JP5870580B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法及びその製造装置に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主に変圧器の鉄心などに利用されている。近年、エネルギー使用の効率化が進み、磁束密度が高く鉄損が低い電磁鋼板(高磁束密度低鉄損材)に対する需要が高まりつつある。従来、磁束密度を高くするために、電磁鋼板中の結晶方位を、(110)[001]方位(いわゆる、ゴス方位)に揃える製造方法が研究されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、インヒビターとしてBiを利用した場合に懸念された2次再結晶の不安定性を解消して、B8値で1.97Tを超える、極めて高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製造方法が示されている。一方で、方向性電磁鋼板の鉄損は、素材の高純度化、高配向性、板厚低減、SiやAlの添加、磁区細分化の観点から考えられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかし、方向性電磁鋼板の鉄損は、一般に磁束密度B8を高くするほど劣化する傾向がある。これは、電磁鋼板中の結晶方位がそろっている場合に、静磁エネルギーが下がり、磁区の幅が広がるために、渦電流損が高くなるためである。
そこで、渦電流損の低減方法として、被膜張力向上や熱歪み導入による磁区細分化が提案されてきた(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、特許文献2に記載の被膜張力向上による磁区細分化方法では、付与する歪み域が弾性域近傍であり、また、張力が地鉄の表層にのみかかっているため、鉄損の低減効果が小さい。他方、特許文献3に記載の磁区細分化方法では、熱歪みの導入に電子ビームが用いられており、電子ビーム照射によってW17/50値が0.8W/kgを下回る鉄損を有する電磁鋼板を製造することができる。このような、電子ビーム照射は極めて有用な低鉄損化手法である。
従来、電子ビーム照射を利用する鉄損が低い電磁鋼板(低鉄損材)の製造方法において、電子ビームを走査速度:6.7m/sにて走査し、電子ビーム照射後の電磁鋼板の鉄損W17/50値が0.8W/kg以下となることが示されている(例えば、特許文献4参照)。
特許第4123679号明細書 特公平02−81027号公報 特開平07−65106号公報 特開平05−43945号公報 特公平2−40724号公報
「軟磁性材料の最近の進歩」、第155・156回西山記念技術講座、社団法人日本鉄鋼協会、平成7年2月10日発行
ところで、電子ビームによる磁区細分化処理は、仕上げ焼鈍を経た方向性電磁鋼板のコイルを巻き出して鋼板圧延方向へ進む移送ラインに沿って通板する間に、電子銃から電子ビームを鋼板圧延方向と直交する向きに照射し、電子ビームによる線状の熱歪域を圧延方向へ間隔を置いて配列導入するのが一般的である。かような処理工程において、生産性を向上するには、電子ビームの照射速度を高めることが有効であるところ、上述の特許文献4に記載のように、電子ビームの照射速度は6.7m/s程度であり、従来、電子ビームの高速照射についての検討は十分になされていなかった。
すなわち、特許文献1〜4では、電子ビームを高速走査した場合の検討はなされておらず、電子ビーム照射処理を高速化して低鉄損材の生産効率を向上することができる方向性電磁鋼板の製造方法は未だ提案されていない。さらに、電子ビームを照射するための電子銃は高額であるため、製造コストの合理化のためには電磁鋼板の製造方法にて使用する電子銃の台数は適正であることが求められる。そこで、本発明は、方向性電磁鋼板の鉄損を十分に低減させるとともに、適正台数の電子銃を使用して高速で電子ビーム照射処理を実施することができる方向性電磁鋼板の製造方法及び製造装置について提供することを目的とする。
発明者らは、上記した課題を解決するための方途を鋭意究明した。さて、帯状の方向性電磁鋼板(以下、鋼帯)に対する電子ビームの走査は、予め鋼板の圧延方向と直交する向きに設定した電子ビーム照射線位置(線状点群)の間で電子ビームを高速で移動させる。ここで、隣接する電子ビーム照射位置(点、すなわちドット)の間の距離はドットピッチと称される。また、電子ビームが1秒間に移動するドット数で表し、これを電子ビームの照射周波数という(単位は周波数(Hz))。すると、電子ビームが鋼帯を走査する際の走査速度は、以下の式(A)で表される。
走査速度(m/s)=照射周波数(Hz)×ドットピッチ(m)・・・(A)
式(A)によれば、電子ビームの走査速度を高くするためには、照射周波数を高くしたり、ドットピッチを広くしたりすれば良い。しかし、過度にドットピッチを広くすると、鋼帯の熱影響部面積が減少し、十分な鉄損低減効果が得られなくなるおそれがある。他方、周波数を高くする場合、電子ビームが1ドットを照射する時間が短くなるため、鋼帯に入射される熱量が減少し、やはり、十分な鉄損低減効果が得られなくなるおそれがある(下記式(B)参照)。
1ドット当たり照射入熱量(J)=加速電圧(V)×ビーム電流値(A)/照射周波数(Hz)・・・(B)
そこで、ビーム電流値を高くすることで照射入熱量を大きくすることが考えられる。しかし、発明者らは、単純にビーム電流値を高くするだけでは、鉄損を十分に低減することができないことを見出した。すなわち、図1および表1に、周波数50kHz(走査速度16m/s)と250kHz(同80m/s)で照射した条件での、電子ビーム照射による鋼帯の全鉄損変化量と1ドット当たりの照射エネルギーとの関係を示す。
Figure 0005870580
表1において、ヒステリシス損の増分(ΔWhys)と渦電流損の増分(ΔWe)との和が、全鉄損変化量(ΔW17/50)である。図1及び表1に示す結果を得るにあたって、1ドットあたりの照射エネルギーはビーム電流値を変化させることにより調整した。その他の条件は、加速電圧40kV、鋼帯のコイル幅方向ドットピッチ0.32mm、コイル幅方向点(ドット)列の圧延方向間隔5mmとした。表1及び図1から、電子ビームの照射周波数が50kHzの場合は、10mA程度の低いビーム電流値にて有効であるのに対して、電子ビームの照射周波数が250 kHzの場合は、25mAを超えるビーム電流値を確保しなければ十分な効果(ここではΔW17/50<-0.10w/kg)が得られないことがわかる。さらに、50kHzの場合は、最大鉄損変化量が-0.12W/kg以上であるのに対して250kHzの場合は-0.106W/kgと、鉄損の改善効果が小さい。
なお、ビーム電流値を大きくし過ぎると、ビーム径が拡大し、後述のように、ヒステリシス損が増大するという不利を招くことになるから、ビーム径を抑えた上で走査速度を高めることが肝要であることが判明した。
他方、特許文献5には、電子ビームの単位時間、単位面積当たりのエネルギーであるパワー密度を1.0×105 W/cm2以上に向上させた場合に、鉄損が低減される技術が示されている。具体的にはパワー密度5.6×106 W/cm2で鉄損低減量は0.1W/kgに満たない程度であった。それだけでなく、パワー密度5.6×106 W/cm2であっても、鉄損が低減しない実施例が記載されている。
以上の実験結果に基づいて鋭意検討を進めたところ、発明者らは、電子ビームを高速走査するためには、ビーム電流値を高くするよりはむしろ、ビーム電流値をある程度の範囲に絞るとともに、電子ビーム処理の諸条件に応じた適正な台数の電子銃を用いて電子ビームの走査を行うことがビーム走査の高速化に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)方向性電磁鋼板をその圧延方向へ進む移送ラインに沿って移送する間に、前記方向性電磁鋼板に対して電子銃から電子ビームを前記圧延方向を横切る向きに点状線群として照射する走査を、前記圧延方向へ間隔を置いて繰り返し行うに当たり、
前記方向性電磁鋼板における前記電子ビーム径:0.20mm以上0.25mm以下の下に、前記方向性電磁鋼板の幅をL(m)、前記方向性電磁鋼板の移送速度をV0(m/s)、前記方向性電磁鋼板上での前記電子ビームの走査速度をv(m/s)(但し、v=照射周波数(Hz)×ドットピッチ(m))、前記電子ビーム走査線の圧延方向間隔をs(m)としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすN台の電子銃を用いて、前記電子ビームの走査を行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

N ≧ L×V0/((v2−V0 2)0.5×s)・・・(1)
v≧20 m/s ・・・(2)
(2)前記電子ビームのビーム径を0.20mm以上0.25mm以下に調節するにあたって、加速電圧60kV以上、及び、照射ビーム電流値20mA以下に設定することを特徴とする上記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の表面に電子ビームを連続的に照射するにあたって、電子ビームのビーム径を0.25mm以下とし、電子ビームの走査速度を20m/s以上に高速化した場合にも、所望の鉄損改善効果を得るために適正な台数の電子銃を用いて、改善された鉄損改善効率を有する方向性電磁鋼板の高速生産が可能となる。
電子ビーム照射前後の鋼帯の鉄損変化量と1ドット当たりの照射エネルギーとの関係を示すグラフである。 ヒステリシス損とビーム径との関係を示すグラフである。 渦電流損とビーム径との関係を示すグラフである。 全鉄損の変化量とビーム径との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板製造装置の概略構成図である。 図5に示す方向性電磁鋼板製造装置における電子銃の配置を説明するための斜視図である。
以下、本発明の方法及び装置について、詳しく説明する。
本発明では、仕上げ焼鈍を経た方向性電磁鋼板に電子ビームを照射して走査を実施するに当たり、20m/s以上の高速の走査速度で電子ビームを走査する場合に、電子ビーム径を0.25mm以下とし、所望の鉄損改善効果を得るために適正な台数の電子銃にて電子ビームを照射するところに特徴がある。以下、本発明による製造方法を導くに至った実験結果について説明する。なお、電子ビームを照射する鋼帯には、絶縁被膜などがコーティングされていても良いし、無くても問題はない。
発明者らは、度重なる実験により、まず、照射ビーム径が方向性電磁鋼板の鉄損に大きな影響を及ぼすことを突き止めた。ここに、図2、図3および図4に、それぞれ電子ビーム照射によるヒステリシス損の増分(ΔWhys)、渦電流損の増分(ΔWe)および全鉄損の変化量(ΔW17/50)とビーム径との関係を、表2にそのデータを示す。表2に示すように、ビーム電流値が高くなるとビーム径が太くなる。なお、ビーム径はビーム照射径であり、公知のスリット法でエネルギープロファイルの半値幅で規定したものとする。
Figure 0005870580
図2は、横軸にビーム径を、縦軸に電子ビーム照射によるヒステリシス損の増分をプロットしたグラフである。同図から、1ドット当たりの照射エネルギーが5mJ/dotである場合と、8mJ/dotである場合の両方において、ビーム径が拡大するとヒステリシス損が増大することがわかる。これは、ビーム径の拡大により電子ビーム照射を受けた鋼帯の熱影響部の面積が拡大するためであると考えられる。
次に、図3は、横軸にビーム径を、縦軸に電子ビーム照射による渦電流損の増分をプロットしたグラフである。1ドット当たりの照射エネルギーが5mJ/dotである場合と、8mJ/dotである場合の両方において、ビーム径が拡大することで渦電流損の低減量も大きくなるが、ある程度以上にビーム径が大きくなると、ビーム径の拡大に伴う渦電流損の低減率は小さくなることがわかる。
図4は、横軸にビーム径を、縦軸に電子ビームの照射による全鉄損の増分をプロットしたグラフである。同図から、ビーム径が0.25mmよりも大きくなると、図3に示したようなビーム径の拡大による渦電流損の低減効果よりも、図2に示したようなビーム径の拡大によるヒステリシス損の増大の影響が大きくなることがわかる。すなわち、図4に示すように、ビーム径が0.25mm超となると、ヒステリシス損の増分及び渦電流損の増分の合計である全鉄損の低減量が小さくなる。
したがって、電子ビームの周波数を高くすることによる高速走査において、ビーム電流値を増大させる際は、図4の結果より、ビーム径が0.25mmを超えない範囲に制御することが、鉄損低減に有効である。そこで、本発明では、方向性電磁鋼板の電子ビーム照射面における電子ビームのビーム径を0.25mm以下とする。
ところで、ビーム径を0.25mm以下に抑える方法として、従来、電子銃の収束コイルの性能を向上する方法がとられてきた。しかし、収束コイルの性能の向上には更なる設備投資を要する。このため、より簡易な手段として、本発明者らは電子ビームの加速電圧を高くすることを思いついた。電子ビームのビーム径は、表2からもわかるように、ビーム電流値の増大にともない大きくなるため、照射する電子ビームのビーム電流値の電流値は小さく設定する必要がある。一方で、低ビーム電流化によって減少する照射エネルギーは、上記(B)式より、加速電圧で調整することが可能である。したがって、本発明では、ビーム電流値および加速電圧に基づいてビーム径を調節することが好ましい。
例えば、電子ビーム処理は、一方向に並進する鋼帯(コイル)の表面に、鋼帯の圧延直角方向(コイル幅方向)に平行に近い角度で、一方のコイル幅端部付近から他方のコイル幅端部まで、電子銃で電子ビームを照射して実施する。電子ビームの照射は、直線的に、あるいは所定幅内で位相する波形などの規則的なパターンを有する曲線状に走査して、圧延方向に数mmの間隔(以下、線間隔)をおきながら規則的なパターンの走査を繰り返すことにより実施する。
電子ビームの照射は、例えば、電子銃の偏向コイルにより生じる電界や磁界による偏向効果を利用して、電子ビームの照射位置に沿う照射時間が長時間(s1)、短時間(s2)の周期を繰り返すように実施する。この繰り返しの距離周期が、上述したような、隣接する電子ビーム照射位置間の距離であるドットピッチに対応する。通常、s2はs1に対して十分短く、無視できるため、s1の逆数を照射周波数として良い。
低鉄損材への需要が高まる中、電子ビーム処理速度の向上が求められている。上記照射パターンにおいて、鋼帯表面上の電子銃の走査長は、鋼帯の長さに比べて数十倍以上となるため、電子ビームの走査速度向上が、鋼帯の並進速度、すなわち製造速度を向上するために必須である。上述したように、圧延直角方向における走査速度6.7m/sを利用した方向性電磁鋼板の製造方法は従来から知られてきたが、製造能力を増加するためには電子ビームの走査速度が高いほどよく、この効果を享受するためには、少なくとも20m/sは必要である。したがって、本発明では、電子ビームの走査速度は20m/s以上とした。
電子銃の数を増やすことによって、1つの電子銃によるコイル幅方向照射長さを短くすることができる。明確のため、以下、単純に、ライン速度(圧延方向移送速度)V0(m/s)で動く鋼帯に対して、鋼帯上方空間に固定された電子銃により電子ビームを照射し、鋼帯のコイル幅L(m)を圧延直角方向に直線的に、鋼帯上での電子ビームの走査速度v(m/s)で走査し、線間隔s(m)とする場合について説明する。電子銃が鋼帯の全幅を走査できるのは、電子銃の台数Nが、L×V0/((v2−V0 2)0.5×s)以上の自然数である場合に限られる。なお、鋼帯上での電子ビームの走査速度vは、走査の軌道が直線である場合には電子ビームが直線上を移動する速度を指し、走査の軌道が所定幅内で位相する波形などの規則的なパターンを有する曲線状である場合には、波の進行速度を指す。よって、圧延直角方向における電子ビームの走査速度は、電子ビームの走査速度v(m/s)と、ライン速度V0(m/s)に基づき、三平方の定理により、(v2−V0 2)0.5として求められる。
電子銃の設置台数をN台とすると、電子銃1台当たりがコイル幅L方向に走査する長さは、L/Nとなる。そして、電子銃1台当たりの走査長さを走査する時間はL/(N・(v2−V0 2)0.5)であり、これが、鋼帯が線間隔s(m)の長さを移動する時間s/V0を超えてはならないので、
s/V0 ≧ L/(N・(v2−V0 2)0.5)
を満たすことが必要である。よって、電子銃の設置台数Nは下式(1)及び(2)を満足する値となる。
N ≧ L×V0/((v2−V0 2)0.5×s) ・・・(1)
v≧20 m/s ・・・(2)
式(1)を満たすN台の電子銃により電子ビーム処理を行う場合、鋼帯の全幅を走査することが可能となる。他方、電子ビームが全幅を走査できない場合には、磁区細分化する領域が減少し、鉄損の低減効果が少なくなる。ここで、V0は、v以上であってはならない。
換言すると、vが20m/s以上の電子ビームの高速走査を実施するに当たり、式(1)を満たすN台の電子銃を用いることで鋼帯の全幅を走査することが可能となり十分な鉄損低減効果を得ることができる。
本発明によれば、方向性電磁鋼板をその圧延方向へ進む移送ラインに沿って移送する間に、該方向性電磁鋼板に対して電子銃を移動させながら、電子ビームを圧延方向を横切る向きに照射する走査を、圧延方向へ間隔を置いて繰り返し行うに当たり、電子ビームのビーム径を0.25mm以下とし、電子ビームの走査速度を20m/s以上に高速化した場合にも、所望の鉄損改善効果を得るために上記式(1)及び(2)を満たす適正な台数の電子銃を用いて、改善された鉄損改善効率を有する方向性電磁鋼板の高速生産が可能となる。
好ましくは、電子ビームの照射条件として、加速電圧を60kV以上、及び、ビーム電流値を20mA以下と設定する。なぜなら、加速電圧が高いほど、同一出力を得るために必要な照射ビーム電流が少なく、ビーム径を絞ることができるため、好ましくは加速電圧を60kV以上とする。一方、加速電圧が過度に高くなると、ビーム電流値の絶対値が小さくなり、高精度な制御が難しくなるため、好ましくは、加速電圧の上限値を300kVとする。
他方、ビーム電流値が20mAより高いと、ビーム径が拡大し、照射熱影響部面積が拡大するために、渦電流損の低減量以上にヒステリシス損が増大し、全鉄損低減量が減少するおそれがある。よって、加速電圧を60kV以上、及び、ビーム電流値を20mA以下と設定することで、同一出力を得るために必要な照射ビーム電流値を低減して、電子ビームのビーム径を絞ることを容易にするとともに、ビーム径がビーム電流値に起因して拡大しないようにすることが望ましい。
更に、本発明での電子ビームの照射では、例えば、ドットピッチを0.5mm以下に設定することが好ましい。ドットピッチが広いと、方向性電磁鋼板を構成する地鉄に熱影響がおよばない部分が生じ、十分に磁区細分化されず、鉄損の改善が不十分となるおそれがある。このためドットピッチは0.5mm以下とすることが好ましい。
更に、上述のように、本発明での電子ビームの照射では、電子ビーム走査速度を20m/s以上に設定する。方向性電磁鋼板の生産能力を増加するためには、走査速度が高いほどよく、少なくとも20m/sは必要であるが、好ましくは、電子ビーム走査速度は30m/s以上である。一方、上限は、300m/sとするのが良い。これは、走査速度が過度に高い場合、単位時間当たりの照射エネルギーが高くなり、ビーム照射開始時に出力が安定するまでの間、ビームを照射しておくアイドルターゲットの消耗が激しくなるからである。
更に、本発明での電子ビームの圧延方向の照射間隔である線間隔sを、例えば、3〜20mmに設定することが好ましい。この線間隔が3mmより狭いと、方向性電磁鋼板内の熱影響域が拡大し、鉄損(特に、ヒステリシス損)が劣化するおそれがある。線間隔が20mmより広いと、方向性電磁鋼板の生産性が高まるというメリットはあるものの、過度に広いと方向性電磁鋼板が十分に磁区細分化されず、鉄損が改善しないおそれがある。したがって、電子ビーム照射の線間隔は3〜20mmの範囲とすることが好ましい。
更に、本発明での電子ビームの照射では、例えば、電子ビームの照射を行う加工室内の圧力は3Pa以下とすることが好ましい。加工室圧力が高いと、電子銃から発生した電子が散乱し、地鉄に熱影響を与える電子のエネルギーが減少するため、方向性電磁鋼板が十分に磁区細分化されず、鉄損が改善しないおそれがある。したがって、加工室圧力3Pa以下として良好な圧力を維持することが好ましい。
更に、本発明での電子ビームの照射において、コイル幅方向に偏向して電子ビームを照射する場合、コイル幅方向の電子ビームが均一になるように、事前に収束電流を調整することは言うまでもない。電子ビームの収束に関して、ダイナミックフォーカス機能(特開平4-39852公報)を適用してもなんら支障はない。
以上述べた方法に直接用いる装置としては、例えば、図5及び図6に示す方向性電磁鋼板製造装置がある。図5は、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板製造装置の概略構成図である。この方向性電磁鋼板製造装置100は、筐体構造を有する加工室101と当該加工室101に組み込まれた電子銃102〜104を備える。電子銃102〜104はそれぞれ、方向性電磁鋼板105に対して電子ビーム102a〜104aを照射する。明確のため、3台の電子銃102〜104を図示するが、本実施形態による方向性電磁鋼板製造装置は下記式(3)の条件を満足する台数の電子銃を備える。このとき、方向性電磁鋼板105の幅をL(m)、方向性電磁鋼板の移送速度をV0(m/s)、電子ビーム走査線の圧延方向間隔をs(m)とする。電子銃102〜104はビーム径が0.25mm以下、及び方向性電磁鋼板105上での電子ビーム102a〜104aの走査速度vが20m/s以上に設定されてなるものである。
N ≧ L×V0/((400−V0 2)0.5×s)・・・(3)
図6は、図5に示す方向性電磁鋼板製造装置における電子銃の配置を説明するための斜視図である。電子銃102〜104は、方向性電磁鋼板105の上方空間に加工室101(図6には図示せず)を介して固定される。方向性電磁鋼板105は移送方向106に移送速度V0(m/s)で移動する。電子銃102〜104は、方向性電磁鋼板105の幅方向を等分する位置の真上に設置される。移送方向106(圧延方向)では、図6に示すようにずらして配置することも、揃えて配置する(図示せず)ことも可能である。電子銃102〜104の移送方向106に対する角度は移送速度V0(m/s)及び電子銃102〜104の走査速度に応じて調節可能に構成される。このような方向性電磁鋼板製造装置100によれば、上記した方向性電磁鋼板の製造方法を、様々な条件で実施することが可能となる。また、本発明において記載する電子銃は、全て加工にあずかるものであり、故障時に備えて設置するような加工にあずからない電子銃は含ませないものとしているが、当然製造装置としてはこれらを含むものであっても問題はない。
仕上焼鈍済みの方向性電磁鋼板に表3の条件で電子ビームを照射したときの、照射後の鉄損変化量(照射後鉄損−照射前鉄損)を表4に示す。表3に示した「必要電子銃数」とは、上述の式(1)より算出される電子銃の台数Nに対応する。すなわち、パラメータとして、各記号1〜16に示される条件について、コイル幅L(m)、ライン速度V0(m/s)、線間隔s(m)、電子ビーム走査速度v(m/s)に基づいて式(1)により算出した値であり、コイル全幅を照射するのに必要な電子銃の台数を表す。
他方、「十分電子銃数」とは、上述の式(3)より算出される電子銃の台数Nに対応する。この場合、電子ビーム走査速度vとして、20m/sを用いている。すなわち、「十分電子銃数」の意味するところは、電子ビーム走査速度が本明細書で「高速」と定義する速度の下限値(20m/s)であった場合でも、鋼帯全体に対して電子ビーム照射を行い、所望の鉄損改善効果を得ることを可能にするために十分な電子銃の数である。
Figure 0005870580
Figure 0005870580
なお、電子ビームの照射に使用した方向性電磁鋼板の磁気特性は、B8:1.90〜1.92T、渦電流損We17/50:0.52〜0.54W/kgであるものを用いた。照射は、圧延直角方向に、直線状に試料(鋼帯)全幅で行い、さらに一定の線間隔を圧延方向におきながら同様の処理を繰り返した。
鉄損測定用の試料は、全幅×圧延方向280mm×板厚0.23mmの大きさで切り出した試料から、取れるだけ取り出した、30mm幅×圧延方向280mm×板厚0.23mmの試料とした。本表の測定データは、各試料で鉄損を測定し、全鉄損(ΔW17/50)が最も下がった試料と最も下がらなかった試料について、全鉄損の増分(ΔW17/50)、ヒステリシス損の増分(ΔWhys)、渦電流損の増分(ΔWe)を平均して求めた。
表3及び4から、記号1〜3、及び16に示す比較例では、ビーム径が0.25mmを上回る。これらの比較例では加速電圧は40kVであり、記号1及び2に示す比較例のように、ビーム電流値が20mAを上回る場合も、記号16に示す比較例のように、ビーム電流値が20mAを下回る場合も、照射ビーム径は0.25mmよりも大きくなってしまう。他方、加速電圧40kVの条件であっても、記号3に示す比較例のように、ビーム電流が3.8mAと低ければビーム径は0.20mmと、0.25mm以下である。記号1の比較例では、走査速度を38m/sと高速にしても渦電流損が十分低減せず、ヒステリシス損が増大する結果、全鉄損の低減量も小さい。記号2の比較例の場合も同様である。他方、記号3に示す比較例では全鉄損低減量は-0.129と十分な値となっているが、これは、設置電子銃数を24台として十分電子銃数すら上回る台数の電子銃を用いたことや、走査速度を3.8m/sと低速にしたことに起因する。この場合、電子銃にかかる設備費用がかさみ、生産速度も遅いことから、生産効率に劣る。
記号4〜15に示す本発明例及び比較例のように、加速電圧を60kV以上、ビーム電流値を20mA以下にした場合には、ビーム径は0.25mm以下となる。記号7、12に示す比較例のように、必要電子銃数よりも少ない台数の電子銃で照射を行った例を除き、全鉄損の低減量が-0.119〜-0.130の範囲であり十分な値となっている。記号4〜6、8〜11、13〜15に示す本発明例のように、必要電子銃数を満たす台数の電子銃で照射を行った場合には、記号14に示す本発明例のように、最大90m/sまで電子ビームの走査速度が速くなった場合であっても、ヒステリシス損増分に対する渦電流損の低減量が大きく、結果、全鉄損も十分に低減される。記号7、12に示す比較例では、電子ビームの走査速度は速いものの、幅方向全幅を照射することができないため、照射されていない部分で、磁区の細分化が行われず、鉄損が低減しなった。
100 方向性電磁鋼板製造装置
101 加工室
102〜104 電子銃
105 方向性電磁鋼板





Claims (2)

  1. 方向性電磁鋼板をその圧延方向へ進む移送ラインに沿って移送する間に、前記方向性電磁鋼板に対して電子銃から電子ビームを前記圧延方向を横切る向きに点状線群として照射する走査を、前記圧延方向へ間隔を置いて繰り返し行うに当たり、
    前記方向性電磁鋼板における前記電子ビーム径:0.20mm以上0.25mm以下の下に、前記方向性電磁鋼板の幅をL(m)、前記方向性電磁鋼板の移送速度をV0(m/s)、前記方向性電磁鋼板上での前記電子ビームの走査速度をv(m/s)(但し、v=照射周波数(Hz)×ドットピッチ(m))、前記電子ビーム走査線の圧延方向間隔をs(m)としたときに、下記式(1)及び(2)を満たすN台の電子銃を用いて、前記電子ビームの走査を行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

    N ≧ L×V0/((v2−V0 2)0.5×s)・・・(1)
    v≧20 m/s ・・・(2)
  2. 前記電子ビームのビーム径を0.20mm以上0.25mm以下に調節するにあたって、加速電圧60kV以上、及び、照射ビーム電流値20mA以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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