本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。ここで、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。つまり、端末装置が制御情報の内容を認識することによって、路車間通信と車車間通信との干渉が低減される。なお、基地局装置からの制御情報を受信できない端末装置、つまり基地局装置によって形成されたエリアの外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。
端末装置の処理をさらに詳しく説明すると、端末装置は、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号をブロードキャスト送信する。また、特定の端末装置が頻繁にパケット信号をブロードキャスト送信することによって、他の端末装置の送信機会が減少してしまうことを抑制するために、一定期間内に送信が可能となる期間は制限される。ここでは、休止期間が規定されることによって、制限がなされるものとする。例えば、CSMA/CAの開始タイミングを起点として休止期間が規定される。このような状況下、本実施例に係る端末装置は、CSMA/CAによるパケット信号のブロードキャスト送信後、休止期間が満了するまで、次のパケット信号をブロードキャスト送信しない。さらに、次のパケット信号をブロードキャスト送信できない期間にわたって、端末装置は、パワーアンプ、DA変換部等に対してパワーセーブを実行する。
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、端末装置14が搭載されている。また、エリア212が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214が、エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
パケット信号に含まれるべきデータとして、複数種類のデータが想定される。ひとつが、渋滞情報や工事情報等のデータであり、別のひとつが、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する情報である。特に、後者は制御情報に相当する。
端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載されているので、移動可能である。端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。端末装置14は、車車送信期間においてパケット信号を報知する。車車送信期間の説明は後述するが、これは、フレーム中の路車送信期間とは異なった期間であるといえる。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。
端末装置14は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。また、端末装置14は、基地局装置10から受信した制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置14によって転送される。一方、端末装置14は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部28、ネットワーク通信部30を含む。また、処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置14や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。
図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、8以外であってもよい。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置14からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間に続いて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置14がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置14がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
生成部36は、選択部34から、サブフレームの番号を受けつける。生成部36は、受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきパケット信号を生成する。パケット信号は、例えば、制御情報、データペイロードによって構成されている。制御情報には、路車送信期間を設定したサブフレーム番号等が含まれている。また、生成部36は、ネットワーク通信部30から、渋滞情報や工事情報等のデータを受けつけた場合、それらをデータペイロードに含める。ここで、ネットワーク通信部30は、図示しないネットワーク202に接続される。さらに、生成部36は、路車送信期間において報知すべき複数のパケット信号を生成してもよい。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。制御部28は、基地局装置10全体の処理を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図4は、車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50、RF部52、変復調部54、処理部56、制御部58を含む。処理部56は、タイミング特定部60、転送決定部62、取得部64、生成部66、IF部68、通知部70を含み、制御部58は、カウンタ部76、管理部78を含む。タイミング特定部60は、抽出部72、キャリアセンス部74を含む。アンテナ50、RF部52、変復調部54は、図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。
RF部52は、特に送信処理において、後述のキャリアセンス部74とともにCSMA/CAを実行することによって、パケット信号を送信する。ここでは、RF部52の送信処理に関する構成をさらに詳細に説明する。図5は、RF部52の構成を示す。RF部52は、DA変換部80、直交変調部82、パワーアンプ部84を含む。DA変換部80は、図示しない変復調部54からのパケット信号に対して、デジタル/アナログ変換を実行する。DA変換部80は、アナログのパケット信号を直交変調部82に出力する。
直交変調部82は、アナログのパケット信号に対して直交変調を実行する。ここでは、ダイレクトコンバージョンがなされているので、直交変調によって、無線周波数帯のパケット信号が生成される。ダイレクトコンバージョンがなされていない場合、直交変調によって中間周波数帯のパケット信号が生成され、さらにミキサでの周波数変換によって無線周波数帯のパケット信号が生成されてもよい。直交変調部82は、無線周波数帯のパケット信号をパワーアンプ部84に出力する。
パワーアンプ部84は、無線周波数帯のパケット信号を増幅する。パワーアンプ部84は、増幅したパケット信号を図示しないアンテナ50に出力する。このようにRF部52は、複数の構成部材にて構成されており、それらがパワーセーブの対象になる。ここでは説明を明瞭にするために、DA変換部80とパワーアンプ部84とがパワーセーブの対象であるとする。パワーセーブについては後述する。図4に戻る。
変復調部54は、処理部56は、受信処理において、図示しない他の端末装置14や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部54、処理部56は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信し、車車送信期間において、他の端末装置14からのパケット信号を受信する。
抽出部72は、変復調部54からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。具体的に説明すると、抽出部72は、パケット信号に含まれた制御情報をもとに、基地局装置10からのパケット信号であるか否かを判定する。また、抽出部72は、サブフレームのタイミングと、制御情報に含まれたタイミング情報とをもとに、フレームを生成する。その結果、抽出部72は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。パケット信号の報知元が、他の端末装置14である場合、抽出部72は、同期したフレームの生成処理を省略する。
抽出部72は、制御情報をもとに、使用されている路車送信期間を特定した後、残りの車車送信期間を特定する。抽出部72は、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部74へ出力する。一方、抽出部72は、基地局装置10からのパケット信号を受けつけていない場合、つまり基地局装置10に同期したフレームを生成していない場合、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部72は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、フレームの構成に関係のないキャリアセンスの実行をキャリアセンス部74に指示する。これは、図1のエリア外214での動作に相当する。
転送決定部62は、制御情報の転送を制御する。転送決定部62は、制御情報のうち、転送対象となる情報を抽出する。転送決定部62は、抽出した情報をもとに、転送すべき情報を生成する。ここでは、この処理の説明を省略する。転送決定部62は、転送すべき情報、つまり制御情報のうちの一部を生成部66に出力する。取得部64は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部64は、位置情報を生成部66へ出力する。
生成部66は、取得部64から位置情報を受けつけ、転送決定部62から制御情報の一部を受けつける。生成部66は、制御情報の一部を制御情報に格納し、位置情報をペイロードに格納することによって、パケット信号を生成する。生成部66は、パケット信号をIF部68に出力するとともに、送信準備が完了した旨を示すトリガ(以下、「指示信号」という)もIF部68に出力する。ここで、指示信号は、送信を指示する信号ともいえる。通常は、パケット信号が出力された後に、指示信号が出力される。
IF部68は、IF部68から、パケット信号を入力するとともに、指示信号も入力する。IF部68は、入力したパケット信号を変復調部54に出力する。また、IF部68は、指示信号を入力すると、指示信号をキャリアセンス部74とカウンタ部76に出力する。
キャリアセンス部74は、抽出部72から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部74は、IF部68から指示信号を入力したタイミングを起点として、車車送信期間内でCSMA/CAを開始する。CSMA/CAでは、送信開始前にキャリアセンスが実行され、キャリアセンスによって通信できる状態と判明しても、さらにランダムな時間だけ待機してからパケット信号が送信される。ランダムな時間だけ待機してからパケット信号の送信を開始することは、DIFSと呼ばれる時間において電波を検知しなければ、パケット信号が送信されていないと判断して、その後ランダムな時間(バックオフ)を待ってパケット信号の送信が開始されることに相当する。
このような動作によって、キャリアセンス部74が指示信号を入力したタイミングから、実際にパケット信号を送信するタイミング(以下、「送信タイミング」という)までの期間は、均一ではなく、無線環境等によって異なる。キャリアセンス部74は、抽出部72から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMA/CAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部74は、決定した送信タイミングを変復調部54、RF部52へ通知し、パケット信号をブロードキャスト送信させる。
制御部58は、端末装置14の動作を制御する。カウンタ部76は、一定のクロックでカウントアップしたカウント値を生成する。また、IF部68からの指示信号を入力したタイミングにてカウント値をリセットする。つまり、カウンタ部76は、カウント値を管理部78に出力する。
管理部78は、カウンタ部76からのカウント値を受けつける。管理部78は、カウント値がリセットされたタイミングから休止期間の計測を開始する。つまり、管理部78は、キャリアセンス部74がCSMA/CAを開始したタイミングから、休止期間の計測を開始する。なお、管理部78によって休止期間の計測が開始されるタイミングは、キャリアセンス部74がCSMA/CAを開始したタイミングとずれてもよい。その後、管理部78は、RF部52によるパケット信号の送信が終了したタイミングを受けつける。管理部78は、パケット信号の送信が終了してから、休止期間が満了するまでの期間にわたって、RF部52に対するパワーセーブを実行する。管理部78は、休止期間が満了するとパワーセーブを解除する。
ここで、管理部78における休止期間は、休止期間の規格値よりも短くなるように設定されている。休止期間の規格値は、固定値として規定されている。一方、RF部52におけるDA変換部80とパワーアンプ部84には、パワーセーブが解除される際、動作立ち上がり時間(WakeUpTime)が必要とされる。そのため、ここでは、休止期間の規格値から動作立ち上がり時間を減算した値が休止期間として使用される。なお、CSMA/CAでのキャリアセンスによって送信遅延が生じた場合は、休止期間の規格値よりも短くなってもよい。
前述のごとく、RF部52には、パワーセーブの対象となる複数の構成部材、DA変換部80、パワーアンプ部84が含まれている。その際、管理部78は、複数の構成部材のそれぞれに対応した休止期間を設定する。つまり、構成部材ごとのパワーセーブが実行される。具体的に説明すると、DA変換部80に必要な動作立ち上がり時間と、パワーアンプ部84に必要な動作立ち上がり時間とは、一般的に異なる。そのため、ここでは、DA変換部80に対する休止期間とパワーアンプ部84に対する休止期間とが異なるような設定がなされる。その結果、一方のパワーセーブが解除されても、他方のパワーセーブが継続される。
この処理を図6(a)−(e)を使用して説明する。図6(a)−(e)は、端末装置14による動作のタイミングチャートを示す。横軸が時間である。図6(a)は、IF部68から出力される指示信号を示す。図6(b)は、キャリアセンス部74でのCSMA/CAによるパケット信号の送信処理を示す。図示のごとく、キャリアセンス、バックオフによる待ち時間の経過後、パケット信号が送信される。前述のごとく、待ち時間の長さは、無線環境等によって異なる。
図6(c)は、カウンタ部76によって生成されるカウンタ値を示す。指示信号が入力されたタイミングにおいてカウンタ値がリセットされ、その後、カウントアップされていく。図6(d)は、DA変換部80をパワーセーブさせるための制御信号を示す。制御信号がハイレベルの場合に、パワーセーブがなされており、制御信号がローレベルの場合に、パワーセーブが解除されているものとする。図示のごとく、パケット信号の送信が終了したタイミングから休止期間が終了するまでの期間にわたって、制御信号がハイレベルに設定される。図6(c)と比較して明らかなように、休止期間は、規格値よりも短くなるように設定されている。
図6(e)は、パワーアンプ部84をパワーセーブさせるための制御信号を示す。ここでは、パワーアンプ部84に必要な動作立ち上がり時間が、DA変換部80に必要な動作立ち上がり時間よりも長いとする。そのため、パワーアンプ部84に対する休止期間の終了タイミングは、DA変換部80に対する休止期間の終了タイミングよりも先に到来してる。図4に戻る。なお、RF部52に含まれた複数の構成部材に対して、共通の休止期間が設定されてもよい。その際、動作立ち上がり時間が最も長いものに合わせるように、休止期間が設定される。
以下では、管理部78において休止期間に対応した処理がなされている場合、IF部68が生成部66から指示信号が入力された場合の処理を説明する。その場合の処理は、2種類規定されており、IF部68は、ユーザからの設定に応じていずれかの処理を実行する。ひとつ目の処理(以下、「第1モード」という)において、IF部68は、指示信号を受けつけない。そのため、生成部66は、指示信号をIF部68に再度出力する。IF部68は、休止期間が終了していれば、指示信号を受けつける。
ふたつ目の処理(以下、「第2モード」という)において、IF部68は、指示信号を受けつける。しかしながら、IF部68は、キャリアセンス部74およびカウンタ部76に対して指示信号を出力しない。IF部68は、休止期間が終了するまで待機し、休止期間が終了した場合に指示信号をキャリアセンス部74およびカウンタ部76に出力する。なお、第1モードと第2モードのいずれか一方だけが実行されてもよい。
通知部70は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部70は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図7は、IF部68による指示信号の入力手順を示すフローチャートである。IF部68には、パワーセーブ中に指示信号が入力される(S10)。第1モードが設定されていれば(S12のY)、IF部68は、指示信号を拒否する(S14)。第1モードが設定されていなければ(S12のN)、IF部68は、受けつけた指示信号を休止期間終了後に出力する(S16)。
次に変形例を説明する。変形例も実施例と同様に、複数の端末装置によって車車間通信がなされる通信システムに関する。実施例に係る通信システムでは、一定期間内に送信が可能となる期間を制限するために、休止期間が規定されていた。一方、変形例では、一定期間内における送信期間が規定されている場合を対象にする。さらに、変形例に係る端末装置は、処理量を軽減する目的で、パケット信号あたりの送信期間を固定値と仮定し、一定期間内の送信回数を計測する。変形例に係る通信システム100、基地局装置10は、図1、図2と同様のタイプである。
図8は、本発明の変形例に係る端末装置14の構成を示す。端末装置14は、図4に示された端末装置14と比較して、制御部58の構成が異なる。制御部58は、フラグ生成部90、集計部92、管理部94を含む。ここでは、図4に示された端末装置14との差異を中心に説明する。
フラグ生成部90は、RF部52からパケット信号がブロードキャスト送信された場合に、その情報をRF部52あるいはキャリアセンス部74から受けつける。フラグ生成部90は、情報を受けつけたタイミングから、一定期間にわたって有効になるフラグを生成し、生成したフラグを集計部92に出力する。ここで、一定期間は、送信期間が規定された前述の一定期間に相当する。なお、パケット信号のブロードキャスト送信終了後、新たなパケット信号がブロードキャスト送信される場合、フラグ生成部90は、フラグを既に出力しているかにかかわらず、新たなフラグを生成し、出力する。つまり、フラグ生成部90は、複数のフラグを並列に出力することもあり得る。
集計部92は、フラグ生成部90から出力されているフラグの数を集計する。これは、一定期間内の送信回数をカウントすることに相当する。また、カウンタ値は、一定期間経過後にカウントダウンされる。集計部92は、集計結果、つまりカウンタ値を管理部94に出力する。管理部94は、集計部92からカウンタ値を受けつける。管理部94は、カウンタ値をしきい値と比較し、カウンタ値がしきい値に達すれば、RF部52に対するパワーセーブを実行する。これは、一定期間内におけるRF部52の送信回数がしきい値に達した場合に、パワーセーブを実行することに相当する。例えば、一定期間内の送信回数が3回に制限されている場合、しきい値は「3」に設定される。一方、管理部94は、RF部52に対するパワーセーブを実行している場合、カウンタ値がしきい値を下回れば、RF部52に対するパワーセーブを解除する。これは一定期間内におけるRF部52の送信回数がしきい値を下回る場合にパワーセーブを解除することに相当する。
この処理を図9(a)−(f)を使用して説明する。図9(a)−(f)は、端末装置14による動作のタイミングチャートを示す。ここで、前述のしきい値は「3」であるとする。図9(a)は、RF部52からパケット信号がブロードキャスト送信されたタイミングを示す信号である。当該信号では、3つの送信タイミングが示されている。図9(b)は、図9(a)の信号がフラグ生成部90に入力され、フラグ生成部90がひとつ目の送信タイミングをもとに生成したフラグを示す。フラグは、送信タイミングから一定期間にわたってハイレベルになるように生成される。ここで、一定期間は「T」と示される。
図9(c)、(d)は、それぞれふたつ目、3つ目の送信タイミングをもとに生成されたフラグを示す。これらのフラグは、集計部92に入力される。図9(e)は、集計部92によって生成されるカウンタ値を示す。図示のごとく、カウンタ値は、有効になっているフラグの合計数に相当する。図9(f)は、RF部52をパワーセーブさせるための制御信号を示す。図9(e)に示されたカウンタ値がしきい値に達した場合に、制御信号がハイレベルになり、パワーセーブが実行される。図8に戻る。
変形例では、カウンタ値がしきい値に達しているときに、IF部68が生成部66から指示信号が入力された場合に、実施例と同様に動作する。つまり、第1モードでは、IF部68は、指示信号を受けつけない。生成部66は、指示信号をIF部68に再度出力する。IF部68は、カウンタ値がしきい値を下回っていれば、指示信号を受けつける。また、第2モードでは、IF部68は、指示信号を受けつける。IF部68は、カウンタ値がしきい値を下回ったタイミングに、指示信号をキャリアセンス部74に出力する。
次に別の変形例を説明する。別の変形例は、変形例と同様に、一定期間内における送信期間が規定されている場合を対象にする。しかしながら、別の変形例に係る端末装置は、変形例と異なり、一定期間内の送信期間を計測する。変形例に係る通信システム100、基地局装置10、端末装置14は、図1、図2、図8と同様のタイプである。ここで、端末装置14は、フラグ生成部90の代わりにレジスタを備える。
レジスタは、RF部52からパケット信号がブロードキャスト送信された場合に、その情報をRF部52あるいはキャリアセンス部74から受けつける。レジスタは、情報を受けつけると、当該パケット信号の送信期間に応じた値をセットする。当該値は、一定期間にわたって設定される。そのため、一定期間の経過後、レジスタは、「0」にクリアされる。また、レジスタは複数備えられており、パケット信号のブロードキャスト送信終了後、新たなパケット信号がブロードキャスト送信される場合、別のレジスタに値が設定される。説明を明瞭にするために、ここでは、レジスタに設定される値、つまりパケット信号の送信期間は固定値とされるが、可変の値であってもよい。レジスタは、設定された値を集計部92に出力する。
集計部92は、レジスタに設定された値を集計する。これは、一定期間内の送信期間の合計値を計算するに相当する。集計部92は、集計結果、つまり合計値を管理部94に出力する。管理部94は、集計部92から合計値を受けつける。管理部94は、合計値をしきい値と比較し、合計値がしきい値に達すれば、RF部52に対するパワーセーブを実行する。これは、一定期間内におけるRF部52の送信期間の合計値がしきい値に達した場合に、パワーセーブを実行することに相当する。ここで、しきい値は時間の単位で規定されている。一方、管理部94は、RF部52に対するパワーセーブを実行している場合、合計値がしきい値を下回れば、RF部52に対するパワーセーブを解除する。これは一定期間内におけるRF部52の送信期間の合計値がしきい値を下回る場合にパワーセーブを解除することに相当する。
この処理を図10(a)−(e)を使用して説明する。図10(a)−(e)は、本発明の別の変形例に係る端末装置14による動作のタイミングチャートを示す。ここで、前述のしきい値は「1.0msec」であり、ひとつのパケット信号に対する送信期間は「0.5msec」であるとする。図10(a)は、RF部52からパケット信号がブロードキャスト送信されたタイミングを示す信号である。当該信号では、2つの送信タイミングが示されている。図10(b)は、図10(a)の信号をもとに設定されたレジスタの値を示す。送信がなされた場合に、レジスタの値が「0.5」に設定される。
図10(c)は、図10(a)のふたつ目の送信タイミングをもとに設定されたレジスタの値を示す。これらのレジスタの値は、集計部92に入力される。図10(d)は、集計部92によって生成される合計値を示す。図10(e)は、RF部52をパワーセーブさせるための制御信号を示す。図10(d)に示された合計値がしきい値「1.0msec」に達した場合に、制御信号がハイレベルになり、パワーセーブが実行される。
本発明の実施例によれば、CSMA/CAの開始に合わせて休止期間の計測を開始することによって、CSMA/CAの開始とともに開始される休止期間によって送信機会が制限される場合であっても、それらに適合した送信処理を実行できる。また、CSMA/CAの開始とともに休止期間が開始されるので、CSMA/CAでの待ち時間が長くなる場合であっても、休止期間の延長を抑制できる。また、送信終了後から休止期間の終了タイミングまで、パワーセーブがなされるので、不要電波の送信が抑制される。また、パワーセーブによって消費電力を抑制できる。また、休止期間は、休止期間の規格値よりも短くなるように設定されることによって、動作の開始が早くなり、動作立ち上がり時間の影響を低減できる。複数の構成部材のそれぞれに対応した休止期間を設定するので、各構成部材の動作立ち上がり時間を考慮できる。
また、所定の期間内における送信回数をもとにパワーセーブの実行を決定するので、所定期間内の送信期間が制限される場合であっても、規格に適合した送信処理を実行できる。また、送信回数を計測することによって、処理を簡易にできる。また、パワーセーブを実行していても、送信回数が少なくなれば、パワーセーブを解除するので、パケット信号のブロードキャスト送信を可能にできる。また、所定の期間内における送信期間をもとにパワーセーブの実行を決定するので、所定期間内の送信期間が制限される場合であっても、それらに適合した送信処理を実行できる。また、パワーセーブを実行していても、送信期間が短くなれば、パワーセーブを解除するので、パケット信号のブロードキャスト送信を可能にできる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。