以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
<実施形態1>
まず、本実施形態の電子機器の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態の電子機器の一例を模式的に示す断面図であり、図2は、図1の電子機器の底面図である。また、図3は、本実施形態の電子機器の他の一例を模式的に示す断面図であり、図4は、図3の電子機器の側面図である。
図1乃至図4に示すように、本実施形態の電子機器は、筺体10と、電子部品20と、構造体30と、を有する。
ここで、図1および図2に示す構成の電子機器としては、例えばノート型PCが該当する。図中、10´は筺体10の一部であり、例えばメモリを増設するためのカバーが該当する。ユーザは、必要に応じて、カバー10´を開いて所定位置にメモリをセットした後、再びカバー10´を閉める動作を行う場合がある。カバー10´と、筺体10の本体との間には、筺体10の内部空間と外部空間とを繋ぐ隙間40が存在している。次に、図3および図4に示す構成を有する電子機器としては、例えばプロジェクターが該当する。図中、10´は筺体10の一部であり、例えば筺体10(本体)と勘合するカバーが該当する。カバー10´と、筺体10の本体との間には、筺体10の内部空間と外部空間とを繋ぐ隙間40が存在している。なお、PCおよびプロジェクターはあくまで一例であり、本実施形態の電子機器はその他の種類の電子機器であってもよい。また、図1乃至図4に示す構造はあくまで一例であり、このような構成に限定されない。
以下、本実施形態の電子機器の各構成について説明する。
筺体10は、少なくとも内壁面の一部領域において導電性を有する。すなわち、筺体10の内壁面の少なくとも一部領域は、導電性を有する材料を含んで構成される。導電性を有する材料は特段制限されない。また、筺体10の内壁面内における導電性を有する領域の位置、形状および大きさについても特段制限されない。
筺体10は、内部空間と外部空間とを繋ぐ隙間40を有する。隙間40は、筺体10の導電性を有する領域に存在する。なお、筺体10が導電性を有さない領域をも有する場合には、隙間40は、導電性を有する領域と導電性を有さない領域とに跨って存在してもよい。隙間40は、電子機器の設計上、何らかの目的を持って意図的に設けられたものであってもよいし、電子機器(特に筺体10)の設計上、やむを得ず存在してしまうものであってもよい。このような隙間40の形状および大きさは特段制限されず、あらゆる形状のものが該当する。例えば、平面形状がドット状の隙間であってもよいし、平面形状がライン状(直線、曲線を含む)の隙間であってもよい。また、隙間40は、図1および図2に示すように、筺体10の1つの面内に存在してもよいし、または、図3および図4に示すように、筺体10の複数の面に跨って存在してもよい。なお、図1乃至図4を用いて説明した例では、筺体10と、筺体10の一部であるカバー10´との間に形成される隙間40を示したが、これはあくまで一例であり、本実施形態の隙間40はこのような隙間に限定されない。
その他、図1乃至図4に示す筺体10の形状、大きさ、縦横比等はあくまで一例であり、本実施形態においてはこれらに限定されない。
電子部品20は、筺体10内に格納される。電子部品20の種類は特段制限されず、例えば、電子回路基板などが該当する。
ここで、上記のような構成の筺体10内に、電子部品20を格納している場合、電子部品20に流れる動作信号電流による磁界により、電子部品20に近接する筺体10の導電性を有する内壁面に誘起ノイズ電流が流れる場合がある。この誘起ノイズ電流は、筺体10の導電性を有する内壁面を介して移動することで隙間40に到達し、その後、隙間40を介して筺体10の外部空間に移動して、例えば、電磁波として空気中に放射される恐れがある。
本実施形態の電子機器は、上述のような不都合を回避する機能を有する構造体30を、筺体10の導電性を有する内壁面に接して設けられている。構造体30は、誘電体の層と、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有する導電体の層と、を有する。以下、構造体30について詳述する。
図5は、筺体10の導電性を有する内壁面11(以下、単に「内壁面11」という)に接して設けられた構造体30の断面構造の一例を模式的に示す。
図5に示すように構造体30は、第1導体71と、接続部材73と、誘電体層75と、を有する。
誘電体層75は、内壁面11に接して設けられる。そして、誘電体層75は、少なくとも一部が、内壁面11に接着する接着層75Bを構成している。例えば図5に示すように、誘電体層75は、誘電体で構成される層75Aと、接着層75Bと、で構成される積層構造であってもよい。層75Aは、例えばフレキシブル性を有する基板であってもよい。さらに具体的には、層75Aは、例えばガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等であってもよい。層75Aは、単層であってもよいし、複層であってもよい。次に、接着層75Bは、例えば接着剤で構成することができる。接着剤の原料としては特段制限されず、例えば天然ゴム、アクリル樹脂、シリコーン等、従来技術に準じたあらゆる原料を用いることができる。なお、層75Aおよび接着層75Bの厚さは設計事項である。
第1導体71は、誘電体層75の表面であって、誘電体層75の内壁面11と接する面77と反対側の面76上に、内壁面11に対向して設けられる。なお、第1導体71は、誘電体層75の内部に、内壁面11に対向して設けられてもよい。このような第1導体71は、少なくとも一部領域に繰り返し構造、例えば周期的な構造を有している。繰り返し構造としては、図5に示すように、互いに分離した複数の島状導体71Aが繰り返し、例えば周期的に設けられた構造が考えられる。
なお、島状導体71Aにおける「繰り返し」には、島状導体71Aが部分的に欠落している場合も含まれる。また「周期的」には、一部の島状導体71Aそのものの配置がずれている場合も含まれる。すなわち厳密な意味での周期性が崩れた場合においても、島状導体71Aが繰り返し配置されている場合には、島状導体71Aを構成要素の一部とするEBG構造(以下で説明する)のメタマテリアルとしての特性を得ることができるため、「周期性」にはある程度の欠陥が許容される。
島状導体71Aの原料は特段制限されず、例えば銅等を選択できる。島状導体71Aの平面形状についても特段制限されず、三角形、四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。なお、大きさおよび/または形状が異なる2種類以上の島状導体71Aを繰り返し配置することもできる。かかる場合、2種類以上の島状導体71Aは、各種それぞれ周期的に配列されるのが望ましい。島状導体71Aの大きさ、相互間隔等は、島状導体71Aを構成要素の一部とするEBG構造(以下で説明する)に設定する所望のバンドギャップ帯域に応じて定められる。
接続部材73は、誘電体層75の内部に設けられ、一部または全部の島状導体71Aと、内壁面11とを、電気的に接続する。すなわち、接続部材73は、少なくとも誘電体層75の面77(内壁面11と接する面)側で露出し、内壁面11と接するとともに、一部または全部の島状導体71Aと接する。なお、一部の島状導体71Aと内壁面11とを電気的に接続するよう接続部材73が設けられる場合、この接続部材73は、周期的に設けられてもよいし、周期的に設けられなくてもよい。しかし、接続部材73を周期的に設けた場合、接続部材73を構成要素の一部とするEBG構造(以下で説明する)は、Bragg反射を起こしてバンドギャップ帯域が広がるため、周期的であるのが望ましい。ここでの「周期的」には、一部の接続部材73そのものの配置がずれている場合も含まれる。このような接続部材73は、例えば銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成することができる。
本実施形態の構造体30は接着層75Bを有するシートであり、筺体10の内壁面11にシート状の構造体30を貼り付けることで、図5に示すような状態が得られる。
ここで、本実施形態では、内壁面11と構造体30とにより、EBG構造が構成される。図6および図7に、内壁面11と構造体30とにより構成されるEBG構造の一例を模式的に示す。図6は、EBG構造の構成を模式的に示す斜視図であり、図7は、図6のEBG構造の断面図である。
図6および図7に示すEBG構造は、シート状導体2と、互いに分離した複数の島状導体1と、複数の接続部材3と、を有する。シート状導体2は内壁面11に対応し、島状導体1は構造体30の島状導体71Aに対応し、接続部材3は構造体30の接続部材73に対応する。
複数の島状導体1は、平面視でシート状導体2と重なる領域であって、シート状導体2から離れた位置に、誘電体層(図示せず)を挟んで配置されている。また、複数の島状導体1は、周期的に配列されている。接続部材3は、複数の島状導体1のそれぞれを、シート状導体2と電気的に接続している。このEBG構造は、1つの島状導体1と、当該島状導体1に対応して設けられた接続部材3と、シート状導体2の中の当該島状導体1に対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。そして、この単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置されることにより、この構造体はメタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。このEBG構造は、いわゆるマッシュルーム構造を有するEBG構造である。
ここで、単位セルAの「繰り返し」には、いずれかの単位セルAにおいて構成の一部が欠落している場合も含まれる。また単位セルAが2次元配列を有している場合には、「繰り返し」には単位セルAが部分的に欠落している場合も含まれる。また「周期性」には、一部の単位セルAにおいて構成要素(島状導体1、接続部材3)の一部がずれている場合や、一部の単位セルAそのものの配置がずれている場合も含まれる。すなわち厳密な意味での周期性が崩れた場合においても、単位セルAが繰り返し配置されている場合には、メタマテリアルとしての特性を得ることができるため、「周期性」にはある程度の欠陥が許容される。なお、これらの欠陥が生じる要因としては、単位セルAの間に配線やビアを通す場合、既存の配線レイアウトにメタマテリアル構造を追加する場合において既存のビアやパターンによって単位セルAが配置できない場合、製造誤差、及び既存のビアやパターンを単位セルの一部として用いる場合などが考えられる。上述の前提は、以下のすべての実施形態において同様である。
図8は、図7に示した単位セルAの等価回路図である。図8に示すように、この単位セルAは、隣り合う島状導体1間に生じるキャパシタンスC、および、接続部材3がつくるインダクタンスL、で構成される。
このEBG構造によれば、シート状導体2の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制できる。また、隣り合う島状導体1どうしがキャパシタンスCを構成することで、EBG構造体付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
ここで、上記EBG構造は、複数の島状導体1とシート状導体2との間隔、接続部材3の太さ、複数の島状導体1の相互間隔等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。すなわち、EBG構造により伝播を抑制されるノイズの周波数を調節することができる。
例えば、図7に示すEBG構造の場合、隣り合う2つの島状導体1と、この2つの島状導体1それぞれに接続した2つの接続部材3と、シート状導体2の中の2つの島状導体1に対向する領域を含む一部領域とは、図9に示す等価回路図で示すことができる。このような等価回路図で示されるEBG構造のバンドギャップ帯域fは、図10に示す式により算出することができる。この式に従い、EBG構造を構成するキャパシタンスCおよび/またはインダクタンスLを適当に調節することで、所望のf値を設定することができる。さらに具体的には、例えば隣り合う島状導体1間の距離を変更したり、島状導体1の大きさを変更したり、接続部材3の長さを変更したりすることで、キャパシタンスCおよび/またはインダクタンスLを適当に調節し、所望のf値を設定することができる。なお、以下の実施形態で説明する他の構成のEBG構造の場合も同様に、それぞれのEBG構造により定まるバンドギャップ帯域fを算出するための式に基づき、キャパシタンスCおよび/またはインダクタンスLを適当に調節することで、所望のf値を設定することができる。
なお、本実施形態では、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の電子機器は、内壁面11と構造体30とにより、上記のようなEBG構造を構成している。このため、構造体30が設けられている領域において、内壁面11におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。さらに、構造体30を構成する島状導体71A、接続部材73および誘電体層75を適切に設計することで、所望の周波数のノイズ伝播を適切に抑制することができる。
次に、構造体30を設けることにより得られる上記作用効果を前提にして、構造体30を設ける好ましい位置について説明する。
上述の通り、構造体30を設けた位置においては、内壁面11を介したノイズ電流の伝播を抑制できる。この点を考慮すると、構造体30は、内壁面11を伝播しているノイズ電流が隙間40に到達するのを阻止する位置に設けられるのが望ましい。例えば、図1乃至図4に示すように、構造体30は、隙間40を取り囲むように設けられてもよい。なお、構造体30は、内壁面11の全面に設けられてもよい。ここでの全面とは、設計上、本実施形態のシート状の構造体30を貼り付け可能な位置全面に、という意味である。
なお、隙間40と、構造体30との間の距離が大きすぎると、この間に存在する内壁面11に誘起ノイズ電流が流れ、隙間40に到達してしまう恐れがある。よって、構造体30は、当該不都合を回避できる位置に設けるのが好ましい。以下、この位置について、図11を用いて説明する。
内壁面11を介したノイズ電流の伝播を考えると、隙間40の端部aは開放端であり、島状導体71Aの端部bより図中右側は、EBG構造の抑制機能により短絡状態と考えることができる。端部aが開放端:電圧最大、端部bが短絡端:電圧最小となる周波数では、4分の1波長の共振状態となり、隙間40を介してノイズが外部空間に移動してしまう恐れがある。そこで、筺体10の内壁面11に存在する隙間40から、内壁面11に接して設けられた構造体30が有する島状導体71A(導電体の層)までの、内壁面11に水平な方向の距離をl(mm)とし、電子部品20の動作周波数をf(GHz)とした時、l≦(300/f)/4の関係を満たすのが好ましい。なお、より好ましくは、l≦(300/f)/8、の関係を満たすのが好ましい。このようにすれば、上記不都合を抑制できる。
以上説明したような構成を有する本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
次に、本実施形態の構造体30の製造方法の一例について、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態の構造体30の製造工程の一例を示す断面図である。
まず、(1)に示すように、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等の基板(層75A)の第1の面(図中、上側の面)に、銅箔71を形成する。次に、(2)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔71の一部を選択的にエッチングすることでパターン(互いに分離した複数の島状導体71A)を形成する。その後、(3)に示すように、ドリルにより、島状導体71Aと層75Aを貫通する穴を形成する。
次に、(4)に示すように、(3)で形成した穴に、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成された貫通ピン(接続部材73)を挿入する。
その後、(5)に示すように、層75Aの第2の面(図中、下側の面)に接着層75Bを形成する。この接着層75Bは、接続部材73が接着層75Bを貫通し、露出するように形成される。このように形成する具体的手段としては特段制限されないが、以下のような手段であってもよい。例えば、(4)で挿入する接続部材73の長さを、挿入した状態で層75Aの第2の面(図中、下側の面)から一端が露出する程度の長さに構成する。そして、接着層75Bをシート状接着剤で構成し、シート状接着剤(接着層75B)を層75Aの第2の面に形成する際に、シート状接着剤(接着層75B)を強く押し込むことで、接続部材73の一端をシート状接着剤(接着層75B)の表面から露出させることで実現してもよい。または、接着層75Bを、流動性を有する接着剤で構成するようにし、層75Aの第2の面(図中、下側の面)にこの接着剤を塗布した後、スキージを用いて、接続部材73の表面に塗布された接着剤を取り除くことで、接続部材73を接着層75Bの表面から露出させてもよい。次に、必要に応じて、互いに分離した複数の島状導体71Aおよび層75Aの第1の面(図中、上側の面)を覆う、非導電性の表面層(図示せず)を設ける。
例えば上述のようにして、構造体30を製造することができる。構造体30を製造した後は、従来技術に準じて製造した筺体10の内壁面11に接するように構造体30を貼り付けることで、図5に示す状態が得られる。なお、この時、接続部材73が内壁面11と接するように貼り付ける。
ここで、図6および図7に示すようなEBG構造を有するシートを単に内壁面11に貼り付けただけでは、上述の効果を実現することはできない。以下、図40を用い、この理由を説明する。
図40は、図6および図7に示すEBG構造を有するシート700を、筺体100の内壁面110に貼り付けた状態を示す断面図である。図40に示すシート700は、シート状導体702と、互いに分離した複数の島状導体701と、複数の接続部材703と、を有している。
図40に示すように、通常、シート700は、被接着体との接着性を確保するため、絶縁性の接着剤による層704を有する。この接着剤による層704は、図40に示すように、EBG構造を有するシート700を内壁面110に貼り付けた状態において、シート状導体702と内壁面110との間に位置し、これらを互いに電気的に分離した状態とする。このように、内壁面110とEBG構造とが電気的に分離された状態においては、内壁面110の表面におけるノイズの伝播を抑制することはできない。
本実施形態の電子機器は、上述の課題を解決している。具体的には、本実施形態の電子機器は、図5に示すように、内壁面11がEBG構造の一部を構成する。かかる場合、上述のように、内壁面11とEBG構造とが電気的に分離した状態となることはない。当該前提は、以下の実施形態において同様である。
<実施形態2>
本実施形態の電子機器は、実施形態1の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図13は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示した断面図である。図示する構造体30は、実施形態1の構造体30(図5参照)の構成を基本とし、接続部材73(73A、73B、73C)の構成が異なる。他の構成については、実施形態1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の接続部材73は、導電性の第1接続部材73Aと、導電性の第2接続部材73Bと、導電性の第3接続部材73Cと、で構成される。第1接続部材73Aは、一端が誘電体層75の面77を貫通し、内壁面11と接するとともに、他端側を介して第2接続部材73Bと導通する。この第1接続部材73Aは、島状導体71Aに設けられた穴を島状導体71Aと非接触な状態で通過している。第2接続部材73Bは、第1接続部73Aと導通し、島状導体71Aに対向するように設けられる。この第2接続部材73Bの平面形状は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、スパイラル形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。第2接続部材73Bは、島状導体71Aを介して内壁面11と反対側に位置する。第3接続部材73Cは、一端側を介して第2接続部材73Bと導通し、誘電体層75の面77方向に伸びた他端側を介して島状導体71Aと導通している。ここで、第2接続部材73Bをスパイラル形状にした場合の一例を、図14および図15に示す。図14は、図15のイ−イ´の断面図であり、図15は、図14を図中上から下に見た平面図である。なお、図14および図15においては、構成をより明確にするため、各構成要素に付すハッチングは、他の図(図5等)とは異なるハッチングを使用している。
ここで、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、EBG構造が構成されている。しかし、本実施形態において構成されるEBG構造は、実施形態1で説明したEBG構造と異なる。
本実施形態において構成されるEBG構造(図13乃至図15参照)は、1つの島状導体71Aと、当該島状導体71Aに対応して設けられた接続部材73(73A、73B、73C)と、内壁面11の中の当該島状導体71Aに対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。このEBG構造は、接続部材73Bを含んで形成されるマイクロストリップ線路がショートスタブとして機能するショートスタブ型のEBG構造である。詳細には、接続部材73Aはインダクタンスを形成している。また、接続部材73Bは、対向する島状導体71Aと電気的に結合することで島状導体71Aをリターンパスとするマイクロストリップ線路を形成している。前記マイクロストリップ線路の一端は第3接続部材73Cによってショート端となっており、ショートスタブとして機能するように構成されている。
図16は、本実施形態において構成されるEBG構造(図13乃至図15参照)の単位セルAの等価回路図である。図16に示すように、この単位セルAは、インピーダンス部Xとアドミタンス部Yとで構成される。インピーダンス部Xは、隣り合う島状導体71A間に生じるキャパシタンスC、および、島状導体71AがつくるインダクタンスL、で構成される。アドミタンス部Yは、内壁面11と島状導体71AとがつくるキャパシタンスC、および、第1接続部材73AがつくるインダクタンスL、および、第2接続部材73B(伝送線路)と第3接続部材73Cとを含んでなるショートスタブ、で構成される。
一般に、EBG構造は、インピーダンス部Xがキャパシタンス性であり、かつ、アドミタンス部Yがインダクタンス性となる周波数領域で電磁バンドギャップを生じることが知られている。図13乃至図15に示すようなショートスタブ型EBG構造では、ショートスタブのスタブ長を長くすることによって、アドミタンス部Yがインダクタンス性となる周波数帯域を低周波化することができる。このため、バンドギャップ帯域を低周波化することが可能である。ショートスタブ型EBG構造はバンドギャップ帯域の低周波化にスタブ長が必要であるが必ずしも面積を必要としないため、単位セルの小型化を図ることができる。
このEBG構造によれば、内壁面11の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の構造体30により構成されるEBG構造は、特徴的な接続部材73(73A、73B、73C)の構成により、図16に示したように多様なインダクタンスLおよびキャパシタンスCを形成することができる。その結果、所望の周波数帯のノイズの伝播を抑制するために要求されるインダクタンスLおよびキャパシタンスCを、島状導体71Aや接続部材73(73A、73B、73C)の大きさを必要以上に大きくすることなく得ることが可能となる。すなわち、単位セルAの大きさを比較的小さくすることが可能となる。かかる場合、単位面積あたりの単位セルAの数を増やすことが可能となり、より効果的にノイズの伝播を抑制することが可能となる。
次に、本実施形態の電子機器の製造方法の一例について、図17を用いて説明する。図17は、本実施形態の構造体30の製造工程の一例を示す断面図である。
まず、(1)に示すように、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等の基板(層75A(1))の第1の面(図中、上側の面)に銅箔73Bを形成し、第2の面(図中、下側の面)に銅箔71を形成する。次に、(2)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔71の一部を選択的にエッチングすることでパターン(互いに分離した複数の島状導体71A)を形成する。また、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔73Bの一部を選択的にエッチングすることでパターン(第2接続部材73B)を形成する。なお、島状導体71Aは、第1接続部材73Aを通過させるための穴を設けたパターンに形成される。この穴は、第1接続部材73Aの径より大きく設けられる。
その後、ドリルにより、第2接続部材73Bと層75A(1)と島状導体71Aとを貫通する穴を形成し、この穴に、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成された貫通ピン(第3接続部材73C)を挿入することで、(3)に示す状態を得る。
次に、(4)に示すように、層75A(1)の第2の面(図中、下側の面)の上に、さらに誘電体の層75A(2)を形成する。例えば、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等のフレキシブル性を有する新たな基板(層75A(2))を用意し、この基板(層75A(2))の第1の面(図中、上側の面)を、層75A(1)の第2の面(図中、下側の面)に貼り付けることで実現してもよい。このように、本実施形態では、島状導体71A(第1導体)は、層75A(1)および75A(2)で構成される誘電体層の内部に設けられる。
その後、(5)に示すように、ドリルを用いて、第2接続部材73Bと層75A(1)および75A(2)と島状導体71Aとを貫通する穴を形成する。この穴は、(2)で島状導体71Aに設けられた穴よりも径が小さく、かつ、島状導体71Aに非接触な状態で、この穴を通過するようにドリルを貫通させることで形成される。その後、(6)に示すように、(5)で形成した穴に、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成された貫通ピン(第1接続部材73A)を挿入する。
その後、(7)に示すように、層75A(2)の第2の面(図中、下側の面)に接着層75Bを形成する。この接着層75Bは、第1接続部材73Aが接着層75Bを貫通し、露出するように形成される。このように形成する具体的手段は、実施形態1で説明した手段と同様の手段を用いることができる。次に、必要に応じて、第2接続部材73Bおよび層75A(1)の第1の面(図中、上側の面)を覆う、非導電性の表面層(図示せず)を設ける。
例えば上述のようにして、構造体30を製造することができる。構造体30を製造した後は、従来技術に準じて製造した筺体10の内壁面11に接するように構造体30を貼り付けることで、図13に示す状態が得られる。なお、この時、第1接続部材73Aが内壁面11と接するように貼り付ける。
<実施形態3>
本実施形態の電子機器は、実施形態1の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図18は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示した断面図である。図示する構造体30は、実施形態1の構造体30(図5参照)の構成を基本とし、接続部材73(73A、73B)の構成が異なる。他の構成については、実施形態1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の接続部材73は、導電性の第1接続部材73Aと、導電性の第2接続部材73Bと、で構成される。第1接続部材73Aは、一端が誘電体層75の面77を貫通し、内壁面11と接するとともに、他端側を介して第2接続部材73Bと導通する。この第1接続部材73Aは、島状導体71Aに設けられた穴を島状導体71Aと非接触な状態で通過している。第2接続部材73Bは、第1接続部73Aと導通し、島状導体71Aに対向するように設けられる。この第2接続部材73Bの平面形状は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、スパイラル形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。第2接続部材73Bは、島状導体71Aを介して内壁面11と反対側に位置する。また、第2接続部材73Bの他端は開放端となっている。ここで、第2接続部材73Bをスパイラル形状にした場合の一例を、図19および図20に示す。図19は、図20のロ−ロ´の断面図であり、図20は、図19を図中上から下に見た平面図である。なお、図19および図20においては、構成をより明確にするため、各構成要素に付すハッチングは、他の図(図5等)とは異なるハッチングを使用している。
ここで、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、EBG構造が構成されている。しかし、本実施形態において構成されるEBG構造は、実施形態1および実施形態2で説明したEBG構造と異なる。
本実施形態において構成されるEBG構造は、1つの島状導体71Aと、当該島状導体71Aに対応して設けられた接続部材73(73A、73B)と、内壁面11の中の当該島状導体71Aに対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。このEBG構造は、接続部材73Bを含んで形成されるマイクロストリップ線路がオープンスタブとして機能するオープンスタブ型のEBG構造である。詳細には、接続部材73Aはインダクタンスを形成している。また、接続部材73Bは、対向する島状導体71Aと電気的に結合することで島状導体71Aをリターンパスとするマイクロストリップ線路を形成している。前記マイクロストリップ線路の一端はオープン端となっており、オープンスタブとして機能するように構成されている。
図21は、本実施形態において構成されるEBG構造(図18乃至図20参照)の単位セルAの等価回路図である。図21に示すように、この単位セルAは、インピーダンス部Xとアドミタンス部Yとで構成される。インピーダンス部Xは、隣り合う島状導体71A間に生じるキャパシタンスC、および、島状導体71AがつくるインダクタンスL、で構成される。アドミタンス部Yは、内壁面11と島状導体71AとがつくるキャパシタンスC、および、第1接続部材73AがつくるインダクタンスL、および、第2接続部材73B(伝送線路)を含んでなるオープンスタブ、で構成される。
一般に、EBG構造は、インピーダンス部Xがキャパシタンス性でありかつ、アドミタンス部Yがインダクタンス性となる周波数領域で電磁バンドギャップを生じることが知られている。図18乃至図20に示すようなオープンスタブ型EBG構造では、オープンスタブのスタブ長を長くすることによって、アドミタンス部Yがインダクタンス性となる周波数帯域を低周波化することができる。このため、バンドギャップ帯域を低周波化することが可能である。オープンスタブ型EBG構造はバンドギャップ帯域の低周波化にスタブ長が必要であるが必ずしも面積を必要としないため、単位セルの小型化を図ることができる。
このEBG構造によれば、内壁面11の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の構造体30により構成されるEBG構造は、特徴的な接続部材73(73A、73B)の構成により、図21に示したように多様なインダクタンスLおよびキャパシタンスCを形成することができる。その結果、所望の周波数帯のノイズの伝播を抑制するために要求されるインダクタンスLおよびキャパシタンスCを、島状導体71Aや接続部材73(73A、73B)の大きさを必要以上に大きくすることなく得ることが可能となる。すなわち、単位セルAの大きさを比較的小さくすることが可能となる。かかる場合、単位面積あたりの単位セルAの数を増やすことが可能となり、より効果的にノイズの伝播を抑制することが可能となる。
本実施形態の電子機器の製造方法は、実施形態2で説明した電子機器の製造方法に準じて実現することができる。よって、ここでの説明は省略する。
<実施形態4>
本実施形態の電子機器は、実施形態1の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図22は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示した断面図である。図示する構造体30は、実施形態1の構造体30(図5参照)の構成を基本とし、接続部材73(73A、73B)の構成が異なる。他の構成については、実施形態1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の接続部材73は、導電性の第1接続部材73Aと、導電性の第2接続部材73Bと、で構成される。第1接続部材73Aは、一端が誘電体層75の面77を貫通し、内壁面11と接するとともに、他端側を介して第2接続部材73Bと導通する。第1接続部材73Aは、島状導体71Aとは接触しない。第2接続部材73Bは、第1接続部73Aと導通し、島状導体71Aに対向するように設けられる。この第2接続部材73Bの平面形状は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、スパイラル形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。第2接続部材73Bは、島状導体71Aよりも内壁面11側に位置する。また、第2接続部材73Bの他端は開放端となっている。
ここで、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、EBG構造が構成されている。しかし、本実施形態において構成されるEBG構造は、実施形態1乃至3で説明したEBG構造と異なる。
本実施形態において構成されるEBG構造は、1つの島状導体71Aと、当該島状導体71Aに対応して設けられた接続部材73(73A、73B)と、内壁面11の中の当該島状導体71Aに対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。このEBG構造は、接続部材73Bを含んで形成されるマイクロストリップ線路がオープンスタブとして機能するオープンスタブ型のEBG構造である。詳細には、接続部材73Aはインダクタンスを形成している。また、接続部材73Bは、対向する島状導体71Aと電気的に結合することで島状導体71Aをリターンパスとするマイクロストリップ線路を形成している。前記マイクロストリップ線路の一端はオープン端となっており、オープンスタブとして機能するように構成されている。
図22に示した単位セルAの等価回路図は、実施形態3において説明した等価回路図(図21)と同じである。よって、ここでの説明は省略する。
このEBG構造によれば、内壁面11の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の構造体30により構成されるEBG構造は、特徴的な接続部材73(73A、73B)の構成により、図21に示したように多様なインダクタンスLおよびキャパシタンスCを形成することができる。その結果、所望の周波数帯のノイズの伝播を抑制するために要求されるインダクタンスLおよびキャパシタンスCを、島状導体71Aや接続部材73(73A、73B)の大きさを必要以上に大きくすることなく得ることが可能となる。すなわち、単位セルAの大きさを比較的小さくすることが可能となる。かかる場合、単位面積あたりの単位セルAの数を増やすことが可能となり、より効果的にノイズの伝播を抑制することが可能となる。
次に、本実施形態の電子機器の製造方法の一例について、図23を用いて説明する。図23は、本実施形態の構造体30の製造工程の一例を示す断面図である。
まず、(1)に示すように、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等の基板(層75A(1))の第1の面(図中、上側の面)に銅箔73Bを形成する。また、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等のフレキシブル性を有する他の基板(層75A(2))の第1の面(図中、上側の面)に銅箔71を形成する。次に、(2)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔73Bの一部を選択的にエッチングすることでパターン(第2接続部材73B)を形成する。また、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔71の一部を選択的にエッチングすることでパターン(互いに分離した複数の島状導体71A)を形成する。
その後、(3)に示すように、ドリルにより、第2接続部材73Bと層75A(1)を貫通する穴を形成する。次に、(4)に示すように、(3)で形成した穴に、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成された貫通ピン(第1接続部材73A)を挿入する。
その後、(5)に示すように、層75A(1)の第1の面(図中、上側の面)に、層75A(2)の第2の面(図中、下側の面)が接するように貼り付ける。次に、(6)に示すように、層75A(1)の第2の面(図中、下側の面)に接着層75Bを形成する。この接着層75Bは、第1接続部材73Aが接着層75Bを貫通し、露出するように形成される。このように形成する具体的手段は、実施形態1で説明した手段と同様の手段を用いることができる。次に、必要に応じて、互いに分離した複数の島状導体71Aおよび層75A(2)の第1の面を覆う、非導電性の表面層(図示せず)を設ける。
例えば上述のようにして、構造体30を製造することができる。構造体30を製造した後は、従来技術に準じて製造した筺体10の内壁面11に接するように構造体30を貼り付けることで、図22に示す状態が得られる。なお、この時、第1接続部材73Aが内壁面11と接するように貼り付ける。
<実施形態5>
本実施形態の電子機器は、実施形態1の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図24は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示した断面図である。本実施形態の構造体30は、誘電体層75と、誘電体層75の一方の面76(内壁面11と接する面77と反対側の面76)上に形成され、少なくとも一部領域に繰り返し構造、例えば周期的な構造を有している第1導体71と、を備える。
第1導体71の繰り返し構造としては、互いに分離した複数の島状導体71Aが繰り返し、例えば周期的に設けられた構造が考えられる。そして、複数の島状導体71Aの一部または全部には、図25の拡大斜視図に示すように、開口71Bが設けられる。複数の島状導体71Aの一部に開口71Bが設けられる場合、開口71Bは、周期的に設けられるのが望ましい。この開口71Bの中には、一端が島状導体71Aと電気的に接続している配線71Cが設けられる。開口71Bの大きさ、配線71Cの長さ、太さなどは、伝播を抑制するノイズの周波数に応じて定められる設計事項である。このような第1導体71は、筺体10の内壁面11に対向して設けられる。なお、第1導体71は、誘電体層75の内部に、内壁面11に対向して設けられてもよい。
誘電体層75の一部は内壁面11に接着する接着層75Bで構成される。
ここで、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、EBG構造が構成されている。しかし、本実施形態において構成されるEBG構造は、実施形態1乃至4で説明したEBG構造と異なる。
図26および図27に、本実施形態の内壁面11と、構造体30とにより構成されるEBG構造を模式的に示す。図26は、EBG構造の構成を模式的に示す斜視図であり、図27は、図26のEBG構造の側面図である。シート状導体2は内壁面11に対応し、島状導体1は構造体30の島状導体71Aに対応する。
図26および図27に示すEBG構造は、シート状導体2と、互いに分離した複数の島状導体1と、島状導体1に設けられた開口1Bと、開口1Bの中に設けられた配線1Cと、により構成される。複数の島状導体1は、平面視でシート状導体2と重なる領域であって、シート状導体2から離れた位置に、誘電体層(図示せず)を挟んで配置されている。また、複数の島状導体1は、周期的に配列されている。複数の島状導体1には開口1Bが設けられ、開口1Bの中には、一端が島状導体1と電気的に接続している配線1Cが設けられている。配線1Cはオープンスタブとして機能しており、シート状導体2のうち配線1Cに対向する部分及び配線1Cが、伝送線路、例えばマイクロストリップ線路を形成している。
このEBG構造体は、1つの島状導体1と、この島状導体1の開口1Bの中に設けられた配線1Cと、シート状導体2の中のこれらに対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。この単位セルAが周期的に配置されることにより、この構造体はメタマテリアル、例えばEBGとして機能する。図26および図27に示す例では、単位セルAは平面視において2次元配列を有している。
複数の単位セルAは互いに同一の構造を有しており、同一の向きに配置されている。島状導体1および開口1Bは正方形で、中心が互いに重なるように配置されている。配線1Cは開口1Bの一辺の略中央からこの辺に対して略垂直に延伸している。
図28は、図26および図27に示した単位セルAの等価回路図である。図28に示すように、シート状導体2と島状導体1との間にはキャパシタンスCが形成される。また、隣り合う島状導体1の相互間にもキャパシタンスCが形成される。そして、開口1Bを有する島状導体1にはインダクタンスLが形成される。
また、上記したように配線1Cはオープンスタブとして機能しており、シート状導体2のうち配線1Cに対向する部分と配線1Cとが、伝送線路、例えばマイクロストリップ線路を形成している。伝送線路の他端は開放端になっている。
このEBG構造によれば、シート状導体2の表面におけるノイズの伝播を抑制できる。また、隣り合う島状導体1どうしがキャパシタンスCを構成することで、EBG構造体付近におけるノイズの伝播を抑制できる。
内壁面11と構造体30とにより上記のようなEBG構造を構成している本実施形態の電子機器は、構造体30が設けられている領域において、内壁面11におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の電子機器は、実施形態1乃至4の電子機器と違い、接続部材73を有さないので、接続部材73と内壁面11との導通を確保する手段を備える必要がない。その結果、品質安定性が高くなる。
次に、本実施形態の電子機器の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の構造体30は、図12の(1)に示すように、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等の基板(層75A)の第1の面に、銅箔71を形成後、(2)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅箔71の一部を選択的にエッチングすることでパターン(互いに分離した複数の島状導体71A)を形成する。このフォトリソグラフィおよびエッチングにより、島状導体71Aは、図25に示すパターンに形成される。その後、層75Aの第2の面に接着層75Bを形成することで、構造体30を得ることができる。接着層75Bは、実施形態1に準じて形成することができる。
例えば上述のようにして、構造体30を製造することができる。構造体30を製造した後は、従来技術に準じて製造した筺体10の内壁面11に接するように構造体30を貼り付けることで、図24に示す状態が得られる。
<実施形態6>
本実施形態の電子機器は、実施形態5の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。具体的には、島状導体71Aの開口71Bの中の構成が異なる。他の構成については、実施形態5の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示す断面図は、実施形態5(図24参照)と同様である。
次に、図29に本実施形態の島状導体71Aの拡大斜視図を示す。本実施形態の構造体30は、複数の島状導体71Aの一部または全部に、図29に示すような開口71Bが設けられ、一部または全部の開口71Bの中には、開口内導体71Dおよび配線71Cが設けられている。配線71Cは、島状導体71Aと開口内導体71Dとを電気的に接続する。
ここで、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、EBG構造が構成されている。しかし、本実施形態において構成されるEBG構造は、実施形態1乃至5で説明したEBG構造と異なる。
図30に、本実施形態の内壁面11と、構造体30とにより構成されるEBG構造を模式的に示す。図30は、EBG構造の構成を模式的に示す斜視図である。このEBG構造の側面図は、実施形態5と同様である(図27参照)。なお、シート状導体2は内壁面11に対応し、島状導体1は構造体30の島状導体71Aに対応する。
図27および図30に示すEBG構造は、シート状導体2と、互いに分離した複数の島状導体1と、島状導体1に設けられた開口1Bと、開口1Bの中に設けられた配線1Cおよび開口内導体1Dと、により構成される。複数の島状導体1は、平面視でシート状導体2と重なる領域であって、シート状導体2から離れた位置に、誘電体層(図示せず)を挟んで配置されている。また、複数の島状導体1は、周期的に配列されている。複数の島状導体1には開口1Bが設けられ、開口1Bの中には、一端が島状導体1と電気的に接続している配線1Cが設けられている。さらに、開口1Bの中には、配線1Cの他端と電気的に接続している開口内導体1Dが設けられている。
このEBG構造は、1つの島状導体1と、この島状導体1の開口1Bの中に設けられた配線1Cおよび開口内導体1Dと、シート状導体2の中のこれらに対向する領域を含む一部領域と、によって単位セルAが構成されている。この単位セルAが周期的に配置されることにより、この構造体はメタマテリアル、例えばEBGとして機能する。図30に示す例では、単位セルAは平面視において2次元配列を有している。
複数の単位セルAは互いに同一の構造を有しており、同一の向きに配置されている。島状導体1および開口1Bおよび開口内導体1Dは正方形で、中心が互いに重なるように配置されている。配線1Cは開口1Bの一辺の略中央からこの辺に対して略垂直に延伸している。そして、配線1Cは、開口内導体1Dの第1の辺の中央と、開口1Bのうち開口内導体1Dの第1の辺に対向する辺の中央と、を電気的に接続している。
図31は、図30に示したEBG構造の単位セルAの等価回路図である。図31に示すように、島状導体1とシート状導体2との間には、キャパシタンスCが形成される。また、隣り合う島状導体1の相互間にもキャパシタンスCが形成される。さらに、開口内導体1Dとシート状導体2との間にもキャパシタンスCが形成される。そして、開口1Bを有する島状導体1にはインダクタンスLが形成される。また、島状導体1と開口内導体1Dとを電気的に接続する配線1Cは、インダクタンスLを有する。
このEBG構造によれば、シート状導体2の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制できる。また、隣り合う島状導体1どうしがキャパシタンスCを構成することで、EBG構造体付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
内壁面11と構造体30とにより上記のようなEBG構造を構成している本実施形態の電子機器は、構造体30が設けられている領域において、内壁面11におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
本実施形態の電子機器は、実施形態1乃至4の電子機器と違い、接続部材73を有さないので、接続部材73と内壁面11との導通を確保する手段を備える必要がない。その結果、品質安定性が高くなる。
本実施形態の電子機器の製造方法は、実施形態5で説明した電子機器の製造方法に準じて実現できるので、ここでの説明は省略する。
<実施形態7>
本実施形態の電子機器は、実施形態1乃至6のいずれか1つの電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が異なる。他の構成については、実施形態1乃至6のいずれかと同様であるので、ここでの説明は省略する。
実施形態1乃至6では、構造体30は接着層75Bを有し、シート状に構成され、筺体10に貼り付けられていた。これに対し、本実施形態では、構造体30は接着層75Bを有さず、CVD法(化学気相成長法)、CMP法(化学的機械的研磨法)、フォトリソグラフィ、エッチングなどの従来の層形成技術を利用し、内壁面11に接して形成される。なお、本実施形態においては、誘電体層75はフレキシブル性を有さなくてもよく、誘電体層75を構成する材料はあらゆる誘電性の材料を使用することができる。その他の構成については、実施形態1乃至6で説明した構成と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の電子機器によれば、実施形態1乃至6で説明した効果に加えて、構造体30により実現されるノイズ伝播抑制機能の寿命を延ばす効果が得られる。
すなわち、実施形態1乃至6の場合、シート状の構造体30の接着層75B(接着剤)の性能寿命や予期せぬ要因により、構造体30が筺体10の内壁面11から剥がれ落ちてしまう恐れがある。
これに対し本実施形態の場合、筺体10の内壁面11と構造体30との密着力が実施形態1乃至6に比べて強いので、上記のような不都合が生じにくい。
<実施形態8>
本実施形態の電子機器は、実施形態1乃至7のいずれか1つの電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1乃至7のいずれかと同様であるので、ここでの説明は省略する。
図32は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態の構造体30は、例えば、誘電体層75と、誘電体層75の一方の面76上に第2導体72に対向して形成され、少なくとも一部領域に繰り返し構造、例えば周期的な構造を有している第1導体71と、誘電体層75の面77(面76と反対側の面)上に形成された第2導体72と、第2導体72の上に形成された接着層79と、誘電体層75の内部に設けられ、第1導体71と第2導体72を電気的に接続する接続部材73と、を有する。なお、第1導体71は、誘電体層75の内部に、第2導体72に対向して設けられてもよい。
図32に示す第1導体71の構成は、例えば実施形態1で説明した第1導体71と同様である。また、誘電体層75の構成は、接着層を有さない点以外は実施形態1で説明した誘電体層75と同様である。
第2導体72は、平面視で複数の島状導体71Aに対向するように誘電体層75の面77上に延伸したシート状導体である。例えば銅等の材料で構成することができる。
接着層79は、第2導体72の面(誘電体層75と接する面と反対側の面)上に設けられ、筺体10の内壁面11と接する。すなわち、接着層79は、内壁面11と、第2導体72との間に挟まれる。このような接着層79は、天然ゴム、アクリル樹脂、シリコーン等で構成されてもよい。
導通部材79Aは、第2導体72と、内壁面11とを導通するように構成される。例えば、導通部材79Aは、接着層79に混入された複数の導電性フィラーであってもよい。または、導通部材79Aは、図33に示すようなビアであってもよい。ビア79Aは、接続部材73と一体となって設けられてもよい。
ここで、本実施形態の接続部材73の構成は図32および図33に示すものに限定されず、例えば、図13、14、15、18、19、20および22に示すような構成にすることができる。これらの図に示す接続部材73および構造体30については、上記実施形態で説明したので、ここでの説明は省略する。
また、本実施形態では、接続部材73を設けなくてもよい。かかる場合、複数の島状導体71Aの一部または全部には、図25の拡大斜視図に示すような開口71Bおよび配線71Cが設けられる。また、複数の島状導体71Aの一部または全部には、図29の拡大斜視図に示すような開口71B、配線71Cおよび開口内導体71Dが設けられてもよい。これらの図に示す島状導体71Aおよび第2の構造体70については、上記実施形態で説明したので、ここでの説明は省略する。
本実施形態の電子機器の製造方法は、上記実施形態に準じて実現することができる。よって、ここでの説明は省略する。
本実施形態の電子機器は、構造体30がEBG構造を備えており、そして、このEBG構造と筺体10の内壁面11とが電気的に接続する手段を備えている。このような本実施形態の電子機器によれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態の電子機器は、上記実施形態1において図40を用いて説明した課題を、導通部材79Aを設けることで解決している。
<実施形態9>
本実施形態の電子機器は、実施形態8の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1乃至7のいずれかと同様であるので、ここでの説明は省略する。
図34は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態の構造体30は、例えば、誘電体層75と、誘電体層75の一方の面76上に筺体10の内壁面11に対向して形成され、少なくとも一部領域に繰り返し構造、例えば周期的な構造を有している第1導体71と、誘電体層75の面77(面76と反対側の面)上に形成された接着層79と、第1の誘電体層75の内部に設けられ、第1導体71と内壁面11とを電気的に接続する接続部材73と、を有する。なお、第1導体71は、誘電体層75の内部に、内壁面11に対向して設けられてもよい。
すなわち、本実施形態の電子機器は、実施形態8の電子機器の構成(図32参照)において、第2導体72を無くした構造となっている。
本実施形態の電子機器の製造方法は、上記実施形態に準じて実現することができる。よって、ここでの説明は省略する。
本実施形態の電子機器は、筺体10の内壁面11と構造体30とによりEBG構造が構成されている。このような本実施形態の電子機器によれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
<実施形態10>
本実施形態の電子機器は、実施形態1の電子機器の構成を基本とし、構造体30の構成が一部異なる。他の構成については、実施形態1の電子機器と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図35は、本実施形態の筺体10の内壁面11に接する構造体30の一例を模式的に示す断面図である。本実施形態の構造体30は、誘電体層75と、誘電体層75の一方の面76上に第3導体80に対向して形成された第1導体71と、誘電体層75の面77(面76と反対側の面)上に設けられた第3導体80と、第3導体80の上に設けられた第2の誘電体層81と、を有する。なお、第1導体71は、誘電体層75の内部に、第3導体80に対向して設けられてもよい。また、第1導体71は、図示するように、少なくとも一部領域に繰り返し構造、例えば周期的な構造を有してもよいし、繰り返し構造を有さないシート状の導体であってもよい。
図35に示す第1導体71の構成は、接続部材73と接続しない点、一部領域に繰り返し構造を有してもよいし、繰り返し構造を有さないシート状であってもよい点以外は、実施形態1で説明した第1導体71と同様である。また、誘電体層75の構成は、接着層を有さない点以外は実施形態1で説明した誘電体層75と同様である。
ここで、図36に、第3導体80の平面形状の一例を模式的に示す。第3導体80は開口80Bを有する。なお、第1導体71が複数の島状導体71Aにより構成される繰り返し構造を有している場合、各開口80Bは、繰り返し配列されている複数の島状導体71Aそれぞれに対向する位置に設けられる。また、この開口80Bの中には、一端が第3導体80と電気的に接続している配線80Aが設けられる。
図37に、第3導体80の平面形状の他の一例を模式的に示す。第3導体80は開口80Bを有する。なお、第1導体71が複数の島状導体71Aにより構成される繰り返し構造を有している場合、各開口80Bは、繰り返し配列されている複数の島状導体71Aそれぞれに対向する位置に設けられる。また、この開口80Bの中には、配線80Aおよび開口内導体80Cが設けられる。なお、配線80Aは、第3導体80と開口内導体80Cとを電気的に接続する。
第2の誘電体層81は、第3導体80の面(誘電体層75と接する面と反対側の面)上に設けられ、内壁面11と接する。すなわち、第2の誘電体層81は、内壁面11と、第3導体80との間に挟まれる。このような第2の誘電体層81は、天然ゴム、アクリル樹脂、シリコーン等で構成された接着層であってもよい。または、筺体10の内壁面11の上に例えばCVD法を用いて形成された誘電体層であってもよい。第2の誘電体層81の内部には、ビア82が設けられる。
ビア82は、第3導体80と内壁面11とを電気的に接続する。なお、第3導体80の形状は、上述のように、開口80Bを有し、また、開口80Bの中に、配線80A、または、配線80Aおよび開口内導体80Cを有するが、ビア82は、配線80Aおよび開口内導体80Cでなく、第3導体80と電気的に接続するのが望ましい。このようにすれば、安定した接続が実現できる。
ここで、本実施形態においては、構造体30がEBG構造を備えている。しかし、本実施形態の構造体30が備えるEBG構造は、実施形態1乃至9で説明したEBG構造と異なる。
図38および図39に、上述のような第3導体80と複数の島状導体71Aとで構成されるEBG構造を模式的に示した斜視図を示す。図38のEBG構造の単位セルの等価回路図は、図28に示した単位セルの等価回路図において、キャパシタンスC、インダクタンスLの位置を適当な位置に変更したものである。また、図38のEBG構造において島状導体1を、繰り返し構造を有さないシート状の導体に代えたEBG構造の単位セルの等価回路図は、図38のEBG構造の単位セルの等価回路図において、隣り合う島状導体1間に形成されていたキャパシタンスCを無くしたものとなる。また、図39のEBG構造の単位セルの等価回路図は、図31に示した単位セルの等価回路図において、キャパシタンスC、インダクタンスLの位置を適当な位置に変更したものである。また、図39のEBG構造において島状導体1を、繰り返し構造を有さないシート状の導体に代えたEBG構造の単位セルの等価回路図は、図39のEBG構造の単位セルの等価回路図において、隣り合う島状導体1間に形成されていたキャパシタンスCを無くしたものとなる。
本実施形態の電子機器の製造方法は、上記実施形態に準じて実現することができる。よって、ここでの説明は省略する。
本実施形態の電子機器によれば、構造体30が設けられている領域において、内壁面11におけるノイズ電流の伝播を抑制でき、また、構造体30付近におけるノイズ電磁波の伝播を抑制できる。
すなわち、実施形態1に準じて所定の位置に構造体30を配置した本実施形態の電子機器によれば、筺体10の内壁面11を流れるノイズ電流が隙間40に到達することを抑制することができ、結果、電子機器が有する電子部品20の動作に起因して発生するノイズが、電子機器の外部に漏洩することを抑制することができる。
また、本実施形態においてもEBG構造のバンドギャップ帯域を調節できるので、電子機器が利用する周波数に応じてEBG構造のバンドギャップ帯域を調節することで、効果的に、ノイズの伝播を抑制できる。
さらに、本実施形態においても、内壁面11と、構造体30とにより、バンドギャップ帯域が異なる2種類以上のEBG構造が構成され、それら各々が繰り返し、例えば周期的に配置されてもよい。このようにすれば、バンドギャップ帯域を広げることが可能となる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
<サンプル作製>
<<比較例>>
図41(a)に、電子部品を内部に設置した電子機器の透過図を示す。図41(b)に、電子部品を内部に設置した電子機器のZ−X面断面図を示す。図41(c)に、電子部品を内部に設置した電子機器のY−Z面断面図を示す。
図41の電子機器は、78mm×62mm×16mmの導電性の筺体に、電子部品を配置した構造である。この筺体には、上面略中央付近に14mm×30mmの開閉可能なカバーが存在し、このカバーと筺体本体との間にわずかな隙間が存在している。図41を比較例とした。
<<実施例>>
図42に示すように、比較例と同じ筺体を用意し、比較例と同様な位置に比較例と同じ電子部品を配置した。そして、筺体の隙間を有する内壁面には、隙間を取り囲むように実施形態1で説明した構造体を配置した。なお、電子部品の動作周波数をf(GHz)とし、筺体の内壁面に存在する隙間から、内壁面に接して設けられた構造体が有する導電体の層までの、内壁面に水平な方向の距離をl(mm)とすると、l≦λ/4の関係を満たすように構造体を配置した。但し、λ(mm)=300/f(GHz)である。
<電磁界シミュレーション>
図41の電子部品として、信号源、信号ライン、信号負荷回路を設け、信号源周波数3GHzでの、筐体内/筐体外磁界分布を電磁界シミュレーションで求めた。更に、シミュレーション結果から、信号源からのアドミタンス、及び放射利得を求め、3m離れでの電界強度を計算した。
同様に、図42の電子部品として、信号源、信号ライン、信号負荷回路を設け、信号源周波数3GHzでの、筐体内/筐体外磁界分布を電磁界シミュレーションで求めた。更に、シミュレーション結果から、信号源からのアドミタンス、及び放射利得を求め、3m離れでの電界強度を計算した。
<結果>
図43に、電磁界シミュレーション結果を示す。図43(a)に、比較例のY−Z面断面磁界分布を示す。図43(b)に、比較例のZ−X面断面磁界分布を示す。図43(c)に、本願実施例のY−Z面断面磁界分布を示す。図43(d)に、本願実施例のZ−X面断面磁界分布を示す。濃淡で磁界強度を示し、濃くなると磁界強度が高まることを示している。筐体間隙から、筐体外へ分布する磁界強度が、実施例の方が、比較例と比べて低下していることがわかる。電界強度についても、実施例の方が、比較例と比べて11.1dBの低減効果が得られている。
この出願は、2010年7月12日に出願された日本特許出願特願2010−158205号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 導電性を有し、内部空間と外部空間とを繋ぐ隙間を有する筺体と、
前記筺体内に格納された電子部品と、
前記筺体の内壁面に接して設けられた構造体と、を有し、
前記構造体は、
導電体の層と、
前記導電体の層と前記筺体の前記内壁面との間に位置する誘電体の層と、を有し、
前記導電体の層は、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有する電子機器。
2. 1に記載の電子機器において、
前記電子部品の動作周波数をf(GHz)とし、
前記筺体の第1の前記内壁面に存在する前記隙間から、前記第1の内壁面に接して設けられた前記構造体が有する前記導電体の層までの、前記第1の内壁面に水平な方向の距離をl(mm)とすると、l≦(300/f)/4、の関係を満たす電子機器。
3. 1または2に記載の電子機器において、
前記構造体は、前記隙間を囲むように設けられている電子機器。
4. 1から3のいずれかに記載の電子機器において、
前記構造体の前記誘電体の層は、
前記筺体の第1の前記内壁面に接する第1の誘電体層を含み、
前記構造体の前記導電体の層は、
前記第1の誘電体層の内部または前記第1の内壁面と接する面と反対側の面上に、前記第1の内壁面に対向して設けられる第1導体を含み、
前記第1導体は、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有している電子機器。
5. 4に記載の電子機器において、
前記第1導体の前記繰り返し構造は、互いに分離した複数の島状導体であり、
前記第1の誘電体層の内部に設けられ、少なくとも一部の前記島状導体と前記第1の内壁面とを電気的に接続する接続部材、をさらに有する電子機器。
6. 4に記載の電子機器において、
前記第1導体の前記繰り返し構造は、互いに分離した複数の島状導体であり、
少なくとも一部の前記島状導体には開口が設けられており、
前記開口の中には、一端を介して前記島状導体と電気的に接続している配線が設けられている電子機器。
7. 6に記載の電子機器において、
前記開口の中には開口内導体が設けられ、
前記配線は、他端を介して前記開口内導体と電気的に接続している電子機器。
8. 4に記載の電子機器において、
前記第1導体は前記第1の誘電体層の内部に設けられており、かつ、前記第1導体の前記繰り返し構造は互いに分離した複数の島状導体であって、さらに、
前記第1の誘電体層の内部に設けられ、前記第1の内壁面と電気的に接続するとともに、前記島状導体と非接触な状態で前記島状導体を貫通する第1接続部材と、
前記第1導体を介して前記第1の内壁面と反対側に、前記第1導体に対向して設けられ、前記第1接続部材と電気的に接続する第2接続部材と、
を有する電子機器。
9. 8に記載の電子機器において、
前記第2接続部材と前記島状導体とを電気的に接続する第3接続部材をさらに有する電子機器。
10. 4から9のいずれかに記載の電子機器において、
前記構造体は、前記第1の誘電体層の少なくとも一部が前記第1の内壁面と接着する接着層を構成しているシートである電子機器。
11. 1から3のいずれかに記載の電子機器において、
前記構造体は、
第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層の内部または第1の面上に設けられており、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有し、前記導電体の層を構成している第1導体と、
前記第1の誘電体層の前記第1の面と反対側の面上に、前記第1導体に対向して設けられる第2導体と、
前記第2導体の上に設けられ、前記筺体の第1の前記内壁面と接する第2の誘電体層と、
前記第2の誘電体層の内部に設けられ、前記第2導体と前記第1の内壁面とを導通する導通部材と、
を有する電子機器。
12. 11に記載の電子機器において、
前記第1導体の前記繰り返し構造は、互いに分離した複数の島状導体であり、
前記第1の誘電体層の内部に設けられ、少なくとも一部の前記島状導体と前記第2導体とを電気的に接続する接続部材、をさらに有する電子機器。
13. 11に記載の電子機器において、
前記第1導体の前記繰り返し構造は、互いに分離した複数の島状導体であり、
少なくとも一部の前記島状導体には開口が設けられており、
前記開口の中には、一端を介して前記島状導体と電気的に接続している配線が設けられている電子機器。
14. 13に記載の電子機器において、
前記開口の中には開口内導体が設けられ、
前記配線は、他端を介して前記開口内導体と電気的に接続している電子機器。
15. 11から14のいずれかに記載の電子機器において、
前記導通部材は、ビアまたは導電性フィラーである電子機器。
16. 11から15のいずれかに記載の電子機器において、
前記構造体は、前記第2の誘電体層が前記第1の内壁面と接着する接着層を構成しているシートである電子機器。
17. 1から10のいずれかに記載の電子機器において、
前記筺体の内壁面と、当該内壁面に接する前記構造体と、を構成要素として含む1種類以上のEBG構造を備えたEBG構造体が構成されている電子機器。
18. 1から3、および、11から16のいずれかに記載の電子機器において、
前記構造体は、1種類以上のEBG構造を備えたEBG構造体を構成している電子機器。