JP5810872B2 - 偏光板用保護フィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

偏光板用保護フィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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本発明は偏光板用保護フィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、光拡散性の偏光板用保護フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶表示装置(以下「LCD」ともいう。)は、バックライトユニット、液晶セル及び偏光板を含む。偏光板は、通常、偏光板用保護フィルム(「偏光膜保護フィルム」又は「偏光板保護フィルム」ともいう。)と偏光子(「偏光膜」ともいう。)とからなる。偏光子としては、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、延伸を行ったものがよく用いられており、その両面を偏光板用保護フィルムに覆われている。偏光板用保護フィルムとしては、優れた透湿性を有し偏光子との接着性に優れたセルロースアシレートフィルムが多く用いられている。
近年、LCDの分野では、薄型化及びコストダウンが進んできている。液晶表示装置は、自発光型の表示装置ではないため、液晶セルの背面側(バックライト側)、あるいは、導光板のエッジ部分(エッジライト型)に冷陰極管(CCFL)やLED等の光源が必ず配置されている。これらの光源は、一般に線光源あるいは点光源であるため、均一に面光源化するために、光拡散シート又は光拡散フィルム(「拡散シート」又は「拡散フィルム」ともいう。)が用いられている。また、光拡散シートは、光に指向性を持たせるための部材としてよく用いられるプリズムシートと入射光との干渉、あるいは液晶セル中の画素と入射光が干渉して生じるモアレ等の干渉縞を抑制することができる。
しかし、近年、薄型化やコストダウンの流れで、液晶表示装置の部材数の削減が進み、光拡散シートを使用しない構成のLCDが出てきている。また、光拡散シートを使用する場合でも、LCDの薄型化のために光源と光拡散シートとの距離が近くなり、そのため、従来の光拡散シートだけではモアレ等の干渉縞を解消することが困難になってきている。そこで、光拡散シートの代替として液晶表示装置の背面側(バックライト側)偏光板の表面に光拡散性を有するものが使用されてきている。
例えば、特許文献1には、多孔質不定形粒子と球状粒子とを分散含有する、所定の特性の光拡散層を有する光拡散偏光板が提案され、これによって光拡散シートを省略できることが開示されている。また、特許文献2及び3には、透光性微粒子や架橋性微粒子を含有する光拡散フィルムを偏光板用の保護フィルムとして使用することが提案されている。しかし、この方法によると偏光板化を行う際に微粒子が脱落する問題や、安価に製造できないという問題があった。
このようなことから、微粒子脱落がなく、モアレ縞解消に十分な光拡散性と偏光板用保護フィルム適性を併せもつ新しいフィルムが求められていた。
特許文献4には、微粒子を使用せずに、複数の樹脂からなるドープを支持体となるフィルム上に流延し、相分離させた海島構造をもつ光散乱シートや、セルロースアシレートと非セルロースアシレートの混合溶液を支持フィルム上に塗布して作製した光散乱シートが開示されている。この光散乱シートを偏光板用保護フィルムとして用いた場合、低温高湿度下で長時間おいた場合に偏光板が赤色に変色してしまう問題があることがわかった。また、セルロースフィルム上に海島構造を有する光拡散層を塗布によって設ける構成では、高湿度環境下でセルロースフィルムと光拡散層との密着が悪化するという問題があることも分かった。
偏光板は、表示装置メーカーに、車、船舶、飛行機など任意な輸送手段によって配送されるが、輸送の過程で低温高湿度下に晒されることがある。そのため、低温高湿度下で赤色に変色してしまう欠陥は、解決すべく重大な欠陥である。
光拡散シートを偏光板用保護フィルムとして用いた場合に、このような問題があることは従来知られていなかった。そこで本発明者らは低温高湿度下での偏光板の赤色変色と密着性確保を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、特許文献4の散乱シートを用いた偏光板が低温高湿度下で赤色に変色してしまうのは、フィルム面内で透湿性のムラがあることが原因であり、セルロースアシレートを用いた共流延(積層流延ともいう。)法で製膜した偏光板用保護フィルムとすることによって解決できることが判明した。
セルロースアシレートを共流延し、外部ヘイズの大きな偏光板用保護フィルムを作製した例として、特許文献5が挙げられる。最外層にマット剤を含有させ、延伸条件を調整することで内部ヘイズが低く外部ヘイズの大きな偏光板用保護フィルムを作製している。しかし、このフィルムの光散乱能は到底不十分でモアレ縞を解消することはできない。
光散乱性能を向上させるため、最外層に含有させる微粒子を粒径の大きなものに変えて共流延を行い、フィルムを作製したところ、微粒子と樹脂界面での剥離や、微粒子が介在することにより最外層と内部層との膜剥がれが生じてしまう問題があることがわかった。
このように、微粒子脱落がなく、従来と同じ偏光板化工程を経て問題なく偏光板化できる光拡散機能を有する偏光板用保護フィルムが求められているが、実用化に適するレベルのものがいまだ存在していないのが現状である。
特開2000−75134号公報 特開2010−277080号公報 特開2010−164931号公報 特開2002−250806号公報 特開2011−132496号公報
本発明者は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、偏光板にしたときに低温高湿度下でも赤色変色の問題が生じず、層間の膜剥がれのない、モアレ解消に十分な光拡散機能を有する偏光板用保護フィルムを提供することである。また、その偏光板用保護フィルムの製造方法とその偏光板用保護フィルムを具備した偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、偏光板用保護フィルムの層構成を3層構造とし、ある特定の関係を満たす二種類のセルロースアシレートを組み合わせることにより、低温高湿度下でも赤色変色の問題が生じず、層間の膜剥がれのない、モアレ解消に十分な光拡散機能を有する偏光板用保護フィルムを提供できることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明の上記課題は以下の手段により解決される。
1.層A、層B及び層Cの順で隣接する少なくとも3層構造を有するフィルムであって、該層A、該層B及び該層Cが、少なくともセルロースアシレートを含有し、該層Bに含有されるセルロースアシレートが、下記式(1)を満たし、該層Cが、二種のセルロースアシレートが混合されて海島構造を有しており、該層Cを構成する二種のセルロースアシレートCE(I)及びCE(II)の混合比の値CE(I)/CE(II)が、60/40〜95/5の範囲内であり、CE(I)のプロピオニル置換度をPr(I)、CE(II)のアセチル基置換度をAc(II)、プロピオニル置換度をPr(II)としたときに、下記式(2)及び式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内でX≦Yを満たし、かつ該層C側の表面の算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする偏光板用保護フィルム。
式(1):ZB≧2.0
(但し、ZBは層Bに含有されるセルロースアシレートの総アシル基置換度を表す。)
式(2):X=2×Pr(II)+Ac(II)
式(3):Y=0.7×Pr(I)+1.7
2.前記層C側の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、5〜40μmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の偏光板用保護フィルム。
3.前記偏光板用保護フィルムの内部ヘイズ値が、0.08〜5.0の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の偏光板用保護フィルム。
4.前記層Aに含有されるセルロースアシレートが、下記式(4)を満たすことを特徴とする第1項から第項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルム。
式(4):ZA≧2.7
(但し、ZAは層Aに含有されるセルロースアシレートの総アシル基置換度を表す。)
5.第1項から第項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルムを製造する偏光膜保護フィルムの製造方法であって、前記層A、層B及び層Cのドープを共流延してウェブを形成する工程と、次いで該ウェブを延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする偏光板用保護フィルムの製造方法。
6.第1項から第項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板。
7.第項に記載の偏光板が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
本発明の上記手段により、偏光板にしたときに低温高湿度下でも赤色変色の問題が生じず、層間の膜剥がれのない、モアレ解消に十分な光拡散機能を有する偏光板用保護フィルムとその偏光板用保護フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、その偏光板保護フィルムが具備された偏光板及び表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
公知の方法で作製された光拡散層を有する偏光板用保護フィルムを用いた偏光板、あるいは、公知の方法で作製された光散乱シートを偏光板用保護フィルムに転用した場合の偏光板が低温高湿度環境下で赤色に変色する理由は、偏光板用保護フィルムの表面の水分の抜けやすさにムラがあることが原因と考えられる。セルロースフィルムを偏光板化する際に、アルカリ溶液で鹸化し、水糊を用いてポリビニルアルコール偏光子と貼合する手段がよく用いられるが、微粒子等による光拡散層、あるいは、セルロースエステルと非セルロースエステルの海島構造による光散乱層を有する偏光板用保護フィルムの場合、鹸化された後の光拡散層の凹凸部において、透湿度に差が生じてしまうため、透湿度の小さい部分に水分が残り、それが赤色変色の原因になると考えられる。
本発明においては、層A、層B及び層Cの順に隣接して積層されたフィルムであって、層Cを上記のように置換基、置換度の異なる二種のセルロースアシレート樹脂CE(I)とCE(II)の混合物とすることで、海島構造による凹凸を形成する。従って、微粒子を用いないため微粒子脱落がなく、二種類のセルロース樹脂によって形成される凹凸によってモアレ縞を解消することができる。さらにこのフィルムを用いて偏光板を作製する時に、通常の偏光板用保護フィルムと同様にアルカリで鹸化処理を行ってから偏光子と貼合するが、本発明の層Cに形成されている凹凸は、セルロースアシレートのみからなるため、透湿度のムラによる低温高湿度環境下での赤色変色が起こりにくい。さらに、少なくともセルロースアシレートを含む積層構成であることで、さらにこの透湿度のムラを低減することができ、表面に凹凸構造のある光散乱能付きのフィルムであっても、低温高湿度下での赤色変色を効果的に抑制することができたものと考えられる。
本発明の偏光板用保護フィルムの製膜方法の共流延工程を説明する模式的に示した図 本発明の溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程及び延伸工程の一例を模式的に示した図 従来の液晶表示装置の構成の例を模式的に示した図 本発明の液晶表示装置の構成の例を模式的に示した図 本発明の偏光板用保護フィルムの層構成を説明する模式的に示した図 本発明に係る正面輝度の測定装置の概略図
本発明の偏光板用保護フィルムは、層A、層B及び層Cの順で隣接する少なくとも3層構造を有するフィルムであって、該層A、該層B及び該層Cが、少なくともセルロースアシレートを含有し、該層Bに含有されるセルロースアシレートが、前記式(1)を満たし、該層Cが、二種のセルロースアシレートが混合されて海島構造を有しており、該層C側の表面の算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項8までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
また、本発明の実施態様として、前記層Cを構成する二種のセルロースアシレートCE(I)及びCE(II)の混合比の値CE(I)/CE(II)が、60/40〜95/5の範囲内であり、
CE(I)のプロピオニル置換度をPr(I)、CE(II)のアセチル基置換度をAc(II)、プロピオニル置換度をPr(II)としたときに、
前記式(2)及び式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内でX≦Yを満たすことが二つの樹脂が相分離し、海島構造となるので好ましい。
また、前記層C側の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、5〜40μmの範囲内であることがモアレ縞解消に十分な光拡散効果が得られるので好ましい。
また、前記偏光板用保護フィルムの内部ヘイズ値が、0.08〜5.0の範囲内であることが表示装置としたときの正面輝度の観点から好ましい。
また、前記層Aに含有されるセルロースアシレートが、下記式(4)を満たすことが、製膜時の支持体(金属ベルト又は金属ドラム)からの剥離性向上の効果が得られるので好ましい。
また、本発明の偏光板用保護フィルムの製造方法としては、前記層A、層B及び層Cのドープを共流延してウェブを形成する工程と、次いで該ウェブを延伸する延伸工程とを含むものであることが、3層の密着性が良好なフィルムを作製することができ、また貼り合わせの工程が不要で生産コストの面でも好ましい。
本発明の偏光板用保護フィルムは、偏光板及び液晶表示装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<本発明の偏光板用保護フィルムの概要>
本発明の偏光板用保護フィルムは、層A、層B及び層Cの順で隣接する少なくとも3層構造を有するフィルムであって、該層A、該層B及び該層Cが、少なくともセルロースアシレートを含有し、該層Bに含有されるセルロースアシレートが、下記式(1)を満たし、該層Cが、二種のセルロースアシレートが混合されて海島構造を有しており、該層C側の表面の算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることを特徴としている。
式(1):ZB≧2.0
(但し、ZBは層Bに含有されるセルロースアシレートの総アシル基置換度を表す)
ここで、層Aは、製膜時に支持体(金属ベルト又は金属ドラム)からの剥離性を向上する機能を有する層で、アシル基総置換度ZAの高いセルロースアシレートが好ましい。層Bは偏光板用保護フィルムとしての機能と層A及び層Cの支持体(基体)としての機能を併せ持つ層で、セルロースアシレートを主成分とする。層Cは、光拡散機能を担う層で、二種類のセルロースアシレートCE(I)とCE(II)から構成される。
このように偏光板保護フィルムを3層構成とすることによって、1層構成の場合に比べて、層A、層B、層Cにそれぞれの目的に叶う物性を有する樹脂を選択することが可能となり、好ましい特性を有する偏光板保護フィルムを得ることができる。
すなわち、層Aは、総アシル基置換度ZAが2.7以上のセルロースアセテートを含有することで、支持体(金属ベルト又は金属ドラム)からの剥離性を向上させ、層Bは総アシル基置換度ZBが2.0以上のセルロースアシレートを含有することで偏光板用保護フィルムとしての剛性を維持できる。また、偏光子を保護するために十分な透湿性などの機能を持たせることができる。層Cは、置換するアシル基の種類及び/又は置換度の異なる二種のセルロースアシレートCE(I)とCE(II)の混合物を含有し、該フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmの範囲内とすることで、光拡散機能を発現させ、モアレ縞解消効果を有するものである。更に、層C表面の鹸化されやすさが異なることによる偏光子の劣化を、3層構成とすることで解決することができる。
本発明の偏光板用保護フィルムに光拡散性を付与するには、層Cに二種類のセルロースアシレート樹脂を含有することで海島構造とし、セルロースアシレートCE(I)からなる連続相(海)と、セルロースアシレートCE(II)からなる分散相(島)からなる海島構造からなる凹凸形状を形成するものである。
セルロースアシレートを二種混合しても、単なるセルロースアシレートの組み合わせでは、多くの場合セルロースアシレート同士は相溶し、光拡散機能を持たせることができない。本発明者は、数々の検討を行った結果、ブレンドするセルロースアシレートCE(I)とセルロースアシレートCE(II)の組み合わせとして、主成分として用いるCE(I)と副成分として用いるCE(II)のアシル基の選択やアシル基置換度に着目し、両者のアシル置換基、アシル置換度が本発明の関係を満たす場合に、海島構造による凹凸形状を形成することができる。この凹凸形状によって、モアレ縞を解消し十分な光拡散性を付与することができる。
セルロースアシレートCE(I)とセルロースアシレートCE(II)の混合割合は、セルロースアシレートCE(I)とCE(II)の混合比の値CE(I)/CE(II)が、60/40〜95/5の範囲内であることが好ましい。この範囲内にあるときに、海島構造が効果的に形成される。すなわち、CE(I)が60質量%未満では、ドープのゲル化が起こりやすく、また、海島構造を形成せず、島を形成すべきCE(II)が繊維状に分散されたフィルムになってしまったり、均一なフィルムが作製できなかったりするため好ましくない。また、CE(I)が95質量%を超えると明確な形に相分離しにくくなり、一部界面が相溶した形状になり、十分な光拡散性、モアレ解消能が得られなくなってしまうため好ましくない。
また、本発明の好ましい態様として、本発明の偏光板保護フィルムを構成する層Cが、下記式(2)、式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内で、X≦Yであることが海島構造を形成する上で好ましい。
式(2):X=2×Pr(II)+Ac(II)
式(3):Y=0.7×Pr(I)+1.7
海を形成すべくセルロースアシレートCE(I)としてはなるべく柔らかい樹脂が好ましく、フレキシブルな置換基を持ったセルロースアシレート、セルロースアセテートプロピオネートが適している。CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)が0である場合には海島構造を形成せず、Pr(I)≧0.5の範囲内であることが好ましい。
島を形成すべくセルロースアシレートCE(II)としては、分子内、あるいは分子間相互作用のしやすいセルロースアシレートが適している。セルロースアシレートCE(II)は、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどアシル基の種類によらずどのようなセルロースアシレートでも構わないが、上記の構成のうち前記式(2)及び式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内で、X≦Yを満たすようなアシル基置換度及びプロピオニル基置換度を持ったセルロースアシレートであることが好ましい。
本発明においては、セルロースアシレートCE(I)を柔軟なセルロースアシレート、セルロースアシレートCE(II)をある程度剛直さのあるセルロースアシレートとすることで、光拡散機能に十分な海島構造を形成できるものと考えられる。
また、層Cを上述のような構成とすることによって、フィルムの一方の面の算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmの範囲内となり、十分な光拡散機能を有することができ、また内部ヘイズ値を好ましい値にすることが可能となり、モアレ縞解消能が向上する。
図5は本発明の偏光板用保護フィルム(図4の14a)の層構成を示している。Aは層A、Bは層B、Cは層Cを表し、層Aの上に層B、更にその上に層Cが積層された3層構成の一枚のフィルムで構成されている。Cの層Cは、島iを形成する樹脂(CE(II))と海sを形成する樹脂(CE(I))から構成された光拡散機能を有する層である。
<本発明のフィルムに使用するセルロースアシレート>
本発明に係る層Aに用いられるセルロースアシレートとしては、総アシル基置換度ZAが2.7以上であればよく、アシル基としては、アセチル基又はプロピオニル基のどちらかを含でいればよく、その他のアシル基としてブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等を含んでもよい。具体的に好ましく使用されるセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等のように混合脂肪酸エステルでもよい。
本発明に係る層Bに用いられるセルロースアシレートとしては、総アシル基置換度ZBが2.0以上であればよく、アシル基としては、同じく、アセチル基又はプロピオニル基のどちらかを含でいればよく、その他のアシル基としてブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等を含んでもよい。具体的に好ましく使用されるセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等のように混合脂肪酸エステルでもよい。
本発明に係る層Cに用いられるセルロースアシレートCE(I)、セルロースアシレートCE(II)としては、前述のように、
セルロースアシレートCE(I)のプロピオニル基置換度をPr(I)、
セルロースアシレートCE(II)のアセチル基置換度をAc(II)、
セルロースアシレートCE(II)のプロピオニル基置換度をPr(II)としたときに、下記式(2)及び式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内でX≦Yを満たすことが好ましい。
式(2):X=2×Pr(II)+Ac(II)
式(3):Y=0.7×Pr(I)+1.7
であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は、通常ヒドロキシ基として存在する。
上記アシル基置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
ここで、アシル基置換度とは、セルロースを構成するグルコース繰り返し単位の2位、3位及び6位について、セルロースがエステル化している割合の合計を表す。具体的には、セルロースの2位、3位及び6位のそれぞれのヒドロキシ基(水酸基)が100%エステル化した場合をそれぞれ置換度1とする。したがって、セルロースの2位、3位及び6位の全てが100%エステル化した場合、置換度は最大の3となる。
また、セルロースアシレートCE(I)のガラス転移点Tg(CE(I))、セルロースアシレートCE(II)のガラス転移点Tg(CE(II))としたときに、本発明の偏光板用保護フィルムは延伸工程において、延伸温度TがTg(CE(I))<T<Tg(CE(II))となる温度で延伸を行うことが好ましいため、セルロースアシレートCE(I)、セルロースアシレートCE(II)を、Tg(CE(I))<Tg(CE(II))であるように選択することが好ましい。
(ガラス転移点(Tg)の測定法)
セルロースアシレートのTgは、示差走査熱量分析方法により測定することができる。具体的には、示差走査熱量計EXSTARDSC6000(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて行う。
測定手順としては、樹脂10.0〜12.0mgを0.01mgまで精秤しアルミニウム製パンに封入し、サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜200℃、昇温速度5℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御で行い、その2ndHeatにおけるデータをもとに解析を行う。
Tgは第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をTgとする。
(セルロースアシレートの合成方法)
本発明に用いられるセルロースアシレートは公知の方法により合成することができる。具体的には、特開平10−45804号公報、特開2009−161701号公報、特開2003−270442号公報などに記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロースアシレートの原料のセルロースは、特に限定は無いが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。
一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の3個のヒドロキシ基は、有機酸のアシル基で置換されている。同時に二種類以上の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースアシレート、例えば、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル基置換度を有するセルロースアシレートを合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースアシレートを得ることができる。
本発明に用いられる混合エステル型のセルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基及びプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースアシレートを合成する。
アセチル化剤、プロピオニル化剤、ブチリル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることが更に好ましい。酸性触媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
反応温度は10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがさらに好ましい。なお、他のアシル化剤やエステル化剤(例えば、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(鹸化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(例えば、セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースアシレートを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、75,000以上であることが好ましく、75,000〜400,000の範囲であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は、60,000〜240,000が好ましく、数平均分子量が、この範囲内であると、得られるフィルムの機械的強度が強くなるため、好ましい。より好ましくは、数平均分子量が70,000〜200,000のセルロースアシレートが用いられる。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法は下記方法によることができる。
(分子量測定方法)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500までの13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(残留硫酸含有量)
セルロースアシレート中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45質量ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45質量ppmを超えると、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなる傾向がある。なお、残留硫酸含有量は、1〜30質量ppmの範囲がより好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
(遊離酸含有量)
また、セルロースアシレート中の遊離酸含有量は、1〜500質量ppmであることが好ましい。上記の範囲であると、上記と同様に破断しにくいため、好ましい。なお、遊離酸含有量は、1〜100質量ppmの範囲であることが好ましく、さらに破断しにくくなる。特に1〜70質量ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法により測定することができる。
(残留物量調整方法)
合成したセルロースアシレートの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、さらに十分に行うことによって、残留アルカリ土類金属含有量、残留硫酸含有量、及び残留酸含有量を上記の範囲とすることができ好ましい。
(輝点異物)
また、セルロースアシレートは、フィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)を意味する。輝点異物は、直径0.01mm以上の輝点の個数が200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることがさらに好ましく、30個/cm以下であることがいっそう好ましく、10個/cm以下であることが特に好ましく、皆無であることが最も好ましい。
また、直径0.005〜0.01mm以下の輝点についても、200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることがさらに好ましく、30個/cm以下であることがいっそう好ましく、10個/cm以下であることが特に好ましく、皆無であることが最も好ましい。
(含有金属量)
また、セルロースアシレートは、セルロースアシレート中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらの微量金属成分は、製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となりうるような成分は少ない方が好ましく、特に、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。また、カルシウム(Ca)成分は、カルボン酸やスルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物(すなわち、錯体)を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成するおそれがあるため、少ないことが好ましい。
具体的には、鉄(Fe)成分については、セルロースアシレート中の含有量が1質量ppm以下であることが好ましい。また、カルシウム(Ca)成分については、セルロースアシレート中の含有量が好ましくは60質量ppm以下であり、より好ましくは0〜30質量ppmである。さらに、マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、セルロースアシレート中の含有量が0〜70質量ppmであることが好ましく、特に0〜20質量ppmであることが好ましい。
なお、鉄(Fe)成分の含有量、カルシウム(Ca)成分の含有量、マグネシウム(Mg)成分の含有量などの金属成分の含有量は、絶乾したセルロースアシレートをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することができる。
<添加剤>
本発明の偏光板用保護フィルムには、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。
〔可塑剤〕
本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
(ポリエステル系可塑剤)
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤は本発明に係るフィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
多価アルコールエステル系可塑剤は下記一般式(1)で表される多価アルコールのエステル化合物である。
一般式(1):R−(OH)
(式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のヒドロキシ基(OH基)は全てエステル化してもよいし、一部をヒドロキシ基のままで残してもよい。
この他、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテートなども好ましく用いられる。特開2008−88292号に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)を使用することも好ましい。
(多価カルボン酸エステル系可塑剤)
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は2価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は下記一般式(2)で表される。
一般式(2):R(COOH)(OH)
(但し、Rは(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシ基、OH基はアルコール性又はフェノール性ヒドロキシ基を表す)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような2価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪族飽和アルコールを好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール又はその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコール又はその誘導体なども好ましく用いることができ、フェノールとしては、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール等を単独又は二種以上を併用して使用することができる。
特開2008−88292号に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)を使用することも好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
(グリコレート系可塑剤)
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が挙げられる。
(フタル酸エステル系可塑剤)
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
(クエン酸エステル系可塑剤)
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
(脂肪酸エステル系可塑剤)
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
(リン酸エステル系可塑剤)
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
(糖エステル化合物系可塑剤)
本発明の偏光板用保護フィルムには、可塑剤としてフラノース構造若しくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造若しくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基の全て若しくは一部をエステル化した化合物(糖エステル化合物ということがある。)を含むことができる。
好ましい「フラノース構造若しくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造若しくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物」の例としては、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載されている。
本発明の偏光板用保護フィルムに含有させる場合は、セルロースアシレートに対して0〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。
〔紫外線吸収剤〕
本発明の偏光板用保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
〔微粒子〕
本発明の偏光板用保護フィルムは、必要に応じて前記セルロースアシレート溶液の処理工程後に、微粒子を添加してもよい。
前記微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。また、有機化合物の微粒子も好ましく使用することができる。有機化合物の例としてはポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリフッ化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物も挙げられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、又は無機化合物を用いることができる。
微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。
これらは主に粒径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
セルロースアシレート中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
重合体の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが位相差フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
〔その他の添加剤〕
さらに、本発明の偏光板用保護フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、帯電防止性能を与えることも可能である。
本発明の偏光板用保護フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
さらに、本発明の偏光板用保護フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、帯電防止性能を与えることも可能である。
各種添加剤は製膜前の樹脂含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部又は全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量の樹脂を溶解するのが好ましい。好ましい樹脂の量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
(アクリル系共重合体)
本発明の偏光板用保護フィルムには、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することができる。中でも分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーX、より好ましくは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有さず親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
セルロースアシレートに対して1〜30質量%の範囲で添加することができる。
<本発明の偏光板用保護フィルムの製造方法>
本発明の偏光板用保護フィルムの製造方法としては、層A、層B及び層Cのドープを共流延してウェブを形成する工程と、次いで該ウェブを延伸する延伸工程とを含む製造方法であることが好ましい。
すなわち、本発明の偏光板用保護フィルムの製膜方法としては、
(a)樹脂と添加剤とを有機溶媒に溶解しドープを形成する工程、
(b)前記ドープを支持体(金属ベルト又は金属ドラム)上に流延してウェブを形成する流延工程、
(c)前記ウェブを乾燥する乾燥工程、及び
(d)延伸温度TがTg(CE(I))<T<Tg(CE(II))となる温度で1.03〜1.2倍以内の倍率で延伸する工程、
とを有する製造法を用いることが好ましい。上記(b)のウェブを形成する流延工程において、後述の共流延法を用いることが好ましい。
以下、本発明の偏光板用保護フィルムの流延方法の例を説明するが、流延方法としては共流延法による溶液製膜が好ましい。
本発明の偏光板用保護フィルムの製膜方法としては、特に限定されるものではないが、層A、層B及び層Cをそれぞれ別に製膜し、貼り合わせてもよいし、共流延法で3層を一体として作製してもよい。共流延法としては、3層を同時流延して3層一体の積層フィルムを作製する同時流延法を採用することもできる。また、支持体(金属ベルト又は金属ドラム)上に、各層を逐次流延して3層を重ねることで一枚のフィルムとして製膜する逐次流延法を採用することもできる。本発明においてはどちらの方法を採用してもよい。同時及び逐次の共流延方法で作製する方が、3層の密着性が良好なフィルムを作製することができ、また貼り合わせの工程が不要で生産コストの面でも有利である。
(共流延法)
同時流延による共流延法とは、図1に示すように、走行する支持体85の上に流延ダイ89から上記層A122、層B120及び層C121の三種類のドープを共に流延することによって行われる。逐次流延による共流延法では、支持体85上に多数の流延口から逐次で多層流延することによって行われる。本発明においては、同時流延による共流延法によって流延することが好ましい。ここで、各ドープの流延量を調整することにより層Bを最も厚くし、層Aの膜厚t2、層Bの膜厚t1、層Cの膜厚t3を任意に制御することができる。同時に3層を流延した後、溶剤を揮発させながら冷却ゲル化させ、ウェブを剥ぎ取る。次いで、熱風にて残留溶剤量が10質量%程度になるまで乾燥し、その後熱風にて乾燥させることによりフィルムを得ることができる。
共流延方法においては、調製した二種以上のセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
ドープは、支持体(金属ベルト又は金属ドラム)上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はベルトの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下の金属ベルト又は金属ドラム上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムを金属ベルト又は金属ドラムから剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時の金属ベルト又は金属ドラムの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明では得られたセルロースアシレート溶液(ドープ)を、支持体としての平滑なベルト上あるいはドラム上に前記二種以上の複数のセルロースアシレート液を流延して製膜する。本発明のフィルムの製造方法としては、上記以外に特に制限はなく公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。本発明のフィルムを製造する方法としては、製膜が同時又は逐次での多層流延製膜であることが好ましい。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の0.2〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。
共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、層A/層B/層Cといった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、層A、層Cに多く、又は層A若しくは層Cのみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤は層A、層Cよりも層Bに多く入れることができ、層Bのみに入れてもよい。また、層Bと層A及び層Cで可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば層A、層Cに低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、層Bに可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側の層Aのみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、層A、層Cに貧溶媒であるアルコールを層Bより多く添加することも好ましい。層A、層B及び層CのTgが異なっていても良く、層A、層CのTgより層BのTgが低いことが好ましい。また、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度も層A、層Cと層Bで異なっていても良く、層A、層Cの粘度が層Bの粘度よりも小さいことが好ましいが、層Bの粘度が層A、層Cの粘度より小さくてもよい。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させて支持体(金属ベルト又は金属ドラム)から剥離する。
(有機溶媒)
本発明の偏光板用保護フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、使用する複数のポリマー及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのポリマーの溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、海ポリマー及び島ポリマーを、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
以下、本発明の偏光板用保護フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
図2は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
(1)溶解工程
使用するポリマーに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で樹脂及びその他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
樹脂及び添加剤を溶解させた後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
その後ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
多くの場合、ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の支持体31、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する前述の共流延法によって積層構造のフィルムを得ることが好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜を「ウェブ」と呼ぶ。)を支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。
剥離時の残留溶媒量を調整するためには、この溶媒蒸発工程での支持体裏面に接触させる液体温度、支持体との接触時間等を適宜調整するとよい。
(4)剥離工程
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
なお、剥離する時点での支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、支持体の長さ等により、5〜120質量%の範囲で剥離することが好ましい。
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
(5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥はおおむね40〜250℃で行われる。
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
延伸倍率は幅手方向、長手方向、特に幅手方向に1.03〜1.2倍以内の倍率で延伸することが海島構造を形成する上で好ましい。
本発明の偏光板用保護フィルムは延伸工程において、延伸温度TがTg(CE(I))<T<Tg(CE(II))となる温度で延伸を行うことが好ましい。従って海島構造を形成する樹脂のうち島を構成する樹脂(セルロースアシレートCE(II))のガラス転移温度が、海を構成する樹脂(セルロースアシレートCE(I))よりも高いことに特徴がある。
具体的には、テンター延伸を行う場合の温度は、30〜200℃以内が好ましく、100〜200℃以内が更に好ましい。
延伸時の温度制御は、熱風、マイクロウェーブなど公知の手段を用いることができる。
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
(6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
本発明の偏光板用保護フィルムは、偏光板用保護フィルムとしての機能、偏光板のカール等の観点から、その平均膜厚が、20〜85μmの範囲内にあることが好ましい。
より好ましくは、20〜45μmの範囲内である。膜厚は、接触式膜厚計でフィルム面内の任意の10点で測定し、平均値を取った。
本発明の偏光板保護用フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
<算術平均粗さRa>
本発明の偏光板用保護フィルムは、少なくとも一方の面におけるJIS B0601−2001に基づく算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内である。Raの値が、0.05μm以上であると十分な散乱効果を得ることができ、モアレ縞を解消できる。Raが2.0μm以下であれば、表示装置化したときに正面輝度が低下するのを効果的に抑制することができる。算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準じた測定器、たとえば、オリンパス(株)製、3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000や、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500などを用いて測定することができる。
<粗さ曲線要素の平均長さRSm>
本発明の偏光板用保護フィルムは、層C側の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、5〜40μmの範囲内であることが、モアレ縞解消に十分な光拡散効果が得られるので好ましい。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601−2001に準じた測定器、たとえば、オリンパス(株)製、3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000や、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500などを用いて測定することができる。
<ヘイズ値>
本発明の偏光板用保護フィルムは、フィルム一枚の全ヘイズ値が20〜80%の範囲内にあり、かつ、(全ヘイズ値)−(表面ヘイズ値)で求められる内部ヘイズ値が0.08〜5%の範囲内にあることが好ましい。
全ヘイズ値が20%以上であるとモアレ縞を解消することができ、80%以下であると正面輝度が低下するのを抑制できる点で好ましい。全ヘイズ値のより好ましい範囲は、35〜50%以内である。内部ヘイズ値は、モアレ縞の抑制、正面輝度の低下防止の観点から、0.08〜30%の範囲内にあることが好ましい。内部ヘイズ値のより好ましい範囲は、0.08〜5.0%である。
これらのヘイズ値は、23℃55%RHの雰囲気下、たとえば、日本電色工業株式会社製ヘイズメーターNDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定した値を用いることができる。
なお、全ヘイズ値とは、本発明のフィルム一枚のヘイズ値であり、内部ヘイズ値とは、全ヘイズ値から外部ヘイズ値を差し引いた値である。内部ヘイズ値はフィルムの両表面を屈折率1.47のグリセリンで覆い、二枚のガラス板でこれを挟持して全ヘイズ値と同じように測定した際の測定値を用いることができる。このようにすることで、表面の凹凸形状によるヘイズ値(すなわち、外部ヘイズ値)の影響を無視し、フィルム内部のヘイズ値のみを測定することができる。
<偏光板>
偏光板は、偏光子の表側及び裏側の両面を保護する2枚の偏光板用保護フィルムで主に構成される。本発明の偏光板保護用フィルムは、偏光子を両面から挟む2枚の偏光板用保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いる。本発明のフィルムはモアレ解消能だけでなく保護フィルム性も兼ね備えているので、偏光板の製造コストを低減できる。本発明の偏光板は、画像表示装置のバックライト側の偏光板としても、視認側の偏光板としても使用することができる。バックライトユニット側偏光板に用いる場合には、本発明のフィルムが最もバックライト側になるように配置する。視認側の偏光板に用いる場合には、本発明のフィルムが最表層になるように配置する。視認側の偏光板に用いた場合には、外光の映り込み等が防止され、外光のある環境下(明室)でのコントラストを改善できる偏光板とすることができる。
<液晶表示装置>
従来の液晶表示装置の構成の例としては、直下型では、図3(a)に示すように、光源側から、〔光源1a/拡散板3a/集光シート4a(プリズムシートなど)/上拡散シート5a/液晶パネル12a(偏光子10a/保護フィルム(位相差フィルムなど)9a/基板8a/液晶セル7a/保護フィルム11a)〕となっており、主にテレビ等大型LCDに用いられている構成である。一方、サイドライト型の構成は、図3(b)に示すように、光源1aが発光光源2a及び導光板13aで構成されており、主にモニタ、モバイル用途などの小型LCDに用いられている。
下拡散シートは主にバックライトユニット(BLU)6aの面内輝度ムラを低減するための光拡散性の強い光学シートであり、集光シートは拡散光を液晶表示装置の正面方向(表示装置平面の法線方向)に集光させるための光学シートであり、上拡散シートは集光シートであるプリズムシートや液晶セル中の画素など周期的構造により発生するモアレを低減するための、及び下拡散シートで除去しきれない面内輝度ムラをさらに低減するために用いられる光学シートである。
本発明の液晶表示装置においては、図4(a)及び(b)に示すように、上拡散シートの代わりに、下偏光板の偏光板用保護フィルムに光拡散性を付与し(フィルム14a)、上拡散シートと同様以上の性能を発揮させるものであり、このような構成とすることで、正面輝度を低下させることなくモアレ縞を抑制することができる。さらに本発明の偏光板用保護フィルムを塗布工程や複雑な工程を必要とせずに製造できること、また、このように上拡散シートを除去した構成とすることで、液晶表示装置全体のコストダウンを実現できる。
液晶セルの表示方法としては、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
光源に用いられる発光光源(発光体)としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp、冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、熱陰極管)、LED(Light Emitti ng Diode、発光ダイオード)、OLED(Organic light−emitting diode、有機発光ダイオード[有機EL]、無機ELなどを好ましく用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
初めに本発明の偏光板用保護フィルムの評価方法について説明する。
<評価方法>
(層間密着)
層間の膜剥がれを評価する目的で、層間密着を評価した。下記に述べる方法で作製した、評価対象の偏光板用保護フィルムの層C側を上にして、耐光性試験機(アイ スーパーUV テスター、岩崎電気株式会社製)により150時間光照射した。その後、温度23℃、相対湿度55%の条件で24時間調湿後、碁盤目試験により密着性を評価した。具体的には、評価面積は1cm四方で、深さは透明なプラスチックフィルムの表面に僅か達する程度に、硬化皮膜層の表面に1mm角の碁盤目を片刃のカミソリの刃を用いて切り込みを入れ、市販の25mm幅のセロファンテープを切れ込み部分をまたいでテープの一端を残して貼り、曲面のあるプラスチックあるいは金属でその上を擦ってよく接着させ、貼られてないテープのその一端を手で持ってなるべく垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する硬化皮膜層が剥がされた面積の割合を下記の如く評価した。剥がれの面積が、評価面積に対して15%以上あると、実用性の低いレベルである。
◎:全く剥離しなかった
○:剥がれの面積が、評価面積に対して15%未満であった
×:剥がれの面積が、評価面積に対して15%以上であった
(モアレ縞解消能)
下記に述べる方法で作製した、評価対象の液晶表示装置にビデオ信号ジュネレーターを用いて信号を入力し、全面を128/256階調の灰色表示とし、暗室で様々な方向から画面を観察し、モアレの有無を以下のように評価した。
◎:モアレが観察されない
○:注意してみると方向によりごくわずかにモアレが見られる(が気にならない)
×:モアレが明瞭に観察される
(低温高湿下赤味変動)
下記に述べる手順で作製した、評価対象の液晶表示装置について、半分を防湿シードで覆い、10℃98%RHの恒温恒湿槽に100時間放置した。その後、防湿シートで覆った部分と覆っていない部分のそれぞれについて、分光放射輝度計(CS−2000、コニカミノルタ製)にて輝度Y、及び色相u’を計測し、その差ΔY及びΔu’を求めた。それぞれの差を以下の基準で判定した。この赤味変動を赤色変色の指標とした。
◎:1cd/m>ΔY、でかつ0.0002>Δu’
○:5cd/m>ΔY>1cd/m、0.0005>Δu’>0.0002
×:ΔY≧5cd/m、Δu’>0.0005
(正面輝度の評価)
下記に述べる手順で作製した、評価対象の液晶表示装置の光源の電源を入れ、パネル面が床面に対して垂直になるように設置し、23℃55%RH環境下で120分点灯させた。その後、分光放射輝度計8c(CS−2000、コニカミノルタ製)を用いて、暗室内にてモニタの中央部の正面輝度を測定した(図6参照)。ここで、1cは本発明及び比較例の液晶表示装置を表し、8cは分光放射輝度計を表している。
評価の基準には市販のセルロースエステルフィルム4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を用い、同様の方法で作製した4UYの偏光板をリア側偏光板に用いた場合の正面輝度に対して、評価フィルムの正面輝度の割合を算出し、以下の基準で評価した。
◎:4UYの正面輝度の99%以上
○:4UYの正面輝度の90%以上99%より小さい
×:4UYの正面輝度の90%より小さい
次に本発明の偏光板用保護フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置の作製方法について説明する。
<偏光板の作製>
(位相差フィルムFの作製)
〔微粒子分散液1〕
・微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
・エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散し微粒子分散液1作製した。
〔微粒子添加液1〕
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、前記微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
・メチレンクロライド 99質量部
・微粒子分散液1 5質量部
下記組成のドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
〔ドープ液の組成〕
・メチレンクロライド 340質量部
・エタノール 64質量部
・樹脂(f)(セルロースアシレート) 100質量部
・添加剤(3)(下記構造式1) 10.0質量部
・ポリエステル化合物(下記化合物P) 2.5質量部
・微粒子添加液1 1質量部
Figure 0005810872
(ポリエステル化合物Pの合成)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2−プロピレングリコール4.4g、p−トルイル酸6.8g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、更に210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステルPを得た。
酸価 :0.1
数平均分子量:490
分散度 :1.4
分子量300〜1800の成分含有率:90%
ヒドロキシ(水酸基)価:0.1
ヒドロキシ基(水酸基)含有量:0.04%
上記組成物を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスのベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
その後テンター延伸装置を用いて延伸を行い、次いで130℃に設定された乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅2m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの位相差フィルムFを作製し、5000mで巻き取った。
位相差フィルムFのリターデーション値Ro(590)、Rt(590)は、各々20nm、110nmであった。
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)し、長尺ロール状のフィルムを得た。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺ロール状の偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って、長尺ロール状の偏光子と、評価対象の偏光板用保護フィルムと、裏面側には位相差フィルムFをロールtoロールで貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した評価対象の偏光板用保護フィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で鹸化処理した評価対象の後述する偏光板用保護フィルム1〜16の層A上にのせ、さらにその上に工程1と同じ要領で鹸化した光学フィルムFを配置した。
工程4:工程3で積層した評価対象の偏光板用保護フィルムと偏光子と位相差フィルムFを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で水糊を使って貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と評価対象の偏光板用保護フィルムと位相差フィルムFとをロールtoロールで貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
作製した偏光板は、本発明に係る評価対象の偏光板用保護フィルムの層A側が偏光子と接着していた。
<液晶表示装置の作製>
(表示装置の作製)
市販の液晶モニタ(Samsung製、SyncMaster743BM)のリア側偏光板を剥がし、代わりに、上記で作製した偏光板を貼合した。ただし、液晶セルに貼合する際は、偏光板の位相差フィルムFの側が液晶セルに隣合うように、かつ、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に偏光板の吸収軸が向くように貼合した。バックライトユニットは、光源側から順に、導光板/下拡散シート/プリズムシート/プリズムシートの構成になっていた。このようにして評価対象の液晶表示装置を作製した。
次に本発明の偏光板用保護フィルム及び比較用の偏光板用保護フィルムの作製例について説明する。
なお、以下の実施例、比較例で使用した添加剤を以下に示した。
添加剤(1):MX−350(架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子、平均粒径3.5μm、綜研化学(株)製)
添加剤(2):アエロジルR972(日本アエロジル(株)製)
添加剤(3):前記構造式1
添加剤(4):テレフタル酸/コハク酸/エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体(重合比10:10:11:9)
添加剤(5):コハク酸/アジピン酸/エチレングリコール共重合体(重合比3:2:5)
添加剤(6):紫外線吸収剤(チヌビン928BASF(株)製)
添加剤(7):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN326/TINUVIN328の20/80質量%の混合物、それぞれBASFジャパン(株)製)
また、以下の実施例、比較例で使用した樹脂(a)〜(j)については、表1に示した。
Figure 0005810872
まず、偏光板の低温高湿度下での赤色変色と層間密着、モアレ解消能を評価する目的で、以下の偏光板用保護フィルム1〜7を作製した。
(比較例1:偏光板用保護フィルム1の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(c)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・トリフェニルホスフェート 8.0質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 4.0質量部
・添加剤(7) 2.0質量部
・添加剤(2) 0.1質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(c)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・トリフェニルホスフェート 8.0質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 4.0質量部
・添加剤(7) 2.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(c)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・トリフェニルホスフェート 8.0質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 4.0質量部
・添加剤(7) 2.0質量部
・添加剤(1) 0.1質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3μm/35μm/5μmとなるように同時共流延した。図1に示した流延装置を使い、層A用のドープが鏡面仕上げし−10℃に冷却した金属ベルト側になるように流延し、溶剤を揮発させながら冷却ゲル化させ、ウェブを剥ぎ取った。100℃の熱風にて残留溶剤量が10質量%になるまで乾燥し、その後140℃の熱風にて10分間乾燥させ、比較例1の比較用の偏光板用保護フィルム1を得た。
<フィルム物性>
比較例1の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、微粒子由来の凹凸が観察された。算術平均粗さRaは0.080μmだった。
(比較例2:偏光板用保護フィルム2の作製)
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 3質量部
・樹脂(d)(ポリメタクリル酸メチル) 3質量部
・アセトン 94質量部
<層B>
トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製:KC4UY)の表面にポリビニルアルコール(クラレ(株)製、アルキル変性PVA MP203)をコーティングしたコートフィルム。
<塗布>
層C用ドープを層Bフィルム上に流延した後、20℃のオーブン内で3分間放置し、アセトンを蒸発させて厚さ3μmの層Cを形成させ、比較例2の比較用の偏光板用保護フィルム2を得た。
<フィルム物性>
この層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造を形成していた。算術平均粗さRaは0.540μmだった。
(比較例3:偏光板用保護フィルム3の作製)
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(h)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(4) 18.5質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C、層A用ドープ>
〔層C、層A用ドープ組成物〕
・樹脂(e)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(4) 11.0質量部
・添加剤(2) 0.2質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延>
上記層B用ドープと、上記層C用ドープ、層A用ドープを57/1/1の膜厚比になるように同時共流延し、比較例3の比較用の偏光板用保護フィルム3を得た。
<延伸>
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が30〜5%の状態のときに、固定端一軸延伸の条件で、テンターを用いて172℃にてフィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に1.32倍延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた。
<フィルム物性>
得られた比較例3のフィルムの全Hzは0.52、内部Hzは0.02だった。3Dレーザー顕微鏡で層C側の表面を観察したところ、微粒子由来のわずかな凹凸が観察され、算術平均粗さRaは0.020μmだった。
(実施例1:偏光板用保護フィルム4の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(a)(セルロースアシレート) 75.0質量部
・樹脂(b)(セルロースアシレート) 25.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて160℃で10%横方向に延伸し、実施例1の本発明の偏光板用保護フィルム4を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例1の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。算術平均粗さRaは0.330μmだった。
(比較例4:偏光板用保護フィルム5の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(c)(セルロースアシレート) 75.0質量部
・樹脂(b)(セルロースアシレート) 25.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、比較例4の比較用の偏光板用保護フィルム5を得た。
<フィルム物性>
得られた比較例4の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ凹凸は観察されなかった。算術平均粗さRaは0.010μmだった。
(比較例5:偏光板用保護フィルム6の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(a)(セルロースアシレート) 75.0質量部
・樹脂(f)(セルロースアシレート) 25.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて160℃で5%横方向に延伸し、比較例5の比較用の偏光板用保護フィルム6を得た。
<フィルム物性>
得られた比較例5の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ海島構造による凹凸が観察された。算術平均粗さRaは0.040μmだった。
(比較例6:偏光板用保護フィルム7の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(g)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(d)(ポリメタクリル酸メチル) 75.0質量部
・樹脂(f)(セルロースアシレート) 25.0質量部
・メチレンクロライド 260.7質量部
・メタノール 35.7質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて140℃で10%横方向に延伸し、比較例6の比較用の偏光板用保護フィルム7を得た。
<フィルム物性>
得られた比較例6の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ海島構造による凹凸が観察された。算術平均粗さRaは0.500μmだった。
以上のようにして作製した偏光板用保護フィルム1〜7を用いて、前述した方法で偏光板及び液晶表示装置を作製し、低温高湿下赤味変動、層間密着、モアレ縞解消能を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005810872
比較例1では、微粒子を用いて層Cの凹凸を形成しているために、これを用いた偏光板は低温高湿環境下において赤色に変色してしまった。
比較例2では、層Cの散乱層を塗布によって設けているために、偏光板用保護フィルムの層間密着性が悪かった。また、散乱層が非セルロースエステルを含むため、この偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は、低温高湿度環境下において赤味変動、すなわち赤色変色が起こってしまった。
比較例3では、微粒子に起因した僅かな凹凸が見られたものの、モアレ解消には不十分な散乱能であった。また、微粒子により低温高湿度下でやや赤色に変色していた。
比較例4では、偏光板用保護フィルムの層Cが海島構造を形成しなかったため、モアレ解消能が得られなかった。
比較例5では、偏光板用保護フィルムの層Cが海島構造を形成したにも関わらず、算術平均粗さRaが小さすぎたために、十分なモアレ解消能が得られなかった。
比較例6では、層Cが非セルロースエステルを含むため、透湿性にムラが生じ、低温高湿度環境下で赤色に変色が起こってしまった。
以上の結果から、本発明の偏光板用保護フィルムは、比較用の偏光板用保護フィルムに比べて、低温高湿下赤色変色、層間密着、モアレ縞解消能の点で優れた性能を有していることが分かる。
次に、層A、層B、層Cに用いるセルロースエステル種や混合比等の違いによる、偏光板の低温高湿度下赤色変色と層間密着、表示装置にした際のモアレ解消能、正面輝度を評価する目的で以下のフィルム8〜17を作製した。
(実施例2:偏光板用保護フィルム8の作製)
<層A用ドープ>
〔層A用ドープ組成物〕
・樹脂(c)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層B用ドープ>
〔層B用ドープ組成物〕
・樹脂(b)(セルロースアシレート) 100.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<層C用ドープ>
〔層C用ドープ組成物〕
・樹脂(i)(セルロースアシレート) 60.0質量部
・樹脂(b)(セルロースアシレート) 40.0質量部
・添加剤(5) 7.0質量部
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)となり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
上記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、実施例2の本発明の偏光板用保護フィルム8を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例2の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.350μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは38.0μmであった。また、内部ヘイズ値は2.00であった。
参考例:偏光板用保護フィルム9の作製)
<層A用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を55質量部、樹脂(b)を45質量部とした以外は、実施例2と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル
置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル置換度Ac(II)とプロピオ
ニル置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共
流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、参考例の偏光板用保護フィルム9を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例3の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.480μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは42.0μmであった。また、内部ヘイズ値は2.40であった。
(実施例4:偏光板用保護フィルム10の作製)
<層A用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を95質量部、樹脂(b)を5質量部とした以外は、実施例2と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚A/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、実施例4の本発明の偏光板用保護フィルム10を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例4の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.050μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは5.1μmであった。また、内部ヘイズ値は0.08であった。
(比較例7:偏光板用保護フィルム11の作製)
<層A用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を97質量部、樹脂(b)を3質量部とした以外は、実施例2と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、比較例7の比較用の偏光板用保護フィルム11を得た。
<フィルム物性>
得られた比較例7の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸は観察されなかった。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.003μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは2.0μmであった。また、内部ヘイズ値は0.02であった。
(比較例8:偏光板用保護のフィルム12の作製)
<層A用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)と樹脂(b)に代えて、樹脂(i)を70質量部、樹脂(j)を30質量部とした以外は、実施例2と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(j)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X>Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、比較例8の比較用の偏光板用保護フィルム12を得た。
<フィルム物性>
得られた比較例8の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸は観察されなかった。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.004μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは2.1μmであった。また、内部ヘイズ値は0.01であった。
(実施例5:偏光板用保護フィルム13)の作製
<層A用ドープ>
添加剤を(5)から(3)へ変更した以外は、実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
添加剤を(5)から(3)へ変更した以外は、実施例2と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)と樹脂(b)に代えて、樹脂(a)を95質量部、樹脂(f)を5質量部と変更し、添加剤を(5)から(3)へ変更した以外は、実施例2と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(a)、CE(II)が樹脂(f)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて160℃で10%横方向に延伸し、実施例5の本発明の偏光板用保護フィルム13を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例5の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.060μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは4.5μmであった。また、内部ヘイズ値は0.08であった。
(実施例6:偏光板用保護フィルム14の作製)
<層A用ドープ>
実施例5と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例5と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を70質量部、樹脂(b)を30質量部とし、添加剤(3)を10質量部とし、添加剤(6)を2.3質量部加えた以外は、実施例5と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて170℃で10%横方向に延伸し、実施例6の本発明の偏光板用保護フィルム14を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例6の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.520μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは40.0μmであった。また、内部ヘイズ値は5.20であった。
(実施例7:偏光板用保護フィルム15の作製)
<層A用ドープ>
実施例6と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例6と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を80質量部、樹脂(b)を20質量部とした以外は、実施例5と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて170℃で10%横方向に延伸し、実施例7の本発明の偏光板用保護フィルム15を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例7の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.260μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは10.5μmであった。また、内部ヘイズ値は0.06であった。
(実施例8:偏光板用保護フィルム16の作製)
<層A用ドープ>
樹脂(c)(セルロースアシレート)に代えて、樹脂(b)(セルロースアシレート)を用いた以外は実施例7と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
実施例7と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)を70質量部、樹脂(b)を30質量部とした以外は、実施例7と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(i)、CE(II)が樹脂(b)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて170℃で10%横方向に延伸し、実施例8の本発明の偏光板用保護フィルム16を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例8の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.120μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは21.0μmであった。また、内部ヘイズ値は0.40であった。
(実施例9:偏光板用保護フィルム17)の作製
<層A用ドープ>
樹脂(b)に代えて樹脂(j)に変更した以外は、実施例8と同一の組成で同じように調製した。
<層B用ドープ>
樹脂(b)に代えて樹脂(h)に変更した以外は、実施例8と同一の組成で同じように調製した。
<層C用ドープ>
樹脂(i)に代えて樹脂(a)を60質量部、樹脂(b)に代えて樹脂(h)を40質量部とした以外は、実施例8と同じように調製した。
CE(I)が樹脂(a)、CE(II)が樹脂(h)であり、CE(I)のプロピオニル基置換度Pr(I)からなる(Y)と、CE(II)のアセチル基置換度Ac(II)とプロピオニル基置換度Pr(II)×2の和(X)の関係は、X≦Yであった。
X=2×Pr(II)+Ac(II)
Y=0.7×Pr(I)+1.7
<共流延、延伸>
上記層A〜Cのドープを乾燥後の膜厚がA/B/Cが3/35/5となるように同時共流延し、テンターを用いて180℃で10%横方向に延伸し、実施例9の本発明の偏光板用保護フィルム17を得た。
<フィルム物性>
得られた実施例9の偏光板用保護フィルムの層C側の表面を3Dレーザー顕微鏡により観察したところ、海島構造による凹凸が観察された。層C側の表面の算術平均粗さRaは0.200μm、粗さ曲線要素の平均長さRSmは39.0μmであった。また、内部ヘイズ値は1.40であった。
以上のようにして作製した偏光板用保護フィルム8〜17について、内部ヘイズ、低温
高湿下赤味変動、層間密着、モアレ縞解消能、正面輝度について評価した。結果を表3に
示す。
Figure 0005810872
比較例7では、偏光板用保護フィルムの層CのCE(I)とCE(II)の比率が97/3であるため海島構造を形成せず、表示装置にしたときのモアレ解消能が不十分であった。また、比較例8では、C層のXとYの関係が、X>Yであったために、海島構造を形成せず、表示装置にしたときのモアレ解消能が不十分であった。
一方、本発明の偏光板用保護フィルム、及びそれを備えた偏光板や表示装置は、いずれの評価項目においても優れた性能を有していることがわかる。
70 流延膜
85 支持体(金属ベルト又は金属ドラム)
120 層B用ドープ
121 層C用ドープ
122 層A用ドープ
120a 層B
121a 層C
122a 層A
t1 層Bの膜厚
t2 層Aの膜厚
t3 層Cの膜厚
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
1、4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
17 三方弁
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター延伸装置
35 ロール乾燥装置
37 巻き取り機
41 粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器
1a 光源
2a 発光光源
3a 下拡散シート(又は拡散板)
4a 集光シート(プリズムシート、レンズシート)
5a 上拡散シート
6a バックライトユニット
7a 液晶セル
8a 透明基板(ガラス、プラスチック)
9a 保護フィルム(又は位相差フィルム)
10a 偏光子
11a 保護フィルム
12a 液晶パネル
13a 導光板
14a 本発明の偏光板用保護フィルム(光拡散フィルム)
A 層A
B 層B
C 層C
s 海
i 島
1c 液晶表示装置
8c 分光放射輝度計

Claims (7)

  1. 層A、層B及び層Cの順で隣接する少なくとも3層構造を有するフィルムであって、該層A、該層B及び該層Cが、少なくともセルロースアシレートを含有し、該層Bに含有されるセルロースアシレートが、下記式(1)を満たし、該層Cが、二種のセルロースアシレートが混合されて海島構造を有しており、該層Cを構成する二種のセルロースアシレートCE(I)及びCE(II)の混合比の値 CE(I)/CE(II)が、60/40〜95/5の範囲内であり、CE(I)のプロピオニル基置換度をPr(I)、CE(II)のアセチル基置換度をAc(II)、プロピオニル基置換度をPr(II)としたときに、下記式(2)及び式(3)で表されるXとYが、Pr(I)≧0.5の範囲内でX≦Yを満たし、かつ該層C側の表面の算術平均粗さRaが、0.05〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする偏光板用保護フィルム。
    式(1):ZB≧2.0
    (但し、ZBは層Bに含有されるセルロースアシレートの総アシル基置換度を表す。)
    式(2):X=2×Pr(II)+Ac(II)
    式(3):Y=0.7×Pr(I)+1.7
  2. 前記層C側の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、5〜40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用保護フィルム。
  3. 前記偏光板用保護フィルムの内部ヘイズ値が、0.08〜5.0の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏光板用保護フィルム。
  4. 前記層Aに含有されるセルロースアシレートが、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルム。
    式(4):ZA≧2.7
    (但し、ZAは層Aに含有されるセルロースアシレートの総アシル基置換度を表す。)
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルムを製造する偏光膜保護フィルムの製造方法であって、前記層A、層B及び層Cのドープを共流延してウェブを形成する工程と、次いで該ウェブを延伸する延伸工程とを含むことを特徴とする偏光板用保護フィルムの製造方法。
  6. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の偏光板用保護フィルムが、具備されていることを特徴とする偏光板。
  7. 請求項に記載の偏光板が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
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