JP5854234B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5854234B2
JP5854234B2 JP2013026225A JP2013026225A JP5854234B2 JP 5854234 B2 JP5854234 B2 JP 5854234B2 JP 2013026225 A JP2013026225 A JP 2013026225A JP 2013026225 A JP2013026225 A JP 2013026225A JP 5854234 B2 JP5854234 B2 JP 5854234B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
annealing
steel sheet
temperature
grain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013026225A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014152393A (ja
Inventor
龍一 末廣
龍一 末廣
之啓 新垣
之啓 新垣
今村 猛
今村  猛
高宮 俊人
俊人 高宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2013026225A priority Critical patent/JP5854234B2/ja
Publication of JP2014152393A publication Critical patent/JP2014152393A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5854234B2 publication Critical patent/JP5854234B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)
  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、鉄損が低くかつ鉄損のばらつきが小さい方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器やモータの鉄心等として広く用いられている軟磁性材料であり、中でも大型の変圧器の鉄心等に使用される方向性電磁鋼板は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積し、磁気特性に優れるという特徴をもつ。このような結晶組織は、製造工程の仕上焼鈍において、Goss方位粒を優先的に成長させる二次再結晶を起こさせることによって得ることができる。
従来、このような方向性電磁鋼板は、4.5mass%以下程度のSiと、MnSやMnSe,AlNなどのインヒビターを形成する成分を含有するスラブを、1300℃以上の温度に加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、次いで、湿潤水素雰囲気中で脱炭焼鈍する一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面にマグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶を起こさせた後、1200℃×5hr程度の純化処理でインヒビター成分を除去する仕上焼鈍を施すことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
上述したとおり、従来の方向性電磁鋼板の製造方法においては、MnSやMnSe,AlNなどの析出物(インヒビター)を形成する成分をスラブ段階で含有させ、1300℃を超える高温でスラブを再加熱して上記インヒビター成分を一旦固溶させた後、後工程で微細に析出させることで、二次再結晶を発現させるという工程が採用されてきた。
しかし、上記のような従来の方向性電磁鋼板の製造方法では、1300℃を超える高温でスラブを再加熱する必要があったため、その製造コストは高いものとならざるを得ず、近年の製造コスト低減の要求に応えることができないという問題を残していた。この問題を解決する技術としては、例えば、特許文献3には、酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060mass%含有させたスラブの再加熱温度を低温に抑えて熱間圧延し、脱炭焼鈍工程を窒化雰囲気として窒化処理を施すことにより鋼中Nを増量することによって、二次再結晶時に(Al,Si)Nを析出させ、インヒビターとして用いる方法が提案されている。
しかし、(Al,Si)Nは、鋼中に微細分散し、有効なインヒビターとして機能するが、Alの含有量によってインヒビター強度が決まるため、製鋼でのAlの的中精度が十分でない場合には、十分な粒成長抑制力(インヒビター効果)が得られないことがある。なお、製造の途中工程で窒化処理を行ない、(Al,Si)NあるいはAlNをインヒビターとして利用する方法は、その他にも数多く提案されており、最近では、スラブ再加熱温度が1300℃を超える製造方法等も開示されている。
一方、スラブ中にインヒビター形成成分を含有させずに二次再結晶を発現させる技術について検討が進められており、例えば、特許文献4には、より高純度化した鋼を用い、インヒビター成分を含有させずに、テクスチャー(集合組織)の制御によって、二次再結晶を発現させる、いわゆる「インヒビターレス法」の技術が開示されている。このインヒビターレス法は、高温のスラブ再加熱が不要であり、低コストで方向性電磁鋼板を製造することができるが、インヒビターを有しないが故に、製造工程における温度等のばらつきなどの影響を受けて、製品板の磁気特性も大きく変動し、安定した製造が難しいという問題点がある。
また、集合組織の制御は、このインヒビターレス法においては重要な要素であることから、集合組織を適正に制御するため、例えば、温間圧延などの技術が多く提案されている。しかし、集合組織制御が十分に行えない場合には、インヒビターを用いる技術に比べて、二次再結晶後のGoss方位({110}<001>)への集積度は低くなり、磁束密度も低くなる場合が多かった。
集合組織を制御することで磁気特性を向上させる技術としては、例えば、特許文献5には、一次再結晶焼鈍の加熱過程を急速加熱する方法が提案されている。この技術は、室温から再結晶温度近傍までを通電加熱あるいは誘導加熱などを用いて短時間で昇温することによって、通常の加熱速度では優先的に形成されるγファイバー({111}組織)の発達を抑制し、二次再結晶の核となる{110}<001>組織の発生を促進するものである。この技術を適用することで、二次再結晶後の結晶粒が細粒化し、鉄損を改善することができる。
なお、インヒビターレス法を用いた方向性電磁鋼板においても、急速加熱技術の適用が検討されている。しかし、急速加熱では、鋼板内、特に、板幅方向の温度のばらつきが大きくなるため、製造条件のばらつきの影響を受けやすいインヒビターレス法では磁気特性の変動も大きくなる。そこで、例えば、特許文献6には、急速加熱で一旦700℃以上まで加熱した後、700℃以下まで冷却し、その後、40℃/s以下の昇温速度で再び加熱することで、鋼板の温度のばらつきを解消する技術が開示されている。しかし、この方法では、高温まで昇温したのち、冷却・再加熱を行う必要があるため、通常の急速加熱に比べて余分なエネルギーが必要となる上、焼鈍ラインも長くならざるを得ない。また、磁気特性も、昨今の需要家からの厳しい要求に応えられるレベルのものではなかった。
特公昭40−015644号公報 特公昭51−013469号公報 特許第2782086号公報 特開平2000−129356号公報 特開平04−160114号公報 特許第4840518号公報
上述したように、インヒビターレス法を用いた方向性電磁鋼板の製造方法に、一次再結晶焼鈍の加熱過程で急速加熱する技術を適用した場合には、優れた磁気特性を安定して得るのが難しいという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも低鉄損かつ鉄損のばらつきが小さい優れた鉄損特性を有する方向性電磁鋼板を得ることができるインヒビターレス法を用いた有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、インヒビターレス法を用いた方向性電磁鋼板の製造方法において、その途中工程でNを鋼中に拡散させ、窒化珪素を粒界に析出させて正常粒成長の抑制力として機能させるとともに、一次再結晶焼鈍の加熱過程における急速加熱の途中で、適正な温度で適正時間保持する保定処理を施すことで、従来よりも低鉄損でなおかつばらつきの小さい、優れた鉄損特性を有する方向性電磁鋼板を安定して製造することができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.08mass%以下、Si:2.0〜4.5mass%、Mn:0.5mass%以下、sol.Al:0.0100mass%未満、S,SeおよびO:それぞれ0.0050mass%未満含有し、さらに、N:0.52×sol.Al(mass%)〜0.0080mass%の範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなる鋼スラブを、熱間圧延して熱延板とし、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍の途中あるいは一次再結晶焼鈍後に窒化処理を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する方向性電磁鋼板の製造方法において、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における550〜700℃間を平均昇温速度50℃/s以上で急速加熱するとともに、250〜550℃間のいずれかの温度で昇温速度10℃/s以下で1〜10秒間保持する保定処理を施し、前記窒化処理を、導入したNが鋼板表層の窒化物層として留まる条件、かつ、増N量0.0050〜0.1000mass%の範囲となる条件で行い、前記仕上焼鈍の加熱過程における300〜800℃間の滞留時間を20〜150時間とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.005〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、Cr:0.01〜1.50mass%、P:0.00050〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%およびNb:0.0005〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、インヒビター成分を含まない鋼スラブを用いる方向性電磁鋼板の製造方法に、一次再結晶焼鈍の加熱過程で急速加熱する技術を適用して、そのヒートパターンを最適化するとともに、製造工程の途中でNを鋼中に拡散させて窒化珪素として粒界に析出させ、これをインヒビターとして活用する技術と組み合わせることで、従来よりも優れた鉄損特性を有する方向性電磁鋼板を安価にかつ安定して提供することが可能となる。
窒化処理による増N量が、鉄損W17/50に及ぼす影響を示すグラフである。 一次再結晶焼鈍の加熱過程における保定処理時間が、鉄損W17/50に及ぼす影響を示すグラフである。 仕上焼鈍後の加熱過程で粒界に析出した窒化珪素をSEMにより観察した結果ならびにその析出物をEDX(エネルギー分散型X線分光法)で同定した結果である。
まず、本発明の基本的な技術思想について説明する。
発明者らは、製造条件、特に一次再結晶焼鈍で急速加熱するときの、鋼板内の温度不均一による磁気特性のばらつきを抑制することを目的として、製造工程の途中でNを鋼中に拡散させて窒化珪素として析出させ、これを正常粒成長の抑制力として機能させることを検討した。
すなわち、方向性電磁鋼板に、通常、数mass%含まれているSiを窒化珪素として析出させ、これをインヒビターとして利用することができれば、窒化物形成元素(Al,Ti,Cr,V等)の多寡に拘らず、窒化処理時の窒化量を制御するだけで、従来技術の(Al,Si)NやAlN等のインヒビターと同等の粒成長抑制力が得られるのではないかと考えた。
純粋な窒化珪素(Si)は、AlN中にSiが固溶した(Al,Si)Nとは異なり、ベースの鋼との格子の不整合が大きく、また、共有結合性の複雑な結晶構造を有するため、粒内に微細に析出させることは極めて困難である。したがって、従来法のように窒化処理後、粒内にインヒビターとして微細に析出させることは困難であると考えられる。しかし、これを逆に利用することによって、窒化珪素を選択的に粒界に析出させることができる可能性がある。そして、もし、これが可能であれば、析出物が粗大であっても十分な正常粒成長の抑制力が得られるのではないかと考えた。
また、発明者らは、一次再結晶焼鈍の加熱過程で急速加熱を行うときの問題点である鋼板内の温度不均一を抑制する方法について検討した結果、加熱過程で急速加熱する際、再結晶温度以下の温度で鋼板の昇温速度をほぼ0(ゼロ)とし、その後、急速加熱することを考えた。すなわち、再結晶温度以下の温度で一旦昇温を中断し、適当な時間保持することで鋼板内の温度分布を均一化することができれば、その後の急速加熱においても、鋼板内の温度を均一化できるのではないかと考えた。
そして、前述した窒化珪素をインヒビターとして活用する技術と、上記の一次再結晶焼鈍における急速加熱を適正化し、鋼板内の温度不均一を低減する技術とを組み合わせることで、二次再結晶を安定して起こさせることができれば、従来よりも優れた鉄損特性を有しかつばらつきの小さい方向性電磁鋼板を安定して得られることができるのではないかと考えた。そこで、上記考えを確認するため、以下の実験を行った。
<実験1>
C:0.04mass%、Si:3.5mass%、Mn:0.05mass%、sol.Al:0.0060mass%、N:0.0050mass%、S:0.0010mass%、Se:0.0008mass%およびO:0.0010mass%を含有する鋼スラブを熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×1分の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.27mmの冷延コイルとし、得られた冷延コイルの長手方向中央部から、幅100mm×400mmサイズの試料を採取し、この試料に脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。
上記一次再結晶焼鈍では、50vol%H−50vol%N、露点61℃の湿潤雰囲気下で、840℃×90秒の脱炭を行った。また、室温から840℃までは、誘導加熱装置を用いて加熱し、550℃から700℃までの平均昇温速度は120℃/sとなるよう制御した。また、上記加熱途中の400℃の温度で4秒間保持する保定処理を施した。なお、上記保定処理時間および550〜700℃間の加熱時間を除く時間における平均昇温速度は15℃/sとした。
次いで、上記一次再結晶焼鈍を施した試料の一部に対して、塩浴方式の窒化処理(バッチ処理)を、異なる温度、時間で施して鋼中のN量を増加させた。なお、窒化処理前後の試料について、全厚の鋼中窒素量を化学分析し、増N量を求めた。
その後、上記試料の表面に、MgOを主成分とし、TiOを5mass%含有する焼鈍分離剤を水スラリ状にして塗布し、乾燥した後、仕上焼鈍を施した。この際、加熱過程における300〜800℃間の滞留時間は20時間となるように制御した。
次いで、上記仕上焼鈍後の試料表面に、リン酸塩系の絶縁張力コーティングを塗布し、焼き付けて製品試料とした。なお、上記製品試料は、各製造条件につき20枚作製した。
斯くして得た各製品試料について、周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50を測定し、20枚の試料の平均値を求めた。
図1は、窒化処理により増加したN量(増N量)と、鉄損W17/50との関係を示したものである。この図から、良好な鉄損特性を得るためには、窒化処理による増N量を50〜1000massppm(0.0050〜0.1000mass%)の範囲とすることが必要であることがわかる。
<実験2>
上記実験1で作製した0.27mmの冷延コイルの長手方向中央部から、100mm×400mmサイズの試料を採取し、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。上記一次再結晶焼鈍では、55vol%H−45vol%N、露点60℃の湿潤雰囲気下で、850℃×80秒の脱炭を行った。なお、室温から850℃までは、誘導加熱装置を用いて加熱し、その加熱途中の100℃、200℃、250℃、400℃、530℃および600℃の各温度で0〜20秒間保持する保定処理を施した後、550℃(保定温度が600℃の場合は600℃)から700℃までの平均昇温速度を120℃/sに制御した。なお、上記保定処理時間および550〜700℃間の加熱時間を除く時間における平均昇温速度は16℃/sとした。
次いで、上記一次再結晶焼鈍後の試料に、塩浴方式で550℃×30秒の窒化処理(バッチ処理)を施し、鋼中N量を増加させた。なお、化学分析により試料全厚の鋼中窒素量を定量分析したところ、窒化処理していない試料は0.0020mass%で、窒化処理した試料は0.0120mass%(増N量:0.0100mass%)であった。
その後、上記試料の表面に、MgOを主成分とし、TiOを5mass%含有する焼鈍分離剤を水スラリ状にして塗布・乾燥した後、仕上焼鈍を施した。この際、加熱過程における300〜800℃間の滞留時間は20時間となるようにした。
次いで、上記仕上焼鈍後の試料表面に、リン酸塩系の絶縁張力コーティングを塗布し、焼き付けて製品試料とした。なお、上記製品試料は、各製造条件につき20枚作製した。
斯くして得た各製品試料について、周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50を測定し、20枚の平均値を求めた。
図2は、一次再結晶焼鈍の急速加熱途中における各保定温度での保定時間と、鉄損W17/50との関係を示したものである。この図から、保定温度を250〜550℃、保定時間を1〜10秒の範囲として施すことで、鉄損を低減できることがわかる。
ここで、一次再結晶焼鈍の加熱過程において、上記のように適正温度で適正時間保持する保定処理を施すことで鉄損が低減する理由については、鋼板の温度不均一が解消されることの他に、以下のような理由があると考えている。
まず、冷間圧延後の鋼板を、転位がポリゴン化し、歪エネルギーが減少して、圧延組織が回復を起こす温度域に短時間保持した場合を考える。一般に、{111}方位には、冷間圧延時に多くの歪が導入され、他の方位と比較して蓄積される歪エネルギーが高い状態にあるため、回復時には{111}方位から優先的に歪エネルギーが解放される。その結果、回復が起こる温度で保持した場合には、圧延組織による蓄積歪エネルギーの差異は失われ、再結晶時における{111}組織の優先成長性も低下する。
上記のような回復挙動の変化によって、一次再結晶集合組織中の{111}方位が減少し、Goss方位粒({110}<001>)等、他の方位の存在比率が高まるので、二次再結晶組織の微細化と、高磁束密度化を同時に達成することができる。ただし、{111}方位は、二次再結晶時に、Goss方位粒に蚕食される組織であり、減らし過ぎても、二次再結晶が不安定となってしまう。そのため、微妙な操業条件の変動等によって、二次再結晶が起こらなかったり、二次再結晶が起こっても、二次再結晶粒の集積度が低下したりするおそれがある。これに対し、本発明の窒化処理は、一次再結晶の途中以後でインヒビターを強化するので、上記した微妙な操業条件の変動等の影響を受けることなく、二次再結晶を安定して発現させることができる。
なお、上述した考えによれば、加熱途中の回復が起こる温度で短時間の保定処理を施すことによる磁気特性向上効果が得られるのは、従来のラジアントチューブ等を用いた昇温速度(10〜20℃/s)よりも速い昇温速度、具体的には50℃/s以上の昇温速度の場合に限られると考えられる。そこで、本発明においては、一次再結晶焼鈍の200〜700℃の温度範囲における昇温速度を50℃/s以上と規定する。
本発明は、上記の技術思想および実験結果に基いてなされたものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の素材となる鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。
C:0.08mass%以下
Cは、一次再結晶集合組織を改善する上で有用な元素であるが、0.08mass%を超えて含有すると、却って一次再結晶集合組織の劣化を招くので、上限を0.08mass%とする。なお、磁気特性を向上する観点からは、0.01〜0.06mass%の範囲が好ましい。一方、磁気特性よりも、一次再結晶焼鈍における脱炭を省略あるいは簡略化するためには、Cを0.01mass%以下とするのが好ましい。
Si:2.0〜4.5mass%
Siは、鋼の電気抵抗を高めることによって、鉄損を低減する効果のある有用元素である。また、Siは、窒化珪素を形成し、インヒビターとして機能する元素でもある。斯かる効果を有効に発現させるためには、2.0mass%以上添加する必要がある。一方、4.5mass%を超えると、冷間圧延性が大きく低下するので、上限は4.5mass%とする。
Mn:0.5mass%以下
Mnは、熱間圧延性を向上する効果があるため、0.005mass%以上含有させるのが好ましい。一方、0.5mass%を超えて添加すると、一次再結晶集合組織が悪化して磁気特性の劣化を招くので、上限は0.5mass%とする。好ましくは0.005〜0.1mass%の範囲である。
S,SeおよびO:それぞれ0.0050mass%未満
S,Seは、Mnと粗大なMnSやMnSeを形成して、また、Oは粗大な酸化物を形成して、一次再結晶組織を不均一にし、二次再結晶を阻害する元素である。特に、それぞれの含有量が0.0050mass%以上になると、二次再結晶を起こし難くなる。よって、これらの元素が、それぞれ0.0050mass%未満に制限する。好ましくは、それぞれ0.0030mass%以下である。
sol.Al:0.010mass%未満
Alは、鋼板の表面に緻密な酸化膜を形成し、窒化処理における窒化量の制御を困難にしたり、脱炭処理における脱炭を阻害したりする。そのため、Alは、sol.Alで、0.010mass%未満に制限する。ただし、酸素親和力の高いAlは、製鋼で微量添加することによって鋼中の溶存酸素量を低減し、特性劣化につながる酸化物系介在物を低減するのに有効である。よって、磁性の劣化を防止する観点からは、0.010mass%未満の範囲である程度含有することが望ましく、例えば、0.0020mass%以上含有することが好ましい。
N:0.52×sol.Al(mass%)〜0.0080mass%
本発明は、窒化処理することによって窒化珪素を粒界に析出させ、インヒビターとして機能させることが特徴である。したがって、含有するAlは、窒化処理前に窒化物AlNとして固定し、析出させておく必要があり、そのためには、AlNを形成するのに必要な量以上のNを事前に含有させておくことが必要である。AlNは、AlとNの原子がそれぞれ1:1で結合している。そこで、本発明では、Nを、sol.Alの含有量(mass%)に対して(Nの原子量(14.00)/Alの原子量(26.98))=0.52以上含有させる。一方、Nを過剰に含有させると、スラブ加熱時にフクレなどの欠陥を引き起こす原因となるため、上限は0.0080mass%とする。好ましくは0.0060mass%以下である。
本発明の方向性電磁鋼板は、磁気特性を改善することを目的として、上記必須成分に加えてさらに、以下の元素を適宜添加することができる。
Ni:0.005〜1.50mass%
Niは、熱延板の組織の均一性を高め、磁気特性を改善する効果がある。上記効果を得るためには0.005mass%以上含有させることが好ましい。一方、1.50mass%を超えて添加すると、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するようになる。よって、Niは0.005〜1.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%
SnおよびSbは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を向上する元素である。上記効果を得るためにはSnは0.01mass%以上、Sbは0.005mass%以上含有させることが好ましい。しかし、それぞれ0.50mass%を超えて添加すると、冷間圧延性が低下する。よって、Snは0.01〜0.50mass%、Sbは0.005〜0.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Cu:0.01〜0.50mass%
Cuは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがある。上記効果を得るためには0.01mass%以上含有させることが好ましい。しかし、0.50mass%を超えて添加すると、熱間圧延性の低下を招く。よって、Cuは0.01〜0.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Cr:0.01〜1.50mass%
Crは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがある。上記効果を得るためには0.01mass%以上含有させることが好ましい。しかし、1.50mass%を超えて添加すると、二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するようになる。よって、Crは0.01〜1.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
P:0.0050〜0.50mass%
Pは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがある。上記効果を得るためには0.0050mass%以上含有させることが好ましい。しかし、0.50mass%を超えると冷間圧延性が低下する。よって、Pは0.0050〜0.50mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Nb:0.0005〜0.010mass%、Mo:0.01〜0.50mass%
NbおよびMoは、スラブ加熱時の温度変化による割れの抑制等を介して、熱延板におけるヘゲ等の表面欠陥を防止する効果を有する。上記効果は、それぞれNb:0.0005mass%以上、Mo:0.01mass%以上で得られる。しかし、Nb:0.010mass%超え、Mo:0.50mass%超えでは、炭化物や窒化物を形成し、これが最終製品まで残留して、鉄損劣化を引き起こす。よって、それぞれ上記範囲で添加するのが好ましい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
まず、本発明の方向性電磁鋼板は、上述した成分組成に調整した鋼を溶製し、常法の連続鋳造法や造塊−分塊圧延法等で鋼スラブとし、所定の温度に再加熱した後、あるいは、再加熱することなく、熱間圧延に供する。なお、スラブを再加熱する場合の再加熱温度は1000〜1300℃の範囲とするのが好ましい。1300℃を超える加熱は、スラブ中にインヒビター成分を殆ど含有させていない本発明では、エネルギーコストの上昇を招くだけであり、一方、1000℃未満では、熱間圧延における圧延負荷が大きくなって、圧延することが困難となるからである。
上記熱間圧延後の鋼板(熱延板)は、その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回の冷間圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。この冷間圧延は、常温で行ってもよいし、常温より高い温度、たとえば250℃程度に鋼板温度を上げて圧延する温間圧延としてもよい。
次いで、上記最終板厚とした冷延板に一次再結晶焼鈍を施す。
この一次再結晶焼鈍の目的は、圧延組織を有する冷延板に一次再結晶を起こさせて、二次再結晶に最適な一次再結晶組織および粒径に調整することにある。そのためには、一次再結晶焼鈍の焼鈍温度は800〜950℃の範囲とすることが好ましい。なお、この一次再結晶焼鈍において脱炭を行う場合には、焼鈍雰囲気は湿水素窒素あるいは湿水素アルゴン雰囲気の湿潤雰囲気とすることが好ましい。
ここで、本発明の製造方法において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における550〜700℃間を平均昇温速度50℃/s以上で急速加熱するとともに、250〜550℃間のいずれかの温度で昇温速度10℃/s以下で1〜10秒間保持する保定処理を施す必要があることである。
550〜700℃間の平均昇温速度が50℃/s未満であると、一次再結晶集合組織中のGoss方位を十分に増やすことができず、急速加熱の効果が得られない。好ましくは75℃/s以上である。なお、上記一次再結晶焼鈍の急速加熱に用いる加熱手段は、トランスバース方式あるいはソレノイド方式の誘導加熱装置や、鋼板に電流を流し、ジュール熱によって加熱する通電加熱装置のいずれを用いてもよく、また、適切なヒートパターンに制御できれば他の装置を用いてもよい。
また、上記昇温速度を10℃/s以下とする保定処理の時間は、1秒未満であると鋼板内の温度不均一解消に効果が小さく、一方、10秒を超えると、過剰に歪が開放されて、{111}組織の成長が抑制され過ぎ、二次再結晶が不安定となる。好ましくは2〜8秒の範囲である。また、このときの昇温速度は負の値となっても良く、−5〜+5℃/s範囲内であれば、一定温度の保持と見做すことができる。
さらに、本発明において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍中あるいは一次再結晶焼鈍後に窒化処理を施すことが必要なことである。
なお、Sai等の技術文献(Sai Ramudu Meka et al.:Philos Mag vol.92,No.11,11 April 2012,1435−1455)には、冷間圧延後、一次再結晶をさせる前に窒化処理を施し、粒内に窒化珪素を析出させる技術が開示されている。しかし、冷間圧延後に窒化処理を行うと、転位上を窒素が拡散するため、本発明の技術思想である窒化珪素を粒界に析出させることが難しくなる。したがって、少なくとも再結晶が終わった一次再結晶焼鈍中あるいは一次再結晶焼鈍後のいずれかのタイミングで、窒化処理を行なうことが必要である。
また、上記窒化処理における増N量は0.0050〜0.1000mass%の範囲とすることが必要である。増N量が0.0050mass%未満では、窒化処理効果が十分に得られず、一方、0.1000mass%を超えると窒化珪素の析出量が過多となり、二次再結晶を起こし難くなるからである。好ましくは0.0080〜0.0600mass%の範囲である。
また、上記窒化処理の処理温度は、Nが鋼中に拡散を起こすような高温とせず、鋼板表層に窒化物層が形成する800℃以下の温度とするのが好ましい。本発明においては、窒化処理によって導入されたNは、最終的には窒化珪素として析出させ、インヒビターとして用いることを想定している。そのためには、析出した窒化珪素は、鋼板の板厚方向に均一に分布している必要がある。しかし、800℃を超える高温で窒化処理を行うと、Nが粒界を介して鋼板内部に大量に拡散するとともに、Siの拡散も促進されているため、Nが鋼板の板厚中心に到達する前に窒化珪素として析出してしまう。そこで、窒化処理は800℃以下で行い、Nを鋼板表層の窒化物層として留めておき、続く仕上焼鈍あるいは単独に行う長時間の焼鈍においてNを鋼中に拡散させ、均一に窒化珪素を析出させることが好ましい。ただし、窒化処理の時間が30秒程度の短時間であれば、800℃超えの温度で処理してもよい。
なお、上記窒化処理の方法は、窒化量を制御できれば特に制限はなく、例えば、NH雰囲気ガスを用いるガス窒化法や、より窒化能に優れる塩浴窒化法を用いてもよい。また、上記窒化処理は、コイル状態で行ってもよいし、コイルを巻き戻したストリップ(鋼帯)の状態で行ってもよい。
上記窒化処理を施した鋼板は、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶させる仕上焼鈍を施す。上記焼鈍分離剤は、仕上焼鈍後の鋼板表面にフォルステライト被膜を形成するためには、主剤をマグネシア(MgO)とする必要があるが、フォルステライト被膜の形成を必要としない場合には、主剤として、アルミナ(Al)やカルシア(CaO)等、仕上焼鈍温度より高い融点を有する適当な酸化物を用いることができる。
また、上記仕上焼鈍は、加熱過程における300〜800℃間の滞留時間を5〜150時間の範囲とする必要がある。この間に前述した窒化処理で形成した表層の窒化物が分解し、Nが鋼中へ拡散する。本発明の鋼素材の成分系では、AlNを形成することができるAlが残存していないため、粒界偏析元素であるNは粒界を拡散経路として鋼中へ拡散(粒界拡散)する。しかし、窒化珪素は、鋼との不整合性が大きいため、析出速度は極めて遅い。そのため、窒化珪素をインヒビターに用いて正常粒成長の抑制を図るためには、正常粒成長が進行する800℃の段階で、十分な量の窒化珪素が粒界上に選択的に析出している必要がある。
そこで、本発明においては、上記温度に到達する前の温度領域における滞留時間を5時間以上とすることで、窒化珪素は粒内には析出できないものの、粒界拡散したNを窒化珪素として粒界上に選択的に析出させる。なお、滞留時間の上限は、窒化珪素を析出させる観点からは必ずしも設ける必要はないが、150時間を超える滞留は効果が飽和し、焼鈍コストの上昇を招くだけであるため、150時間以下に制限する。なお、焼鈍雰囲気は、N,Ar,Hあるいはこれらの混合ガスのいずれを用いてもよい。
Alの含有量が制限され、AlNの形成に必要な量以上の過剰なNを含有し、かつ、他のMnSやMnSe等のインヒビター成分をほとんど含有しないスラブを素材に用いて、上述の工程を経て製造される本発明の方向性電磁鋼板では、仕上焼鈍の加熱過程の二次再結晶開始までの段階において、従来のインヒビターに比べて粗大な、100nm以上のサイズの窒化珪素を粒界に選択的に析出させることができる。
図3は、一次再結晶焼鈍後の鋼板に、増N量が0.0100mass%および0.0500mass%の窒化処理を施した後、300〜800℃の温度域の滞留時間が8時間となる昇温速度で800℃まで昇温し、直ちに水冷して、その鋼板組織を走査型電子顕微鏡SEMで観察した結果と、粒界析出物をEDXで同定した結果を示したものである。この図から、本発明において用いる窒化珪素の析出物は、従来利用されてきた微細な析出物(<100nm)のインヒビターとは異なり、最小のものであっても100nmを超える粗大な窒化珪素が粒界上に析出している様子を確認することができる。
なお、窒化珪素を粒界に選択析出させる工程は、現在の方向性電磁鋼板の製造プロセスでは、仕上焼鈍工程を利用するのがエネルギー効率上、最も有効である。しかし、窒化珪素の粒界への析出は、上記条件のヒートサイクルを付与できれば可能であるので、他の設備を用いて行ってもよい。また、窒化珪素を粒界に析出させる熱処理と、仕上焼鈍とを別々に行ってもよい。
上記仕上焼鈍後の鋼板は、その後、水洗やブラッシング、酸洗等で、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化焼鈍を施して形状矯正することが、鉄損の低減には有効である。
さらに、鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍において、あるいは、その前後において、鋼板表面に絶縁被膜を被成することが有効である。絶縁被膜の種類については、特に制限はないが、特開昭50−79442号公報や特開昭48−39338号公報に記載されているリン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
特に、鉄損の低減を図るためには、絶縁被膜として、鋼板に張力を付与する張力付与被膜を適用するのが好ましい。張力付与被膜の形成には、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させる方法を採用することが、被膜密着性に優れかつ著しく鉄損低減効果が大きい絶縁被膜を形成することができるので、より好ましい。
また、鉄損をより低減するためには、磁区細分化処理を施すことが好ましい。処理方法としては、一般的に実施されている、最終製品板に溝を形成したり、電子ビーム照射やレーザ照射、プラズマ照射等によって線状または点状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板や中間工程の鋼板表面にエッチング加工を施して溝を形成したりする方法等を用いることができる。
C:0.060mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.06mass%、S:0.0010mass%、Se:0.0012mass%、O:0.0010mass%、sol.Al:0.0050mass%およびN:0.0030mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとし、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×1分の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.27mmの冷延コイルとした。
次いで、上記冷延コイルの長手方向中央部から、幅100mm×長さ400mmサイズの試料を採取し、50vol%H−50vol%N、露点59℃の湿潤雰囲気下で840℃×80秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍では、室温から840℃までは通電加熱装置を用いて加熱し、その際、一部の試料を除いて、加熱途中で、表1に記載の条件で保定処理を施し、その後、550℃(保定終了温度が550℃超えの場合は、保定終了温度)から700℃までを、同じく表1に記載の昇温速度で加熱した。なお、上記保定処理時間および550〜700℃間の加熱時間を除く時間における平均昇温速度は18℃/sとした。
Figure 0005854234
次いで、上記一次再結晶焼鈍を施した試料に、一部を除いて、同じく表1に示す条件で窒化処理(バッチ処理)を施し、鋼中N量を増加させた。なお、窒化処理前後の鋼中N量は、化学分析法で試料全厚について定量した。
その後、上記試料の表面に、MgOを主成分とし、TiOを5mass%含有する焼鈍分離剤を水スラリ状にして塗布・乾燥した後、300〜800℃間の滞留時間を20時間とする仕上焼鈍を施し、その後、リン酸塩系の絶縁張力被膜を塗布し、焼き付けて製品板試料とした。なお、上記製品板試料は、各条件につき20枚作製した。
斯くして得た製品板試料についてJIS C2556に記載の方法で、周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50を測定し、その結果を表1に併記した。なお、表1の鉄損値は、20枚の試料の平均値である。表1から、本発明に適合する発明例の製品板試料は、いずれも良好な鉄損特性を有していることがわかる。
表2に示した符号A〜Nの成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×1分の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.27mmの冷延コイルとした。
Figure 0005854234
次いで、上記冷延コイルの長手方向中央部から、100mm×400mmサイズの試料を採取し、50vol%H−50vol%N、露点61℃の湿潤雰囲気下で840℃×80秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。この一次再結晶焼鈍では、室温から840℃までをソレノイド式の誘導加熱装置を用いて加熱し、その際、加熱途中の400℃の温度で5秒間保持する保定処理を施した後、再び昇温を開始し、550〜700℃間の平均昇温速度が100℃/sとなるように制御した。なお、上記保定処理時間および550〜700℃間の昇温時間を除く加熱時間における平均昇温速度は16℃/sとした。
上記一次再結晶焼鈍後の試料は、その後、連続ガス窒化装置を用いて、450℃×320秒の窒化処理を施し、鋼中窒素量を増加させた。なお、上記窒化処理による増N量は、試料全厚について化学分析法で分析した結果、0.0550mass%であることを確認した。
次いで、上記窒化処理後の試料表面に、MgOを主成分とし、TiOを5mass%含有する焼鈍分離剤を水スラリ状にして塗布・乾燥した後、300〜800℃間の滞留時間を、表2に記載の時間とする仕上焼鈍を施し、その後、リン酸塩系の絶縁張力被膜を塗布し、焼き付けて製品板試料とした。なお、上記製品板試料は、各条件につき20枚作製した。
斯くして得た製品板試料について、周波数50Hz、磁束密度1.7Tにおける鉄損W17/50をJIS C2556に記載の方法で測定し、その結果を表2に併記した。表2から、本発明に適合する発明例の製品板試料は、いずれも良好な鉄損特性を有していることがわかる。

Claims (2)

  1. C:0.08mass%以下、Si:2.0〜4.5mass%、Mn:0.5mass%以下、sol.Al:0.0100mass%未満、S,SeおよびO:それぞれ0.0050mass%未満含有し、さらに、N:0.52×sol.Al(mass%)〜0.0080mass%の範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなる鋼スラブを、熱間圧延して熱延板とし、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍の途中あるいは一次再結晶焼鈍後に窒化処理を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における550〜700℃間を平均昇温速度50℃/s以上で急速加熱するとともに、250〜550℃間のいずれかの温度で昇温速度10℃/s以下で1〜10秒間保持する保定処理を施し、
    前記窒化処理を、導入したNが鋼板表層の窒化物層として留まる条件、かつ、増N量0.0050〜0.1000mass%の範囲となる条件で行い
    前記仕上焼鈍の加熱過程における300〜800℃間の滞留時間を20〜150時間とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼スラブは、前記成分組成に加えてさらに、Ni:0.005〜1.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、Cr:0.01〜1.50mass%、P:0.00050〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%およびNb:0.0005〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2013026225A 2013-02-14 2013-02-14 方向性電磁鋼板の製造方法 Active JP5854234B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013026225A JP5854234B2 (ja) 2013-02-14 2013-02-14 方向性電磁鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013026225A JP5854234B2 (ja) 2013-02-14 2013-02-14 方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014152393A JP2014152393A (ja) 2014-08-25
JP5854234B2 true JP5854234B2 (ja) 2016-02-09

Family

ID=51574554

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013026225A Active JP5854234B2 (ja) 2013-02-14 2013-02-14 方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5854234B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BR112017003743B1 (pt) 2014-09-04 2021-05-04 Jfe Steel Corporation método de fabricação de chapa de aço elétrico de grão orientado, e aparelho de nitretação
KR101693516B1 (ko) 2014-12-24 2017-01-06 주식회사 포스코 방향성 전기강판 및 그 제조방법
WO2024053627A1 (ja) * 2022-09-06 2024-03-14 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法および誘導加熱装置
WO2024053628A1 (ja) * 2022-09-06 2024-03-14 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法および誘導加熱装置

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0867913A (ja) * 1994-08-24 1996-03-12 Nippon Steel Corp 鉄損の小さい珪素鋼板及びその製造法及び使用法
JP3885432B2 (ja) * 1999-12-01 2007-02-21 Jfeスチール株式会社 一方向性電磁鋼板の製造方法
JP4277529B2 (ja) * 2003-01-27 2009-06-10 Jfeスチール株式会社 下地被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法
JP4840518B2 (ja) * 2010-02-24 2011-12-21 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5772410B2 (ja) * 2010-11-26 2015-09-02 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014152393A (ja) 2014-08-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101921401B1 (ko) 방향성 전기 강판의 제조 방법
US20220267871A1 (en) Method of producing hot-rolled steel sheet for grain-oriented electrical steel sheet and method of producing grain-oriented electrical steel sheet
KR102140991B1 (ko) 방향성 전자 강판의 제조 방법
RU2610204C1 (ru) Способ изготовления листа из текстурированной электротехнической стали
JP6436316B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6119959B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4673937B2 (ja) 方向性電磁鋼板用鋼の処理方法及び方向性電磁鋼板の製造方法
WO2011102456A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2016067636A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2014114499A (ja) 方向性電磁鋼板
JP5854234B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5332946B2 (ja) 窒化型方向性電磁鋼板の窒化後のコイル巻き取り方法
JP2009256713A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6344263B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2003253341A (ja) 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP2011195875A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2017106111A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5920387B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5332707B2 (ja) 磁気特性が極めて優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP7260799B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7365414B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP3743707B2 (ja) 超高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法
JP5846390B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2021155833A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5904151B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140924

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150612

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150623

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150821

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151111

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5854234

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250