JP5818765B2 - 舗装用アスファルト組成物及びその製造方法 - Google Patents
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特許文献1(特開2001−262157公報)には、アスファルト舗装の破損原因であるわだち掘れ、疲労ひびわれ、低温ひび割れを起こさない良好な供用可能温度を有することを目的として、特殊な原油混合物を減圧蒸留して得た残油を含む、25℃における針入度(1/10mm)が45以上71以下、かつ180℃における動粘度が90mm2/s以下となるように調整した舗装用アスファルトの製造方法が開示されている。
また、わだち掘れを改善するため、原油を蒸留して得られた減圧残油を、更に200〜300℃の加熱下で空気を数時間吹き込んで製造する、いわゆるセミブローンアスファルトが提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、これらの製造方法は特殊な原油を使用する、あるいは、蒸留操作に加えて煩雑なブローイング操作(減圧残油を200〜300℃の加熱下で空気を数時間吹き込む操作)が必要という問題がある。
さらに、近年道路舗装の長寿命化への対応としてアスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂等の改質材を混合した改質アスファルトの需要が増加しているが(特許文献2参照)、従来のアスファルトでは、改質材の膨潤・分散に問題があり限界があった。
また、本発明は、薄膜加熱試験後の伸度(15℃)が100cm以上、アスファルテン含有量が8〜15質量%であることを特徴とする前記記載の舗装用アスファルト組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、薄膜加熱試験後の伸度(15℃)が100cm以上、アスファルテン含有量が8〜15質量%であることを特徴とする前記記載の舗装用アスファルト組成物に関する。
また、本発明は、前記記載の舗装用アスファルト組成物のうち、25℃における針入度(1/10mm)が60〜100の舗装用アスファルト組成物からなる改質アスファルト基材に関する。
本発明の舗装用アスファルト組成物の(A)成分は、API度10〜25の範囲のナフテン系原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる、15℃における密度が0.990〜1.001g/cm3、25℃における針入度(1/10mm)が300〜800、120℃における動粘度が50〜500mm2/sであるナフテン系減圧蒸留残油である。
原料となるナフテン系原油のAPI度は10〜25であることが必要であり、15〜20であることが好ましい。API度が上記範囲を逸脱する場合には、目的とする性状を有するナフテン系減圧蒸留残油が得られない。
なお、ここでAPI度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容積換算表」に規定する振動式密度試験方法で密度(15℃)を測定し、これをJIS K 2249の附属書2「原油及び石油製品の密度(15℃)、API度及び比重60/60°Fの相互換算方法」により換算することにより求めた値である。
また、25℃における針入度(1/10mm)は300〜800であることが必要であり、350〜700であることが好ましく、400〜650であることがより好ましい。25℃における針入度(1/10mm)が300未満の場合は耐流動性が劣り、800を超えると耐ひび割れが劣るため好ましくない。
さらに、120℃における動粘度は50〜500mm2/sであることが必要であり、80〜400mm2/sであることが好ましく、90〜350mm2/sであることがより好ましい。120℃における動粘度が50mm2/s未満の場合は耐ひび割れ性が劣り、500mm2/sを超えると耐流動性が劣るため好ましくない。
なお、ここでいう15℃における密度は、JIS K 2207「石油アスファルト−密度試験方法」により、25℃における針入度(1/10mm)は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」により、120℃における動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定した値である。
本発明において用いる溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)は、軟化点が70〜200℃、好ましくは100〜180℃、より好ましくは110〜170℃であり、アスファルテン含有量が20〜70質量%、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは35〜60質量%の性状を有するものである。
SDAピッチの軟化点が200℃を超える場合は、耐流動性が低下するため好ましくなく、軟化点が70℃未満の場合は、耐ひび割れ性が低下するため好ましくない。また、SDAピッチ中のアスファルテン含有量が20質量%未満の場合は耐流動性が低下し、70質量%を超えると耐ひび割れ性が低下するため好ましくない。
なお、溶剤脱れきピッチの原料として使用する残油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留することにより得られる減圧蒸留残油を使用してもよいが、原油を常圧蒸留することにより得られる常圧蒸留残油を使用してもよいし、常圧蒸留残油と減圧蒸留残油との混合物を使用してもよい。
まず、原油を常圧蒸留装置によって分留して、ナフサ留分(主に沸点30〜230℃の留分)を得る。ナフサ留分は、常圧蒸留装置によって軽質ナフサ留分(例えば沸点30〜90℃相当)と重質ナフサ留分(例えば沸点80〜180℃相当)とに予め分留して、その後水素化精製(水素化脱硫処理)しても良いし、水素化精製(水素化脱硫処理)装置でナフサ留分を処理した後、軽質ナフサと重質ナフサに分留しても良い。
次に、接触改質装置によって重質ナフサ(主として沸点80〜180℃)を改質して芳香族系炭化水素を主体とするリフォーメートとする。このようにして得られたリフォーメートは、通常、15℃における密度が0.78〜0.81g/cm3、リサーチ法オクタン価が96〜104、モーター法オクタン価が86〜89であり、芳香族分含有量が50〜70容量%、飽和分含有量が30〜50容量%である。
このようにして得られたライトリフォーメートは、通常、ブタンを5〜15容量%、ペンタンを60〜80容量%、ヘキサンを5〜30容量%含むものである。なお、ここでいうブタン、ペンタン、ヘキサンとは、各々炭素数4、5、6のノルマルパラフィンとイソパラフィンの混合物であっても良い。
ライトリフォーメートを溶剤として残油から溶剤脱れきピッチを抽出する際には、抽出温度を150℃〜200℃とし、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)を5/1〜8/1として行うことが好ましい。
なお、ここでいう25℃における針入度(1/10mm)は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」により測定した値である。軟化点は、JIS K 2207「石油アスファルト−軟化点試験方法(環球法)」により測定した値である。また、アスファルテン含有量は、石油学会規格「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」(JPI−5S−22−83)により測定した値である。
ここでいう25℃における針入度(1/10mm)は、JIS K 2207「石油アスファルト−針入度試験方法」により測定した値である。
また、本発明により得られる舗装用アスファルト組成物は、薄膜加熱試験後の伸度(15℃)が100cm以上であり、好ましくは110cm以上、より好ましくは120cm以上、さらに好ましくは150cm以上である。また、アスファルテン含有量が8〜15質量%であり、好ましくは9〜14質量%、より好ましくは9〜13質量%である。
なお、ここでいう薄膜加熱試験後の伸度(15℃)とは、JIS K 2207「石油アスファルト−伸度試験」により測定した値である。また、アスファルテン含有量は、石油学会規格「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」(JPI−5S−22−83)により測定した値である。
本発明における舗装用アスファルトの性能について、耐流動性はホイールトラッキング試験による動的安定度により評価した。また耐ひび割れ性は曲げ試験により評価した。
なお、ホイールトラッキング試験および曲げ試験は、各々、社団法人日本道路協会「舗装試験法便覧」の3−7−3「ホイールトラッキング試験方法」、3−7−5「曲げ試験方法」記載の方法で行った。以下に試験法の概略を記す。
アスファルトと骨材を加熱混合したアスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れ整形した供試体を60℃の恒温室で規定荷重(686±10N)の小型車輪を往復させ、45分および60分における変形量(わだち掘れ量)を測定し、動的安定度(回/mm)を求め、混合物のわだち掘れに対する抵抗性を評価する。
動的安定度(DS:Dynamic Stability)の値は大きいほど、高温時における加熱アスファルト混合物の耐流動性の良いことを示す。一般的には、わだち掘れが起こらないためには動的安定度が500以上である必要がある。
アスファルトと骨材を加熱混合したアスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れ、整形した後、300×100×50mmの形状の供試体を切り出して供試体を作製し、−10℃で養生後、供試体を載荷試験機にセットし、載荷速度50mm/minで中央部に集中載荷する。最大荷重を示して供試体が破断するまで載荷を行い、荷重と変形量を求め、破断時(最大荷重時)の曲げ強度および破断時のひずみを求める。一般的に、破断時の曲げ強度およびひずみの値は大きいほど、ひび割れに対する耐久性が良いことを示す。
ホイールトラッキング試験結果より、動的安定度が500(回/mm)以上である場合は、「わだち掘れがおこらない:○」と評価した。
さらに、曲げ試験結果より、「ひび割れが無し:○」、「場合によってはひび割れする:△」、「ひび割れ有り:×」と評価した。
JIS K 2207「石油アスファルト」の方法で行った。以下に薄膜加熱試験法及び伸度試験の概略を記す。
(3−1)薄膜加熱試験
アスファルトが加熱アスファルト混合物製造時に受ける熱による劣化を摸した試験で、規定の容器に所定量のアスファルトを投入して薄膜状にし、163℃に保たれた恒温空気槽で5時間暴露させる。加熱前後の質量変化を測定するほか、針入度試験を実施し薄膜加熱後の針入度残留率を算出するなど、加熱時の劣化傾向を評価する。
(3−2)伸度試験
アスファルトの延性を調べる試験で、ダンベル状に成型したアスファルトを所定の温度と速度で引っ張ったとき、試料が切断するまでに伸びた量(cm)で表される。アスファルトの凝集性やたわみ性、ひび割れ抵抗性の指標として用いられるが、更に薄膜試験後のアスファルトの伸度試験を行い、100cm以上であることにより加熱時のひび割れに対する耐久性が良いことを示す。すなわち、アスファルト混合物に含まれるアスファルトが加熱作用などの影響を受けて、その物理性状に変化をきたすこと、一般に針入度の低下、軟化点の上昇、伸度の低下となって現れることが知られている。
(4)相溶性
アスファルトの改質材として、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、アサプレンT432:スチレン含有量30%、ジブロック量26%、重量平均分子量(GPC)16万)を5%添加し、180℃で2時間攪拌混合した。その後180℃にて3日間放置後試料の上部、下部の軟化点を測定し温度差により、相溶性の評価を行った。
(評価)
上部・下部の温度差:5℃未満を◎、5℃〜15℃未満を○、15℃〜25℃未満を△、25℃以上を×と評価した。
本発明の製造方法により、表1に示すAPI度15のナフテン系原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られるナフテン系減圧蒸留残油(VR)とアスファルテン含有量の高いSDAピッチをブレンドし、25℃における針入度(1/10mm)40〜100の舗装用アスファルトを製造し、更に骨材と混合してアスファルト混合物を製造し、耐流動性、耐ひび割れ性を評価した。各成分の性状、混合割合および評価結果を表2に示す。なお、骨材配合はアスファルト舗装要綱に記載されている密粒度アスコン(13)の中央値とした。実施例1〜5のいずれも、耐流動性およびひび割れ性において優れた特性を示した。また、薄膜加熱試験後の伸度試験も優れた特性を示した。
また、25℃における針入度(1/10mm)60〜100の舗装用アスファルトを製造し、SBS5%添加ブレンドして製造した改質アスファルトは、相溶性に優れており改質アスファルト基材としても優れた特性を示した。
比較例1〜4のいずれも、耐流動性、薄膜後の伸度および改質材のSBSとの相溶性が、不十分な性能であった。
Claims (3)
- (A)API度10〜25の範囲のナフテン系原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる、15℃における密度が0.990〜1.001g/cm3、25℃における針入度(1/10mm)が300〜800、120℃における動粘度が50〜500mm2/sであるナフテン系減圧蒸留残油(VR)60〜95重量部と、(B)原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、並びに原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも1種を含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質装置で改質した後に分留されたブタンを5〜15容量%、ペンタンを60〜80容量%、ヘキサンを5〜30容量%含むライトリフォーメートを溶剤として抽出温度が150℃〜200℃、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)が5/1〜8/1の条件下に抽出処理して得られる、25℃における針入度(1/10mm)が1〜10、軟化点が70〜200℃、アスファルテン含有量が20〜70質量%の性状を有する溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)5〜40重量部とを配合することを特徴とする25℃における針入度(1/10mm)が40〜100の舗装用アスファルト組成物の製造方法。
- 薄膜加熱試験後の伸度(15℃)が100cm以上、アスファルテン含有量が8〜15質量%であることを特徴とする請求項1に記載の舗装用アスファルト組成物の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により得られる舗装用アスファルト組成物のうち、25℃における針入度(1/10mm)が60〜100の舗装用アスファルト組成物からなる改質アスファルト基材を得ることを特徴とする改質アスファルト基材の製造方法。
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