JP5825618B1 - 電界撹拌用電極及びこれを用いた電界撹拌方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明は、この電界撹拌用電極を有する電界撹拌装置、及びこの電界撹拌用電極を用いた電界撹拌方法に関する。
この電界撹拌方法は、生体組織中の抗体と抗原とを反応させて目的のタンパク質の検出を行う「免疫組織化学」(いわゆる免疫染色)に応用することもでき、この方法によれば、染色時間を大幅に短縮することができるだけでなく、使用する抗体の量を少なくすることができるという、優れた効果を奏する方法である(特許文献2、非特許文献1)。
さらに、本発明者らは、抗原抗体反応を行った後に未反応の抗体を洗浄する工程において、洗浄液の液滴に変動電界を印加して撹拌することにより、効率よく洗浄を行う方法も開発している(特許文献4)。
このため、液滴(2)に存在しているマイナス電荷(3)は、上部の平板電極(4)に帯電しているプラス電荷(9)に引き付けられるのと同時に、下部の平板電極(5)に帯電しているマイナス電荷(3´)と反発し、上向きの弱いクーロン力が液滴(2)に働く。
このため、液滴(2)に存在しているマイナス電荷(3)は、上部の平板電極(4)に帯電しているプラス電荷(9)に大きく引き付けられるのと同時に、下部の平板電極(5)に帯電しているマイナス電荷(3´)と大きく反発し、上向きの強いクーロン力が液滴(2)に働く。これにより、液滴(2)の中央部が大きく盛り上がった形状となる。
このようにして、変動電界の印加により、液滴を撹拌することが可能となる。
そこで、本発明は、液滴をより効率よく撹拌することができる新たな技術を開発すること目的とする。
第1発明は、電荷を帯びることができる電極部を有し、液滴に変動電界を印加して撹拌を行うために用いる電界撹拌用電極において、電極部が液滴の上部に液滴と絶縁層となる空間を隔てて設置され、電極部の形状が、A)電極部が、液滴に向けて突出し、先端部の水平面からの高さがそれぞれ異なる2つ以上の凸部又はエッジを有する形状、又はB)電極部が、液滴の異なる2箇所以上を覆い、前記液滴を覆う各部位の水平面からの高さがそれぞれ異なるように形成されている形状を有することにより、液滴を上下振動させながら回転させることができることを特徴とする電界撹拌用電極に関する。
第1発明の電界撹拌用電極として、A)の形状を有する電極部を用いる場合には、平板に2つ以上のライン状の凸部を有する形状の電極部とすることができる。
第1発明の電界撹拌用電極として、B)の形状を有する電極部を用いる場合には、液滴の異なる3箇所以上を覆うように形成された電極部とすることができる。
第2発明は、液滴に変動電界を印加して撹拌を行う電界撹拌装置において、第1発明の電界撹拌用電極と、変動電圧を電界撹拌用電極に供給する変動電圧発生装置とを有することを特徴とする電界撹拌装置に関する。
第3発明は、液滴に変動電界を印加して撹拌を行う電界撹拌方法において、(a)容器内又は基板上に液滴を形成するステップと、(b)容器又は基板の上部に液滴と絶縁層となる空間を隔てて第1発明の電界撹拌用電極を設置するステップと、(c)電界撹拌用電極に変動電圧を供給するステップとを有することを特徴とする電界撹拌方法に関する。
第3発明の電界撹拌方法においては、(a)のステップにおいて、撥水フレームを設けたスライドガラス上に液滴を形成した電界撹拌方法とすることができる。
また、第2発明の電界撹拌装置及び第3発明の電界撹拌方法は、第1発明の電界撹拌用電極を用いた装置及び方法であるので、同様に、液滴を上下に振動させるだけでなく、液滴を回転させることができるため、効率よく液滴を撹拌することができるという効果を奏する。
本発明の電界撹拌用電極は、液滴に変動電界を印加して撹拌を行うために用いる電極であって、電荷を帯びることができる電極部を有し、その電極部の形状が以下のA)〜E)のいずれかの形状を有することにより、液滴に印加する電界強度を偏在させることができることを特徴とする。
A)電極部が液滴に向けて突出した2つ以上の凸部又はエッジを有する形状、
B)電極部が液滴の分離した2箇所以上を覆うように形成されている形状、
C)電極部の各部位に異なる電圧を印加できるように分割された形状、
D)前記A)〜C)の形状のうち2つ以上の形状が組み合わされた形状。
「電極部」の材料については、電荷を帯びることができる材料であれば、如何なるものでもよいが、加工が容易で安定な金属を用いることが好ましい。金属の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、Cu、Ni、Alやこれらの合金等を用いることができる。
本発明において、「変動電界」とは、周期的に強さが変動する電界を意味する。この変動電界により、液滴の表面及び内部の電荷にクーロン力が働き、そのクーロン力の向きが周期的に変動することによって、液滴が振動して液滴内部の溶液が撹拌される。
A)の形状は、電極部が液滴に向けて突出した2つ以上の凸部又はエッジを有する形状である。
ここで、「凸部」とは、他の部位から液滴に向けて突出している部分を意味する。このような凸部は、液滴に近い位置に存在することとなり、また、エッジ効果により電荷が集中するため、液滴に印加する電界強度を偏在させることができる。このような凸部は、先端を尖らせることにより、エッジ効果によりさらに電荷を集中させることができる。
また、「エッジを有する」とは、板状又は棒状の部分が液滴に向けて端部(エッジ)を有している状態を意味する。このようなエッジは、液滴に近い位置に存在することとなり、また、エッジ効果により電荷が集中するため、液滴に印加する電界強度を偏在させることができる。
また、本発明のA)の形状は、平板に2つ以上のライン状の凸部を有する形状とすることができる。このような形状の電極部を有する電界撹拌用電極は、撥水フレームを設けたスライドガラス上に長方形の大きな液滴を形成した場合に、これを電界撹拌するために好適に用いられる。
図1(B)に示すように、液滴を形成するためのスライドガラス(1)上に、撥水フレーム(11)が設けられている。撥水フレーム(11)は、撥水性の材料で作られた長方形の枠状のシールであり、スライドガラス(1)に貼り付けられている。この撥水フレーム(11)を設けたことにより、スライドガラス(1)のほぼ全面にわたる容量の大きな液滴を形成することが可能となる。ただし、スライドガラス(1)を指でつまむことができるように、撥水フレーム(11)の大きさはスライドガラス(1)の大きさよりも小さなものとし、余白を残している。このような大容量の液滴を形成した場合には、従来の平板電極では効率よく電界撹拌することが難しいものであった。
2つの凸部を有する電極部(400)にプラスの電圧を印加した場合、エッジ効果により、プラス電荷(9)は2つの凸部(10)に集中し、また、2つの凸部(10)は液滴(2)に一番近い位置に存在しているため、液滴(2)に印加される電界は偏在し、2つの凸部(10)の下部における電界強度が最も強くなっている。そのため、液滴(2)の表面又は内部に存在するマイナス電荷(3)には、2つの凸部(10)に引き付けられる方向に、クーロン力が働く。この時、スライドガラス(1)の下部に設けた平板電極(5)には、マイナスの電圧が印加されるため、マイナス電荷(3´)が蓄積する。そして、液滴(2)の表面又は内部に存在するマイナス電荷(3)には、平板電極(5)のマイナス電荷(3´)と反発するように、上向きのクーロン力が働く。これらのクーロン力が合成されて、液滴(2)には、2つの凸部(10)に引き付けられる方向にクーロン力が働き、液滴(2)には二つのピークが形成されることになる。
図2(A)は、電極に供給されている電圧信号の絶対値が最大である時を示し、図2(B)は、電極に供給されている電圧信号の絶対値が中間値である時を示し、図2(C)は、電極に供給されている電圧信号の絶対値が最小値である時を示す。
図2(B)は、電圧信号の位相が90度進行することにより、2つの電極(400,5)に供給される電圧信号の絶対値が中間値となっている時を示している。この時には、2つの凸部(10)に引き付けられるように液滴(2)に働くクーロン力が弱まり、2つの液滴面のピークは、通常の液滴の形状に戻ろうとして、2つのピーク同士が衝突する。この衝突により、液滴内の溶液は効率よく撹拌されることとなる。
図2(C)は、電圧信号の位相がさらに90度進行することにより、2つの電極(400,5)に供給される電圧信号の絶対値が最小値となっている時を示している。この時には、液滴(2)に働くクーロン力は最小となり、液滴(2)は通常の液滴の形状に戻っている。
B)の形状は、電極部が液滴の分離した2箇所以上を覆うように形成されている形状である。
ここで、「液滴の分離した2箇所以上を覆う」とは、平板電極のように液滴の全面を覆うのではなく、液滴の上部に電極部を設置した場合に、液滴が電極部に覆われる部分と覆われない部分とが生じ、その覆われる部分が分離した2箇所以上であることを意味する。
電界を偏在させるために、液滴が電極部に覆われる部分の合計を液滴全体の1〜60%とすることが好ましい。より好ましくは、5〜40%である。
液滴の面積が大きい場合には、液滴の分離した3箇所以上を覆うように電極部を形成することが好ましい。
また、本発明のB)の形状を有する電極部を備えた電界撹拌用電極は、液滴の上部に設置するだけでなく、液滴の下部に設置することもでき、また、液滴に対して斜めになる位置も含む、液滴の周辺位置に設置することができる。
図4(A)は、撥水フレームを備えたスライドガラスの上部に、電界撹拌用電極を設置した状態を示す平面図である。また、図4(B)は、電界撹拌用電極を用いて、液滴に変動電界を印加した状態を示す断面図である。尚、図4(B)の断面図は、図4(A)における点線(X)を含む鉛直面での断面図である。
図4(A)に示すように、電界撹拌用電極の電極部(420)は、スライドガラス上に形成した液滴の上部に設置した場合に、液滴の分離した2箇所のみを覆う形状となっている。電極部(420)には、電圧源と接続するためのリード線(6)が設けられている。そして、図4(B)に示すように、電極部(420)にプラスの電圧信号を供給した場合、電極部(420)が存在する部分のみが電界強度が強くなる。したがって、液滴(2)の表面又は内部に存在するマイナス電荷(3)には、液滴(2)を覆う2箇所の電極部(420)の方向にクーロン力が働くこととなる。その結果、液滴(2)には二つのピークが形成されることとなる。
図5に示すように、撥水フレーム(11)を有するスライドガラス(1)の上部に、電界撹拌用電極を設置している。電界撹拌用電極の電極部(430)は、リード線(6)と接続しており、また、保持部(12)によって形状を維持されており、これらにより電界撹拌用電極が構成されている。
この電界撹拌用電極を用いて液滴に変動電界を印加し、電界撹拌を行った場合には、液滴の液面に3つのピークが生じ、3つのピークの分離と衝突を繰り返す振動を行うこととなる。この振動は、ピークが3つに分散されるため、液滴が上下に振動する振幅の大きさを抑えつつ、大面積の液滴の撹拌を可能とし、ピーク同士が衝突する運動を伴うため、効率よく液滴中の溶液の撹拌を行うことができる。
図6に示すように、スライドガラス(1)の上部に電界撹拌用電極を設置している。電極部(440)は、4つの長方形の電極部を有し、それぞれが狭い幅の電極部で連結されるように形成されている。そして、電極部(440)はリード線(6)と接続しており、これらの電極部は保持部(12)によって一定の形状に保持されている。これらにより電界撹拌用電極が構成されている。
この電界撹拌用電極を用いて液滴に変動電界を印加し、電界撹拌を行った場合には、液滴の液面に4つのピークが生じ、4つのピークの分離と衝突を繰り返す振動を行うこととなる。この振動は、ピークが4つに分散されているため、液滴が上下に振動する振幅の大きさを抑えつつ、大面積の液滴の撹拌を可能とし、ピーク同士が衝突する運動を伴うため、効率よく液滴中の溶液の撹拌を行うことができる。
また、電極部が液滴の分離した2箇所以上を覆うように形成されているB)の形状となっている電界撹拌用電極においては、液滴の分離した各箇所を覆う電極部の各部位の水平面からの高さを、それぞれ異なるものとすることができる。このような電界撹拌用電極を用いて、円形の液滴に変動電界を印加すると、液滴が上下に振動するだけでなく、液滴が回転することにより、効率よく液滴を撹拌することができるという効果を奏する。
そして、2つ以上の凸部又はエッジの高さ、又は、液滴の分離した各箇所を覆う電極部の各部位の高さは、0.1〜10度の傾斜ができるように、異なる高さとすることが好ましい。
図7(A)に示すように、皿状の容器であるシャーレ(13)の隅部に台座(14)を設ける事により、シャーレ(13)に大容量の液滴(2)を形成することができる。この液滴(2)に変動電界を印加するために、シャーレの蓋(15)の内側には、電界撹拌用電極の電極部(450)が設けられている。そして、シャーレの下部には平板電極(5)が設置されている。図7(B)に示すように、シャーレの蓋(15)に設けられた電界撹拌用電極の電極部(450)は円形のリング状の電極板に高さの異なる2つの凸部(10)を有する形状を有している。
C)の形状は、電極部の各部位に異なる電圧を供給できるように分割された形状である。C)の形状は、液滴の少なくとも2箇所以上を覆う電極部からなり、それぞれの部位が電気的に連続していない形状であれば、どのようなものでもよい。C)の形状の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、円をn+2個(以下、nは正の整数)に分割したものしたもの、正方形をn+1の2乗個に分割したものなどが挙げられる。円を分割する場合には、扇形に分割することもでき、また、半径のそれぞれ異なる複数のリングに分割することもできる。好ましくは、円を均等に3つの扇形に分割することが好ましい。分割した電極は、ある程度距離を隔てて配置してもよく、また、それぞれの部位の形状をつなぎあわせた場合に特定の形状となることを要せず、それぞれの部位が関連性のない形状であってもよい。
また、それぞれの部位に供給する変動電界の位相をずらすことによっても、液滴を回転させることもできるという効果を奏する。例えば、円を3つの扇形に均等に分割した電極部を有する電界撹拌用電極を用い、それぞれの部位に供給する電圧信号の位相を120度ずつずらすことによって、液滴を回転させることができる。
D)の形状は、前述のA)〜C)の形状のうちの2つ以上の形状が組み合わされた形状である。ここで、「組み合わせた形状」とは、A)〜C)の特徴のうち2つ以上の特徴を有する1つ電極部の形状を意味するだけでなく、A)〜C)のいずれかの特徴を有する電極部とA)〜C)のうちその他の特徴を有する電極部とを組み合わせて電界撹拌用電極に用いることも意味する。
本発明の電界撹拌装置は、液滴に変動電界を印加して撹拌を行う装置であって、上記の本発明の電界撹拌用電極と、変動電圧を電界撹拌用電極に供給する変動電圧発生装置とを有することを特徴とする。
ここで、「変動電圧発生装置」としては、変動する電圧を発生させることができるものであればどのようなものでもよく、二つ以上の装置を組み合わせたものであってもよい。例えば、変動電圧発生装置として、電圧アンプと、電圧アンプに信号を供給するファンクションジェネレータとを有する装置を用いることが好ましい。
また、本発明の電界撹拌装置は、電界撹拌用電極として、C)電極部の各部位に異なる電圧を供給できるように分割された形状の電極部を有する電界撹拌用電極を用いた場合には、各部位に印加する変動電圧の切り替えができるように、分割された各部位と変動電圧発生装置との接続を切り替えるスイッチング回路をさらに有することが好ましい。
本発明の電界撹拌方法は、液滴に変動電界を印加して撹拌を行う方法であって、下記(a)〜(c)のステップを有することを特徴とする。
(a)容器内又は基板上に液滴を形成するステップ
(b)本発明の電界撹拌用電極を、容器又は基板の周辺に設置するステップ、
(c)電界撹拌用電極に変動電圧を供給するステップ。
尚、(a)〜(c)のステップは、どのような順序で行ってもよく、例えば、これらに限定されるわけではないが、(a)→(b)→(c)の順序で行っても、(b)→(a)→(c)の順序で行ってもよい。
基板としてスライドガラスを用いる場合には、大容量の液滴を形成できるように、撥水フレームを設けることが好ましい。本発明の電界撹拌用電極は、このような大容量の液滴を形成した場合でも、効率よく撹拌することができるという効果を奏する。
電界撹拌用電極は、1つだけ設置すれば変動電界を液滴に印加することが可能である。しかし、強い変動電界を印加するためには、液滴を挟んで対となる2つの電極を設置し、それぞれの電極に符号が逆の電圧信号を供給すると、電気力線が必ず液滴を通過して変動電界が印加されることとなるので好ましい。この場合、一方の電極として本発明の電界撹拌用電極を用い、他方の電極として平板電極を用いれば、強度が偏在した変動電界を印加することができる。本発明の電界撹拌用電極は、容器又は基板の上部に設置するのが好ましいため、平板電極をさらに用いる場合には、容器又は基板の下部に平板電極を設けることが好ましい。また、電界の偏在状態を予測することが簡単でない場合もあるが、上部の電極と下部の電極の両方とも、本発明の電界撹拌用電極を用いる形態であってもよい。
液滴の上下に電極を設けて変動電界を印加する場合、上部の電極には必ずプラスの電圧信号を供給する必要があるわけではない。例えば、上部の電極にマイナスに偏った電圧信号を供給して、下部の電極にそれとは符号が逆の電圧信号を印加して、液滴を撹拌することができる。また、上部の電極をアースとし、下部の電極のみにマイナスに偏った電圧信号を供給しても、液滴を撹拌することができる。
(c)のステップにおいて、複数個の電界撹拌用電極に、それぞれ異なる変動電圧を供給することができる。このような電界撹拌方法を用いれば、より複雑な振動を液滴に与えることができ、効率よく撹拌することが可能になるという効果を奏する。
本発明において、「それぞれ異なる変動電圧を供給」とは、それぞれの電極又は部位に、電圧、周波数、波形等が異なる変動電圧を印可することをいう。
すなわち、本発明は、下記(a)〜(c)のステップを有することを特徴とする電界撹拌方法を提供する。
(a)容器内又は基板上に円形の液滴を形成するステップ、
(b)液滴に向けて突出した2つ以上の凸部又はエッジを有し、これらの凸部又はエッジの先端部の水平面からの高さがそれぞれ異なっている電極部を有する電界撹拌用電極、又は、液滴の分離した2箇所以上を覆うように形成され、各部位の水平面からの高さがそれぞれ異なっている電極部を有する電界撹拌用電極を、容器又は基板の周辺に設置するステップ、
(c)電界撹拌用電極に変動電界を供給するステップ。
この電界撹拌方法によれば、液滴が上下に振動するだけでなく、液滴が回転することにより、効率よく液滴を撹拌することができるという効果を奏する。
前述のように、シャーレ(13)内には、大容量の液滴(2)が形成されており、この液滴(2)に変動電界を印加するために、シャーレの蓋(15)の内側には、電界撹拌用電極の電極部(450)が設けられている。図7(B)に示すように、シャーレの蓋(15)に設けられた電界撹拌用電極の電極部(450)は円形のリング状の電極板に高さの異なる2つの凸部(10)を有する形状を有している。そして、高圧アンプ(7)とファンクションジェネレータ(8)を用いて、シャーレの蓋(15)に設けられた電極部(450)とシャーレの下部に設けられた平板電極(5)に変動電界を印加することにより、大容量の液滴を振動させて撹拌することができる。このとき断面から見ると、一方の凸部(10)の方が液滴に近くなっているため、2つの凸部のうち液滴に近い位置にある凸部の方が若干強い変動電界を液滴に印加することとなる。このため、図7(A)の矢印に示すように、2つの凸部(10)に液滴(2)が引き付けられる力は、一方の方が若干大きくなる。このため、液滴(2)には上下の振動だけでなく、回転運動が生じ、効率よく液滴(2)を撹拌することが可能となる。
すなわち、本発明は、下記(a)〜(c)のステップを有することを特徴とする電界撹拌方法を提供する。
(a)容器内又は基板上に液滴を形成するステップ、
(b)電極部の形状が回転対称となるように分割されており、分割された各部位に異なる電圧を供給できる電界撹拌用電極を、容器又は基板の周辺に設置するステップ、
(c)電界撹拌用電極の分割された電極部の各部位に、変動電圧が印加される部位が右回り又は左回りに順次切り替わるように、変動電圧を印加するステップ。
前述したように、シャーレ(13)内には、大容量の液滴(2)が形成されており、この液滴(2)に変動電界を印加するため、シャーレの蓋(15)には、電界撹拌用電極が設けられている。この電界撹拌用電極の電極部(461,462,463,464)は円が4つに分割された扇形の形状を有しており、それぞれが電気的に分離している。そして、分割された4つの部位のそれぞれが、リード線(6)を介してスイッチング回路(16)に連結されている。このスイッチング回路は、電圧信号を印加する4つのリード線を切り替えることにより、任意の電極部に電圧を印加できるようになっている。そして、高圧アンプ(7)とファンクションジェネレータ(8)を用いて、シャーレの蓋(15)に設けられた電極部(461,462,463,464)に電圧信号を印加する。このとき、スイッチング回路により、電圧を印加する部位が右回り又は左回りに回転するように切り替えを行う。これにより、電圧信号を印加された電極部の下部において振動が生じるが、その振動の位置が回転することとなる。このため、上下の運動だけでなく、回転運動によっても、液滴の撹拌をすることができ、液滴振動の振幅の大きさを抑えつつ、効率よく液滴を撹拌することが可能となる。
2 ・・・ 液滴
3 ・・・ マイナス電荷
4 ・・・ 上部の平板電極
400,410,420,430,440,450,461,462,463,464
・・・ 電極部
5 ・・・ 下部の平板電極
6 ・・・ リード線
7 ・・・ 高圧アンプ
8 ・・・ ファンクションジェネレータ
9 ・・・ プラス電荷
10,10´ ・・・ 凸部又はエッジ
11 ・・・ 撥水フレーム
12 ・・・ 保持部
13 ・・・ シャーレ
14 ・・・ 台座
15 ・・・ シャーレの蓋
16 ・・・ スイッチング回路
Claims (8)
- 電荷を帯びることができる電極部を有し、液滴に変動電界を印加して撹拌を行うために用いる電界撹拌用電極において、
前記電極部が、前記液滴の上部に液滴と絶縁層となる空間を隔てて設置され、前記電極部の形状が、以下のA)又はB)の形状を有することにより、前記液滴を上下振動させながら回転させて撹拌することができることを特徴とする電界撹拌用電極:
A)前記電極部が、前記液滴に向けて突出し、先端部の水平面からの高さがそれぞれ異なる2つ以上の凸部又はエッジを有する形状、又は
B)前記電極部が、前記液滴の異なる2箇所以上を覆い、前記液滴を覆う各部位の水平面からの高さが、それぞれ異なるように形成されている形状。 - 前記電極部が前記A)の形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の電界撹拌用電極。
- 前記電極部が、平板に2つ以上のライン状の凸部を有する形状であることを特徴とする、請求項2に記載の電界撹拌用電極。
- 前記電極部が前記B)の形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の電界撹拌用電極。
- 前記電極部が前記液滴の異なる3箇所以上を覆うように形成されている形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の電界撹拌用電極。
- 液滴に変動電界を印加して撹拌を行う電界撹拌装置において、
請求項1〜5のいずれかに記載の電界撹拌用電極と、
変動電圧を前記電界撹拌用電極に供給する変動電圧発生装置を有することを特徴とする電界撹拌装置。 - 液滴に変動電界を印加して撹拌を行う電界撹拌方法において、
下記(a)〜(c)のステップを有することを特徴とする電界撹拌方法:
(a)容器内又は基板上に液滴を形成するステップ、
(b)請求項1〜5のいずれかに記載の電界撹拌用電極を、前記容器又は前記基板の上部に液滴と絶縁層となる空間を隔てて設置するステップ、及び
(c)前記電界撹拌用電極に変動電圧を供給するステップ。 - 前記(a)のステップが、撥水フレームを設けたスライドガラス上に液滴を形成するステップであることを特徴とする、請求項7に記載の電界撹拌方法。
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