JP5831435B2 - 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トランスなどの鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主にトランスの鉄心として利用され、その磁化特性が優れていること、特に鉄損が低いことが求められている。そのためには、鋼板中の二次再結晶粒を(110)[001]方位(ゴス方位)に高度に揃えることや、製品中の不純物を低減することが重要とされている。
従来、このような方向性電磁鋼板は、4.5mass%以下程度のSiと、MnS,MnSe,AlNなどのインヒビタ成分を含有するスラブを、1300℃以上に加熱してインヒビタ成分を一旦固溶させ、その後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施して、一次再結晶および脱炭を行い、さらにマグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビタ成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上げ焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
すなわち、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビタ成分)をスラブ段階で含有し、1300℃を超える高温のスラブ加熱によって、これらのインヒビタ成分を一旦固溶させ、後工程で微細析出させることによって二次再結晶を発現させるという工程が採用されてきた。
しかしながら、上述の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が必要であったため、その製造コストは極めて高くなり、近年の製造コスト低減の要求には応えることができないという問題を残していた。
これに対し、特許文献4には、スラブにインヒビタ成分を含有させない場合であっても、一次再結晶焼鈍後、二次再結晶完了前に、地鉄中のS量を増加させることによって、二次再結晶を発現させることができる技術(「増硫法」)が開示されている。
さらに、前記したような、電磁鋼の熱延板に中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施して最終板厚とした後、脱炭焼鈍、次いで焼鈍分離剤を塗布してから仕上げ焼鈍を施す一連の一方向性電磁鋼板の製造工程において、冷間圧延時に使用される冷間圧延設備としては、大きく分けて以下の2つが挙げられる。
すなわち、一つは、小径ワークロールを適用する多段圧延機であって、なかでもゼンジミア圧延機が多く使用されている。また、もう一つは、タンデム圧延機であって、これは特許文献5に開示されているように、電磁鋼板を高能率で製造することができるものである。
特公昭40-15644号公報 特公昭51-13469号公報 特公昭62-56927号公報 特許第4321120号公報 特開昭61-132205号公報 特開平6-65754号公報 特開平6-65755号公報 特開平6-299366号公報
しかしながら、前述した特許文献4に記載の増硫処理は、その処理後、二次再結晶焼鈍の昇温過程から二次再結晶直前までの間に、鋼中に侵入したSを均一に分散させることが難しく、そのため、二次再結晶自身が不安定となりがちであった。特に、コイル焼鈍を行う場合、コイル内における温度や鋼板層間の雰囲気を一定にすることが難しいために、二次再結晶の形成がより不安定な傾向になるという問題があった。
また、タンデム圧延は、高能率で製造できるというメリットがあるものの、タンデム圧延した電磁鋼板は、種々の要因によってゼンジミアミル等の小径ワークロールで圧延した電磁鋼板よりも電磁特性に劣るという問題があった。
これは、タンデム圧延による高速圧延によって、圧延油のロールバイトへの導入量が増大し、圧延油が鋼板とロールとの間に封入されて、圧延時に鋼板表面を押しつぶすという現象が生じることによって、鋼板表面にはオイルピットと呼ばれる局所的な凹凸が発生して、鋼板の表面性状を劣化させるため、引続き行われる一次再結晶焼鈍で鋼板表面に形成されるファイアライトとシリカを主体としたサブスケール性状に大きな影響を及ぼすことから発生する問題であると推定されている。
加えて、二次再結晶時のゴス方位に対する選択性を左右する集合組織形成の観点からも小径ワークロールを適用するゼンジミア圧延は有利と考えられてきた。
従って、電磁鋼板を製造する際の冷間圧延段階において、生産性向上のためにタンデム圧延を行う場合には、圧延板の表面粗さや集合組織形成の課題があり、磁気特性がゼンジミア圧延を用いた小径圧延に比べて劣っているという問題があった。
発明者らは、上述したゼンジミア圧延とタンデム圧延との比較を念頭に置きつつ、圧延温度、圧延速度やワークロール粗度、ワークロール径等をさらに詳細に検討し、増硫法を適用する場合に最適な冷間圧延組織を模索した結果、以下に述べる本発明に至った。
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、更なる低鉄損化の要求に応えた方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。
まず、本発明を完成するに至った実験結果について説明する。
質量%または質量ppmで、C:250ppm、Si:3.40%、Mn:0.08%、S:15ppm、Se:8ppm、Al:50ppm、N:30ppmおよびSb:0.02%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを、連続鋳造後、1200℃に加熱したのち、熱間圧延によって2.6mm厚の熱延板とし、ついで1000℃にて熱延板焼鈍を施したのち、酸洗して冷間圧延により0.30mmの厚みに仕上げた。
この時、タンデム圧延機とゼンジミア圧延機と二つの圧延機を用い、かつクーラント量を増やして鋼板表面に噴射することで、圧延温度を80℃前後に抑えた冷間圧延と、加工発熱またはパス間時効により最終圧延時に、200℃前後まで温度上昇した温間圧延と、をそれぞれ行い、計4条件を実施した。
また、最終板厚に仕上げる圧延速度を200rpm未満とする低速圧延と、600rpmより大きくする高速圧延の二条件を実施することで圧延速度の影響についても検討した。さらにワークロールの摩耗を利用して、ワークロール径の影響についても調査した。
最終板厚である0.30mmに仕上げた後、各コイルを脱脂して850℃の湿水素雰囲気で脱炭焼鈍を行った。ついで、MgOを主剤とし、さらに硫酸マグネシウムを焼鈍分離剤の100質量部に対して10質量部で添加した焼鈍分離剤を鋼板に塗布し、1150℃で5時間の最終仕上げ焼鈍を行った。最終仕上げ焼鈍の雰囲気ガスとして、昇温中はNガス、1150℃到達後はHガスとして純化処理を行った。最終仕上げ焼鈍中に鋼中に侵入したS量は220ppmであった。引き続き、未反応分離剤を除去した後、コロイダルシリカとリン酸Alを主体とする絶縁コーティングを850℃で形成して製品板とした。
各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン試料を切り出し、磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損値W17/50(W/kg)と磁束密度B(T)を測定した。冷間圧延の各条件のうち、ワークロール径を横軸、磁束密度Bを縦軸として図1にプロットした。
図1より、低Alのインヒビタ成分を含まない成分系に対して、増硫処理を施して二次再結晶させる場合には、冷間圧延のワークロール径の影響が最も大きくなり、ワークロール径が250mm以上の条件で、高い磁束密度が得られることが分かった。
本発明は上記知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、Si:2〜8%、Mn:0.5%以下含有し、Al量を0.01%以下、N量を0.005%以下で、かつS、SeおよびOをそれぞれ50質量ppm未満、Cを400質量ppm以下とし、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる1300℃以下の鋼スラブに熱間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、一回の圧延による冷間圧延(ロール周方向に対して2°以上90°未満傾斜した研磨目と、上記研磨目とは逆向きに0°以上90°未満傾斜した研磨目とからなるクロス研磨目を有するワークロールによる冷間圧延を除く)で最終板厚の冷間圧延板とし、ついで一次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す、一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記冷間圧延時のワークロール径を250mm以上とし、かつ上記一次再結晶焼鈍後から上記二次再結晶完了までの間に、鋼板中のSが100質量ppm以上400質量ppm以下となる増硫処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記冷間圧延をタンデム圧延機で行うことを特徴とする前記1に記載の磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記鋼スラブの成分が、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.03〜3.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1または2に記載の磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、より鉄損が低い方向性電磁鋼板を安定して得ることが可能となる。
冷間圧延の各条件を、ワークロール径を横軸、磁束密度Bを縦軸として示したグラフである。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の鋼板成分に関する「%」および「ppm」表示は、特に断らない限り質量%(mass%)または質量ppm(mass ppm)を意味する。
〔一次再結晶焼鈍後から二次再結晶完了までの間に、鋼板中のSが100ppm以上400ppm以下となる増硫処理を施す〕
S量については、100ppm以上の浸硫を施すことにより磁気特性の向上効果が現れる。一方、上限値については二次再結晶焼鈍中に形成されるフォルステライト膜の形成に対しては、増硫し過ぎると追加酸化がすすみ被膜品質が劣化するので、400ppm以下が望ましい。
次に、製造に関するポイントについて述べる。本発明において、特に説明のないものは、従来公知のスラブ高温加熱を利用しない方向性電磁鋼板の製造方法に従う。
まず、本発明の溶鋼成分について、説明する。
本発明では、鋼溶製時に、Al量を、0.01%以下に抑制する。というのは、本発明は、AlNをインヒビタとして利用しないプロセスを前提として1300℃以下のスラブ加熱温度を想定しているので、100ppmより多い場合にはAlN等として完全固溶できずに、粗大な析出物として二次再結晶の撹乱要因となるからである。従って、Al量は0.01%以下に抑制する必要がある。
Nについては、以後の工程で除去可能であるものの、含有量が多すぎると除去に時間やコストがかかるために、Nは0.005%以下に限定する。
Cは、400ppmを超えると、本発明の冷間圧延における圧延温度や圧延速度に対して影響が現れ、本発明に従う範囲のワークロール径:300mm以上とした場合であっても、良好な磁気特性が得られない場合がある。これは、パス間時効による炭化物析出の影響と推定しているが、その影響は複雑であって明瞭ではない。いずれにしても、二次再結晶の不安定を招くおそれがあるため、本発明では、Cを400ppm以下に限定する。また、下限に関して、特に設ける必要はないが、磁気特性上、30ppm程度が好ましい。
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素であるが、含有量が2.0%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、8.0%を超えると加工性が著しく低下し、また磁束密度も低下するため、Si量は2.0〜8.0%の範囲とする必要がある。好ましくは、2.0〜4.5%の範囲である。
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.5%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、0.5%以下の範囲とする必要がある。また、下限に関して、特に設ける必要はないが、添加効果の有利な発現の点で、0.005%程度が好ましい。
先に述べたように、本発明では、Alを低減しているため、AlNを主体とする、いわゆるインヒビタの活用はない。この場合、磁束密度の高い方向性電磁鋼板を得るためには、S:50ppm(0.005%)以下、Se:50ppm(0.005%)以下とする必要がある。これは強い抑制力を発揮するインヒビタ成分が含まれていない鋼成分系では、不純物による一次再結晶における粒成長性への影響が大きいためである。
また、O量は、50ppm(0.005%)以下とする必要がある。これは介在物としての酸化物が磁気特性に悪影響を及ぼすためである。
S量は、磁束密度向上の観点からは添加量は多いほど良好であるが、低温スラブ加熱を行う場合MnS等のインヒビタとして制御性良く析出させることが困難なため、製鋼段階から添加すべきではなく、一次再結晶焼鈍後から二次再結晶完了までの間に、鋼板に対して増硫処理を施して増加させることが望ましい。二次再結晶焼鈍はバッチ式で焼鈍処理を行うため、昇温速度は一般に遅く、増硫処理により鋼中に侵入したSを均一に分散させるのに適している。
上記の基本的な成分以外に、本発明では、さらに、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.03〜3.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を適宜含有させることができる。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用な元素である。しかしながら、0.03%未満では磁気特性の向上効果が小さく、一方1.5%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、Niを添加する際には0.03〜1.5%の範囲とする。
また、Sn、Sb、Cu、P、MoおよびCrは、それぞれ磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれも上記した各成分の下限に満たないと、磁気特性の向上効果が小さく、一方、上記した各成分の上限量を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害されるため、添加する際には、それぞれSn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.03〜3.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%の範囲とする。
なお、上記成分以外の残部は、不可避的不純物およびFeとする。
次に、本発明の製造工程について説明する。
上記の好適成分組成範囲に調整した鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱したのち、熱間圧延に供する。なお、スラブを再加熱する場合には、再加熱温度は1000℃以上、1300℃以下程度とすることが望ましい。
本発明では、AlNをインヒビタとして利用しないため、高温加熱により完全固溶させる必要がない。また、MnSも同様に、S量を50ppm以下としているため、インヒビタとしては利用できないので、高温加熱の必要はない。
熱間圧延により得られた熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回の冷間圧延を施して、最終冷延板とする。この冷間圧延は、常温で行ってもよいし、常温より高い温度、たとえば250℃程度に鋼板温度を上げて圧延する温間圧延としてもよい。しかしながら、本発明で行われる冷間圧延については、250mm以上のワークロール径で行うことが肝要である。好ましくは、320mm以上のワークロール径である。
他方、冷間圧延の温度や圧延速度は、本発明の場合、大きな影響を及ぼさないと考えられる。また、タンデム圧延とゼンジミア圧延の差違については明瞭ではないが、前述の実験結果からは、本発明の最も大きな特徴である温間のパス間時効の効果があまり大きくないことから、ワークロール径の大きさからタンデム圧延が有利となっている傾向にある。
ここに、ワークロール径が、250mm以上になると磁束密度が高くなる理由は定かではないが、ワークロール径の違いによりロールバイト内での変形が異なり、特に表面近傍に導入される剪断歪みの差違に起因するのではないかと推定している。
すなわち、ワークロール径が大きいほど、鋼板は剪断変形を起こしにくく、単純圧縮に近づき、増硫処理時のSの浸入挙動が異なってくるため、結果的に磁束密度が高くなるものと考えられる。
また、冷間圧延時に形成される圧延集合組織も板厚方向に分布を持つが、この分布も圧延変形挙動により異なるはずである。よって、この導入される歪み分布とその後形成される集合組織分布の組合せとが、Sの侵入およびそれによるインヒビション効果と二次再結晶挙動に大きな影響を与えていると考えられる。いずれにせよ、インヒビタ成分を含まず、Cを400ppm以下とした成分組成の場合には、従来から知られているようなパス間時効等の寄与が小さくなって、ゼンジミア圧延機の優位性はなくなるものと考えられる。
なお、ワークロール径の上限値については、特に設けないが、圧延ミルの構造上タンデム圧延機においては800mm以下である。
ついで、最終冷間圧延板に一次再結晶焼鈍を施す。この一次再結晶焼鈍の第一の目的は、圧延組織を有する冷間圧延板を一次再結晶させて、二次再結晶に最適な一次再結晶粒径に調整することである。そのためには、一次再結晶焼鈍の焼鈍温度は800℃以上、950℃未満程度とすることが望ましい。また、第二の目的は、脱炭である。製品板中に炭素が30ppm以上含まれると、鉄損が劣化する。なお、この時の焼鈍雰囲気は、湿水素窒素あるいは湿水素アルゴン雰囲気とすることが望ましい。
上記の一次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。二次再結晶焼鈍後の鋼板表面にフォルステライト被膜を形成するためには、焼鈍分離剤の主剤をマグネシア(MgO)とする必要があるが、フォルステライト被膜の形成が必要ない場合には、焼鈍分離剤主剤として、アルミナ(Al2O3)やカルシア(CaO)など、二次再結晶焼鈍温度より高い融点を有する適当な酸化物を用いることができる。
その後、二次再結晶焼鈍を行う。この二次再結晶焼鈍により、ゴス方位に高度に集積した結晶組織となり、良好な磁気特性が得られる。
さて、本発明において、鋼中S量を増加させる方法としては、以下のように多様な手法がある。
連続処理の観点からはHSガス中で焼鈍処理を行うガス増硫法が有利である。この場合キャリアガスとしてはHかNH分解ガスが用いられる。FeとHSは極めて反応しやすく、低温でも硫化鉄を生成するため、増硫処理に適している。NH分解ガスをキャリアガスとして使用すると増硫とともに窒化も起こってしまうが、本発明ではAlを100ppm以下としているため、インヒビタ効果を発現するのに十分なAlNは生成しない。
また、NaOH水溶液に、S粉末を添加した水溶液に浸漬する方法や、チオ硫酸ナトリウムとホウ酸の水溶液中で、鋼板を陰極として電解する方法も有効である。
さらに、塩浴を用いることも可能である。中性浴としては硫酸ナトリウム中にS化合物を添加、還元浴としては、シアン化ナトリウムやシアン化カリウムにS化合物を添加した塩浴が用いられるが、後者は前述のガス増硫法と同様、増硫と同時に窒化反応が起こる。なお、上記した処理は、いずれも連続処理となるため、鋼板への増硫量を均一にすることができる。
また、一次再結晶焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤中に、硫酸塩や硫化物を微量添加する方法がある。
いずれにせよ上記の増硫処理により、一次再結晶焼鈍後から二次再結晶完了までの間に、鋼板中のS量が100ppm以上400ppm以下となることが必要である。
本発明では、焼鈍分離剤中に硫酸塩や硫化物を添加する場合に、Ag,Al,Ba,Ca,Co,Cr,Cu,Fe,In,K,Li,Mg,Mn,Na,Ni,Sn,Sb,Sr,ZnおよびZrの硫酸塩または硫化物のうちから選ばれる一種または二種以上を好適に使用することができる。
なお、二次再結晶焼鈍において、焼鈍雰囲気はN,Arあるいはこれらの混合ガスのいずれもが有利に適合する。二次再結晶後の純化のためにはHが望ましい。
方向性電磁鋼板は、トランスなどの鉄心材料に用いられる場合、積層して使用されるため、層間絶縁のための絶縁層が必要である。追加で施される絶縁コートとしては、方向性電磁鋼板に、一般に使用される無機質コートが利用可能である。特に、張力付与効果を有するコーティングは、低鉄損化を達成するために鋼板表面を平滑化した方向性電磁鋼板との組合せが極めて有効である。張力付与型コーティングの種類としては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが有効で、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられているリン酸塩-コロイダルシリカ-クロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から好適である。なお、コーティングの厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から0.3μm以上10μm以下の程度の範囲が好ましい。
また、張力コーティングとしてこれ以外にも、特許文献6、特許文献7および特許文献8などで提案されているホウ酸-アルミナ等の酸化物系被膜を適用することも可能である。
〔実施例1〕
表1に示される鋼塊記号1〜5の成分組成になるスラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延し、2.6mm厚みの熱延コイルとした。次に、この熱延コイルを1000℃で焼鈍した後、酸洗し、ゼンジミア圧延機またはタンデム圧延機により0.30mm厚みに仕上げるとともにコイルを、磁性評価用と仕上げ焼鈍中の増硫量調査用に2分割した。冷間圧延は、クーラント量の調整により60℃〜90℃の冷間条件と175℃〜205℃の温間条件とした。また、ワークロール径の影響についても併せて評価した。
Figure 0005831435
脱脂処理後、850℃の湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を施した後、鋼板に、MgOを主体とする焼鈍分離剤100質量部に対し、硫酸マグネシウムを5〜15質量部添加あるいは無添加とした焼鈍分離剤を塗布した。ついで、磁性評価用コイルは、1075℃までArとNの混合雰囲気で加熱し、1200℃の純化焼鈍は、H雰囲気で行った。その後、未反応分離剤を除去してから、コロイダルシリカとリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを800℃で形成した。一方、増硫量調査用のコイルは、1075℃まで加熱したのち、降温し、鋼板中のS量を分析した。
かくして得られた製品より、圧延方向に沿ってエプスタインサイズの試験片を切り出し、1.7Tの磁束密度における50Hz交流励磁での鉄損値W17/50および磁束密度Bを測定した。表2に、上記圧延条件、Al,Cの含有量、増硫量(増加S)と得られた磁気特性をまとめた。
Figure 0005831435
表2から明らかなように、本発明条件を満たす条件F、GおよびJでは良好な磁気特性を示した。これに対して、鋼成分の外れた条件B〜DおよびHや、増硫量の不足した条件A、ワークロール径が本発明範囲から外れた条件E、Iでは、いずれも良好な磁気特性が得られなかった。
〔実施例2〕
表3に示す鋼塊記号2−1〜2−6の成分組成になるスラブを1200℃に加熱熱間圧延し、2.6mm厚みの熱延コイルとした。次に熱延コイルを1000℃で焼鈍した後、酸洗後、タンデム圧延機により0.30mm厚みに仕上げた。冷間圧延はクーラント量の調整により75℃の冷間条件で、かつ、ワークロール径を350mmとした。
脱脂処理後、850℃の湿水素雰囲気中で脱炭焼鈍を施した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤100質量部に、硫酸マグネシウムを10質量部添加して塗布した。ついで、1075℃までArとNの混合雰囲気で加熱し、1200℃の純化焼鈍は、H雰囲気で行った。その後、未反応分離剤を除去してから、コロイダルシリカとリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを800℃で形成した。
かくして得られた製品より、圧延方向に沿ってエプスタインサイズの試験片を切り出し、1.7Tの磁束密度における50Hz交流励磁での鉄損値W17/50および磁束密度Bを測定した。表3に、上記成分組成と併せて、磁気特性の測定結果を示した。
Figure 0005831435
同表から明らかなように、本発明を満足する条件は、いずれも良好な磁気特性を示している。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:2〜8%、Mn:0.5%以下含有し、Al量を0.01%以下、N量を0.005%以下で、かつS、SeおよびOをそれぞれ50質量ppm未満、Cを400質量ppm以下とし、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる1300℃以下の鋼スラブに熱間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、一回の圧延による冷間圧延(ロール周方向に対して2°以上90°未満傾斜した研磨目と、上記研磨目とは逆向きに0°以上90°未満傾斜した研磨目とからなるクロス研磨目を有するワークロールによる冷間圧延を除く)で最終板厚の冷間圧延板とし、ついで一次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施す、一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記冷間圧延時のワークロール径を250mm以上とし、かつ上記一次再結晶焼鈍後から上記二次再結晶完了までの間に、鋼板中のSが100質量ppm以上400質量ppm以下となる増硫処理を施すことを特徴とする磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記冷間圧延をタンデム圧延機で行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼スラブが、さらに質量%で、Ni:0.03〜1.50%、Sn:0.01〜1.50%、Sb:0.005〜1.50%、Cu:0.03〜3.0%、P:0.03〜0.50%、Mo:0.005〜0.10%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
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