JP5861779B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、制御パラメータの学習マップを備えた内燃機関の制御装置に関する。
従来技術として、例えば特許文献1(日本特開2009−046988号公報)に開示されているように、制御パラメータの学習マップを備えた内燃機関の制御装置が知られている。学習マップの各格子点には、制御パラメータを補正するための学習値がそれぞれ記憶されている。従来技術では、学習すべき制御パラメータを取得した場合に、学習マップ上で当該取得値の周囲に位置する4個の格子点を選択し、これら4個の格子点の学習値を更新する構成としている。この学習制御では、制御パラメータの取得値に重み付けをしてから周囲の格子点の学習値に反映させるが、このときの重み付けは、前記取得値の位置と格子点との距離が近いほど大きくなるように設定される。
尚、出願人は、本発明に関連するものとして、上記の文献を含めて、以下に記載する文献を認識している。
日本特開2009−046988号公報 日本特開平9−079072号公報 日本特開2009−250243号公報 日本特開2005−146947号公報 日本特開2000−038944号公報 日本特開平4−175434号公報 日本特開2007−176372号公報
上述した従来技術では、制御パラメータの取得値の周囲に位置する4個の学習値に対して、前記取得値に近い格子点ほど重み付けが大きくなるように学習制御を行う構成としている。しかしながら、従来技術では、1回の学習動作により更新される学習値が4個のみに限定され、制御パラメータの取得値から離れた格子点では学習値が更新されないので、学習効率が低いという問題がある。しかも、学習値が更新されていない格子点の周囲では、誤学習の虞れもある。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、1回の学習動作により多数の格子点の学習値を更新することができ、また、広い学習領域において学習特性(学習の速度や効率)を容易に調整することが可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
第1の発明は、複数の格子点を有し、内燃機関の制御に用いる制御パラメータの学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶された学習マップと、
前記制御パラメータが取得されたときに、前記学習マップの各格子点の重みをそれぞれ設定する手段であって、前記学習マップ上における前記制御パラメータの取得値の位置である基準位置から格子点までの距離が大きいほど、当該格子点の重みを減少させる重み設定手段と、
前記制御パラメータが取得される毎に、全ての格子点において、前記重みが大きいほど前記制御パラメータの取得値が前記学習値に大きく反映されるように個々の格子点の学習値を更新する重み付け学習制御を実行する重み付け学習手段と、
を備えることを特徴とする。
第2の発明によると、前記学習マップは互いに異なる複数の領域を備え、
前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて減少する前記重みの減少特性を前記複数の領域毎に切換える構成としている。
第3の発明は、前記基準位置からの距離が所定の有効範囲よりも大きい格子点において、前記学習値の更新を禁止する構成としている。
第4の発明によると、前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが正規分布曲線状に減少するガウス関数により構成している。
第5の発明によると、前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが比例的に減少する一次関数により構成している。
第6の発明によると、前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが正弦波状に減少する三角関数により構成している。
第7の発明は、前記学習マップと同様に構成された複数の格子点を有し、前記学習値の信頼性を表す指標である信頼性評価値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶された信頼性マップと、
前記信頼性マップの各格子点の重みである信頼性重みを、前記基準位置から格子点までの距離が大きいほど減少させる手段であって、当該信頼性重みの減少特性が前記学習マップの重みの減少特性よりも急峻に設定された信頼性マップ重み設定手段と、
前記制御パラメータが取得される毎に、当該取得値の信頼性に対応する値をもつ信頼性取得値を前記基準位置に設定し、かつ、前記信頼性マップの全ての格子点において、前記信頼性重みが大きいほど前記信頼性取得値が前記信頼性評価値に大きく反映されるように個々の格子点の信頼性評価値を更新する信頼性マップ学習手段と、を備える。
第8の発明は、複数の格子点を有する学習マップであって、内燃機関のトルクが最大となる点火時期であるMBTの学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶されたMBTマップと、
筒内圧に基いて燃焼重心を算出する燃焼重心算出手段と、
前記燃焼重心が所定の燃焼重心目標値と一致するように、前記MBTマップにより算出した点火時期を補正する点火時期補正手段と、
前記点火時期補正手段による補正後の点火時期に基いて、前記MBTマップの各格子点の重みをそれぞれ設定する手段であって、前記MBTマップ上における前記補正後の点火時期の位置である基準位置から格子点までの距離が大きいほど、当該格子点の重みを減少させる重み設定手段と、
前記燃焼重心が前記燃焼重心目標値と一致した場合に、全ての格子点において、前記重みが大きいほど前記補正後の点火時期が前記MBTの学習値に大きく反映されるように個々の格子点の学習値を更新する重み付け学習制御を実行する重み付け学習手段と、
を備える。
第9の発明は、内燃機関の過渡運転時における前記学習値の更新量を、定常運転時と比較して抑制する構成としている。
第10の発明は、前記燃焼重心と前記燃焼重心目標値との差分及び前記補正後の点火時期に基いてMBTを推定するMBT推定手段と、
前記重み付け学習手段に代えて用いられる手段であって、前記燃焼重心が前記燃焼重心目標値から乖離している場合でも、前記重み付け学習制御により前記MBTの学習値を更新し、かつ、前記燃焼重心と前記燃焼重心目標値との差分が大きいほど前記学習値に対する前記MBTの推定値の反映度を低下させるMBT常時学習手段と、を備える。
第11の発明は、前記MBTマップと同様に構成された複数の格子点を有する学習マップであって、トレースノック領域における点火時期であるTK点火時期の学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶されたTKマップと、
MBTが実現される前にトレースノックが発生したときの点火時期を取得し、当該取得値に基いて前記TK点火時期の学習値を前記重み付け学習制御により更新するTK点火時期学習手段と、
前記MBTマップにより算出された学習値と前記TKマップにより算出された学習値のうち、より遅角側の点火時期を選択する選択手段と、を備える。
第12の発明は、前記TKマップと同様に構成された複数の格子点を有する学習マップであって、前記TKマップの個々の格子点が前記トレースノック領域に属するか否かを示す学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶されたTK領域マップと、
前記TK点火時期を取得したときに、前記TK領域マップの学習値を前記重み付け学習制御により更新するTK領域学習手段と、を備える。
第13の発明は、前記MBTマップと同様に構成された複数の格子点を有する学習マップであって、MBTの学習履歴が反映される信頼性評価値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶された信頼性マップと、
前記MBTマップを更新するときに、前記基準位置に基いて前記重み付け学習制御により前記信頼性評価値を更新する信頼性マップ学習手段と、を備える。
第14の発明によると、前記学習マップは、空燃比センサの出力に基いて前記筒内空燃比を補正する補正係数の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された補正マップであり、
少なくとも筒内圧センサの出力に基いて筒内空燃比を算出する筒内空燃比算出手段を備え、
前記重み設定手段は、前記補正係数により補正された補正後の筒内圧空燃比と前記空燃比センサの出力とに基いて算出された前記補正係数の算出値を前記制御パラメータの取得値として、前記補正マップの各格子点における重みを設定し、
前記重み付け学習手段は、前記補正係数の算出値と前記各格子点の重みとに基いて、前記各格子点における前記補正係数の学習値を更新する構成としている。
第15の発明によると、前記学習マップは、燃料噴射弁の目標噴射量と通電時間との関係が前記通電時間の学習値として前記各格子点にそれぞれ記憶された噴射特性マップであり、
少なくとも筒内圧センサの出力に基いて実噴射量を算出する実噴射量算出手段を備え、
前記重み設定手段は、前記目標噴射量と前記実噴射量とに基いて補正された補正後の通電時間を前記制御パラメータの取得値として、前記噴射特性マップの各格子点における重みを設定し、
前記重み付け学習手段は、前記補正後の通電時間と前記各格子の重みとに基いて、前記各格子点における前記通電時間の学習値を更新する構成としている。
第16の発明によると、前記学習マップは、エアフローセンサの出力を補正する補正係数の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された補正マップであり、
空燃比センサの出力と燃料噴射量とに基いて前記補正係数の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
前記補正係数の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記補正係数の学習値を更新する構成としている。
第17の発明によると、前記学習マップは、吸気通路の壁面に付着した燃料の量である壁面燃料付着量の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたQMWマップであり、
少なくとも空燃比センサの出力に基いて前記壁面燃料付着量の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
前記壁面燃料付着量の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記壁面燃料付着量の学習値を更新する構成としている。
第18の発明によると、前記学習マップは、内燃機関の燃費を最良とするバルブタイミングの学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたVTマップであり、
少なくとも筒内圧センサの出力に基いて前記バルブタイミングの学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
前記バルブタイミングの学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記バルブタイミングの学習値を更新する構成としている。
第19の発明によると、前記学習マップは、点火時期遅角制御により失火の発生なしに実現可能な最遅角側の点火時期である失火限界点火時期の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された失火限界マップであり、
現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する失火限界判定手段と、
前記失火限界と判定されたときの点火時期を取得し、当該取得値に基いて前記失火限界点火時期の学習値を前記重み付け学習制御により更新する失火限界学習手段と、
点火時期遅角制御により遅角された目標点火時期と前記失火限界マップにより算出された学習値のうち、より進角側の点火時期を選択する選択手段と、を備える。
第20の発明によると、前記学習マップは、燃料噴射量を増量する燃料増量値の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された燃料増量マップであり、
前記重み付け学習制御により前記燃料増量値の学習値を更新する構成としている。
第21の発明によると、前記学習マップは、アイドル運転制御により補正された吸気通路の開度の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたISCマップであり、
前記重み付け学習制御により前記吸気通路の開度の学習値を更新する構成としている。
第22の発明によると、前記学習マップは、EGR制御により失火の発生なしに実現可能な最大のEGR量である失火限界EGR量の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された失火限界EGRマップであり、
現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する失火限界判定手段と、
前記失火限界と判定されたときのEGR量を取得し、当該取得値に基いて前記失火限界EGR量の学習値を前記重み付け学習制御により更新する失火限界EGR学習手段と、
EGR制御により算出された要求EGR量と前記失火限界EGRマップにより算出された学習値のうち、大きい方のEGR量を選択する選択手段と、を備える。
第23の発明によると、前記学習マップは、空燃比センサの出力を補正する補正係数の学習値がそれぞれ記憶された補正マップであり、
酸素濃度センサの出力が理論空燃比に対応する出力値となったときの前記空燃比センサの出力値を基準出力値として取得し、当該基準出力値に基いて前記補正係数の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
前記補正係数の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記補正係数の学習値を更新する構成としている。
第24の発明によると、前記学習マップは、内燃機関の始動時に噴射される燃料の始動時噴射量の学習値がそれぞれ記憶された始動時噴射量マップであり、
少なくとも筒内圧センサの出力に基いて前記始動時噴射量の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
前記始動時噴射量の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記始動時噴射量の学習値を更新する構成としている。
第1の発明によれば、重み付け学習制御では、1回の学習動作を行うことにより、制御パラメータの取得値に最も近い格子点だけでなく、全ての格子点の学習値を距離に応じて重み付けしながら適切に更新することができる。これにより、学習機会が少ない場合でも、最小限の学習回数により全ての格子点の学習値を速やかに最適化することができる。しかも、一部の格子点で学習値が失われたり、未学習状態が続いた場合でも、これらの学習値を他の位置での学習動作により補完することができる。従って、制御パラメータの種類に関係なく、学習効率を高め、学習制御の信頼性を向上させることができる。しかも、重み付け手段により設定する重みの減少特性に応じて、広い学習領域において学習の速度や効率を容易に調整することができる。さらに、制御パラメータを取得する毎に、逐次平均処理を行うことになるので、学習値に対する外乱(ノイズ等)の影響を除去することができる。また、逐次処理により、学習値の演算負荷を時間的に分散させることができるので、学習処理の演算負荷を軽減することができる。
第2の発明によれば、重み設定手段は、重みの減少特性を複数の領域毎に切換えることができる。これにより、例えば急峻な学習が必要な領域では、重みの急変が可能な設定とすることで、学習の応答性や制御効率を向上させ、フェイルセーフ等の動作を安定させることができる。また、緩やかな学習でも許される領域では、重みが比較的広い格子点範囲で緩やかに変化する設定とすることで、学習時の演算負荷を抑制し、学習マップを滑らかにすることができる。従って、学習マップ全体に適合する重み付けを容易に実現することができる。また、制御パラメータの取得値が属する領域の特性に応じて、全格子点における学習の応答性、速度、効率等を切換えることもできる。
第3の発明によれば、基準位置からの距離が所定の有効範囲よりも大きい格子点において、学習値の更新を禁止することができる。これにより、学習値が更新される格子点を有効範囲内に制限することができるので、学習効果が小さい格子点で学習値が無駄に更新されるのを回避し、学習処理の演算負荷を軽減することができる。
第4の発明によれば、重み設定手段としてガウス関数を用いることにより、制御パラメータの取得値の位置(基準位置)からの距離に応じて、重みを滑らかに変化させることができる。従って、学習マップを滑らかにすることができ、学習値の急変等による制御性の悪化を抑制することができる。しかも、ガウス関数の標準偏差σの設定に応じて重みの減少特性を変化させることができ、広い学習領域において学習の速度や効率を容易に調整することができる。
第5の発明によれば、重み設定手段として一次関数を用いることにより、重みを演算するときの演算負荷を大幅に減少させることができる。
第6の発明によれば、重み設定手段として三角関数を用いることにより、重みの演算負荷をガウス関数よりも減少させつつ、ガウス関数を用いた場合と同様に重みを滑らかに減少させることができる。
第7の発明によれば、信頼性マップの各格子点の信頼性評価値には、同じ格子点における学習値の信頼性を反映させることができる。そして、信頼性評価値の重み付け学習制御を実行することにより、制御パラメータの取得値が各格子点の学習値に反映されるときと同等の反映度をもって、信頼性取得値を各格子点の信頼性評価値に反映させることができる。従って、1回の学習動作により、各格子点の学習値の信頼性を効率よく算出することができる。また、各種の制御等に学習値を用いる場合には、信頼性マップ上で対応する格子点の信頼性評価値に基いて、学習値の信頼性を評価し、評価の結果に基いて適切な対応制御を実行することができる。
第8の発明によれば、点火時期の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。また、重み付け学習制御は、燃焼重心が燃焼重心目標値とほぼ一致した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作によりMBTマップの全格子点でMBTを効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
第9の発明によれば、点火時期を取得したときの運転状態が安定しているほど、即ち、点火時期の取得値の信頼性が高いほど、学習値の更新量を大きくすることができる。一方、運転状態が不安定な場合には、学習値の更新量を小さくし、学習を停止または抑制することができる。これにより、定常運転時の学習を促進し、過渡運転時の誤学習を抑制することができる。
第10の発明によれば、燃焼重心が燃焼重心目標値から乖離している場合でも、MBTの推定値を常に得ることができるので、この推定値に基いて学習値を更新することができ、学習機会を増加させることができる。これにより、学習値を速やかにMBTに近付け、MBT制御の制御性を向上させることができる。また、MBT常時学習手段は、燃焼重心と燃焼重心目標値との差分が大きいほど、即ち、MBTの推定精度が低いほど、重みを減少させ、学習値の更新量を減少させることができる。従って、MBTの推定値が学習値に反映される度合いを、当該推定値の信頼度に応じて適切に調整し、誤学習を抑制することができる。
第11の発明によれば、点火時期の学習時には、MBTとTK点火時期の何れかを学習することができるので、学習機会を増加させ、MBT領域以外でも点火時期を効率よく学習することができる。また、選択手段は、MBT学習値とTK学習値のうち進角側の点火時期を選択することができるので、ノックの発生を回避しつつ、点火時期を可能な限り進角側に制御して、運転性能や運転効率を向上させることができる。
第12の発明によれば、TK領域マップを用いることにより、TK領域の境界を明確化することができるので、TK領域以外の領域でTK点火時期が誤学習されるのを抑制することができ、学習精度を向上させることができる。
第13の発明によれば、第8乃至第12の発明に対して、第7の発明における信頼性マップを適用することができる。これにより、各種の制御等に点火時期の学習値を用いる場合には、信頼性マップ上で対応する格子点の信頼性評価値に基いて、点火時期の学習値の信頼性を評価し、評価の結果に基いて適切な対応制御を実行することができる。
第14の発明によれば、筒内空燃比の算出制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。特に、筒内センサにより算出した筒内空燃比は、運転状態の変化による誤差が大きいので、従来技術の学習方法により得られた補正係数を用いても、実用性を高めるのが難しい。これに対し、重み付け学習制御は、学習機会が比較的少なくても、補正マップの全格子点で補正係数を速やかに学習することができる。従って、筒内空燃比の誤差が大きい場合でも、この誤差を補正係数により適切に補正することができ、筒内空燃比の算出精度や実用性を向上させることができる。
第15の発明によれば、燃料噴射特性の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも噴射特性の変化を効率よく学習し、燃料噴射制御の精度を向上させることができる。また、筒内圧センサの出力に基いて実噴射量を算出し、この実噴射量に基いて学習を実行することができるので、実際の燃料噴射量が検出できなくても、既存のセンサを利用して学習制御を容易に行うことができる。
第16の発明によれば、エアフローセンサ用補正係数の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも補正係数を効率よく学習し、吸入空気量の算出精度を向上させることができる。
第17の発明によれば、壁面燃料付着量の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも壁面燃料付着量を効率よく学習し、燃料噴射制御の精度を向上させることができる。
第18の発明によれば、バルブタイミングの学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でもバルブタイミングを効率よく学習し、動弁系の制御性を向上させることができる。
第19の発明によれば、失火限界点火時期の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができ、失火限界を効率よく学習することができる。また、選択手段は、点火時期遅角制御により遅角された目標点火時期と、失火限界マップにより算出された点火時期のうち遅角側の方を選択することができる。これにより、失火を回避しつつ、点火時期を遅角要求に応じて最大限に遅角し、点火時期の制御性を向上させることができる。また、重み付け学習制御は、失火限界に達した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作により失火限界マップの全格子点で失火限界点火時期を効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
第20の発明によれば、燃料増量値の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも燃料増量値を効率よく学習し、内燃機関の運転性能を向上させることができる。
第21の発明によれば、ISC開度の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でもISC開度を効率よく学習することができ、アイドル運転の安定性を向上させることができる。
第22の発明によれば、EGRの学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができ、失火限界EGR量を効率よく学習することができる。また、選択手段は、EGR制御により算出された要求EGR量と失火限界EGR量のうち大きい方を選択することができる。これにより、失火を回避しつつ、EGR量を要求に応じて最大限に確保し、EGR制御の制御性を向上させることができる。また、重み付け学習制御は、失火限界に達した場合のみ実行されるが、1回の学習動作により失火限界EGRマップの全格子点で失火限界EGR量を効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
第23の発明によれば、空燃比センサの出力補正制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができ、排気空燃比の検出精度を向上させることができる。また、学習基準算出手段は、酸素濃度センサの出力が理論空燃比に対応する出力値となったときに、空燃比センサの出力値を基準出力値として取得することができるので、補正の基準を容易に得ることができる。また、重み付け学習手段は、酸素濃度センサによりストイキを検出した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作により補正マップの全格子点で補正係数を効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
第24の発明によれば、始動時噴射量の学習制御において、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも始動時噴射量を効率よく学習し、内燃機関の始動性を向上させることができる。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。 本発明の実施の形態1において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態1において、ガウス関数による重みの減少特性を示す特性線図である。 本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態2において、一次関数による重みの減少特性を示す特性線図である。 本発明の実施の形態3において、三角関数による重みの減少特性を示す特性線図である。 本発明の実施の形態4において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態5において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態5による重み付けの特性を示す特性線図である。 本発明の実施の形態6において、信頼性マップの一例を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態6において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態7による点火時期制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態7において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態8において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態9による点火時期制御を示す制御ブロック図である。 燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致したときにのみ点火時期を学習する構成とした場合の学習機会を比較例として示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態9による学習制御を示すタイミングチャートである。 燃焼重心CA50と燃焼重心目標値との差分ΔCA50に基いて信頼度係数εを算出するための特性線図である。 本発明の実施の形態10による点火時期制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態10において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態11による点火時期制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態11において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態12による筒内空燃比の算出制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態12による変形例の構成を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態13において、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性線図である。 本発明の実施の形態13により実行される燃料噴射特性の学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態13において、変形例を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態14において、エアフローセンサ用補正係数の学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態15において、壁面燃料付着量の学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態16において、バルブタイミングの学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態17による点火時期制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態17において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態18において、燃料増量補正値の学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態19において、ISCの学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態20によるEGRの学習制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態20において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。 本発明の実施の形態21による空燃比センサの出力補正制御を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態22による始動時燃料噴射量の学習制御を示す制御ブロック図である。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、内燃機関として多気筒型のエンジン10を備えている。なお、本発明は、単気筒及び多気筒を含む任意の気筒数の内燃機関に適用されるものであり、図1は、エンジン10に搭載された複数気筒のうちの1気筒を例示したものである。また、図1に示すシステム構成は、本発明の実施の形態1乃至22に必要な構成を全て記載したものであり、個々の実施の形態では、このシステム構成のうち必要なものだけを採用すればよい。
エンジン10の各気筒には、ピストン12により燃焼室14が形成されており、ピストン12はクランク軸16に連結されている。また、エンジン10は、各気筒に吸入空気を吸込む吸気通路18を備えており、吸気通路18には、吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ20が設けられている。一方、エンジン10は、各気筒の排気ガスを排出する排気通路22を備えており、排気通路22には、排気ガスを浄化する三元触媒等の触媒24が設けられている。また、エンジンの各気筒は、吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁26と、混合気に点火する点火プラグ28と、吸気ポートを開閉する吸気バルブ30と、排気ポートを開閉する排気バルブ32とを備えている。また、エンジン10は、吸気バルブ30の開弁特性を可変に設定する吸気可変動弁機構34と、排気バルブ32の開弁特性を可変に設定する排気可変動弁機構36とを備えている。これらの可変動弁機構34,36は、例えば日本特開2000−87769号公報に記載されているVVT(Variable Valve Timing system)により構成されている。また、エンジン10は、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR機構38を備えている。EGR機構38は、吸気通路18と排気通路22との間に接続されたEGR通路40と、EGR通路40を流れる排気ガスの流量を調整するEGR弁42とを備えている。
次に、本実施の形態のシステムに搭載された制御系統について説明する。本実施の形態のシステムは、エンジン及び車両の運転に必用な各種のセンサが含まれるセンサ系統と、エンジンの運転状態を制御するECU(Engine Control Unit)60とを備えている。まず、センサ系統について述べると、クランク角センサ44は、クランク軸16の回転に同期した信号を出力するもので、エアフローセンサ46は吸入空気量を検出する。また、水温センサ48はエンジン冷却水の水温を検出し、筒内圧センサ50は筒内圧を検出し、吸気温度センサ52は吸入空気の温度(外気温度)を検出する。空燃比センサ54は、排気空燃比を連続的な検出値として検出するもので、触媒24の上流側に配置されている。酸素濃度センサ56は、排気空燃比が理論空燃比に対してリッチとリーンの何れであるかを検出するもので、触媒24の下流側に配置されている。
ECU60は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶回路と、入出力ポートとを備えた演算処理装置により構成されている。ECU60の不揮発性メモリには、後述する各種の学習マップが記憶されている。また、ECU60の入力側には、センサ系統の各センサがそれぞれ接続されている。ECU60の出力側には、スロットルバルブ20、燃料噴射弁26、点火プラグ28、可変動弁機構34,36、EGR弁42等のアクチュエータが接続されている。そして、ECU60は、センサ系統により検出したエンジンの運転情報に基いて各アクチュエータを駆動し、運転制御を行う。具体的には、クランク角センサ44の出力に基いて機関回転数とクランク角とを検出し、エアフローセンサ46により吸入空気量を検出する。また、機関回転数と吸入空気量とに基いて機関負荷を算出し、吸入空気量、機関負荷、水温等に基いて燃料噴射量を算出すると共に、クランク角に基いて燃料噴射時期及び点火時期を決定する。そして、燃料噴射時期が到来した時点で燃料噴射弁26を駆動し、点火時期が到来した時点で点火プラグ28を駆動する。これにより、各気筒で混合気を燃焼させ、エンジンを運転する。
また、ECU60は、上述した点火時期制御及び燃料噴射制御に加えて、排気空燃比が理論空燃比等の目標空燃比となるように燃料噴射量を補正する空燃比フィードバック制御と、エンジンの運転状態に基いて可変動弁機構34,36の少なくとも一方を制御するバルブタイミング制御と、運転状態に基いてEGR弁42を制御するEGR制御と、アイドル運転時の機関回転数が目標回転数となるようにフィードバック制御するアイドル運転制御とを実行する。また、点火時期制御には、例えばノック制御、変速対応制御、触媒暖機制御等のように、点火時期を遅角する点火時期遅角制御が含まれている。上記各種の制御は何れも公知のものである。
[実施の形態1の特徴]
(重み付け学習制御)
一般に、エンジン制御では、各種の制御パラメータの取得値に基いて制御パラメータを学習する学習制御が行われる。なお、本明細書中において、「取得」とは、検出、計測、測定、算出、推定等の意味を含むものとする。本実施の形態では、学習制御として、以下に述べる重み付け学習制御を実行する。ECU60は、重み付け学習制御を行う学習装置を構成しており、複数の格子点を有する学習マップを備えている。なお、本実施の形態では、重み付け学習制御の具体的な内容について説明するものとし、制御パラメータの具体例については、後述する実施の形態7以降で説明する。
図2は、本発明の実施の形態1において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。この図は、X軸及びY軸に対応する2つの参照パラメータに基いて、1つの学習値が算出される2次元の学習マップを例示している。図2に示す学習マップは、座標i,jが1〜4の範囲で変化する16個の格子点を有している。学習マップの各格子点(i,j)には、制御パラメータの学習値Zijがそれぞれ更新可能に記憶されている。
なお、以下の説明において、添字kが付記される変数値zk、wkij、Wij(k)、Vij(k)、Zij(k)は、k回目の取得タイミング(演算タイミング)に対応するk番目の値であることを示し、添字kが付記されない変数値wij、Wij、Vij、Zijは、取得タイミングにより区別されない一般的な値を示すものとする。また、図2は、制御パラメータの1回目及び2回目の取得値z1,z2が全格子点の学習値Zijに反映される様子を矢印により例示したもので、図面を判り易くするために、矢印の一部を省略し、学習値の更新範囲を円により示している。
重み付け学習制御は、基本的に、k回目(k番目)の取得タイミングで取得した制御パラメータの取得値(パラメータ取得値zk)と、後述の重み付け関数(重み設定手段)により設定された各格子点(i,j)の重みwkijとに基いて、学習が有効な全ての格子点(i,j)の学習値Zij(k)を更新する。なお、本実施の形態において、「学習が有効な全ての格子点」とは、学習マップ上に存在する全ての格子点を意味している。学習値Zij(k)の更新処理は、全ての格子点(i,j)において、下記数1乃至数3の式を演算することにより実現される。
[数1]
ij(k)=Wij(k−1)+wkij
[数2]
ij(k)=Vij(k−1)+zk*wkij
[数3]
ij(k)=Vij(k)/Wij(k)
上記式において、Wij(k)は、格子点(i,j)における1回目からk回目までの重みwkijを合計した重み積算値を示し、Vij(k)は、k番目のパラメータ取得値zkと重みwkijとの乗算値(zk*wkij)を1回目からk回目まで合計したパラメータ積算値を示している。上記式から判るように、重み付け学習制御は、制御パラメータが取得される毎に、全ての格子点(i,j)において、重みwkijが大きいほどパラメータ取得値zkが学習値Zij(k)に大きく反映されるように、個々の格子点の学習値Zij(k)を更新するものである。
また、上記数1及び数2の式には、前回(k−1回目)の積算値Wij(k−1)及びVij(k−1)が用いられるが、これらの初期値(k=1のときの値)は、下記数4及び数5の式により定義される。従って、数1乃至数5の式によれば、k番目のパラメータ取得値zkと、重みwkijとに基いて、全ての格子点(i,j)におけるk番目の学習値Zij(k)を算出し、学習マップを更新することができる。
[数4]
ij(1)=z1*w1ij
[数5]
ij(1)=w1ij
(重みの設定方法)
次に、本実施の形態における重みwkijの設定方法について説明する。k番目のパラメータ取得値zkに対応する各格子点(i,j)の重みwkijは、下記数6の式に示すガウス関数より、1≧wkij≧0を満たすように算出される。ガウス関数は、本実施の形態の重み設定手段を構成するもので、学習マップ上におけるパラメータ取得値zkの位置(基準位置)から格子点(i,j)までの距離が大きいほど、当該格子点(i,j)の重みwkijを減少させるものである。なお、学習マップ上の「位置」とは、パラメータ取得値zkの取得時点における各参照パラメータの組合わせにより定められる。
Figure 0005861779
上記数6の式において、|zk−Zij|は、前記基準位置から格子点(i,j)までのユークリッド距離を示している。図3は、本発明の実施の形態1において、ガウス関数による重みの減少特性を示す特性線図である。ここで、重みの減少特性とは、基準位置からの距離に応じて減少する重みと前記距離との関係を意味している。図3中に実線で示すように、ガウス関数により得られる重みwkijは、格子点が基準位置に近い場合に大きくなり、格子点が基準位置から遠いほど、正規分布曲線状に減少していく。従って、パラメータ取得値zkが学習値Zijに反映される度合い(学習効果)は、格子点が基準位置に近いほど大きくなり、格子点が基準位置から遠くなるにつれて小さくなる。
また、上記数6の式に示すσは、任意の値に設定することが可能な標準偏差であり、ガウス関数の減少特性は、標準偏差σに応じて変化する。即ち、重みwkijは、図3中に点線で示すように、標準偏差σが小さいほど、基準位置の近傍に存在するピーク値が大きくなるものの、基準位置から遠くなるにつれて急激に減少する。この結果、標準偏差σが小さい場合には、基準位置の近傍のみで急峻な学習が行われることになり、学習の応答性は高くなるが、学習マップの曲面には凹凸が生じ易くなる。一方、重みwkijは、図3中に一点鎖線で示すように、標準偏差σが大きいほど、ピーク値が小さくなり、基準位置から遠くなるにつれて緩やかに減少する。この結果、標準偏差σが大きい場合には、基準位置の近傍から遠方にかけて学習が広範囲に行われることになり、学習の応答性は相対的に低下するものの、学習マップを滑らかな曲面にすることができる。
[実施の形態1を実現するための具体的な処理]
次に、図4を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰り返し実行されるものとする。図4に示すルーチンでは、まず、ステップ100において、k番目のデータ(パラメータ取得値)zkを取得する。
次に、ステップ102では、前記数6の式により、k番目の取得タイミングにおける全格子点(i,j)の重みwkijを算出する。そして、ステップ104では、k番目のパラメータ取得値zkと、重みwkijとに基いて、全格子点(i,j)の重み積算値Wij(k)及びパラメータ積算値Vij(k)を算出する。次に、ステップ106では、重み積算値Wij(k)とパラメータ積算値Vij(k)とに基いて、全格子点(i,j)の学習値Zij(k)を算出し、学習マップを更新する。
従って、本実施の形態によれば、次のような効果を得ることができる。まず、重み付け学習制御では、1回の学習動作を行うことにより、パラメータ取得値zkに最も近い格子点(i,j)だけでなく、全ての格子点(i,j)の学習値Zij(k)を距離に応じて重み付けしながら適切に更新することができる。これにより、学習機会が少ない場合でも、最小限の学習回数により全ての格子点(i,j)の学習値Zij(k)を速やかに最適化することができる。しかも、一部の格子点(i,j)で学習値Zij(k)が失われたり、未学習状態が続いた場合でも、これらの学習値Zij(k)を他の位置での学習動作により補完することができる。従って、制御パラメータの種類に関係なく、学習効率を高め、学習制御の信頼性を向上させることができる。
また、重み設定手段としてガウス関数を用いることにより、パラメータ取得値zkの位置(基準位置)からの距離に応じて、重みwkijを滑らかに変化させることができる。従って、学習マップを滑らかにすることができ、学習値Zij(k)の急変等による制御性の悪化を抑制することができる。しかも、標準偏差σの設定に応じて重みwkijの減少特性を変化させることができ、広い学習領域において学習特性(学習の速度や効率)を容易に調整することができる。さらに、制御パラメータを取得する毎に、逐次平均処理を行うことになるので、学習値Zij(k)に対する外乱(ノイズ等)の影響を除去することができる。また、逐次処理により、学習値Zij(k)の演算負荷を時間的に分散させることができるので、ECU60の演算負荷を軽減することができる。
なお、前記実施の形態1では、図2が請求項1における学習マップの具体例を示し、図4中のステップ102及び前記数6の式が重み設定手段の具体例を示し、ステップ104,106が重み付け学習手段の具体例を示している。また、実施の形態1では、ガウス関数として数6の式を例示したが、本発明はこれに限らず、下記数7の式に示すガウス関数により重みwkijを設定してもよい。
Figure 0005861779
上記数7の式において、zk_1は、パラメータ取得値zkの第1軸座標(例えば、図2中のX軸座標)を示し、zk_2はパラメータ取得値zkの第2軸座標(Y軸座標)を示している。また、Zij_1は、学習値Zijに対応する格子点(i,j)の第1軸座標iを示し、Zij_2は、同格子点(i,j)の第2軸座標jを示している。また、同式中のσ1,σ2は、前記標準偏差σの第1軸座標成分,第2軸座標成分に対応するものである。
また、実施の形態1では、2次元の学習マップに適用する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば数8の式に示すように、1次元及び3次元以外の任意の次元をもつ学習マップにも適用することができる。なお、この場合には、学習マップの次元数に合わせて、重みwij、重み積算値Wij、パラメータ積算値Vij、学習値Zijの次元数を、wijlmn...、Wijlmn...、Vijlmn...、Zijlmn...のように変更すればよい。
Figure 0005861779
また、実施の形態1では、前記数4及び図5の式により積算値Wij及びVijの初期値を演算するものとしたが、本発明では、以下に示す変形例のように初期値を設定してもよい。まず、上述した重み付け学習制御において、ECU60に記憶される初期値は、積算値Wij及びVijのみであり、これらの値から算出される学習値Zijは、初期値として記憶させるわけではない。そこで、本変形例では、初期値として記憶させたい学習値Zijの値と、重み積算値Wijの初期値とに基いて、前記数3の式によりパラメータ積算値Vijの初期値(=Zij×Wij)を逆算し、この逆算値をECU60に記憶させる。
上記変形例によれば、設計時の机上計算等により初期値として希望する学習値Zijの値を、積算値Wij及びVijの初期値として予め記憶させておくことができる。そして、1回目の学習動作では、前記数4及び数5の式により学習値Zijの初期値を希望の値に設定することができる。また、学習を早くしたい格子点(i,j)では重み積算値Wijを大きく設定し、学習を遅くしたい格子点(i,j)では重み積算値Wijを小さく設定することで、学習速度の初期条件も容易に調整することができる。
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1と同様の構成において、重み設定手段として一次関数を用いることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態2の特徴]
図5は、本発明の実施の形態2において、一次関数による重みの減少特性を示す特性線図である。この図に示すように、本実施の形態では、重み設定手段として、基準位置からの距離に応じて重みが比例的に減少する一次関数を採用している。このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、一次関数の使用により重みwkijを演算するときの演算負荷を大幅に減少させることができる。
実施の形態3.
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1と同様の構成において、重み設定手段として三角関数を用いることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態3の特徴]
図6は、本発明の実施の形態3において、三角関数による重みの減少特性を示す特性線図である。この図に示すように、本実施の形態では、重み設定手段として、基準位置からの距離に応じて前記重みが正弦波状に減少する三角関数を採用している。このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、三角関数の使用により重みwkijの演算負荷をガウス関数よりも減少させつつ、ガウス関数を用いた場合と同様に重みwkijを滑らかに減少させることができる。
実施の形態4.
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1と同様の構成において、学習マップを複数の領域に分割し、少なくとも一部の領域では、重みの減少特性を領域毎に切換えることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態4の特徴]
学習値の更新量等については、学習マップ上の領域毎に要求が異なる場合もある。特に、学習マップ上には、制御パラメータの変化が大きい領域と、制御パラメータの変化が小さい(余り変化しない)領域とが存在することが多い。このため、パラメータ取得値zkの位置と格子点との距離のみに応じて重みを設定する方法では、各格子点において学習の速度や効率が適切となるよう重みを設定するのが難しい。即ち、この方法では、領域が異なる格子点同士であっても、距離が同等であれば同じレベルの学習が行われることになり、的確な学習制御を行うことができないという問題がある。また、学習マップ全体に適合する一定の重み付けを見つけ出すのは困難である。即ち、重みの急変が不要な領域で急変を許可すると、演算負荷の増加や学習マップの凹凸化が生じ易くなる。また、重みの急変が必要な領域で急変を抑制すると、制御効率の悪化やフェイルセーフの作動不良等を招く虞れがある。このため、学習マップ全体に一定の重み付けを適用すると、少なくとも一部の領域で不都合が生じることになる。
このため、本実施の形態では、次のような制御を実行する。図7は、本発明の実施の形態4において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。この図に示すように、本実施の形態では、学習マップの少なくとも一部が複数の領域に分割されている。なお、図7では、学習マップの一部を2個の領域A,Bに分割した場合を例示している。ここで、領域Aは、例えばエンジンの運転中等における制御パラメータの変化が大きい領域であり、領域Bは、制御パラメータの変化が小さい領域である。そして、重み付け学習制御では、基準位置からの距離に応じて減少する重みwkij(ガウス関数)の減少特性を、領域A,B毎に切換える構成としている。
具体的に述べると、制御パラメータの急峻な変化を学習する必要がある領域Aでは、ガウス関数の標準偏差σAが領域Bの標準偏差σBよりも小さく設定されている(σA<σB)。このため、領域Aにおいて、重みwkijは、基準位置の近傍で大きなピーク値をとりつつ、基準位置から離れると急激に減少するように構成されている。一方、制御パラメータが余り変化しない領域Bでは、標準偏差σが比較的大きな値に設定されている。このため、領域Bにおいて、重みwkijは、基準位置の近傍で小さなピーク値を取りつつ、基準位置から離れると広範囲にわたって緩やかに減少するように構成されている。
そして、重み付け学習制御では、個々の格子点(i,j)において、当該格子点が属する領域の減少特性に基いて重みwkijを設定する。一例を挙げると、図7中のパラメータ取得値z1に基いて1回目の学習動作を行う場合において、領域Aに属する格子点(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)、(3,1)、(3,2)では、標準偏差σAのガウス関数を用いて重みw1ijを設定する。一方、領域Bに属する格子点(2,3)、(2,4)、(3,3)、(3,4)、(4,3)、(4,4)では、標準偏差σBのガウス関数を用いて重みw1ijを設定する。これと同様に、2回目以降(k≧2)の学習動作でも、格子点が属する領域に応じてガウス関数の減少特性(標準偏差)を切換える。なお、重みwkijの設定後に学習値Zij(k)を更新する処理は、前述のものと同様である。
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、重みwkijの減少特性を、領域A,B毎に切換える構成としている。これにより、例えば急峻な学習が必要な領域Aでは、重みkijの急変が可能な設定とすることで、学習の応答性や制御効率を向上させ、フェイルセーフ等の動作を安定させることができる。また、緩やかな学習でも許される領域Bでは、重みkijが比較的広い格子点範囲で緩やかに変化する設定とすることで、学習時の演算負荷を抑制し、学習マップを滑らかにすることができる。従って、学習マップ全体に適合する重み付けを容易に実現することができる。
なお、前記実施の形態4では、学習マップ上に2個の領域A,Bを設ける場合を例示したが、本発明において、学習マップ上に設ける領域の個数は、任意の個数に設定してよいものである。また、本発明では、3個以上の領域を設けた場合において、重みwkijの減少特性を必ずしも全ての領域で相互に異ならせる必要はなく、少なくとも2個の領域の減少特性が異なればよい。
また、実施の形態4では、個々の格子点(i,j)において、当該格子点が属する領域の減少特性に基いて重みwkijを設定する場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、以下に述べる変形例のように構成してもよい。この変形例では、パラメータ取得値zkが属する領域の減少特性に基いて、全格子点の重みを設定する。具体的に述べると、例えば図7中のパラメータ取得値z1に基いて学習値を更新する場合には、パラメータ取得値z1の位置が領域Aに属するので、領域Aの減少特性(標準偏差σAのガウス関数)に基いて、領域A,Bを含む全格子点の重みw1ijを設定する。また、領域Bに属する位置のパラメータ取得値z1′に基いて学習値を更新する場合には、領域Bの減少特性(標準偏差σBのガウス関数)に基いて、領域A,Bを含む全格子点の重みw1ijを設定する。
このように構成される変形例によれば、パラメータ取得値zkが属する領域の特性に応じて、全格子点における学習の応答性、速度、効率等を切換えることができる。即ち、パラメータ取得値zkが急峻な学習を必要とする領域Aに属する場合には、全ての格子点で標準偏差σAのガウス関数により重みwkijを設定することができる。また、パラメータ取得値zkが急峻な学習を必要としない領域Bに属する場合には、全ての格子点で標準偏差σBのガウス関数により重みwkijを設定することができる。従って、学習マップ全体に適合する重み付けを容易に実現することができる。
実施の形態5.
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1と同様の構成において、基準位置から必要以上に遠い格子点での学習値の更新を禁止することを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態5の特徴]
図8は、本発明の実施の形態5において、重み付け学習制御に用いる学習マップの一例を模式的に示す説明図である。本実施の形態では、基準位置からの距離|zk−Zij|が所定の有効範囲Rよりも大きい格子点の重みwkijを0に設定する構成としている。図8に示す例で説明すると、パラメータ取得値z1の位置(基準位置)からの距離が有効範囲R以内の格子点、例えば格子点(2,3)、(3,3)等では、前述の方法により重みw1ijを算出する。一方、例えば格子点(3,1)、(2,4)、(4,4)等では、基準位置からの距離|zk−Zij|が有効範囲Rよりも大きいので、重みw1ij=0と設定し、学習値Zij(k)の更新を禁止する。
図9は、本発明の実施の形態5による重み付けの特性を示す特性線図である。この図に示すように、基準位置からの距離|zk−Zij|が有効範囲Rを超えた格子点では、重みwkijが0となるので、前記数1乃至数3の式により得られる学習値Zij(k)が前回と同じ値になり、学習値の更新が停止する。なお、ガウス関数を使用した場合には、距離|zk−Zij|が大きくなるにつれて重みwkijが0に漸近するので、この距離がある程度以上大きな格子点では、学習値を更新しても、学習効果が小さい(学習が有効とならない)。
従って、有効範囲Rは、学習が有効となる全ての格子点が含まれ、かつ、学習処理の演算負荷を軽減することが可能な距離として設定される。また、本実施の形態では、前記図4に示すフローチャートにより学習値の更新処理を行うときに、重みwkijが0に設定された格子点を除外して前記数1乃至数5の式を実行する構成とするのが好ましい。
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、学習値が更新される格子点を有効範囲内に制限することができる。これにより、学習効果が小さい格子点で学習値が無駄に更新されるのを回避し、ECU60の演算負荷を軽減することができる。なお、本実施の形態では、基準位置からの距離|zk−Zij|が有効範囲Rを超えた格子点において、重みwkijを0に設定するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、距離|zk−Zij|が有効範囲Rを超えた格子点での無駄な演算を禁止すればよいものであり、必ずしも重みwkijを0に設定する必要はない。即ち、本発明では、例えば距離|zk−Zij|が有効範囲Rよりも大きいと判定した場合に、その格子点での今回の学習に関連した演算処理を中止する構成としてもよい。
実施の形態6.
次に、図10及び図11を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1と同様の構成において、学習値の信頼性を評価するための信頼性マップを用いることを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態6の特徴]
前述した重み付け学習制御によれば、1回の学習動作により、学習が有効な全ての格子点の学習値を更新することができる。しかしながら、例えばガウス関数の標準偏差σを大きく設定し、学習マップを滑らかにしようとした場合には、学習マップのうち制御パラメータが実際に取得されたことがない領域でも、学習値が無意味に更新される誤学習が発生する虞れがある。このため、本実施の形態では、学習マップの信頼性を評価するための信頼性マップを用いる構成としている。
図10は、本発明の実施の形態6において、信頼性マップの一例を模式的に示す説明図である。この図に示すように、信頼性マップは、学習マップと同様(同じ次元数)に構成された複数の格子点を有し、個々の格子点には、学習値Zij(k)の信頼性を表す指標である信頼性評価値Cijがそれぞれ更新可能に記憶されている。全ての格子点における信頼性評価値Cijは、初期値が0に設定され、0〜1の範囲で変化する。そして、以下の処理では、学習値Zijの信頼性が高いほど、対応する格子点(i,j)の信頼性評価値Cijが大きくなるように、信頼性マップを更新する。
次に、図11を参照しつつ、信頼性マップの機能及び更新処理について説明する。図11は、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンは、信頼性マップの学習に関連する処理のみを記載したもので、信頼性マップの学習処理は、学習マップの学習処理と並行して周期的に実行される。図11に示すルーチンにおいて、まず、ステップ200では、実施の形態1(図4)と同様に、k番目のデータ(パラメータ取得値)zkを取得する。
次に、ステップ202では、パラメータ取得値zkが信頼できる値であれば、信頼性マップ上において、パラメータ取得値zkと同じ基準位置に信頼性取得値ck(=1)を設定する。パラメータ取得値zkが信頼できるか否かは、学習値Zij(k)を用いる個々の制御において、制御パラメータの種類、特性、正常値の範囲、センサの異常診断の結果等に基いて判定することができる。なお、パラメータ取得値zkの信頼性によっては、信頼性取得値ckに1未満の値を設定してもよく、特に、パラメータ取得値zkの信頼性が低いと判定した場合には、信頼性取得値ckを0に設定してもよい。即ち、ステップ202では、パラメータ取得値zkの信頼性に対応する値をもつ信頼性取得値ckを基準位置に設定する。
そして、ステップ204では、信頼性マップに対して、学習マップと同様の重み付け学習制御を実行し、制御パラメータが取得される毎に、各格子点の信頼性評価値Cijを算出して信頼性マップを更新する。この重み付け学習制御は、下記数9乃至数14の式により実現される。これらの式は、前記数1乃至数6の式において、パラメータ取得値zk(z1)及び学習値Zij(k)を、信頼性取得値ck(c1)及び信頼性評価値Cijに置換えたものである。但し、置換えをしない他の変数値には、学習マップで用いるものと異なることを示すダッシュ「′」を付している。なお、数14の式における標準偏差σCの値については後述する。
[数9]
ij(k)′=Wij(k−1)′+wkij
[数10]
ij(k)′=Vij(k−1)′+ck*wkij
[数11]
ij(k)=Vij(k)′/Wij(k)′
[数12]
ij(1)′=c1*w1ij
[数13]
ij(1)′=w1ij
Figure 0005861779
上記各式から判るように、信頼性マップの重み付け学習制御では、例えばパラメータ取得値zkと同じ位置で、その信頼性に応じた信頼性取得値ckが取得されたものとみなして、学習が有効な全ての格子点の重み(信頼性重み)wkij′を設定し、信頼性評価値Cijを更新する。これにより、個々の格子点の信頼性評価値Cijは、信頼性重みwkij′が大きいほど信頼性取得値ckが大きく反映されるように更新される。また、信頼性重みwkij′は、前記数14の式に示すガウス関数を用いて、基準位置(信頼性取得値ckの位置)から格子点までの距離が大きいほど、信頼性重みwkij′が減少するように設定される。そして、信頼性重みwkij′の減少特性を決定するガウス関数の標準偏差σCは、学習マップの標準偏差σと比較して十分に小さい値に設定されている(σ>>σC)。即ち、信頼性重みwkij′が基準位置からの距離に応じて減少するときの減少特性は、学習マップの重みwkijの減少特性よりも急峻に設定されている。
これにより、信頼性重みwkij′は、制御パラメータが実際に取得された基準位置の近傍のみで大きくなり、基準位置から遠くなるにつれて急激に減少する。また、信頼性評価値Cijが学習により増加する領域は、基準位置の近傍のみに限定される。従って、制御パラメータが高い頻度で取得される領域では、各格子点の信頼性評価値Cijが大きな値となる。一方、制御パラメータが余り取得されない領域では、信頼性評価値Cijが小さな値となり、特に制御パラメータの取得履歴がない領域では、信頼性評価値Cijが0に近い値となる。即ち、信頼性評価値Cijの値には、現在の学習値Zijが実際に取得された制御パラメータに基いて算出されたものか否かという学習値Zijの信頼性が反映される。
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。まず、信頼性マップの各格子点の信頼性評価値Cijには、同じ格子点における学習値Zijの信頼性を反映させることができる。そして、信頼性評価値Cijの重み付け学習制御を実行することにより、制御パラメータの取得値が各格子点の学習値に反映されるときと同等の反映度をもって、信頼性取得値ckを各格子点の信頼性評価値Cijに反映させることができる。従って、1回の学習動作により、各格子点の学習値の信頼性を効率よく算出することができる。
また、各種の制御等に学習値Zijを用いる場合には、信頼性マップ上で対応する格子点(i,j)の信頼性評価値Cijに基いて、学習値Zijの信頼性を評価し、評価の結果に基いて適切な対応制御を実行することができる。具体例を挙げると、信頼性評価値Cijが所定の判定値以上の場合には、学習値Zijが信頼できるものと判定し、当該学習値Zijをそのまま制御に用いることができる。
一方、信頼性評価値Cijが前記判定値未満の場合には、学習値Zijに信頼性がないものと判定し、学習値Zijに代えて保守的な安全値を用いたり、学習値Zijを安全サイド側に補正することができる(例えば点火時期であれば、遅角側に補正する等)。また、例えば加算、乗算等の手段により信頼性評価値Cijを学習値Zijに反映させ、学習値Zijを信頼性に応じて連続的に増減させることができる。
なお、前記実施の形態6では、図10が信頼性マップの具体例を示し、前記数14の式が信頼性マップ重み設定手段の具体例を示し、図11に示すルーチンが信頼性マップ学習手段の具体例を示している。
実施の形態7.
次に、図12及び図13を参照して、本発明の実施の形態7について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、点火時期の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態7の特徴]
図12は、本発明の実施の形態7による点火時期制御を示す制御ブロック図である。本実施の形態のシステムは、ECU60の記憶回路または演算機能に含まれるMBTマップ100、燃焼重心算出部102、燃焼重心目標設定部104、FBゲイン算出部106及び学習制御部108を備えている。MBTマップ100は、複数の参照パラメータに基いて、制御パラメータである点火時期を算出する多次元の学習マップにより構成されている。ここで、参照パラメータの例を挙げると、機関回転数Ne、機関負荷KL、水温、VVT等の可変動弁機構34,36によるバルブタイミング制御量、EGR弁42の制御量等がある。また、MBTマップ100の各格子点には、エンジントルクが最大となる点火時期であるMBT(Minimum spark advance for Best Torque)の学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。
本実施の形態では、エンジンの運転中において、点火時期をMBTに一致させるMBT制御を実行する。MBT制御では、まず、前記各参照パラメータに基いてMBTマップ100を参照することにより、フィードフォワード(FF)項である点火時期Advを算出する。次に、燃焼重心算出部102は、この点火時期Advでの燃焼より得られる燃焼重心CA50を、筒内圧センサ50の出力等に基いて下記数15の式により算出する。この式は、燃焼質量割合MFB(Mass Fraction of Burned fuel)を算出する公知の式であり、燃焼重心CA50は、MFB=50%となるクランク角θとして定義される。なお、下記数15の式において、Pは筒内圧、Vは筒内容積、κは比熱比、θsは燃焼開始クランク角、θeは燃焼終了クランク角をそれぞれ示している。
Figure 0005861779
次に、燃焼重心目標設定部104は、所定の燃焼重心目標値(例えば、ATDC8℃A等)を読出し、FBゲイン算出部106は、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値と一致するように、点火時期Advを補正(フィードバック制御)する。これにより、点火時期Advは、補正後の点火時期Adv′となる。
一方、学習制御部108は、図13に示すように、補正後の点火時期Adv′を制御パラメータの取得値zkとして前記重み付け学習制御を実行し、当該点火時期Adv′をMBTの学習値Zij(k)に反映させる。この重み付け学習制御は、図13に示すように、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致した場合にのみ実行される。図13は、本発明の実施の形態7において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンでは、ステップ300において、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致しているか否かを判定する。この判定が成立した場合には、MBTが実現されているものと判断し、ステップ302で点火時期の重み付け学習制御を実行する。一方、ステップ300の判定が不成立の場合には、MBTが実現されていないと判断されるので、重み付け学習制御を実行しない。
このように構成される本実施の形態によれば、点火時期の学習制御において、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、重み付け学習制御は、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作によりMBTマップ100の全格子点でMBTを効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。なお、前記実施の形態7では、燃焼重心算出部102が燃焼重心算出手段の具体例を示し、FBゲイン算出部106が点火時期補正手段の具体例を示し、学習制御部108が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
実施の形態8.
次に、図14を参照して、本発明の実施の形態8について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態6で述べた信頼性マップを利用して、エンジンの過渡運転時におけるMBTの学習値の更新量を、定常運転時と比較して抑制することを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態6,7と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態8の特徴]
エンジンの過渡運転時に点火時期を学習すると、誤学習が生じる虞れがある。このため、本実施の形態では、図14に示すように、エンジンの運転状態に基いて信頼性マップの信頼性評価値Cij(k)を算出し、算出した信頼性評価値Cij(k)をMBTの学習値に反映させる。図14は、本発明の実施の形態8において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図は、信頼性マップの学習に関連する処理のみを記載している。
図14に示すルーチンでは、まず、ステップ400において、k番目のデータ(パラメータ取得値)zkである補正後の点火時期Adv′を取得する。次に、ステップ402では、機関回転数の単位時間当たりの変化量ΔNeが所定の回転数急変判定値未満であるか否かを判定し、ステップ404では、機関負荷の単位時間当たりの変化量ΔKLが所定の負荷急変判定値未満であるか否かを判定する。これらの判定値は、例えば点火時期や燃焼重心の算出値に誤差が生じる変化量ΔNe,ΔKLの最小値に基いて設定されている。
ステップ402,404の両方で判定が成立した場合には、エンジンが定常運転状態であると判断し、ステップ406において、信頼性取得値ck=1に設定する。一方、ステップ402,404の少なくとも一方で判定が不成立の場合には、過渡運転状態であると判断し、ステップ408において、信頼性取得値ck=0に設定する。次に、ステップ410では、実施の形態6で述べたように、信頼性マップの重み付け学習制御を実行し、各格子点の信頼性評価値Cijを算出して信頼性マップを更新する。
上記処理により更新された信頼性評価値Cij(k)は、例えば下記数16及び数17の式により、点火時期の学習値Zij(k)に反映される。これらの式は、前記実施の形態1で説明した数1及び数2の式に代えて用いられるものである。これにより、過渡運転時には、学習値Zij(k)の更新が停止されるか、その更新量が定常運転時と比較して抑制される。
[数16]
ij(k)=Wij(k−1)+wkij*Cij(k)
[数17]
ij(k)=Vij(k−1)+zk*wkij*Cij(k)
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態7とほぼ同様の作用効果に加えて、次のような効果を得ることができる。点火時期の学習制御では、制御パラメータを取得したときの運転状態が安定しているほど、即ち、パラメータ取得値(点火時期Adv′)の信頼性が高いほど、各格子点における見かけ上の重み(wkij*Cij(k))を増加させ、学習値Zij(k)の更新量を大きくすることができる。一方、運転状態が不安定な場合には、前記見かけ上の重みを減少させて学習値Zij(k)の更新量を小さくし、学習を停止または抑制することができる。これにより、定常運転時の学習を促進し、過渡運転時の誤学習を抑制することができる。
実施の形態9.
次に、図15乃至図18を参照して、本発明の実施の形態9について説明する。本実施の形態は、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値から乖離している場合でも、点火時期を学習可能な構成としたことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態7と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態9の特徴]
前記実施の形態7では、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致した場合にのみ、点火時期の重み付け学習制御を実行するので、学習機会を増やすのが難しい。このため、本実施の形態では、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値から乖離している場合でも、MBTの推定値と、燃焼重心の差分ΔCA50とに基いて、信頼度に応じた重み付け学習制御を実行する。
図15は、本発明の実施の形態9による点火時期制御を示す制御ブロック図である。本実施の形態のシステムは、前記実施の形態7と同様に構成されたMBTマップ110と、学習制御部112とを備えている。学習制御部112は、下記数18及び数19の式によりMBTを推定し、当該推定値に基いて点火時期の重み付け学習制御を実行する。この場合には、MBTの推定値がパラメータ取得値zkに対応している。
[数18]
MBT=補正後の点火時期Adv′[BTDC]+ΔCA50
[数19]
ΔCA50=燃焼重心CA50[ATDC]−燃焼重心目標値
上述したMBTの推定方法は、次の原理に基いたものである。まず、点火時期が変化すると、これに伴って燃焼重心CA50も変化するが、MBTの近傍では、点火時期の変化量と燃焼重心CA50の変化量とがほぼ等しくなるという特性がある。即ち、燃焼重心CA50と燃焼重心目標値との差分ΔCA50は、MBTと点火時期Adv′とのずれ量に相当するものと考えられる。従って、MBTは、上記数18の式に示すように、補正後の点火時期Adv′を差分ΔCA50だけずらした値として推定することができる。
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態7とほぼ同様の作用効果に加えて、次のような効果を得ることができる。まず、図16は、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致したときにのみ点火時期を学習する構成とした場合(実施の形態7)の学習機会を比較例として示すタイミングチャートである。この図中に丸印で示すように、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値とほぼ一致するタイミングは散発的に発生するので、このときにMBTを学習するだけでは、学習機会を十分に得ることができない。
これに対し、図17は、本発明の実施の形態9による学習制御を示すタイミングチャートである。この図に示すように、本実施の形態によるMBTの学習制御では、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値から乖離している場合でも、MBTの推定値を常に得ることができるので、この推定値に基いて学習値Zij(k)を更新することができ、学習機会を大幅に増加させることができる。これにより、学習値Zij(k)を速やかにMBTに近付け、MBT制御の制御性を向上させることができる。
なお、前記数18の式によりMBTを推定するときには、燃焼重心CA50が燃焼重心目標値からずれるほど、即ち、両者の差分ΔCA50が大きくなるほど、MBTの推定精度が低下し、誤学習が生じ易くなる。このため、本実施の形態では、燃焼重心の差分ΔCA50に基いて、下記数20の式により信頼度係数εを算出する。そして、信頼度係数εの算出値を、下記数21及び数22の式によりMBTマップ110の各格子点の重みwkij、即ち、MBTの学習値Zij(k)に反映させる。
Figure 0005861779
[数21]
ij(k)=Wij(k−1)+wkij*ε
[数22]
ij(k)=Vij(k−1)+zk*wkij*ε
ここで、上記数20の式は、ガウス関数とほぼ同様の特性を有し、信頼度係数εは、ΔCA50が大きくなるほど(燃焼重心CA50が燃焼重心目標値から乖離するほど)、減少するように設定される。また、信頼度係数εの減少特性は、調整項σCA50の大きさに応じて調整される。また、上記数21及び数22の式は、実施の形態1で説明した数1及び数2の式に代えて用いられるものである。
上記構成によれば、MBTの推定精度が低いほど、信頼度係数εを小さく設定し、学習値Zij(k)に対するMBTの推定値の反映度を低下させることができる。従って、MBTを推定することで学習機会を増加させつつ、その推定精度に応じて学習値Zij(k)の更新量を適切に調整し、誤学習を抑制することができる。
なお、前記実施の形態9では、数18及び数19の式がMBT推定手段の具体例を示し、数20乃至数22の式がMBT常時学習手段の具体例を示している。また、実施の形態9では、数20の式により信頼度係数εを設定するものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば図18に示すデータマップに基いて信頼度係数εを算出する構成としてもよい。図18は、燃焼重心CA50と燃焼重心目標値との差分ΔCA50に基いて信頼度係数εを算出するための特性線図である。この図において、信頼度係数εは、燃焼重心の差分ΔCA50が大きくなるにつれて減少するように設定されている。
また、前記実施の形態9では、信頼度係数εに代えて信頼性マップを用いる構成としてもよい。この構成の一例を挙げると、例えば燃焼重心の差分ΔCA50が大きいほど、信頼性取得値ckを小さく設定した上で、信頼性マップの重み付け制御を実行する。そして、MBTの学習値には、前記数16及び数17の式により、信頼性評価値Cij(k)を反映させればよい。
実施の形態10.
次に、図19及び図20を参照して、本発明の実施の形態10について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態9の構成に加えて、TK(トレースノック)マップを採用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態7,9と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態10の特徴]
前記実施の形態9では、MBTマップ110によりMBTを学習する構成とした。しかし、エンジンの運転領域には、MBTを実現することができるMBT領域と、MBTを実現できないTK領域とが存在する。TK領域は、点火時期をMBTまで進角する前にトレースノック(本格的なノックの発生前に生じる弱いノック)が発生する領域であり、この領域では、MBTの学習が困難となる。このため、本実施の形態では、TK領域において、後述のTKマップ124により点火時期を学習する構成としている。
図19は、本発明の実施の形態10による点火時期制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、前記実施の形態9と同様に構成されたMBTマップ120と、学習制御部122、TKマップ124及びMin選択部126とを備えている。ここで、TKマップ124は、MBTマップ120と同様に構成された多次元の学習マップであり、TKマップ124の各格子点には、制御パラメータであるTK点火時期の学習値Zij(k)がそれぞれ更新可能に記憶されている。TK点火時期は、点火時期がMBTに到達する前(MBTが実現される前)に、TK領域においてトレースノックが発生する点火時期、即ち、本格的なノックを発生させずに実現することが可能な最進角側の点火時期として定義される。なお、以下の説明では、MBTマップ120の学習値Zij(k)をMBT学習値Z1と表記し、TKマップ124の学習値Zij(k)をTK学習値Z2と表記するものとする。
本実施の形態では、学習制御部122により、前記実施の形態9で述べたMBTの重み付け学習制御と、TK点火時期の重み付け学習制御とを実行する。図20は、本発明の実施の形態10において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。なお、この図に示すルーチンは、TK点火時期の学習処理のみを記載している。図20に示すルーチンでは、まず、ステップ500により、筒内圧センサ50の出力波形に基いてトレースノックが発生したか否かを判定する。この判定が成立した場合には、ステップ502により、現在の点火時期(TK点火時期)をパラメータ取得値zkとして取得する。そして、この取得値に基いて重み付け学習制御を実行し、TK学習値Z2を更新する。
従って、MBTが実現される前にトレースノックが発生した場合には、この時点の点火時期がTK点火時期として取得及び学習される。また、点火時期がMBTに到達した場合には、MBTが取得及び学習される。この結果、本実施の形態の学習制御では、点火が行われる毎に、MBTマップ120とTKマップ124の何れか一方が学習(更新)されることになる。
また、本実施の形態の点火時期制御では、まず、エンジンの運転状態(前記各参照パラメータ)に基いて、MBTマップ120及びTKマップ124から学習値Z1,Z2をそれぞれ算出し、学習値Z1,Z2の大小関係をMin選択部126により判定する。Min選択部126は、MBT学習値Z1とTK学習値Z2のうち小さい方の点火時期(より進角側の点火時期)を選択し、選択した点火時期を補正前の点火時期Advとして出力する。点火時期Advを出力した後の処理については、実施の形態9で述べた処理と同様のものである。
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態9とほぼ同様の作用効果に加えて、次のような効果を得ることができる。点火時期の学習時には、MBTとTK点火時期の何れかを学習することができるので、学習機会を増加させ、MBT領域以外でも点火時期を効率よく学習することができる。また、本実施の形態では、MBT学習値Z1とTK学習値Z2のうち進角側の点火時期を選択することができる。従って、ノックの発生を回避しつつ、点火時期を可能な限り進角側に制御して、運転性能や運転効率を向上させることができる。なお、前記実施の形態10において、学習制御部122は、MBTマップ120及びTKマップ124からなる2つの学習マップの重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。また、図20のルーチンはTK点火時期学習手段の具体例を示し、Min選択部126は選択手段の具体例を示している。
実施の形態11.
次に、図21及び図22を参照して、本発明の実施の形態11について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態10の構成に加えて、TK領域を確認するためのTK領域マップを採用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態7,10と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態11の特徴]
前記実施の形態10では、TKマップ124によりTK点火時期を学習する構成としたが、この構成では、TK領域以外(TK点火時期の計測点がないMBT領域等)でも、TK点火時期が誤学習される虞れがある。このため、本実施の形態では、後述のTK領域マップ138によりTK領域を学習し、TK領域のみでTKマップ134を用いる構成としている。図21は、本発明の実施の形態11による点火時期制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、前記実施の形態10と同様に構成されたMBTマップ130、学習制御部132、TKマップ134及びMin選択部136と、TK領域マップ138とを備えている。
TK領域マップ138は、MBTマップ130及びTKマップ134と同様に構成された多次元の学習マップであり、TK領域マップ138の各格子点には、制御パラメータであるTK領域判定値がそれぞれ記憶されている。TK領域判定値は、TKマップ134の個々の格子点がトレースノック領域に属するか否かを示す学習値Zij(k)であって、信頼性マップと同様の重み付け学習制御により更新され、0〜1の範囲で変化する。そして、TK領域判定値の値が大きいほど、当該判定値に対応する格子点がTK領域に属している可能性(信頼性)が高くなる。
図22は、本発明の実施の形態11において、ECUにより実行されるTK領域マップ138の学習制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、例えばMBTマップ130の学習処理と並行して周期的に実行される。図22に示すルーチンでは、まず、ステップ600において、トレースノックが発生したか否かを判定する。この判定が成立した場合には、TK領域であるから、ステップ602に移行し、現在の運転領域(参照パラメータの組合わせにより定められる学習マップ上の位置)におけるTK領域判定値の取得値を1に設定する。一方、ステップ600の判定が不成立の場合には、TK領域ではないから、ステップ604に移行し、TK領域判定値の取得値を0に設定する。
そして、ステップ606では、TK領域判定値の重み付け学習制御を実行することにより、全ての格子点のTK領域判定値を更新する。この場合には、TK領域判定値が制御パラメータ及びその学習値Zij(k)に対応し、TK領域判定値の取得値がパラメータ取得値zkに対応している。なお、TK領域判定値の重み付け学習制御では、基準位置からの距離に応じて減少する重みwkijの減少特性を急峻に設定(ガウス関数の標準偏差σを小さく設定)するのが好ましい。これにより、TK領域マップ138上において、TK領域の境界を明確にすることができる。
一方、TK点火時期の重み付け学習制御を実行する場合には、TKマップ134の各格子点において学習値を更新するときに、TK領域マップ138上の同位置に記憶されたTK領域判定値を読出す。そして、読み出したTK領域判定値の値に基いて、当該格子点でTK点火時期を学習する否か(学習の有効or無効)を判定する。一例を挙げると、TK領域判定値が0.5以上の場合には、TK点火時期の学習値を更新し、それ以外の場合には学習値を更新しないものとしてもよい。
また、例えばTK領域判定値の初期値を0に設定しておくと、TK領域以外の領域(MBT領域等)では、TK点火時期の学習値が0となるので、TK点火時期とMBTのうち遅角側の値(小さい方の値)を選択すると、点火時期が0となってしまう。TK領域判定値が0に近い領域(格子点)では、TKマップ134を使用せず、MBTマップ130のみに基いて点火時期を制御するのが好ましい。
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態10とほぼ同様の作用効果に加えて、次のような効果を得ることができる。TK領域マップ138を用いることにより、TK領域の境界を明確化することができるので、TK領域以外の領域でTK点火時期が誤学習されるのを抑制することができ、学習精度を向上させることができる。なお、前記実施の形態11において、学習制御部132は、MBTマップ130及びTKマップ134からなる2つの学習マップの重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。また、図22のルーチンはTK領域学習手段の具体例を示している。一方、TK領域マップ138は、TKマップ134に対して信頼性マップと同様に機能するので、実施の形態11は、TKマップ134に対して信頼性マップを適用した構成に相当している。
また、前記実施の形態7乃至11では、MBTが全く学習されていない領域(格子点)の学習値を用いて点火時期制御を実行すると、誤学習によりノックが発生する虞れがある。このため、本発明では、MBTマップ100,110,120,130と共に、MBTの学習履歴が反映される信頼性マップを併用してもよい。この場合、信頼性マップの信頼性評価値は、前記実施の形態6で述べた方法により、MBTマップと一緒に更新される。また、MBT制御では、MBTマップの学習値の信頼性が低い領域、即ち、MBTの学習履歴が少なくて、信頼性マップの信頼性評価値が0に近い領域では、点火時期を保守的に少し遅角させる構成とすればよい。
実施の形態12.
次に、図23及び図24を参照して、本発明の実施の形態12について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、筒内空燃比の算出制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態12の特徴]
筒内空燃比の算出制御では、少なくとも筒内圧センサ50の出力に基いて筒内空燃比を算出し、この算出値を空燃比センサ54の出力に基いて補正する。本実施の形態は、この補正に用いる補正マップを重み付け学習制御により学習するものである。一般に、空燃比センサ54により検出される排気空燃比は応答性が悪い。これは、センサ自体の応答遅れが大きい上に、検出位置が燃焼室から離れていることに起因する。また、排気空燃比は、空燃比センサが活性化しない低温時に検出不能となり、気筒別の検出も難しい。これに対し、筒内空燃比は、燃焼時の空燃比を毎回算出することができるので、応答性が良く、高精度の制御が実現可能である。しかし、筒内空燃比は、基本的に算出精度が低いので、空燃比センサ54の出力に基いて補正するのが好ましい。
図23は、本発明の実施の形態12による筒内空燃比の算出制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、空燃比算出部140、補正マップ142及び学習制御部144を備えている。個々の構成要素について説明すると、まず、空燃比算出部140は、筒内圧センサ(CPS)50により検出される筒内圧P等に基いて、下記数23乃至数25の式により筒内空燃比(CPS検出空燃比)Apを算出する。
[数23]
筒内空燃比Ap=筒内空気質量/筒内燃料質量
[数24]
筒内燃料質量=CPS検出発熱量Q/低位発熱量
Figure 0005861779
上記各式において、筒内空気質量は、エアフローセンサ46の出力を用いるか、または、圧縮行程での筒内圧変化(圧縮行程の開始時点と終了時点の圧力差)ΔPが筒内空気質量と比例する原理に基いて算出される。また、低位発熱量は、燃料の単位質量当たりの発熱量として定義され、燃料の成分等に応じて定まる既知の値である。また、CPS検出発熱量Qは、筒内圧センサ50の出力等に基いて算出される筒内の発熱量であり、その算出に用いる各パラメータは、前記数15の式で説明したものである。
筒内空燃比Apは、エンジンの運転状態に応じて変動し易い。このため、本実施の形態では、例えば運転状態が反映される乗算型の補正係数αに基いて、下記数26の式により筒内空燃比Apを補正する。なお、この式において、Apは補正前の筒内空燃比を示し、Ap′は補正後の筒内空燃比(筒内空燃比の最終出力値)を示している。補正係数αは、補正マップ142により算出される。
[数26]
Ap′=Ap*α
補正マップ142は、少なくとも機関回転数Neと機関負荷KLを含む複数の参照パラメータに基いて補正係数αを算出する多次元の学習マップであり、補正マップ142の各格子点には、制御パラメータである補正係数αの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。一方、学習制御部144は、補正係数αの重み付け学習制御を実行する。具体的には、まず、下記数27の式に基いて、空燃比センサ54により検出した排気空燃比Asと、補正後の筒内空燃比Ap′との比を補正係数αとして算出する。そして、補正係数αの算出値をパラメータ取得値zkとして、各格子点における補正係数αの学習値Zij(k)を更新する。
[数27]
α=As/Ap′
なお、多気筒エンジンにおいては、前記数27式中の筒内空燃比Ap′として、各気筒の筒内空燃比Ap′の平均値を採用してもよい。また、空燃比センサ54は応答遅れが大きいので、上記学習制御は、エンジンの定常運転時にのみ実行するものとし、過渡運転時には禁止するのが好ましい。
また、本実施の形態では、図24に示す変形例の構成を採用してもよい。この変形例では、加算型の補正係数βに基いて、下記数28の式により筒内空燃比Apを補正する。また、補正マップ142′の各格子点には、補正係数βの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されており、学習制御部144′は、下記数29の式により算出した補正係数βの算出値をパラメータ取得値zkとして、補正係数βの重み付け学習制御を実行する。
[数28]
Ap′=Ap+β
[数29]
β=As−Ap′
このように構成される本実施の形態によれば、筒内空燃比の算出制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。特に、筒内センサ50により算出した筒内空燃比は、運転状態の変化による誤差が大きいので、従来技術の学習方法により得られた補正係数を用いても、実用性を高めるのが難しい。これに対し、本実施の形態では、学習機会が比較的少なくても、補正マップ142,142′の全格子点で補正係数α,βを速やかに学習することができる。従って、筒内空燃比の誤差が大きい場合でも、この誤差を補正係数α,βにより適切に補正することができ、筒内空燃比の算出精度や実用性を向上させることができる。なお、前記実施の形態12では、空燃比算出部140が筒内空燃比算出手段の具体例を示し、学習制御部144が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
実施の形態13.
次に、図25乃至図27を参照して、本発明の実施の形態13について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、燃料噴射特性の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態13の特徴]
図25は、本発明の実施の形態13において、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性線図である。一般に、燃料噴射弁26の燃料噴射量は、通電時間から無効通電時間を減算した実効通電時間に比例して増加する特性を有しており、下記数30の式により通電時間tに基いて制御される。ここで、目標噴射量Ftは、燃料噴射制御により設定される目標値であり、噴射特性係数は、図25に示す特性線の傾きに対応している。
[数30]
通電時間t=目標噴射量Ft/噴射特性係数+無効通電時間
しかし、燃料噴射弁の噴射特性は、噴射弁の個体差や時間の経時等により変化するので、学習制御により対応するのが好ましい。このため、本実施の形態では、燃料噴射特性を重み付け学習制御により学習する。図26は、本発明の実施の形態13により実行される燃料噴射特性の学習制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、噴射特性マップ150、実噴射量算出部152、FBゲイン算出部154及び学習制御部156を備えている。
噴射特性マップ150は、例えば目標燃料噴射量Ft、機関回転数Ne及び機関負荷KLからなる参照パラメータに基いて通電時間tを算出する多次元の学習マップであり、噴射特性マップ150の各格子点には、制御パラメータである通電時間tの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。実噴射量算出部152は、筒内圧センサ50の出力に基いて、実際の燃料噴射量(実噴射量)Frを算出するもので、実噴射量Frは、下記数31の式に示すように、前記実施の形態12で述べた筒内燃料質量を補正係数αで除算することにより得られる。
[数31]
実噴射量Fr=筒内燃料質量/α
FBゲイン算出部154は、目標燃料噴射量Ftと実噴射量Frとを比較して通電時間tの補正量を算出し、当該補正量に基いて通電時間tを補正する。具体的には、目標燃料噴射量Ftを基準として、実噴射量Frが多い場合には通電時間tを減少させ、実噴射量Frが少ない場合には通電時間tを増加させる。これにより、補正後の通電時間t′が算出され、当該通電時間t′に応じて燃料噴射弁26への通電が行われる。
一方、学習制御部156は、補正後の通電時間t′をパラメータ取得値zkとして、通電時間tの重み付け学習制御を実行し、噴射特性マップ150の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。なお、燃料噴射特性は、図25に示すように1次関数となるので、噴射特性マップ150の格子点は2個あればよい。
このように構成される本実施の形態によれば、燃料噴射特性の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも噴射特性の変化を効率よく学習し、燃料噴射制御の精度を向上させることができる。特に、本実施の形態では、筒内圧センサ50の出力に基いて実噴射量Frを算出し、この実噴射量Frに基いて学習を実行することができるので、実際の燃料噴射量が検出できなくても、既存のセンサを利用して学習制御を容易に行うことができる。なお、前記実施の形態13では、実噴射量算出部152が実噴射量算出手段の具体例を示し、学習制御部156が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
また、エンジンの温度が低い場合には、燃料が気化し難い分だけ燃料噴射特性にずれが生じるので、前記実施の形態では、図27に示す変形例の構成を採用してもよい。この変形例において、噴射特性マップ150′は、目標燃料噴射量Ft、機関回転数Ne、機関負荷KL及び水温からなる参照パラメータに基いて通電時間tを算出するように構成されている。これにより、エンジンの暖機状態の差異にも対応することができる。
実施の形態14.
次に、図28を参照して、本発明の実施の形態14について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、エアフローセンサの出力補正係数に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態14の特徴]
一般に、エアフローセンサ46の使用時には、下記数32の式により、センサ出力値Sを補正することにより最終的な検出空気量Soutを算出する。ここで、KFLCは、出力補正用の補正係数であり、図28に示す補正マップ160に記憶されている。図28は、本発明の実施の形態14において、エアフローセンサ用補正係数の学習制御を示す制御ブロック図である。
[数32]
検出空気量Sout=センサ出力値S*KFLC
補正マップ160は、例えば機関回転数Neと外気温度TAとからなる参照パラメータに基いて補正係数KFLCを算出する多次元の学習マップであり、補正マップ160の各格子点には、制御パラメータである補正係数KFLCの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。また、本実施の形態のシステムは、補正マップ160に加えて、学習基準算出部162と学習制御部164とを備えている。学習基準算出部162は、空燃比センサ54の出力と燃料噴射量とに基いて、下記数33及び数34の式により補正係数の学習基準値KFLC′を算出する。下記の式において、燃料噴射量としては、前記実施の形態13で算出した実燃料噴射量Fr(数31式)を用いるのが好ましい。
[数33]
KFLC′=空燃比検出空気量/センサ出力値S
[数34]
空燃比検出量=空燃比センサ出力*燃料噴射量
学習制御部164は、前記数33の式により算出した補正係数の学習基準値KFLC′をパラメータ取得値zkとして、補正係数KFLCの重み付け学習制御を実行し、補正マップ160の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。なお、空燃比センサ54は応答遅れが大きいので、上記学習制御は、エンジンの定常運転時にのみ実行するものとし、過渡運転時には禁止するのが好ましい。
このように構成される本実施の形態によれば、エアフローセンサ用補正係数の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも補正係数KFLCを効率よく学習し、吸入空気量の算出精度を向上させることができる。なお、前記実施の形態14では、学習基準算出部162が学習基準算出手段の具体例を示し、学習制御部164が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
実施の形態15.
次に、図29を参照して、本発明の実施の形態15について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、壁面燃料付着量の算出制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態15の特徴]
燃料噴射制御の一例として、噴射燃料が吸気ポート等の壁面に付着した量である壁面燃料付着量qmwを算出し、この算出結果に基いて燃料噴射量を補正するものがある。この場合、壁面燃料付着量qmwの算出制御では、壁面燃料付着量算出マップ(QMWマップ)から壁面燃料付着量qmwする。本実施の形態では、このQMWマップに対して、重み付け学習制御を適用する。
図29は、本発明の実施の形態15において、壁面燃料付着量の学習制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、QMWマップ170、学習基準算出部172及び学習制御部174を備えている。QMWマップ170は、例えば機関回転数Ne、機関負荷KL及びVVT等によるバルブタイミング制御量を含む参照パラメータに基いて、壁面燃料付着量qmwを算出する多次元の学習マップであり、QMWマップ170の各格子点には、制御パラメータである壁面燃料付着量qmwの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。QMWマップ170により算出された壁面燃料付着量qmwは、燃料噴射制御において、燃料の目標噴射量に反映される。
学習基準算出部172は、QMWマップ170により算出した壁面燃料付着量qmwと、空燃比センサ54の出力と、エンジンの加速及び減速を判定するパラメータとに基いて、下記数35の式により壁面燃料付着量の学習基準値qmw′を算出する。なお、加減速を判定するパラメータとしては、例えばスロットルセンサの出力、機関回転数等がある。
[数35]
qmw′=qmw+調整量Δ
上記式において、壁面燃料付着量の学習基準値qmw′は、直接的な検出及び算出が困難であるため、QMWマップ170による算出値qmwに対して調整量Δを加算して求める。調整量Δは、壁面燃料付着量qmwを少しずつ変化させる微小量として設定されるもので、具体例を挙げると、次の処理により決定される。
(1)加速時に空燃比がリーンとなった場合、または、減速時に空燃比がリッチとなった場合には、壁面燃料付着量が不足しているものと判断し、調整量Δを所定のプラス値に設定する。
(2)加速時に空燃比がリッチとなった場合、または、減速時に空燃比がリーンとなった場合には、壁面燃料付着量が過剰であるものと判断し、調整量Δを所定のマイナス値に設定する。
学習制御部174は、前記数35の式により算出した壁面燃料付着量の学習基準値qmw′をパラメータ取得値zkとして、壁面燃料付着量qmwの重み付け学習制御を実行し、QMWマップ170の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。
このように構成される本実施の形態によれば、壁面燃料付着量の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも壁面燃料付着量qmwを効率よく学習し、燃料噴射制御の精度を向上させることができる。なお、前記実施の形態15では、学習基準算出部172が学習基準算出手段の具体例を示し、学習制御部174が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
実施の形態16.
次に、図30を参照して、本発明の実施の形態16について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、バルブタイミングの学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態16の特徴]
図30は、本発明の実施の形態16において、バルブタイミングの学習制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、VTマップ180、学習基準算出部(最適VT探索部)182及び学習制御部184を備えている。VTマップ180は、例えば機関回転数Ne及び機関負荷KLからなる参照パラメータに基いてバルブタイミングVTを算出する多次元の学習マップであり、VTマップ180の各格子点には、制御パラメータであるバルブタイミングVTの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。エンジンの運転中には、前記各参照パラメータに基いてVTマップ180によりバルブタイミングVTが算出され、この算出値は、可変動弁機構34(36)のアクチュエータに出力される。なお、本実施の形態の制御対象としては、吸気バルブ30が好ましいが、排気バルブ32でもよい。
最適VT探索部182は、例えば燃費が最良となる最適なバルブタイミングVTを探索し、その探索結果をバルブタイミングの学習基準値VT′として出力する。なお、最適なバルブタイミングの探索方法としては、一般的なものが用いられる。一例を挙げると、例えば前述のように筒内圧50の出力に基いて算出される筒内燃料質量、機関回転数等の情報に基いて単位時間当たりの燃料消費率を算出し、この算出値を監視しながらバルブタイミングVTを少しずつ変化させることにより、最適なバルブタイミングVTを見つけ出すことができる。
一方、学習制御部184は、バルブタイミングの学習基準値VT′をパラメータ取得値zkとして、バルブタイミングVTの重み付け学習制御を実行し、VTマップ180の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、バルブタイミングの学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でもバルブタイミングを効率よく学習し、動弁系の制御性を向上させることができる。なお、前記実施の形態16では、最適VT探索部182が学習基準算出手段の具体例を示し、学習制御部184が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
また、実施の形態16において、最適なバルブタイミングの探索処理中には、実現されているバルブタイミングが最適値ではない可能性がある。このため、前記探索処理中には、重み付け学習制御により使用する重みwkijを探索処理の完了後と比較して小さくする構成としてもよい。また、探索処理中に重みwkijを小さくする代わりに、前述の信頼性マップを併用する構成としてもよい。具体的には、バルブタイミングの探索処理中に学習制御を行う場合には、信頼性マップ上における基準位置(学習基準値VT′の位置)において、信頼性取得値を小さな値に設定すればよい。上記構成によれば、バルブタイミングが最適化されているか否かの信頼性に応じて、学習値の更新量を適切に調整することができ、学習精度を向上させることができる。
実施の形態17.
次に、図31及び図32を参照して、本発明の実施の形態17について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、失火限界点火時期の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態17の特徴]
図31は、本発明の実施の形態17による点火時期制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、点火時期遅角制御部190、失火限界マップ192、Max選択部194、学習制御部196を備えている。点火時期遅角制御部190は、例えばノック制御、変速対応制御、触媒暖機制御等のように、点火時期を遅角する一般的な制御を実行するもので、これらの制御により遅角して設定された目標点火時期Adv1を出力する。
失火限界マップ192は、複数の参照パラメータに基いて失火限界点火時期Adv2を算出する多次元の学習マップであり、失火限界マップ192の各格子点には、制御パラメータである失火限界点火時期Adv2の学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。失火限界点火時期とは、点火時期遅角制御により失火の発生なしに実現可能な最遅角側の点火時期として定義される。また、上記参照パラメータとしては、例えば機関回転数Ne、機関負荷KL、水温、バルブタイミングの制御量、EGRの制御量等が挙げられる。Max選択部192は、点火時期遅角制御により遅角された目標点火時期Adv1と、失火限界マップ192により算出された失火限界点火時期Adv2のうち、大きい方の点火時期(より進角側の点火時期)を選択し、選択した点火時期を出力する。
一方、学習制御部196は、図32に示す処理により、失火限界点火時期Adv2の重み付け学習制御を実行する。図32は、本発明の実施の形態17において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンでは、まず、ステップ700において、現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する。具体的に述べると、ステップ700では、まず、筒内圧センサ60の出力に基いて前述のCPS検出発熱量Qを算出し、この算出値が正常燃焼時の下限値に対応する所定の判定値以下となった場合に、失火が発生したことを検出する。そして、単位時間当たりの失火回数をカウントし、このカウント値が失火限界に対応する所定の判定値を超えた場合に、現在の点火時期が失火限界点火時期に達していると判定する。
ステップ700の判定が成立した場合には、ステップ702に移行し、現在の点火時期をパラメータ取得値zkとして、失火限界点火時期Adv2の重み付け学習制御を実行し、失火限界マップ192の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、失火限界点火時期の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができ、失火限界を効率よく学習することができる。そして、点火時期Adv1,Adv2のうち遅角側の方を選択することにより、失火を回避しつつ、点火時期を遅角要求に応じて最大限に遅角し、点火時期の制御性を向上させることができる。また、重み付け学習制御は、失火限界に達した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作により失火限界マップ192の全格子点で失火限界点火時期を効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
なお、前記実施の形態17では、図32中のステップ700が失火限界判定手段の具体例を示し、ステップ702が失火限界学習手段の具体例を示し、Max選択部194が選択手段の具体例を示している。一方、実施の形態17では、常に失火限界付近で運転が行われるわけではないので、失火限界付近以外の以外で誤学習が行われるのを避けるために、失火領域マップを用いる構成としてもよい。この場合、失火領域マップは、前記実施の形態11で述べたTK領域マップ138と同様の構成及び機能を有し、失火領域マップの各格子点には、失火領域判定値の学習値がそれぞれ記憶されている。そして、失火限界を検出した場合には、当該失火限界の検出位置を基準位置として、失火領域マップ上の同位置に失火領域判定値を設定し、更に、失火領域マップの重み付け学習制御を実行すればよい。これにより、失火限界領域の境界を明確化することができる。
実施の形態18.
次に、図33を参照して、本発明の実施の形態18について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、燃料増量補正値の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態18の特徴]
図33は、本発明の実施の形態18において、燃料増量補正値の学習制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、燃料増量マップ200、学習基準算出部(最適増量値探索部)202及び学習制御部204を備えている。燃料増量マップ200は、例えば機関回転数Ne及び機関負荷KLからなる参照パラメータに基いて燃料増量値Fdを算出する多次元の学習マップであり、燃料増量マップ200の各格子点には、制御パラメータである燃料増量値Fdの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。燃料増量値Fdは、燃料噴射制御において、加速要求等に応じて目標噴射量を増量補正する補正値(パワー増量値)である。最適増量値探索部202は、例えば筒内圧センサ50の出力に基いて、エンジントルクが最大化するような燃料増量の最適値を探索し、その探索結果を燃料増量値の学習基準値Fd′として出力する。
一方、学習制御部204は、燃料増量値の学習基準値Fd′をパラメータ取得値zkとして、燃料増量値Fdの重み付け学習制御を実行し、燃料増量マップ200の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、燃料増量値の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも燃料増量値を効率よく学習し、エンジンの運転性能を向上させることができる。なお、前記実施の形態18では、学習制御部204が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
実施の形態19.
次に、図34を参照して、本発明の実施の形態19について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、ISC(Idle Speed Control)の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態19の特徴]
本実施の形態では、アイドル運転時に機関回転数等に基いて吸気通路の開度(ISC開度)をフィードバック制御するアイドル運転制御と、アイドル運転制御により補正されたISC開度を学習する学習制御とを実行する。吸気通路の開度とは、具体的に述べると、ISCバルブまたはスロットルバルブ20の開度を意味している。図34は、本発明の実施の形態19において、ISCの学習制御を示す制御ブロック図である。本実施の形態のシステムは、ISCマップ210、ISCフィードバック制御部212及び学習制御部214を備えている。
ISCマップ210は、機関回転数Neに基いてISC開度をISC開度VOを算出する学習マップであり、ISCマップ210の各格子点には、制御パラメータであるISC開度VOの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。アイドル運転中には、機関回転数Neに基いてISCマップ210によりISC開度VOが算出され、この算出値は、ISCバルブまたはスロットルバルブ20の駆動部に出力される。また、ISCフィードバック制御部212は、アイドル運転時の機関回転数Neが目標回転数と一致するように、ISC開度VOを補正(フィードバック制御)する。これにより補正された補正後のISC開度VO′は、学習制御部214に入力される。
学習制御部214は、補正後のISC開度VO′パラメータ取得値zkとして、ISC開度VOの重み付け学習制御を実行し、ISCマップ210の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、ISC開度の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でもISC開度を効率よく学習することができ、アイドル運転の安定性を向上させることができる。
なお、前記実施の形態19では、学習制御部214が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。また、実施の形態19では、機関回転数Neが目標回転数から乖離するほど、学習値の信頼度が低下するものと判断して、重みwkijを小さくする構成としてもよい。この構成は、例えば機関回転数Neと目標回転数との差分が大きいほど減少する係数を重みwkijに乗算することにより実現される。この構成によれば、機関回転数Neが目標回転数に近い値に制御され、アイドル運転制御の精度が高いときほど、全ての格子点において学習値の更新量を増加させることができる。また、機関回転数Neが目標回転数から乖離し、アイドル運転制御の精度が低い場合には、学習を抑制することができる。従って、ISCマップ210全体の学習精度を高めることができる。
実施の形態20.
次に、図35及び図36を参照して、本発明の実施の形態20について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、EGRの学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態20の特徴]
図35は、本発明の実施の形態20によるEGRの学習制御を示す制御ブロック図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、EGR制御部220、失火限界EGRマップ222、Max選択部224、学習制御部226を備えている。EGR制御部220は、公知のEGR制御を実行するもので、当該EGR制御により算出した要求EGR量E1を出力する。なお、本実施の形態において、「EGR量」とは、筒内に流入するEGRガスの量に対応する任意の制御パラメータを意味するものであり、具体的には、EGR弁42の開度、EGR通路40を流れるEGRガス量、及び吸入空気量に対するEGRガス量の比率であるEGR率のうち、何れのパラメータであってもよい。
失火限界EGRマップ222は、複数の参照パラメータに基いて失火限界EGR量E2を算出する多次元の学習マップであり、失火限界EGRマップ222の各格子点には、制御パラメータである失火限界EGR量E2の学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。失火限界EGR量とは、EGR制御により失火の発生なしに実現可能な最大のEGR量として定義される。また、上記参照パラメータとしては、例えば機関回転数Ne、機関負荷KL、水温、バルブタイミングの制御量等が挙げられる。Max選択部224は、EGR制御により算出された要求EGR量E1と、失火限界EGRマップ222により算出された失火限界EGR量E2のうち大きい方のEGR量を選択し、選択したEGR量を出力するものである。EGR制御は、このEGR量の出力値に基いて実行される。
一方、学習制御部226は、図36に示す処理により、失火限界EGR量E2の重み付け学習制御を実行する。図36は、本発明の実施の形態20において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンでは、まず、ステップ800において、現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する。この判定処理は、前記実施の形態17(図32)と同様の処理である。
ステップ800の判定が成立した場合には、ステップ802に移行し、現在のEGR量をパラメータ取得値zkとして、失火限界EGR量E2の重み付け学習制御を実行し、失火限界EGRマップ222の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、EGRの学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができ、失火限界EGR量を効率よく学習することができる。そして、EGR量E1,E2の大きい方を選択することにより、失火を回避しつつ、EGR量を要求に応じて最大限に確保し、EGR制御の制御性を向上させることができる。また、重み付け学習制御は、失火限界に達した場合のみ実行されるが、1回の学習動作により失火限界EGRマップ222の全格子点で失火限界EGR量を効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。
なお、前記実施の形態20では、図36中のステップ800が失火限界判定手段の具体例を示し、ステップ802が失火限界EGR学習手段の具体例を示し、Max選択部224が選択手段の具体例を示している。また、実施の形態20では、常に失火限界付近で運転が行われるわけではないので、失火限界付近以外の以外で誤学習が行われるのを避けるために、前記実施の形態17で述べた失火領域マップを採用し、失火限界領域の境界を明確化する構成としてもよい。
実施の形態21.
次に、図37を参照して、本発明の実施の形態21について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、空燃比センサの出力補正制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態21の特徴]
本実施の形態において、空燃比センサの出力補正制御は、酸素濃度センサ56の出力に基いて空燃比センサ54の出力値Asを補正し、ストイキ雰囲気下での出力値Asが所定の基準出力値と一致するように制御する。図37は、本発明の実施の形態21において、空燃比センサの出力補正制御を示す制御ブロック図である。本実施の形態のシステムは、補正マップ230、学習基準算出部232及び学習制御部234を備えている。
補正マップ230は、少なくとも機関回転数Neと機関負荷KLを含む複数の参照パラメータに基いて出力補正用の補正係数γを算出する多次元の学習マップであり、補正マップ230の各格子点には、制御パラメータである補正係数γの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。エンジンの運転中には、前記各参照パラメータに基いて補正マップ230により補正係数γが算出される。これにより、空燃比センサの出力値Asは、下記数36の式に示すように、補正係数γに基いて補正され、補正後の空燃比出力値(排気空燃比の最終出力値)As′となって出力される。
[数36]
As′=As*γ
学習基準算出部232は、下記数37の式に示すように、基準出力値Arefに基いて補正係数の学習基準値γ′を算出し、この算出値を学習制御部234に出力する。ここで、基準出力値Arefとは、酸素濃度センサ56の出力が理論空燃比に対応する出力値となったときの空燃比センサの出力値Asとして定義される。
[数37]
γ′=理論空燃比/基準出力値Aref
詳しく述べると、酸素濃度センサ56の出力はリッチ側で1となり、リーン側で0となる特性を有するが、理論空燃比(ストイキ)の近傍では、0〜1間の中間値(例えば0.5)となる。以下の説明では、この中間値が取り得る範囲(0〜1)をストイキ帯と表記する。学習基準算出部232は、酸素濃度センサ56の出力値が前記ストイキ帯に含まれるときに、真の空燃比が理論空燃比と等しい状態であるとみなして、このときの空燃比センサの出力値Asを基準出力値Arefとして取得する。そして、前記数37の式により補正係数の学習基準値γ′を算出する。
一方、学習制御部234は、補正係数の学習基準値γ′をパラメータ取得値zkとして、補正係数γの重み付け学習制御を実行し、補正マップ230の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。なお、空燃比センサ54及び酸素濃度センサ56の出力は、応答遅れが大きいので、上記学習制御は、エンジンの定常運転時にのみ実行するものとし、過渡運転時には禁止するのが好ましい。
このように構成される本実施の形態によれば、空燃比センサの出力補正制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができ、排気空燃比の検出精度を向上させることができる。また、本実施の形態では、理論空燃比において、酸素濃度センサ56の出力値がストイキ帯に含まれることを利用して、ストイキでの基準出力値Arefを取得することができる。これにより、補正の基準を容易に得ることができる。また、重み付け学習制御は、酸素濃度センサ56によりストイキを検出した場合にのみ実行されるが、1回の学習動作により補正マップ230の全格子点で補正係数γを効率よく学習することができるので、学習機会が比較的少なくても、学習を十分に行うことができる。なお、前記実施の形態21では、学習基準算出部232が学習基準算出手段の具体例を示し、学習制御部234が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
また、前記実施の形態21では、重み付け学習制御を実行するときに、酸素濃度センサの出力値がストイキ帯の中央値(0.5)から乖離するほど、ストイキ状態が実現されているかどうかの信頼性が低いと判断して、重みwkijを小さくする構成としてもよい。この構成は、例えば酸素濃度センサの出力値と0.5との差分が大きいほど減少する係数を重みwkijに乗算することにより実現される。この構成によれば、酸素濃度センサの出力値がストイキ帯の中央値に近付き、ストイキ状態の信頼性が高いときほど、全ての格子点において学習値の更新量を増加させることができる。また、酸素濃度センサの出力値が前記中央値から乖離し、ストイキ状態の信頼性が低い場合には、学習を抑制することができる。従って、補正マップ230全体の学習精度を高めることができる。
実施の形態22.
次に、図38を参照して、本発明の実施の形態22について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1で述べた重み付け学習制御を、始動時噴射量の学習制御に適用したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
[実施の形態22の特徴]
図38は、本発明の実施の形態22による始動時噴射量TAUSTの学習制御を示す制御ブロック図である。本実施の形態のシステムは、始動時噴射量マップ240、学習基準算出部242及び学習制御部244を備えている。始動時噴射量マップ240は、少なくとも水温、外気温度及びソーク時間(エンジン停止時から次に始動するまでの時間)を含む複数の参照パラメータに基いて始動時の燃料噴射量TAUSTを算出する多次元の学習マップであり、始動時噴射量マップ240の各格子点には、制御パラメータである始動時噴射量TAUSTの学習値Zij(k)がそれぞれ記憶されている。エンジンの始動時には、前記各参照パラメータに基いて始動時噴射量マップ240により始動時噴射量TAUSTが算出され、当該算出値に対応する量の燃料が燃料噴射弁26から噴射される。
学習基準算出部242は、始動時噴射量マップ240により算出された始動時噴射量TAUSTと、目標燃焼燃料量と、CPS検出燃料量とに基いて、始動時噴射量の学習基準値TAUST′を算出する。ここで、目標燃焼燃料量は、例えば始動時の燃料噴射制御により設定されるもので、CPS検出燃料量は、筒内圧センサ50の出力等に基いて算出される。なお、CPS検出燃料量は、前記実施の形態12(数24の式)で用いた筒内燃料質量に相当している。学習基準算出部242は、目標燃焼燃料量とCPS検出燃料量との差分に基いて始動時噴射量TAUSTを補正し、学習基準値TAUST′を取得する。
一方、学習制御部244は、始動時噴射量の学習基準値TAUST′をパラメータ取得値zkとして、始動時噴射量TAUSTの重み付け学習制御を実行し、始動時噴射量マップ240の各格子点に記憶された学習値Zij(k)を更新する。このように構成される本実施の形態によれば、始動時噴射量の学習制御において、前記実施の形態1で述べた効果を得ることができる。従って、少ない学習回数でも始動時噴射量TAUSTを効率よく学習し、エンジンの始動性を向上させることができる。なお、前記実施の形態22では、学習基準算出部242が学習基準算出手段の具体例を示し、学習制御部244が重み設定手段及び重み付け学習手段の具体例を示している。
前記実施の形態1乃至22では、1つの車両に搭載されたECU60により重み付け学習制御を実行し、各種の学習値を保有する場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、複数車両のECU間でデータ通信等により学習値を共有する構成としてもよい。これにより、学習機会が少ない運転状態(冷間時等)の取得データ数を他車との共有により増加させ、学習の効率や精度を向上させることができる。また、自車の学習値を、他車の学習値の平均と比較することにより、誤学習を検出することができる。なお、他車の学習値は、例えば車載のネットワークを利用して取得したり、サービス工場に蓄積した他車の学習値を入庫時に取得すればよい。
また、前記実施の形態1乃至22では、それぞれの構成を個別に説明したが、本発明はこれに限らず、実施の形態1乃至22のうち組合わせ可能な任意の2つ以上の構成を組合わせて1つのシステムを構成してもよい。具体例を挙げれば、実施の形態7乃至22で説明した重み付け制御には、重み手段としてガウス関数、一次関数及び三角関数の何れを適用してもよい。また、実施の形態7乃至22の何れかにおいて、学習マップに設けた複数の領域毎に重みの減少特性を切換える構成としてもよく、学習値を更新する範囲を有効範囲内に限定する構成としてもよい。
10 エンジン(内燃機関)
14 燃焼室
16 クランク軸
18 吸気通路
20 スロットルバルブ
22 排気通路
24 触媒
26 燃料噴射弁
28 点火プラグ
30 吸気バルブ
32 排気バルブ
34,36 可変動弁機構
40 EGR通路
42 EGR弁
44 クランク角センサ
46 エアフローセンサ
48 水温センサ
50 筒内圧センサ
52 吸気温度センサ
54 空燃比センサ
56 酸素濃度センサ
60 ECU
100,110,120,130 MBTマップ(学習マップ)
102 燃焼重心算出部(燃焼重心算出手段)
104 燃焼重心目標設定部
106,154 FBゲイン算出部(点火時期補正手段)
108,112,122,132,144,144′,156,164,174,184,196,204,214,226,234,244 学習制御部(重み設定手段及び重み付け学習手段)
124,134 TKマップ(学習マップ)
126,136 Min選択部(選択手段)
138 TK領域マップ(学習マップ)
140 空燃比算出部(筒内空燃比算出手段)
142,142′,160,230 補正マップ(学習マップ)
150,150′ 噴射特性マップ(学習マップ)
152 実噴射量算出部(実噴射量算出手段)
162,172,182,202,232,242 学習基準算出部(学習基準算出手段)
170 QMWマップ(学習マップ)
180 VTマップ(学習マップ)
192 失火限界マップ(学習マップ)
194,224 Max選択部(選択手段)
200 燃料増量マップ(学習マップ)
210 ISCマップ(学習マップ)
222 失火限界EGRマップ(学習マップ)
240 始動時噴射量マップ(学習マップ)

Claims (22)

  1. 燃機関の制御に用いる制御パラメータの学習値を1つ以上の参照パラメータにより参照するための学習マップであって、前記参照パラメータにより定義された座標系と当該座標系上に配置された複数の格子点とを有し、該各格子点に前記学習値がそれぞれ更新可能に記憶された学習マップと、
    前記制御パラメータが取得されたときに、前記学習マップの各格子点の重みをそれぞれ設定する手段であって、前記制御パラメータが取得されたときの前記参照パラメータの値に基いて前記学習マップの座標系上で定められる位置である基準位置から格子点までの距離が大きいほど、当該格子点の重みを減少させる重み設定手段と、
    前記制御パラメータが取得される毎に、全ての格子点において、前記重みが大きいほど前記制御パラメータの取得値が前記学習値に大きく反映され、かつ、前記重みが零の場合には前記制御パラメータの取得値が前記学習値に反映されないように個々の格子点の学習値を更新する重み付け学習制御を実行する重み付け学習手段と、
    前記学習マップと同様に構成された座標系及び複数の格子点を有し、前記学習値の信頼性を表す指標である信頼性評価値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶された信頼性マップと、
    前記信頼性マップの各格子点の重みである信頼性重みを、前記基準位置から格子点までの距離が大きいほど減少させる手段であって、当該信頼性重みの減少特性が前記学習マップの重みの減少特性よりも急峻に設定された信頼性マップ重み設定手段と、
    前記制御パラメータが取得される毎に、当該取得値の信頼性に対応する値をもつ信頼性取得値を前記基準位置に設定し、かつ、前記信頼性マップの全ての格子点において、前記信頼性重みが大きいほど前記信頼性取得値が前記信頼性評価値に大きく反映されるように個々の格子点の信頼性評価値を更新する信頼性マップ学習手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記学習マップは互いに異なる複数の領域を備え、
    前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて減少する前記重みの減少特性を前記複数の領域毎に切換える構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記基準位置からの距離が所定の有効範囲よりも大きい格子点において、前記学習値の更新を禁止する構成としてなる請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが正規分布曲線状に減少するガウス関数である請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが比例的に減少する一次関数である請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記重み設定手段は、前記基準位置からの距離に応じて前記重みが正弦波状に減少する三角関数である請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 燃機関のトルクが最大となる点火時期であるMBTの学習値を1つ以上の参照パラメータにより参照するための学習マップであって、前記参照パラメータにより定義された座標系と当該座標系上に配置された複数の格子点とを有し、該各格子点に前記学習値がそれぞれ更新可能に記憶されたMBTマップと、
    筒内圧に基いて燃焼重心を算出する燃焼重心算出手段と、
    前記燃焼重心が所定の燃焼重心目標値と一致するように、前記MBTマップにより算出した点火時期を補正する点火時期補正手段と、
    前記点火時期補正手段による補正後の点火時期に基いて、前記MBTマップの各格子点の重みをそれぞれ設定する手段であって、前記点火時期が算出されたときの前記参照パラメータの値に基いて前記MBTマップの座標系上で定められる位置である基準位置から格子点までの距離が大きいほど、当該格子点の重みを減少させる重み設定手段と、
    前記燃焼重心が前記燃焼重心目標値と一致した場合に、全ての格子点において、前記重みが大きいほど前記補正後の点火時期が前記MBTの学習値に大きく反映され、かつ、前記重みが零の場合には前記補正後の点火時期が前記MBTの学習値に反映されないように個々の格子点の学習値を更新する重み付け学習制御を実行する重み付け学習手段と、
    前記MBTマップと同様に構成された座標系及び複数の格子点を有する学習マップであって、MBTの学習履歴が反映される信頼性評価値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶された信頼性マップと、
    前記MBTマップを更新するときに、前記基準位置に基いて前記重み付け学習制御により前記信頼性評価値を更新する信頼性マップ学習手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  8. 内燃機関の過渡運転時における前記学習値の更新量を、定常運転時と比較して抑制する構成としてなる請求項に記載の内燃機関の制御装置。
  9. 前記燃焼重心と前記燃焼重心目標値との差分及び前記補正後の点火時期に基いてMBTを推定するMBT推定手段と、
    前記重み付け学習手段に代えて用いられる手段であって、前記燃焼重心が前記燃焼重心目標値から乖離している場合でも、前記重み付け学習制御により前記MBTの学習値を更新し、かつ、前記燃焼重心と前記燃焼重心目標値との差分が大きいほど前記学習値に対する前記MBTの推定値の反映度を低下させるMBT常時学習手段と、
    を備えてなる請求項またはに記載の内燃機関の制御装置。
  10. 前記MBTマップと同様に構成された座標系及び複数の格子点を有する学習マップであって、トレースノック領域における点火時期であるTK点火時期の学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶されたTKマップと、
    MBTが実現される前にトレースノックが発生したときの点火時期を取得し、当該取得値に基いて前記TK点火時期の学習値を前記重み付け学習制御により更新するTK点火時期学習手段と、
    前記MBTマップにより算出された学習値と前記TKマップにより算出された学習値のうち、より進角側の点火時期を選択する選択手段と、
    を備えてなる請求項乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  11. 前記TKマップと同様に構成された座標系及び複数の格子点を有する学習マップであって、前記TKマップの個々の格子点が前記トレースノック領域に属するか否かを示す学習値が前記各格子点にそれぞれ更新可能に記憶されたTK領域マップと、
    前記TK点火時期を取得したときに、前記TK領域マップの学習値を前記重み付け学習制御により更新するTK領域学習手段と、
    を備えてなる請求項10に記載の内燃機関の制御装置。
  12. 少なくとも筒内圧センサの出力に基いて筒内空燃比を算出する筒内空燃比算出手段を備え、
    前記学習マップは、空燃比センサの出力に基いて前記筒内空燃比を補正する補正係数の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された補正マップであり
    前記重み設定手段は、前記補正係数により補正された補正後の筒内圧空燃比と前記空燃比センサの出力とに基いて算出された前記補正係数の算出値を前記制御パラメータの取得値として、前記補正マップの各格子点における重みを設定し、
    前記重み付け学習手段は、前記補正係数の算出値と前記各格子点の重みとに基いて、前記各格子点における前記補正係数の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  13. 前記学習マップは、燃料噴射弁の目標噴射量と通電時間との関係が前記通電時間の学習値として前記各格子点にそれぞれ記憶された噴射特性マップであり、
    少なくとも筒内圧センサの出力に基いて実噴射量を算出する実噴射量算出手段を備え、
    前記重み設定手段は、前記目標噴射量と前記実噴射量とに基いて補正された補正後の通電時間を前記制御パラメータの取得値として、前記噴射特性マップの各格子点における重みを設定し、
    前記重み付け学習手段は、前記補正後の通電時間と前記各格子の重みとに基いて、前記各格子点における前記通電時間の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  14. 前記学習マップは、エアフローセンサの出力を補正する補正係数の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された補正マップであり、
    空燃比センサの出力と燃料噴射量とに基いて前記補正係数の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
    前記補正係数の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記補正係数の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  15. 前記学習マップは、吸気通路の壁面に付着した燃料の量である壁面燃料付着量の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたQMWマップであり、
    少なくとも空燃比センサの出力に基いて前記壁面燃料付着量の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
    前記壁面燃料付着量の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記壁面燃料付着量の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  16. 前記学習マップは、内燃機関の燃費を最良とするバルブタイミングの学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたVTマップであり、
    少なくとも筒内圧センサの出力に基いて前記バルブタイミングの学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
    前記バルブタイミングの学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記バルブタイミングの学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  17. 前記学習マップは、点火時期遅角制御により失火の発生なしに実現可能な最遅角側の点火時期である失火限界点火時期の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された失火限界マップであり、
    現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する失火限界判定手段と、
    前記失火限界と判定されたときの点火時期を取得し、当該取得値に基いて前記失火限界点火時期の学習値を前記重み付け学習制御により更新する失火限界学習手段と、
    点火時期遅角制御により遅角された目標点火時期と前記失火限界マップにより算出された学習値のうち、より進角側の点火時期を選択する選択手段と、
    を備えてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  18. 前記学習マップは、燃料噴射量を増量する燃料増量値の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された燃料増量マップであり、
    前記重み付け学習制御により前記燃料増量値の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  19. 前記学習マップは、アイドル運転制御により補正された吸気通路の開度の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶されたISCマップであり、
    前記重み付け学習制御により前記吸気通路の開度の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  20. 前記学習マップは、EGR制御により失火の発生なしに実現可能な最大のEGR量である失火限界EGR量の学習値が前記各格子点にそれぞれ記憶された失火限界EGRマップであり、
    現在の点火時期が失火限界であるか否かを判定する失火限界判定手段と、
    前記失火限界と判定されたときのEGR量を取得し、当該取得値に基いて前記失火限界EGR量の学習値を前記重み付け学習制御により更新する失火限界EGR学習手段と、
    EGR制御により算出された要求EGR量と前記失火限界EGRマップにより算出された学習値のうち、大きい方のEGR量を選択する選択手段と、
    を備えてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  21. 前記学習マップは、空燃比センサの出力を補正する補正係数の学習値がそれぞれ記憶された補正マップであり、
    酸素濃度センサの出力が理論空燃比に対応する出力値となったときの前記空燃比センサの出力値を基準出力値として取得し、当該基準出力値に基いて前記補正係数の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
    前記補正係数の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記補正係数の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  22. 前記学習マップは、内燃機関の始動時に噴射される燃料の始動時噴射量の学習値がそれぞれ記憶された始動時噴射量マップであり、
    少なくとも筒内圧センサの出力に基いて前記始動時噴射量の学習基準値を算出する学習基準算出手段を備え、
    前記始動時噴射量の学習基準値を前記制御パラメータの取得値として、前記重み付け学習制御を実行することにより前記始動時噴射量の学習値を更新する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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