この発明に係る小型電子部品の取扱装置に粘着保持される小型電子部品及びこの発明に係る小型電子部品の取扱方法で用いられ、又は製造される小型電子部品は、取扱装置で粘着保持される必要性のある小型電子部品、又は、小型電子部品の製造方法によって用いられ若しくは製造される小型電子部品を製造可能な小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型電子部品の製造には小型電子部品の搬送工程等も含まれるから小型電子部品は小型電子部品そのものも含まれる。したがって、この発明においては小型電子部品と小型電子部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら小型電子部品の中でも、この発明に係る取扱装置に粘着保持されるのに好適な小型電子部品、並びに、この発明に係る小型電子部品の製造方法に用いられ又は製造される小型電子部品として小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、FPC、ウエハー等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
この発明に係る取扱装置は、小型電子部品を粘着保持する第1保持治具及び第2保持治具と、小型電子部品を第1保持治具から第2保持治具に移し替えるとき等に用いられるスペーサと、第2保持治具に移し替えられて粘着保持された小型電子部品を取り外すときに用いられる脱離具とを備えている。この発明に係る小型電子部品の取扱装置は第2保持治具の壁部に積層配置されるスペーサを具えていることに特徴の1つを有している。以下に、この発明に係る小型電子部品の取扱装置の一例を具体的に説明する。
この発明に係る取扱装置の一例である小型電子部品の取扱装置(以下、単に「取扱装置」と称することがある。)1は、図1に示されるように、第1保持治具11と第2保持治具12とスペーサ13と脱離具14とを備えている。この取扱装置1は、例えば、両端部それぞれに所望の処理、例えば電極成形処理を施して小型電子部品を製造するのに好適に使用され、もちろん単に小型電子部品又は小型電子部品用部材を搬送、収納又は検査等するために粘着保持するのにも好適に使用される。
取扱装置1における第1保持治具11と第2保持治具12とは、図1に示されるように、小型電子部品を粘着保持する粘着性表面の粘着力が異なっていること以外は基本的に同様である。すなわち、第1保持治具11及び第2保持治具12はいずれも小型電子部品を粘着保持する弾性部材と弾性部材を支持する治具本体とを備えている。
第2保持治具12は、図1及び図2に示されるように、後述する第1粘着性表面24よりも粘着力の強い第2粘着性表面34を有する第2弾性部材31と、第2弾性部材31の対向する2組の端縁が内側となるように第2弾性部材31を配置可能な第2載置部35及び第2載置部35の外側に第2弾性部材31よりも一段高く突設された第2壁部36を有する第2治具本体32とを備えている。すなわち、第2治具本体32は矩形の平板体をなし、平板体の端縁それぞれの内側に一主面に開口するように凹設された第2載置部35と、第2載置部35の端縁それぞれに沿って突設された第1壁部36a〜36d(なお、第2壁部36cは図1に図示しない。)が第2載置部35を一巡するように枠状に連続してなる第2壁部36とを有している。
この第2治具本体32は、平板体に第2載置部35が凹設され、第2壁部36が一体的に設けられている。第2載置部35の深さは第2弾性部材31を自身の内部に収納配置したときに第2壁部36が第2弾性部材31の第2粘着性表面34よりも一段高く、例えば0.01mm以上高くなるように設定されている。第2壁部36a〜36dそれぞれは、長手方向に垂直な断面が矩形で第2弾性部材31を第2載置部35内に収納配置したときに第2粘着性表面34と略平行で平坦な頂面を有している。この頂面は実質的に同じ高さになっている。
第2治具本体32は、第2弾性部材31を支持可能な材料で形成されていればよく、スペーサ13が載置される第2壁部36は比較的高硬度の材料で形成される。第2弾性部材31を支持可能な材料としては、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板等を挙げることができる。特に第2壁部36は前記金属製プレート又は樹脂板であるのが好ましい。なお、第2治具本体32は板状物を複数積層して成る積層体とすることもできる。
第2弾性部材31は、平面視、第2治具本体32よりも小さく第2載置部35と同寸の矩形の盤状体であって第2載置部35内に収納載置される。この第2弾性部材31は、第1粘着性表面24よりも粘着力が強い第2粘着性表面34を有している。第2弾性部材31は平坦な第2粘着性表面34を有し、小型電子部品を粘着保持する粘着領域37と、第2粘着性表面34、この例においては粘着領域37の各端縁から外側上方に向かって突出し、壁部36a〜36dそれぞれの頂部すなわち頂面まで延在する傾斜端部38とを有している。第2弾性部材31は第2載置部35に載置されたときに第2弾性部材31、特に粘着領域37が前記の通り第2壁部36よりも一段低い位置になるように厚さが、例えば0.05〜5mmに設定されている。第2弾性部材31の傾斜端部38は壁部36a〜36dの頂面と粘着領域37の第2粘着性表面34とを接続し、粘着力を有していてもいなくてもよい。このように第2弾性部材31はその厚さを薄くできるので第2保持治具12自体の製造コストを低減することもできる。
第2粘着性表面34は、小型電子部品の表面に接触して小型電子部品を粘着保持するから小型電子部品を粘着保持することのできる粘着力を有している。具体的には、第2粘着性表面34は、通常、1〜60g/mm2の粘着力を有しているのがよく、7〜60g/mm2の粘着力を有しているのがよい。また、第2粘着性表面34は、後述する第1粘着性表面24の粘着力よりも大きな粘着力を有している。第1粘着性表面24及び第2粘着性表面34がこのような粘着力の関係を有することにより、第1保持治具11における第1粘着性表面24から第2保持治具12における第2粘着性表面34に小型電子部品を移し替えることができる。第1粘着性表面24から第2粘着性表面34に小型電子部品を脱落することなくスムーズに移し替えることができる点で、第1粘着性表面24と第2粘着性表面34との粘着力の差は15〜43g/mm2であるのが好ましく、18〜35g/mm2であるより一層好ましく、20〜30g/mm2であるのが特に好ましい。第1粘着性表面24及び第2粘着性表面34の粘着力は粘着力向上剤の含有量等によって調整することができる。
第2粘着性表面34の前記粘着力は下記「信越ポリマー法」によって測定された値である。この方法においては、第2弾性部材31を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意し、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に第2弾性部材31を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で第2粘着性表面34の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mm2に設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる算術平均値を第2粘着性表面34の粘着力とする。
第2粘着性表面34は、硬度(JIS K6253[デュロメータA])が5〜50であるのが好ましく、30〜50であるのが特に好ましい。第2粘着性表面34が前記硬度の範囲内にあると、第2粘着性表面34に小型電子部品を押圧して粘着保持させるときに第2粘着性表面34が弾性変形して、小型電子部品の接触面がより強固に密着されるうえ小型電子部品の損傷及び破損等を防止できる。なお、第2粘着性表面34の硬度は、第2弾性部材31を形成する粘着剤材料に含有される成分の含有比を変えること等によって調整することができる。
第2粘着性表面34は、平坦であるのが好ましく、具体的には、例えば十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であるのが好ましい。十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mm等の条件で測定する。第2粘着性表面34の十点平均粗さRzは、例えば、第2弾性部材31を形成する際に用いる金型における製品部形成面のブラスト処理等により調整することができる。
第2弾性部材31は、例えば、後述する粘着力を有する粘着性材料又はこの粘着性材料の硬化物で形成されており、粘着保持部37と傾斜端部38とは一体に成形されている。第2弾性部材31は、接着剤層若しくはプライマー層によって、第23弾性部材31の粘着力によって、又は、固定具等によって、第2治具本体32の表面に固定されている。
第2弾性部材31は、前記粘着力を発揮することのできる粘着性材料又はこの粘着性材料の硬化物で形成されていればよく、粘着材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、シリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008−091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)と粘着力向上剤(c)と触媒(d)とシリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008−091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とシリカ系充填材(e)と有機過酸化物(f)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
第1保持治具11は、図1に示されるように、第1粘着性表面24を有する第1弾性部材21と第1弾性部材21を内側に配置可能な第1治具本体22とを備えており、具体的な構成は第2保持治具12と基本的に同様である。
したがって、第1保持治具11は、第1粘着性表面24を有する第1弾性部材21と、第1弾性部材21の対向する2組の端縁が内側となるように第1粘着部材21を配置可能な第1載置部25及び第1載置部25の外側に第1弾性部材21よりも一段高く突設された第1壁部26a〜26dを有する第1治具本体22とを備えている。
この第1治具本体22は、第2治具本体32と基本的に同様であり、平面視第1弾性部材21を内側に配置可能な第1載置部25と第1載置部25の外側に配置され、この発明に係る外縁部としての第1壁部26を有している。このように第2治具本体32は平板体に第2載置部35が凹設され、第2壁部36が一体的に設けられている。第1載置部25の深さは第1弾性部材21を自身の内部に収納配置したときに第1壁部26が第1粘着性表面24よりも一段高く、例えば0.01mm以上高くなるように設定されている。
第1弾性部材21は、粘着力以外は第2弾性部材31と基本的に同様であり、平面視、第1治具本体22よりも小さく第1載置部25と同寸の矩形の盤状体に整形されている。すなわち、第1弾性部材21は、第2粘着性表面34よりも粘着力が弱く平坦な第1粘着性表面24を有し、小型電子部品を粘着保持する粘着領域27と、第1粘着性表面24、この例においては粘着領域27の各端縁から外側上方に向かって突出し、第1壁部26a〜26dそれぞれの頂部すなわち頂面まで延在する傾斜端部28とを有している。この第1弾性部材21は第1載置部25に載置されたときに粘着領域27が第1壁部26よりも一段低い位置になるように厚さが、例えば0.05〜5mmに設定されている。第1粘着性表面24は、第2粘着性表面34と基本的に同様の硬度、平坦性及び厚さ等を有し、1〜60g/mm2、好ましくは7〜60g/mm2の範囲内で第2粘着性表面34よりも弱い粘着力を有している。
第1保持治具11及び第2保持治具12は、第1治具本体22及び第2治具本体32と第1弾性部材21及び第2弾性部材31とをそれぞれ作製した後に自身の粘着力又は接着剤層若しくはプライマー層によって第1載置部25及び第2載置部35の表面に載置固定して製造してもよく、また第1載置部25及び第2載置部35に粘着性材料を充填し、第1治具本体22及び第2治具本体32と粘着性材料とを一体成形して製造されてもよい。
スペーサ13は、図1に示されるように、第2保持治具12の第2壁部36上、すなわちその頂面に載置され、第2壁部36の頂面と基本的に同様の平面形状及び寸法を有する枠体として構成されている。したがって、スペーサ13は、枠体で囲繞され、第2載置部35に対応する貫通部39を有している。
このスペーサ13は、小型電子部品を第1保持治具11から第2保持治具12に移し替えるとき等に第1保持治具11の過剰な押圧すなわち過剰な接近を防止して第1保持治具11と第2保持治具12との離間距離を規制する機能を果たす。したがって、スペーサ13は、第1保持治具11における第1壁部26と第1粘着性表面24との第1段差、第2保持治具12における第2壁部36と第2粘着性表面34との第2段差及び小型電子部品の寸法に応じて適宜に設定される。具体的には、スペーサ13の厚さと第1段差と第2段差との合計が小型電子部品の寸法よりもわずかに、例えば0.05〜0.3mm程度小さくなるように設定される。スペーサ13はある程度の強度を有する材料で形成され、例えば前記樹脂又は前記金属が挙げられる。
脱離具14は、第2保持治具12に粘着保持されている小型電子部品を取り外す際に第2保持治具12の対向する1組の壁部36、例えば第2壁部36b及び36dの頂面上に橋渡し状態に載置され、これらの第2壁部36b及び36dの延在方向に沿って第2粘着性表面34の上方を非接触状態で相対的に移動する。脱離具14はこのように第2壁部36b及び36dの頂面上を摺動又は移動して、小型電子部品を第2粘着性表面34から引き離し、又は脱離具14の移動方向下流側に位置する第2壁部例えば36a又は36cに到達させて、小型電子部品を第2粘着性表面34から脱離させる。したがって、脱離具14は、第2粘着性表面34に一列に粘着保持された複数の小型電子部品を一挙に脱離させることができる点で載置される1組の第2壁部36b及び36dの間隔よりも大きな長さを有しているのが好ましく、小型電子部品の損傷を防止できる点で、弾性材料で形成又は被覆され、小型電子部品に衝突して押圧又は押進する被衝突部を有しているのが好ましい。このような脱離具14として、例えば、その先端が前記被衝突部として機能するように配置された三角柱状のブレードであってもよく、また、自身が前記被衝突部として機能するワイヤー等であってもよく、この取扱装置1は図1に示されるように三角柱状の脱離具14を具えている。
この発明に係る取扱装置の別の一例である小型電子部品の取扱装置(以下、単に「取扱装置」と称することがある。)2は、図3に示されるように、第1保持治具16と第2保持治具12とスペーサ17と脱離具14とを備えている。この取扱装置2は、第1保持治具16及びスペーサ17が異なること以外は取扱装置1と基本的に同様である。
第1保持治具16は、図3及び図4に示されるように、第1粘着性表面44を有する第1弾性部材41と、第1弾性部材41を内側に配置可能な第1治具本体42とを備えている。第1弾性部材41は傾斜端部38を備えてなく適宜の厚さを有していること以外は第1弾性部材21と基本的に同様である。第1治具本体42は、第1壁部26を有していないこと以外は第1治具本体21と基本的に同様であり、両主面が平坦な平板体になっている。すなわち、第1治具本体42は、第1弾性部材41全体が内側となるように第1弾性部材41を平面視内側に配置可能な第1載置部45と第1載置部45の外側に第1載置部45を囲繞するように配置された平坦面46を有している。この平坦面46は第1載置部45と共に第1治具本体42の一主面を構成し、第1弾性部材41の外側に露出している。平坦面46はこの発明に係る外縁部に相当する。
スペーサ17は、その厚さ以外はスペーサ13と基本的に同様であり、スペーサ17の厚さは、具体的にはスペーサ17の厚さと第1保持治具16における第1弾性部材41の厚さと第2保持治具12における第2壁部36及び第2粘着性表面34の第2段差との合計が小型電子部品の寸法よりもわずかに、例えば0.05〜0.3mm程度小さくなるように設定されている。
この発明に係る小型電子部品の取扱方法を説明する。この発明に係る小型電子部品の取扱方法はこの発明に係る小型電子部品の取扱装置を用いる。この発明に係る小型電子部品の取扱方法は、小型電子部品が第1粘着性表面に粘着保持された第1保持治具の第1治具本体を第2保持治具の壁部上に載置されたスペーサに接触させる移し替え工程と、この移し替え工程の後に第2保持治具の対向する1組の壁部上に載置された脱離具を前記壁部の延在方向に沿って相対的に移動させる脱離工程とを有している。以下に、この発明に係る小型電子部品の取扱方法の一例を具体的に説明する。
この発明に係る小型電子部品の取扱方法の一例である小型電子部品の取扱方法(以下、「この発明に係る一取扱方法」と称することがある。)を、取扱装置1を用いて軸線方向の両端部に電極を有する直方体状のチップコンデンサを製造する方法を例にして、具体的に説明する。
この発明に係る一取扱方法においては、まず、チップコンデンサを製造可能な直方体状のチップコンデンサ本体7(図5参照。)を準備する。例えば、チップコンデンサ本体7は、縦及び横が0.3mmの正方形を底面及び頂面とする高さが0.6mmの四角柱体であり、小型電子部品用部材に相当する。
この発明に係る一取扱方法においては、第1保持治具11の第1弾性部材21にチップコンデンサ本体7を粘着保持させる保持工程を実施する。例えば、第1弾性部材21の第1粘着性表面24上に複数のチップコンデンサ本体7を起立状態で所定のパターンに配列し、これらチップコンデンサ本体7を第1粘着性表面24に押圧して粘着保持させる。このようにしてチップコンデンサ本体7を粘着保持させる方法として、例えば特開2008−091659号公報に記載された方法等が挙げられる。
この発明に係る一取扱方法においては、このようにしてチップコンデンサ本体7を粘着保持した後に、所望により、第1弾性部材21に多数のチップコンデンサ本体7が懸垂保持された状態に第1保持治具11を配置し、第1粘着性表面24に粘着保持されたチップコンデンサ本体7の自由端すなわち下端に必要な処理を施す第1処理工程を実施する。この例においては、チップコンデンサ本体7の自由端を導電ペースト浴に浸漬させてチップコンデンサ本体7の自由端に導電ペーストを塗布し、塗布した導電ペーストを乾燥させて電極を形成する第1電極形成工程を実施する。
この発明に係る一取扱方法においては、第2保持治具12の第2壁部36にスペーサ13を載置して、第1保持治具11の第1壁部26がスペーサ13上に位置すると共にチップコンデンサ本体7が懸垂状態となるように第1保持治具11を反転配置する配置工程を実施する。
この発明に係る一取扱方法においては、次いで、図5に示されるように、このように配置された第1保持治具11を第2保持治具12に向けて相対的に移動して第1壁部26を第2保持治具12の第2壁部36上に載置されたスペーサ13に接触させる移し替え工程を実施する。この移し替え工程においては、第1壁部26と第2壁部36とでスペーサ13を挟むように積層された状態となり、このとき、スペーサ13の厚さは前記の通りであるからチップコンデンサ本体7はその両端部それぞれが第1弾性部材21及び第2弾性部材31に押圧されてわずかにめり込んだ状態になる。この発明に係る一取扱方法においては、この積層状態をしばらく保持した後に、第1保持治具11を第2保持治具12から相対的に引き離す。そうすると、第2保持治具12の第2粘着性表面34は第1保持治具11の第1粘着性表面24よりも粘着力が強いから、第2粘着性表面34に押圧されたチップコンデンサ本体7は第1粘着性表面24から脱離して第2粘着性表面34に粘着保持されて移し替えられる。
このとき、取扱装置1は前記のように構成されているから、第1粘着性表面24及び第2粘着性表面34の粘着力の差等に応じてチップコンデンサ本体7の移し替えに必要な保持治具11及び12同士の押圧力すなわちこれら保持治具11及び12の離間距離を、スペーサ13をこれらの間に介装することで、容易であるにもかかわらず厳密に調整することができる。したがって、この発明に係る一取扱方法によれば、第1保持治具11に粘着保持された多数のチップコンデンサ本体7を損傷させることなく、保持姿勢を維持したままチップコンデンサ本体7のほとんどすべてを第2保持治具12に移し替えることができる。この発明に係る一取扱方法は用いるチップコンデンサ本体7又は製造するチップコンデンサの寸法に応じて予め設定されたスペーサ13を用いるから、このような効果はチップコンデンサ本体7又はチップコンデンサの寸法に依存することなく、発揮される。
この発明に係る一取扱方法においては、次いで、第2保持治具12に移し替えられたチップコンデンサ本体7の自由端に必要な処理を施す第2処理工程を例えば第1処理工程と同様にして実施する。この例においては、所望により、第2弾性部材31に多数のチップコンデンサ本体7が懸垂保持された状態に第2保持治具12を配置して、チップコンデンサ本体7の自由端を導電ペースト浴に浸漬させてチップコンデンサ本体7の自由端に導電ペーストを塗布し、塗布した導電ペーストを乾燥させて電極を形成する第2電極形成工程を実施する。この第2電極形成工程が終了すると第2保持治具12には両端部に電極が形成されたチップコンデンサが粘着保持されていることになる。
この発明に係る一取扱方法においては、次いで、第2保持治具12の対向する1組の第2壁部36b及び36d上に載置された脱離具14を第2壁部36b及び36dの延在方向に沿って相対的に移動させる脱離工程を実施する。具体的には、脱離具14を第2壁部36cに向けて相対的に移動させると、その先端がチップコンデンサの側面に当接してチップコンデンサを同方向に向かって傾倒させ、又は、チップコンデンサを同方向に向かって第2壁部26cの頂面まで押進して、第2粘着性表面34に粘着保持されているチップコンデンサが第2粘着性表面34から脱離する。なお、脱離具14を第2壁部36aに向けて移動させても同様にチップコンデンサを第2粘着性表面34から脱離させることができる。
このとき、取扱装置1は前記のように構成されているから、脱離具14は第2粘着性表面34のわずか上方を非接触状態で第2壁部36b及び36d上を摺動又は移動することになり、チップコンデンサを第2保持治具12から取り外すために、脱離具14を第2粘着性表面34に押し当てる必要も第2粘着性表面23上を摺動させる必要もない。したがって、この発明に係る一取扱方法によれば、第2粘着性表面34を損傷させることなく、チップコンデンサのほとんどすべてを第2保持治具12すなわち第2粘着性表面34から取り外すことができる。
この発明に係る一取扱方法においては、このようにして取り外した多数のチップコンデンサを収集してチップコンデンサの製造が完了する。
この発明に係る一取扱方法においては、このようにして、多数のチップコンデンサ本体7を一挙に起立状態で第1保持治具11に所望のように粘着保持することができると共に、多数のチップコンデンサ本体7を第1保持治具11から第2保持治具12に起立状態を保持したまま一挙に移し替えることができ、さらに、第2保持治具12に移し替えられた多数のチップコンデンサのほとんどすべてを容易に脱離させることができる。
この発明に係る小型電子部品の取扱方法の別の一例である小型電子部品の取扱方法(以下、「この発明に係る別の一取扱方法」と称することがある。)を、取扱装置2を用いて前記チップコンデンサを製造する方法を例にして、具体的に説明する。
この発明に係る別の一取扱方法は、移し替え工程が異なること以外は発明に係る一取扱方法と基本的に同様である。したがって、発明に係る別の一取扱方法においては、発明に係る一取扱方法と基本的に同様にして保持工程及び第1処理工程を実施する。
この発明に係る別の一取扱方法について、次いで、第2保持治具12の第2壁部36にスペーサ17を載置して、平坦面46がスペーサ17上に位置すると共にチップコンデンサ本体7が懸垂状態となるように第1保持治具16を反転配置する配置工程を実施する。
この発明に係る別の一取扱方法においては、次いで、図6に示されるように、配置工程で配置された第1保持治具16を第2保持治具12に向けて相対的に移動して第1治具本体42の平坦面46を第2保持治具12の第2壁部36上に載置されたスペーサ17に接触させる移し替え工程を実施する。この移し替え工程においては、第1治具本体42と第2壁部36とでスペーサ17を挟むように積層された状態となり、このとき、スペーサ17の厚さは前記の通りであるからチップコンデンサ本体7はその両端部それぞれが第1弾性部材41及び第2弾性部材31に押圧されてわずかにめり込んだ状態になる。この発明に係る別の一取扱方法においては、この積層状態をしばらく保持した後に第1保持治具41を第2保持治具12から相対的に引き離す。そうすると、第2保持治具12の第2粘着性表面34は第1保持治具41の第1粘着性表面44よりも粘着力が強いから第2粘着性表面34に押圧されたチップコンデンサ本体7は第1粘着性表面44から脱離して第2粘着性表面34に粘着保持されて移し替えられる。
このとき、取扱装置2は前記のように構成されているから、この発明に係る一取扱方法と同様に、チップコンデンサ本体7の移し替えに必要な保持治具41及び12同士の押圧力すなわちこれら保持治具41及び12の離間距離を、スペーサ17をこれらの間に介装することで、容易であるにもかかわらず厳密に調整することができる。したがって、この発明に係る別の一取扱方法によれば、第1保持治具41に粘着保持された多数のチップコンデンサ本体7を損傷させることなく、保持姿勢を維持したままチップコンデンサ本体7のほとんどすべてを第2保持治具12に移し替えることができる。この発明に係る別の一取扱方法は用いるチップコンデンサ本体7又は製造するチップコンデンサの寸法に応じて予め設定されたスペーサ17を用いるから、このような効果はチップコンデンサ本体7又はチップコンデンサの寸法に依存することなく、発揮される。
この発明に係る別の一取扱方法について、次いで、この発明に係る一取扱方法と基本的に同様にして第2処理工程及び脱離工程を実施する。
この発明に係る別の一取扱方法において脱離工程を実施すると、取扱装置2は前記のように構成されているから、脱離具14は第2粘着性表面34のわずか上方を非接触状態で第2壁部36b及び36d上を摺動又は移動する。したがって、この発明に係る別の一取扱方法によれば、第2粘着性表面34を損傷させることなく、チップコンデンサのほとんどすべてを第2保持治具12すなわち第2粘着性表面34から取り外すことができる。
この発明に係る別の一取扱方法においては、このようにして取り外した多数のチップコンデンサを収集してチップコンデンサの製造が完了する。
この発明に係る別の一取扱方法においては、このようにして、多数のチップコンデンサ本体7を一挙に起立状態で第1保持治具41に所望のように粘着保持することができると共に、多数のチップコンデンサ本体7を第1保持治具41から第2保持治具12に起立状態を保持したまま一挙に移し替えることができ、さらに、第2保持治具12に移し替えられた多数のチップコンデンサのほとんどすべてを容易に脱離させることができる。
この小型電子部品の取扱方法は、このように小型電子部品を製造できるから、この発明に係る小型電子部品の製造方法とも称することもできる。
この発明に係る取扱装置は、前記した一例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る取扱装置は第1保持治具と第2保持治具とスペーサと脱離具とを備えていればよく、これらに加えて、これら以外の部材又は要素、例えば、第3保持治具、小型電子部品の収納部材、脱離具の駆動手段、また、特開2008−091659号公報に記載された立設配置板及び立設配置板の配設孔に挿入された小型電子部品を第1保持治具に向けて押圧するプレス板等を備えていてもよい。
取扱装置1及び2において、スペーサ13及び17は枠体として構成されているが、この発明において、スペーサは第2保持治具の対向する少なくとも1組の第2壁部に載置されればよく、このように載置可能である限りその形状も特に限定されず、例えば、U字状、1組の柱体又は棒体等が挙げられる。
取扱装置1及び2において、第1壁部26及び第2壁部36は第1弾性部材21及び第2弾性部材31の対向する2組の端縁が内側となるように第1載置部25及び第2載置部35が設けられているが、この発明において第1載置部及び第2載置部は第1弾性部材及び第2弾性部材の対向する少なくとも1組の端縁が内側となるように設けられていればよい。
取扱装置1及び2において、第1弾性部材21及び第2弾性部材31は傾斜端部28及び38を有しているが、この発明において、弾性部材は例えば第1弾性部材41のように傾斜端部を備えていなくてもよく、また弾性部材の対向する1組の端縁に傾斜端部を備えていてもよい。
取扱装置1及び2において、治具本体22、32及び42並びに弾性部材21、31及び41はいずれも矩形に形成されているが、この発明において、治具本体及び弾性部材は小型部品の製造に適した形状であればよく、被粘着物の形状、被粘着物保持装置の形状、製造工程、作業性等に応じて任意の形状とされる。例えば、治具本体及び弾性部材すなわち保持治具は、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等の板状体が挙げられる。
この発明に係る小型電子部品の取扱方法及び小型電子部品の取扱方法は、前記例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る一取扱方法及びこの発明に係る別の一取扱方法においては、チップコンデンサ本体7の両端部に電極を形成してチップコンデンサを製造する方法を説明したが、この発明に係る小型電子部品の取扱方法において製造される小型電子部品は、その両端部に同一の処理が施されてなる同一部材を有している必要はなく、小型電子部品の両端部それぞれに異なる処理が施されてなる異なる部材を有していてもよい。