以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1〜図12は本発明の一実施の形態を示す図である。
<微細貫通孔成形装置>
まず、図1により微細貫通孔成形品を成形する微細貫通孔成形装置の全体構成について説明する。
図1に示すように、微細貫通孔成形装置10は、固定された受台11と、受台11上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂からなる基材シート20を支持するバックシート12とを備えている。
受台11は、温度制御装置16により、その上面を所望の温度に加熱できるようになっており、後記するバックシート12を介して基材シート20を加熱できるようになっている。
バックシート12は、耐熱性を有する(溶融温度が250℃以上である)とともに弾性変形により振動を吸収する振動吸収性及び貫入圧に抗して接触圧を発生するスプリングバック性を有することが好ましい。またバックシート12は、基材シート20に対して剥離性に優れているものであることが好ましい。例えば、本実施の形態においては、バックシート12の上面に、基材シート20に対して剥離性を有するバックシート剥離層12aが形成されている。このようなバックシート12としては、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、フッ素コーティングされた層やシリコン樹脂コーティングされた層(バックシート剥離層)12aを有する耐熱プラスチックのシート等、またはこれらを積層して組合せたもの等を用いることができる。
一方、基材シート20は、超音波により溶融する性質を有する熱溶融性プラスチックからなっているが、ある程度の剛性および耐熱性を有することが好ましい。この場合、基材シート20の溶融温度は、バックシート12の溶融温度より50℃以上低いことが好ましい。仮に基材シート20の溶融温度とバックシート12の溶融温度とが近い場合、基材シート20の成形時に、バックシート12が熱変形してしまうからである。このような基材シート20の材料としては、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等を用いることができる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。なお、基材シート20の厚みは任意であるが、後述する超音波成形型30の振動幅および超音波成形型30の上下方向の位置精度から考えて、10μm〜10mm程度とすることが好ましい。
また、微細貫通孔成形装置には、図1に示すように、バックシート12内を貫通する吸引部13が設けられている。この吸引部13を介して真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上に固定保持できるようになっている。
さらにバックシート12の上方には、超音波ホーン型からなる超音波成形型30が配置されている。超音波成形型30は、ベース部33と、ベース部33に取り付けられ、下方部に多数の突状部31が形成されたホーンヘッド32とを有している。さらに超音波成形型30に加熱装置14が接続されており、加熱装置14により超音波成形型30の多数の突状部31を補助的に加熱できるようになっている。超音波成形型30が超音波振動することによる加熱に加え、このような加熱装置14を補助的に用いることにより、超音波成形型30の突状部31を効率よく加熱することができる。
また、超音波成形型30に成形型制御装置15が接続されている。超音波成形型30は、この成形型制御装置15により制御され、上下方向に昇降移動するとともに、上下方向に超音波振動する。この成形型制御装置15による超音波成形型30の昇降位置精度および超音波振動の振幅精度は、いずれも1μmオーダーであることが好ましい。
超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、その先端に設けられた突状部31が上下方向に超音波振動しながら下降し、基材シート20に当接して基材シート20を振動加熱する。この振動加熱のみによって、基材シート20を軟化ないし溶融させて超音波成形型30により基材シート20を賦型するのには時間を要する。超音波振動のエネルギーを増加させると、振動の振幅も大きくなるため、形成しようとする貫通孔の位置精度が低下してしまう。本発明においては、上記したように、受台11が昇温して基材シート20をガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱できるため、位置精度を保てるような超音波振動エネルギーを基材シート20に付与すれば、容易に基材シート20を賦型できる状態(即ち、基材シート20が軟化ないし溶融した状態)にすることができる。その結果、簡易かつ短時間に、合成樹脂の基材シート20に多数の微細な貫通孔を容易に形成することができる。
受台11は、基材シート20の温度がガラス転移温度ないし軟化温度付近となるように温度制御されるが、好ましくは、合成樹脂の軟化温度よりも少し低い温度となるように制御される。基材シート20の温度が、合成樹脂の軟化温度以上の温度となると、基材シート20の加熱されている部分全体が軟化し始める。基材シート20の超音波成形型30の突状部31が当接する部分以外の部分が軟化すると、精度の高い貫通孔が形成できなくなる場合がある。基材シート20の温度は、軟化温度よりも1〜50℃、より好ましくは約5〜30℃低い温度が好適である。
図1において、成形型制御装置15により超音波成形型30を下降させ、超音波振動する突状部31を基材シート20に当接させて、基材シート20を振動加熱する。これにより突状部31が当接した部分の基材シート20が軟化ないし溶融する。基材シート20が軟化ないし溶融すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30がさらに下降して、超音波成形型30の突状部31を基材シート20に接触させ、突状部31を超音波振動させて基材シート20を振動加熱し、超音波成形型30の先端に設けられた突状部31が基材シート20に貫入する。突状部31の先端が、バックシート12に達すると、成形型制御装置15により、超音波成形型30の超音波振動が停止するとともに、振動エネルギーの付加による加熱も停止し、基材シート20の上面および下面からの熱伝導による冷却に移行する。基材シート20の上面では、ガラス転移点ないし軟化温度以下に温調された突状部31により基材シート20が冷却される。また一方基材シート20の下面は、温度制御装置16により、受台11を降温して基材シート20を冷却するか、あるいは、温度制御装置16により受台11の温度を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度以下の温度となるように制御し、基材シート20から受台11への熱伝導により、基材シート20を所望の温度に冷却する。
上記のようにして冷却された基材シート20の、超音波成形型30が接している部分(突状部31が貫入している部分)の合成樹脂が固化した後、成形型制御装置15により、超音波成形型30を上方に移動させて、突状部31を抜出する。この時、突状部31が基材シート20に形成された貫通孔から剥離しない場合もあり、超音波成形型30が上方に移動するのに伴って、超音波成形型30のホーンヘッド32下端にある突状部31とともに基材シート20も上方に持ち上がり、微細な貫通孔を変形させてしまうことがある。本発明においては、超音波成形型30をわずかに上昇させ、再度、超音波振動させることにより、突状部31の抜出が容易にすることができる。その結果、基材シートに、より精度の高い貫通孔を形成することができる。なお、以上のように成形型制御装置15を用いて基材シート20に貫通孔を形成する際の作用の詳細については後述する。
<超音波成形型>
次に、図2〜図4により、上述した超音波成形型30の構成について更に説明する。
図2に示すように、超音波成形型30は、上方から下方に向けて先細となる形状を有するベース部33と、ねじ部32bによりこのベース部33下端に螺着されたホーンヘッド32とを有している。このうちホーンヘッド32下端には、円筒形の先端凸部32aが形成されている。さらにこの先端凸部32aから下方に向けて多数の突状部31が突設されている。なおホーンヘッド32は、例えばチタン、アルミニウム、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属からなっている。また、突状部31をこれらの金属上に設けたNiメッキ層、Crメッキ層により構成することもできる。ベース部33は、上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなる円形の水平断面を有している。
次に。図3および図4により、超音波成形型30の突状部31の構成について更に説明する。図3および図4に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部31が形成されている。各突状部31は、それぞれ山形形状を有している。すなわち各突状部31は、平面円形状の頂部31aと、頂部31aから周囲に延びる裾部31bとを有している。このうち裾部31bは、頂部31a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に直径が大きくなる円形の水平断面を有している。なお、超音波成形型30の振幅を小さく設定したい場合には、超音波振動子に合わせて、逆に上方から下方に向けて徐々に直径が小さくなるようにしても良く、あるいは、同径としても良い。さらに、隣接する頂部31aの間には谷部31cが形成されている。なお各突状部31は、抜きテーパーを有する任意の形状であれば良いが、とりわけ各突状部31先端を鋭角的に形成することが好ましい。各突状部31先端を鋭角にすることにより、成形の際、基材シート20に最初に接触する部分の面積を小さくすることができる。このことにより、振動エネルギーを基材シート20に伝えやすくし、基材シート20の溶融を開始させやすくすることができる。
図4において、各突状部31の頂部31aの直径d1は、微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。隣接する頂部31a同士間の距離L1は、同様に微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば20μm〜100μm程度とすることが好ましい。各突状部31の高さh1も同様に任意に定めることができるが、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
次に、図5および図6により、このような超音波成形型30を作製する方法、とりわけ超音波成形型30の複数の突状部31を形成する方法について説明する。
まず、例えばチタン等からなる未加工のホーンヘッド32を準備する。次に、この未加工のホーンヘッド32を超精密切削加工機36に装着する。ここで超精密切削加工機36は、図4および図5に示すように、先端にダイヤモンド刃先38が設けられた切削工具37を有している。このような超精密切削加工機36としては、1nm程度の制御精度を有し、かつ加工後の金型の表面粗さRaが数nmとすることができるものが好ましい。具体的には、超精密切削加工機36として、例えばファナック株式会社製の超精密ナノ加工機(ROBONANO)等を挙げることができる。
次に、超精密切削加工機36の切削工具37は、軸A1を中心に時計回りに回転(自転)しながらホーンヘッド32の先端凸部32aに当接する。続いて切削工具37は、ホーンヘッド32の先端凸部32aのうち、各突状部31の頂部31aとなる部分を中心に時計回りに回転(公転)しながら、ホーンヘッド32の先端凸部32aを切削加工する。この結果、ホーンヘッド32の先端凸部32aに、頂部31aと裾部31bとを有する山形形状の突状部31が形成される。その後、このような作業を突状部31の個数分繰り返すことにより、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に多数の突状部31が形成される。
<微細貫通孔成形品の製造方法>
次に、図7(a)〜(f)、図8(a)〜(d)および図9を参照しながら、上記した微細貫通孔成形装置10を用いて微細貫通孔成形品40を製造する方法について説明する。
まず、製造しようとする微細貫通孔成形品40の3次元形状データに基づき、超精密切削加工機36を用いてホーンヘッド32を切削加工し、上記したような方法によって超音波成形型30を作製する。
続いて、超音波成形型30を微細貫通孔成形装置10に装着するとともに、加熱装置14により超音波成形型30を、通常の室温(20℃)から基材シート20を構成する合成樹脂のガラス転移点温度ないし軟化温度の付近の温度でかつ基材シート20が成形後に冷却固化しうる程度に低い温度となるように加熱する。
次いで、受台11上にバックシート12を保持し、このバックシート12上に基材シート20を載置する。また、吸引部13により真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上で動かないように固定支持する。
続いて、温度制御装置16により受台11を加温して、基材シート20を合成樹脂のガラス転移温度ないし軟化温度付近まで加熱する。
このとき、超音波成形型30はバックシート12の上方に配置されており、その突状部31は初期位置(Z0)にある(図7(a)、図9)。この際、超音波成形型30の突状部31はまだ超音波振動しておらず(振幅=0)、突状部31にも荷重は加わっていない(荷重=0)。
次に、成形型制御装置15により、突状部31が基材シート20の直上の切換位置(Z1)にくるまで、超音波成形型30を基材シート20に向けて下降させる。突状部31が初期位置(Z0)から切換位置(Z1)まで移動する間、超音波成形型30は、成形型制御装置15によって位置制御され、突状部31は一定の速度で下降される。
その後、超音波成形型30の突状部31は、基材シート20の直上の切換位置(Z1)に達する(図8(a)、図9)。このとき、成形型制御装置15は、超音波成形型30の制御を位置制御から荷重制御に切り換える。これと同時に、成形型制御装置15は、突状部31を上下方向に第1振幅(A1)で超音波振動させ(図9)、かつ超音波成形型30を更に降下させる。この第1振幅(A1)としては、例えば1μm〜10μmとしても良い。また、突状部31の振動数は任意に設定することができるが、20kHz〜40kHz程度に設定することが好ましい。なお、このとき突状部31には荷重は加わっていない(荷重=0)。
超音波成形型30が下降することにより、突状部31が基材シート20に当接し、当接位置(Z2)に達する(図7(b)、図8(b)、図9)。突状部31が基材シート20に当接したことは、突状部31に加わる荷重が所定の接触荷重(P0)に達したことを成形型制御装置15が検出することにより判断される。なお、この接触荷重(P0)は、0をわずかに上回る荷重、例えば1N〜3Nに設定することができる。なお、このとき突状部31の振幅は第1振幅(A1)に維持されている(図9)。
突状部31が基材シート20に当接した際、基材シート20のうち突状部31が接触した箇所が超音波振動の振動エネルギーにより振動加熱される。この振動エネルギーによる振動加熱と、受台11から加えられる熱エネルギーとにより、基材シート20を構成する合成樹脂が軟化ないし溶融温度まで達し、その結果、基材シート20のうち突状部31が当接している部分のみが局所的に軟化ないし溶融する。
続いて、超音波成形型30を更に下降させる。この間、突状部31は、超音波振動により基材シート20を加熱しながら、基材シート20中を貫入していく。なお、この間、超音波成形型30の制御は引き続き荷重制御に維持されており、突状部31に加わる荷重を保持荷重(P2)まで段階的に増加させながら、この間突状部31を超音波振動させる振幅を段階的に上昇させていく。
具体的には、突状部31が基材シート20に当接した後、まず突状部31に加える設定荷重を第1荷重(P1)に変更し、突状部31の振幅は第1振幅(A1)に維持される(図9)。突状部31が基材シート20中を貫入していくことにより、突状部31に加わる荷重は増加し、接触荷重(P0)から第1荷重(P1)まで上昇する。そして突状部31に加わる荷重が第1荷重(P1)となったとき、突状部31は中間位置(Z3)に達する(図8(c)、図9)。なお、第1荷重(P1)としては、例えば40N〜70Nに設定することができる。図9において、設定荷重を一点鎖線で示し、実測荷重を実線で示している。
なお、このようにして、突状部31が当接位置(Z2)で基材シート20に当接した後、突状部31に加わる荷重が第1荷重(P1)まで増加し、突状部31が中間位置(Z3)に達するまでが第1工程に相当する。
このようにして突状部31が中間位置(Z3)に達したとき、成形型制御装置15は、突状部31に加える設定荷重を第2荷重(P2)に変更する。また、突状部31の振幅を第1振幅(A1)から第2振幅(A2)に変更し、第2振幅(A2)をもって突状部31を超音波振動させる(図9)。なお、第2振幅(A2)は第1振幅(A1)より大きく、例えば5μm〜20μmとしても良い。
続いて、超音波成形型30を更に降下させ、突状部31に加わる荷重を第1荷重(P1)から第2荷重(P2)まで増加させながら、この間第2振幅(A2)をもって突状部31を超音波振動させる。この状態で、突状部31は超音波振動されて、基材シート20が振動加熱され、突状部31により基材シート20が貫通する。このようにして、超音波成形型30の突状部31の先端がバックシート12(バックシート剥離層12a)に当接する。突状部31がバックシート12に当接したことは、突状部31に加わる荷重が第2荷重(P2)に達したことを成形型制御装置15が検出することにより判断される。なお、第2荷重(P2)は、第1荷重(P1)より大きく、例えば80N〜120Nに設定することができる。このように、突状部31先端がバックシート12に当接し、突状部31に加わる荷重が第2荷重(P2)となったとき、突状部31は下端位置(Z4)に達する(図7(c)、図8(d)、図9)。
なお、このようにして、突状部31に加わる荷重を第1荷重(P1)から第2荷重(P2)まで増加させ、突状部31を中間位置(Z3)から下端位置(Z4)に降下させるまでが第2工程に相当する。さらに、上述した第1工程と第2工程が、本実施の形態における貫入工程に相当する。
突状部31の先端がバックシート12に当接したとき、超音波成形型30の下降を停止させる。同時に、突状部31先端の振動下端がバックシート12の表面上に位置するように維持したまま、超音波成形型30の超音波振動の振幅を徐々に減衰させていき、最終的に停止させる。
その後、この状態で荷重を第2荷重(P2)に保ったまま一定時間超音波成形型30を押圧保持する(図9)。この場合、第2荷重(P2)が保持荷重に相当する。この間、加熱装置14が停止し、超音波成形型30を冷却すると同時に、温度制御装置16により受台11を降温して基材シート20が合成樹脂のガラス温度ないし軟化温度以下の温度となるまで冷却する。または、振動が停止するのと同時に、予め設定温調した超音波成形型30および受台11の温度で基材シート20が冷却され、硬化される。これらの工程により、局部的に軟化ないし溶融していた基材シート20が固化し、基材シート20に多数の微細貫通孔41が形成され、基材シート20から多数の微細貫通孔41を有する微細貫通孔成形品40が成形される。この場合、図示しない冷却装置を用いることにより、超音波成形型30および基材シート20を積極的に冷却しても良い。
なお、このようにして、超音波成形型30の降下と突状部31の超音波振動を停止し、この状態で荷重を第2荷重(P2)(保持荷重)に保ったまま、超音波成形型30を下端位置(Z4)に一定時間保持し、基材シート20(微細貫通孔成形品40)を冷却する工程が、保持工程に相当する。
次に、成形型制御装置15により超音波成形型30を上昇させる。この場合、超音波成形型30および微細貫通孔成形品40(基材シート20)は冷却されて寸法がわずかに縮んでいる。この状態で、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から離型することができる(図7(d))。また、微細貫通孔成形品40(基材シート20)が超音波成形型30に付着する場合には、まず超音波成形型30をわずかに上昇させ、そこで再度極短時間超音波成形型30を振動させることで、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から容易に離型することができる。
あるいは、突状部31に加わる荷重を第2荷重(P2)に保ったまま、再度極短時間超音波成形型30を振動させることで、微細貫通孔41の口径など、微細貫通孔41の賦形状態をわずかに変化させても良い。
続いて、吸引部13による真空吸引を停止し、受台11からバックシート12および微細貫通孔成形品40を取外す(図7(e))。最後に、バックシート12から微細貫通孔成形品40を剥離することにより、微細貫通孔成形品40が得られる(図7(f))。なお、受台11上に保持された状態のバックシート12から直接微細貫通孔成形品40を剥離しても良い。
このように、本実施の形態によれば、突状部31が基材シート20の直上の切換位置(Z1)にくるまで超音波成形型30を位置制御して降下させ、その後、切換位置(Z1)で超音波成形型30の制御を位置制御から荷重制御に切り換えて、超音波成形型30を更に降下させる。このとき、突状部31を超音波振動させ、突状部31が基材シート20を貫通することにより、基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成する。このように、超音波成形型30が荷重制御されて突状部31が基材シート20を貫通することにより、基材シート20に多数の微細貫通孔41を高い精度で形成することができる。
また、本実施の形態によれば、基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成する際、突状部31が当接位置(Z2)で基材シート20に当接し、その後、突状部31に加わる荷重を第1荷重(P1)まで増加させながら、この間第1振幅(A1)をもって突状部31を超音波振動させる(第1工程)。その後、突状部31に加わる荷重を第1荷重(P1)から第2荷重(P2)まで増加させながら、この間第1振幅(A1)より大きな第2振幅(A2)をもって突状部31を超音波振動させる(第2工程)。このように、微細貫通孔41を形成する工程の後半に突状部31に加わる荷重および突状部31の振幅を大きくすることにより、より多くの振動エネルギーを加えることができると同時に微細貫通孔41の形状が正確に定まりやすくなり、微細貫通孔41を高精度かつ短時間で賦形することが可能となる。また、これらの工程をとることにより、第1工程では、突状部31の頂部31aとこれに当接する微細貫通孔41の円形開口41a近傍の部分に振動加熱が集中するが、第2工程では接触面積が増加するため、より振動エネルギーを与える必要が生じることに対応することができる。
さらに、本実施の形態によれば、第2工程の後、超音波成形型30の降下を停止するとともに突状部31の超音波振動を停止し、この状態で荷重を第2荷重(P2)(保持荷重)に保ったまま一定時間保持する(保持工程)。これにより、局部的に軟化ないし溶融していた基材シート20を冷却固化し、精度良く賦形された微細貫通孔41の形状を維持することができるとともに、突状部31を微細貫通孔41から抜き易くすることができる。
さらに、本実施の形態によれば、突状部31が基材シート20に当接したことは、突状部31に加わる荷重が接触荷重(P0)に達したことを検出することにより判断されるので、基材シート20に対するコンタクト検出機能を有しており、正確な検出制御を実行することができる。また、突状部31がバックシート12に当接したことは、突状部31に加わる荷重が第2荷重(P2)に達したことを検出することにより判断されるので、突状部31の停止位置を正確に検出することができる。
<微細貫通孔成形品>
次に、図10および図11により、上記した微細貫通孔成形装置10により成形された微細貫通孔成形品40の構成について説明する。図10は、微細貫通孔成形品を示す平面図であり、図11は、図10のXI−XI線断面図である。
図10および図11に示す微細貫通孔成形品40は、微細貫通孔成形装置10を用いて基材シート20を成形することにより製造されたものである。このような微細貫通孔成形品40は、例えばフィルター部材、通気性部材、ネブライザーで使用される微粒液滴生成用のメッシュ等、様々な機能を発揮する部材として用いられる。このような微細貫通孔成形品40を構成する材料としては、上述したような各種の熱溶融性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等が挙げられる。その他、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリメチルペンテン(PMP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。
図10および図11に示すように、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、成形品本体部42の全体にわたって形成された複数の微細貫通孔41を有している。各微細貫通孔41は、それぞれ超音波成形型30の各突状部31によって賦形されたものであり、したがって、各突状部31の形状に対応する形状を有している。各微細貫通孔41は、成形品本体部42の一面42aに設けられた円形開口41aと、円形開口41aから成形品本体部42の他面の円形開口42b側に向けて延びる斜面部41bとを有している。斜面部41bは、直線や曲線としてよいが、特に、後記するようなミスト形成用フィルターとして微細貫通孔成形品40を使用する場合には、斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔とすることが好ましい。また、符号40aは、円形開口41a周縁に形成された孔周縁部であり、符号40bは、互いに隣接する微細貫通孔41同士の間に形成された接続部であり、符号40cは、微細貫通孔41の周囲に形成された肉厚部である。
斜面部41bが放物線となるようなコニーデ形状の貫通孔では、図11に示すように、微細貫通孔成形品40の表裏において貫通孔の直径が異なる。例えば、各微細貫通孔41の円形開口41aの直径d2は、例えば1μm〜10μm程度とすることが好ましい。また、円形開口42bの直径d3は、例えば20μm〜80μm程度とすることが好ましい。貫通孔41の数は、微細貫通孔成形品40の単位面積あたり、200〜1000個/mm2程度であることが好ましく、各貫通孔41が上記のような数となるには、隣接する円形開口41a同士間の距離L2は、例えば32μm〜70μm程度とすることが好ましい。さらに微細貫通孔成形品40の厚さt2は、例えば10μm〜100μm程度とすることが好ましい。
上記したような微細貫通孔成形品40は、ネブライザー等のミスト発生装置のミスト形成用フィルターとして好適に使用できる。例えば、図12に示すように、ミスト発生装置50の超音波振動子51とミスト発生口52との間に、微細貫通孔成形品40(ミスト形成用フィルター54)を配置する。超音波振動子51上に供給された液体53は、超音波振動子51からの振動エネルギーにより粒状の液滴53aが形成されるが、ミスト形成用フィルター54の貫通孔を液滴が通過してミスト発生口52へ放出されることにより、所望の粒径を有する液滴53aを形成することができる。上記のような表裏で直径の異なる貫通孔が設けられた微細貫通孔成形品40の貫通孔の直径の大きい側が超音波振動子51側となるように微細貫通孔成形品40を配置することにより、液滴53aの粒径が1〜10μm程度のミストを形成することができる。
<変形例>
上記した実施の形態において、基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成する際、突状部31が基材シート20に当接した後、突状部31に加わる荷重を第2荷重(P2)(保持荷重)まで2段階のステップで増加させながら、突状部31の振幅を2段階のステップで上昇させている。しかしながら、これに限られることはなく、突状部31に加わる荷重を、保持荷重まで3段階以上のステップで増加させながら、突状部31の振幅を3段階以上のステップで上昇させても良い。例えば、突状部31の接触面積S(基材シート20の表面に対する投影面積)(図8参照)に合わせて、突状部31に加わる荷重を保持荷重まで3段階以上のステップで増加させながら、突状部31の振幅を3段階以上のステップで上昇させても良い。
また、上記した実施の形態において、突状部31に加わる荷重を第2荷重(P2)(保持荷重)まで段階的に増加させながら、突状部31の振幅を段階的に上昇させる際、突状部31がある一定の荷重(第1荷重(P1)、第2荷重(P2))に達したことをもってステップを切り換えている。しかしながら、これに限られるものではなく、突状部31の移動を開始した後、所定の時間に達したことをもって各ステップを切り換えても良い。例えば、所定の時間T1(図9)に達したときに第1工程から第2工程に切り換え、所定の時間T2(図9)に達したときに第2工程から保持工程に切り換えても良い。
あるいは、突状部31の先端位置を常時監視しておき、突状部31が所定の位置に達したことをもって各ステップを切り換えても良い。例えば、突状部31が所定の中間位置(Z3)(図8(c)、図9)に達したことを検知したときに第1工程から第2工程に切り換え、突状部31が所定の下端位置(Z4)(図8(d)、図9)に達したことを検知したときに第2工程から保持工程に切り換えても良い。
更にまた、これ等の設定値の監視を同時に進め、先行して設定値に達したことを検知したものがあれば、それを優先して第1工程から第2工程に切り換えても良く、また第2工程から保持工程に切り替えても良い。