JP5880956B2 - 二次電池用電極とその製造方法ならびにその二次電池用電極を備える非水電解質二次電池 - Google Patents

二次電池用電極とその製造方法ならびにその二次電池用電極を備える非水電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、電極とその製造方法、ならびにその電極を用いた非水電解質二次電池に関する。より詳しくは、電解質に過充電防止添加剤を含む非水電解質二次電池に用いる電極とその製造方法に関する。
近年、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池およびその他の二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末その他の電気製品等に搭載される電源として重要性が高まっている。この種の二次電池の一つの典型的な構成では、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出し得る電極活物質を含む電極活物質層を備える正負の電極が、電解質と共に電池ケース内に収容されている。
かかる二次電池は、通常は、電圧が例えば3.0V以上4.2V以下程度の所定の領域に収まるよう制御された状態で使用されるが、様々な要因により通常の状態から外れた場合には、電圧が所定の領域から逸脱して過充電の状態に陥る可能性がある。この過充電の状態では、電解液が分解して電池ケース内にガスが発生したり、電極活物質が発熱して電池内部の温度が上昇したりするといった問題が生じ得る。そのため、このような問題を未然に防止する目的で、過充電状態を電池温度や電池内圧等により検知して電流を遮断する機構(電流遮断機構:CID)を備えることが提案されている(例えば、特許文献1)。
電池内圧の上昇により作動するタイプのCIDを備える二次電池においては、過充電時に上記CIDをより迅速に作動させるため、電解質中にシクロヘキシルベンゼン(CHB)やビフェニル(BP)等の過充電防止添加剤を予め添加することがなされている。この過充電防止添加剤は、電解質溶媒よりも酸化電位(即ち、酸化分解反応の始まる電圧)が低く、過充電時には正極表面において電解質よりも先に速やかに酸化分解され得る。この正極での酸化分解反応に起因して負極では多量のガスが発生し、電池内の圧力を迅速に高め、CIDをより早い段階で作動させることができるのである。つまり、かかる構成によると、より安全な状態で電池内の電極反応を停止させることが可能とされる。
特開2006−324235号公報 特開2011−192445号公報 国際公開第98/05083号公報
ところで、正極活物質は、一般に負極活物質として多用されている黒鉛等と比べて電導性に劣り、そのため正極活物質層において正極活物質の導電性を補う導電材の存在は欠かせないものとなっている。しかしながら、例えば、正極活物質のなかでも比較的表面の電子伝導性の低いものを用いた場合、導電材の存在があってもなお正極活物質の導電性は十分であるとはいえなかった。そのため、例えば正極活物質の表面で行われる電極反応において、正極活物質と導電材と反応物質(典型的には電解質成分)との間に良好な反応界面を形成することができなかった。例えば、過充電状態において電解質成分である過充電防止添加剤の正極での酸化分解反応が進行し難く、発生されるガスの量が少なくなってしまっていた。そのため、CIDが作動するまでに時間を要し、安全な状態で電池内の電流を遮断することが困難となるおそれがあった。特に、正極活物質層の空隙率を比較的高めに設定する電極において、このような傾向が顕著となることが考えられる。
本発明は、かかる従来の状況を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、たとえ、電極活物質層の空隙率が比較的高かったり、電極活物質の表面の電子伝導性が低い場合であっても、電極活物質と導電材と電解質成分との反応性が効率的に高められている電極と、その製造方法を提供することである。また、他の目的は、この電極を備える非水電解質二次電池を提供することである。
ここに開示される電極は、電極活物質と導電材とバインダとを含む電極活物質層を備えている。かかる電極において、上記電極活物質の表面の少なくとも一部は、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と平均分子量が100万以上500万以下の高分子量バインダとの混合物により被覆されている。そして、この被覆された電極活物質は、一次粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下で形状異方性を有する異方性導電材と平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとの混合物により互いに結合されて上記電極活物質層を形成していることを特徴としている。
すなわち、ここに開示される電極において、電極活物質層は、電極活物質とともに、2種類の導電材およびバインダを特定の組み合わせで組み合わせた混合物を含むようにしている。
一つ目の導電材およびバインダの組み合わせからなる混合物は、電極活物質の表面の少なくとも一部に配置され、この電極使用時に外部から供給される電解質成分をバインダに保持することで、電極活物質と導電材と電解質成分の三相において良好な反応界面を形成するようにしている。すなわち、導電材は、より粒径が小さく比表面積の大きいものであって、電極活物質と導電材と電解質成分の三相界面における電子供給性(正極からの電子引き抜き性)を高め、反応性をより向上させる機能を有する。また、高分子量バインダは、密着力に優れ膨潤性により富んでおり、電解質成分をその間隙に含み得ることで電極活物質の濡れ性を高め、上記の三相界面に電解質成分を確実に存在させるようにしている。
二つ目の導電材およびバインダの組み合わせからなる混合物は、電極活物質間に配置されるとともに、該電極活物質間の空隙を適切に形成するものである。すなわち、導電材は、より粒径の大きい形状異方性を有するものであって、被覆された電極活物質間の導電性を確保しつつ、この電極活物質間の空隙を確保するための柱材あるいはスペーサーのような役割を果たしている。また、低分子量バインダは比較的膨潤性が低く、電極活物質間の導電性を損ね難いため、電極抵抗(例えば、電極の厚み方向での抵抗である貫通抵抗により評価することができる。)を低減させ得る。
これにより、電極活物質と導電材と電解質成分との良好な三相界面を有するために電極活物質の表面の反応性が高められ、かつ、電極活物質層における適切な空隙率を確保しているために電極抵抗の低い電極が実現される。
なお、上記の特許文献2には、正極活物質の二次粒子が内部に有する空隙に、非水電解液に対する膨潤度が50%以上のポリマーが含浸された正極活物質粒子が開示されている。また、上記の特許文献3には、電極に用いる導電材として、鱗片状黒鉛と粒状炭素とを使用することが開示されている。しかしながら、これらの特許文献2および3には、電極活物質の表面および電極活物質間に、導電材およびバインダの組み合わせからなる2種類の混合物を配置させた本発明の特徴的な電極構造については何ら開示されていない。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記電極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、上記電極は、正極活物質層を備える正極であることを特徴としている。いわゆる三元系のリチウム遷移金属複合酸化物は、他のリチウム複合酸化物と比較して容量が大きいものの、表面の電子伝導性が低く、電解液に対する濡れ性が小さい。しかしながら、かかる構成を適用すると、表面の電子伝導性および電解液に対する濡れ性が改善されるため、高容量での良好な三相の反応界面を有する電極が実現される。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記微小導電材は、アセチレンブラックであることを特徴とする。アセチレンブラックは優れた電子導電性を有するとともに高純度で得られ易く、微小導電材として適した特性を有する。これにより電極活物質の表面における反応性をより向上させることができる。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記異方性導電材は、黒鉛であることを特徴としている。黒鉛は、グラフェン層が積層した原子構造を有し、優れた電子伝導性を有する。また、グラフェン層方向に形状が発達した形状異方性を有するものが多く、その強度も安定している。したがって、異方性導電材として黒鉛を用いることで、電極活物質層の電極活物質層間に導電経路を確保するとともに適度な空隙を形成し、長期に渡り上記の構造を維持し得る強度をも備えることができる。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記異方性導電材のアスペクト比が2〜10であることを特徴とする。異方性導電材のアスペクト比をかかる範囲とすることで、電極活物質層における空隙率を任意の値に確保でき、また簡便に調整することができる。たとえば、空隙率が25%以上の電極活物質層を容易に実現することが可能となる。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記電極活物質層の空隙率が25%以上であることを特徴としている。電極活物質層の空隙率を高めることで電極抵抗を低減することができる。また、空隙率を25%以上とすることは、ハイレート耐久性を向上させるのに効果的である。しかしながら、一般的な電極においては、かかる空隙率を実現すると、空隙部分にのみ電解液が存在して電極活物質の表面への液回りが良くない。これに対し、ここに開示される電極は、2種類の混合物を用意し、電極活物質の周囲に互いに異なる機能を担うように設計、配置させて電極を構成している。そのため、空隙率を25%以上(典型的には、28%以上、40%以下程度)とすることで、低抵抗でハイレート耐久性に優れ、さらに三相界面での反応性に優れた電極を実現することができる。
ここに開示される電極の好ましい一形態において、上記高分子量バインダが非晶質状態であり、上記低分子量バインダが結晶状態であることを特徴としている。上記の電極構成において、低分子量バインダのみを結晶化させて適度な硬度およびバネ性を持たせることで、電極活物質の表面では高分子量バインダにより電解質成分を確保しつつ、電極活物質の間の空隙では過度に電解質成分を含浸させることなく空隙構造を長期的に維持することが可能となる。これにより、上記の電極に長期耐久性を付加することが可能となる。
ここに開示される電極の好ましい一形態においては、電極活物質100質量部に対して、上記微小導電材が1〜10質量部で上記高分子量バインダが0.1〜5質量部、上記異方性導電材が1〜10質量部で上記低分子量バインダが0.1〜3質量部、の割合で配合されていることを特徴とする。かかる構成によると、電極活物質と、2種類の上記混合物の配合割合がバランスのとれた適切なものとなり、上記の効果をより好適に得ることができる。
ここに開示される電極の好ましい一形態においては、上記電極活物質層の厚み方向で測定される貫通抵抗が100mΩ/5cm以下(典型的には50〜100mΩ/5cm)であることを特徴としている。上記のとおりの構成を備えることで、電極活物質と導電材との接点抵抗が低減されて、電極の基材に対して垂直な方向(厚み方向)での抵抗値である貫通抵抗を低減することができる。
なお、本明細書において、電極の貫通抵抗は、電極活物質層を導電板に挟み、導電板の上下から加圧しながら電流を流したときの電圧から、当該電極活物質層の実面積における抵抗値として算出することができる。例えば、集電体上に電極活物質層を有する電極を所定の面積(例えば5cm)に切り出したものを2枚用意し、電極活物質層を内側に当接させて重ねあわせ、集電体の外側から所定の圧力(例えば、2000N)で加圧しながら電流を流した時の電圧値から抵抗を算出し、貫通抵抗とすることができる。
本発明が他の側面で提供する非水電解質二次電池は、正極、負極および非水電解質を備えている。そして、上記正極および上記負極のうちの少なくともいずれか一方として、上記のいずれかの電極を備えることを特徴としている。上記の電極は、電極活物質を、2通りの導電材およびバインダの組み合わせからなる混合物により被覆、支持するようにしている。そのため、電極活物質、導電材および電解質成分の三相からなる界面が良好に形成されているとともに、各々の電極活物質間には適切な空隙が確保されている。したがって、例えば、ハイレート特性に優れる上に、電極の表面での反応性が高められている非水電解質二次電池を実現することができる。
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一形態では、さらに、電池内の内圧に応じて上記正極および上記負極の間の導電経路を遮断し得る電流遮断機構を備えるとともに、少なくとも上記正極として、上記のいずれかの電極を備え、上記非水電解質は、上記正極において酸化分解されることでガスを発生させる機能を有する過充電防止添加剤を含み、上記過充電防止添加剤により発生されるガスにより電池内の内圧が高められて、上記電流遮断機構が上記導電経路を遮断し得ることを特徴とする。かかる構成によると、電池が過充電状態となった際には、電解質表面における過充電防止添加剤の酸化分解反応が促進される。したがって、かかる正極の酸化分解反応に伴い迅速に電池内にガスが発生し、より早い段階で電流遮断機構を作動させることが可能となる。これにより、より安全性で信頼性の高い非水電解質二次電池が実現される。
このように、ここに開示される構成を、例えば高エネルギー密度等の特性を備えるリチウム二次電池等に適用することで、その二次電池は、本来有する特性が高められることに加えて、更に安全性および信頼性を兼ね備えたものとなり得る。かかる非水電解質二次電池は、例えば、自動車等の車両に搭載される車両駆動用モータ(電動機)の電源として好適に利用することができる。この車両の種類は特に限定されないが、典型的には、長期にわたりハイレート特性が要求されるハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等であるのが好適である。ここで非水電解質二次電池は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数接続されてなる組電池の形態で使用されてもよい。
ここに開示される電極の製造方法は、電極集電体に電極活物質を含む電極活物質層を備える電極を製造する方法である。かかる製造方法は、上記電極活物質と、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と、平均分子量が100万以上500万以下の高分子量バインダとを混練して混合物Aを用意する工程、一次粒子の平均粒径が1μm以上で形状異方性を有する異方性導電材と、平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとを混練して混合物Bを用意する工程、上記混合物Aと上記混合物Bとを溶媒と共に混合して電極活物質層形成用組成物を用意する工程、および、上記電極活物質層形成用組成物を上記集電体上に供給して上記電極活物質層を形成する工程、を包含する。
すなわち、ここに開示される製造方法においては、電極活物質に対して、2種類の導電材およびバインダの組み合わせからなる混合物をその機能に応じて適切な場所に適切な形態で配置させることで、電極活物質層を形成するようにしている。これにより、電極活物質と導電材と電解質成分との良好な三相界面が形成されているために電極活物質の表面の反応性が高い電極を製造することができる。
ここに開示される製造方法の好ましい一形態においては、上記電極活物質としてのニッケル、コバルトおよびマンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物を用い、正極活物質層を備える正極を製造することを特徴としている。いわゆる三元系のリチウム遷移金属複合酸化物は、他の正極活物質と比較して、容量が大きい半面、表面の電子伝導性に劣ることがあり得る。かかる構成によると、三元系のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた場合であっても、電極活物質表面の電子伝導性が高められ、より反応性の高い電極を製造することができる。
ここに開示される製造方法の好ましい一形態においては、さらに、上記高分子量バインダの結晶化温度未満で、かつ、上記低分子量バインダの結晶化温度以上の温度範囲で熱処理を行う工程を含むことを特徴としている。かかる構成により、上記の電極構造において低分子量バインダを結晶化させることができ、低分子量バインダに耐膨潤性およびバネ性を備えることができる。したがって、上記の特徴的な構造を長期に渡って維持することができる。
ここに開示される製造方法の好ましい一形態においては、上記異方性導電材としてアスペクト比が2〜10の異方性導電材を用いることを特徴としている。かかる構成により、電極活物質間の空隙をより広く、任意の空隙率に調整することが可能となる。例えば、貫通抵抗がより低い電極を製造することが可能となる。
ここに開示される製造方法の好ましい一形態においては、上記電極活物質層の空隙率を25%以上とすることを特徴としている。例えば、空隙率を25%以上とすることは、ハイレート特性を向上させるのに効果的である。しかしながら、一般的な電極においては、かかる空隙率を実現すると、電極活物質層中の空隙部分にのみ電解液が存在して電極活物質の表面への液回りが劣ってしまう。これに対し、ここに開示される電極によると、空隙率を25%以上とした場合においても、上記の電極構造を維持しつつ、三相界面での優れた反応性を備える電極を製造することができる。
ここに開示される製造方法の好ましい一形態においては、上記電極活物質100質量部に対して、上記微小導電材が1〜10質量部、上記高分子量バインダが0.1〜5質量部、上記異方性導電材が1〜10質量部、上記低分子量バインダが0.1〜3質量部となる配合で上記混合物Aおよび上記混合物Bを用意するとともに、上記電極活物質層形成用組成物を調製することを特徴としている。かかる構成によると、上記核材料の配合割合がバランスのとれた適切なものとなり、電池特性を阻害することなく、より効果的に電極の反応性および耐久性といった効果を発現させることができる。
一実施形態に係る非水電解質二次電池を示す斜視図である。 図1中のII−II線に沿う縦断面図である。 一実施形態に係る電極の構成を示す断面模式図である。 一実施形態に係る電極の製造方法のフローチャートである。 一実施形態に係る非水電解質二次電池を備えた車両を示した側面図である。 サンプル1,4および5の正極のバインダの平均分子量の測定結果を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において「二次電池」とは、リチウム二次電池、ニッケル水素電池等の繰り返し充電可能な二次電池一般をいう。また、本明細書において「リチウム二次電池」とは、リチウムイオンを電荷担体とし繰り返し充電可能な電池一般をいい、典型的にはリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等を包含する。
また、本明細書において「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定した体積基準の粒度分布における、積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径)を意味する。
さらに、「平均分子量」とは、数平均分子量を意味し、例えば、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)により測定される値を採用することができる。
本発明が提供する電極は、電極活物質と導電材とバインダとを含む電極活物質層を備えている。電極活物質は、二次電池において電荷担体となる化学種(例えば、リチウムイオン電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的にはインターカレートおよびディカレート)可能としている。導電材は、電極活物質間の導電性を確保し、電極活物質層における導電経路を形成している。また、典型的には、この電極活物質層と、電極活物質層を保持している電極集電体との間の導電性をも確保している。バインダは、電極活物質と導電材とを結着する役割を担い、また電極活物質層と電極集電体とを結着する役割をも有している。
そして、ここに開示される電極は、(1)電極活物質の表面の少なくとも一部が、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と、平均分子量が100万以上500万以下の高分子量バインダとの混合物により被覆され、(2)該被覆された電極活物質は、一次粒子の平均粒径が一次粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下で形状異方性を有する異方性導電材と、平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとの混合物により互いに結合されて、電極活物質層が形成されていることを特徴とする。
例えば、かかる電極が正極である場合を例にしてその構成および特徴について詳しく説明する。例えば、図3は、ここに開示される電極としての正極30の構成を模式的に示した要部断面図である。正極30は、典型的には、正極集電体32上に正極活物質層34を備えている。正極活物質層34中には、正極活物質35と、導電材36,37と、図示しないバインダとが含まれている。導電材36,37には、微小導電材36と異方性導電材37との形状および大きさの異なる2種類の導電材が含まれる。また、バインダには、高分子量バインダと低分子量バインダの2種類のバインダが含まれる。高分子量バインダは微小導電材36と共に正極活物質35の表面に配されて微小導電材36を正極活物質35に結着する。低分子量バインダは異方性導電材37とともに各正極活物質35の間に配置されて異方性導電材37と正極活物質35もしくは微小導電材36とを結着する。この正極活物質層34において、具体的には、(1)正極活物質35の表面には微小導電材36が密接に配置され、密着性の高い高分子量バインダによって正極活物質35に堅固に結着されている。(2)そして各々の正極活物質35の間には異方性導電材37が任意の空隙を以て配され、上記の被覆された正極活物質35あるいは微小導電材36に電気的に接合されるとともに、低分子量バインダにより結着されている。
かかる正極30は、正極活物質層34に電解質(図示せず)を含浸させて電極反応を生じさせている。換言すると、正極活物質層34中の空隙に電解質を浸透させることで、正極活物質35と電解質成分との界面で電極反応が行われる。そしてこの界面に導電材36,37が介在することで上記電極反応における電子の供受性が向上され、これらの反応が促進され得る。
そして、この正極30においては、(1)正極活物質35の表面の少なくとも一部に微小導電材36が密着して配置されているため、微小導電材36が正極活物質35から電子を引き抜く作用を増長し、電解質成分への電子供給性を高めている。すなわち、正極活物質35−微小導電材36−電解質成分の界面における反応性が高められたものであり得る。また、正極活物質35と微小導電材36とは膨潤性を有する高分子量バインダにより結着されているため、正極活物質35および微小導電材36の周りにはこの高分子量バインダに含浸された電解質成分が常に存在した状態であり得る。すなわち、高分子量バインダにより電解質の液まわりおよび電解質供給性が高められる。したがって、正極活物質35は電解質により常に濡れた状態であり得る。よって、正極活物質35の周囲で電解質成分が不足することなく、正極活物質35−微小導電材36−電解質成分の間の反応が積極的に促進されている。
また、(2)表面の少なくとも一部が微小導電材36および高分子量バインダにより被覆された正極活物質35は、該活物質35の周囲にまばらに分散した状態で配置される異方性導電材37と膨潤性の低い低分子量バインダにより結着されている。そのため、正極活物質35の間においては異方性導電材37と正極活物質35または微小導電材36との接点数が少なくてすみ、導電性を確保しつつも正極30全体の接点抵抗が抑制されることになる。また、低分子量バインダは比較的膨潤性が低いため、正極活物質35の間の領域で電解質成分を保持する効果が低減され、正極活物質35表面への液回りが良好となる。よって、正極30の電極抵抗、例えば正極30の厚み方向での貫通抵抗が低く抑えられ、かつ、正極活物質35−微小導電材36−電解質成分の間の反応がより促進されている。例えば、貫通抵抗としては、厚みが50μm程度以上の正極活物質層34を備える正極30であっても、100mΩ/5cm以下とすることが可能となる。
以上のように、(1)正極活物質35を被覆する微小導電材36と高分子量バインダの混合物と、(2)被覆された正極活物質35同士を結合する異方性導電材37と低分子量バインダとの混合物とでは、その機能が明確に区別されている。すなわち、前者は正極活物質35−微小導電材36−電解質成分の三相界面を整え、正極活物質35の反応性を高める役割を担っており、後者はその正極活物質35を電極抵抗を低く抑えつつ所望の条件で支持するようにしている。
かかる構成によると、例えば、異方性導電材37の寸法や量を調整することで、正極活物質層34の空隙率を電極特性に悪影響を及ぼすことなく広い範囲で調整することができる。具体的には、例えば、正極活物質層34の空隙率を25%以上とすることができる。正極活物質層34の空隙率を25%以上とすることは、電極抵抗を低減することができ、またハイレート耐久性を向上させるのに効果的である。かかる観点では、正極活物質層34の空隙率は、例えば28%以上、より限定的には30%以上とするのが好適である。空隙率の上限は、電極活物質層の構造耐久性の観点から40%以下程度を目安とすることができる。一般的な電極においては、このような高い空隙率を実現すると、空隙部分にのみ電解質が留まり電極活物質の表面への液回りが劣ってしまう。しかしながら、ここに開示される正極30によると、(1)微小導電材36と高分子量バインダの混合物により正極活物質34の表面の液まわりが確保されて三相界面での優れた反応性が実現されるため、(2)異方性導電材37と低分子量バインダとの混合物により正極活物質層34の高い空隙率を実現しても、前記の優れた電極反応性は維持し得る。
なお、正極活物質層34の空隙率を25%以上とすることで、効果的に電極抵抗を低減することができ、例えば、正極活物質層の厚み方向で測定される貫通抵抗としては100mΩ/5cm以下にまで低減することができる。貫通抵抗は、典型的には、50〜100mΩ/5cmであり、好ましくは50〜90Ω/5cmである。
さらに、例えば、電子伝導性の低い正極活物質35を用いて正極30を作製し、この正極30を、電池内の内圧に応じて導電経路を遮断し得るCIDを備える二次電池に用いることもできる。この正極30によると、正極30表面において電解質に添加された過充電防止添加剤の酸化分解反応を好適に促進することができる。したがって、過充電時にはCIDを作動させるに必要な所定の量のガスを確実かつ迅速に発生させることが可能となる。したがって、例えば、表面の電子伝導性に劣る正極活物質35を用いた場合でも、電解質中の過充電防止添加剤の添加量を増やしたり、CIDを作動させる内圧を所定の圧力よりも低く設定し直したりという設計を変更する必要はない。
なお、上記の高分子量バインダおよび低分子量バインダは通常は非晶質の状態にある。また、高分子量バインダと低分子量バインダとでは、その結晶化温度(Tc)が、高分子量バインダの結晶化温度Tch>低分子量バインダの結晶化温度Tclの関係であることが多い。そして、この関係を満たすように高分子量バインダと低分子量バインダとを選択することも容易である。このため、Tch>Tclの関係を満たすように高分子量バインダと低分子量バインダを選択し、Tch>T≧Tclとなる温度Tで上記正極30に熱処理を施すなどすることで、高分子量バインダが非晶質状態であり、低分子量バインダが結晶状態であるようにすることも可能である。つまり、上記の温度Tに加熱することで高分子量バインダは非晶質状態のまま低分子量バインダのみを融解させることができ、その後冷却することで、低分子量バインダのみが結晶化を始める。低分子量バインダが結晶化されると、低分子量バインダが本来備える柔軟性に適度な硬度が加わり、膨潤性がさらに低減されるとともにバネ性が発現される。したがって、例えば、充放電に伴う正極活物質層34の膨張および収縮のサイクルが繰り返し行われる場合でも、上記の特徴的な構造が崩れ、正極活物質層34に割れが生じたり、正極活物質35が剥がれたりといった問題が抑制され得る。これにより、長期にわたる耐久性を備える正極30を実現することができる。
以上の実施形態においては、電極が正極30であって、電極活物質が正極活物質である場合について説明を行ったが、かかる電極は以上の構成に限定されることはない。例えば、電極が負極であって、電極活物質が負極活物質である場合においても、同様の効果が期待できる。すなわち、例えば、負極活物質層の空隙率が高く、負極活物質層の表面の電子伝導性が低い場合であっても、負極活物質の表面における反応が好適に促進され得る。
以下、ここに開示される電極について、その構成および製造方法を、一実施形態としてのリチウム二次電池用の正極の場合を例にして更に詳細に説明する。なお、ここに開示される技術がこの実施形態に限定されないことは言うまでもない。すなわち、ここに開示される電極の構成材料、用途、形状、製造手法、製造装置等がかかる実施形態により限定されることはない。
ここに開示される正極の製造方法は、図4のフローチャートに例示したように、本質的に以下の工程を含んでいる。
(S10)正極活物質と、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と、平均分子量が100万以上の高分子量バインダとを混練して混合物Aを用意する工程
(S20)一次粒子の平均粒径が1μm以上で形状異方性を有する異方性導電材と、平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとを混練して混合物Bを用意する工程
(S30)上記混合物Aと上記混合物Bとを溶媒と共に混合して正極活物質層形成用組成物(以下、正極ペーストという)を用意する工程
(S40)上記正極ペーストを集電体上に供給して正極活物質層を形成する工程
[混合物Aの用意工程:S10]
工程S10においては、混合物Aを用意する。混合物Aを構成する材料Aは、工程S12に示したように、正極活物質、微小導電材および高分子量バインダである。
正極活物質としては、所望の電池に使用し得る任意の正極活物質であってよい(以下、同様である)。本実施形態では、従来のリチウム二次電池に用いられている正極活物質の一種または二種以上を特に制限なく用いることができる。このような正極活物質としては、典型的には粒子状のリチウム遷移金属酸化物が好適に用いられ、層状構造の酸化物あるいはスピネル構造の酸化物等を適宜選択して使用することができる。例えば、リチウムニッケル系酸化物(代表的には、LiNiO)、リチウムコバルト系酸化物(代表的には、LiCoO)およびリチウムマンガン系酸化物(代表的には、LiMn)から選択される一種または二種以上のリチウム遷移金属酸化物を使用することができる。
ここで、例えば「リチウムニッケル系酸化物」とは、LiとNiとを構成金属元素とする酸化物の他、LiおよびNi以外に他の一種または二種以上の金属元素(すなわち、LiおよびNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を原子数でNiと同程度またはNiよりも少ない割合で含む複合酸化物をも包含する意味である。なお、LiおよびNi以外の金属元素を二種以上含む場合には、それらのいずれもがNiよりも少ない割合となるようにする。かかる金属元素は、例えば、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の元素であり得る。
また、その他、例えば、一般式:
Li(LiMnCoNi)O
(式中のa、x、y、zは、a+x+y+z≒1およびxyz≠0を満たす。)
で表わされる、ニッケル、コバルトおよびマンガンの3種の遷移金属元素を含むいわゆる三元系のリチウム遷移金属複合酸化物や、一般式:
xLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−x)LiMeO
(式中、Meは1種または2種以上の遷移金属であり、xは0<x<1を満たす。)
で表わされる、いわゆる固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物等であってもよい。これら、三元系の正極活物質やリチウム過剰型の正極活物質は、リチウム二次電池の正極活物質としては放電容量が大きく、また比較的粒子表面の導電性に乏しいことがあり得るため、本発明の構成を効果的に適用できる点で好ましい。なお、これらの三元系の正極活物質やリチウム過剰型の正極活物質についても、もちろん、上記に示される群から選択される一種または二種以上の元素を含むことができる。
さらに、上記正極活物質として一般式がLiMAO(ここでMは、Fe,Co,NiおよびMnから成る群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、Aは、P,Si,SおよびVから成る群から選択される元素である。)で表記されるポリアニオン型化合物も挙げられる。
このような正極活物質を構成する化合物は、例えば、公知の方法で調製して用意することができる。例えば、目的の正極活物質の組成に応じて適宜選択されるいくつかの原料化合物を所定の割合で混合し、その混合物を適切な手段によって焼成する。これにより、正極活物質を構成する化合物としての酸化物を調製することができる。なお、正極活物質(典型的には、リチウム遷移金属酸化物)の調製方法は、それ自体は何ら本発明を特徴づけるものではない。
また、正極活物質の形状等について厳密な制限はないものの、上記のとおり調製された正極活物質は、適切な手段で粉砕、造粒および分級することができる。例えば、平均粒径がおよそ1μm〜25μm(典型的にはおよそ2μm〜15μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を、ここに開示される技術における正極活物質として好ましく採用することができる。
微小導電性材としては、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の高導電性の各種の材料を特に制限なく用いることができる。高導電性の材料としては、例えば、粉体状の黒鉛であることが好ましい。具体的には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト粉末等のカーボン粉末などを用いることができる。中でも、アセチレンブラックは、高純度で得られるとともに、黒鉛化が大きく進行し導電性に優れている点で好ましい。なお、これらの微小導電性材の一次粒子が凝集して2次粒子を形成すると吸液性が備わり、更に電解質保持性に優れるために好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用して用いてもよい。微小導電材の平均粒径は、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下とする。平均粒径が20nmより小さいと界面抵抗が大きくなってくるために好ましくない。また平均粒径が200nmを超過すると、正極活物質との接点が少なくなってしまうために好ましくない。平均粒径は、10nm〜150nmの範囲にあるのが好ましく、さらに限定的には20nm〜100nmの範囲にあるのが好ましい。
高分子量バインダとしては、混練に使用する溶媒に、溶解または分散が可能なポリマーを用いることができ、平均分子量が100万以上のものであれば、特に制限なく用いることができ、平均分子量が100万以上であることで、強固な密着性が得られるとともに、内部に電解質を含浸して保液することが可能となる。分子量の増大と共に電解質成分の含浸能も高まるため、かかる平均分子量は100万を超えていることがより好ましく、例えば、110万以上、120万以上等とすることができる。高分子量バインダの平均分子量の上限は、特に制限されるものではないが、例えば500万以下を目安とすることができる。平均分子量が500万を超過すると、粘度が高くなりすぎて混練等の作業が困難となるために好ましくない。高分子量バインダの平均分子量は、より好ましくは、100万〜300万である。
溶媒として水系溶媒を用いる場合に好適なバインダとしては、水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料を用いるのが好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);等が例示される。また、水に分散する(水分散性の)ポリマー材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類等が例示される。
また、溶媒として溶剤系溶媒を用いる場合には、水に不溶性のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)等のポリマーを用いることができる。
かかるポリマーは、1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
上記で用意した正極活物質と微小導電材と高分子量バインダとを工程S14において混練し、工程S16に示した混合物Aを得る。溶媒としては、上記のとおり、水系溶媒および溶剤系溶媒(非水系溶媒)の何れも使用可能である。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒からなる組成物を用いることができる。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。なお、溶剤系溶媒を用いる場合は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を好ましく用いることができる。
工程S14の混練は、ごく少量の溶媒を加えて混練する硬練りであるのが好ましい。かかる混練には、例えば、強いせん断力により高い混合および攪拌効果が得られる高速ミキサーやせん断混合機を用いるのがより好ましい。この硬練りにおける固形分率は、正極活物質や微小導電材の形態等にもよるため厳密には制限できないものの、65〜75質量%程度、より限定的には68〜73質量%程度にするのを目安とすることができる。
高分子量バインダは、比較的密着力が高いものであり得る。したがって、かかる混合により、微小導電材は高分子量バインダにより、正極活物質の表面の少なくとも一部を強固に被覆させることができる。
[混合物Bの用意工程:S20]
工程S20においては、混合物Bを用意する。混合物Bを構成する材料Bは、工程S22に示したように、異方性導電材と低分子量バインダである。
異方性導電材としては、高導電性を有する各種の材料であって、一次粒子の平均粒径が1μm以上の形状異方性を有するものであれば特に制限なく用いることができる。平均粒径が1μm以上であることで、正極活物質間の空隙を好適に形成することができる。平均粒径の上限については特に制限されないが、一つの目安として、30μm以下とすることができる。一次粒子の平均粒径は、1μm以上20μm以下であるのが好ましく、更に限定的には2μm〜15μmであるのが好ましい。
ここで「形状異方性」とは、厳密な意味においては略球状の粒子でなければよいといえる。しかしながら、ここに開示される正極においては上記微小導電材との機能をより明確に区別しており、正極活物質層の空隙率を確保し、かつ、貫通抵抗を低減する等の効果を得るためには、この異方性導電材はアスペクト比が2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上とすることができる。かかるアスペクト比を適切に調整することで、正極活物質間に形成される空隙の大きさおよび形態を調整することができる。上限については特に限定されず、所望の空隙を形成できるかどうかや、混合物Bの混合性および取り扱い性等を考慮して適宜に決定することができる。おおよその目安として、アスペクト比は、例えば20以下、より現実的には10以下とすることができる。かかる異方性導電材の好ましいアスペクト比としては、例えば、2〜10であることが例示される。
なお、本明細書において「アスペクト比」とは、異方性導電材の形状異方性が最も強くみられ得る断面における、長手方向の寸法に対する短手方向の寸法の比を、例えば、10〜100個程度の代表サンプルについて調べたときの平均値として理解することができる。
かかる異方性導電材としては、高導電性を有し、結晶構造が特定の方向に発達している黒鉛材料を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、グラフェンシートが積層した結晶構造を有する各種の黒鉛材料や、グラフェンシートが繊維状に発達した組織を有する繊維状炭素材料(結晶構造が針状に発達した針状黒鉛材料をも包含する。)等を用いるのが好ましい。黒鉛材料としては、鱗片状の形態のものや、柱状の形態のものなどを用いることができる。繊維状黒鉛材料については、例えば、上記のグラフェンシートが筒状に丸まった形態のもの(典型的には、単層または多層のカーボンナノチューブ)や、グラフェンシートを長手方向に積極的に成長させた形態の針状黒鉛(ニードルコークス)等を例示することができる。これらの黒鉛材料以外にも、例えば、上記の形状異方性を有する塊状黒鉛(Vein Graphite)等を用いることも可能である。
低分子量バインダとしては、混練に使用する溶媒に溶解または分散が可能なポリマーを用いることができ、平均分子量が1万〜30万の範囲のものであれば、特に制限なく用いることができる。典型的には、上記の高分子量バインダが水系バインダであれば低分子量バインダも水系バインダとし、上記の高分子量バインダが溶剤系バインダであれば低分子量バインダも溶剤系バインダとする。かかるポリマーとしては、具体的には、上記の高分子量バインダで例示したポリマーの群のうちで、かつ平均分子量が1万〜30万の各種のもの等を用いることが例示される。また、結晶化させるとの観点からは、例えば、熱処理等により結晶状態となり得る結晶性のポリマーであることが望ましい。例えば、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等に例示される結晶性ポリマー(半結晶性ポリマーともいう。)等が例示される。これらのポリマーは、1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。かかる正極の低分子量バインダは、活物質層の構造を長期にわたり支持することが求められるため、溶剤系バインダであればポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、水系バインダであればポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるのが好ましい。
これらの異方性導電材と低分子量バインダとを工程S24において混練し、工程S26に示した混合物Bを得る。工程S24の混合は、極少量の溶媒を加えて混練する固練りとするのが好ましい。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を好ましく用いることができる。かかる混合には、例えば、強いせん断力により高い混合および攪拌効果が得られる高速ミキサーやせん断混合機を用いるのがより好ましい。この硬練りにおける固形分率は、異方性導電材の形態等にもよるため厳密には制限できないものの、68〜78質量%程度、より限定的には70〜75質量%程度にするのを目安とすることができる。
かかる混合により、異方性導電材の周囲にごく少量の低分子バインダがむらなく均一に密着した状態とすることができる。
[正極ペーストの用意工程:S30]
工程S30においては、上記で用意した混合物Aと混合物Bとを溶媒と共に混合し、S34に示したように正極ペーストを用意する。本発明においてペーストとは、スラリー状、インク状等の形態をも含み得る。
溶媒としては、上記の混合物Aの用意工程S10で示したのと同様の、水系溶媒または溶剤系溶媒の何れも使用可能である。なお、上記のバインダとして例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極ペーストの増粘剤等の添加剤としての機能を発揮する目的で使用することもあり得る。さらに、上記の正極活物質層を構成する材料の他に、必要に応じて分散剤、増粘剤等の各種の添加剤等を添加してもよい。
これらの混合物Aおよび混合物Bを工程S32において混合し、工程S34に示した正極ペーストを得る。工程S34の混合の手段は特に制限されず、正極ペーストの調製に従来より用いられる一般的な撹拌機等を用いることができる。例えば、ニーダー、撹拌機、分散機、混合機等と呼ばれるペーストの調製が可能な装置等を使用できる。ただし、これらの混合には特にせん断力を加える必要はなく、一般的な混合、撹拌であってよい。より好ましくは、せん断力がほぼ作用しない混合である。この混合における固形分率は、例えば、55〜70質量%、より限定的には60〜70質量%程度にするのを目安とすることができる。
かかる混合により、混合物Aおよび混合物Bを微小に細分化した状態で溶媒中に均一に分散させることができる。微小な混合物Aは、正極活物質の二次粒子(好ましくは一次粒子)の表面の少なくとも一部を微小導電材および高分子量バインダが被覆した形態である。また、微小な混合物Bは、異方性導電材の二次粒子(好ましくは一次粒子)の表面の一部を低分子量バインダが被覆した形態である。これにより、正極ペーストを調製することができる。
なお、混合物Aおよび混合物Bの混合の割合は、正極ペーストにおける各材料の配合を考慮して決定することができる。正極ペーストにおける各材料の配合は、固形分質量で、例えば以下の範囲とするのが好ましい。正極活物質100質量部に対して、微小導電材が1〜10質量部、高分子量バインダが0.1〜5質量部、異方性導電材が1〜10質量部、低分子量バインダが0.1〜3質量部である。かかる配合とすることで、正極活物質と、これを被覆する微小導電材および高分子量バインダ、これらを支える異方性導電材および低分子量バインダ、の割合が好適に整えられる。より好ましくは、正極活物質100質量部に対して、微小導電材が2〜5質量部、高分子量バインダが0.5〜3質量部、異方性導電材が2〜5質量部、低分子量バインダが0.5〜2質量部である。
[正極活物質層の形成工程:S40]
ステップS40においては、上記で調製した正極ペーストを正極集電体上に供給して正極活物質層を形成する。
正極集電体としては、従来のリチウム二次電池の正極に用いられる集電体と同様の、導電性の良好な金属およびその合金等を用いることができる。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、鉄等を主成分とする金属またはその合金等であり、より好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。正極集電体の形状は、所望の目的に応じて様々な形態を考慮することができる。例えば、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等であり得る。例えば、厚みが10μm〜30μm程度のアルミニウムシートを好適に用いることができる。
正極ペーストは、工程S42において正極集電体の表面へ供給される。この供給は、公知の各種の塗布、塗工装置等を用いて行うことができる。例えば、コーターを用いて、集電体の片面または両面にペーストを塗布することができる。コーターとしては、ペーストを集電体に塗布可能なものであればよく、例えば、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターや、ドクターブレードによるコーター、コンマコーター等を使用して好適に行うことができる。正極ペーストの供給は、正極集電体の両面に行ってもよいし、いずれか一方の片面に行ってもよい。正極ペーストの塗布量は特に限定されず、目的とする電極特性等に応じて任意に設定することができる。一般的には、塗布量が少なすぎると過充電時に電流を低減または遮断する効果が得られにくくなり、塗布量が多すぎると正極の電極抵抗が大きくなる傾向がある。したがって、例えば、一例として、目付量が3〜50mg/cm程度の範囲内で適宜に設定することが例示される。
次いで、典型的には、正極集電体に塗布された正極ペーストを乾燥させることで、工程S46に示したように正極集電体上に正極活物質層を形成することができる。乾燥は、溶媒等の余分な成分を除去できるものであれば特に限定されず、必要に応じて適切な乾燥手段を採用することができる。典型的には、例えば、熱風装置、各種赤外線装置、電磁誘導装置、マイクロ波装置等の適当な乾燥装置や送風機等の乾燥促進手段を用いることができる。
乾燥の後は、必要に応じて全体をプレスしたり、所望の大きさに裁断したりすることによって、目的とする厚み、空隙率および寸法の正極とすることができる。例えば、正極ペーストの配合および固形分率等に応じてプレス条件を適切に制御することで、正極活物質層の空隙率を25%〜40%程度の範囲で所望の値に制御することができる。プレス(圧縮)方法としては、例えば、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等の圧縮方法を採用することができる。正極活物質層の厚さを調整するにあたり、膜厚測定器で厚みを測定し、プレス圧を調整して所望の厚さになるまで複数回圧縮してもよい。
これによって形成された正極活物質層は、上記の正極ペーストから溶媒が除去されたものであり、微小な混合物Aおよび微小な混合物Bが互いに均一に分散した状態で結着されている。すなわち、微小な混合物Aの間に、微小な混合物Bが空隙を形成しつつ微小な混合物Aを支持して結着している。これにより、工程S48に示した通りここに開示される正極を製造することができる。
また、ここに開示する製造方法においては、上記の正極活物質層の用意工程S40に、付加的に、更に熱処理を行う工程S44を含むことができる。かかる熱処理工程S44は、上記の正極ペーストを供給、乾燥させた集電体および正極ペーストの塗布物に対して、高分子量バインダの結晶化温度Tchよりも低く、かつ、低分子量バインダの結晶化温度Tcl以上の温度範囲で行う熱処理である。高分子量バインダの結晶化温度Tchおよび低分子量バインダの結晶化温度Tclが明確に測定できない場合等には、例えば、低分子量バインダの融解開始温度程度に加熱することで、低分子量バインダのみを融解させて好適に結晶化させることができる。かかる熱処理により、正極活物質層中に含まれる高分子量バインダは非晶質状態のままで、低分子量バインダのみを結晶状態とすることができる。これにより、低分子量バインダが結晶化され、膨潤性がさらに低減されるとともにバネ性が発現される。したがって、正極活物質の膨張および収縮の繰り返しサイクルが長期にわたって生じても、これを支持し得る耐久性を備えることができる。これにより、上記の特性に加え、長期耐久性をも備える正極が実現される。
以下、適宜図面を参照しつつ、ここに開示される非水電解質二次電池の好適な一実施形態としてのリチウム二次電池について説明する。この実施形態では、角型形状のリチウム二次電池について説明しているが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。かかるリチウム二次電池は、上記のとおりの特徴的な正極を用いること以外は特に制限されない。また、リチウム二次電池の構成について特に言及する以外の事項については、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
図1はリチウム二次電池10の外観を示し、図2は図1のII−II断面図である。このリチウム二次電池10は、正極30、負極50およびセパレータ70を備える捲回電極体20と、図示しない過充電防止添加剤を含む非水電解質とが、電池ケース80に収容されて構成されている。非水電解質の少なくとも一部は電極体20に含浸されている。
正極30は、例えば図3に示したような、ここに開示される特徴的な構成を備えている。すなわち、かかる正極30には正極活物質35と導電材36,37とバインダとを含む正極活物質層34が備えられている。この正極活物質層34において、正極活物質35の表面の少なくとも一部は、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材36と平均分子量が100万以上の高分子量バインダとの混合物により被覆され、該被覆された正極活物質35は、一次粒子の平均粒径が1μm以上で形状異方性を有する異方性導電材37と平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとの混合物により互いに結合されている。
負極50は、従来公知のリチウム二次電池等に用いられるのと同様の負極であってよい。具体的には、負極50は、負極活物質と、必要に応じて導電材と、バインダとを含む負極活物質層54を備えている。負極活物質は、電荷担体となる化学種(例えば、リチウム二次電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的にはインターカレートおよびディカレート)可能としている。導電材は、負極活物質間および負極活物質層54と負極集電体の間の導電性を確保する目的で、必要に応じて添加される。バインダは、これら負極活物質と導電材とを結着する役割を担い、また負極活物質層54と負極集電体52とを結着する役割をも有する。
負極集電体52としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金を用いることができる。負極集電体52の形状は、リチウム二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。本実施形態では、シート状の銅製の負極集電体52を用いている。例えば、厚みが5μm〜30μm程度の銅製シートを好適に用いることができる。
負極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、好適な負極活物質としてカーボン粒子が挙げられる。カーボン粒子としては、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料であって、いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、およびこれらを非晶質カーボンで被覆する等して組み合わせた構造を有するもの等、いずれの炭素材料も好適に使用され得る。また、炭素材料以外にも、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、As、Sb、Bi等を構成金属元素とする金属化合物、典型的には金属酸化物等を用いることができる。例えば、具体的には、LTO(チタン酸リチウム)等である。なお、電子伝導性に乏しい負極活物質については、例えば、公知の手法に従って、炭素被膜を設けて金属化合物の表面の少なくとも一部を被覆したり、負極活物質層54に導電材料を含ませるなどして、導電性を具備するようにしてもよい。また、上記で説明したとおり、本願発明の電極の構成を好適に適用することで電子伝導性に乏しい負極活物質に導電性を具備するようにしてもよい。この場合の手順は、上記の正極活物質層を用いた場合と同様であるため説明は省略する。なお、炭素被膜を設ける場合は、負極活物質層54に導電材を含有させなくてもよいし、従来よりも導電材の含有率を低減させてもよい。このような負極活物質の付加的な態様や、粒径等の形態は、所望の特性に応じて適宜に選択することができる。
負極活物質層54を形成するに当たって用いる導電材、バインダおよび溶媒については、正極活物質層34の形成に用いる微小導電材およびバインダと同様の物から適宜選択して使用することができる。負極活物質層54の形成にあたり、バインダおよび溶媒は、水系または溶剤系の何れをも使用することができる。環境負荷を考慮すると、水系(水溶性または水分散性)のバインダおよび水系の溶媒を用いるのが好ましい。特に限定するものではないが、負極活物質層54に占める負極活物質の割合は、およそ50質量%以上であることが好ましく、例えばおよそ85〜99質量%、さらには90〜97質量%であることがより好ましい。また、負極活物質層に占めるバインダの割合は、例えば1〜15質量%とすることができ、通常はおよそ3〜10質量%とするのが好ましい。
上記の材料を混合してペースト状の負極活物質層形成用組成物(以下、単に負極ペーストという。)を負極集電体52に塗布し、溶媒を揮発させて乾燥させた後、適宜圧縮(プレス)および裁断等を行うことで負極50を得ることができる。なお、塗布、乾燥および圧縮等の方法は、上述の正極30の製造方法と同様に従来公知の手法を利用して実施することができる。
セパレータ70としては、従来と同様のセパレータを使用することができる。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。かかる多孔性シートの構成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。特に、PEシート、PPシート、PE層とPP層とが積層された二層構造シート、二層のPP層の間に一層のPE層が挟まれた態様の三層構造シート等の多孔質ポリオレフィンシートを好適に使用し得る。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状電解質を使用する場合には、電解質自体がセパレータとして機能し得るため、セパレータ70が不要な場合があり得る。
これら正極30、負極50およびセパレータ70は、いずれも長尺シート状に形成されており、正極30および負極50間に二枚のセパレータ70が介在するように積層して捲回することで、電極体20が形成されている。なお、正極30において、正極集電体32の長手方向に沿う一方の縁には、正極活物質層34が設けられずに集電体32が露出した未塗工部33が設けられている。この未塗工部33は、正極リード端子38を介して蓋体82の正極端子39に電気的に接続されている。同様に、負極50において、負極集電体52の長手方向に沿う一方の縁には、負極活物質層54が設けられずに集電体52が露出した未塗工部53が設けられている。この未塗工部53は、負極リード端子58を介して蓋体82の負極端子59に電気的に接続されている。
非水電解質は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒(非水溶媒)中に含んだものである。常温で液状の非水電解質(すなわち電解液)を好ましく使用し得る。リチウム塩としては、例えば、従来からリチウム二次電池の非水電解質の支持塩として用いられている公知のリチウム塩を、適宜選択して使用することができる。例えば、かかるリチウム塩として、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等が例示される。かかる支持塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい例として、LiPFが挙げられる。上記非水電解質は、例えば、上記支持塩の濃度が0.7〜1.6mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。非水溶媒としては、一般的なリチウム二次電池に用いられる有機溶媒を適宜選択して使用することができる。特に好ましい非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。これら有機溶媒は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
そしてかかる非水電解質は、過充電防止添加剤を含んでいる。過充電防止添加剤としては、酸化電位がリチウム二次電池の稼動電圧以上(例えば、4.2Vで満充電となるリチウム二次電池の場合は、4.2V以上)であって、正極で酸化分解され、この反応に伴い負極で大量のガス発生を誘起するような化合物であれば特に限定なく用いることができる。酸化電位が電池の稼動電圧と近接していると通常の稼動電圧においても局所的な電圧上昇等で徐々に分解するおそれがある一方、分解電圧が4.9V以上になると、添加剤の酸化分解によるガス発生の前に、非水電解質の主成分及び電極材料の反応により熱暴走を生じるおそれがある。従って、4.2Vで満充電状態となるリチウム二次電池においては、酸化反応電位が4.6V以上4.9V以下の範囲のものが好ましく用いられる。より好ましくは、芳香族炭化水素化合物からなる過充電防止添加剤である。このようなものとして、例えば、ビフェニル化合物、シクロアルキルベンゼン化合物、アルキルベンゼン化合物、有機リン化合物、フッ素原子置換芳香族化合物、カーボネート化合物、環状カルバメート化合物、脂環式炭化水素等が挙げられる。より具体的には、ビフェニル(BP)、アルキルビフェニル、ターフェニル、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、trans−ブチルシクロヘキシルベンゼン、シクロペンチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミノベンゼン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェート、フェニルフルオライド、4−フルオロフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ビスターシャリーブチルフェニルカーボネート、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等が挙げられる。特に、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、シクロヘキシルベンゼン誘導体およびビフェニル(BP)が例示される。過充電防止添加剤の使用量は、使用する非水電解質100質量%に対し、例えば、およそ0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%程度とすることができる。
電池ケース80は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体84と、その開口部を塞ぐ蓋体82とを備える。電池ケース80を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる。本実施形態ではアルミニウムを用いているが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形してなる電池ケース80であってもよい。電池ケース80の上面、すなわち蓋体82には、捲回電極体20の正極30と電気的に接続する正極端子39と、該電極体20の負極50と電気的に接続する負極端子59とが設けられている。これら電極端子39,59の間には、典型的には、電解質を注入する注液口86と、電池ケースの内圧を開放する安全弁88とが設けられている。
また、電池ケース80の内部には、電池ケース80の内圧上昇により作動する電流遮断機構60が設けられている。電流遮断機構60は、電池ケース80の内圧が過充電防止添加剤に起因するガス発生により上昇した場合に、少なくとも一方の電極端子39,59から電極体20に至る導電経路を切断することで、充電電流を遮断し得るように構成されている。この実施形態では、電流遮断機構60は、蓋体82に固定した正極端子39と電極体20との間に設けられ、電池ケース80の内圧が上昇した場合に正極端子39から電極体20に至る導電経路を切断するように構成されている。
上記電流遮断機構60は、第一部材62と第二部材64とからなる導通部材を含んでいる。そして、電池ケース80の内圧が上昇した場合に第一部材62および第二部材64の少なくとも一方(ここでは第一部材62)が変形して他方から離隔することにより、上記導電経路を切断するように構成されている。この実施形態では、第一部材62は変形金属板62であり、第二部材64は接合点66において上記変形金属板62に接合された接続金属板64である。変形金属板(第一部材)62は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状を有し、その周縁部分が集電リード端子65を介して正極端子60の下面と接続されている。また、変形金属板62の湾曲部分63の先端が接続金属板64の上面と接合されている。接続金属板64の下面(裏面)には正極リード端子38が接合され、かかる正極リード端子38が電極体20の正極30(正極集電体32)に接続されている。このようにして、正極端子39から電極体20に至る導電経路が形成されている。
また、電流遮断機構60は、プラスチック等により形成された絶縁ケース61を備えている。絶縁ケース61は、変形金属板62を囲むように設けられ、変形金属板62の上面を気密に密閉している。この気密に密閉された湾曲部分63の上面には、電池ケース80の内圧が作用しない。また、絶縁ケース61は、変形金属板62の湾曲部分63を嵌入する開口部を有しており、該開口部から湾曲部分63の下面を電池ケース80の内部に露出させている。この電池ケース80の内部に露出した湾曲部分63の下面には、電池ケース80の内圧が作用する。
かかる構成の電流遮断機構60は、電池ケース80の内圧が高まると、該内圧が変形金属板62の湾曲部分63の下面に作用し、下方へ湾曲した湾曲部分63が上方へ押し上げられる。この湾曲部分63の上方への押し上げ力は、電池ケース80の内圧が上昇するに従い増大する。そして、電池ケース80の内圧が設定圧力を超えると、湾曲部分63が上下反転し、上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分63の変形によって、変形金属板62と接続金属板64との接合点66が切断される。このことにより、正極端子39から電極体20に至る導電経路が切断され、充電電流が遮断されるようになっている。なお、この実施形態では、内圧上昇時に変形する導通部材62、64が、第一部材62と第二部材64とに分けて構成されている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、導通部材が1つの部材であってもよい。また、電流遮断機構60は正極端子39側に限らず、負極端子59側に設けてもよい。また、電流遮断機構60は、上述した変形金属板62の変形を伴う機械的な切断に限定されない。例えば、電池ケース80の内圧をセンサで検知し、該センサで検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を電流遮断機構として設けることもできる。
本実施形態に係るリチウム二次電池10においては、上記のとおり正極活物質35の表面の少なくとも一部には微小導電材36が密接に配置されて、高分子量バインダによって正極活物質35に結着されおり、正極活物質−導電材−電解質成分の三相界面が良好に形成されており、反応性が高められている。また、正極活物質35の間では、異方性導電材37が任意の空隙を以て正極活物質35同士を電気的に接合しかつ支持する状態で、低分子量バインダにより結着されている。かかる低分子バインダは、結晶状態でバネ性を備えるものであり得る。そのためかかる特徴的な構成を長期に渡って耐久性良く維持し得る。したがって、たとえ表面の電子伝導性に劣る正極活物質35を用いた場合でも、その表面における反応性は高められており、例えば、電池10が過充電の状態においては、過充電防止添加剤の酸化分解を迅速に進行させ得る。これに伴い負極50では速やかに多量のガスが発生され、電池ケース80の内圧は設定圧力を超える圧力にまで急速に上昇し得る。したがって、かかるリチウム二次電池10は、過充電に陥ると電流遮断機構60が早期に作動して充電電流を遮断し、より安全な状態で電極反応を停止し得るものとなる。
このようなリチウム二次電池10は、各種用途向けの二次電池として利用可能であり、好ましい適用対象としては、50A以上(例えば50A〜250A)、さらには100A以上(例えば100A〜200A)のハイレート放電を含む充放電サイクルで使用され得ることが想定されるリチウム二次電池10や、理論容量が1Ah以上(さらには3Ah以上)の大容量タイプであって10C以上(例えば10C〜50C)さらには20C以上(例えば20C〜40C)のハイレート放電を含む充放電サイクルで使用されることが想定されるリチウム二次電池等が例示される。これらのリチウム二次電池は、例えば図5に示したように、特に高い安全性と信頼性が求められる自動車等の車両1の駆動用電源(車両駆動用モータの電源)として好適に利用することができる。かかるリチウム二次電池10が搭載される車両1の種類は特に限定されないが、典型的には、ハイレート特性が要求されるハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車、燃料電池自動車等であり得る。なかでも、HVおよびPHV用途の電極は、電極活物質層の空隙率を25%以上、例えば28%以上として製造することがあり得る。かかるHVおよびPHV用途の電極として、ここに開示される発明は特に好適に使用され得る。なお、かかるリチウム二次電池10は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数接続されてなる組電池100の形態で使用されてもよい。
以下に実施例を示し、本発明についてさらに説明する。ただし、本発明がこれらの例に限定されないことは言うまでもない。
[正極の製造]
正極活物質として、一般式LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表わされる組成のリチウム遷移金属複合酸化物を用意した。微小導電材としては、アセチレンブラック(AB:電化工業(株)社製、デンカブラック粉状品)と、異方性導電材としては、黒鉛(Timcal社製、KS4)を用いた。また、バインダとして、平均分子量が36万と170万の異なる2種のPVDFを用意し、下記の表1に示す組み合わせでバインダ1(ここに開示される発明の高分子量バインダに相当)およびバインダ2(ここに開示される発明の低分子量バインダに相当)として用いた。なお、このKS4のアスペクト比は2であった。
まず、用意した正極活物質と微小導電材とを良く混合した後、バインダ1および溶媒としてのNMPを加えて硬練りすることで、混合物Aを調整した。混合物Aの固形分重量は、約70%とした。
また、異方性導電材とバインダ2と、溶媒としてのNMPを加えて硬練りすることで、混合物Bを調整した。混合物Bの固形分重量は、約72%とした。
次いで、これら混合物Aと混合物Bとを希釈溶媒としてのNMPを加えて混合することで、正極ペーストを調製した。正極ペーストの固形分重量は、約62%とした。
なお、上記正極ペーストにおいて、各材料の配合は、質量比で、正極活物質:微小導電材:異方性導電材:高分子量バインダ:低分子量バインダとしたとき、91:3:3:1:2となるように配合した。
得られた正極ペーストを、正極集電体としてのAl箔の両面に塗布し、120℃の乾燥炉で乾燥させた後、プレスすることで、目付量(両面の合計)が30mg/cmで密度が2.8g/cmの活物質層を備える正極を得た。なお、この正極活物質素の空隙率は、29%である。
なお、得られた正極から10mgの正極活物質層を試験片としてとり出し、示差走査熱量測定(DSC)を行った。その結果から、融解開始温度を求めて下記の表1に併せて示した。
(サンプル1)
すなわち、上記の製造方法により得られたサンプル1の正極は、高分子量バインダとして平均分子量が170万のPVDFを、低分子量バインダとして平均分子量が36万のPVDFを用いたものである。また、サンプル1の正極の融解開始温度は135℃であった。
(サンプル2)
サンプル2の正極は、サンプル1の正極を乾燥した後、プレスする前に、140℃での熱処理を行ったものである。なお、このサンプル2の正極の融解開始温度は140℃であった。このことから、サンプル2の正極における低分子量バインダは結晶化されている。
(サンプル3)
サンプル3の正極は、サンプル1の正極を乾燥した後、プレスする前に、145℃での熱処理を行ったものである。なお、このサンプル3の正極の融解開始温度は145℃であった。このことから、サンプル3の正極における低分子量バインダは結晶化されている。
(サンプル4)
サンプル4の正極は、高分子量バインダおよび低分子量バインダとして、いずれも平均分子量36万のバインダを用いた以外は、サンプル1と同様に作製したものである。なお、このサンプル4の正極の融解開始温度は135℃であった。
(サンプル5)
サンプル5の正極は、高分子量バインダおよび低分子量バインダとして、いずれも平均分子量170万のバインダを用いた以外は、サンプル1と同様に作製したものである。なお、このサンプル5の正極の融解開始温度は143℃であった。
(サンプル6)
サンプル6の正極は、高分子量バインダおよび低分子量バインダとして、いずれも平均分子量36万のバインダを用いた以外は、サンプル2と同様に作製したものである。なお、このサンプル6の正極の融解開始温度は140℃であった。このことから、サンプル6の正極におけるバインダは結晶化されている。
(サンプル7)
サンプル7の正極は、サンプル1の正極を乾燥した後、プレスする前に、150℃での熱処理を行ったものである。なお、このサンプル7の正極の融解開始温度は150℃であった。このことから、サンプル7の正極では高分子量バインダおよび低分子量バインダの両方が結晶化されている。このことから、サンプル7の正極におけるバインダは結晶化されている。
[平均分子量の測定]
上記サンプル1、4および5について正極活物質層からバインダ成分を溶出させてゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)を行い、各サンプルに用いたバインダの平均分子量の測定を行った。その結果を図6に示した。
[貫通抵抗の測定]
上記で得られたサンプル1〜7の各正極の貫通抵抗を測定した。すなわち、抵抗測定用に2cm×2.5cmのシート状に切り取った正極を2枚用意し、この2枚の正極を活物質層を対向させて集電体で挟む形に重ね合わせ、集電体の両側から2000Nの圧力を加えつつ、電流印加装置から両集電体間に電流を流したときの電圧から正極シートの垂直方向の抵抗値(貫通抵抗)を測定した。この垂直方向の抵抗値が小さいほど正極活物質層の厚み方向で導電材が良好に導電経路を形成して電流が流れやすく、電圧損失が小さくなり、電池性能が良好であるといえる。貫通抵抗を測定した結果を表1に示した。
[評価用のリチウム二次電池の構築]
負極活物質層としての黒鉛と、バインダとしてのSBRと、増粘剤としてのCMCとを、負極活物質:バインダ:増粘剤としたときの質量比が98:1:1となる割合で配合し、イオン交換水を加えて練合することで、負極ペーストを得た。この負極ペーストを、負極集電体としての銅箔の両面に塗布し、120℃の乾燥炉で乾燥させた後、プレスすることで、目付量(両面の合計)が17mg/cmで密度が1.4g/cmの活物質層を備える負極を得た。
上記の正極(サンプル1〜7)と負極とを二枚の長尺状セパレータとともに積層し、その積層シートを長尺方向に捲回して捲回電極体を作製した。セパレータとしては、PP/PE/PPからなる三層構造の微多孔質シートを用いた。この電極体を角型の外装ケースに収容して非水電解質を注入し、評価用のリチウム二次電池(サンプル1〜7)を構築した。非水電解質としては、EC、DMCおよびEMCを3:4:3の体積比で混合した溶媒中に、リチウム源としての1.0MのLiPFと、過充電防止添加剤としての2質量%のCHBと1質量%のBPとを溶解させたものを用いた。
[コンディショニング]
上記のとおり構築した評価用のリチウム二次電池に対し、1.5Cの充電レートで4.1Vまで定電流充電した後、60℃で20時間の高温エージングを行うことによってコンディショニングを行なった。
[初期過充電ガス発生量の測定]
上記コンディショニング後のリチウム電池に対し、常温(25℃)において、1/5Cのレートで4.5Vまで定電流充電を行い、続いて初期の電流値の1/10のレートになるまで定電圧充電を行った。このようにして充電した電池を、4.5Vの定電圧を印加した状態に3時間保持した。そして、上記4.5Vの定電圧を印加する前後において電池ケースの内圧を測定し、3時間の電圧印加による圧力上昇を容器内部におけるガス発生量に換算して、これをセル容量で割ることにより、セル容量当たりのガス発生量を求めた。得られた結果を表1に示した。
[高温サイクル後の過充電ガス発生量の測定]
初期過充電ガス発生量の測定を行った後のリチウム二次電池に対し、60℃の温度雰囲気で充放電を繰り返すサイクル試験を行い、その後再び過充電ガスの発生量を調べた。
具体的には、60℃の恒温槽内において、2Cで定電流によって4.1VまでCC充電を行い、次いで、2Cで3.0VまでCC放電を行い、5分間休止するという充放電サイクルを500回連続して繰り返した。そして、かかる充放電サイクル試験後に、上述した初期過充電ガス発生量の測定と同じ条件でセル容量当たりのガス発生量を測定した。この結果を表1に示した。
Figure 0005880956
[評価]
図6から、サンプル1、4および5に使用されたバインダが表1に示された平均分子量を有するバインダにより構成されていることが確認できた。
表1から、ここに開示される構成を備えるサンプル1〜3の電池は、貫通抵抗および初期の過充電ガス発生量がサンプル4〜7の電池に比べて格段に増加されていることがわかる。さらに、サイクル試験後の過充電ガス発生量もほとんど減少することなく、過充電時には十分なガスが発生できることが確認できた。
また、熱処理により低分子量バインダを結晶化したサンプル2および3の電池は、サンプル1に比べて、初期のガス発生量は若干少ないものの、サイクル試験後のガス発生量が高い値で維持されており、耐久性が高められたことが確認できる。すなわち、低分子量バインダが結晶状態になると貫通抵抗が若干上がるために、初期のガス発生量は少なくなる。しかしながら、結晶状態の低分子量バインダはバネ性を備えるために、充放電サイクルに伴う活物質層の繰り返しの膨張・収縮の影響を緩和でき、サイクルを重ねても三相界面による反応場を好適に維持し得るためであると考えられる。
なお、サンプル4〜7の結果からもわかるように、例え2種類の導電材を用いてその配置場所をサンプル1〜3のセルと同様にしたとしても、バインダとして、単に低分子量バインダのみを用いたり、高分子量バインダのみを用いた場合には、電子伝導性と電解液の供給能のバランスが取れないために上記の効果は得られない。また、低分子量バインダと高分子量バインダの配置場所が適切でない場合も同様である。2種類の導電材およびバインダの組み合わせと、活物質に対するそれらの配置が重要であることが確認できた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
ここで開示される技術によると、電極活物質表面の反応性が効率的に高められている電極と、その製造方法を提供することができる。また、この電極を備える非水電解質二次電池をも提供する。この非水電解質電池によると、例え空隙率が高い電極活物質層を備える場合であっても、過充電状態においてCIDを速やかに作動させ得る量のガスを発生させることができる。また、電池構成の設計変更は必要なく、電池抵抗等の特性を損なうことなく実施できる。
1 車両
10 リチウム二次電池
20 捲回電極体
30 正極
32 正極集電体
33 未塗工部
34 正極活物質層
35 正極活物質
36 微小導電材
37 異方性導電材
38 正極リード端子
39 正極端子
50 負極
52 負極集電体
53 未塗工部
54 負極活物質層
58 負極リード端子
59 負極端子
60 電流遮断機構
61 絶縁ケース
62 変形金属板(第一部材)
63 湾曲部分
64 接続金属板(第二部材)
65 集電リード端子
66 接合点
70 セパレータ
80 電池ケース
82 蓋体
84 ケース本体
86 注液口
88 安全弁
100 組電池

Claims (17)

  1. 電極活物質と導電材とバインダとを含む電極活物質層を備える二次電池用の電極であって、
    前記電極活物質の表面の少なくとも一部は、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と平均分子量が100万以上500万以下で非晶質状態の高分子量バインダとの混合物により被覆され、
    該被覆された電極活物質は、一次粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下で形状異方性を有する異方性導電材と平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとの混合物により互いに結合されて前記電極活物質層が形成されている、二次電池用電極。
  2. 前記電極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物であり、
    前記電極は、正極活物質層を備える正極である、請求項1に記載の二次電池用電極。
  3. 前記微小導電材は、アセチレンブラックである、請求項1または2に記載の二次電池用電極。
  4. 前記異方性導電材は、黒鉛である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  5. 前記異方性導電材のアスペクト比が2〜10である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  6. 前記電極活物質層の空隙率が25%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  7. 前記低分子量バインダが結晶状態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  8. 電極活物質100質量部に対して、
    前記微小導電材が1〜10質量部で前記高分子量バインダが0.1〜5質量部、
    前記異方性導電材が1〜10質量部で前記低分子量バインダが0.1〜3質量部、
    の割合で配合されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  9. 前記電極活物質層の厚み方向で測定される貫通抵抗が100mΩ/5cm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の二次電池用電極。
  10. 正極、負極および非水電解質を備える二次電池であって、
    前記正極および前記負極のうちの少なくともいずれか一方として、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極を備える、非水電解質二次電池。
  11. さらに、電池内の内圧に応じて前記正極および前記負極の間の導電経路を遮断し得る電流遮断機構を備えるとともに、
    少なくとも前記正極として、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電極を備え、
    前記非水電解質は、正極において酸化分解されることでガスを発生させる機能を有する過充電防止添加剤を含み、
    前記過充電防止添加剤により発生されるガスにより電池内の内圧が高められて、前記電流遮断機構が前記導電経路を遮断し得る、請求項10に記載の非水電解質二次電池。
  12. 電極集電体に電極活物質を含む電極活物質層を備える二次電池用の電極の製造方法であって、
    前記電極活物質と、一次粒子の平均粒径が20nm以上200nm以下の微小導電材と、平均分子量が100万以上500万以下の高分子量バインダとを混練して混合物Aを用意する工程、
    一次粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下で形状異方性を有する異方性導電材と、平均分子量が1万〜30万の低分子量バインダとを混練して混合物Bを用意する工程、
    前記混合物Aと前記混合物Bとを溶媒と共に混合して電極活物質層形成用組成物を用意する工程、および、
    前記電極活物質層形成用組成物を前記集電体上に供給して前記電極活物質層を形成する工程、
    を包含し、
    当該製造方法は、熱処理を行う工程を含まないか、あるいは、前記高分子量バインダの結晶化温度未満の温度範囲で熱処理を行う工程を含む二次電池用電極の製造方法。
  13. 前記電極活物質としてのニッケル、コバルトおよびマンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物を用い、正極活物質層を備える正極を製造する、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記熱処理を行う工程は、前記低分子量バインダの結晶化温度以上の温度範囲で実施する、請求項12または13に記載の製造方法。
  15. 前記異方性導電材としてアスペクト比が2〜10の異方性導電材を用いる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記電極活物質層の空隙率を25%以上とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記電極活物質100質量部に対して、
    前記微小導電材が1〜10質量部、前記高分子量バインダが0.1〜5質量部、
    前記異方性導電材が1〜10質量部、前記低分子量バインダが0.1〜3質量部
    となる配合で前記混合物Aおよび前記混合物Bを用意するとともに、前記電極活物質層形成用組成物を調製する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
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