従来から、自動車用の電気接続箱等に用いられるプリント配線基板には、基板用コネクタが取り付けられており、電線端末に設けられた相手側コネクタとプリント配線基板に設けられたプリント配線を電気的に接続する役割を担っている。このような基板用コネクタは、例えば、特開2000−150026号公報(特許文献1)や特開2011−233403号公報(特許文献2)に記載されているとおり、相手側コネクタが嵌合される嵌合部を備えたコネクタハウジング内に、複数の端子金具が整列状態で収容保持された構造を有している。そして、各端子金具の一端部が嵌合部に突出されている一方、各端子金具の他端部がプリント配線基板側に突出されて、他端部に設けられた半田付け部がプリント配線基板のスルーホールに挿通されて半田付けされたり(特許文献1参照)、他端部に設けられた弾性圧入部(プレスフィット部)がスルーホールに圧入されてスルーホール内に配設された導通材と弾性接触することにより(特許文献2参照)、プリント配線に電気的に接続されるようになっている。
ところで、このような基板用コネクタは、相手側コネクタの嵌合力が各端子金具のプリント配線との接続部分に直接及ぼされることを回避すべく、コネクタハウジングを何れかの部材に固定して、嵌合力をコネクタハウジングを介して当該部材で支持させることが望ましい。そこで、特許文献1や特許文献2に記載の如く、コネクタハウジングのプリント配線基板への載置面に螺子孔を設け、該螺子孔に対してプリント配線基板の下面側から貫通孔を通じて固定用螺子を螺合することにより、コネクタハウジングをプリント配線基板に螺子固定する構造が、広く採用されている。
ところが、コネクタハウジングの螺子孔にプリント配線基板の下面側から固定用螺子を螺合する固定構造では、固定用螺子の軸方向となる上下方向において、コネクタハウジングとプリント配線基板が相互に接近する方向に螺子の螺合による固定力が及ぼされることとなる。コネクタハウジングやプリント配線基板には公差による製品毎の多少の寸法ばらつきが存在することから、コネクタハウジングをプリント配線基板に載置した際に当接面間の隙間寸法の違いからガタツキが生じる場合がある。そのようなガタツキがある状態で螺子孔に固定用螺子を螺合すると、コネクタハウジングとプリント配線基板が相互に傾いた状態で固定されることとなる。その結果、スルーホール内での端子金具の傾斜や位置ずれが発生して、半田上がり不良や接触不良が生じる可能性があり、未だ改良の余地があった。
特に、端子金具の弾性圧入部をスルーホール内に圧入するいわゆるプレスフィットタイプの基板用コネクタにおいては、端子金具の弾性圧入部をスルーホール内に所定量圧入した後に、コネクタハウジングに設けられた螺子孔にプリント配線基板の下面側から固定用螺子を螺合することにより、コネクタハウジングがプリント配線基板に螺子固定される。ここで、プリント配線基板の板厚の許容公差は±0.15mm程度と比較的大きいことから、プリント配線基板の板厚公差がマイナス公差となる比較的薄いプリント配線基板の場合には、図5(a)に概念的に示すように、コネクタハウジング2とプリント配線基板4の対向面間に比較的大きな隙間:Sが存在することとなる。かかる隙間:Sが存在する状態で、コネクタハウジング2をプリント配線基板4に対して螺子固定すると、固定用螺子6の螺着位置によっては、図5(b)に示すようにコネクタハウジング2がプリント配線基板4に傾斜して固定されるおそれがある。その場合には、スルーホール7の中心軸に対して端子金具8の弾性圧入部9が傾斜する方向のこじり荷重が弾性圧入部9に加えられることとなって、弾性圧入部9とスルーホール7内の導通材との接続信頼性が低下したり、弾性圧入部9の耐久性が悪化する問題が生じる。
また、コネクタハウジング2がプリント配線基板4に対して傾斜せずに螺子固定された際にも、隙間:Sのばらつきが大きいことに起因して、端子金具8の弾性圧入部9のスルーホール7に対する圧入位置が大きくばらつくことが避けられない。プレスフィットタイプの基板用コネクタにおける端子の圧入位置の許容公差は±0.05mm程度と、プリント配線基板の板厚の許容公差である±0.15mm程度に対して小さく抑える必要があることから、固定用螺子6の軸方向となる上下方向において、コネクタハウジング2とプリント配線基板4が相互に接近する方向による螺子固定では、弾性圧入部9の圧入位置の管理が非常に難しくなるという問題があった。
これに対して、コネクタハウジングをプリント配線基板以外の他部材(例えば電気接続箱のケース等)に固定する方法が提案されているが、固定作業が煩雑となることに加えて、他部材の寸法公差との関係を生じる。従って十分な対策とは言い難く、プレスフィットタイプの基板用コネクタであっても、プリント配線基板に固定することができる新たな構造の提案が望まれていたのである。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、基板用コネクタの端子金具とプリント配線の接続信頼性を安定して確保しつつ、簡単な構造で基板用コネクタのコネクタハウジングをプリント配線基板に固定することができる、新規な構造の基板用コネクタを提供することにある。
また、本発明は、このような基板用コネクタのプリント配線基板への取付構造を提供することも、目的とする。
本発明の第一の態様は、プリント配線基板に取り付けられて相手側コネクタとプリント配線を電気的に接続する基板用コネクタであって、前記相手側コネクタが嵌合される嵌合部を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジング内に収容保持された端子金具とを備え、前記端子金具の一方の端部が前記嵌合部に突出されている一方、前記端子金具の他方の端部が前記プリント配線に接続されるようになっており、前記コネクタハウジングには、前記プリント配線基板に貫設された貫通孔の内径よりも小さな外径を有し、該貫通孔に挿通されると共に該プリント配線基板よりも外方に突出する拡径変形可能な拡径筒体が突設されている一方、前記拡径筒体の中央孔に圧入部材を圧入した状態で、拡径変形された該拡径筒体が前記プリント配線基板の前記貫通孔に対して拡径方向で圧接されることにより、前記コネクタハウジングが前記プリント配線基板に固定されるようになっていることを特徴とする。
本態様に従う構造の基板用コネクタによれば、コネクタハウジングに設けられた拡径筒体の中央孔に圧入部材を圧入することに伴う拡径筒体の拡径変形を利用して、拡径筒体をプリント配線基板の貫通孔へ拡径方向で圧接して、コネクタハウジングをプリント配線基板に対して固定することができるのである。要するに、圧入部材の軸方向となるプリント配線基板に載置されるコネクタハウジングがプリント基板に接近する方向(上下方向)への荷重を加えることなく、圧入部材の軸直方向におけるコネクタハウジングの拡径筒体とプリント配線基板の貫通孔との圧接により基板用コネクタのプリント配線基板への固定が実現されるのである。
従って、寸法公差等によりコネクタハウジングとプリント配線基板の当接面間に隙間やガタツキが生じる場合であっても、従来構造の基板用コネクタのように、上下方向の荷重によりコネクタハウジングがプリント配線基板に対して傾斜して固定されたり、それに伴うスルーホール内での端子金具の傾斜や位置ずれ、こじり荷重の入力等の不具合の発生を有利に防止することができる。それ故、プレスフィットタイプの如きコネクタハウジングとプリント配線基板との当接面間に隙間が生じやすい構造においても、コネクタハウジングをプリント配線基板に直接固定する構造を有利に採用することができるのである。
特に、拡径筒体がプリント配線基板の表面側から貫通孔に挿通され、さらに裏面を超えてプリント配線基板の外方に突出する大きさで形成されていることから、圧入部材の圧入に伴い拡径筒体がプリント配線基板に当接して、プリント配線基板とコネクタハウジングが相互に接近する方向の荷重が入力されることが確実に防止され得る。
しかも、プリント配線基板の貫通孔に挿通した拡径筒体を拡径変形させつつ圧入部材を圧入することで、コネクタハウジングをプリント配線基板に固定することができることから、拡径筒体にコネクタハウジングのプリント配線基板への位置決めピンの作用と、固定部の作用の両方を担わせることができる。特に、貫通孔内での拡径筒体の拡径変形は、単なる位置決めピンに比して、高度なセンタリング効果を発揮することができる。これにより、コネクタハウジングのプリント配線基板上での位置決め効果や、それに伴うスルーホール内での端子金具のセンタリング効果を一層有利に得ることができる。
なお、圧入部材としては、拡径筒体を拡径し得るものであれば何れでもよく、中央孔よりも大径の圧入ピンを圧入して接着剤等で固定してもよく、中央孔よりも大径で中央孔に螺合可能なタッピング螺子等の固定用螺子であってもよい。
また、拡径筒体は、拡径変形可能な筒体であれば何れでもよく、コネクタハウジングに一体形成された合成樹脂製の筒体や、コネクタハウジングと別体形成された弾性変形可能な金属片を用いた筒体であってもよい。また、拡径変形を容易にすべく、筒体にスリットを設けて分割体構造としてもよい。
本態様の基板用コネクタは、端子金具がスルーホールに半田付けされるタイプのものや、スルーホールに圧入されるプレスフィットタイプのもの、更には、端子金具がスルーホールに挿通されない表面実装タイプもの、の何れにも適用することが可能である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る基板用コネクタにおいて、前記圧入部材が、前記拡径筒体の中央孔の内径寸法よりも大きな外径寸法を有する螺子部を備えたタッピング螺子であるものである。
本態様によれば、拡径筒体の中央孔に螺子溝を設ける必要がなく、簡単な構造で拡径筒体を構成することができる。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る基板用コネクタにおいて、前記端子金具の前記他方の端部に弾性圧入部が設けられており、前記プリント配線基板のスルーホール内に設けられた前記プリント配線に導通する導通部に弾性接触されるようになっているものである。
本態様によれば、いわゆるプレスフィットタイプの基板用コネクタに本発明を適用することができる。プレスフィットタイプの基板用コネクタにおいては、プリント配線基板の板厚公差による端子金具の弾性圧入部の圧入位置の管理が問題となるが、本態様の基板用コネクタであれば、コネクタハウジングのプリント配線基板への固定に際して、コネクタハウジングがプリント配線基板に接近する上下方向の荷重が入力されないことから、プリント配線基板の板厚公差に影響されることなく、弾性圧入部の圧入位置の管理を容易に行うことが可能となる。
本発明の第四の態様は、プリント配線基板のプリント配線に対して相手側コネクタを電気的に接続する基板用コネクタの取付構造であって、前記基板用コネクタが前記相手側コネクタが嵌合される嵌合部を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジング内に収容保持された端子金具とを備えており、前記端子金具の一方の端部が前記嵌合部に突出されている一方、前記端子金具の他方の端部が前記プリント配線に接続されていると共に、前記コネクタハウジングに突設された拡径変形可能な拡径筒体が、前記プリント配線基板に貫設された貫通孔の内径よりも小さな外径を有し、該貫通孔に挿通されると共に該プリント配線基板よりも外方に突出されている一方、前記拡径筒体の中央孔に圧入部材を圧入した状態で、拡径変形された該拡径筒体が前記プリント配線基板の前記貫通孔に対して拡径方向で圧接されており、これにより前記コネクタハウジングが前記プリント配線基板に固定されていることを特徴とする。
本態様によれば、本態様に従う基板用コネクタの取付構造によれば、本発明の基板用コネクタに関して説明した効果と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、コネクタハウジングに設けられた拡径筒体の中央孔に圧入部材を圧入することに伴う拡径筒体の拡径変形を利用して、コネクタハウジングをプリント配線基板に対して固定する。これにより、寸法公差等によりコネクタハウジングとプリント配線基板の当接面間に隙間やガタツキが生じる場合であっても、従来構造の基板用コネクタのように、上下方向の荷重によりコネクタハウジングがプリント配線基板に対して傾斜して固定されたり、それに伴うスルーホール内での端子金具の傾斜や位置ずれ、こじり荷重の入力等の不具合の発生を有利に防止することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1〜3に、本発明の一実施形態としての基板用コネクタ10を示す。基板用コネクタ10は、図1に示すように、コネクタハウジング12内に、複数の端子金具14が挿通されて収容保持された構造とされている。そして、端子金具14の一方の端部16が図示しない相手側コネクタと接続されるようになっている一方、端子金具14の他方の端部18がプリント配線基板20に取り付けられて、相手側コネクタとプリント配線基板20の図示しないプリント配線を電気的に接続するようにされている。なお、以下の説明において、上方とは、図1中の上方、下方とは、図1中の下方を言うものとする。
コネクタハウジング12は、図1に示すように、合成樹脂から形成された一体成形品とされており、正面に開口する略矩形の嵌合部24を有する箱体形状とされており、嵌合部24には図示しない相手側コネクタが嵌合されるようになっている。一方、コネクタハウジング12の長手方向の両端部には、外方に向かって突出する略立方体形状の突部26が設けられており、突部26の底面28はコネクタハウジング12の底面30と面一とされている。突部26の底面28には、下方に向かって筒状に突出する拡径変形可能な拡径筒体32が突設されている。拡径筒体32には、下方に向かって開口する略円形断面の中央孔34が設けられている。後述するように、この中央孔34に対して圧入部材たるタッピング螺子36が圧入されることにより、中央孔34が拡径変形されて、プリント配線基板20の貫通孔52に対して拡径方向で圧接することにより、コネクタハウジング12がプリント配線基板20に固定されるようになっている。
図2に示すように、拡径筒体32の外径:aは、後述するプリント配線基板20の貫通孔52の内径:bよりも小さく形成されている。また、拡径筒体32の中央孔34の径:cは、タッピング螺子36の螺子部38の外径:dよりも小さく形成されている。また、拡径筒体32のコネクタハウジング12からの突出量:eは、プリント配線基板20の厚さ:fよりも大きくされている。
このようなコネクタハウジング12に対して、左右方向で整列配置された一群の端子金具14が上下2段に配列された状態で収容保持されている。各端子金具14は、一方の端部16がコネクタハウジング12の嵌合部24の内部に突設されていると共に、他方の端部18がコネクタハウジング12の外方に突出されて、プリント配線基板20に向けてL字形状に屈曲されている。
端子金具14の他方の端部18には、プレスフィット形態の弾性圧入部44と厚肉の係止部48が設けられている。本実施形態では、弾性圧入部44は針の目状に膨出された構造とされている。そして、弾性圧入部44がプリント配線基板20のスルーホール42に圧入されることにより弾性圧入部44を縮径変形させて、スルーホール42に対して拡径方向で圧接することにより、プリント配線基板20に形成された図示しないプリント配線と電気的に接続されるようになっている。具体的には、弾性圧入部44が、スルーホール42内に設けられたプリント配線に導通する図示しない導通部に弾性接触されるようになっている。また、係止部48がプリント配線基板20の表面に当接することにより、他方の端部18がスルーホール42に必要以上に深く挿入されることが防止されている。
プリント配線基板20は、図1に示すように、矩形の板形状を有している。プリント配線基板20の中央部分には、端子金具14と電気的に接続するための複数のスルーホール42が貫設されている。また、プリント配線基板20の一辺の外周部分50に沿って貫通孔52が配設されている。
このような構造とされた本実施形態の基板用コネクタ10の製造方法について好適な例を、図1〜3を用いて説明する。図1〜2は取付前の状態、図3は取付後の状態、を示している。はじめに、図1〜2に示す基板用コネクタ10を、端子金具14の他方の端部18を上に向けた状態で、例えば特開2006−324057号公報(特許文献1)に記載されている、図示しない公知の圧入装置のコネクタ側治具に固定する。同じく公知の圧入装置内において、図1〜2に示すプリント配線基板20を、上下反転した状態で、基板用コネクタ10の上方の対向する位置に下降可能に保持する。次に、図示しない基板側ダイによりプリント配線基板20が押し下げられる。プリント配線基板20の下面が端子金具14の他方の端部18の先端に接触する位置に達すると、センサにプリント配線基板20の下面が接触し、この接触位置が検出開始の基準位置となる。この基準位置からプリント配線基板20がさらに下降すると、センサも連動して下降し、該下降量に応じてセンサの電圧が変化する。そして、図3に示すように、基準位置から設定した値分だけ下降して設定位置に達すると、センサの電圧が設定した閾値に達し、プリント配線基板20の下降が停止される。
このように、端子金具14の他方の端部18の先端とプリント配線基板20の下面とが接触する基準位置から常に所定値分だけプリント配線基板20が下降するため、プリント配線基板20のスルーホール42に圧入される端子金具14の圧入高さは常に一定とすることができる。これにより、スルーホール42に圧入される各端子金具14の弾性圧入部44とスルーホール42内の導電材と電気接続位置を常に一定位置に保持することができ、導通安定性を確保することができる。そして、プリント配線基板20のスルーホール42に端子金具14を圧入固定した後、基板側ダイを上昇させると共にコネクタ側治具から取り出し、プリント配線基板20のスルーホール42への基板用コネクタ10の端子金具14の圧入作業を終了する。
この時、拡径筒体32の外径:aがプリント配線基板20の貫通孔52の内径:bよりも小さく、また拡径筒体32のコネクタハウジング12からの突出量:eがプリント配線基板20の厚さ:fよりも大きくされていることから、拡径筒体32は、図3に示すように、プリント配線基板20に貫設された貫通孔52に挿通されると共にプリント配線基板20よりも外方に突出される。
ここで、プリント配線基板20の外方への拡径筒体32の突出量:X、即ち、図3において、プリント配線基板20の底面54から下方への拡径筒体32の突出量:Xは、好ましくは0mm<Xであり、より好ましくは、0.1mm≦Xである。突出量:Xが0より小さいと、圧入部材としてのタッピング螺子36の頭部56がプリント配線基板20の底面54に当接して、タッピング螺子36のねじ込み力が、プリント配線基板20とコネクタハウジング12を相互に接近させる上下方向の荷重として加えられてしまうからである。
続いて、プリント配線基板20の貫通孔52に挿通された拡径筒体32の中央孔34に下面側からタッピング螺子36を差し込む。螺子部38を備えたタッピング螺子36をねじ込むすなわち圧入することによって、拡径筒体32の外径:aはa’へと広がり、プリント配線基板20の貫通孔52の内径:bよりも大きくなる。これにより、拡径筒体32をプリント配線基板20の貫通孔52へ拡径方向で圧接して、コネクタハウジング12すなわち基板用コネクタ10をプリント配線基板20に対して固定する新たな基板用コネクタ10のプリント配線基板20に対する取付構造が実現されるのである。
本実施形態においても、従来技術と同様、プリント配線基板20の板厚の許容公差は±0.15mm程度と比較的大きいことから、プリント配線基板20の板厚公差がマイナス公差となる比較的薄いプリント配線基板20の場合には、図3に示すコネクタハウジング12とプリント配線基板20の対向面間の隙間:Sが比較的大きな値を持つこととなる。しかしながら本実施形態では、従来技術と異なり、コネクタハウジング12に設けられた拡径筒体32の中央孔34にタッピング螺子36をねじ込むことに伴う拡径筒体32の拡径変形を利用して、拡径筒体32をプリント配線基板20の貫通孔52へ拡径方向で圧接して、コネクタハウジング12すなわち基板用コネクタ10をプリント配線基板20に対して固定することができる。要するに、かかる比較的大きな隙間:Sが存在したとしても、拡径筒体32の拡径による軸直方向(左右方向)の圧接により固定力を得ていることから、従来構造の基板用コネクタのように、上下方向の荷重によりコネクタハウジング2がプリント配線基板4に対して傾斜して固定されたり、それに伴うスルーホール7内での端子金具8の傾斜や位置ずれ、こじり荷重の入力等の不具合の発生を有利に防止することができるのである。
また、拡径筒体32がプリント配線基板20の表面側から貫通孔52に挿通され、さらに底面54を超えてプリント配線基板20の外方に突出する大きさで形成されていることから、拡径筒体32の圧入に伴いタッピング螺子36がプリント配線基板20に当接して、プリント配線基板20とコネクタハウジング12が相互に接近する方向の荷重が入力されることが確実に防止され得るのである。
上述の如き構造の本実施形態の基板用コネクタ10によれば、プリント配線基板20の貫通孔52に挿通した拡径筒体32を拡径変形させつつ圧入部材たるタッピング螺子36を圧入することで、コネクタハウジング12をプリント配線基板20に固定することができることから、拡径筒体32にコネクタハウジング12のプリント配線基板20への位置決めピンの作用と、固定部の作用の両方を担わせることができる。特に、貫通孔52内での拡径筒体32の拡径変形は、単なる位置決めピンに比して、高度なセンタリング効果を発揮することができる。これにより、コネクタハウジング12のプリント配線基板20上での位置決め効果や、それに伴うスルーホール42内での端子金具14のセンタリング効果を一層有利に得ることができる。
また、いわゆるプレスフィットタイプの基板用コネクタ10に本発明を適用することができる。プレスフィットタイプの基板用コネクタ10においては、プリント配線基板20の板厚公差による端子金具14の弾性圧入部44の圧入位置の管理が問題となるが、本態様の基板用コネクタ10であれば、コネクタハウジング12のプリント配線基板20への固定に際して、コネクタハウジング12がプリント配線基板20に接近する上下方向の荷重が入力されないことから、プリント配線基板20の板厚公差に影響されることなく、弾性圧入部44の圧入位置の管理を容易に行うことが可能となる。さらにまた、本態様によれば、圧入部材としてタッピング螺子36を用いたことから、拡径筒体32の中央孔34に螺子溝を設ける必要がなく、簡単な構造で拡径筒体32を構成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。例えば、圧入部材としては、拡径筒体32を拡径し得るものであれば何れでもよく、中央孔34よりも大径の圧入ピンを圧入して接着剤等で固定してもよい。
また、拡径筒体32は、拡径変形可能な筒体であれば何れでもよく、コネクタハウジング12に一体形成された合成樹脂製の筒体や、コネクタハウジング12と別体形成された弾性変形可能な金属片を用いた筒体であってもよい。また、本実施形態では、拡径筒体32が2箇所に設けられた場合について説明を行ったが、3箇所以上に設けられていてもよい。さらにまた、拡径変形を容易にすべく、図4(a)に示すように、拡径筒体32を、拡径筒体32の周壁部60の周方向で等間隔に離隔した位置に、突部26の底面28から軸方向下方に貫設されたスリット62を設けた、分割体構造としてもよい。ここでは、拡径筒体32の周壁部60は3分割とされており、タッピング螺子36をねじ込むことにより、図4(b)に示すように、スリット62部分が開き、拡径筒体32の周壁部60の拡径変形を容易とできるのである。
さらに、本実施形態の基板用コネクタ10は、端子金具14がスルーホール42に半田付けされるタイプのものや、スルーホール42に圧入されるプレスフィットタイプのもの、更には、端子金具14がスルーホール42に挿通されない表面実装タイプもの、の何れにも適用することが可能である。