図1を参照して、本発明に係る偏光板のセットは、液晶セル30の視認側に配置される前面側偏光板10と、液晶セル30の視認側とは反対側(すなわち、バックライトユニット50側)に配置される背面側偏光板20とからなる。前面側偏光板10は、前面外側保護フィルム14と、前面側偏光フィルム11と、前面セル側保護フィルム15と、前面側粘着剤層18とを、この順に積層して構成される。前面外側保護フィルム14は、前面側偏光フィルム11への貼着面と反対側の最表面に、表面処理層13を有しており、この表面処理層13は、Hより硬い鉛筆硬度を有する。また、背面側偏光板20は、背面外側保護フィルム24と、背面側偏光フィルム21と、背面セル側保護フィルム25と、背面側粘着剤層28とを、この順に積層して構成される。
なお、「偏光板」なる語は、図1に示される前面側偏光板10及び背面側偏光板20において、前面側偏光板10については、粘着剤層18を除く「前面外側保護フィルム14/前面側偏光フィルム11/前面セル側保護フィルム15」の3層積層品に対して、また背面側偏光板20については、粘着剤層28を除く「背面外側保護フィルム24/背面側偏光フィルム21/背面セル側保護フィルム25」の3層積層品に対して、それぞれ用いられることもあるが、本明細書では、粘着剤層18又は28を含めて、単に偏光板と呼ぶことがある。少なくとも図1及びそれを参照した説明において、「偏光板」という語は、粘着剤層を含んでいると理解されたい。
前面側偏光板10及び背面側偏光板20は、それぞれの粘着剤層18,28側で液晶セル30の両面に貼合され、液晶パネル40を形成する。この液晶パネル40は、バックライトユニット50と組み合わせて、液晶表示装置60を構成する。バックライトユニット50は、背面側偏光板20の液晶セル30とは反対側、すなわち、背面外側保護フィルム24に対向するように配置される。
そして液晶パネル40は一般に、液晶セル30の両面にそれぞれ、前面側粘着剤層18を介して前面側偏光板10を、また背面側粘着剤層28を介して背面側偏光板20を貼合した直後には、視認側に凸、すなわち、バックライトユニット50側に凹の反りが生じるように形成される。ところが、常温常湿条件下で保管された場合、その反り状態が経時的に変化し、バックライトユニット50側に凸となることがあった。このとき、液晶パネル40の一部がバックライトユニット50に異常に近づいたり、極端な場合には接触したりして、表示ムラを生じることになる。
そこで本発明では、粘着剤層18を含む前面側偏光板10の水分率をW1 とし、粘着剤層28を含む背面側偏光板20の水分率をW2 として、前者に対する後者の比W2/W1が1より大きく2.5以下となるようにする。前面側偏光板10の水分率W1と背面側偏光板20の水分率W2との関係は、両者が下記式(a)を満たすことに相当する。
1<W2/W1≦2.5 (a)
また、同じく粘着剤層18を含む前面側偏光板10の温度23℃で相対湿度55%における寸法変化率をC1 とし、粘着剤層28を含む背面側偏光板20の同じ温度及び相対湿度における寸法変化率をC2 として、後者に対する前者の比C1/C2が1以上4以下となるようにする。前面側偏光板10の上記温度及び相対湿度における寸法変化率C1 と背面側偏光板20の同じ温度及び相対湿度における寸法変化率C2 との関係は、両者が下記式(b)を満たすことに相当する。
1≦C1/C2≦4 (b)
すなわち、前面側偏光板10の水分率W1が、背面側偏光板20の水分率W2より小さくなるように、そして、前面側偏光板10の寸法変化率C1 が背面側偏光板20の寸法変化率C2 より小さくならないような偏光板のセットとすることが肝要である。これにより、常温常湿において、経時的にそれぞれの偏光板が吸湿して膨張する傾向にあるが、前面側偏光板10と背面側偏光板20とでは、前者の寸法変化率が後者のそれに比べて等しいか又は大きいので、視認側に凸となりやすい。したがって、バックライトユニット50側に凸となるような液晶パネル40の反りを抑制でき、表示ムラが認められず、表示品位に優れる液晶表示装置が得られることが見出された。
以下、本発明に係る偏光板のセット、液晶パネル、及び液晶表示装置を構成するそれぞれの部材について、図1に付した符号を参照しながら順を追って詳細に説明する。
[偏光フィルム]
前面側偏光板10及び背面側偏光板20を構成する偏光フィルム11,21は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理して架橋させる工程、及びホウ酸水溶液による架橋処理後に水洗する工程を経て、製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用可能である。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂原反フィルムの膜厚は、例えば10〜150μm程度、好ましくは10〜100μm程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染料水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性有機染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により、行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により、行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度である。また浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。乾燥処理により、偏光フィルム中の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5〜20重量%程度であり、好ましくは8〜15重量%である。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また水分率が20重量%を超えると、熱安定性が不足する傾向にある。
以上のようにして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向した偏光フィルムを製造することができる。得られる偏光フィルムは、その厚さを、例えば、3〜40μm 程度とすることができる。
[前面側偏光板及び背面側偏光板のそれぞれ外側保護フィルム]
前面側偏光板10の外側保護フィルム14、及び背面側偏光板20の外側保護フィルム24は、透明な樹脂フィルムで構成することができる。特に、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れる材料で構成することが好ましい。これらの前面外側保護フィルム14及び背面外側保護フィルム24について、前者が表面処理層13を有すること以外は、ほぼ同様の説明があてはまるので、これらの共通部分をまず説明する。前面外側保護フィルム14の表面処理層13については、後で説明する。
外側保護フィルム14,24を構成する材料として、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂を代表例とするアクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を代表例とする鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレンテフタレート系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂に任意のポリマー変性を行った樹脂を、外側保護フィルム14,24用の材料とすることもできる。ポリマー変性として、例えば、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性制御、異種ポリマー同士の反応を伴う場合を含む混合などが挙げられる。
上記樹脂のなかでも、メタクリル酸メチル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロース系樹脂、又はポリエチレンテレフタレート系樹脂が、外側保護フィルム14,24の材料として、好ましく用いられる。
メタクリル酸メチル系樹脂は、メタクリル酸メチル単位を50重量%以上含む重合体である。メタクリル酸メチル単位の含有量は、好ましくは70重量%以上であり、100重量%であってもよい。メタクリル酸メチル単位が100重量%の重合体は、メタクリル酸メチルを単独で重合させて得られるものである。
メタクリル酸メチル系樹脂は、通常、メタクリル酸メチルを主成分とする単官能単量体を、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤の共存下に重合させて得ることができる。単官能単量体にメタクリル酸メチルと共重合しうる成分を配合し、共重合させることもあり、また所望により、多官能単量体を少量共重合させることもある。
メタクリル酸メチルと共重合しうる単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸エステル類;アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、及びアクリル酸2−ヒドロキシブチルのようなアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;メタクリル酸、及びアクリル酸のような不飽和酸類;クロロスチレン、及びブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、及び無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、及びシクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミド類などを挙げることができる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メタクリル酸メチルと共重合しうる多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような、エチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような、2価アルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールのような多価アルコールをアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;水酸基を2個以上有する化合物の末端水酸基にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、及びこれらのハロゲン置換体のような二塩基酸類、又はこれらのアルキレンオキサイド付加物に、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンのような芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。多官能単量体を共重合させる場合は、これらのなかでも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、及びネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
メタクリル酸メチル系樹脂が有する官能基間の反応を行い、変性された樹脂を用いることもできる。このような官能基間の反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応などが挙げられる。
メタクリル酸メチル系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、住友化学(株)から販売されている“スミペックス”、三菱レイヨン(株)から販売されている“アクリペット”、旭化成(株)から販売されている“デルペット”、(株)クラレから販売されている“パラペット”、(株)日本触媒から販売されている“アクリビュア”などがある。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分とする鎖状オレフィンモノマーの重合体であり、通常は繰り返し単位の80重量%以上がプロピレンで構成される鎖状オレフィン系樹脂である。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンを主体とし、それに共重合可能なコモノマーを1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させた共重合体であってもよい。
プロピレンを主成分とする共重合体にする場合、プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、又は1−ヘキセンが好ましい。なかでも、透明性に比較的優れるポリプロピレン系樹脂が得られることから、エチレンを1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させたものが好ましい。エチレンの共重合割合を1重量%以上とすることで、透明性を上げる効果が現れる。一方、エチレンの共重合割合が20重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、保護フィルムに要求される耐熱性が損なわれることがある。
ポリプロピレン系樹脂は、20℃におけるキシレンに可溶な成分(CXS成分:CXSは cold xylene soluble の略)の含有量が1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のなかでも、CXS成分が1重量%以下、さらに 0.5重量%以下であるプロピレンの単独重合体は、好適な例の一つである。
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、(株)プライムポリマーから販売されている“プライムポリプロ”、日本ポリプロ(株)から販売されている“ノバテック”及び“ウィンテック”、住友化学(株)から販売されている“住友ノーブレン”、サンアロマー(株)から販売されている“サンアロマー”などがある。
セルロース系樹脂は、セルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部が、アセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロースの有機酸エステル又は混合有機酸エステルでありうる。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるものが挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂であり、他のジカルボン酸成分及び/又は他のジオール成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、4,4′−ジカルボキシジフェニール、4,4′−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。また他のジオール成分としては、例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
これら他のジカルボン酸成分や他のジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて用いることもできる。p−ヒドロキシ安息香酸やp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。また他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合などを含有するジカルボン酸成分又はジオール成分を用いることもできる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸及びエチレングリコール(並びに必要に応じて他のジカルボン酸又は他のジオール)を直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステル及びエチレングリコール(並びに必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステル又は他のジオール)をエステル交換反応させながら重縮合させる方法、テレフタル酸(及び必要に応じて他のジカルボン酸)のエチレングリコールエステル(及び必要に応じて他のジオールエステル)を触媒の存在下で重縮合させる方法などが採用される。さらに、必要に応じて追加の固相重合を行って、分子量を増加させたり、低分子量成分を低減させたりすることもできる。
これらの樹脂は、透明性を損なわない範囲で、適宜の添加物が配合されていてもよい。添加物として例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、位相差低減剤、安定剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび剤などを挙げることができる。酸化防止剤には、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などがあり、また1分子中に例えば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系の紫外線吸収剤や、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリン酸のような高級脂肪酸及びその塩などが挙げられる。造核剤としては、例えば、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンのような高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状又はそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。位相差低減剤としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂に添加する脂環族飽和炭化水素樹脂がある。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
以上のような樹脂からフィルムを製膜するには、それぞれの樹脂に応じた方法を適宜選択すればよい。例えば、溶剤に溶解させた樹脂を、金属製のバンド又はドラムに流延し、溶剤を乾燥除去してフィルムを得る溶剤キャスト法、樹脂をその溶融温度以上に加熱し、混練してダイから押し出し、冷却することによりフィルムを得る溶融押出法などが使用できる。溶融押出法では、単層フィルムを押し出すこともできるし、多層フィルムを同時押出することもできる。
これら樹脂のフィルムは、市販品を容易に入手することが可能である。市販されているフィルムの例を挙げると、メタクリル酸メチル系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、住友化学(株)から販売されている“テクノロイ”、三菱レイヨン(株)から販売されている“アクリライト”及び“アクリプレン”、旭化成(株)から販売されている“デラグラス”、(株)クラレから販売されている“パラグラス”及び“コモグラス”、(株)日本触媒から販売されている“アクリビュア”などがある。ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、三菱化学(株)から販売されている“ノバクリアー”、帝人化成(株)から販売されている“A-PET シート”などがある。ポリプロピレン系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、FILMAX 社から販売されている“FILMAX CPP フィルム”、サン・トックス(株)から販売されている“サントックス”、東セロ(株)から販売されている“トーセロ”、東洋紡績(株)から販売されている“東洋紡パイレンフィルム”、東レフィルム加工(株)から販売されている“トレファン”、日本ポリエース(株)から販売されている“ニホンポリエース”、フタムラ化学(株)から販売されている“太閤FC”などがある。またセルロース系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、富士フイルム(株)から販売されている“フジタック TD” 、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“コニカミノルタ TAC フィルム KC”などがある。
[前面外側保護フィルムの表面処理層]
前面側偏光板10の粘着剤層18とは反対側に位置する外側保護フィルム14は、その最表面、すなわち偏光フィルム11に貼合される面と反対側の面に、表面処理層13を有する。この表面処理層13は、例えば、上で説明した樹脂フィルムの表面に、微細な表面凹凸形状を有するハードコート層を形成する方法によって設けることができる。ハードコート機能を付与するため、この表面処理層13は、鉛筆硬度がHより硬い値となるようにする。その鉛筆硬度がH又はそれより小さいと、表面に傷が付きやすくなり、傷が付くと液晶表示装置の視認性が悪くなる。鉛筆硬度は、 JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準じて求められ、各硬度の鉛筆を用いて引っかいたときに傷が生じない最も硬い鉛筆の硬度で表される。
表面処理層13を有する前面外側保護フィルム14は、そのヘイズ値が 0.1〜45%の範囲、さらには5〜40%の範囲となるようにすることが好ましい。ヘイズ値が45%より大きな領域になると、外光の映り込みは低減できるものの、黒表示の画面のしまりが低下してしまう。また、ヘイズ値が 0.1%を下回ると、十分な防眩性能が得られず、外光が画面に映り込むので、好ましくない。ここで、ヘイズ値は、 JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に従って求められる。
微細な表面凹凸形状を有するハードコート層の形成は、樹脂フィルムの表面に、有機微粒子又は無機微粒子を含有する塗膜を形成する方法や、有機微粒子又は無機微粒子を含有するか又は含有しない塗膜を形成した後、凹凸形状を付与したロールに押し当てる方法、例えばエンボス法などによって、行うことができる。このような塗膜は、例えば、樹脂フィルムの表面に、硬化性樹脂からなるバインダー成分と有機微粒子又は無機微粒子とを含有する塗布液(硬化性樹脂組成物)を塗布する方法などによって、形成できる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを用いることができる。また、有機微粒子としては、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、シリコーン樹脂粒子、又はポリイミド粒子のような樹脂粒子を用いることができる。
無機微粒子又は有機微粒子を分散させるためのバインダー成分は、高硬度(ハードコート)となる材料から選定すればよい。バインダー成分として、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性や、得られる表面処理層13の硬度などの観点から、光硬化性樹脂が好ましい。光硬化性樹脂としては、市販されているものを適宜用いることができる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレートやペンタエリスリトールテトラアクリレートのような多官能アクリレートを単独で、又は2種以上組み合わせて用い、これに、“イルガキュアー 907”、“イルガキュアー 184”又は“ルシリン TPO”(いずれもBASF社から販売されている商品名)のような光重合開始剤を混合し、光硬化性樹脂とすることができる。光硬化性樹脂を用いる場合は、そこに無機微粒子又は有機微粒子を分散させて得られる樹脂組成物を樹脂フィルム上に塗布し、光を照射することにより、バインダー樹脂中に無機微粒子又は有機微粒子が分散されたハードコート層を形成することができる。
光硬化性樹脂を構成する多官能アクリレートとして、上記したトリメチロールプロパントリアクリレートやペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなモノマータイプのもののほか、ウレタンアクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、又は水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーのような、オリゴマータイプのものを用いることもできる。
ここでいうウレタンアクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートを用いて調製される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとポリオールとから、水酸基が少なくとも1個残ったヒドロキシ(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させる方法によって、ウレタンアクリレートを製造することができる。これら(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートは、それぞれ1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、目的に応じて各種添加剤を加えてもよい。
ウレタンアクリレートの製造に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、及び(メタ)アクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。
同じくウレタンアクリレートの製造に用いられるポリオールは、分子内に水酸基を少なくとも2個有する化合物である。具体例を挙げると、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリジメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類などがある。
同じくウレタンアクリレートの製造に用いられるジイソシアネートは、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネート類であることができる。具体例を挙げると、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有する化合物の水添物などがある。
多官能アクリレートとなりうるポリオール(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどがある。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。ポリオール(メタ)アクリレートは、好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。これらは共重合体であってもよく、混合物であってもよい。
さらに、別の多官能アクリレートとなりうる水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーとしては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーや、2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。
光硬化性樹脂を構成する光重合開始剤の具体例を挙げると、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N′,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他チオキサントン系化合物などがある。
光硬化性樹脂は、必要に応じて溶媒に溶解した状態で用いることもできる。溶媒としては、酢酸エチルや酢酸ブチルをはじめとする各種の有機溶媒を用いることができる。
また光硬化性樹脂は、レベリング剤を含有してもよく、例えば、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を挙げることができる。シリコーン系のレベリング剤としては、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンが挙げられる。好ましくは、反応性シリコーン及びシロキサン系のレベリング剤である。反応性シリコーンのレベリング剤を用いることにより、ハードコート層表面に滑り性が付与され、優れた耐擦傷性を長期間持続させることができる。一方、シロキサン系のレベリング剤を用いると、膜形成能を向上させることができる。
反応性シリコーンのレベリング剤としては、シロキサン結合と、アクリロイル基又は水酸基とを有するものが挙げられる。具体例として、次のような共重合体を挙げることができる。
(a)ジメチルシロキサン/3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサン/2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサンの共重合体、
(b)ジメチルシロキサン/ヒドロキシプロピルシロキサン/トリ(ω−イソシアナトアルキル)イソシアヌル酸/脂肪族ポリエステルの共重合体、
(c)ジメチルシロキサン/末端がアクリレートのポリアルキレングリコールアルキルシロキサン/末端が水酸基のポリアルキレングリコールアルキルシロキサンの共重合体。
市販の反応性シリコーンの具体例を挙げると、いずれも商品名で、DIC(株)から販売されている“GRANDIC PC-4100”、 ビックケミー・ジャパン(株)から販売されている“BYK-UV3500”、“BYK-UV3750”、“BYK-370”、“BYK-371”、“BYK-375”、及び“BYK
-377”などがある。
以上例示したようなアクリル系のバインダー成分(バインダー樹脂)を用いることにより、保護フィルムとの密着性が向上するとともに、機械的強度が向上し、表面の傷付きを有効に防止できる表面処理層13を形成することができる。
エンボス法により微細表面凹凸形状を有するハードコート層を設ける場合は、樹脂フィルム上に未硬化のハードコート層を形成し、そこに微細凹凸形状が形成された金型を押し当てながら、当該ハードコート層を硬化させ、金型の形状をそのハードコート層に転写すればよい。金型形状のハードコート層への転写は、エンボスにより行うことが好ましく、エンボスとしては、光硬化性樹脂の一種である紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が好ましい。エンボス法により微細表面凹凸形状を形成する場合、ハードコート層は、無機又は有機微粒子を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
UVエンボス法では、保護フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層を形成し、その紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し当てながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線硬化性樹脂層に転写される。具体的には、樹脂フィルム上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工された紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成された樹脂フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂に転写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されず、例えば前記したものを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光重合開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
表面処理層13の厚みは、特に限定されないが、2〜30μm、さらには3〜30μmの範囲にあることが好ましい。表面処理層13の厚みが2μm を下回ると、十分な硬度が得られにくくなり、表面が傷付きやすくなる傾向にある。また、その厚みが30μm より大きくなると、割れやすくなったり、表面処理層の硬化収縮により保護フィルム14がカールして生産性を低下させたりする傾向にある。
前面外側保護フィルム14は、前記のように、ハードコート層によりヘイズが付与されることが好ましいが、ハードコート層の形成とともに、保護フィルム中に無機又は有機微粒子を分散させることによりヘイズが付与されていてもよい。このために用いる無機又は有機微粒子の具体例は、先に掲げたものと同様である。
前面外側保護フィルム14には、ハードコート層を兼ねる前記の防眩処理(ヘイズ付与処理)のほか、帯電防止処理や、防汚処理、又は抗菌処理のような、各種の追加の表面処理が施されていてもよく、液晶性化合物やその高分子量化合物などからなるコート層が形成されていてもよい。なお、帯電防止機能は、表面処理以外でも、例えば粘着剤層など、偏光板の他の部分に付与してもよい。
また、背面側偏光板20において、液晶セル30から遠い側に位置する外側保護フィルム24の外側にも、ハードコート層や低反射層などを包含する機能層を設けることができる。上記の防眩層を構成するバインダー樹脂を含む塗布液として、これらの機能が発現可能な樹脂組成物を選択することもできる。さらに、前面外側保護フィルム14及び/又は背面外側保護フィルム24のそれぞれ外側に、導電層を設けることもできる。
[前面側偏光板及び背面側偏光板のセル側保護フィルム]
図1に示した前面側偏光板10及び背面側偏光板20において、液晶セル30側に位置し、粘着剤層18,28の形成面となるセル側保護フィルム15,25にも、外側保護フィルム14,24について説明したのと同様の樹脂を用いることができる。なかでも、レターデーション値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましく用いられる。ここでいうポリオレフィン系樹脂は、鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂を包含する。
環状ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ノルボルネン及び他のシクロペンタジエン誘導体のような環状オレフィンモノマーを、触媒の存在下に重合して得られるものである。このような環状ポリオレフィン系樹脂を用いると、後述する所定のレターデーション値を有する保護フィルムが得られやすい。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類又は(メタ)アクリル酸若しくはそのエステル類とから、ディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類又は(メタ)アクリル酸若しくはそのエステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体、及びその他の環状オレフィンモノマーから選ばれる少なくとも2種のモノマーを同様に開環メタセシス共重合し、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はそれらの誘導体のような環状オレフィンに、鎖状オレフィン及び/又はビニル基を有する芳香族化合物を付加共重合させて得られる樹脂などが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、それぞれ商品名で、 TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている“TOPAS” 、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”及び“ゼオネックス”、三井化学(株)から販売されている“アペル”などがある。
鎖状ポリオレフィン系樹脂の典型的な例は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂である。なかでも、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンを主体とし、それに共重合可能なコモノマー、例えばエチレンを、1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させた共重合体が好適に用いられる。
ポリプロピレン系樹脂は、脂環族飽和炭化水素樹脂を含有してもよい。脂環族飽和炭化水素樹脂を含有させることにより、レターデーション値が制御しやすくなる。脂環族飽和炭化水素樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂に対して 0.1〜30重量%とするのが有利であり、より好ましい含有量は、3〜20重量%である。脂環族飽和炭化水素樹脂の含有量が 0.1重量%未満であると、レターデーション値を制御する効果が十分に得られず、一方でその含有量が30重量%を超えると、保護フィルム15,25から経時的に脂環族飽和炭化水素樹脂のブリードアウトを生じる懸念がある。
アクリル系樹脂は、先にも述べたとおり、典型的には、メタクリル酸メチル単位を50重量%以上含む重合体である。メタクリル酸メチル単位の含有量は、好ましくは70重量%以上であり、100重量%であってもよい。
以上のような樹脂からフィルムに製膜する方法は、それぞれの樹脂に応じた方法を適宜選択すればよく、例えば、先に述べた溶剤キャスト法、溶融押出法などが採用できる。なかでもポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂に対しては、生産性の観点から溶融押出法が好ましく採用される。一方、セルロース系樹脂は溶剤キャスト法によって製膜されるのが一般的である。
液晶セル30が横電解(IPS:In-Plane Switching)モードである場合、そのIPSモード液晶セルが本来有する広視野角特性を損なわないために、前面側及び背面側とも、セル側保護フィルム15,25は、厚み方向のレターデーションRthが−10〜10nmの範囲にあることが好ましい。厚み方向のレターデーションRthは、面内の平均屈折率から厚み方向の屈折率を差し引いた値にフィルムの厚みを乗じて得られる値であって、下記式(c)で定義される。また、面内のレターデーションReは、面内の屈折率差にフィルムの厚みを乗じて得られる値であって、下記式(d)で定義される。
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (c)
Re=(nx−ny)×d (d)
式中、nxはフィルム面内のx軸方向(面内遅相軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内のy軸方向(面内進相軸方向であって、面内でx軸に直交する方向)の屈折率であり、nz はフィルム面に垂直なz軸方向(厚み方向)の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚さである。
ここで、レターデーション値は、可視光の中心付近である500〜650nm程度の範囲で任意の波長における値でありうるが、本明細書では波長590nmにおけるレターデーション値を標準とする。厚み方向のレターデーションRth及び面内のレターデーションReは、市販の各種位相差計を用いて測定することができる。
樹脂フィルムの厚み方向のレターデーションRthを−10〜10nmの範囲内に制御する方法としては、フィルムを作製するときに、厚み方向に残留するゆがみを極力小さくする方法が挙げられる。例えば、上記溶剤キャスト法においては、その流延樹脂溶液を乾燥するときに生じる厚み方向の残留収縮歪みを、熱処理によって緩和させる方法などが採用できる。一方、上記溶融押出法においては、樹脂フィルムをダイから押し出し、冷却するまでの間に延伸されることを防ぐため、ダイから冷却ドラムまでの距離を極力縮めるとともに、押出し量と冷却ドラムの回転速度をフィルムが延伸されないよう制御する方法などが採用できる。また、溶剤キャスト法と同様に、得られたフィルムに残留する歪みを熱処理によって緩和させる方法も採用できる。
[偏光フィルムと保護フィルムとの接着]
前面側偏光板10における偏光フィルム11と外側保護フィルム14及びセル側保護フィルム15との接合、また、背面側偏光板20における偏光フィルム21と外側保護フィルム24及びセル側保護フィルム25との接合には、通常、接着剤が用いられる。偏光フィルムと両面の保護フィルムを接合する接着剤層は、その厚さを0.01〜30μm程度とすることができ、好ましくは0.01〜10μm 、さらに好ましくは0.05〜5μm である。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される保護フィルムと偏光フィルムとの間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
接着剤層の形成には、被着体の種類や目的に応じて、適宜、適切な接着剤を用いることができ、また必要に応じてアンカーコート剤を用いることもできる。接着剤として、例えば、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合型接着剤、無溶剤型接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。
好ましい接着剤の一つとして、水系接着剤、すなわち、接着剤成分が水に溶解又は分散しているものを挙げることができる。水に溶解可能な接着剤成分の例を挙げると、ポリビニルアルコール系樹脂がある。また、水に分散可能な接着剤成分の例を挙げると、親水基を有するウレタン系樹脂がある。水系接着剤は、このような接着剤成分を、必要に応じて配合される追加の添加剤とともに、水に混合して調製することができる。水系接着剤となりうる市販のポリビニルアルコール系樹脂の例を挙げると、(株)クラレから販売されているカルボキシル基変性ポリビニルアルコールである“KL-318”(商品名)などがある。
水系接着剤は、必要に応じて架橋剤を含有することができる。架橋剤の例を挙げると、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、水溶性エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、多価金属塩などがある。ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする場合は、グリオキザールをはじめとするアルデヒド化合物、メチロールメラミンをはじめとするメチロール化合物、水溶性エポキシ樹脂などが、架橋剤として好ましく用いられる。ここで水溶性エポキシ樹脂は、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応物であるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂であることができる。水溶性エポキシ樹脂の市販品の例を挙げると、住化ケムテックス(株)から販売されている“スミレーズレジン 650(30)”(商品名)などがある。
偏光フィルム及び/又はそこに貼合される保護フィルムの接着面に、水系接着剤を塗布し、両者を貼り合わせた後、乾燥処理を施すことにより、偏光板を得ることができる。接着に先立って、保護フィルムには、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はプライマー処理のような易接着処理を施し、濡れ性を高めておくことも有効である。乾燥温度は、例えば50〜100℃程度とすることができる。乾燥処理後、室温よりもやや高い温度、例えば30〜50℃程度の温度で1〜10日間程度養生することは、接着力を一層高めるうえで好ましい。
もう一つの好ましい接着剤として、活性エネルギー線の照射又は加熱により硬化するエポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物が挙げられる。ここで硬化性のエポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものである。この場合、偏光フィルムと保護フィルムとの接着は、当該接着剤組成物の塗布層に対して、活性エネルギー線を照射するか、又は熱を付与し、接着剤に含有される硬化性のエポキシ化合物を硬化させる方法により行うことができる。エポキシ化合物の硬化は、一般に、エポキシ化合物のカチオン重合により行われる。また生産性の観点から、この硬化は活性エネルギー線の照射により行うことが好ましい。
耐候性、屈折率、カチオン重合性などの観点から、硬化性接着剤組成物に含有されるエポキシ化合物は、分子内に芳香環を含まないものであることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、水素化エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。このような硬化性接着剤組成物に好適に用いられるエポキシ化合物は、例えば、特開 2004-245925号公報で詳細に説明されているが、ここでも概略を説明することとする。
水素化エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物に触媒の存在下及び加圧下で選択的に核水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、及びビスフェノールSのようなビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型の樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。このような芳香族ポリヒドロキシ化合物に核水素化反応を行い、得られる核水添ポリヒドロキシ化合物にエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテル化することができる。好適な水素化エポキシ化合物として、水素化されたビスフェノールAのグリシジルエーテルが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、次式に示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、この式中、mは2〜5の整数である。
この式における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物のなかでも、オキサビシクロヘキサン環(上式においてm=3のもの)や、オキサビシクロヘプタン環(上式においてm=4のもの)を有するエポキシ化合物は、優れた接着性を示すことから好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリンのような脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル(例えばポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル)などが挙げられる。
硬化性接着剤組成物において、エポキシ化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでもこのエポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する脂環式エポキシ化合物を含むことが好ましい。
硬化性接着剤組成物に用いられるエポキシ化合物は、通常 30〜3,000g/当量の範囲内のエポキシ当量を有し、このエポキシ当量は好ましくは 50〜1,500g/当量の範囲である。エポキシ当量が30g/当量を下回るエポキシ化合物を用いた場合には、硬化後の偏光板の可撓性が低下したり、接着強度が低下したりする可能性がある。一方、3,000g/当量 を超えるエポキシ当量を有する化合物では、接着剤組成物に含有される他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
反応性の観点から、エポキシ化合物の硬化反応としてカチオン重合が好ましく用いられる。そのためには、エポキシ化合物を含む硬化性接着剤組成物には、カチオン重合開始剤を配合するのが好ましい。カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、及び電子線のような活性エネルギー線の照射又は加熱によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させる。作業性の観点から、カチオン重合開始剤には潜在性が付与されていることが好ましい。以下、活性エネルギー線の照射によってカチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるカチオン重合開始剤を「光カチオン重合開始剤」といい、熱によってカチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるカチオン重合開始剤を「熱カチオン重合開始剤」という。
光カチオン重合開始剤を用い、活性エネルギー線の照射により接着剤組成物の硬化を行う方法は、常温常湿での硬化が可能となり、偏光フィルムの耐熱性又は膨張による歪を考慮する必要が減少し、保護フィルムと偏光フィルムとを良好に接着できる点において有利である。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、エポキシ化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体などを挙げることができる。光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物100重量部に対し、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは15重量部以下である。光カチオン重合開始剤の配合量が、エポキシ化合物100重量部に対して 0.5重量部を下回ると、硬化が不十分になり、硬化物の機械的強度や接着強度が低下する傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が、エポキシ化合物100重量部に対して20重量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下する可能性がある。
光カチオン重合開始剤を用いる場合、硬化性接着剤組成物は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を用いることで、カチオン重合の反応性を向上させ、硬化物の機械的強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤を配合する場合、その量は、硬化性接着剤組成物100重量部に対して 0.1〜20重量部の範囲内とすることが好ましい。また、硬化速度向上のために、ナフトキノン誘導体のような増感助剤を用いてもよい。
一方、熱カチオン重合開始剤としては、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。
エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物は、先述のとおり光カチオン重合によって硬化させることが好ましいが、上記の熱カチオン重合開始剤を存在させ、熱カチオン重合によって硬化させることもできるし、光カチオン重合と熱カチオン重合を併用することもできる。光カチオン重合と熱カチオン重合を併用する場合、硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤の両方を含有させることが好ましい。
また、硬化性接着剤組成物は、オキセタン化合物やポリオール化合物など、カチオン重合を促進させる化合物をさらに含有してもよい。オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物である。オキセタン化合物を配合する場合、その量は、硬化性接着剤組成物中に、通常5〜95重量%、好ましくは5〜50重量%である。またポリオール化合物は、エチレングリコールやヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを包含するアルキレングリコール又はそのオリゴマー、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどでありうる。ポリオール化合物を配合する場合、その量は、硬化性接着剤組成物中に、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
さらに、硬化性接着剤組成物は、その接着性を損なわない限り、他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などを含有することができる。イオントラップ剤としては、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系、これらの混合系などを包含する無機化合物が挙げられ、酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物を、偏光フィルム又は保護フィルムの接着面、あるいはこれら双方の接着面に塗工した後、接着剤の塗工された面で貼合し、活性エネルギー線を照射するか又は加熱することにより未硬化の接着剤層を硬化させて、偏光フィルムと保護フィルムとを接着させることができる。接着剤の塗工方法としては、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が採用できる。
この硬化性接着剤組成物は、基本的には、溶剤を実質的に含まない無溶剤型接着剤として用いることができるが、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、粘度調整のために溶剤を含有させてもよい。溶剤は、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、エポキシ化合物をはじめとする各成分を良好に溶解する有機溶剤であることが好ましく、例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などを用いることができる。
活性エネルギー線の照射により接着剤組成物の硬化を行う場合、活性エネルギー線としては先述した各種のものを用いることができるが、取扱いが容易で、照射光量などの制御もしやすいことから、紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線、例えば紫外線の照射強度や照射量は、偏光フィルムの偏光度をはじめとする各種光学性能、及び保護フィルムの透明性や位相差特性をはじめとする各種光学性能に影響を及ぼさない範囲で、適度の生産性が保たれるように適宜決定される。
熱により接着剤組成物の硬化を行う場合は、一般的に知られた方法で加熱することができる。通常は、硬化性接着剤組成物に配合された熱カチオン重合開始剤がカチオン種やルイス酸を発生する温度以上で加熱が行われ、具体的な加熱温度は、例えば50〜200℃程度である。
[粘着剤層]
前面側偏光板10のセル側保護フィルム15上、及び背面側偏光板20のセル側保護フィルム25上には、それぞれ粘着剤層18,28が設けられる。これらの粘着剤層18,28は、液晶セル30の両面にそれぞれ前面側偏光板10及び背面側偏光板20を貼合するために用いられる。
それぞれの粘着剤層を形成する粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性、接着性などを包含する粘着特性に優れるものであればよいが、さらに耐久性などに優れるものが好ましく用いられる。具体的には、粘着剤層を形成する粘着剤として、アクリル系樹脂を含有する粘着剤(アクリル系粘着剤)が好ましく用いられる。
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸アルキルエステルを主要なモノマーとする樹脂である。このアクリル系樹脂には通常、極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとは、重合性不飽和結合及び極性官能基を有する化合物であり、ここで重合性不飽和結合は、(メタ)アクリロイル基に由来するものとするのが一般的であり、また極性官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などでありうる。極性モノマーの具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどがある。
またアクリル系粘着剤には、通常、アクリル系樹脂とともに架橋剤が配合されている。架橋剤の代表例として、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有するイソシアネート化合物を挙げることができる。
粘着剤には、さらに各種の添加剤が配合されていてもよい。好適な添加剤として、シランカップリング剤や帯電防止剤などが挙げられる。シランカップリング剤は、ガラスとの接着力を高めるうえで有効である。帯電防止剤は、静電気の発生を低減又は防止するうえで有効である。一般に、粘着剤層を介して偏光板を液晶セルに貼る際には、それまで粘着剤層を覆って仮着保護していた表面保護フィルム(セパレータ)を剥がしてから液晶セルに貼り合わされるが、その表面保護フィルムを剥がすときに発生する静電気によって、液晶セル内の液晶の配向不良を生じ、この現象が液晶表示装置の表示不良をもたらすことがある。このような静電気の発生を低減又は防止する手段として、粘着剤への帯電防止剤の配合は有効である。
粘着剤層18,28は、以上のような粘着剤成分が有機溶剤に溶解してなる粘着剤組成物を調製し、これを偏光板10,20のセル側保護フィルム15,25上に直接塗布し、溶剤を乾燥除去する直接塗工法によって、あるいは、離型処理が施された樹脂フィルムからなる基材フィルムの離型処理面に上記の粘着剤組成物を塗布し、溶剤を乾燥除去して粘着剤層とし、これを偏光板10,20のセル側保護フィルム15,25上に貼着する転写法によって、形成できる。前者の直接塗工法によって保護フィルム15,25上に粘着剤層18,28を形成した場合は、その表面に離型処理が施された樹脂フィルム(セパレータとも呼ばれる)を貼合し、使用時まで粘着剤層表面を仮着保護するのが通例である。有機溶剤溶液である粘着剤組成物の取扱い性の観点などから、後者の転写法が多く採用されており、この場合は、最初に粘着剤層の形成に用いる離型処理された基材フィルムが、偏光板に貼着した後そのままセパレータとなりうる点からも好都合である。
[偏光板の水分率及び寸法変化率]
本発明では、粘着剤層18を有する前面側偏光板10の水分率W1 に対する、粘着剤層28を有する背面側偏光板20の水分率W2の比W2/W1を、1より大きく2.5以下にする。この水分率比W2/W1は、好ましくは1.1以上2以下、さらに好ましくは1.2以上1.5以下である。
また、粘着剤層28を有する背面側偏光板20の温度23℃で相対湿度55%における寸法変化率C2 に対する、粘着剤層18を有する前面側偏光板10の温度23℃で相対湿度55%における寸法変化率C1 の比C1/C2を、1以上4以下にする。この寸法変化率比C1/C2は、好ましくは1.1以上3以下、さらに好ましくは1.1以上2以下である。
前面側偏光板10の水分率W1と背面側偏光板20の水分率W2との関係、及び前面側偏光板10の寸法変化率C1と背面側偏光板20の寸法変化率C2との関係を、それぞれ上記の範囲にすることで、前面側偏光板10と背面側偏光板20の常温常湿での収縮及び膨張のバランスが良好となり、経時的に起こる液晶パネル40のバックライトユニット50側へ凸となる反りが抑制され、視認側へ凸となる形状を保つことができる。ここで、常温とは、温度が8〜38℃の範囲にあることを意味し、常湿とは、相対湿度が45〜65%の範囲にあることを意味する。
前面側偏光板10及び背面側偏光板20の水分率を調整する方法は特に制限されず、任意の方法が採用できる。例えば、偏光フィルムに保護フィルムを貼合するときの乾燥炉の温度を調整することで、最適な水分率の偏光板を得る方法が、好ましい方法として挙げられる。また別の方法としては、偏光フィルムや接着剤の水分率を調整する方法も挙げられる。さらに、偏光板を製造した後、水分率を調整することも可能である。その場合、水分率を下げるには、乾燥オーブンなどで偏光板を加熱処理する方法が好ましく採用される。また、水分率を上げるには、湿熱オーブンなどで偏光板を加湿処理する方法が好ましく採用される。これらの処理は、ロール状の偏光板に対して行ってもよいし、枚葉の偏光板に対して行ってもよく、またロール状の偏光板での処理と枚葉の偏光板での処理を組み合わせることもできる。
[偏光板を構成する各部材の厚さ]
前面側偏光板10のセル側保護フィルム15及び背面側偏光板20のセル側保護フィルム25は、それぞれの厚さを10〜100μm 程度の範囲で設定することが好ましい。また、そこに貼着される粘着剤層18,28は、それぞれの厚さを5〜30μm 程度の範囲で設定することができる。さらに、前面側偏光板10の表面処理層13を有する外側保護フィルム14の厚さは、22〜110μm 程度の範囲で設定するのが好ましく、背面側偏光板20の外側保護フィルム24の厚さは、20〜100μm 程度の範囲で設定することが好ましい。
[液晶セル]
液晶セル30は、2枚のセル基板31,32と、それら基板間に挟持された液晶層35とを有する。セル基板31,32は、一般にガラスで構成されることが多いが、プラスチック基板であってもよい。その他、本発明の液晶パネル及び液晶表示装置における液晶セル30自体は、この分野で採用されている各種のもので構成することができる。
[バックライトユニット]
バックライトユニット50は、少なくとも、液晶セル30へ表示用の光を供給するための光源部材を含んで構成される。この光源部材は、導光板とその一側面又は対向する二側面に配置される光源とで構成するサイドライト型と呼ばれる形式や、複数の光源とその上(液晶セル30に向かう側)に配置される光拡散板とで構成する直下型と呼ばれる形式であることができる。いずれの形式であっても、通常は、光源部材の背面(液晶セル30から遠い側)に、光反射層がシート又は塗布層の形で設けられる。また光源部材の光出射側(液晶セル30に向かう側)には、さらに集光シートや拡散フィルムなどの光学部材が、1層又は複数層配置されることもある。バックライトユニット50自体は、ここで説明した各部材を有し、この分野で採用されている任意の構成とすることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部及び%は、特記ないかぎり重量基準である。なお、以下の例における各物性の測定は、次の方法で行った。
(1)厚さの測定:
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター“MH-15M”を用いて測定した。
(2)面内レターデーション及び厚み方向レターデーションの測定:
王子計測機器(株)製の平行ニコル回転法を原理とする位相差計“KOBRA-21ADH” を用い、23℃の温度において、波長590nmでの面内レターデーション及び厚み方向レターデーションを測定した。
(3)偏光板の水分率の測定:
100mm×100mmのサイズに切り出した偏光板(粘着剤層付き)を、105±1℃に保たれた乾燥オーブンに120分間放置して、乾燥オーブンに入れる前の重量(乾燥前重量)と乾燥オーブンに放置後の重量(乾燥後重量)とから、次式によって算出した値を偏光板の水分率とした。
偏光板の水分率(%)=〔(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量〕×100
(4)偏光板の寸法変化率の測定:
80mm×80mmのサイズに切り出した偏光板(粘着剤層付き)の粘着剤層をコーニング社製のガラス基板に貼合し、温度23℃、相対湿度55%に保たれた室内に4日間放置して、放置前の偏光板の吸収軸に直交する辺の長さと、放置後の同じ辺の長さとから、次式によって算出した値を偏光板の寸法変化率とした。
偏光板の寸法変化率(%)=〔(放置後長さ−放置前長さ)/放置前長さ〕×100
(5)液晶パネルの反り量の測定:
液晶パネルの長辺を横、短辺を縦、反りが壁側に凸となるように、垂直な壁に液晶パネルを沿わせ、壁面から液晶パネルの上側両端部までの距離(2点)を測定し、平均値を求めて液晶パネルの反り量とした。そして、バックライト側に凸のときをプラス(+)で表示し、視認側に凸のときをマイナス(−)で表示した。測定は、オートクレーブ処理直後(初期)、オートクレーブ処理終了から1日後、4日後、及び7日後に行った。
[製造例1]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100 の水溶液に30℃で浸漬して染色した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に 56.5℃で浸漬して架橋処理を行った。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを得た。延伸は、ヨウ素染色及び架橋処理の工程で主に行い、トータル延伸倍率は5.3倍であり、得られた偏光フィルムの厚みは27μmであった。
[実施例1]
(粘着剤層形成前の前面側偏光板の作製)
前面外側保護フィルム14として、大日本印刷(株)から入手した厚さ65μm のマットハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルムである“AGSR10(60)1330NV”(商品名)を用い、前面セル側保護フィルム15として、富士フイルム(株)から入手した厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムである“Z-TAC ZRD60SL”(商品名)を用い、それぞれにケン化処理を施した。“AGSR10(60)1330NV”のマットハードコート処理面の鉛筆硬度を、先に掲げた JIS K 5600-5-4:1999 に準じ、荷重4.9Nにて求めたところ、その鉛筆硬度は3Hであった。そして、製造例1で作製した偏光フィルムの両面にそれぞれ、上記“AGSR10(60)1330NV”のマットハードコート処理面と反対側のトリアセチルセルロース面、及び上記“Z-TAC ZRD60SL” を、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して貼合し、前面側偏光板を作製した。保護フィルム貼合時の乾燥温度は70℃とした。また、前面セル側保護フィルム15として用いたトリアセチルセルロースフィルム“Z-TAC ZRD60SL”は、面内のレターデーションが0.7nm、厚み方向のレターデーションが−0.1nmであった。
(粘着剤層形成前の背面側偏光板の作製)
背面外側保護フィルム24として、富士フイルム(株)から入手した厚さ60μm のトリアセチルセルロースフィルムである“TD60ULP”(商品名) を用い、背面セル側保護フィルム25として、上の前面セル側保護フィルム15と同じ富士フイルム(株)から入手した厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルム“Z-TAC ZRD60SL”を用い、それぞれにケン化処理を施した。そして、製造例1で作製した偏光フィルムの両面にそれぞれ、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して、これら2枚の保護フィルムを貼合し、背面側偏光板を作製した。保護フィルム貼合時の乾燥温度は50℃とした。
(粘着剤層の形成)
上で作製した前面側偏光板の前面セル側保護フィルム15の表面、及び背面側偏光板の背面セル側保護フィルム25の表面に、厚さが25μm の粘着剤シートをそれぞれ貼合して、粘着剤層18,28を形成し、それぞれ粘着剤層を有する前面側偏光板10及び背面側偏光板20とした。
こうして粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1に対する後者の水分率W2の比W2/W1 が1.30であった。また、粘着剤層18を形成した前面側偏光板10の寸法変化率C1は5.14×10-4%、粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2は1.63×10-4%であり、後者に対する前者の比C1/C2 は、3.15であった。その前面側偏光板から吸収軸を長手方向として、また背面側偏光板から吸収軸を短手方向として、それぞれワイド37型サイズ〔対角37インチ(約94cm)で、幅83.5cm×縦47.5cm〕に裁断した。
(液晶表示装置の作製と評価)
パナソニック(株)製でIPSモードのワイド37型〔対角37インチ(約94cm)で幅約83.5cm×縦約47.5cm〕液晶テレビ“VIERA”(型番:VIERA TH-37LZ85)を分解して液晶セル上下の偏光板を剥がし、それらオリジナル偏光板の代わりに、上で作製した前面側偏光板10及び背面側偏光板20を、それぞれ視認側及びバックライトユニット側に、それぞれの粘着剤層18,28側で貼合して、液晶パネル40を作製した。得られた液晶パネル40をオートクレーブに入れ、温度50℃、圧力5kPa で20分間処理した。その後、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で保管して、液晶パネルの反り量を経時的に測定した。また、オートクレーブ処理から7日後に、この液晶パネルを用いてIPSモード液晶表示装置を再び組み立て、バックライトを点灯して1時間後の表示状態を目視で観察し、表示ムラの有無を確認した。
[実施例2]
背面側偏光板の作製において、保護フィルム貼合時の乾燥温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が1.19であった。また、この例において粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2は3.98×10-4%であり、それに対する前面側偏光板10の寸法変化率C1(5.14×10-4%)の比C1/C2は、1.29であった。
[実施例3]
背面側偏光板の作製において、保護フィルム貼合時の乾燥温度を70℃に変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が1.08であった。また、この例において粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2は4.94×10-4%であり、それに対する前面側偏光板10の寸法変化率C1(5.14×10-4%)の比C1/C2は、1.04であった。
[実施例4]
前面側偏光板の作製において、保護フィルム貼合時の乾燥温度を75℃に変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が1.45であった。また、この例において粘着剤層18を形成した前面側偏光板10の寸法変化率C1は、5.46×10-4%であり、それの、背面側偏光板20の寸法変化率C2(1.63×10-4%)に対する比C1/C2は、3.34であった。
[実施例5]
実施例4で作製した前面側偏光板と、実施例2で作製した背面側偏光板とを用い、その他は実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が1.33であった。また、粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2(3.98×10-4%)に対する、粘着剤層18を形成した前面側偏光板10の寸法変化率C1(5.46×10-4%)の比C1/C2は、1.37であった。
[実施例6]
実施例4で作製した前面側偏光板と、実施例3で作製した背面側偏光板とを用い、その他は実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が1.21であった。また、粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2(4.94×10-4%)に対する、粘着剤層18を形成した前面側偏光板10の寸法変化率C1(5.46×10-4%)の比C1/C2は、1.10であった。
[比較例1]
前面側偏光板の作製及び背面側偏光板の作製において、保護フィルム貼合時の乾燥温度をいずれも80℃に変更した以外は、実施例1と同様の実験を行った。粘着剤層18を形成した前面側偏光板10と粘着剤層28を形成した背面側偏光板20とは、前者の水分率W1 に対する後者の水分率W2 の比W2/W1 が0.87であった。また、粘着剤層18を形成した前面側偏光板10の寸法変化率C1は2.47×10-4%、粘着剤層28を形成した背面側偏光板20の寸法変化率C2は5.03×10-4%であり、後者に対する前者の比C1/C2は、0.49であった。
以上の実施例及び比較例における、前面側偏光板10の水分率W1 に対する背面側偏光板20の水分率W2の比W2/W1、背面側偏光板20の寸法変化率C2に対する前面側偏光板10の寸法変化率C1の比C1/C2、及び評価結果を、表1にまとめた。