JP5872590B2 - 耐熱合金およびその製造方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明の耐熱合金の組成について説明する。
MoまたはWは高融点、高硬度でかつ高温における強度に優れ、耐熱合金に金属としての物性をもたせるために、必須である。
次に、耐熱合金を構成する各相の粒径について説明する。
本発明の耐熱合金中のTiCの粒径は、平均粒径0.5μm以上、10μm以下であるのが望ましい。これは、以下の理由によるものである。
仮に、平均粒径を0.5μmよりも小さくする場合、配合するTiC粉末の平均粒径を0.5μmより小さくする必要がある。しかし、このような微粒子の存在は一般的にも凝集し易くなる傾向があり、凝集2次粒子は焼結により顕著な粗大粒を形成し易くなり、また気孔の生成も促し易い。このような顕著な粗大粒子を形成させないためには、焼結温度の低下が必要となるが、焼結温度低下は焼結体密度の低下を引き起こしてしまう。
そのため、TiCの平均粒径は0.5μm以上であるのが望ましい。
仮に合金中のTiCの平均粒径を10μmよりも大きくする場合、粗粒のTiC粒子が焼結を阻害して焼結歩留まりが極端に悪く工業的とはいえなかった。さらに焼結できたとしても粗粒のTiC粒子が破壊の起点となって、機械的強度を低下させる問題がある。
そのため、TiCの平均粒径は10μm以下であるのが望ましい。
本発明の耐熱合金中のMo−Si−B系合金は、Mo5SiB2を主成分としており、その粒径は、平均粒径0.5μm以上、20μm以下であるのが望ましい。これは、後述する実施例のように、Mo−Si−B系合金の平均粒径が0.5μm未満または20μm以上の耐熱合金は、工業的に生産するのが困難なためである。
次に、耐熱合金の物性について説明する。
本発明の耐熱合金を摩擦攪拌接合材料として用いる場合、工具そのものとして使用される場合もあるが、多くの場合は母材として使用され、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる被膜が表面に被覆され工具とされる。ここで、実際に工具として使用する場合、まず室温にて工具を接合対象材料に強く押し込みながら回転させ、摩擦熱により接合対象物の温度を上昇させる。よって、回転初期の母材の変形、破壊また母材と被覆膜との剥離がないように、母材の室温硬度が高いことが必要である。
以上が耐熱合金の条件である。
次に、本発明の耐熱合金の製造方法について、図3を参照して説明する。
以上が本発明の耐熱合金の製造方法である。
本発明の耐熱合金は、上記の構成を有するものであるが、ここで、本発明の耐熱合金の適用例として、図4に示す摩擦攪拌接合用工具101を例に、簡単に説明する。
TiC含有量の異なる耐熱合金を作製し、得られた合金の特性を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
まず、原料としてMo粉末、Mo5SiB2粉末、およびTiC粉末を用意した。
次に、得られた耐熱合金の相対密度を測定した。ここでいう相対密度とは、作製した試料(バルク)について測定した密度を理論密度で除して%で表した値である。
以下、具体的な測定方法について説明する。
バルク密度はアルキメデス法により求めた。具体的には、空中と水中での重量を測定し、下記計算式を用いてバルク密度を求めた。
バルク密度=空中重量/(空中重量−水中重量)×水の密度
まず、以下の手順でMo−Mo5SiB2合金の理論密度を求めた。
Mo5SiB2:Mo=X・b:Y・a
合金全体の質量=X・b+Y・a
合金全体の体積=(X・b/Mb)+(Y・a/Ma)
理論密度Mt=(X・b+Y・a)/[(X・b/Mb)+(Y・a/Ma)]となる。
(6)ICP−AESによりバルク材中のTiの質量比率(0〜1)を求め、化学分析によりCの質量比率も求め、TiCの質量比率(Zc)を算出した。
TiCの体積比率=[Zc/Mc]/[Zc/Mc+(1-Zc)/Mt]
Mo−Mo5SiB2の体積比=[(1-Zc)/Mt]/[Zc/Mc+(1-Zc)/Mt]
最後に、バルク密度を理論密度で除して相対密度が求められた。
次に、得られた耐熱合金中の粒径測定を、以下に示すような線インターセプト法により、測定した。
耐熱合金の硬度測定は(株)アカシ製マイクロビッカース硬度計(型番:AVK)を用い、大気中20℃にて測定荷重20kgを加えることにより、ビッカース硬度を測定した。測定点数は5点とし、平均値を算出した。
耐熱合金の0.2%耐力は、以下の手順により測定した。
原料としてW粉末、Mo5SiB2粉末、およびTiC粉末を用意した。
具体的には、W粉末は純度99.99質量%以上、Fsss法による平均粒度が1.2μmのものを用い、Mo5SiB2粉末、TiC粉末については、実施例1と同様のものを用いた。
次に、粉末配合率を、Mo粉末が69.6質量%、Mo5SiB2粉末が17.4質量%、TiC粉末が13%とし、Mo5SiB2粉末の粒径をBET値で0.07、0.7、1.0m2/gとしたものを用意し、他の条件は実施例1と同様にて合金の製造および試験を行った。粉末粒径および試験結果を表4に示す。なお、Mo5SiB2粉末はBET値0.07〜1.0の範囲外の粉末を製作することは現状では得ることが難しい。Mo5SiB2粉末は非常に硬度があること、および粗大粒の場合、組成制御が難しいためである。
次に、粉末配合率を、Mo粉末が69.6質量%、Mo5SiB2粉末が17.4質量%、TiC粉末が13%とし、異なる粉末粒径を有するTiC粉末を用意し、他の条件は実施例1と同様にて合金の製造および試験を行った。粉末粒径および試験結果を表5に示す。
また、焼結できた試料の合金中のTiCの平均粒径は0.5〜10μmであった。
次に、粉末配合率を、Mo粉末が69.6質量%、Mo5SiB2粉末が17.4質量%、TiC粉末が13%とし、他の条件は実施例1と同様の条件で合金を製造し、製造した合金中のTiC粒のうち、粒径が1.5〜3.5μmのものの個数割合と合金の特性との関係についての評価を行った。試験条件および試験結果を表6に示す。なお、1.5〜3.5μmのものの割合は、原料TiC粉末(株式会社高純度化学研究所製のTII02PB)を分級処理などで調整することにより制御した。
次に、粉末配合率を、Mo粉末が69.6質量%、Mo5SiB2粉末が17.4質量%、TiC粉末が13%として合金を製造し、他の条件は実施例1と同様の条件で合金を製造し、合金中のTiC粒のうち、粒径が0.5〜2.5μmのものの個数割合、および4.0〜6.0μmのものの個数割合と合金の特性との関係についての評価を行った。試験条件および試験結果を表7に示す。なお、0.5〜2.5μmのものの個数割合、および4.0〜6.0μmのものの個数割合は、平均粒径1.5μmのTiC粉末と5.0μmのTiC粉末とを混合し、それら原料粉末の混合比率を変えることにより制御した。
種々の粉末配合率で、焼結温度1800℃で焼結体を製造し、その他は実施例1と同様の条件で合金を製造した。また、実施例1の常圧焼結とHIPの代わりに、温度1600℃、圧力30MPaで焼結HIPを行い、その他は実施例1と同様の条件で合金を製造した。これらの製法で得られた焼結体について、焼結後、HIP後、および焼結HIP後の合金の密度を比較した結果を表8に示す。
上記した発明品うち、粉末配合率を、Mo粉末が54.4質量%、Mo5SiB2粉末が44.6質量%、TiC粉末が1質量%として合金を製造したもの(実施例1参照)について、以下の条件でX線回折を行った。具体的な条件は以下の通りである。
管球:Cu(KαX線回折)
発散スリットおよび散乱スリットの開き角:1°
受光スリットの開き幅:0.3mm
モノクロメーター用受光スリットの開き幅:0.6mm
管電流:30mA
管電圧:40kV
スキャンスピード:1.0°/min
結果を図6に示す。
102 シャンク
103 ショルダー部
104 ピン部
Claims (17)
- Mo金属相からなる第1相、Mo 5 SiB 2 からなる第2相、TiC相からなる第3相を有し、残部が不可避化合物と不可避不純物であることを特徴とする焼結耐熱合金であって、
前記Mo 5 SiB 2 の含有量が5質量%以上、80質量%以下であり、
前記TiCの含有量が1質量%以上、80質量%以下であり、
合金中のTiC粒の平均粒径が0.5μm以上、10μm以下であり、
合金中の粒径が1.5〜3.5μmのTiC粒子の個数割合が、合金中のTiC粒全体の40%以上、60%以下の割合であり、
20℃におけるビッカース硬度が500Hv以上であり、かつ1200℃における0.2%耐力が550MPa以上であるか、又は、20℃におけるビッカース硬度が900Hv以上であり、かつ1200℃における抗折力が600MPa以上であることを特徴とする焼結耐熱合金。 - W金属相からなる第1相、Mo 5 SiB 2 からなる第2相、TiC相からなる第3相を有し、残部が不可避化合物と不可避不純物であることを特徴とする焼結耐熱合金であって、
前記Mo 5 SiB 2 の含有量が5質量%以上、75質量%以下であり、
前記TiCの含有量が0.5質量%以上、75質量%以下であり、
合金中のTiC粒の平均粒径が0.5μm以上、10μm以下であり、
合金中の粒径が1.5〜3.5μmのTiC粒子の個数割合が、合金中のTiC粒全体の40%以上、60%以下の割合であり、
20℃におけるビッカース硬度が500Hv以上であり、かつ1200℃における0.2%耐力が550MPa以上であるか、又は、20℃におけるビッカース硬度が900Hv以上であり、かつ1200℃における抗折力が600MPa以上であることを特徴とする焼結耐熱合金。 - 前記Mo 5 SiB 2 の含有量が10質量%以上、60質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼結耐熱合金。
- 前記TiCの含有量が5質量%以上、25質量%以下であることを特徴とする請求項1または3に記載の焼結耐熱合金。
- 前記Mo 5 SiB 2 の含有量が10質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の焼結耐熱合金。
- 前記TiCの含有量が5質量%以上、16質量%以下であることを特徴とする請求項2または5に記載の焼結耐熱合金。
- 合金中のTiC粒が平均粒径が0.5μm以上、7μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金。
- 合金中のTiC粒が平均粒径が0.5μm以上、5μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金。
- 合金中の粒径が0.5〜2.5μmのTiC粒子の個数割合が、合金中のTiC粒全体の20−40%の割合、4.0〜6.0μmのTiC粒子の個数割合が、合金中のTiC粒全体の10−30%の割合であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金。
- 合金中のMo 5 SiB 2 の粒径が、平均粒径0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金を用いたことを特徴とする摩擦攪拌接合用工具。
- 請求項11記載の摩擦攪拌接合用工具の表面に、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物または炭窒化物からなる被膜層を有することを特徴とする摩擦攪拌接合用工具。
- 請求項11または12に記載の摩擦攪拌接合用工具を有することを特徴とする摩擦攪拌装置。
- 請求項1、3、4、7〜10のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金の製造方法であって、
Mo粉末と、Mo 5 SiB 2 粉末と、TiC粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉を室温中で圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程により得られた成形体を、減圧雰囲気または少なくとも水素を含む雰囲気にて1700℃以上、1850℃以下で加熱する焼結工程と、
前記焼結工程により得られた焼結体を不活性雰囲気にて熱間等方圧加圧する加圧工程と、
を具えることを特徴とする焼結耐熱合金の製造方法。 - 請求項1、3、4、7〜10のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金の製造方法であって、
Mo粉末と、Mo 5 SiB 2 粉末と、TiC粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉を室温中で圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程により得られた成形体を、不活性雰囲気にて熱間等方圧加圧する加圧焼結工程と、
を具えることを特徴とする焼結耐熱合金の製造方法。 - 請求項1、3、4、7〜10のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金の製造方法であって、
Mo粉末と、Mo 5 SiB 2 粉末と、TiC粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉を、減圧雰囲気、もしくは水素を含む雰囲気、または不活性雰囲気中で、30MPa以上、70MPa以下で加圧し、1600℃以上、1900℃以下で加熱する焼結工程を具えることを特徴とする焼結耐熱合金の製造方法。 - 請求項2、5〜10のいずれか一項に記載の焼結耐熱合金の製造方法であって、
W粉末と、Mo 5 SiB 2 粉末と、TiC粉末を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合粉を、減圧雰囲気、もしくは水素または不活性雰囲気中で、30MPa以上、70MPa以下で加圧し、1700℃以上、2000℃以下で加熱する焼結工程を具えることを特徴とする焼結耐熱合金の製造方法。
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