JP5883674B2 - 多電極ガスシールドアーク溶接方法および多電極ガスシールドアーク溶接装置 - Google Patents
多電極ガスシールドアーク溶接方法および多電極ガスシールドアーク溶接装置 Download PDFInfo
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Description
さらに、先行ガスシールドアーク溶接電極と、後行ガスシールドアーク溶接電極との極間距離を15乃至50mmに設定することで、多電極ガスシールドアーク溶接方法は、2電極で1つの溶融池を形成することが可能となり、かつ、先行ガスシールドアーク溶接電極、および後行ガスシールドアーク溶接電極のアークが安定する。
多電極ガスシールドアーク溶接方法は、フラックス入りワイヤを用いることにより、フラックスがアークを安定化させるので、良好な溶接部を得ることができる。
本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法を水平すみ肉溶接に適用することにより、発明の効果をより適切に得ることができる。
また、多電極ガスシールドアーク溶接装置は、先行ガスシールドアーク溶接電極と、後行ガスシールドアーク溶接電極との極間距離を15乃至50mmに設定することで、2電極で1つの溶融池を形成することが可能となり、かつ、先行ガスシールドアーク溶接電極、および後行ガスシールドアーク溶接電極のアークが安定する。
ここで、全方向とは、溶接進行方向に直交する水平方向(以下「突合せ方向」または「X方向」という)と、鉛直な上下方向である垂直方向(以下適宜に「Y方向」という)と、溶接進行方向(以下「溶接方向」または「Z方向」という)と、を含む方向をいう。
本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接装置によれば、本発明の多電極ガスシールドアーク溶接方法を行うことができるので、溶接において、優れたビード外観およびビード形状が得られる。また、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接装置によれば、湯だまりの安定化が確実に得られる。さらに、溶接不良に対する手直しという作業負担から解放され、生産性を大幅に向上させることができる。
まず、多電極ガスシールドアーク溶接装置について説明した後、多電極ガスシールドアーク溶接方法について説明する。
図1、2に示すように、多電極ガスシールドアーク溶接装置S(以下、適宜、溶接装置Sという)は、先行ガスシールドアーク溶接電極11(以下、適宜、先行電極11という)と、後行ガスシールドアーク溶接電極21(以下、適宜、後行電極21という)と、を備え、さらに先行電極11と後行電極21との間に中間電極31を備える。また、2つの直流電源、すなわち、先行電極11に接続された直流電源Lおよび後行電極21に接続された直流電源Rと、中間電極用交流電源Mと、を備える。なお、中間電極31はフィラー電極、すなわちフィラーワイヤである。
なお、溶接装置Sは、図1に示すように、水平すみ肉溶接に好適に適用される。詳細には、溶接装置Sは、被溶接材料1である下板2と立板3の隅部(溶接箇所)に沿うようにして、先行電極11、後行電極21、および中間電極31の3つの電極が一組として配置され、図1の矢印方向に移動しながら溶接を行う。なお、符号6は配電盤である。
<先行電極、後行電極、中間電極>
先行電極11、および後行電極21は、各電極の先端にアークを発生させ、被溶接材料1である下板2と立板3との溶接箇所に溶融池8を形成させるものである(図2参照)。一方、中間電極31は、溶融池8の湯だまり5に挿入され、アークブロー等の磁場干渉の発生を防止し、当該湯だまり5を安定させるものである(図2参照)。
なお、先行電極11、および後行電極21により発生した溶融池8が、凝固することにより溶接金属7となり、当該溶接金属7が下板2と立板3を溶接することとなる。そして、溶接スラグ19は、溶接金属7の表面に形成される。
また、中間電極31も消耗電極であり、ワイヤとしてはソリッドワイヤやフラックス入りワイヤ等により構成されるが、特に限定されるものではない。
なお、各電極を構成するフラックス入りワイヤやソリッドワイヤ等の成分、径、設置角度等は特に限定されず、特開2004−261839号公報に開示されているような条件で行えばよい。
また、先行電極11、後行電極21、および中間電極31は、送給速度が一定速度に制御され溶接箇所に供給されることが好ましい。
直流電源L、Rは、先行電極11、または後行電極21に電流を供給する電源である。
直流電源Lは、正極に先行電極11が接続され、負極に被溶接材料1(下板2または立板3)が接続される。そして、直流電源Rは、正極に後行電極21が接続され、負極に被溶接材料1(下板2または立板3)が接続される。そして、直流電源L、および直流電源Rは、定電圧特性を有する。なお、定電圧特性の電源とは、一定速度に制御されて送給されている消耗電極の送給速度が、何らかの外乱によって送給速度の変化が生じ、アーク電圧が変化した場合にあっても、常に一定の電圧に制御するように自動的に電流値を増減して安定なアーク溶接を持続できるように制御する電源のことである。
直流電源L、および直流電源Rから、先行電極11、および後行電極21に供給される電流の値については、特に限定されず、例えば、先行電極11に供給される電流を250A以上、後行電極21に供給される電流を200A以上とすればよい。
中間電極用交流電源Mは、中間電極31および被溶接材料1(下板2または立板3)に接続されるとともに、定電流特性または垂下特性を有する電源である。
なお、定電流特性とは、電流を意図的に制御する場合を除き、負荷電圧が増大しても、電流がほとんど変化しない特性である。また、垂下特性とは、溶接電源の出力が正弦波状に変化する特性である。垂下特性においては、アーク長の変化によって電圧はかなり変化するが、電流の変化はわずかである。
定電流特性および垂下特性においては、アーク長の変動等により電圧が変化しても、ほとんど一定の電流を流すことができる。
また、定電流特性または垂下特性を有する中間電極用交流電源Mを用いると、中間電極31はアークを出さないため、ワイヤが適度に溶けて冷却効果が向上する。
ここで、溶接金属7は、溶融池8への入熱量が増大すると、ブローホール、ピットなどの溶接欠陥が増える。また、溶融池8がさらさらな状態となり、プール形状を保ちにくくなる(すなわち、垂れ落ちやすくなる)。しかしながら、中間電極31の作用により溶融池8が冷却されると、溶接欠陥の発生が抑制され、またプール形状が保たれやすくなる。
なお、中間電極用交流電源Mの構成自体は、従来公知のものと同様である。
ここで、極間距離とは、各電極におけるワイヤ先端間の距離である。すなわち、溶接時における先行電極11の先端のワイヤ径の中心と後行電極21の先端のワイヤ径の中心とを結んだ距離が、15乃至50mmになるように設定する。
直流電源を用いて溶接を行う場合、磁気吹き及び1つの溶融池形成の点から先行電極11及び後行電極21の極間距離が問題となる。この極間距離が15mmよりも小さいと、先行電極11、後行電極21において共にアークが安定せず、ビード外観・形状が悪くなり、またスパッタの発生量が多くなる。一方、極間距離が50mmよりも大きいと、2電極で1つの溶融池を形成することが不可能となり、耐ピット性が悪くなる。従って、先行電極11と後行電極21の極間距離を15乃至50mmの範囲とする。なお、より好ましい範囲は、25乃至35mmである。
<電極送給手段>
図3に電極送給手段の構成を示す。ここでは、中間電極31を取り上げて説明するが、先行電極11、後行電極21においても同様の構成である。
電極送給モータ16は、電極送給ローラ17を介して中間電極31を被溶接材料1の表面の所定位置に送給する。この電極送給ローラ17は、例えば、中間電極31を挟み込むように配置された2個のローラで構成されているものを用いればよい。
電極送給モータ16は、速度制御手段18により制御されている。
速度制御手段18は、中間電極31を一定の速度に制御する手段である。そして、速度制御手段18は、図3に示すように、電極送給速度設定器14と、電極送給モータ制御回路15と、を備えている。
電極送給速度設定器14は、予め設定された電極の送給速度を示す送給速度信号を電極送給モータ制御回路15に出力するものである。なお、電極送給速度設定器14は、送給速度を外部より入力することができる。
電極送給モータ制御回路15は、電極送給速度設定器14から入力された送給速度信号に基づいて電極送給モータ16を制御する回路である。
なお、電極の送給速度については、特に限定されず、好ましくは、1〜3m/minである。
次に、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接装置のより具体的な一実施形態として、このような調整機構を備えた多電極ガスシールドアーク溶接装置の具体的な形態の一例について図4〜14を参照して説明する(詳細については、特願2011−42739参照)。
≪溶接装置の構成≫
図4及び図5に示すように、溶接装置Sは、被溶接材料1である下板2と立板3とを被溶接箇所1a(溶接線)に沿って溶接ヘッド部4を移動させながら溶接する多電極ガスシールドアーク溶接装置である。溶接装置Sは、移動装置100と、制御盤400と、操作盤410と、集塵機500と、ワイヤ収容器600と、溶接用電源と冷却水供給装置とシールドガス供給装置(図示省略)と、溶接ヘッド部4(溶接機)と、を備えている。
ここで、X方向は溶接方向に直交する水平方向である突合せ方向、Y方向は鉛直な上下方向である垂直方向、Z方向は溶接方向であり、以下、適宜に使用して説明する。なお、本溶接装置は、特願2011−42739の溶接装置と同様である。
図5に示すように、移動装置100は、溶接ヘッド部4(溶接機)を溶接方向(Z方向)、突合せ方向(溶接方向に直交するX方向)、垂直方向(Y方向)へ移動させる走行装置である。移動装置100は、例えば、溶接方向移動装置110(図4参照)と、ヘッドユニット装置200と、上下動用シリンダ270と、溶接ヘッド部移動装置80と、を備えて構成されている。
図4に示す溶接方向移動装置110は、その背面側に配置された溶接装置Sの多数の溶接ヘッド部4(図5参照)を溶接方向へ移動させる搬送装置である。溶接方向移動装置110は、一対のレール150と、走行ローラ120と、走行モータ130と、架台フレーム140と、を備えている。溶接方向移動装置110は、走行モータ130を回転駆動させることによって、各溶接ヘッド部4がベース50と共に溶接方向に移動して溶接が行われる。
図5に示すように、ヘッドユニット装置200は、溶接ヘッド部4を突合せ方向へ移動させるためのアーチ形状の装置であり、例えば、架台フレーム140(図4参照)に沿って設けられている。ヘッドユニット装置200には、スタンション210(図4参照)と、横方向ガイド220と、摺動板230と、固定フレーム240と、上下動フレーム250と、ヘッドユニット横動モータ260と、上下動用シリンダ270と、右溶接ヘッド部上下動用シリンダ81と、左溶接ヘッド部上下動用シリンダ82と、操作盤410と、が備えられている。
上下動用シリンダ270は、固定フレーム240に鉛直方向ガイド280を介して上下動フレーム250を横方向ガイド220及び摺動板230に対して上下動させる装置であり、例えば、エアシリンダ装置からなる。上下動用シリンダ270は、枠状の上下動フレーム250の上端部下側中央部に連結されたシリンダ271と、上端部がシリンダ271内に上下動自在に設けられ、下端部が摺動板230に固定されたピストンロッド272と、を備えている。
図5に示すように、前記溶接ヘッド部移動装置80は、前記溶接方向移動装置110(図4参照)、ヘッドユニット装置200(図4参照)及び上下動用シリンダ270よりも、溶接ヘッド部4をX,Y,Z方向に短い距離を移動させて溶接ヘッド部4の位置を調整するための装置である。この溶接ヘッド部移動装置80は、右溶接ヘッド部上下動用シリンダ81と、左溶接ヘッド部上下動用シリンダ82と、突合せ用エアシリンダ83と、を備えている。
また、不図示の冷却水供給装置とシールドガス供給装置も同様である。
図5に示すように、溶接ヘッド部4(溶接機)は、先行電極用トーチ10、後行電極用トーチ20及び中間電極用トーチ30(すなわち、フィラーワイヤ用トーチ30)と、それらのトーチ(10,20,30)をそれぞれ支持するトーチクランプ機構40と、それらのトーチ(10,20,30)に電流を供給する溶接用電源(図示省略)と、それらのトーチ(10,20,30)が支持されるベース50と、ベース50等の溶接ヘッド部4を移動させる溶接ヘッド部移動装置80と、を備えている。
この溶接ヘッド部4は、溶接方向移動装置110で走行させながらガスシールドアーク溶接を行うものであり、前記トーチ(10,20,30)に電流を供給する構成や、不活性のガスを噴射する構成などは、公知のガスシールドアーク溶接装置の構成を用いているため、その詳細な説明は省略する。
なお、先行電極用トーチ10および後行電極用トーチ20は、各々独立した不図示のシールドガス供給ノズルを有している。また、中間電極31の先端の所定位置には、ワイヤが露出するように、ワイヤを通電状態で供給するためのチップ構造体が設けられている。すなわち、中間電極用トーチ30の内部には、通電チップPが設けられており、溶接電源からの溶接電流が当該通電チップPを介して中間電極31に供給されるように構成されている。
トーチクランプ機構40は、先行電極用トーチ10、後行電極用トーチ20、中間電極用トーチ30をそれぞれ支持する支持機構であって、先行電極用トーチ10を支持する先行電極用トーチクランプ機構40Aと、後行電極用トーチ20を支持する後行電極用トーチクランプ機構40Bと、中間電極用トーチ30を支持する中間電極用トーチクランプ機構40Cとからなる。先行電極用トーチクランプ機構40Aと後行電極用トーチクランプ機構40Bとは、対称形状の機構であるため、先行電極用トーチクランプ機構40Aを主に説明して後行電極用トーチクランプ機構40Bの説明は適宜省略する。
切欠溝45bは、トーチクランプ45の外周部から保持孔45aに亘って切欠形成された部位であり、一対の突片45dが所定の隙間間隔で配置されたことによって形成されている。
ねじ孔45cは、切欠溝45bに直交して形成された締付具合調整用の締結部材T1が螺入される孔である。ねじ孔45cは、締結部材T1がねじ込まれることによって、保持孔45aの径と、一対の突片45d間の切欠溝45bの間隔とが調整されて、先行電極用トーチ10を保持する保持孔45aの締付力が調整されるように突片45dに形成されている。
突片45dは、切欠溝45b及びねじ孔45cが形成された一対の厚板状のものからなる。突片45dは、締結部材T1を強くねじ孔45cに螺合させれば、突片45d,45d間の間隔が狭くなり、トーチクランプ45が先行電極用トーチ10を締め付ける締付力が強くなって、トーチクランプ45がしっかりとクランプされる。締結部材T1を緩めれば、保持孔45aの内径が先行電極用トーチ10を締め付ける締付力が弱くなり、その先行電極用トーチ10を保持孔45aの中心線を中心として周方向(矢印b方向)に回動させたり、前記中心線の方向(矢印a方向)に進退させてトーチクランプ45からの先行電極用トーチ10の突き出し長さを調整したり、引き抜いたりすることが可能となる。
固定雌ねじ部45eは、トーチクランプ取付ステイ46がトーチクランプ45に固定するトーチクランプ支持具48の先端部の雄ねじ部が螺合する部位である。
締結部材T1は、切欠溝45bの隙間間隔を調整して保持孔45aによるトーチクランプ45の締付力を調整する調整用ねじ部材であり、例えば、二本のねじ部材からなる。
図11(a)、(b)に示すように、角度調整機構44は、先行電極用トーチ10を所定角度回動させて先行電極用トーチ10の設置角度を調整する機構である。角度調整機構44は、先行電極用トーチ10を支軸部材47を中心として垂直方向(Y方向)へ回動可能に軸支して先行電極11の垂直方向の向きを調整できる。
角度調整機構44は、トーチクランプ45に隣設接続されトーチクランプ取付ステイ46と、トーチクランプ取付ステイ46に形成された支軸部材挿入孔46aに挿入される支軸部材47と、トーチクランプ取付ステイ46に形成された円弧状長孔46bを挿通してトーチクランプ45に締結されるトーチクランプ支持具48と、を備えてなる。
このため、支軸部材47及びトーチクランプ支持具48は、トーチクランプ45に締結される締付具合を緩めることによって、先行電極11の垂直方向の角度を調整する角度調整機構44を構成する。
なお、角度調整機構44は、図12(b)、図13に示すように、中間電極用トーチ30の中間電極用トーチクランプ機構40Cにも、円弧状長孔を利用した同様な角度調整機構44が設けられている。このため、その説明は省略する。
図6及び図7に示すように、位置調整機構60は、先行電極用トーチ10、後行電極用トーチ20、中間電極用トーチ30(図12参照)をそれぞれ突合せ方向及び垂直方向へ移動させて、それらのトーチ(10,20,30)の位置をそれぞれ位置調整する機構である。位置調整機構60は、先行電極用トーチ10を位置を調整する先行電極トーチ位置調整機構60Aと、後行電極用トーチ20の位置を調整する後行電極トーチ位置調整機構60Bと、中間電極用トーチ30の位置を調整する中間電極トーチ位置調整機構60Cとを有している。先行電極トーチ位置調整機構60A、後行電極トーチ位置調整機構60B及び中間電極トーチ位置調整機構60Cは、各トーチクランプ45,45Cをそれぞれ垂直方向(Y方向)へ移動させて位置調整することができる図9に示す垂直位置決め機構61と、各トーチクランプ45をそれぞれ突合せ方向(X方向)へ移動させて位置調整することができる図10に示す水平位置決め機構62,61C(図12参照)と、を備えている。
また、位置調整機構60は、後記する溶接方向位置調整機構60Dと一体となって、先行電極用トーチ10、後行電極用トーチ20、中間電極用トーチ30をそれぞれ溶接方向(Z方向)に移動させて、それらのトーチ(10,20,30)の位置をそれぞれ位置調整する機能を有している。
図6及び図9に示すように、先行電極トーチ位置調整機構60A(位置調整機構60)の垂直位置決め機構61は、それぞれ後記するノブ64と、送りねじ部材65と、固定台66と、スライダ67(垂直スライダ部67Y)と、締結部材T5と、を備えている。垂直位置決め機構61により各トーチ(10,20,30)は、ノブ64を回動させることによって送りねじ部材65を介在して垂直スライダ部67Yを垂直方向(Y方向)へ移動させることにより、この垂直スライダ部67Yに連結された水平位置決め機構62の左右ガイド部69aと共に水平スライダ部67X、トーチクランプ取付ステイ46、トーチクランプ45及び各トーチ(10,20,30)を垂直方向に対して一体に移動させ、垂直方向へ移動調整することができるようになっている。
送りねじ部材65は、ノブ64を回転操作することによって一体に回転するねじ棒状の部材であり、中央部に垂直スライダ部67Yが進退自在に螺合され、基端部側が固定台66の上下ガイド部66aに回動自在に片持ち支持されている。
固定台66は、上下ガイド部66a(支持板部)を有する正面視して略溝形鋼状の形状をした部材であり、ベース50の長孔50aに挿入した締結具T3を上下ガイド部66aの下板部に形成された雌ねじ部66dにねじ込むことによってベース50上に固定されている。固定台66は、垂直スライダ部67Yに挿通してその垂直スライダ部67Yを摺動自在に支持する左右一対のガイドシャフト66cを架設している。
スライダ67は、送りねじ部材65に形成された雄ねじ部65aに螺合する雌ねじ部67Ybを有し、送りねじ部材65の回転に伴って上下ガイド部66a,66a間をスライド移動する部材である。スライダ67は、垂直方向へ移動可能な垂直スライダ部67Yと、突合せ方向へ移動可能な水平スライダ部67X(図10参照)を支持するガイド部材69とを締結部材T5で連結して一体化させ、固定台66に対して一緒に垂直方向へ動くようになっている。
締結具T3は、後記する溶接方向位置調整機構60Dの位置調整用のボルトである。
前記したように締結部材T5は、水平位置決め機構62のガイド部材69を垂直位置決め機構61の垂直スライダ部67Yに固定するためのボルトである。
図10に示すように、先行電極トーチ位置調整機構60A(位置調整機構60)の水平位置決め機構62は、後記するノブ63と、送りねじ部材68と、スライダ67の水平スライダ部67Xと、ガイド部材69と、締結部材T2と、を備えてなる。水平位置決め機構62により各トーチ(10,20,30)は、ノブ63を回動させることによって送りねじ部材68を介在して水平スライダ部67Xを突合せ方向(X方向)へ移動させることにより、この水平スライダ部67Xに連結されたトーチクランプ取付ステイ46と共にトーチクランプ45及び各トーチ(10,20,30)を突合せ方向に対して一体に移動させ、突合せ方向へ移動調整することができるようになっている。
送りねじ部材68は、ノブ63を回転操作することによって一体に回転するねじ棒状の部材であり、中央部に水平スライダ部67Xが進退自在に螺合され、基端部側がガイド部材69の左右ガイド部69aに回動自在に片持ち支持されている。
スライダ67の水平スライダ部67Xは、送りねじ部材68を回転自在に軸支する左右ガイド部69aと、送りねじ部材68に形成された雄ねじ部68aに螺合する雌ねじ部67Xbと、を有し、送りねじ部材68の回転に伴って突合せ方向(X方向)へ水平にスライド移動する。
ガイド部材69は、平面視して略溝形鋼状の形状をした部材であり、水平スライダ部67Xに挿通してその水平スライダ部67Xを摺動自在に支持する上下一対のガイドシャフト69cを架設している。図11に示すように、ガイド部材69の外側側面は、このガイド部材69の内側内壁面から垂直スライダ部67Y側に向けて形成された4つの座ぐり孔に、それぞれ締結部材T5がねじ込められて垂直スライダ部67Yの側面に当接した状態にボルト締めされている。
前記締結部材T2は、トーチクランプ取付ステイ46の側面からスライダ67にねじ込められて、トーチクランプ取付ステイ46とスライダ67とを連結するためのボルトである。
図12〜図13に示す中間電極用トーチ30には、前記したように先行電極用トーチ10に設けられた先行電極用トーチクランプ機構40Aと略同一の中間電極用トーチクランプ機構40C、及び、角度調整機構44が設けられている。
図12〜図13に示すように、中間電極トーチ位置調整機構60Cは、前記先行電極用トーチ10の先行電極トーチ位置調整機構60Aと同様に、中間電極用トーチ30を水平な突合せ方向(矢印c方向)へ移動させ、そのトーチ(30)の位置を調整する水平位置決め機構61Cを有しているものの、垂直位置決め機構61に相当する機構を備えていない点で相違している。つまり、中間電極トーチ位置調整機構60Cは、ノブ63Cの回転操作でスライダ67Cを溶接方向(Z方向)に摺動させることによって、トーチクランプ45Cを突合せ方向(矢印c方向)へ移動させて位置調整することができる構造になっている。
中間電極トーチ位置調整機構60Cは、前記先行電極トーチ位置調整機構60Aと同様に、ノブ63Cと、送りねじ部材65Cと、固定台66Cと、スライダ67Cと、を備え、ベース50に配置される。なお、中間電極トーチ位置調整機構60Cは、ベース50と固定台66Cとの間に、適宜な厚さのスペーサ(図示省略)を介在することによって、垂直方向の高さを調整することも可能である。
送りねじ部材65Cは、固定台66Cに設けられた支持板部66Caに支持されてベース50に対して水平に配置されている。
固定台66Cは、突合せ方向(X方向)に向けて延設されたガイドシャフト66cの両端部を保持する支持板部66Caと、スライダ67Cが摺動する摺動面66Ceと、を有する側面視して略溝形鋼状の形状をした部材であり、ベース50上の所定位置にボルト締めされる。
スライダ67Cは、ノブ63Cの回動操作による送りねじ部材65Cの回転に伴って水平な摺動面66Ce上を水平方向(矢印c方向)に摺動させて、トーチクランプ45Cを突合せ方向(X方向)へ移動させる。
図7に示すように、ベース50は、先行電極トーチ位置調整機構60A、後行電極トーチ位置調整機構60B及び中間電極トーチ位置調整機構60Cの固定台66,66Cをそれぞれ所定位置に載置するための載置用のテーブルであり、厚板金属からなる。ベース50には、固定台66,66Cを溶接方向の所定位置に固定する溶接方向位置調整機構60Dの締結具T3をこのベース50の板面に沿って移動可能に挿入させる長孔50a(図5参照)が複数形成されている。また、ベース50には、このベース50を昇降させる前記右溶接ヘッド部上下動用シリンダ81(昇降装置)(図5参照)と、ベース50を突合せ方向に移動させる突合せ用エアシリンダ83(突合せ方向移動装置)及び不図示の溶接方向エアシリンダ(移動装置)と、このベース50から被溶接材料1の突合せ方向に突出して配置された位置決めドグ部70と、がボルト締めされている。
図14に示すように、溶接方向位置調整機構60Dは、ベース50に載置された固定台66,66Cを溶接方向に水平移動させて、先行電極用トーチ10、後行電極用トーチ20、中間電極用トーチ30の位置をそれぞれの溶接方向の所定位置に調整して固定するものである。溶接方向位置調整機構60Dは、固定台66,66Cに形成された雌ねじ部66dと、ベース50に溶接方向に長く形成された長孔50aと、この長孔50aに溶接方向に微調整できるように移動可能に挿入して固定台66,66Cの雌ねじ部66d,66Cd(図13参照)に螺合して固定台66,66Cを所定位置に固定する位置調整用の締結具T3と、を備えて構成されている。
図6及び図7に示すように、位置決めドグ部70は、ベース50上に載設された溶接電極用トーチ(10,20)及び中間電極用トーチ30の被溶接材料1に対する水平位置及び垂直位置を正確に倣い決めするための装置である。位置決めドグ部70は、右溶接ヘッド部上下動用シリンダ81(図5参照)(昇降装置)と、ベース50を突合せ方向に移動させる突合せ用エアシリンダ83(突合せ方向移動装置)等によってベース50と共にその位置を調整できるようになっている。このため、位置決めドグ部70は、被溶接材料1に対する各トーチ(10,20,30)の位置を初期調整する際に、突合せ方向の距離を判断できるため、突合せ方向の位置を決定し易くすることができる。
次に、図4〜図11を参照して溶接装置Sの動作について説明する。
図4に示すように、溶接装置Sで溶接する際には、まず、被溶接材料1の下板2を架台フレーム140の脚部141,141間にレール150に沿って配置し、下板2上の所定位置に立板3を載置して固定する。
次に、図5に示す溶接ヘッド部4をヘッドユニット装置200で被溶接箇所1aの上方近傍まで送る。そして、溶接ヘッド部4を上下動用シリンダ270で被溶接箇所1aの高さ近傍まで送る。
なお、この場合、先行電極用トーチ10は、曲げ部10aが屈曲または湾曲状に曲がって形成されたカーブドトーチからなるので、そのトーチを回動させれば、先行電極11が保持孔45aの中心線を中心として軸回り方向(矢印b方向)に回動し、先行電極11の被溶接箇所1aに対する前進角及び後退角を調整することが可能である。
同じようにして、中間電極用トーチ30の軸方向及び軸回り方向の位置を調整と、被溶接材料1の被溶接箇所1aに対する先行電極用トーチ10の垂直方向(Y方向)の角度を適切な角度に調整と、を行なう。
これと同様にして後行電極用トーチ20に垂直方向及び突合せ方向の位置を微調整する。
次に、本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法について、適宜、図1〜14を参照して説明する。
本発明に係る多電極ガスシールドアーク溶接方法は、前記した多電極ガスシールドアーク溶接装置Sを用いて行うことができる。
すなわち、多電極ガスシールドアーク溶接方法は、先行電極11と、後行電極21と、を備え、さらに先行電極11と後行電極21との間に中間電極31を備える溶接装置Sを用いる溶接方法である。ここで、この溶接方法においては、先行電極11と、後行電極21との極間距離を15乃至50mmに設定し、先行電極11、および後行電極21に逆極性の直流電流を流すとともに、中間電極31に、定電流特性または垂下特性の交流電流を流して溶接することを特徴とするものである。
この溶接方法においては、設定工程と、溶接工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
設定工程は、先行電極11、および後行電極21をそれぞれ定電圧特性を有する直流電源L,Rの正極に接続し、被溶接材料1を負極に接続する工程と、中間電極31および被溶接材料1を、定電流特性または垂下特性を有する中間電極用交流電源Mに接続する工程と、先行電極11と、後行電極21との極間距離を15乃至50mmとする工程と、を含む工程である。なお、設定工程中の各工程は、順番は特に規定されるものではなく、順不同で行えばよい。一例として、以下の手順より、設定工程を行なうことができる。
溶接工程は、前記設定工程の後に、先行電極11、後行電極21、および中間電極31に電流を供給して溶接を行う工程である。
溶接工程において、直流電源L,Rにより先行電極11および後行電極21に逆極性の直流電流を流し、中間電極用交流電源Mにより中間電極31と被溶接材料1との間に定電流特性または垂下特性の交流電流を流して溶接する。
その際、電極送給手段13および速度制御手段18により、先行電極11、後行電極21、および中間電極31をそれぞれ、一定の速度により送給することが好ましい。また、中間電極31を、先行電極11、および後行電極21が形成した溶融池8に接触するように供給することが好ましい。
なお、電流を流すこと自体に関しては、各電極に電流を流す順番は特に規定されるものではなく、順不同で行えばよい。また、同時に行ってもよい。
1a 被溶接箇所
2 下板(被溶接材料)
3 立板(被溶接材料)
4 溶接ヘッド部
5 湯だまり
6 配電盤
7 溶接金属
8 溶融池
9 絶縁ブッシュ
10 先行電極用トーチ
11 先行ガスシールドアーク溶接電極(先行電極(電極))
13 電極送給手段
14 電極送給速度設定器
15 電極送給モータ制御回路
16 電極送給モータ
17 電極送給ローラ
18 速度制御手段
19 溶接スラグ
20 後行電極用トーチ
21 後行ガスシールドアーク溶接電極(後行電極(電極))
30 中間電極用トーチ
31 中間電極(フィラーワイヤ)
40 トーチクランプ機構
40A 先行電極用トーチクランプ機構(トーチ支持機構)
40B 後行電極用トーチクランプ機構(トーチ支持機構)
40C 中間電極用トーチクランプ機構(トーチ支持機構)
44 角度調整機構
45,45C トーチクランプ
45a 保持孔
45b 切欠溝
45c ねじ孔
46 トーチクランプ取付ステイ
46a 支軸部材挿入孔
46b 円弧状長孔
47 支軸部材
48 トーチクランプ支持具
50 ベース
50a 長孔
60 位置調整機構
60A 先行電極トーチ位置調整機構(位置調整機構)
60B 後行電極トーチ位置調整機構(位置調整機構)
60C 中間電極トーチ位置調整機構(位置調整機構)
60D 溶接方向位置調整機構
61 垂直位置決め機構
62 水平位置決め機構
63,63C,64 ノブ
65,65C,68 送りねじ部材
65a 雄ねじ部
66,66C 固定台
66a,66Ca 支持板部
66d 雌ねじ部
67,67C スライダ
69 ガイド部材
70 位置決めドグ部
80 溶接ヘッド部移動装置
81 右溶接ヘッド部上下動用シリンダ(昇降装置)
82 左溶接ヘッド部上下動用シリンダ(昇降装置)
83 突合せ用エアシリンダ(突合せ方向移動装置)
100,100A 移動装置
110 溶接方向移動装置
120 走行ローラ
130 走行モータ
140 架台フレーム
150 レール
200 ヘッドユニット装置
210 スタンション
220 横方向ガイド
230 摺動板
240 固定フレーム
250 上下動フレーム
260 ヘッドユニット横動モータ
270 上下動用シリンダ
L 直流電源(先行電極に接続された直流電源)
N ナット
M 中間電極用交流電源
P 通電チップ
R 直流電源(後行電極に接続された直流電源)
S 溶接装置(多電極ガスシールドアーク溶接装置)
T1 締結部材
T3 締結具
Claims (9)
- 先行ガスシールドアーク溶接電極と、後行ガスシールドアーク溶接電極と、を備え、さらに当該先行ガスシールドアーク溶接電極と当該後行ガスシールドアーク溶接電極との間に中間電極を備える多電極ガスシールドアーク溶接装置を用いる多電極ガスシールドアーク溶接方法であって、
前記先行ガスシールドアーク溶接電極と、前記後行ガスシールドアーク溶接電極との極間距離を15乃至50mmに設定し、
前記先行ガスシールドアーク溶接電極、および前記後行ガスシールドアーク溶接電極に逆極性の直流電流を流すとともに、前記中間電極に、定電流特性または垂下特性の交流電流を流して溶接することを特徴とする多電極ガスシールドアーク溶接方法。 - 前記先行ガスシールドアーク溶接電極、および前記後行ガスシールドアーク溶接電極は、フラックス入りワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記極間距離を設定する工程において、前記先行ガスシールドアーク溶接電極を後退角に保持し、前記後行ガスシールドアーク溶接電極を前進角に保持し、
前記溶接する工程において、前記中間電極を、前記先行ガスシールドアーク溶接電極、および前記後行ガスシールドアーク溶接電極が形成した溶融池に接触するように供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。 - 水平すみ肉溶接に適用されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の多電極ガスシールドアーク溶接方法。
- 先行ガスシールドアーク溶接電極と、後行ガスシールドアーク溶接電極と、を備え、さらに当該先行ガスシールドアーク溶接電極と当該後行ガスシールドアーク溶接電極との間に中間電極を備える多電極ガスシールドアーク溶接装置であって、
前記先行ガスシールドアーク溶接電極、および前記後行ガスシールドアーク溶接電極が、それぞれ正極に接続され、被溶接材料が負極に接続されるとともに、定電圧特性を有する2つの直流電源と、
前記中間電極および前記被溶接材料に接続されるとともに、定電流特性または垂下特性を有する中間電極用交流電源と、を備え、
前記先行ガスシールドアーク溶接電極と、前記後行ガスシールドアーク溶接電極との極間距離が15乃至50mmに設定されていることを特徴とする多電極ガスシールドアーク溶接装置。 - 前記先行ガスシールドアーク溶接電極、前記後行ガスシールドアーク溶接電極、および前記中間電極を、それぞれ一定の速度により送給する電極送給手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の多電極ガスシールドアーク溶接装置。
- 前記先行ガスシールドアーク溶接電極および前記後行ガスシールドアーク溶接電極をそれぞれ支持する2つの溶接電極用トーチと、前記中間電極を支持する中間電極用トーチと、
前記溶接電極用トーチ、前記中間電極用トーチをそれぞれ支持するそれぞれのトーチクランプと、
前記各トーチクランプが支持されるベースと、を備え、
前記トーチクランプをそれぞれ所定角度回動させて前記溶接電極用トーチ及び前記中間電極用トーチの設置角度をそれぞれ調整するそれぞれの角度調整機構と、
前記角度調整機構を全方向へ移動させて前記溶接電極用トーチ、前記中間電極用トーチの位置をそれぞれ位置調整するそれぞれの位置調整機構と、を備えていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多電極ガスシールドアーク溶接装置。 - 前記位置調整機構は、前記各トーチクランプをそれぞれ垂直方向へ移動させて位置調整することができる垂直位置決め機構と、
前記各トーチクランプをそれぞれ突合せ方向へ移動させて位置調整することができる水平位置決め機構と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の多電極ガスシールドアーク溶接装置。 - 前記ベースは、前記溶接電極用トーチ及び前記中間電極用トーチを溶接方向に移動させて、各電極間の距離を調整する溶接方向位置調整機構を備えていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の多電極ガスシールドアーク溶接装置。
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