(実施例1)
本実施例に係る画像形成装置は、感光体、誘電体等の像担持体上に電子写真方式、静電記録方式等で静電潜像を形成し、この静電潜像を現像剤の補給を伴う現像装置によって現像し、可視画像を形成する。従って、本実施例は、このような構成と同じ若しくは同等の構成を有している画像形成装置であれば適用することができる。図1は、本実施例に係る画像形成装置の一例としての電子写真方式のデジタル複写機について、その全体構成を示す図である。
まず、複写されるべき原稿131の画像はレンズ132によってCCD等の撮像素子133に投影される。この撮像素子133は原稿131の画像を多数の画素に分解し、各画素の濃度に対応した光電変換信号を発生する。撮像素子133から出力されるアナログ画像信号は画像信号処理回路134に送られ、ここで各画素毎にその画素の濃度に対応した出力レベルを有する画素画像信号に変換され、パルス幅変調回路135に送られる。また、画像信号処理回路134から各画素毎の画像信号である、位置情報と濃度情報がCPU181に送られ、CPU181はこの情報をRAM182に一時保管する。
このパルス幅変調回路135は入力される画素画像信号毎に、そのレベルに対応した幅(時間長)のレーザ駆動パルスを形成して出力する。即ち、高濃度の画素画像信号に対しては、より幅の広い駆動パルスを、低濃度の画素画像信号に対しては、より幅の狭い駆動パルスを、中濃度の画素画像信号に対しては中間の幅の駆動パルスをそれぞれ形成する。
パルス幅変調回路135から出力されたレーザ駆動パルスは半導体レーザ136に供給され、半導体レーザ136をそのパルス幅に対応する時間だけ発光させる。従って、半導体レーザ136は高濃度画素に対してはより長い時間駆動され、低濃度画素に対してはより短い時間駆動されることになる。それ故、感光体ドラム140は、次述の光学系によって、高濃度画素に対しては主走査方向により短い範囲が露光される。つまり、画素の濃度に対応して静電潜像のドットサイズが異なる。従って、当然のことながら、高濃度画素に対するトナー消費量は低濃度画素に対するそれよりも大である。
半導体レーザ136から放射されたレーザ光136aは回転多面鏡137によって掃引される。f/θレンズ等のレンズ138及びレーザ光136aを像担持体たる感光体ドラム140方向に指向させる固定ミラー139によって感光体ドラム140上にスポット結像される。かくして、レーザ光136aは感光体ドラム140の回転軸とほぼ平行な方向(主走査方向)にこのドラム140を走査し、静電潜像を形成することになる。
感光体ドラム140はアモルファスシリコン、セレン、OPC等を表面に有し、矢印方向に回転する電子写真感光体ドラムであり、露光器141で均一に除電された後、一次帯電器142により均一に帯電される。その後、上述した画像情報信号に対応して変調されたレーザ光で露光走査され、これによって画像情報信号に対応した静電潜像が形成される。この静電潜像はトナー粒子とキャリア粒子が混合された二成分現像剤143を使用する現像器144によって反転現像され、可視画像(トナー像)が形成される。ここで、反転現像とは、感光体の光で露光された領域に、潜像と同極性に帯電したトナーを付着させてこれを可視化する現像方法である。このトナー像は2個のローラ145、146間に架張され、図示矢印方向に無端駆動される転写材担持ベルト147上に保持された転写材148に転写帯電器149の作用により転写される。
なお、説明を簡単にするために1つの画像形成ステーション(感光体ドラム140、露光器141、一次帯電器142、現像器144等を含む)のみを図示する。カラー画像形成装置の場合には、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各色に対する4つの画像形成ステーションが転写材担持ベルト147上にその移動方向に沿って順次に配列される。各画像形成ステーションの感光体ドラム上に原稿の画像を色分解した各色の静電潜像が順次に形成され、転写材担持ベルト147によって保持、搬送される転写材担持148に順次転写されることになる。
このトナー像が転写された転写材148は転写材担持ベルト147から分離されて図示しない定着器に搬送され、定着されて永久像に変換される。また、転写後に感光体ドラム140上に残った残留トナーはその後クリーナ150によって除去される。
上記現像器144の一例を図2に示す。図示するように、現像器144は感光体ドラム140に対向して配置されており、その内部は垂直方向に延在する隔壁251によって第1室(現像室)252と第2室(撹拌室)253とに区画されている。第1室252には矢印方向に回転する非磁性の現像剤担持体としての現像スリーブ254が配置されている。この現像スリーブ254はブレード256によって層厚規制された二成分現像剤(磁性キャリアと非磁性トナーを含む)の層を担持搬送し、感光体ドラム140に供給して静電潜像を現像する。現像効率、即ち潜像へのトナーの付与率を向上させるために、現像スリーブ254には電源257から直流電圧を交流電圧に重畳した現像バイアス電圧が印加されている。
第1室252及び第2室253にはそれぞれ搬送部材としての現像剤撹拌スクリュー258及び259が配置されている。スクリュー258は第1室252中の現像剤を現像スリーブの回転軸線方向に沿って撹拌搬送する。また、スクリュー259は、トナー補給槽160のトナー排出口161からトナー搬送スクリュー162の回転によって供給されたトナー163と既に現像器内にある現像剤143とを撹拌搬送し、トナー濃度を均一化する。隔壁251には図2における手前側と奥側の端部において第1室252と第2室253とを相互に連通させる現像剤通路(図示せず)が形成されている。上記スクリュー258、259の搬送力により、現像によってトナーが消費されてトナー濃度の低下した第1室252内の現像剤が一方の通路から第2室253内へ移動する。また、第2室253内でトナー濃度の回復した現像剤が他方の通路から第1室252内へ移動するように構成されている。
トナーの補給に関して、トナー濃度変動を低減するためにトナー濃度計算によって算出されたトナー補給スケジュールを実現するよう行う。トナー補給は、トナー補給実施時のトナー補給単位を所定単位時間の整数倍に限定して補給する。具体的には、トナー搬送スクリュー回転時間を予め定められた所定単位時間の整数倍の中から選択する方式を用いた(ブロック補給)。本実施例の場合、1ブロックあたりのトナー搬送スクリュー回転時間は0.3secに設定されており、約0.1g補給されることとなる。一画像あたりでのトナー搬送スクリュー回転時間は0.3secもしくはその整数倍に限定される。
また、トナー消費の累積量をRAM182に保持している。一画像全体のトナー消費量を積算し、その量を累積量に加算して、それを1ブロックの補給量である0.1gで除すことで、画像に対する補給ブロック数を決定する。累積量から補給量は減じて新たに記憶しておく。
さて、物理量データの補正を目的にトナー濃度の実測を行うために、本実施例では現像器144の第1室(現像室)252の底壁に長手に距離を置いて2個、第2室253の底壁に同様に2個、トナー濃度センサ120が設置されている。スクリュー形状が異なる部分、即ちスクリューによる搬送特性が異なる部分の数だけトナー濃度センサを設けている。本実施例における現像器144は第1室(現像室)252と第2室(撹拌室)253のスクリュー形状が異なるものであるため、トナー濃度センサを2対取り付けている。トナー濃度センサには、光学反射光検知方式や透磁率検知方式のものがあるが、ここでは、透磁率検知方式を用いている。
また、コントローラ180は、デジタル複写機を構成する各部を制御する。コントローラ180は、CPU181、プログラムや各種データを格納するRAM182、経過時間を測定するタイマ183等から構成される。各種データは計算に必要なデータであり、現像器構成データ、プロセス条件データ、計算条件データなどの運転中不変のデータがある。またこれ以外に、トナー濃度分布データ、現像剤質量密度分布データ、流速分布データ、拡散係数分布データ、流量分布データ、時刻データなどの運転中変動するデータがある。各分布データは現像器の流路を1次元とみなして、計算条件データ内の空間刻みデータで区切った現像室全領域の空間分布の各要素配列として格納されている。また、計算に使用する時間ステップも運転中変動するデータとしてRAM182に格納されている。
また、現像剤の耐久が進むとキャリアの帯電付与能力が低下する。このため、トナー濃度を初期トナー濃度である8wt%を維持するように制御すると、次第に現像剤の帯電量が低下してしまうことになり、かぶりやトナー飛散が悪化する課題が生じてしまう。そこで、本実施例では現像剤の帯電量を維持する手段として、基準トナー像の濃度が一定になるようにトナー濃度基準値(電圧値)を変化させるパッチ検知方式によるトナー濃度基準値補正を行う。パッチ検知方式によるトナー濃度基準値補正について以下で説明する。
耐久によってキャリアの帯電能力が低下し、現像剤の帯電量が徐々に低下すると、二成分現像方式の場合、所定のコントラストで現像された基準トナー像(基準パッチ)の濃度が次第に濃くなる。基準パッチの濃度をほぼ一定に保つためには、現像剤の帯電量をほぼ一定に維持する必要があるが、帯電能力の低下したキャリアで現像剤の帯電量を一定に保つにはトナー濃度を下げる必要がある。そこで、本実施例では、所定間隔で基準パッチを形成し、コントローラ180がその基準パッチ濃度が略一定になるように、トナー濃度基準値Vrefを補正し、トナー濃度を変化させて現像剤の帯電量が略一定になるような制御を行っている。
本実施例でのパッチ検知制御の実行間隔はプリント50枚ごとに実行される。パッチ検知制御の実行タイミングになると、感光ドラム140上に所定のコントラストで基準パッチを現像する。本実施例においては、パッチ検知方式のATRのパッチ画像の光学式濃度センサ173が設けられており、これにより濃度信号(検知結果)Vpsを検知する。濃度信号Vpsを予めメモリに記録されている初期基準信号Vprと比較する。
Vps−Vpr>0の場合は、基準パッチの濃度が初期濃度よりも濃くなっていると判断され、トナー濃度基準値Vrefを高くする、すなわちトナー濃度を下げる側に補正される。
基準パッチの濃度信号が初期基準信号よりも低い場合、すなわちVps−Vpr<0の場合には、トナー濃度基準値Vrefを低くする。すなわちトナー濃度を上げる側に補正する。
トナー濃度基準値の補正量はVps−Vprから求まる基準パッチの濃度信号と初期基準信号の差分によって決まり、この差分が大きいほどトナー濃度基準値の補正量を大きくする。
このように基準パッチの濃度信号に基づいてトナー濃度を変化させることによって現像剤の帯電量を略一定に保つことが可能となり、帯電量の低下に伴って顕著になりやすいかぶりやトナー飛散の発生を抑制できる。
また、RAM182には、これらの濃度信号の電圧値と、質量パーセント濃度で表されるトナー濃度値とのテーブルが格納してあり、これを用いてトナー濃度基準値(V)をトナー濃度目標値(wt%)に変換してRAM182に格納しておく。
次に、デジタル複写機が行う、トナー濃度計算、及びトナー補給処理について図3のフローチャートを用いて説明する。本実施例では、画像1枚を1つの単位としてトナー濃度を計算して、現像に伴うトナー濃度低下部に対してトナー濃度分布が均一化するようトナーを補給する処理を行う。よって、一連のシーケンスが完了する前に次の画像形成が始まる場合には、シーケンスが並行して行われることとなる。
まず、ステップS301では、トナー濃度計算に使用する各物理量の補正を行うタイミングかどうかを判定する。ここでの物理量補正のタイミングは、電源入力時、1000枚印字毎、環境変化が生じた場合とする。
次にステップS302では、物理量測定のためにトナーを一回補給する。
次にステップS303では、流動性能を表わす物理量としての拡散係数分布、流速分布、現像剤質量密度分布、流量分布を測定する。いずれの測定もトナー濃度センサによって検知されたトナー濃度の時間変動を使用する。
拡散係数は、補給したトナーによってトナー濃度が高い部分がトナー濃度センサの対のうち、搬送方向上流のセンサ部へ来た時と下流のセンサ部へ来た時のピークの振幅の値とそれぞれのピーク時間により、式(1)を用いて、拡散係数を算出する。これを第1室252と第2室253の双方で行い、拡散係数の空間分布を算出し、拡散係数分布データとしてRAM182に格納する。
流速は、上流センサと下流センサの間の距離を上流、下流のトナー濃度のピークの時間差で除すことで算出できる。これを第1室252と第2室253の双方で行い、流速の空間分布を算出して流速分布データとし、RAM182に格納する。
流量は閉じた循環流路ではいたるところで一定であるので、空間分布はない。この値は、1周にかかる周期を測定して、現像器144に投入している総重量をこの周期で除すことで、いたるところで一定値である質量流量を求めることができる。1周にかかる周期はRAM182に格納する。
質量密度分布は、流量が質量と流速の積で表されることを利用して、上で求めた流量を各位置の流速で除し、さらにRAM182から読み出した空間刻み幅で除すことにより求めることができ、質量密度分布データとし、RAM182に格納する。
またここで、時間ステップを更新する。計算を発散させずに、安定した計算を行うためには、流速と拡散係数から決定される時間以下に時間ステップを設定する必要がある。流速分布データをRAM182から読み出して、分布の中の最大値を検索する。この流速の最大値とRAM182から読み出した空間刻み幅を式(2)に代入して、式(2)を満たす最大の時間ステップaを求める。次に拡散係数分布データをRAM182から読み出して、分布の中の最大値を検索する。この拡散係数の最大値とRAM182から読み出した空間刻み幅を式(3)に代入して、式(3)を満たす最大の時間ステップbを求める。時間ステップaと時間ステップbを比較して小さい時間ステップをRAM182に格納する。
ステップS304で、1分間空回転を行い、トナー濃度を現像器144内で空間的に均一にし、その際のトナー濃度を測定する。RAM182に格納されているトナー濃度目標値をこのときのトナー濃度で除し、これをトナー補給量補正値として、RAM182に格納する。トナー補給量補正値を乗じた補給量を補給することで、計算の誤差やトナー補給に関連して生じるトナー濃度の誤差の蓄積を解消することができる。
ステップS305で、これらの物理量分布を古い時間の値から更新して格納する。
次に、ステップS306では、トナー濃度を予測するタイミングであるかを判定する。本実施例では1枚の画像における画像形成開始タイミングをトナー濃度予測タイミングとする。
次に、ステップS307では、タイマ183によって、現時刻を取得し、計算上の現時刻と、計算開始時刻としてRAM182に格納する。
次に、ステップS308において、画像出力に伴うトナー消費を含めたトナー濃度分布を計算する。トナー濃度分布の計算は式(4)を用いて行う。
式(4)は1次元移流拡散方程式であり、現像剤質量密度分布と、流速分布と、拡散係数分布を用いて、トナー濃度分布を求める式となっている。CPU181が行うトナー濃度分布計算に関するさらに詳細なフローチャートを図4に示した。図4を用いて、トナー濃度分布の計算を説明する。
ステップS4101において、現時刻を計算上の時刻としてセットする。
次に、ステップS4102において、RAM182から1つの時間ステップ前の現像器全領域のトナー濃度分布データと、現像剤質量密度分布データと、流速分布データと、拡散係数分布データと、時間ステップを読み出す。
次に、ステップS4103において、CIP法によって離散化された式(4)に各データを代入して、1つの時間ステップ後の現像器全領域のトナー濃度分布を計算する。
次に、ステップS4104において、計算されたトナー濃度分布データのうち、トナー補給位置のトナー濃度を補給位置トナー濃度時間変動のデータに追加する。
次に、ステップS4105において、1枚目の画像出力タイミングであるか判定する。
1枚目の画像出力タイミングであれば、ステップS4106において、画像データのビデオカウント値を読み出す。
次に、ステップS4107において、RAM182から、時間ステップ、空間刻み幅、ドラム回転速度を読み出す。
次にステップS4108において、ビデオカウント値とトナー消費量のテーブルを読み出す。
次に、ステップS4109において、時間ステップとドラム回転速度の積で表わされる画像送り方向の距離と空間刻み幅によって画像をメッシュに区切る。区切られた各メッシュの中のビデオカウント値の積算値を計算する。
次に、ステップS4110において、RAM182から読み出したビデオカウント値とトナー消費量のテーブルによって、ビデオカウント値の空間分布をトナー消費量の空間分布に変換する。
次に、ステップS4111において、計算上の時刻に対応した画像送り方向位置のトナー消費量空間分布と、トナー濃度分布を用いて、両者が対応する空間位置ごとに、トナー消費量に応じてトナー濃度を減少させる。
次に、ステップS4112において、2枚目の画像出力タイミングかを判定する。
2枚目の画像出力タイミングであれば、ステップS4113において、このときのトナー濃度分布を別途RAM182に格納する。これは、実際に2枚目の画像出力タイミングが始まると、その画像に対するトナー濃度分布の計算が開始するが、その計算においてこのトナー濃度分布を初期値として用いるためである。
次に、ステップS4114において、トナー濃度分布をRAM182に格納する。この際、1つの時間ステップ前のトナー濃度分布は必要なくなるため、上書きする形で更新する。
次に、ステップS4115において、計算上の時刻に時間ステップを加算してRAM182に格納する。
次に、ステップS4116において、計算開始時刻から計算上の時刻までがRAM182から読み出した現像剤が現像器を一周する1周期分の時間となったか判定する。1周期分の時間となっていれば計算を終了し、なっていなければステップS4101に戻り、ここまでの計算を繰り返す。こうすることで経過時間に伴って変動する現像装置内のトナー濃度分布を求めることができる。1周期分計算を行うのは、補給スケジュール作成に必要な補給位置トナー濃度時間変動を、1枚の画像出力から現像器1周にかかる時間分、取得するためである。本実施例において、1周期分としたのは、当該画像の現像によってトナー濃度が低下した部分の最後端が補給位置に到達するまでの時間、トナー濃度分布を計算する必要があり、1周分計算すれば十分であると考えられるためである。
ステップS309では、この画像に対する補給スケジュールを決定する。図5に画像パターンの異なる2種類の画像を現像した際の補給位置でのトナー濃度変動を計算した結果を示している。両者は現像室の搬送方向の上流50%と下流50%の領域で黒ベタとした画像パターンである。上流50%と下流50%とでは、現像されてから補給位置まで搬送される距離が異なるため、消費領域の下限ピークの位置が異なるのはもちろんのこと、波形の拡がりも上流で消費したものがより拡がるようになっている。一般に、移流拡散方程式によって現像装置内のトナー濃度分布を計算すると、拡散係数が同様であれば、補給位置から遠く、撹拌される時間が長い(搬送距離が長い)ほど、より拡がったトナー濃度分布となる。ここでいう搬送距離とは、実際に現像剤が拡散しながら搬送される距離のことを指すのではなく、搬送経路の搬送方向に沿って現像剤が滞留することなく搬送されたときのトナー消費位置から補給位置までの距離のことを指す。そのため、画像形成される位置のみが現像剤搬送方向に関して異なる同一画像を出力する場合は、搬送方向上流側に形成される画像を出力する場合の方が、搬送方向下流側に形成される画像を出力する場合よりも、補給位置ではより拡がったトナー濃度分布となる。従って、上記算出された濃度分布に基づいて目標濃度となるようにトナー補給することで搬送によって拡散されるトナー濃度分布の変動による現像装置内の濃度変動を抑制することができる。本実施例によれば、トナー搬送方向上流側で形成された画像の方が、搬送方向下流側で形成された場合よりも、搬送によって濃度分布が拡散する。このため、画像位置が現像剤搬送方向上流側となるほど単位枚数あたりに補給装置が補給する補給間隔が広がるように制御される。
次に、これらの波形に応じて補給スケジュールを決定する方法について説明する。まず、トナー補給量を決定するために、一画像中のトナー総量を求める。パルス幅変調回路135の出力信号がANDゲート164の一方の入力に供給され、このANDゲートの他方の入力にはクロックパルス発振器165からのクロックパルスが供給される。従って、ANDゲート164からはレーザ駆動パルスの各々のパルス幅に対応した数のクロックパルスが出力される。このクロックパルス数は各画像毎にカウンタ166によって積算され、ビデオカウント数が算出される。このカウンタ166からの各画像毎のパルス積算信号C1(ビデオカウント数)は、原稿131のトナー像を1つ形成するために現像器144から消費されるトナー量に対応している。このようにして、一画像中のトナー総量を求める。
一画像中のトナー総量に、RAM182に格納されているトナー補給量補正値を乗ずる。
一画像中のトナー総量をトナー消費累積量に加算する。加算された累積量を1ブロックの補給量0.1gで除し、補給ブロック数nを決定する(本実施例ではn=3)。トナー消費累積量を1ブロック補給量で除した際の剰余は新たなトナー消費累積量となり、RAM182に格納され、次の画像でのトナー補給量計算に持ち越される。次に図5のように計算されたRAM182に格納されているトナー補給位置での各時刻のトナー濃度と、RAM182に格納されているトナー濃度目標値を比較して、トナー濃度目標値を下回っているトナー濃度を積分し、そのトナー濃度の総和を算出する。このトナー濃度の総和を(n+1)等分する時間をn個計算する。このn個の時間を現時刻に足して、各補給開始時間とする。このような計算を行うことで、トナー消費が大きい部分では補給間隔が短くなり、トナー濃度変動低減効果が得られることとなる。図6(a)に上流50%消費したパターンに対する補給タイミングを示し、図7(a)に下流50%消費したパターンに対する補給タイミングを示した。比較を行うために、一画像に対し、定時間に補給を行う従来のビデオカウントATRで制御した補給スケジュールを図6(b)、図7(b)に示した。
ステップS310で、補給スケジュールに従ってトナー補給を行う。補給ブロック数nと補給スケジュールに基づいたn個の補給開始時間をCPU181に供給するとともに、RAM182に記憶する。CPU181は、タイマ183が補給開始時間になったときに、モータ駆動回路169を制御して、あらかじめ設定されている補給時間の間、モータ170を駆動する。
モータ170の駆動力はギア列171を介して、搬送スクリュー162に伝達され、搬送スクリュー162は、トナー補給槽160内のトナー163を搬送して現像器144に所定量のトナーを補給する。これを補給ブロック数nだけ繰り返す。この一連のトナー補給は1つの画像の現像が終了する都度行われる。
次にステップS311で、パッチ検知タイミングか否かを判定する。
パッチ検知を行う場合には、ステップS312でパッチ検知を実行する。
次にステップS313でVps−Vpr>0かVps−Vpr<0かを判定する。
Vps−Vpr>0の場合は、ステップS314で、Vps−Vprの差分からVrefの補正量を決定し、トナー濃度を下げる側に補正する。
Vps−Vpr<0の場合は、ステップS315でVpr−Vpsの差分からVrefの補正量を決定し、トナー濃度を上げる側に補正する。
図6(c)、図7(c)に本実施例の補給制御方式を用いた場合と、従来のビデオカウントATRを用いた場合のスリーブ上長手中心点のトナー濃度の時間変動をシミュレーションした結果を示した。シミュレーション方法は、本実施例と同様の移流拡散方程式を用いて計算したものである。併せて、従来技術のビデオカウントATR方式の制御もシミュレーションを行い、結果を示している。従来技術と本実施例の方式を比較すると、本実施例の方式ではトナー濃度の時間変動幅が非常に小さくなっていることがわかる。図6(c)の上流消費では、開始後上流で消費したトナー濃度の低い剤が流れてくるがこの部分を除いて、その後の変動幅を調べると、上流消費における本実施例のトナー濃度変動幅は0.06%であり、従来技術のトナー濃度変動幅は0.25%であった。下流消費では、本実施例のトナー濃度変動幅は0.05%であり、従来技術のトナー濃度変動幅は0.09%であった。
以上のように、従来と同様のトナー搬送スクリューによるブロック補給を行う装置において、本実施例の方式により、面内での出力位置や、搬送時のトナー濃度の拡がりまで考慮して、トナー濃度変動を低減させる画像形成装置を提供することが可能となった。
また、本実施例では補給ブロック数nを3とし、1ブロック補給量を0.1gとして補給制御を行った。補給スクリュー径を小さくするか、あるいは補給スクリュー回転速度を遅くすることなどによって、1ブロック補給量を小さくし補給ブロック数nを増やすことができる。こうすることによって、トナー濃度が低下した領域に対してより詳細な空間的/量的分解能で補給することができることから、トナー濃度変動をさらに低減させることができる。
図8に、補給ブロック数nを10とし、1ブロック補給量を0.03gとして補給を行った場合のトナー濃度の時間変動をシミュレーションした結果を示した。図8(a)は、図6(a)と同様であり、n=3の場合の補給スケジュールを示している。図8(b)は、n=10の場合の補給スケジュールを示している。
図8(c)にn=3の場合とn=10の場合のスリーブ上長手中心点のトナー濃度の時間変動をシミュレーションした結果を示した。n=3の場合のトナー濃度変動幅0.06%に対して、n=10の場合のトナー濃度変動幅は0.04%となり、補給ブロック数を増やすことでトナー濃度変動幅をさらに低減させることができる。また、物理量の補正を行っていることから、環境変動や現像剤の状態変化があっても予測精度は低下しないので、より安定してトナー濃度を均一化することが可能となる。図9に、この例として、物理量補正を行う場合と行わない場合のトナー濃度の時間変動をシミュレーションした結果を示した。図9(a)は拡散係数の補正を行い、補給スケジュールを適正に設定している場合のトナー濃度波形とトナー補給スケジュールを示している。図9(b)は、環境変動等によって拡散係数などの物理量が変化した場合のトナー濃度波形に対して、拡散係数の補正を行うことなく、補給スケジュールを設定した場合のトナー濃度波形とトナー補給スケジュールである。具体的には、環境変動によって拡散係数が1/3となった場合のトナー濃度波形としている。図9(c)に物理量補正を行う本実施例の場合と、物理量補正を行わない場合のスリーブ上長手中心点のトナー濃度の時間変動をシミュレーションした結果を示した。本実施例のトナー濃度変動幅は0.05%であり、物理量補正を行わない場合のトナー濃度変動幅は0.07%であった。本例においては、補正した物理量は拡散係数のみである。実機においては、各物理量が相互に変動することから、物理量補正を行わない場合には、さらにトナー濃度変動幅が大きくなることも考えられる。
なお、本実施例では、トナー濃度センサを2対、合計4個現像器に取り付けていたが、物理量測定の精度が問題にならない場合には、1つのみ取り付け、2つのセンサの信号を用いるところを、1周期目と2周期目の信号を用いて同様に処理を行うこともできる。こうすれば、より簡単な構成を取ることができる。
また、本実施例では、補給スケジュール作成の際に、トナーが補給されてすぐに現像剤に取り込まれると考慮していた。しかしながら、補給トナーが現像剤にすぐには取り込まれずに、現像剤上に浮遊して少しずつ取り込まれる場合には、この現象をトナー濃度予測の際に考慮に入れて、補給スケジュールを作成すればよい。こうすれば、このような現象がある際にも、トナー濃度変動低減の精度を落とすことなく運転することができる。
また、本実施例では、一次元の移流拡散方程式でトナー濃度を計算したが、二次元や三次元の移流拡散方程式を計算してトナー濃度を求めても構わない。
また、本実施例では、トナー濃度計算のタイミングを画像形成開始時としたが、複写機運転上好ましいタイミングで、トナー補給が間に合うタイミングであれば、いつ計算しても構わない。
また、本実施例では、物理量の補正タイミングを電源入力時、1000枚印字毎、環境変化が生じた場合としたが、印字毎数が他の枚数でも構わないし、一定時間毎など、他の条件を補正タイミングに設定しても構わない。
(実施例2)
実施例2における発明の構成、動作などについて、上記の実施例1と共通する説明を省略し、実施例1と異なる点について説明する。
実施例2における画像形成装置は、トナー補給装置と方法が実施例1とは異なり、トナー濃度変動をより低減するために、高精度なトナー補給を行う。
本実施例におけるトナー補給装置を説明する。トナー濃度変動を小さくするためには、トナー補給の時間分解能を良くし、高精度な補給を行う必要がある。そのため、本実施例においては、トナー搬送スクリュー162のフィン径を例えば5mmと小さくし、トナー163が密に充填されている状況で運転し、決められた補給時間単位でスクリュー回転数を変化させて補給量を調節する。回転数と補給量の関係は、あらかじめ測定してテーブルとして複写機制御部に記憶しておく。高精度な補給を行うためには、上記のような方式の他、超音波搬送や電界搬送などがあるが、それらを用いても構わない。
次に、本実施例が行うトナー補給処理について説明する。全体の流れは実施例1とほぼ変わらないため、図3のフローチャートを用いて実施例1と異なる部分を説明する。
ステップS301〜S308までは実施例1と同様である。
ステップS309において、画像に対する補給スケジュールを決定する。図10に1枚の画像を現像した際のトナー補給位置でのトナー濃度時間変動をシミュレーションした結果と、これに対する補給スケジュールを示した。横軸が時間であり、折れ線グラフがトナー濃度時間変動で左縦軸に対応する。棒グラフがトナー補給量であり、右縦軸に対応する。
画像を現像したことによってトナー濃度が低下した部分に対して、トナー濃度目標値とするようトナーを補給する。トナー補給スケジュールは、トナー補給位置を通過する時間100msec毎に、トナー濃度目標値から減少しているトナー濃度の累積値を算出し、この累積値をトナー濃度目標値にするよう補給位置の現像剤質量からトナー補給量を算出する。これを100msec毎の時刻帯で行えば図10に示したような補給スケジュールとなる。
ステップS310で、補給スケジュールに従って、トナー補給を行う。100msec毎のトナー補給量と補給開始時間をCPU181に供給するとともに、RAM182に記憶する。CPU181は、トナー補給量とトナー163をトナー補給槽160から現像器144に供給するのに要する搬送スクリュー162の回転速度の対応関係を示す換算テーブルを有している。CPU181は、タイマ183が補給開始時間になったときに、必要なトナー補給量を実現する回転速度となるようモータ駆動回路169を制御して、モータ170を駆動する。
モータ170の駆動力はギア列171を介して、搬送スクリュー162に伝達され、搬送スクリュー162は、トナー補給槽160内のトナー163を搬送して現像器144に所定量のトナーを補給する。これを補給スケジュールで設定された補給の回数だけ繰り返す。
ステップS311〜S315までは実施例1と同様である。
図11に本実施例の補給制御方式を用いて、画像出力頻度を変えて現像、補給運転を行う様子をシミュレーションした結果を示す。シミュレーション方法は、本実施例と同様の移流拡散方程式を用いて計算したものである。併せて、従来技術のインダクタンスATR方式の制御とビデオカウントATR方式の制御もシミュレーションを行い、結果を示している。図11のグラフは、スリーブ上長手中心点のトナー濃度の時間変動を示している。従来の2方式と本実施例の方式を比較すると、本実施例の方式ではトナー濃度の時間変動幅が非常に小さくなっていることがわかる。この変動幅の最大値をΔTCと定義し、図12に各方式のΔTCの画像頻度依存性を示した。こちらで比較すると、ΔTCの最大値はインダクタンスATR方式が約0.3%、ビデオカウントATR方式が0.57%であるのに対して、本実施例の方式は0.1%以下であった。
以上のように、本実施例の方式により、トナー濃度変動の少ない画像形成装置を提供することが可能となった。また、物理量の補正を行っていることから、環境変動や現像剤の状態変化があっても予測精度は低下しないので、より安定してトナー濃度を均一化することが可能となる。
また、実施例1の方式と本実施例の方式の比較を行った。実施例1における補給ブロック数nが3の場合のトナー濃度変動と、本実施例の補給方法を用いた場合のトナー濃度変動のシミュレーション結果を図13に示した。図13は実施例1と本実施例の補給制御を行った場合のスリーブ上長手中心位置でのトナー濃度変動である。
トナー濃度変動幅は実施例1の場合は0.06%であり、本実施例の場合は0.02%であり、本実施例の補給方式を用いることにより、本実施例1よりさらにトナー濃度変動を低減させることが可能となる。
また、本実施例では、トナー補給スケジュールを作成する際の単位時間を100msecとしたが、この時間より短くても、あるいは長く設定しても構わないし、補給時間の単位を固定せず可変としても構わない。