以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は同画像形成装置の機構部の要部平面説明図、図2は同機構部の要部側面説明図である。
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、図示しない左右の側板間に架け渡した主ガイド部材1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を移動可能に保持し、図示しない主走査モータによって、駆動プーリと従動プーリ間に架け渡したタイミングベルトを介してキャリッジ3を主走査方向に移動走査する。
キャリッジ3には、液滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4a、4b、4c、4d(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。
ここで、記録ヘッド4aと記録ヘッド4b〜4cは主走査方向と直交する方向である副走査方向に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド4a〜4dはいずれも2列のノズル列を有している。そして、記録ヘッド4aと4bはいずれも同色である黒色の液滴を吐出し、記録ヘッド4cと4dの各ノズル列でマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y)の液滴を吐出する。
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド4a、4bを使用して1スキャン(主走査)で2ヘッド分の幅で画像を形成でき、カラー画像については例えば記録ヘッド4b〜4dを使用して形成することができる。
また、記録ヘッド4a〜4dには、各ヘッド4に液体を供給するヘッドタンク5がそれぞれ設けられている。ヘッドタンク5には、装置本体に交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10yから供給チューブ6を介して各色のインクが供給される。このとき、同じ色の液滴を吐出する2つの記録ヘッド4a、4bには1つのインクカートリッジ10kからインクが供給される
また、キャリッジ3の主走査方向に沿ってエンコーダスケール91が配設され、キャリッジ3にはエンコーダスケール91を読み取るエンコーダセンサ92が設けられて、これらのエンコーダスケール91とエンコーダセンサ92によってリニアエンコーダ90を構成し、このリニアエンコーダ90の検出信号によってキャリッジ3の主走査位置(キャリッジ位置)や移動量を検出するようにしている。
一方、用紙を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
また、搬送ベルト12は、図示しない副走査モータによってタイミングベルト及びタイミングプーリを介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構20が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出を行う空吐出受け24がそれぞれ配置されている。
維持回復機構20は、装置本体に保持された第1維持回復部21と、装置本体に副走査方向(矢印方向)に往復移動可能に保持された第2維持回復部22とを有している。第2維持回復部22は記録ヘッド4aの維持回復を行うときには図1の位置にあり、記録ヘッド4b〜4dの維持回復を行うときには第1維持回復部21と同じ副走査方向位置まで移動する。
この維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする保湿キャップを兼ねた吸引キャップ31及び保湿キャップ32と、ノズル面を払拭するワイパ部材33、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け34などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙Pが帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙Pに液滴を吐出して1行分を記録し、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを図示しない排紙トレイに排紙する。
次に、ヘッドタンク5の一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同ヘッドタンク5の模式的上面説明図、図4は同じく模式的正面説明図である。
ヘッドタンク5は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は撓むことが可能な部材であるフィルム部材203で密閉してインク収容部202を形成し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてバネ204の復元力によってフィルム部材203を常時外方へ押している。このように、タンクケース201のフィルム部材203にバネ204の復元力が作用していることで、タンクケース201のインク収容部202内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
また、タンクケース201の外側には、一端部側を支軸206で揺れ動くことが可能なように支持され、スプリング210によってタンクケース201側に向けて付勢されているフィラからなる変位部材(以下、単に「フィラ」とも表記することがある。)205がフィルム部材203に押し付けられ、フィルム部材203の動きに連動して変位部材205が変位する。この変位部材205をキャリッジ3に設ける後述する第1検知手段(第1センサ)251や装置本体側に配置された後述する第2検知手段(第2センサ)301などで検知することでヘッドタンク5内のインク残量や負圧などを検知することができる。
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口部209があり、インク供給チューブ6に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク5内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。この大気開放機構207は、ヘッドタンク5内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク5内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
また、ヘッドタンク5内のインク液面高さを検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク5の空気量が所定量以上になったことを検出することができる。
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図5及び図6を参照して説明する。図5は同供給排出系の模式的説明図、図6は同じ色の液滴を吐出する2つの記録ヘッドに対する供給系の模式的説明図である。
まず、インクカートリッジ(以下、「メインタンク」という。)10からヘッドタンク5に対するインク供給は、送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ6を介して行なわれる。なお、送液ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク5にインクを供給する動作と、ヘッドタンク5からインクカートリッジ10にインクを戻す動作とを行なえるようにしている。
ここで、本実施形態では、図6に示すように、1つのメインタンク10kから同じ色のインクを記録ヘッド4a、4b用の2つのヘッドタンク5a、5bに供給する構成とし、それぞれの送液ポンプ241a、241bから供給チューブ(供給経路)6a、6bを介してインクを供給する。
また、維持回復機構20は、前述したように記録ヘッド4のノズル面をキャッピングする吸引キャップ31と、吸引キャップ31に接続された吸引ポンプ812を有し、吸引キャップ31でキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク5内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
また、装置本体側にはヘッドタンク5の大気開放機構207を開閉する部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構207を開放することができる。
さらに、キャリッジ3には変位部材205を検知する第1検知手段である光学センサからなる第1センサ251が設けられ、装置本体側には変位部材205を検知する光学センサからなる第2検知手段である第2センサ301が設けられている。後述するように、これらの第1センサ251と第2センサ301の検知結果を使用してヘッドタンク5に対するインク供給動作を制御する。
なお、上述した送液ポンプ241、大気開放ソレノイド302、吸引ポンプ812の駆動制御、本発明に係るインク供給制御動作は、制御部500によって行なわれる。
次に、第1センサ及び第2センサの配置例の異なる例について図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は同配置例の説明に供する側面説明図である。
図7に示す第1例は、ヘッドタンク5の変位部材205に支軸206(支点)からの長さの異なる検知部205A、205Bを下方に設けて設け、キャリッジ3に設けた第1センサ251で検知部205Aを、装置本体側の部材(ベース部材)101に設けた第2センサ301で検知部205Bを検知する構成としている。
図8に示す第2例は、ヘッドタンク5の変位部材205に支軸206(支点)からの長さが同じ検知部205A、205Bを設けて、キャリッジ3の第1センサ251で検知部205Aを、装置本体側の第2センサ301で検知部205Bを検知する構成としている。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図9を参照して説明する。図9は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司り、本発明における供給制御手段などの各種制御手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、記録ヘッド4を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド4を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ3を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト12を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構20の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ15にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク5の大気開放機構207を開閉する装置本体側に設けられた大気開放ソレノイド302、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド4の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド4の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド4を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御、ヘッドタンク5に対するインク供給の制御などに使用する。
センサ群515は、前述した第1センサ251、第2センサ301、検知電極ピン208a、208bのほか、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ(環境温度センサ、環境湿度センサ)、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
次に、ヘッドタンク5の変位部材205の位置検知について図10を参照して説明する。図10はヘッドタンクの変位部材の変位の説明に供する模式的説明図である。なお、以下の図ではヘッドタンクは簡略化して図示する。
ヘッドタンク5の変位部材205は、内部の液体残量に応じて例えば図10(a)の実線図示の位置と同図(b)の破線図示の位置の間で変位する。
そこで、装置本体側の第2センサ301にてヘッドタンク5の変位部材205を検知したときのキャリッジ3の位置をエンコーダ90にて記憶しておき、ヘッドタンク5の変位部材205が変位したときに、再度第2センサ301にてヘッドタンク5の変位部材205を検知するまでキャリッジ3を移動させて、その時のキャリッジ3の位置をエンコーダ90で読取ることで、変位部材205の位置ないし変位量をキャリッジ位置の差分として検知することができる。
このとき、変位部材205の初期位置に対応するヘッドタンク5の液体残量と、変位部材205の変位量に対応する液体量を予め把握しておくことで、検出した変位部材205の変位量からヘッドタンク5内の液体残量を把握することができる。
そこで、例えば、第2センサ301を使用してヘッドタンク5の変位部材205を検知することでヘッドタンク5に対する液体供給を制御するときには、印刷動作を停止して、第2センサ301によって変位部材205が検知される位置までキャリッジ3を移動させて液体供給動作を行う。
一方、印刷動作中にヘッドタンク5に液体供給を行うときには、後述するように、第2センサ301によって変位部材205が検知される位置までキャリッジ3を移動させることなく、第1センサ251を使用して液体供給動作を行う。
次に、ヘッドタンク5内の負圧と液体量の関係について図11を参照して説明する。図11はヘッドタンク内負圧と液体量(以下「インク量」ともいう。)の関係を説明する説明図である。
前述したように、ヘッドタンク5内にインクを供給した状態で、ヘッドタンク5内のインクをノズルから吸引して排出させ、あるいは、送液ポンプ241によってメインタンク10に逆送することで、フィルム部材203がバネ204の復元力に抗して内方に引き込まれ、バネ204が圧縮されて負圧が高まる。この状態から、ヘッドタンク5内にインクを供給すると、フィルム部材203が外方向に押し出されるので、バネ204が伸びて負圧が低下する。
ここで、ヘッドタンク5内の負圧が弱すぎる(負圧が低すぎる)と、記録ヘッド4のノズルからのインク漏れが発生し、逆に、負圧が強すぎる(高すぎる)と、ノズルから空気や塵を内部に引き込んで、吐出不良の原因となる。また、良好な滴吐出のために最適化されたメニスカス形状保持するためには、ヘッドタンク5内の負圧(圧力)を一定の範囲内になるように制御する必要がある。
すなわち、図11に示すように、ヘッドタンク5内の負圧はヘッドタンク5内のインク量と相関関係にあり、ヘッドタンク5内のインク量が多いとき、ヘッドタンク5内の負圧は小さく弱い状態であり、インク量が少ないとき、ヘッドタンク5内の負圧は大きく強くなる。
そこで、ヘッドタンク5内からの排出されるインク量を、ヘッドタンク5内の負圧が所定の負圧管理範囲A内に収まる排インク量Bの範囲内になるように、ヘッドタンク5に対するインク供給を制御するようにしている。
この負圧管理範囲Aの下限値(負圧が小さい値、排インク量が少ない値)に対応するヘッドタンク5の排インク量を変位部材205の変位位置で「インク供給上限位置」(インク量で「インク供給上限値」)とし、上限値(負圧が大きい値、排インク量が多い値)に対応するヘッドタンク5の排インク量を変位部材205の変位位置で「インク消費下限位置」(インク量で「インク消費下限値」)とする。図11には各位置におけるヘッドタンク5の状態を付記している。
次に、ヘッドタンク5のインク供給上限設定位置について図12を参照して説明する。図12は同設定位置の説明に供する説明図である。
本実施形態においては、ヘッドタンク5は大気開放機構(大気開放弁)207を有する構成としている。大気開放機構207を開けると、ヘッドタンク5内に空気が流入し、フィルム部材203が伸びきるまで変位し、それに伴って変位部材205も変位した位置が大気開放位置となり、これが変位部材205の基準位置となる。本実施形態では、インク供給上限値は、大気開放位置から、変位部材205が、液体残量が減少する方向に所定変位量r1だけ変位した位置に定めている。
なお、前述したように、大気開放位置やインク供給上限位置は、変位部材205を第2センサ301で検知した位置を、キャリッジ3の位置としてエンコーダ90で検出して記憶している。
次に、大気開放時にヘッドタンク5内のインク量を充填満タン位置に設定する方法について図13を参照して説明する。図13は同方法の説明に供する説明図である。
前述したように、ヘッドタンク5は、液面を検知可能な電極ピン208を有し、ヘッドタンク5内を大気と連通するための大気開放路207aを有し、大気開放路207aを開閉する大気開放機構207を有している。
ヘッドタンク5内を充填満タン位置に設定する一例としては、まず図13(a)に示す状態から、大気開放機構207を開いてヘッドタンク5内の負圧を開放することで、図13(b)に示すようにヘッドタンク5内の液面が低下する。
なお、このとき、供給口部209の供給口209aは液面下にあることが好ましい。すなわち、供給口209aが液面上になると、供給口209aか供給口部209を介して供給チューブ6に空気が混入し、次にインクを供給したとき、供給口209aからインクと共に気泡が排出されることがあり、そのまま供給を続けると、気泡が大気開放機構207内に付着して、弁の固着や液漏れを生じるおそれがある。
そして、ヘッドタンク5の負圧が開放され、液面が下がった後、図13(c)に示すように、インク300を供給する。インク300を供給することで液面が上昇し、電極ピン208a、208bが所定高さの液面を検知するまで、つまり所定の位置までインク300を供給する。
その後、大気開放機構207を閉じて、例えば所定量インクをノズルから排出し、或いはメインタンク10に逆送することで、所定の負圧値となり、ヘッドタンク5のインク量を所定の負圧値が得られる量にすることができる。
次に、インク供給制御の概要について説明する。
本実施形態では、キャリッジ3上に設置したキャリッジ側第1センサ251にて検知する変位部材205の位置(これを「第1位置」とする。)と、本体ベース101側に設置した本体側第2センサ301にて検知した大気開放検知位置(これを「第2位置」とする)の差分であるフィラ変位量を検出し、印刷中は第1センサ251による検知位置を基準として設定したインク供給上限位置(上限値)とインク消費下限位置(下限値)を管理することで、印刷中のインク供給管理を行っている。
このように、印刷中のインク供給制御を行うとき、本来の基準位置となる大気開放位置からキャリッジ側第1センサ251による検知位置に基準を移し、キャリッジ側第1センサ251による検知位置を基準として設定したインク供給上限位置とインク消費下限位置の範囲内で、インク消費とインク供給を繰り返し行い、ヘッドタンク5内のインク残量を常時適正量になるように制御している。
ここで、キャリッジ側第1センサ251のキャリッジ3上への設置位置、ヘッドタンク5の部品寸法、フィルム部材203の湿度環境影響による伸縮変位など、個々の装置ごとに各種バラツキが存在するため、個々の装置に適したインク供給制御を管理する必要がある。
次に、差分供給量の検出について図14を参照して説明する。
印刷中のインク供給制御では、変位部材205のキャリッジ側第1センサ251による検知位置(第1位置)を基準とすることから、本来の基準となる大気開放位置(あるいは充填満タン位置)からキャリッジ側第1センサ251による検知位置までの変位部材205の変位距離L[mm]を測定する。
すなわち、図14(a)に示すように、本体側第2センサ301が変位部材205を検知可能な位置にキャリッジ3を移動させる。そして、図14(b)に示すように、変位部材205が大気開放位置にある状態から送液ポンプ241を逆転駆動して、ヘッドタンク5からメインタンク10に逆送し、キャリッジ側第1センサ251が変位部材205を検知するまでヘッドタンク5からインクを排出してから逆送動作を停止する。
その後、図14(c)に示すように、キャリッジ側第1センサ251が変位部材205を検知している状態で、キャリッジ3を、本体側第2センサ301が変位部材205を検知するまで移動させる。このときの移動距離をエンコーダ90で測定することで、大気開放位置からキャリッジ側第1センサ251が変位部材205を検知するまでの変位部材205の変位距離(差分変位量)C[mm]を測定する。
そして、測定した変位量(変位距離)距離C[mm]を元にして第1センサ251が変位部材205を検知した後の差分供給量Voを算出し、これを記憶保持している。
次に、制御部による差分供給量の算出制御(差分供給量設定処理)について図15のフロー図を参照して説明する。
まず、ヘッドタンク5を大気開放状態にし、第2センサ301で変位部材205を検知する位置(これを「第2位置」とする。)にキャリッジ3を移動する。
そして、送液ポンプ241の逆転動作にて、第1センサ251が変位部材205を検知するまでインク吸引してから逆転動作を停止する。
次いで、第2センサ301が変位部材205を検知する位置までキャリッジ3の移動を開始し、リニアエンコーダ90によるカウントを開始して、第2センサ301が変位部材205を検知したときにカウントを停止する。
これにより、大気開放位置(第2位置)と第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置との間の変位部材205の変位量(変位距離)Cを算出する。
その後、前述したように、変位量Cから第2センサ301を使用しないでインク供給を行うときの差分供給量Voを設定する。
また、ここでは、大気開放位置を第2位置としているが、前述したように、充填満タン位置そのものを第2位置として、第2位置と第1位置との間の変位量に相当する供給量を差分供給として記憶するようにすることもできる。これは、充填満タン位置の決定の仕方によるものである。
次に、制御部による第2センサを用いないインク充填制御(印字中供給制御)の一例について図16のフロー図を参照して説明する。
印字動作中は、充填満タン状態からインクが消費されることで、変位部材205はヘッドタンク5のインク残量(液体残量)が減少する方向に変位するので、第1センサ251が変位部材205を検知したか否かを判別する。
そして、ヘッドタンク5のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して第1センサ251が変位部材205を検知したときには、その後のインク消費量を算出し、インク消費量が予め定めた所定液体消費量(所定量)以上になったか否かを判別する。
ここで、インク消費量の算出は、例えば画像形成のために吐出された滴数や印字動作中の空吐出動作で吐出された滴数をカウントし、そのカウント値に当該滴の滴量を乗じることで計算上得ることができる(これを、ソフトカウントといい、ソフトカウントで液体消費量計測手段を構成している。)。また、記録ヘッド4からインクを吸引するクリーニング動作を行なったときには、当該吸引による消費量(吸引量)は予め定められているので、当該吸引量を加算すればよい。
そして、インク消費量が予め定めた所定の液体消費量(所定量:閾値)V以上になったときを供給開始位置とし、送液ポンプ241を正転駆動してメインタンク10からヘッドタンク5へのインク充填(供給)を開始する。
このとき、第1センサ251がヘッドタンク5の変位部材205を検知したか否かを判別し、第1センサ251がヘッドタンク5の変位部材205を検知したときには、そのときから更に差分供給量Voに相当する駆動時間Tだけ送液ポンプ241の駆動を継続してインクをヘッドタンク5に充填(供給)する。
その後、送液ポンプ241を停止し、インク消費量の計算値をリセットする。
このようにして、印字動作中でも、キャリッジ3をホーム位置に戻すことなく、ヘッドタンク5にインクを充填することができる。
次に、差分供給量の供給を行うときの送液条件の補正制御に関して図17のフロー図を参照して説明する。
まず、上述したように、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンク5の液体消費量が所定消費量Vになって印字中充填が開始された、つまり、送液ポンプ241の駆動が開始されたか否かを判別する。
そして、送液ポンプ241を駆動して送液が開始されたときには、送液ポンプ241の駆動時間tの計測を開始し、第1センサ251が変位部材205を検知したか否かを判別する。
ここで、第1センサ251が変位部材205を検知したときには、計測した送液ポンプ241の駆動時間tと、所定消費量Vと、差分供給量Voから、差分供給量Voの供給を行うときの送液ポンプ241の駆動時間Tを、(Vo/V)×t=T、の演算を行って算出する。
つまり、所定消費量Vと送液ポンプ241の駆動開始から第1センサ251が変位部材205を検知するまでの駆動時間tから、単位時間当たりの実際の送液ポンプ241の送液量を得ることができる。
そこで、記憶保持している差分供給量Voの供給を行うための送液ポンプ241の駆動時間Tを、単位時間当たりの実際の送液ポンプ241の送液量で算出(補正)することによって、正確に差分供給量Voの供給を行うことができる。
ここで、送液ポンプ241による送液量の変動について図18及び図19を参照して説明する。
図18は送液ポンプ241として使用しているチューブポンプの送液量の温度特性及び件年変化の依存性を示している。この図18から分かるように、送液速度(送液量)は、装置本体の環境温度によって変化し、温度が低くなると送液量は少なくなる、通常の使用環境である10℃〜35℃の間では、2倍程度の開きが生じる。また、また、新品のチューブポンプと比較して、5000mlの耐久試験後のチューブポンプでは、全体的に新品に比べて半分以下の送液量となっている。
送液量が変化する原因として、図19に示すようにインク粘度の温度特性がある。温度が低下するとともに、インクの粘度が上昇すること、また、チューブポンプのチューブ素材であるゴムが硬化して弾力性が低下すること、さらに、送液ポンプ241の駆動源として使用しているDCモータの回転数が低下することなどが挙げられる。
このような要因によって送液量が大きく変化するのは、また、本実施形態の装置では、送液ポンプ241からヘッドタンク5までの長い経路を細管のチューブ16で送液していることから、粘度変化等の影響を大きく受けることにも要因がある。
さらに、長期間使用後のチューブポンプのチューブは、図20にチューブ断面を示すように、新品の状態(図20(a))から扁平な状態(図20(b)に変形し、復元力が低下することによって送液量が低下していくことも送液量が変動する要因となる。
したがって、送液ポンプ241として特にチューブポンプを使用した場合、差分供給量Vo(変位量C)を、時間(送液ポンプ241の駆動時間)又は回転数(送液ポンプ241の駆動回転数)で制御すると、実際の送液量は、主にそのときの環境温度によって変動し、目標とする差分供給量Voを供給できなくなることがある。
そこで、本実施形態では、上述したように、供給開始から第1センサ251が変位部材205を検知するまでの時間と所定消費量Vから、差分供給量の供給を行うときの環境条件などの下での、実際の送液量を算出して、この実際の送液量で差分供給量Voの供給を行うための駆動時間Tを算出することにより、正確に差分供給量Voの供給を行えるようにしている。
ここで、所定消費量Vと計測したインク消費量との関係について説明する。インク消費量は、前述したようにソフトカウントによって行っており、実際の消費量と所定消費量Vとの間に誤差が生じることは避けられないものの、ソフトカウント値のばらつきと送液ポンプ241の送液量のばらつきを比較した場合、ソフトカウント値の方がはるかに精度が高いことから、ソフトカウント値に多少のばらつきが生じても、正確に差分供給量Voの供給を行うことができる。
次に、差分供給量Voの算出保持の他の例について図21を参照して説明する。図21は変位部材の各位置を説明する説明図である。
変位部材205は、ヘッドタンク5内を大気開放したときは大気開放位置Fに、大気開放機構207を閉じた状態で、所定量のインクを除去して所望の負圧値が得られる状態では位置Gに位置し、これを充填満タン位置としている。
まず、差分供給量Voは、記録ヘッド24から吸引排出させた吸引量から算出して保持することができる。
つまり、変位部材205が充填満タン位置Gの状態から、維持回復機構20を使用して記録ヘッド4のノズル面を吸引キャップ31でキャッピングし、吸引ポンプ812を用いてノズルからインクを吸引し、変位部材205が第1センサ251で検知される位置Hに到達するまでの吸引ポンプ812に駆動時間又は吸引ポンプ812の回転数から、変位量Cに相当する差分供給量Voを算出して記憶する保持することができる。
ここで、吸引ポンプ812の回転数(ステッピングモータを用いたパルス数)の温度依存性について図22を参照して説明する。
この吸引ポンプ812では、図22から分かるように、温度依存性はほとんど無く、吸引ポンプ812の回転数に比例した吸引量が得られている。吸引ポンプ812としても、インク供給のために用いる送液ポンプ241と同様にチューブポンプを用いているが、吸引量が安定している理由は、以下のように考えられる。
ヘッド吸引動作では、吸引ポンプ812に接続した吸引キャップ31を記録ヘッド4のノズル面に押し当て、密閉状態で吸引ポンプ812を駆動し、密閉空間の空気を排出して負圧を形成する。ここでは、インクではなく空気を排出するため、環境温度や環境湿度による粘度変化を受けることなく、一定の負圧が形成される。形成された負圧によってノズルからインクが排出されるが、気圧が大気圧と同等となるまでの時間をかけて吸引するため、ノズルからのインクの排出速度が影響を受けることが少ない。
したがって、差分供給量Voは記録ヘッド4からの吸引排出させた量を用いることができる。
次に、差分供給量Voは、記録ヘッド24を駆動して吐出させた液体量(カウント値)から算出して保持することができる。
つまり、変位部材205が充填満タン位置Gにある状態から、変位部材205が第1センサ251で検知される位置Hに到達するまでの間、記録ヘッド4を駆動して液滴を吐出させてその吐出量をカウントし、カウント値から体積(カウント値×吐出滴の体積)を計算し、変位量Cを差分供給量(送液体積)Voとして記憶保持する。
このように、記録ヘッド4からの吐出量をカウントすることで、吐出させる滴の滴体積は予め定まっているので、精度の高い吐出量を計測することができ、差分供給量Voとしてより高い精度を得ることができる。また、吐出滴の体積は、画像に直接影響するため温度補正を含めて正確に設定されていることから再現性も高くなる。
次に、差分供給量Voの保持タイミングについて説明する。
差分供給量Voの記憶保持は、ヘッドタンク5を一旦大気開放して、負圧を再形成する毎に実施することが好ましいももの、差分供給量Voを算出保持するための動作にはインク消費及び時間を伴うことになるので、実施頻度を制限することもできる。
例えば、ヘッドタンク5のフィルム部材は湿度変化により若干伸縮性があるため、大気開放状態における変位部材205の位置(図21の大気開放位置F)が変位する場合がある。例えば、前回、差分供給量Voを記憶した時点と、今回ヘッドタンク5を一旦大気開放処理する時点における湿度差が15%以上ある場合にのみ、差分供給量Voを再度設定して記憶するようにすることができる。
また、前回、差分供給量Voを記憶保持した時点からの経過時間が所定時間(例えば1ヶ月)になる毎に、差分供給量Voを再度設定して記憶するようにすることができる。
このようにすることで、無駄なインク消費を低減することができ、また、差分供給量Voの算出動作に使用する時間を少なくできる。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。