JP5857389B2 - 交通指標推定装置及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
この場合、交通需要は、「前回の制御対象周期で捌け残った車両台数(待ち行列台数)と、今回の制御対象周期に新たに到着する車両台数の和」として記述される。また、交差点の処理容量は、「青1秒あたりの通過最大可能台数を表す飽和交通流率×青時間」として記述される。
また、車両感知器では車両が飽和流か否かを判断することが困難であるため、時系列の感知信号から飽和交通流率を直接的に計測することも困難である。
この情報は「プローブ情報」と呼ばれ、時系列に変化する車両の位置、進行方向、速度等の走行軌跡情報よりなる。
そこで、プローブ車両の通過に対応する感知信号(マッチング信号)を抽出し、その信号以後に検出された感知信号の数を用いて待ち行列に関する交通指標を推定することにより、その交通指標の推定を正確に行う交通指標推定装置に関する発明が、既に特許出願をされている(特願2010−176292号、特願2010−176454号参照)。
そして、後者の第2推定処理では、具体的には、プローブ車両の感知器通過時点から青開始時点までの間に車両感知器が検出する感知信号の数に基づいて、待ち行列の末尾位置を推定するようになっている(特願2010−176292号の段落0071参照)。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、プローブ情報と感知信号を用いた待ち行列に関する交通指標の推定を、正確に行うことができる交通指標推定装置等を提供することを目的とする。
なお、本明細書において、「発進波」は、具体的には、青信号の開始時刻に発進した発進波である。また、「待ち行列末尾に到達する到達時刻」には、待ち行列末尾と推定される位置に到達する到達時刻(例えば、図9のtp7)も含まれる。
このため、プローブ情報と感知信号とを用いた待ち行列に関する交通指標の推定を、正確に行うことができる。
条件c2:プローブ車両の感知器通過からi番目(iは自然数)の感知信号に対応する車両が待ち行列末尾に到達する到達時刻をtpi、当該i番目の感知信号に対応する車両が待ち号列末尾で停止すると仮定した場合に、推定される停止位置に発進波が到達する時刻をtsiとして、tpi<tsiであること。
このため、プローブ情報と感知信号とを用いた待ち行列に関する交通指標の推定を、正確に行うことができる。
この場合、プローブ車両に後続する車両の速度を所定値に固定して到達時刻tpiを求める場合に比べて、当該到達時刻tpiをより正確に求めることができ、待ち行列に関する交通指標の推定精度を向上することができる。
その理由は、待ち行列の末尾位置は、プローブ車両に続く車両の台数に応じて上流側に延伸するから、その台数分の車頭距離を考慮しないと、正確な到達時刻tpi求めることができないからである。
このため、本発明のコンピュータプログラムは、上述の(1)〜(4)に記載した本発明の交通指標推定置と同様の作用効果を奏する。
〔用語の定義〕
本発明の実施形態を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両感知器」:道路を走行する車両の存在を定位置で1台ずつ感知する路側センサのことをいう。例えば、直下を通行する車両を超音波感知する車両感知器や、車両通過時の温度変化から車両の通過を感知する温度式の車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知するループコイル等がこれに該当する。
「プローブ情報」:実際に道路を走行するプローブ車両の車載装置から得られる車両に関する各種情報のことをいう。車両ID、車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの発生時刻がこれに含まれる。
ただし、車両IDや時刻は必ずしもプローブ車両の車載装置が生成する必要はなく、受信側がそれらのデータをプローブ情報に割り付けてもよい。このようにすることで、路車間での無線通信の負荷を軽減することができる。なお、プローブ情報は、「プローブデータ」或いは「フローティングカーデータ」と呼ばれる場合もある。
「交差点の渋滞」:交差点の手前にできた待ち行列が1回の青信号時間で捌けない状況のことをいう。従って、1回の青信号時間で信号待ち行列が捌ける場合は、当該交差点では「渋滞」が生じていない。
「発進波」:信号待ち行列の発生中に青信号に切り替わると、交差点に近い前方の車両から順に発進し始める。この信号待ち車両が発進する時の伝達波を発進波という。
「発進波速度」:発進波の伝搬速度のことをいう。すなわち、発進波遅れを車両停止位置の一次関数で定義した場合の、当該一次関数の傾きのことである。
「流入路」「流出路」:ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向に進む道路を流入路といい、当該交差点から流出する方向に進む道路を流出路という。
図1は、本発明の実施形態に係る交通信号制御システムを示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通信号制御システムは、交通信号制御機1、情報中継装置2、路側通信機3、中央装置4、車両5に搭載された車載装置6、車両感知器7などを含む。
図1に示す交差点Jでは、比較的交通量の多い主道路RM1,RM2と、比較的交通量の少ない従道路RS1,RS2とが合流しており、主道路RM1の交差点Jに対する流入路と、主道路RM1の交差点Jに対する流出路に車両感知器7が設置されている。
また、情報中継装置2は、通信回線を介して交通信号制御機1及び路側通信機3とも接続されており、中央装置4と路側通信機3との間の通信データを中継する機能を有する。
交通信号制御機1は、中央装置4から受信した前記灯色切り替えタイミングを有する信号制御指令S1に基づいて、各信号灯器1aの青、黄、赤及び右折矢等の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
この路側通信機3は、例えば、無線LANやWiMAX(World Interoperability for Microwave Access )等に準拠した中・広域の無線通信装置であり、図1の例では、交差点Jに流入する各道路のうち、主道路RM1,RM2の交差点Jの上流側を走行するプローブ車両5の車載装置6と通信可能となっている。
路側通信機3が送信するダウンリンク信号S3には、中央装置4が配信する交通情報(渋滞情報や交通規制情報等)S2が含まれている。また、車載装置6が送信するアップリンク信号S4には、プローブ車両5の位置、速度及び方向等を含むプローブ情報S5が含まれている。
この車載装置6は、車両5が主道路R1,R2を交差点Jに向かって走行中に路側通信機3の通信領域に入ると、通信機3から交通情報S2を含むダウンリンク信号S3を受信するとともに、プローブ情報S5を含むアップリンク信号S4を所定の送信周期(例えば、100m秒)で路側通信機3に送信する。
また、方位センサは、光ファイバジャイロなどで構成されており、プローブ車両5の方位及び角速度を計測する。車速取得部は、車速センサが車輪の角速度を検出することにより計測したプローブ車両5の速度データを取得する。
図2は、情報中継装置2の機能ブロック図である。
図2に示すように、情報中継装置2は、第1インタフェース部21、第2インタフェース部22、中継部23、制御部24及び記憶部25を含む。
このうち、第1インタフェース部21は、中央装置4との間の通信と、交通信号制御機1との間の通信を行うための通信インタフェースである。また、第2インタフェース部22は、路側通信機3との間の通信を行うための通信インタフェースである。
例えば、中継部23は、第2インタフェース部22が路側通信機3から受信したアップリンク信号S4からプローブ情報S5を抽出し、このプローブ情報S5を、第1インタフェース部21を通じて中央装置4に送信する。
更に、中継部23は、第1インタフェース部21が車両感知器7から受信した時系列の感知信号S6を、同じ第1インタフェース部21を通じて中央装置4に送信する。
記憶部25は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、インタフェース部21,22が受信した各種情報(交通情報S2やプローブ情報S5等)を一時的に記憶するとともに、記憶部25は、上記制御部24が行う中継処理のための制御プログラムを記憶している。
図3は、中央装置4の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、中央装置4は、制御部401、表示部402、通信部403、記憶部404及び操作部405を含んでいる。
中央装置4の制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、情報中継装置2等からの各種データの収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
すなわち、制御部401は、交通状況に応じて信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)を設定する交通感応制御を行うことができる。制御部401が行う交通感応制御には、例えば、MODERATO制御やプロファイル制御等の複数種類のものが含まれる。
信号制御指令S1は、信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は例えば5分ごとに送信される。
中央装置4の操作部405は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
また、中央装置4の記憶部404は、プローブ用データベースDB1、路側用データベースDB2及び地図データベースDB3を備えている。
路側用データベースDB2は、車両感知器7が検出した車両5の時系列の感知信号S6を当該車両感知器7ごとに集積している。
地図データベースDB3は道路地図データを有する。この道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データが含まれている。
中央装置4の制御部401は、路側用データベースDB2に蓄積されたプローブ車両5ごとの走行軌跡を用いて、管轄エリア内の交差点Jについて、飽和交通流率や待ち行列の末尾位置等の交通指標の生成処理(図6)を行う。なお、この詳細については後述する。
図4は、交差点手前の待ち行列と車両の走行軌跡を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は時刻(秒)、縦軸は交差点Jの停止線からの距離(m)を表している。
図4において、縦ハッチングで示したほぼ三角形状の領域は待ち行列を表す。この領域の上辺は、待ち行列に進入した車両5の停止位置を表し、車両5はまず赤信号(黄信号を含んでもよい。以下同じ。)の待ち行列の末尾に加わって停止する。
そして、図4に示すように、上記停止位置及び発進位置は、それぞれ時間とともに上流側へ延びて行くものであり、それぞれ伝搬速度を持っている。これらの伝搬速度が前記した停止波及び発進波である。
すなわち、交差点での渋滞の程度、交通量の多さ、灯色切り替えタイミングとの関係で、自由走行していた車両5は信号待ちの待ち行列末尾に加わって停止し、所定時間だけ行列内で停止してからその行列内で走行し、交差点に至るという走行軌跡を描く。
図5(a)は飽和交通流率の算出方法を示す説明図であり、図5(b)は平均車頭距離の説明図である。
図5(a)に示すように、あるプローブ車両5の走行軌跡が得られている場合において、その停止位置をLt1とし、発進波速度をVaとし、プローブ車両5の待ち行列内での走行速度である流出速度をVbとする。また、図5(b)に示すように、交差点の手前で停止している停止車両の平均車頭距離をhとする。
1/s=h×(1/Va+1/Vb)
ここで、青開始時点tgからプローブ車両5の発進時点t1までの経過時間をT1、プローブ車両5の発進時点からプローブ車両5が交差点を通過するまでの経過時間をT2とすると、Va=Lt1/T1、Vb=Lt1/T2となる。
h×(T1/Lt1+T2/Lt1)=1/s
h×(T1+T2)/Lt1=1/s
このため、飽和交通流率sは、次の式によって求めることができる。
s=Lt1/{h×(T1+T2)}
なお、複数のプローブ車両5についての走行軌跡が得られている場合には、複数の走行軌跡で求めた飽和交通流率sの統計的な代表値(例えば平均値)を、当該交差点についての飽和交通流率として採用すればよい。
図6は、中央装置4の制御部401が行う交通指標の生成処理のフローチャートを示している。
なお、本実施形態では、制御部401が生成する交通指標は、交差点Jの手前の交通流が飽和している場合における「飽和交通流率」と「待ち行列の末尾位置」である。
次に、制御部401は、プローブ情報S5の停止位置(交差点Jの停止線を原点とした上流側の距離値)が、車両感知器7の上流側と下流側のいずれであるかを判定する(ステップST2)。
上記第1有効性判定処理を行った結果、プローブ情報S5が有効である場合(ステップST4でYes)には、制御部401は、そのプローブ情報S5の走行軌跡を用いて飽和交通流率を算出し(ステップST5)、待ち行列の末尾位置を推定する処理の1つである第1推定処理を実行する(ステップST6)。
また、制御部401は、第2有効性判定処理を行った結果、プローブ情報S5が有効でない場合(ステップST8でNo)にも、飽和交通流率の算出(ステップST9)と第2推定処理(ステップST10)を行わずに処理を終了する。
図7は、プローブ車両5の停止位置Z1が車両感知器7の設置位置Z0より上流側である場合の、交差点手前の待ち行列とプローブ車両5の走行軌跡を示すグラフである。以下、この図7を参照しつつ、中央装置4の制御部401が行う「第1処理モード」での処理内容を説明する。
なお、図7(図8も同様)において、太い実線の矢印はプローブ車両5の走行軌跡を示し、破線の矢印は、車載装置6を搭載していない通常車両5の走行軌跡を示している。
更に、図7(図8も同様)において、時間軸の下方に付した各帯部のうち、白抜きの帯部は青信号時間を示し、黒塗りの帯部は赤信号時間を示し、ハッチングを付した帯部は黄信号時間を示している。
また、一般に、渋滞から車両5が発進する場合の発進波は飽和流であり、その捌け率は飽和交通流率で安定している。
そこで、中央装置4の制御部401は、渋滞時における上記の特性を利用して、プローブ車両5の走行軌跡と感知信号S6の時系列データPiとの間の整合性を評価して、プローブ情報S5が交通指標の生成用データとして有効か否かを判定する「第1有効性判定処理」(図6のステップST3)を実行する。
具体的には、制御部401は、まず、次の第1発進波速度Va1と第2発進波速度Va2とを求める。
プローブ車両5の停止位置Z1の交差点までの距離を、青開始時点tgからプローブ車両5の発進までの経過時間T1で割った速度
「第2発進波速度Va2」
車両感知器7の設置位置Z0の交差点までの距離を、青開始時点tg以後に最初に車両感知器7が任意の車両5を感知するまでの経過時間T0で割った速度
(条件1)両発進波速度Va1,Va2の差分が所定の閾値内にあること。
(条件2)第1発進波速度Va1が定数設定された適正な数値範囲内にあること。
また、この第1有効性判定処理において、上記の条件1及び2のいずれか一方のみを、プローブ情報S5を有効と判定するための条件としてもよい。
次に、中央装置4の制御部401は、第1有効性判定処理を経て有効とされたプローブ情報S5がある場合には、その有効なプローブ情報S5の走行軌跡を用いて、飽和交通流率sを算出するとともに(図6のステップST9)、待ち行列の末尾位置を推定する「第1推定処理」(図6のステップST6)を実行する。
この第1推定処理には、「基本推定」と「オプション推定」の2種類の推定処理が含まれる。
この場合でも、プローブ情報S5を利用して、少なくとも車両感知器7の設置位置Z0を超えた上流側の位置まで、待ち行列の延伸を推定できるという利点がある。
しかし、上記の「基本推定」では、プローブ車両5の停止位置Z1よりも上流側に延びる待ち行列の末尾位置を推定することができない。
具体的には、中央装置4の制御部401は、プローブ車両5の走行軌跡と感知信号S6の時系列データPiとを用いて次の2種類のマッチング処理を行い、車両感知器7におけるプローブ車両5に対応する感知信号S6であるマッチング信号を抽出する。
プローブ車両5の走行軌跡で推定した感知器通過時刻と感知信号S6の時系列データPiを比較し、その感知器通過時刻に最も近い感知信号S6を、第1マッチング信号として抽出する。
2) 第2マッチング処理
青開始時点tg以後に検出された車両台数に平均車頭距離hを乗じた距離を、車両感知器7の設置位置Z0に加えた位置が、プローブ車両5の停止位置Z1に最も近くなる感知信号S6を、第2マッチング信号として抽出する。
そして、制御部401は、プローブ車両5から飽和流が継続していると見なせる車両台数(当該プローブ車両5を含む。)に平均車頭距離hを乗じた距離値を、プローブ車両5の停止位置Z1に加算することにより、待ち行列の末尾位置を推定する。
この場合、定数設定の閾値の代わりに、プローブ車両5の走行軌跡を用いて既に算出した飽和交通流率の逆数1/s(=h×(T1+T2)/Lt1)を、所定間隔として採用することにしてもよい。
また、この場合、飽和交通流率の逆数1/sに余裕を持たせた、1/s+β(補正値)を所定間隔に採用することにしてもよい。
なお、この第1推定処理において、プローブ情報S5に含まれる位置誤差を考慮して、プローブ車両5の停止位置Z1に加算する距離値に対して所定の補正係数α(<1.0)を掛けることにしてもよい。
図8は、プローブ車両5の停止位置Z1,Z2が車両感知器7の設置位置Z0より下流側である場合の、交差点手前の待ち行列とプローブ車両5の走行軌跡を示すグラフである。以下、この図8を参照しつつ、中央装置4の制御部401が行う「第2処理モード」での処理内容を説明する。
そこで、中央装置4の制御部401は、上記の推論を応用して、車両感知器7による2台のプローブ車両5に対応する感知信号S6であるマッチング信号を用いた「第2有効性判定処理」(図6のステップST7)を実行する。
具体的には、制御部401は、2台のプローブ車両5が同じ車線を走行していたことを前提条件として、その2台のプローブ車両5の走行軌跡から推定した感知器通過時刻と感知信号(パルス信号)S6の時系列データPiとを比較し、その感知器通過時刻に最も近い2つのマッチング信号を抽出する。
そして、制御部401は、上記距離差ΔZ’と距離差ΔZの差分が予め設定した所定の閾値内にある場合に、当該2台のプローブ車両5に対応する各プローブ情報S5を有効と判定し、その閾値を外れる場合には、各プローブ情報S5を無効と判定する。
また、この第2有効性判定処理の場合も、前記した第1有効性判定処理の「条件2」、すなわち、第1発進波速度Va1が定数設定された適正な数値範囲内にあることを、各プローブ情報S5を有効と判定する条件として付加することにしてもよい。
また、この第2有効性判定処理において、第1有効性判定処理の「条件2」のみを、各プローブ情報S5を有効と判定する条件に設定してもよい。
次に、中央装置4の制御部401は、第2有効性判定処理を経て有効とされた2つのプローブ情報S5がある場合には、その有効なプローブ情報S5の走行軌跡を用いて、飽和交通流率sを算出するとともに(図6のステップST9)、待ち行列の末尾位置を推定する「第2推定処理」(図6のステップST10)を実行する。
そして、制御部401は、カウントした感知信号S6の数(車両台数)に平均車頭距離hを乗算した距離値を、選択したプローブ車両5の停止位置Z1(又はZ2)に加算した値を、待ち行列の末尾位置として採用する。
なお、図9では、出来るだけ多くの時系列データP1〜P7を図示するため、データが古い方のプローブ車両5の停止位置Z1を用いた場合を例示したが、データが新しい方のプローブ車両5の停止位置Z2からP0を求めた方が高精度となり好ましい。
ここで、図9に示すプローブ車両5の走行軌跡は、図8の2台のプローブ車両5の走行軌跡のうちから選択された走行軌跡(図例では、左側の走行軌跡を選択)である。また、図9において、プローブ車両5に対応する感知信号S6(マッチング信号)のデータ番号iを「0」とし、その後に検出されるデータ番号iを順に1,2,……とする。
すなわち、7番目の時系列データP7に対応する車両5については、停止波にぶつからずにすなわち信号待ちで停止することなく、交差点Jを通過する。
また、tp0は、プローブ車両5が待ち行列末尾に到達する到達時刻を示し、tpi(i=1,2,……)は、プローブ車両5の感知器通過時刻η0以後のi番目の時系列データPiに対応する車両5(通常車両又はプローブ車両のいずれでもよい。)が、待ち行列末尾に到達する到達時刻を示す。
そして、中央装置4の制御部401は、次の処理(a)〜(f)を行うことにより、時刻ηの後に車両感知器7を通過して待ち行列に加わる車両5の台数をカウントする。
(b) 時刻η0以後にi番目のパルス信号(時系列データ)Piを検出すると、検出したデータPiに対応する車両5の到達時刻tpiを、次式によって算出する。
tpi=ηi+{Z0−(Z1+i・h)}/Vc
(c) 1つ前のi−1番目の時系列パルスPi−1に対応する車両5の発進時刻tsi−1を、次式によって算出する。
tsi−1=tg+{Z1+(i−1)・h}/Va
推定速度Vcは、所定値の定数に固定してもよいが、プローブ情報S5から算出可能なプローブ車両5の速度Vp(=(Z0−Z1)/(tp0−η0))を採用すれば、各々の車両5についての到達時刻tpiをより正確に算出することができる。
(e) (d)の判定結果が肯定的である場合は、待ち行列の末尾位置を(Z1+i・h)の値に更新してメモリに記録し、データ番号iを1つインクリメントして、b)〜d)の処理を繰り返す。
(f) (d)の判定結果が否定的である場合、すなわち、tpi≧tsi−1となる場合は、その時点でメモリに記録されている{Z1+(i−1)・h}の値を待ち行列末尾として確定し、車両5のカウント処理を終了する。
このため、時刻ηの後に検出される時系列データP1〜P7のうち、6つの時系列データP1〜P6が、プローブ車両5に後続して待ち行列に加わる車両5として判定され、最後の時系列データP7は、プローブ車両5の後に待ち行列に加わる車両5としてカウントされない。
ここで、図9に例示するグラフにおいて、感知信号S6のカウントの終了時点を青開始時点tgとすると、実際には、青開始時点tgの後の時系列データP6に対応する車両5が停止波にぶつかって信号待ちで停止するにも拘わらず、その時系列データP6が待ち行列を形成する車両5のデータとしてカウントされなくなる。
このように、終了時点を青開始時点tgに固定してカウントされた感知信号S6の数は、必ずしも実際の待ち行列の状況を正確に反映したものとは言えない。
従って、待ち行列を形成する車両5の台数をより正確にカウントすることができ、実際の待ち行列の末尾位置を正確に推定することができる。
このため、車頭距離i×hを考慮せずに到達時刻tpiを算出する場合に比べて、到達時刻tpiを正確に算出することができ、待ち行列を形成する車両5に対応する感知信号S6であるか否かの判定をより正確に行うことができる。
上述の実施形態では、プローブ車両5に続いて待ち行列を形成する車両5についての時系列データPiであるか否かを判定するための条件式として、tpi<tsi−1を採用しているが(前記処理(d)参照)、この条件式の代わりに、tpi<tsiを採用することにしてもよい。
前者の条件式(tpi<tsi−1)は、言わば、着目する車両5が待ち行列を形成するか否かを、その車両5が1つ前の車両5の後で停止するか否かにより判定するものである。
従って、この後者の条件式を採用した場合でも、待ち行列を形成する車両5についての感知信号S6を正確にカウントすることができる。
上述の実施形態は例示であって本発明の権利範囲を制限するものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内のすべての変更が本発明に含まれる。
例えば、上述の実施形態では、中央装置4の制御部401が求める待ち行列に関する交通指標が当該待ち行列の末尾位置になっているが、その交通指標は「待ち行列台数」であってもよい。
また、プローブ情報S5をインフラ側にアップリンクする手段としては、前記路側通信機3に限らず、光ビーコン等の狭域通信装置や携帯電話機その他の通信手段によって行うこともできる。
また、上記実施形態では、中央装置4が、車両感知器7の感知信号S6を情報中継装置2から取得しているが、情報中継装置2の代わりに、交通信号制御機1を経由して車両感知器7の感知信号S6を取得するシステム構成であってもよい。
2 情報中継装置
3 路側通信機
4 中央装置(交通指標推定装置)
5 車両(プローブ車両又は通常車両)
6 車載装置
7 車両感知器
401 制御部(推定手段)
403 通信部(取得手段)
S1 信号制御指令
S5 プローブ情報
S6 感知信号
tpi 到達時刻
tsi 発進時刻
J 交差点
Claims (4)
- 渋滞時の待ち行列に関する交通指標を推定する交通指標推定装置であって、
交差点の流入路に設置された車両感知器が検出する時系列の感知信号と、前記流入路を走行して前記交差点に進入するプローブ車両の時系列位置を含むプローブ情報と、交通信号機の灯色切り替えタイミングとを取得する取得手段と、
前記プローブ車両の停止位置が前記車両感知器の設置位置よりも下流側にある場合に、次の条件c1を満たす前記感知信号の数に基づいて、前記待ち行列に関する交通指標を推定する推定手段と、を備えていることを特徴とする交通指標推定装置。
条件c1:プローブ車両の感知器通過からi番目(iは自然数)の感知信号に対応する車両が待ち行列末尾に到達する到達時刻をtpi、1つ前のi−1番目の感知信号に対応する車両が発進波とぶつかる発進時刻をtsi−1として、tpi<tsi−1であること。 - 前記推定手段は、前記車両感知器を通過する前記車両の速度を、前記プローブ情報から求めた前記プローブ車両の速度に設定して、前記到達時刻tpiを求める請求項1に記載の交通指標推定装置。
- 前記推定手段は、i番目の前記感知信号に対応する前記車両が到達する前記待ち行列の末尾位置を、前記プローブ車両の停止位置からi台分の前記車両の車長距離だけ上流側にある位置に設定して、前記到達時刻tpiを求める請求項1又は2に記載の交通指標推定装置。
- 渋滞時の待ち行列に関する交通指標を推定する処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
交差点の流入路に設置された車両感知器が検出する時系列の感知信号と、前記流入路を走行して前記交差点に進入するプローブ車両の時系列位置を含むプローブ情報と、交通信号機の灯色切り替えタイミングとを取得するステップと、
前記プローブ車両の停止位置が前記車両感知器の設置位置よりも下流側にある場合に、次の条件c1を満たす前記感知信号の数に基づいて、前記待ち行列に関する交通指標を推定するステップと、を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
条件c1:プローブ車両の感知器通過からi番目(iは自然数)の感知信号に対応する車両が待ち行列末尾に到達する到達時刻をtpi、1つ前のi−1番目の感知信号に対応する車両が発進波とぶつかる発進時刻をtsi−1として、tpi<tsi−1であること。
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