回転電機を示しており、3相回転電機のコイル辺部は、U相(順方向U1)、U相(順方向U2)、U相(順方向U3)、W相(逆方向W1)、W相(逆方向W2)、W相(逆方向W3)、V相(順方向V1)、V相(順方向V2)、V相(順方向V3)の順に可動子磁極の移動方向に配されている。したがって、U相のコイル辺種類の総数は、18(=3×6極)である。以下、U相を例に説明するが、V相及びW相についても同様であり、3相の相コイルがΔ結線されている。
U相の隣接する3個のコイル辺種類は、それぞれ波巻き構成となるようにコイル辺部の同一側端部がコイル端部によって直列接続されており、相単位コイル5U1、5U2、5U3が形成されている。相単位コイル5U1、5U2、5U3は、並列接続されており、一端側は相端子5T1に接続され、他端側は相端子5T2に接続されている。同図では、相単位コイル5U1を実線の太線で示し、相単位コイル5U2を破線で示し、相単位コイル5U3を実線の細線で示している。図中の丸数字は、相端子5T1から相端子5T2までの巻線の接続順を示している。相単位コイル5U1、5U2、5U3は並列接続されているので、説明の便宜上、相端子5T1を起点とする相単位コイル5U1の巻線の接続順を10番から始まる丸数字で示し、相端子5T1を起点とする相単位コイル5U2の巻線の接続順を20番から始まる丸数字で示し、相端子5T1を起点とする相単位コイル5U3の巻線の接続順を30番から始まる丸数字で示している。
同図(a)は、相単位コイルに全節巻部を含まない接続状態の一例を示している。相単位コイル5U1のコイル端部は、1長節巻部(丸数字10)、1長節巻部(丸数字11)、2短節巻部(丸数字12)、1長節巻部(丸数字13)、1長節巻部(丸数字14)及び2短節巻部(丸数字15)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。相単位コイル5U2のコイル端部は、1長節巻部(丸数字20)、2短節巻部(丸数字21)、1長節巻部(丸数字22)、1長節巻部(丸数字23)、2短節巻部(丸数字24)及び1長節巻部(丸数字25)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。相単位コイル5U3のコイル端部は、2短節巻部(丸数字30)、1長節巻部(丸数字31)、1長節巻部(丸数字32)、2短節巻部(丸数字33)、1長節巻部(丸数字34)、1長節巻部(丸数字35)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。なお、1相の必要巻数に応じて、丸数字15から丸数字10への接続、丸数字25から丸数字20への接続及び丸数字35から丸数字30への接続を複数回繰り返す。ここで、「全節巻部」とは、直列接続されるコイル辺部間の間隔が1磁極ピッチ(本参考形態では9巻線ピッチ)となる巻線部分をいう。「1長節巻部」とは、直列接続されるコイル辺部間の間隔が1磁極ピッチより1巻線ピッチ分長い巻線部分をいう。同様に、「2短節巻部」とは、直列接続されるコイル辺部間の間隔が1磁極ピッチより2巻線ピッチ分短い巻線部分をいう。
仮に、U1相のコイル辺部を6本選択して相単位コイル5U1を形成し、U2相のコイル辺部を6本選択して相単位コイル5U2を形成し、U3相のコイル辺部を6本選択して相単位コイル5U3を形成する場合を想定する。U1相のコイル辺部、U2相のコイル辺部及びU3相のコイル辺部は、可動子磁極の移動方向に1巻線ピッチずつ離間しているので、同相(U相)ではあるが、正確には位相が異なる。そのため、U1相のコイル辺部のみで相単位コイル5U1を形成し、U2相のコイル辺部のみで相単位コイル5U2を形成し、U3相のコイル辺部のみで相単位コイル5U3を形成すると、相単位コイル5U1、5U2、5U3に発生する誘起電圧は異なり、相単位コイル5U1、5U2、5U3を並列接続すると、U相内に循環電流が生じてしまう。
本参考形態では、相単位コイル5U1は、6本のコイル辺部が上記のコイル端部(丸数字10〜15)によって直列接続されることにより、U1相、U2相、U3相、U1相、U2相及びU3相の順にコイル辺部が選択される。よって、相単位コイル5U1は、U1相〜U3相のコイル辺部を各2本ずつ有している。同様に、相単位コイル5U2、5U3もU1相〜U3相のコイル辺部を各2本ずつ有している。したがって、相単位コイル5U1、5U2、5U3に発生する誘起電圧はいずれも等しくなる。そのため、相単位コイル5U1、5U2、5U3を並列接続してもU相内に循環電流が生じないので、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。
また、同図(a)に示す3相回転電機は、ステータ周倍の波巻き構成であるので、第1実施形態と同様に、例えば、ロータの偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル間に発生する誘起電圧にばらつきが生じにくい。そのため、相間の内部循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。なお、ステータ周倍とは、相単位コイルの周方向長がステータの周方向長の自然数倍であることをいう。相単位コイルの周方向長には、各相単位コイルにおいて直列接続されるコイル辺部数(直列コイル辺部数k)が含まれ、ステータの周方向長には、磁極数2pが含まれる。本参考形態では、直列コイル辺部数kは6であり、磁極数2pは6である。
同図(b)は、相単位コイルの一部に全節巻部を含む接続状態の一例を示している。相単位コイル5U1のコイル端部は、全節巻部(丸数字10)、1長節巻部(丸数字11)、全節巻部(丸数字12)、1長節巻部(丸数字13)、全節巻部(丸数字14)及び2短節巻部(丸数字15)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。相単位コイル5U2のコイル端部は、全節巻部(丸数字20)、1長節巻部(丸数字21)、全節巻部(丸数字22)、2短節巻部(丸数字23)、全節巻部(丸数字24)及び1長節巻部(丸数字25)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。相単位コイル5U3のコイル端部は、全節巻部(丸数字30)、2短節巻部(丸数字31)、全節巻部(丸数字32)、1長節巻部(丸数字33)、全節巻部(丸数字34)、1長節巻部(丸数字35)を有しており、6本のコイル辺部は、コイル端部によってこの順に直列接続されている。
同図(b)に示す3相回転電機も同図(a)に示す3相回転電機と同様に、相単位コイル5U1、5U2、5U3は、それぞれU1相〜U3相のコイル辺部を各2本ずつ有している。したがって、相単位コイル5U1、5U2、5U3に発生する誘起電圧はいずれも等しくなる。そのため、相単位コイル5U1、5U2、5U3を並列接続してもU相内に循環電流が生じないので、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。また、同図(b)に示す3相回転電機は、ステータ周倍の波巻き構成であるので、同図(a)に示す3相回転電機の場合と同様に、相間の内部循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。
さらに、同図(a)及び(b)に示す3相回転電機は、3相の相コイルがΔ結線されているので、コイルエンド部において巻線を3箇所で取りまとめることができ、巻線の端部処理が簡単・シンプルであり、コイルエンド部をコンパクトにすることができる。また、中性点を有しないので、中性点を回避する配線が不要である。そのため、中性点を有する場合と比べてコイルエンド部を簡素化、コンパクト化することができる。これらにより、3相回転電機を小型化及び低コスト化することができる。
(6)まとめ
本発明の3相回転電機の波巻き巻線は、毎極毎相配される同相の電磁気的に位相の異なるn種類(nは自然数)のコイル辺部の中から1つのコイル辺部が毎極選択されて、選択される所要極数分のコイル辺部がコイル端部によって直列接続されて相単位コイルが形成され、選択されるコイル辺部が相異なる複数の相単位コイルが並列接続されて相コイルが形成されている。図13は、毎極毎相n個のコイル辺種類を有する3相回転電機のU相の相構成の一例を示す模式図である。なお、磁極数を2pとし、並列接続される相単位コイルの数をmとする。また、各相単位コイルにおいて直列接続されるコイル辺部数を直列コイル辺部数kとする。
同図では、U相の電磁気的に位相の異なるn種類(U1相〜Un相)のコイル辺部が直列接続されて相単位コイルが形成されている。1つの相単位コイルはk本のコイル辺部を有しており、m個の相単位コイルが並列接続されている。同図では、相端子をT1、T2で示している。V相及びW相についても同様であり、本発明の3相回転電機の波巻き巻線は、3相の相コイルがΔ結線されている。なお、直列接続されるコイル辺部の接続順序は、同図に記載の順序に限定されるものではない。また、ここでは、1つのコイル辺種類に属する1磁極当りの直列導体数qを1としている。1つのコイル辺種類に属する1磁極当りの直列導体数qが複数の場合は、同図に示す相単位コイルを1つのコイル辺種類に属する直列導体数q分、直列接続したものを相単位コイルとして扱えば良い。
本発明では、相コイルの各相単位コイルは、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択され、相コイル内のコイル辺部の総数を示す関係式が下記数1で表される。
(数1)
m×k=n×q×2p
相内循環電流の発生を防止するためには、並列接続される各相単位コイルは、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数でなければならない。つまり、直列コイル辺部数kは、nの自然数倍でなければならないので、直列コイル辺部数kは、自然数gを用いて下記数2で表すことができる。
(数2)
k=g×n
さらに、例えば、ロータの偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイルに発生する誘起電圧にばらつきが生じないようにする必要がある。界磁磁束にばらつきが生じると、ステータ1周において、相コイルには、誘起電圧が相対的に高いコイル部分と、誘起電圧が相対的に低いコイル部分と、が生じる。そこで、相単位コイルの周方向長をステータの周方向長の自然数倍にすることにより、ステータ1周において誘起電圧を均一化する。相単位コイルの周方向長に含まれる直列コイル辺部数はkであり、ステータの周方向長に含まれる磁極数は2pであるので、これらの関係は、自然数hを用いて下記数3で表すことができる。また、1つのコイル辺種類に属する直列導体数q分を直列接続した相単位コイルを考えると、直列コイル辺部数kは、自然数zを用いて下記数4で表すことができる。なお、数3で示す関係式は、数4で示す関係式で表されている。
(数3)
k=h×2p
(数4)
k=z×2p×q
並列接続される相単位コイルの数mと直列コイル辺部数kとの積は、1相当りのコイル辺部の総数になるので、1相当りのコイル辺部の総数は、既述の数1で表すことができる。数1に数2を代入すると、mは下記数5で表すことができる。また、数1に数4を代入すると、mは下記数6で表すことができる。数5及び数6より、mはq×2pとnの公約数である必要がある。
(数5)
m=q×2p/g
(数6)
m=n/z
毎極毎相のコイル辺種類数n及び磁極数2pに対して、q=1の場合の数1に示す関係式に基づいて算出されるmとkの組み合わせの一例を表1に示す。また、q=4の場合の数1に示す関係式に基づいて算出されるmとkの組み合わせの一例を表2に示す。表1及び表2に示す組み合わせのうち、前者は並列接続される相単位コイルの数mを示し、後者は直列コイル辺部数kを示している。なお、本発明は、表1及び表2に記載の組み合わせに限定されるものではなく、毎極毎相のコイル辺種類数nが4以上であっても良く、磁極数2pが10極以上であっても良い。また、直列導体数qは、1及び4に限定されるものではない。
本発明では、並列接続される各相単位コイルは、n種類のすべての種類のコイル辺部を同数ずつ含み、かつ、直列接続されるコイル辺部の数が同数になるようにコイル辺部が選択され、相コイル内のコイル辺部の総数を示す関係式が数1で表されるので、並列接続される各相単位コイルに発生する誘起電圧が等しくなる。そのため、相内循環電流が生じないので、相内循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。また、本発明は、相単位コイルの周方向長(含まれる直列コイル辺部数はk)がステータの周方向長(含まれる磁極数は2p)の自然数倍になるステータ周倍の波巻き構成であるので、例えば、ロータの偏芯等によって界磁磁束にばらつきが生じても、相コイル間に発生する誘起電圧にばらつきが生じにくい。そのため、相間の内部循環電流によって3相回転電機の出力が低下することなく、3相回転電機の出力維持を図ることができる。
さらに、本発明では、3相の相コイルがΔ結線されているので、コイルエンド部において巻線を3箇所で取りまとめることができ、巻線の端部処理が簡単・シンプルであり、コイルエンド部をコンパクトにすることができる。また、中性点を有しないので、中性点を回避する配線が不要である。そのため、中性点を有する場合と比べてコイルエンド部を簡素化、コンパクト化することができる。これらにより、3相回転電機を小型化及び低コスト化することができる。なお、本発明では、相単位コイルが並列接続されているので、直列接続の場合と比べて巻線の素線断面積を半減させることができ、コイル導体部に発生する渦電流損を低減させることができる。さらに、コイル成形に要する力を小さくすることができるので、成形性が向上してコイル製作が容易になり、ステータコアへの組付け作業等の作業性も向上する。
さらに、本発明では、数3に示すように、直列コイル辺部数kは磁極数2pの自然数h倍であるので、並列接続される各相単位コイルの巻線端部が近傍に配される。そのため、相単位コイルを並列接続するための渡り線が短くなり、配策が容易である。また、直列コイル辺部数kは偶数であるので、相単位コイルの巻線端部は、スロット収容部の軸方向一端側に配される。そのため、渡り線を配策するためにステータを回転させる必要がなく、作業工程を短縮することができる。
また、本発明において、並列接続される各相単位コイルは、n種類のコイル辺部を種類毎に直列に連ねて可動子磁極の移動方向に配されていると好適である。同種のコイル辺部が直列接続される部分は全節巻となる。そのため、同種のコイル辺部が直列接続される部分において、可動子磁極の移動方向のコイル辺部間の相対的な位置関係を保持することができ、コイル端部の構成やコイル辺部方向高さを均一にすることができる。
(7)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。また、本発明は、波巻き構成の種々の3相回転電機に用いることができ、例えば、車両用電動機や家庭用電器に用いられる電動機あるいは一般的な産業用機械を駆動する電動機に用いることができる。