JP5857894B2 - オーステナイト系耐熱合金 - Google Patents
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0.011×C≦B
を満たす必要がある。上記の条件を満たすことで、共晶炭化物が安定化し、さらに高温使用中に二次析出する炭化物が微細化して、クリープ破断強度が向上する。なお、上記の式中の元素記号はその元素の含有量(質量%)を表す。
(d)従来、一般的には、MoとWは同等の作用をすると考えられてきた。しかしながら、4〜10%のW、20%以上28%未満のCr、40%を超えて60%以下のNiを含む合金において、Moが複合して含まれていると、長時間側でσ相が析出し、クリープ破断強度や延性、靱性が低下することがある。このため、上記の合金においては、Moの含有量を極力低くすることが望ましい。
第1グループ:V:1.5%以下、Zr:0.1%以下およびHf:1%以下
第2グループ:Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下、Y:0.5%以下、La:0.5%以下、Ce:0.5%以下、Nd:0.5%以下およびSc:0.5%以下
第3グループ:Ta:8%以下およびRe:8%以下。
Cは、共晶炭化物を形成して高温環境下で使用される際に必要となる引張強さおよびクリープ破断強度を向上させる、本発明において最も重要な元素である。共晶炭化物を晶出させて上記の効果を得るためには、0.15%を超える量のCを含有させる必要がある。しかし、Cを0.30%以上含有させると、共晶炭化物が過剰となり、延性、靱性などの機械的性質や溶接性を劣化させる。したがって、Cの含有量は0.15%超を超えて0.30%未満とした。Cの含有量は0.17%以上とすることが好ましく、0.20%を超えるようにすればさらに好ましい。また、Cの含有量は0.28%以下とすることが好ましい。
Siは、脱酸元素として添加され、また、耐酸化性、耐水蒸気酸化性等を高めるのに有効な元素である。さらに、Siは、鋳造材で湯流れを良好にする元素でもある。しかし、2%を超えてSiを含有させると、σ相等の金属間化合物相の生成を促進して、高温における組織安定性劣化に起因した靱性や延性の低下を生ずる。また、溶接性も低下する。よって、Siの含有量は2%以下とした。組織安定性を重視する場合のSiの含有量は1%以下にするのがよい。
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有するとともに、合金中に不純物として含有されるSを硫化物として固着して高温での延性を改善する。しかし、その含有量が3%を超えると、σ相等の金属間化合物相の析出を助長するので、組織安定性および高温強度などの機械的性質が劣化する。したがって、Mnの含有量は3%以下とした。Mnの含有量は2%以下とすることが好ましく、1.5%以下とすれば一層好ましい。
Pは、不純物として合金中に含まれ、溶接性や高温での延性を著しく低下させる。このため、Pの含有量を0.03%以下とした。Pの含有量は、極力低くすることがよく、好ましくは0.02%以下、さらに好ましくは0.015%以下である。
Sは、Pと同様に合金中に不純物として含有され、溶接性や高温での延性を著しく低下させる。このため、Sの含有量を0.01%以下とした。高温での延性低下を抑止し、できるだけ良好な熱間加工性を確保したい場合は、Sの含有量は0.005%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすればさらに好ましい。
Crは、耐酸化性、耐水蒸気酸化性、耐高温腐食性などの耐食性改善に優れた作用を発揮し、さらに本発明においては高温強度を担う共晶炭化物を形成する重要な元素である。しかし、その含有量が20%未満ではこれら所望の効果が得られない。一方、Crの含有量が28%以上になると、σ相の析出などによる組織の不安定化を招き、溶接性も劣化する。よって、Crの含有量は20%以上28%未満とした。Crの含有量は21%以上とすることが望ましく、22%以上とすればさらに望ましい。また、Crの含有量は26%以下とすることが望ましく、25%以下とすればさらに望ましい。
Niは、オーステナイト組織を安定にする元素であり、耐食性の確保にも重要な元素である。20%以上28%未満というCrを含む本発明のオーステナイト系耐熱合金において、上記の効果を得るには、40%を超えるNi含有量が必要である。一方、過剰なNiの含有は、コスト上昇を招き、かつクリープ破断強度の向上に寄与するLaves相の析出量も減少する。このため、上限を設けてNiの含有量を40%を超えて60%以下とした。Niの含有量は41%以上とすることが望ましく、42%以上とすればさらに望ましい。また、Niの含有量は58%以下とすることが望ましく、55%以下とすればさらに望ましい。
Wは、母相に固溶し固溶強化元素としてクリープ破断強度向上に寄与するとともに本発明では4%以上含有させることでFe2W型のLaves相やFe7W6型のμ相を析出させ析出強化によりクリープ破断強度を大幅に向上させる重要な元素である。しかし、Wを10%を超えて含有させても強度向上効果が飽和するとともに、組織安定性および高温での延性が劣化する。したがって、Wの含有量は4〜10%とした。Wの含有量は5%以上とすることが好ましく、6%を超えるようにすればさらに好ましい。また、Wの含有量は9.5%以下とすることが好ましく、9%以下とすればさらに好ましい。
Tiは、炭窒化物を形成しクリープ破断強度を向上させるため含有させる。さらに、TiをNbと複合して含むことでクリープ破断強度は一層向上する。しかし、Tiの含有量が0.01%未満では十分な効果が得られない。一方、1%を超えてTiを含有させると高温での延性や溶接性が低下する。よって、Tiの含有量は0.01〜1%とした。Tiの含有量は0.05%以上とすることが好ましく、0.1%以上とすればさらに好ましい。また、Tiの含有量は0.9%以下とすることが好ましく、0.8%以下とすればさらに好ましい。
Nbは、炭窒化物を形成しクリープ破断強度を向上させるため含有させる。さらに、NbをTiと複合して含むことでクリープ破断強度は一層向上する。しかし、Nbの含有量が0.01%未満では十分な効果が得られない。一方、2%を超えてNbを含有させると高温での延性や溶接性が低下する。よって、Nbの含有量は0.01〜2%とした。Nbの含有量は0.1%以上とすることが好ましい。また、Nbの含有量は1.8%以下とすることが好ましく、1.5%以下とすればさらに好ましい。
上述した範囲のTiとNbを、それらの含有量の和(Ti+Nb)で0.2%以上含むことでクリープ破断強度が一層向上する。しかしながら、(Ti+Nb)で2.5%を超える量のTiとNbを複合して含有させると高温での延性や溶接性が低下する。したがって、TiとNbの含有量の和であるTi+Nbを0.2〜2.5%とした。
Bは、共晶炭化物中および母相中に存在して、共晶炭化物を安定化するとともに、高温使用中に母相中に二次析出する炭化物(M23C6)を微細分散化させて、クリープ破断強度を一層向上させる重要な元素である。しかしながら、Bの含有量がC含有量の0.011倍未満つまり、(0.011×C)%未満であれば、ほとんどのBが共晶炭化物中に存在するため、600〜800℃程度と想定される高温使用中に母相において二次析出する炭化物が微細化せず、クリープ破断強度が向上しない。一方、Bの含有量が0.01%を超えると、高温での延性が低下し融点も低下する。よって、Bの含有量は(0.011×C)%以上で0.01%以下とした。Bの含有量は0.008%以下とすることが好ましく、0.006%以下とすればさらに好ましい。
従来、Moは、Wと同様の作用を有する元素、つまり、母相に固溶し、固溶強化元素としてクリープ破断強度向上に寄与する元素と考えられてきた。しかし、本発明のオーステナイト系耐熱合金において、0.5%以上のMoを含有させると、長時間側でσ相が析出してクリープ破断強度や延性、靱性が大幅に低下することが判明した。そのため、Moの含有量は0.5%未満とした。Moの含有量は0.2%未満とすることが好ましく、少なければ少ないほどよい。
Alは、脱酸剤として含有させる元素である。しかし、その含有量が0.5%を超えると、高温での延性が劣化する。したがって、Alの含有量を0.5%以下とした。Alの含有量は0.3%以下とすることが好ましく、0.2%以下とすれば一層好ましい。
Tiを必須の元素として含有する本発明のオーステナイト系耐熱合金においては、通常の溶解法では不可避的に含まれる元素であるNは、TiNの形成によるTiの消費を避けるために、その含有量は極力低減する必要がある。しかし、大気溶解の場合は極度に低減することは困難であるため、N含有量は0.1%未満とした。
Coは、Niと同様オーステナイト組織を安定にし、クリープ破断強度向上にも寄与する元素である。このため、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coを20%を超えて含有させても上記の効果が飽和し、さらに経済性も低下する。このため、Coを含有させる場合には、その含有量を20%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは15%である。
Vは、炭窒化物を形成して高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が1.5%を超えると、耐高温腐食性が劣化し、また脆化相析出に起因して延性、靱性が劣化する。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を1.5%以下とする。V含有量の上限は、好ましくは1%である。
Zrは、炭窒化物を形成して高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有する。したがって、Zrを含有させてもよい。しかしながら、Zrの含有量が0.1%を超えると、高温での延性が低下する。そのため、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とする。Zr含有量の上限は、好ましくは0.06%であり、より好ましくは0.05%である。
Hfは、炭窒化物を形成して高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有する。したがって、Hfを含有させてもよい。しかしながら、Hfの含有量が1%を超えると、加工性、溶接性を損なう。そのため、Hfを含有させる場合には、その含有量を1%以下とする。Hf含有量の上限は、好ましくは0.8%であり、より好ましくは0.5%である。
Mgは、高温での延性を阻害するSを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。このため、Mgを含有させてもよい。しかしながら、Mgの含有量が0.05%を超えると、清浄性が低下し、かえって高温延性が損なわれる。したがって、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Mg含有量の上限は、好ましくは0.02%であり、より好ましくは0.01%である。
Caは、高温での延性を阻害するSを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。このため、Caを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.05%を超えると、清浄性が低下し、かえって高温延性が損なわれる。したがって、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Ca含有量の上限は、好ましくは0.02%であり、より好ましくは0.01%である。
Yは、Sを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。また、Yには、合金表面のCr2O3保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用、さらには、粒界強化に寄与して、クリープ破断強度やクリープ破断延性を向上させる作用もある。このため、Yを含有させてもよい。しかしながら、Yの含有量が0.5%を超えると、酸化物などの介在物が多くなり加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Yを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Y含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、より好ましくは0.15%である。
Laは、Sを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。また、Laには、合金表面のCr2O3保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用、さらには、粒界強化に寄与して、クリープ破断強度やクリープ破断延性を向上させる作用もある。このため、Laを含有させてもよい。しかしながら、Laの含有量が0.5%を超えると、酸化物などの介在物が多くなり加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Laを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。La含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、より好ましくは0.15%である。
Ceも、Sを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。また、Ceには、合金表面のCr2O3保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用、さらには、粒界強化に寄与して、クリープ破断強度やクリープ破断延性を向上させる作用もある。このため、Ceを含有させてもよい。しかしながら、Ceの含有量が0.5%を超えると、酸化物などの介在物が多くなり加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Ceを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Ce含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、より好ましくは0.15%である。
Ndは、Sを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。また、Ndには、合金表面のCr2O3保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用、さらには、粒界強化に寄与して、クリープ破断強度やクリープ破断延性を向上させる作用もある。このため、Ndを含有させてもよい。しかしながら、Ndの含有量が0.5%を超えると、酸化物などの介在物が多くなり加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Ndを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Nd含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、より好ましくは0.15%である。
Scも、Sを硫化物として固着し、高温延性を改善する作用を有する。また、Scには、合金表面のCr2O3保護皮膜の密着性を改善し、特に、繰り返し酸化時の耐酸化性を改善する作用、さらには、粒界強化に寄与して、クリープ破断強度やクリープ破断延性を向上させる作用もある。このため、Scを含有させてもよい。しかしながら、Scの含有量が0.5%を超えると、酸化物などの介在物が多くなり加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Scを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Sc含有量の上限は、好ましくは0.3%であり、より好ましくは0.15%である。
Taは、固溶強化元素として、さらに、炭窒化物を形成して、高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有する。このため、Taを含有させてもよい。しかしながら、Taの含有量が8%を超えると、加工性や機械的性質が損なわれる。したがって、Taを含有させる場合には、その含有量を8%以下とする。Ta含有量の上限は、好ましくは7%であり、より好ましくは6%である。
Reは、固溶強化元素として、高温強度およびクリープ破断強度を向上させる作用を有する。このため、Reを含有させてもよい。しかしながら、Reの含有量が8%を超えると、加工性や機械的性質が損なわれる。したがって、Reを含有させる場合には、その含有量を8%以下とする。Re含有量の上限は、好ましくは7%であり、より好ましくは6%である。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.15%を超えて0.30%未満、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Cr:20%以上28%未満、Ni:40%を超えて60%以下、W:4〜10%、Ti:0.01〜1%、Nb:0.01〜2%で、かつTi+Nb:0.2〜2.5%、B:(0.011×C)%以上で0.01%以下、Mo:0.5%未満、Al:0.5%以下、N:0.1%未満およびFe:10.0%以上を含有し、残部が不純物からなることを特徴とするオーステナイト系耐熱合金。
- Feの一部に代えて、質量%で、Co:20%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金。
- Feの一部に代えて、質量%で、下記の第1グループから第3グループまでに示される元素から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱合金。
第1グループ:V:1.5%以下、Zr:0.1%以下およびHf:1%以下
第2グループ:Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下、Y:0.5%以下、La:0.5%以下、Ce:0.5%以下、Nd:0.5%以下およびSc:0.5%以下
第3グループ:Ta:8%以下およびRe:8%以下
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