JP5854867B2 - 電極組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
これは、PVDFが化学的、電気的に安定であり、NMPがPVDFを溶解する経時安定性のある溶媒であることに拠っている。
なお、特に負極組成物において見られるように、水系の組成物には、溶剤系の組成物に比べてバインダーの使用量を抑えることができるというメリットがある。
特許文献1においては、バインダーとして水溶性ポリマーであるポリアクリル酸塩が用いられているが、エマルションとは併用せずにポリアクリル酸塩単独でバインダーを構成し用いている。しかしながら、エマルションと併用していないために、バインダーとしては、結着性、電極の柔軟性や可とう性において充分とは言えないものであった。
一方、特許文献2においては、水溶性ポリマーであるCMCとエマルションであるラテックスとを併用したバインダーを用いた形態が開示されている。エマルションは、一般的に分散性が充分でなく粘度が低いために、単独でバインダーとして用いることは難しくCMCと併用して用いられている。
通常、水系の電極組成物を構成する場合、水溶性ポリマーを用いて電極活物質及び必要に応じて導電助剤等を分散させ、そこへエマルションを添加して製造する方法が一般的である。ここで、一般的には水溶性ポリマーとしては、固体のものを水やアルカリ水を用いて水溶性化したものが用いられるが、固体のポリマーは水溶液にする際に塊状になったりして溶解し難く、ポリマー水溶液の作製に時間がかかってしまい、結果として電極組成物の調製に時間がかかるという課題を有している。
このように、水系の電極組成物において用いられるバインダーについて開発が進められているが、工業的な生産を視野に入れると、バインダーとしての性能と共に、電極組成物の製造の簡便さということも重要であり、これらの要求をともに満たす電極組成物の製造方法が求められていた。
以下に本発明を詳述する。
本発明の電極組成物の製造方法は、電極活物質、結合剤、及び、水を混練する工程を含むものであるが、この工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。
上記混練工程においては、ビーズ、ボールミル、攪拌型混合機、2軸遊星方式の混合混練装置(例えば、TKハイビスミックス(登録商標)(プライミクス社製)等が挙げられる。)等を用いて混練することができる。
なお上記混練工程としては、結合剤、水及び電極活物質を加える限り、その他の成分を加えてもよく、混練工程としては、溶媒である水に溶解した水溶性高分子を含む結合剤に、場合により分散剤を添加し、更に必要に応じて導電助剤を混合して混練することで分散させ、その溶液に電極活物質を加えて更に混練することで分散させる工程もまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
また、上記結合剤の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、0.1〜6質量%であることが好ましい。結合剤の含有量がこの範囲であると、分散性、粘度調整機能を充分に発揮し、電極活物質や後述する導電助剤等のフィラーを結合し、かつ、電極中のバインダー使用量を抑えることができる。より好ましくは、0.2〜3質量%である。
上記水の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、50〜300質量%であることが好ましい。水の含有量がこの範囲であると、適当な粘度のスラリーを作製することができる。より好ましくは、70〜200質量%である。
上記金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩が好ましい。より好ましくは、リチウム塩である。これら金属塩としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ここで、透明溶液とは、2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものを意味する。すなわち、上記水溶性高分子は、2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものである。全光線透過率として好ましくは、95%以上であり、より好ましくは、97%以上である。
また、上記水溶性高分子は、2質量%水溶液のヘイズが10以下であることが好ましく、より好ましくは、3以下である。
上記全光線透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を用いて、測定することができる。
このように、本発明における水溶性高分子が、アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位が有するカルボン酸を金属塩で60〜150%中和して得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。
なお、中和率は、中和反応に供されるアルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位が有するカルボン酸量に対する、中和反応に供される金属塩の仕込み量の比で規定される。したがって、上記カルボン酸量よりも多く、過剰に金属塩を仕込む場合には、上記中和率は100%を超えることとなる。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;テトラヒドロフラン)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120(製品名、東ソー社製)
カラム:TSK−gel GMHXL(製品名、東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
測定方法:中和前のアルカリ可溶性樹脂を溶離液に測定対象物の固形分が0.1質量%となるように溶解し、フィルターを用いてろ過したものを測定サンプルとする。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体及びそれらの酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。これらエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエステルが挙げられ、好ましくは、例えば、一般式(1);
CH2=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、又は、ポリアルキレングリコール基を含む基を表す。)で表される化合物である。
これらの中でも、後述する乳化重合時の安定性等の観点からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(1)におけるR’がアルキル基であると、得られる水溶性高分子のガラス転移温度(Tg)が低くなるため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
また、末端にハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有するポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。その場合、アルキレンオキサイド末端に疎水基を有することで、疎水基が会合することにより電極組成物の粘性を変えることができる。
上記アルキレンオキサイド末端の疎水基として好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数10〜20のアルキル基である。これらその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
乳化重合法は、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。重量平均分子量が50万以上の水溶性高分子は、乳化重合法により水分散体としてアルカリ可溶性樹脂を作製し、金属塩で中和し可溶化(均一化)することにより、簡便に製造することができるため、アルカリ可溶性樹脂の製造方法として乳化重合法を選択することは生産コストの上でもメリットがある。
なお、重合方法として特に乳化重合を行う場合には、これら重合開始剤の中でも水溶性の開始剤が好ましく使用される。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合反応に供する単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜1重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.5重量部である。
また、乳化重合を行う際、得られる共重合体(アルカリ可溶性樹脂)に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
上記エマルションの平均粒子径としては、特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは30〜500nmである。エマルションの粒子径がこの範囲であることにより、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集したりする可能性を低くすることができる。
これら正極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
LixAyDzPO4 (2)
(式中、Aは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種を表す。Dは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y及び希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種を表す。x、y及びzは、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5を満たす数である。)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。このような化合物では、構造内の酸素原子がリンと結合することで(PO4)3−ポリアニオンを形成しており、酸素が結晶構造中に固定化されるために原理的に燃焼反応が起こらない。そのため、一般式(2)で表される構造を有する化合物を含む電極活物質は安全性に優れたものとなることから、特に中大型電源への用途に好適に用いることができるものとなる。
また、上記一般式(2)におけるDとしては、Mg、Ca、Ti、Alが好ましい。
なお、上記「リン酸鉄リチウムを主成分として含む」とは、正極活物質全体100質量%に対するリン酸鉄リチウムの含有量が50質量%以上であることを意味するが、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。最も好ましくは、リン酸鉄リチウムのみからなることである。
これら負極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
また、PVDFやPTFEを(メタ)アクリル変性した構造を有するエマルションも、PVDFやPTFE自体は結晶性を有するポリマーであるが、それらフッ素系ポリマーにアクリルが入り込んだ「IPN構造」を有するような粒子とすることにより結晶性が低下し、エマルションの造膜温度も低くなっているため、好ましい。そのような(メタ)アクリル変性したフッ素含有重合体のエマルションは、例えば、PVDFやPTFEの水分散粒子存在下に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、カルボン酸やスルホン酸等官能基を有する不飽和単量体等を乳化重合することにより得ることができる。
ケッチェンブラックは中空シェル構造を持ち、導電性ネットワークを形成しやすい。そのため、従来のカーボンブラックに比べると半分程度の添加量で同等性能を発現することができるため、好ましい。また、アセチレンブラックは高純度のアセチレンガスを用いることで生成されるものであり、カーボンブラックの不純物が非常に少なく、表面の結晶子が発達しているため、好ましい。
上記分散剤としては、特に制限されず、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、スチレンとマレイン酸との共重合体等の高分子分散剤などの種々の分散剤を用いることができる。分散剤を用いる場合の分散剤の使用量としては、導電助剤100質量%に対して1〜20質量%含有させることが好ましい。分散剤の含有量がこのような範囲であると、電極活物質や導電助剤を混合した場合の分散性を充分に確保することが可能となる。分散剤の使用量としてより好ましくは、3〜15質量%である。
このように分散剤を併用して、電極組成物における電極活物質及び導電助剤の均一分散安定性を向上させることで、電極活物質粒子間の接触抵抗を低減することができ、良好な電極膜の電導度を達成することが可能となる。
なお、ここでいうその他の成分は、上述の水溶性高分子、正極活物質、導電助剤、エマルション以外の成分を指し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
なお、ここでいうその他の成分は、上述の水溶性高分子、負極活物質、導電助剤、エマルション以外の成分を表し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
電極組成物の粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。また、電極組成物のチクソ値は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、6rpmと60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値として求めることができる。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
上記集電体としては、特に制限されないが、例えば、アルミ集電体、銅箔等が挙げられる。
二次電池の電気容量は後述する実施例において行われるような充放電測定装置を用いた評価により測定することができる。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水(115部)、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。
次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩(1.5部)をイオン交換水(92部)に溶解した。ここに、重合体の単量体として、アクリル酸エチル(65部)とメタクリル酸(35部)との混合物を投入し、プレエマルションを作製した。単量体を含む前記プレエマルションの5%を反応容器に投入して攪拌後、亜硫酸水素ナトリウム(0.017部)を投入した。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)をイオン交換水(23部)に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。この重合開始剤水溶液5%を、前記反応容器に投入し20分間初期重合を行った。反応容器内の温度を72℃に保ち、残りのプレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水(8部)で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、固形分30%のエマルション(アルカリ可溶性樹脂(1))を得た。
重合体の単量体としてアクリル酸エチル(59.8部)、メタクリル酸(40部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(0.2部)を用いた以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルション(アルカリ可溶性樹脂(2))を得た。
重合体の単量体としてアクリル酸エチル(59.9部)、メタクリル酸(40部)、ジアリルフタレート(0.1部)に変更した以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルション(アルカリ可溶性樹脂(3))を得た。
重合体の単量体としてアクリル酸エチル(95部)、メタクリル酸(5部)に変更した以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルションを得た。
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1)(4.00部/固形分1.2部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(4.01部)とイオン交換水(53.42部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌し、ポリマー水溶液(1)を得た。
得られたポリマー水溶液(1)の固形分、全光線透過率、粘度、pHを次のようにして測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
ポリマー水溶液を110℃で1時間乾燥し、乾燥前重量と乾燥後重量から固形分を計算した。
<ポリマー水溶液の全光線透過率>
ヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業社製)を用いて、セルに溶液を入れて全光線透過率を求めた。なお、水の全光線透過率を100%とした。
<ポリマー水溶液の粘度>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<ポリマー水溶液のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1)(3.00部/固形分0.9部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(3.01部)とイオン交換水(50.73部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌した。更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(有効成分27%)(0.85部)を加えて、自公転式攪拌装置で3分攪拌し、ポリマー水溶液(2)を得た。
得られたポリマー水溶液(2)の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂(2)(3.00部/固形分0.9部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(3.44部)とイオン交換水(50.49部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌した。更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(有効成分27%)(0.85部)を加えて、自公転式攪拌装置で3分攪拌し、ポリマー水溶液(3)を得た。
得られたポリマー水溶液(3)の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(1)(4.00部/固形分1.2部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(2.81部)とイオン交換水(54.19部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌し、ポリマー水溶液(4)を得た。
得られたポリマー水溶液(4)の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂(3)(3.00部/固形分0.9部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(2.73部)とイオン交換水(50.87部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌した。更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(有効成分27%)(0.85部)加えて、自公転式攪拌装置で3分攪拌し、ポリマー水溶液(5)を得た。
得られたポリマー水溶液(5)の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1と同様に測定し、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
ポリアクリル酸(商品名「AS58」、日本触媒製)(1.00部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(11.66部)とイオン交換水(41.51部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌した。更に5分の攪拌を2回行い、ポリアクリル酸リチウム水溶液を得た。
得られたポリアクリル酸リチウム水溶液の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
カルボキシメチルセルロース(CMC1380 ダイセル化学工業社製)(1.00部)にイオン交換水(99.00部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて10分攪拌した。塊状のものが残っており、更に10分の攪拌を2回行い、1%カルボキシメチルセルロース水溶液(CMC水溶液)を得た。一般的にカルボキシメチルセルロースは溶解時に塊になりやすく(外側が半溶解)、この状態になると完全に溶解する為に時間を要する。
得られたCMC水溶液の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
VDF系−アクリル変性エマルション(アルケマ社製;VDF:アクリル=70:30)(1.00部)にイオン交換水(49.00部)を加えて攪拌し、VDF系−アクリル変性エマルション水溶液を得た。
得られたVDF系−アクリル変性エマルション水溶液の固形分、全光線透過率、粘度を調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
SBRエマルション(JSR社製)(1.00部)にイオン交換水(49.00部)を加えて攪拌し、SBRエマルション水溶液を得た。
得られたSBRエマルション水溶液の固形分、全光線透過率、粘度を調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
なお、表1中、各成分の配合量の単位は「部」である。
比較合成例1で合成したアクリルエマルション(4.00部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.57部)とイオン交換水(55.63部)を加えて、自公転式攪拌装置(ARE−310 シンキー社製)を用いて5分攪拌した。更に5分の攪拌を2回行い、アクリルエマルション水溶液を得た。
得られたアクリルエマルション水溶液の固形分、全光線透過率、粘度、pHを調製例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表1に示した。
なお、表1中、各成分の配合量の単位は「部」である。
水(1)(13.045部)、アルカリ可溶性樹脂(1)(0.976部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.979部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(18.9部)、アセチレンブラック HS−100(デンカ社製)(1.80部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.0部)を加えて混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(VDF系−アクリル変性エマルション)(1.87部)を加えて混合分散し、正極組成物(1)を得た。
得られた正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を次のようにして測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<正極組成物のチクソ値>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、6rpm及び60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値を求め、チクソ値とした。
<正極組成物のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
可変式アプリケーターを用いて、所定の膜厚になるように調整して正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し正極を作製した。
作製した正極を、φ10mmで曲げ試験を行い、下記評価基準に従い、評価した。
評価基準:
○・・・問題なし。
△・・・製膜時の体積収縮クラックはないが、電極を曲げるとクラックが生じた。
×・・・製膜時に体積収縮クラックが起こった。
アプリケーターを用いて、正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し、室温で5分プレスをして、80℃で減圧乾燥し電極シートを作製した。作製した電極シートを用いて、下記のようにコインセル(CR2032)を作製し、充放電測定装置ACD−001(製品名、アスカ電子社製)を用いて下記条件により電池評価を行った。
コインセル
正極 :表2の正極組成物
負極 :Li箔
電解液 :1mol%/L LiPF6 EC/EMC=1/1(キシダ化学社製)
電池評価条件(リン酸鉄リチウムの場合)
充電条件:0.5C CC−CV Cut−off 4.0V
放電条件:0.5C CC Cut−off 2.5V
電池評価条件(コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウムの場合)
充電条件:0.2C CC Cut−off 4.3V
放電条件:0.5C CC Cut−off 2.8V
水(1)(13.212部)、アルカリ可溶性樹脂(1)(0.782部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.784部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.222部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(18.8部)、アセチレンブラック HS−100(1.80部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.0部)を加えて混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.87部)を加えて混合分散し、正極組成物(2)を得た。
得られた正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(1)(6.552部)、アルカリ可溶性樹脂(2)(0.390部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.447部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.111部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(26.2部)、アセチレンブラック HS−100(1.95部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.0部)を加えて混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.87部)を加えて混合分散し、正極組成物(3)を得た。
得られた正極組成物(3)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(1)(26.427部)、アルカリ可溶性樹脂(1)(1.562部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(1.567部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.444部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(7.3部)、アセチレンブラック HS−100(1.80部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.6部)を加えて混練し、正極組成物(4)を得た。
得られた正極組成物(4)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(1)(8.736部)、アルカリ可溶性樹脂(2)(0.520部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.596部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.148部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(11.8部)、アセチレンブラック HS−100(2.60部)、セルシードC−10N(商品名、日本化学工業社製;コバルト酸リチウム)(36.4部)を加えて混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.67部)を加えて混合分散し、正極組成物(5)を得た。
得られた正極組成物(5)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(1)(13.44部)、アルカリ可溶性樹脂(1)(0.786部)に5%水酸化リチウム・一水和物水溶液(0.552部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.222部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(18.8部)、アセチレンブラック HS−100(1.80部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.0部)を加えて混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.87部)を加えて混合分散し、正極組成物(6)を得た。
得られた正極組成物(6)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(1)(9.83部)、合成例3の樹脂(0.520部)に5%LiOH・H2O水溶液(0.472部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.148部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液に水(2)(11.02部)、アセチレンブラック HS−100(2.40部)、セルシードNMC111(商品名、日本化学工業社製;ニッケルマンガンコバルト酸リチウム Ni:Co:Mn=1:1:1)(36.8部)を加えて混錬した。混錬後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.25部)を加えて混合分散し、正極組成物(7)を得た。
得られた正極組成物(7)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
水(12.9部)、2%ポリアクリル酸リチウム水溶液(24.0部)を加えて攪拌し、更にスチレン−マレイン酸系コポリマー(0.44部)を加えて攪拌し、ポリマー水溶液を作製した。作製したポリマー水溶液にアセチレンブラック HS−100(1.80部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(27.6部)を加えて混練し、比較正極組成物(1)を得た。
得られた比較正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
なお、表2中、各成分の配合組成の欄は、「加えた部数/固形分量(部)」という表記となっている。5%LiOH・H2O(5%水酸化リチウム・一水和物水溶液)の固形分については、リチウムのみを換算した値が記載されている。
NMP(57.4部)にカイナーHSV900(商品名、アルケマ社製;フッ化ビニリデンポリマー)(1.20部)を加えて溶解し、アセチレンブラック HS−100(2.40部)、リン酸鉄リチウム(中国品)(36.4部)を加えて混錬し、参考正極組成物(1)を得た。
得られた参考正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
NMP(27.8部)にカイナーHSV900(商品名、アルケマ社製;フッ化ビニリデンポリマー)(1.20部)を加えて溶解し、アセチレンブラック HS−100(2.00部)、セルシードNMC111(商品名、日本化学工業社製;ニッケルマンガンコバルト酸リチウム Ni:Co:Mn=1:1:1)(36.8部)を加えて混錬し、参考正極組成物(2)を得た。
得られた参考正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pH、電極形成性、電気特性を実施例1同様に測定、評価した。測定、評価結果は表2に示した。
調製例1〜5の結果から、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ水溶液と混合することにより容易に粘稠ではあるが流動性があり取扱が容易な水溶液となることが分かった。このことは、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂を用いると、容易にポリマー水溶液を調製することが可能となるため、電極組成物を簡便に作製することができるようになることを意味している。これに対して、比較調製例1、2の結果から、ポリアクリル酸やCMCを本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の代わりに用いてポリマー水溶液を調製しようとすると、攪拌に時間がかかってしまい、容易にポリマー水溶液を調製することができないことが分かる。そして更に、使用する量が大量になると塊が大きくなる為、溶解時間に顕著な差が生じることとなる。また、比較調製例3、4からVDF系−アクリル変性エマルションやSBRエマルションを用いた場合、及び比較調製例5から不飽和カルボン酸の金属塩単量体由来の構造単位の含有量が低い場合、全光線透過率が低く、水分散体の状態であることがわかった。
また、実施例4、比較例1の結果から、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂から調製された水溶性高分子を含む結合剤を用いた場合には、結合剤としてポリアクリル酸リチウムを用いた場合に比較して、特に固脆さが解消し、電極形成性が改良されることが実証された。そして、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂から調製された水溶性高分子単独でも、粘度調整機能、分散機能を損なわずに、電極形成性を有し、電極組成物中において結合剤として機能することができるものであることが実証された。
更に実施例1〜7において得られた正極組成物を用いて作成した電極を用いた電池においては、溶剤(NMP)を用いて作成した電池(参考例1、2)と比較して、初期放電容量、サイクル維持率において遜色ない結果を示しており、電池特性の観点からも充分な性能を示すことが判明した。
なお、上記実施例においては、電極活物質、アルカリ可溶性樹脂、中和剤として用いられる金属塩として特定のものが用いられ、また、導電助剤、エマルション、添加剤としても特定のものが用いられているが、結合剤として本発明における水溶性高分子を含むものを用いることによって、得られる電極が電池性能に優れるような電極組成物を、簡便に作製することができるようになる機構は、本発明における水溶性高分子を用いた場合には全て同様である。
従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
Claims (5)
- 電極活物質、結合剤、及び、水を含む電極組成物の製造方法であって、
該製造方法は、電極活物質、結合剤、及び、水を混練する工程と、
該混練工程後、更に、アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマーのいずれかの水分散樹脂を加える工程とを含み、
該結合剤は、構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を10〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を10〜90質量%必須として含むアルカリ可溶性樹脂を金属塩で中和して得られる水溶性高分子を含み、
該水溶性高分子は、2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であることを特徴とする電極組成物の製造方法。 - 前記水溶性高分子は、アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位が有するカルボン酸を金属塩で60〜150%中和して得られることを特徴とする請求項1に記載の電極組成物の製造方法。
- 前記水溶性高分子は、2質量%水溶液の粘度が50〜20,000mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極組成物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電極組成物の製造方法により電極組成物を製造する工程と、その工程によって製造された電極組成物を集電体上に塗工する工程とを含むことを特徴とする電極の製造方法。
- 請求項4に記載の電極の製造方法により製造された電極を用いて二次電池を作製する工程を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。
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