以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される車線変更制御装置を例示して説明する。
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る車線変更制御装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車線変更制御装置は、カメラ10a〜10d、車速センサ20、ストロークセンサ30、操舵角センサ40、方向指示スイッチ50、GPSユニット60、道路情報データベース70、マイクロプロセッサ80、モーターコントローラ90、操舵アシストモーター100、パワートレーンコントローラ110、およびエンジン・駆動系120から構成されている。これらの各構成は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行うことができる。
カメラ10a〜10dは、図1に示すように、自車両の前方および後方に、それぞれ左右対称に設置されている。自車両の左前方に設置されたカメラ10aは、自車両の左前方を中心とする領域を撮像し、撮像した画像をマイクロプロセッサ80に送信する。同様に、カメラ10b〜10dは、自車両の右前方、左後方、および右後方を中心とする領域をそれぞれ撮像し、撮像した画像をマイクロプロセッサ80に送信する。なお、本実施形態においては、自車両の前方および後方に、カメラを2台ずつ設置することにより、自車両周囲の他車両(自車両以外の車両)が存在する方向だけではなく、他車両の相対位置も検出することができるようになっている。
車速センサ20は、自車両の車速を検出する。車速センサ20としては、例えば、自車両の前輪のタイヤホイールに設置したロータリーエンコーダを用いることができる。車速センサ20として、ロータリーエンコーダを用いる場合には、タイヤホイールの回転に比例して発生するパルス信号を検出することで、自車両の車速を計測することができる。車速センサ20により検出された自車両の車速情報は、マイクロプロセッサ80に送信される。
ストロークセンサ30は、アクセルペダルに設置され、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(ストローク量)を検出する。ストロークセンサ30により検出されたストローク量の情報は、マイクロプロセッサ80に送信される。
操舵角センサ40は、ステアリングコラム内に設置され、ステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。操舵角センサ40により検出された操舵角の情報は、マイクロプロセッサ80に送信される。
方向指示スイッチ50は、ステアリングコラム上に設置され、運転者の操作により、自車両の方向指示器の点灯制御を行う。また、方向指示スイッチ50は、方向指示器が点灯しているか否かの情報を、マイクロプロセッサ80に送信する。
GPS(Global Positioning System)ユニット60は、図示しない複数の衛星通信から送信される電波を検出して、自車両の位置情報を取得する。GPSユニット60により取得された自車両の位置情報は、マイクロプロセッサ80に送信される。
道路情報データベース70は、道路に関する道路情報を記憶している。具体的には、道路情報データベース70は、道路情報として、例えば、各道路の車線が、本線車線であるか、あるいは、合流地点において本線車線に合流する合流車線であるかを示す情報や、車線が合流車線である場合には、合流車線の終端である車線終端点の位置情報を記憶している。
マイクロプロセッサ80は、経路誘導を行うためのプログラムの他、合流地点における自車両の車線変更を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
そして、マイクロプロセッサ80は、図2に示すように、自車両の走行情報を取得する走行情報取得部81、自車両が走行する車線の車線情報を取得する車線情報取得部82、自車両周囲を走行する他車両を検出する他車両検出部83、合流地点における自車両の挙動を予測する自車両挙動予測部84、本線車線において自車両の後方を走行する後方車両の挙動を予測する後方車両挙動予測部85、自車両が車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスを評価する車線終端ストレス評価部86、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスを評価する後方車両ストレス評価部87、および合流地点における自車両の車線変更を制御する車線変更制御部88を有する。なお、図2は、マイクロプロセッサ80を示すブロック図である。
走行情報取得部81は、車速センサ20、ストロークセンサ30、および操舵角センサ40から、自車両の車速情報、アクセルペダルのストローク量情報、および操舵角情報を、それぞれ取得する。また、走行情報取得部81は、GPSユニット60により検出された自車両の現在位置の情報も取得する。
車線情報取得部82は、走行情報取得部81により取得された自車両の現在位置に基づいて、自車両が走行している道路の道路情報を、道路情報データベース70から抽出する。例えば、車線情報取得部82は、自車両が走行している車線が合流車線である場合に、道路情報として、合流車線の終端である車線終端点の位置情報を取得する。
他車両検出部83は、カメラ10a〜10dにより撮像された画像データを取得し、取得した画像データを処理することで、自車両周囲に存在する他車両を検出するとともに、検出した他車両の相対位置および相対速度を算出する。なお、他車両の相対速度は、時系列に沿って検出された他車両の相対位置の履歴に基づいて、算出することができる。
自車両挙動予測部84は、走行情報取得部81により取得された自車両の走行情報に基づいて、合流地点における自車両の挙動を予測する。なお、本実施形態においては、自車両挙動予測部84は、現在時刻以降の各時刻における自車両の走行位置および走行速度を、時系列に沿って算出することで、合流地点における自車両の挙動を予測する。
後方車両挙動予測部85は、他車両検出部83により、本線車線において自車両の後方を走行する車両(以下、後方車両という。)が検出された場合に、合流地点における後方車両の挙動を予測する。なお、本実施形態においては、後方車両挙動予測機能85は、現在時刻以降の各時刻における後方車両の走行位置および走行速度を、時系列に沿って算出することで、後方車両の挙動を予測する。
車線終端ストレス評価部86は、自車両挙動予測部84により予測された自車両の挙動と、車線情報取得部82により取得された自車両が走行する合流車線の車線終端点の位置情報とに基づいて、自車両が車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスを、車線終端ストレス度合として評価する。なお、本実施形態においては、車線終端ストレス評価部86は、現在時刻以降の各時刻における車線終端ストレス度合を、時系列に沿って評価する。
後方車両ストレス評価部87は、自車両挙動予測部84により予測された自車両の挙動と、後方車両挙動予測部85により予測された後方車両の挙動とに基づいて、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスを、後方車両ストレス度合として評価する。なお、本実施形態においては、後方車両ストレス評価部87は、現在時刻以降の各時刻における後方車両ストレス度合を、時系列に沿って評価する。
車線変更制御部88は、車線終端ストレス評価部86により算出された車線終端ストレス度合と、後方車両ストレス評価部87により算出された後方車両ストレス度合とに基づいて、合流地点における自車両の車線変更を制御する。具体的には、車線変更制御部88は、車線終端ストレス度合と後方車両ストレス度合とに基づいて、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスを合流ストレス度合として評価し、該合流ストレス度合に基づいて、合流地点における自車両の車線変更を制御するための車線変更計画を作成する。そして、車線変更制御部88は、作成した車線変更計画に基づいて、合流地点における自車両の操舵制御を行うことで、合流地点において自車両を合流車線から本線車線に誘導する。
図1に戻り、モーターコントローラ90は、マイクロプロセッサ80による操舵制御により、自車両の実際の操舵角を、合流地点において自車両が車線変更を行うために必要な操舵角(目標操舵角)に追従させるための操舵トルク量を算出する。そして、モーターコントローラ90により算出された操舵トルク量は、転舵アシストモーター100に送信され、転舵アシストモーター100により取得される。転舵アシストモーター100は、取得した操舵トルク量に応じた転舵トルクを、図示しない操舵系に加えることで、マイクロプロセッサ80により算出された車線変更計画に応じて、自車両が合流車線から本線車線に誘導されることとなる。
また、パワートレーンコントローラ110は、マイクロプロセッサ80から運転者によるアクセル操作に応じた目標駆動力を取得し、取得した目標駆動力を出力するように、エンジンのスロットル開度やトランスミッションの変速比を算出する。そして、パワートレーンコントローラ110は、算出したエンジンのスロットル開度やトランスミッションの変速比に応じて、エンジン・駆動機構120を制御する。
続いて、図3を参照して、本実施形態の車線変更制御処理について説明する。図3は、第1実施形態に係る車線変更制御処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態の車線変更制御処理は、マイクロプロセッサ80により、一定の時間間隔ごとに繰り返し行われる。また、本実施形態に係る車線変更制御処理は、図4に示すように、自車両が合流地点において合流車線を走行している場面において行われる。なお、図4は、本実施形態に係る車線変更制御処理を説明するための図である。
まず、ステップS101では、走行情報取得部81により、自車両の走行情報の取得が行われる。具体的には、走行情報取得部81は、車速センサ20、ストロークセンサ30、操舵角センサ40、およびGPSユニット60から、自車両の車速vh、アクセルペダルのストローク量dA、操舵角θs、および自車両の現在位置の各種情報を、走行情報として取得する。例えば、図4に示す場面例において、自車両は位置xhを速度vhで走行しているため、走行情報取得部81は、自車両の走行位置xhおよび走行速度vhを走行情報として取得する。なお、GPSユニット60から取得される自車両の位置情報が、GPS座標系で表されている場合には、走行情報取得部81は、自車両の位置情報を、例えば、図4に示すように、車線の延伸方向をX軸とし、X軸と垂直となる方向をY軸として設定した対地座標系に変換することができる。これにより、図4に示す例では、自車両の走行位置が、X座標がxh、Y座標がymとして取得される。
ステップS102では、車線情報取得部82により、道路情報の取得が行われる。具体的には、車線情報取得部82は、ステップS101で取得された自車両の位置情報に基づいて、自車両が走行する車線の道路情報を、道路情報データベース70から抽出する。ここで、道路情報データベース70から抽出される道路情報としては、例えば、合流車線の終端である車線終端点の位置情報が挙げられる。図4に示す場面例において、車線情報取得部82は、自車両が走行する合流車線の車線終端点の位置xendを、道路情報として取得する。
ステップS103では、他車両検出部83により、カメラ10a〜10dにより撮像された画像データが取得され、取得した画像データに基づいて、自車両周囲を走行する他車両が検出される。そして、他車両検出部83は、取得した画像データに基づいて、検出した他車両の走行情報を取得する。本実施形態においては、他車両検出部83は、自車両周囲を走行する他車両の走行情報として、他車両の走行位置および走行速度の算出が行われる。例えば、図4に示す場面例においては、本線車線において自車両の後方を走行する後方車両が存在している。そのため、他車両検出部83は、自車両の後方を撮像するカメラ10c,10dから送信された画像データに基づいて、後方車両を検出するとともに、検出した後方車両の走行位置xrおよび走行速度vrを算出する。なお、他車両検出部83は、後方車両の走行位置を自車両の走行位置に対する相対位置として検出し、検出した後方車両の相対位置を対地座標系に変換することで、図4に示すように、後方車両の走行位置xrを取得することができる。
ステップS104では、車線変更制御部88により、合流地点における自車両の車線変更を制御するための車線変更計画を作成する必要があるか否かの判定が行われる。本実施形態においては、以下の2つの条件が両方とも成立している場合に、車線変更計画を作成する必要があると判定される。すなわち、第1に、自車両が、図4に示すように、合流車線から本線車線に車線変更することが可能となる地点xstartを通過していること(第1の条件)、第2に、第1の条件が成立してから現在までに、車線変更計画に基づく操舵制御が行われていないこと(第2の条件)の2つの条件が成立している場合に、車線変更計画を作成する必要があると判定される。車線変更計画を作成する必要があると判定された場合はステップS105に進み、一方、車線変更計画を作成する必要はないと判定された場合はステップS114に進む。
ステップS105では、自車両挙動予測部84により、合流地点における自車両の挙動の予測が行われる。具体的には、まず、自車両挙動予測部84は、ステップS101で取得した自車両の走行情報のうち、自車両の車速vhとアクセルペダルのストローク量dAとから、予め作成されたマップを参照して、合流地点において車線変更を行うための推定目標速度v*^と、該推定目標速度v*^に至るための推定目標加速度a*^とを算出する。なお、推定目標速度v*^および推定目標加速度a*^において、右肩に付した「^」は、その値が推定値であることを示している。以下、後述するvh^(t),xh^(t),vr^(t),xr^(t),vf^(t),xf^(t),ah^(t)においても同様である。
そして、自車両挙動予測部84は、算出した推定目標速度v
*^および推定目標加速度a
*^に基づき、自車両の走行速度v
h^(t)および走行位置x
h^(t)を、下記式(1),(2)に従って算出する。なお、本実施形態において、自車両挙動予測部84は、現在時刻から、自車両が車線終端点に到達するまでの各時刻tにおける自車両の走行速度v
h^(t)および走行位置x
h^(t)を算出することで、合流地点における自車両の挙動を予測する。
ここで、上記式(1),(2)において、t
0は現在時刻であり、t
1は自車両の走行速度v
hが推定目標速度v
*に到達すると予想される時刻であり、x
1は時刻t
1における自車両の走行位置である。また、上記式(1),(2)では、推定値であることを示す「^」を、それぞれ、v
*の「v」の真上、a
*の「a」の真上、x
h(t)の「x」の真上、v
h(t)の「v」の真上としているが、下記式(3)に示すように、これはv
*^,a
*^,v
h^(t)およびx
h^(t)と同義である。以下、v
r^(t),x
r^(t),x
f^(t),a
h^(t)においても同様である。
次に、ステップS106では、車線終端ストレス評価部86により、ステップS105で予測された自車両の挙動と、ステップS102で取得された合流車線の車線終端点の位置情報とに基づいて、車線終端ストレス度合の評価が行われる。ここで、車線終端ストレス度合とは、自車両が合流地点で車線変更を行う際に、自車両が合流車線の車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスの大きさを表すものであり、第1実施形態においては、自車両の運転者のストレスが大きい順から、『高』、『中』、『低』の3段階で評価される。以下に、第1実施形態に係る車線終端ストレス度合の評価方法について説明する。
まず、車線終端ストレス評価部86は、上記式(2)を用いることにより、自車両の走行位置x
hおよび車線終端点の位置x
endに基づいて、自車両が合流地点の車線終端点に到達する時刻t
endを算出する。そして、車線終端ストレス評価部86は、下記式(4)に基づいて、現在時刻t
0から、自車両が車線終端点に到達する時刻t
endまでの時間T
end(t
0)を算出する。
同様に、車線終端ストレス評価部86は、下記式(5)に基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tから、自車両が車線終端点に到達する時刻t
endまでの時間T
end(t)を、時系列に沿って算出する。
そして、車線終端ストレス評価部86は、算出された時間T
end(t)を用いて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける車線終端ストレス度合を、下記式(6)に示すように評価する。なお、下記式(6)において、T
maxおよびT
minは所定の到達時間であり、T
maxはT
minよりも大きい時間(T
max>T
min)である。
次に、ステップS107では、後方車両挙動予測部85により、ステップS103で取得した後方車両の走行情報に基づいて、合流地点における後方車両の挙動の予測が行われる。具体的には、後方車両挙動予測部85は、後方車両は一定速度v
rで走行するものとして、下記式(7)に従って、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける後方車両の走行位置x
r^(t)を算出する。
ステップS108では、後方車両ストレス評価部87により、ステップS105で予測された自車両の挙動と、ステップS107で予測された後方車両の挙動とに基づいて、後方車両ストレス度合の評価が行われる。ここで、後方車両ストレス度合とは、合流地点における後方車両に対する運転者のストレスの大きさを表すものである。以下に、第1実施形態に係る後方車両ストレス度合の評価方法について説明する。
具体的には、まず、後方車両評価部87は、ステップS105で予測された自車両の走行位置x
h^(t)と、ステップS107で予測された後方車両の走行位置x
r^(t)と、ステップS103で取得された後方車両の現在の走行速度v
rとに基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける自車両と後方車両との車間時間h
r(t)を、下記式(8)に従って算出する。
そして、後方車両ストレス評価部87は、算出された車間時間h
r(t)に基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける後方車両ストレス度合を、下記式(9)に示すように評価する。なお、h
maxおよびh
minは所定の車間時間であり、h
maxはh
minよりも大きい(h
max>h
min)。
次いで、ステップS109では、車線変更制御部88により、ステップS106で評価された車線終端ストレス度合と、ステップS108で評価された後方車両ストレス度合とに基づいて、合流ストレス度合の評価が行われる。ここで、合流ストレス度合とは、自車両が前記合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスの大きさを表すものである。第1実施形態においては、車線変更制御部88は、合流ストレス度合を、合流地点において自車両が車線変更を行うことができるか否かの2段階で評価する。
ここで、上述したように、第1実施形態においては、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合は、『高』、『中』、『低』の3段階で評価される。そこで、車線変更制御部88は、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合の9通りの組み合わせに対して、合流ストレス度合を、図5に示すように、合流地点において車線変更を行うことができるか否かの2段階で評価する。ここで、図5は、第1実施形態における合流ストレス度合の一例を示す図である。なお、図5において、合流ストレス度合が、合流地点での車線変更を行うことができるものと評価される場合を『合流可』として表示し、合流地点での車線変更を行うことができないものと評価される場合を『合流不可』として表示している。車線変更制御部88は、図5に示すように、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合のうち、どちらか一方でも『高』と評価されている場合には、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスが大きくなるため、合流ストレス度合を、合流地点での車線変更を行うことができないものと評価する(図5に示す『合流不可』)。一方、車線変更制御部88は、車線終端ストレス度合が『低』または『中』と評価されており、かつ、後方車両ストレス度合も『低』または『中』と評価されている場合には、合流ストレス度合を、合流地点での車線変更を行うことができるものと評価する(図5に示す『合流可』)。
ここで、図6は、時系列に沿って評価された合流ストレス度合の一例を示す図である。なお、図6においても、合流ストレス度合を、合流地点において自車両が車線変更を行うことができるか否か(『合流可』または『合流不可』)の2段階で表示している。例えば、自車両が合流地点での車線変更のために加速し、時間の経過とともに、自車両と後方車両との車間時間が大きくなった場合には、図6に示すように、時間の経過とともに、後方車両ストレス度合が低くなる。その結果、図6に示す例では、現在時刻t0から時刻tfにおいて、後方車両ストレス度合が『高』となり、これにより、現在時刻t0から時刻tfにおいて、合流ストレス度合は、合流地点での車線変更を行うことができないもの(『合流不可』)と評価される。
一方、車線終端点が接近することに対する自車両の運転者のストレスは、自車両が車線終端点に接近するほど大きくなる。そのため、図6に示すように、車線終端ストレス度合は、現在時刻t0から、自車両が車線終端点に到達する時刻tendに向かって高くなる。その結果、図6に示す例では、時刻ttを経過した後に、車線終端ストレス度合が『高』と評価され、これにより、合流ストレス度合も、時刻ttを経過した後に、合流地点での車線変更を行うことができないもの(『合流不可』)と評価される。
これに対して、図6に示す例では、後方車両ストレス度合が『高』から『中』に変わる時刻tfから、車線終端ストレス度合が『中』から『高』に変わる時刻ttまでの時間において、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合がともに『中』と評価されている。そのため、図6に示す例では、合流ストレス度合は、時刻tfから時刻ttまでの時間において、合流地点での車線変更を行うことができるもの(『合流可』)と評価される。
そして、車線変更制御部88は、合流ストレス度合の評価結果に基づいて、合流地点において自車両の車線変更が許容されるまでの時間を算出する。例えば、図6に示す例において、車線変更制御部88は、現在時刻t0から、後方車両ストレス度合が『高』から『中』に変わる時刻tfまでの時間Tf(Tf=tf−t0)を、現在時刻から合流地点での車線変更が許容される時刻までの最短時間である最短許容時間Tfとして算出する。また、車線変更制御部88は、現在時刻t0から、車線終端ストレス度合が『中』から『高』に変わる時刻ttまでの時間Tt(Tt=tt−t0)を、現在時刻から合流地点における車線変更が許容される時刻までの最長時間である最長許容時間Ttとして算出する。なお、最短許容時間Tfおよび最長許容時間Ttは、後述するステップS110,111において用いられる。
なお、本線車線に後方車両が存在しない場合には、合流地点において車線変更が許容されるまでの最短許容時間T
fは0となる。しかしながら、自車両の車線変更を安全に行うためには急速な転舵は望ましくなく、転舵を行う際には、少なくとも最小所要時間T
min’が確保されることが推奨される。そのため、本線車線に後方車両が存在しない場合には、車線変更制御部88は、下記式(10)に従って、最短許容時間T
fを算出することができる。なお、下記式(10)におけるmax()は、現在時刻t
0から時刻t
tまでの時間(t
t−t
0)および最小所要時間T
min’のうち、最大となる値を選択的に算出するものであることを示す(以下、式(25),(30)においても同様。)
そして、ステップS110では、車線変更制御部88により、ステップS109における合流ストレス度合の評価結果に基づいて、合流地点において車線変更が許容される時間があるか否かの判断が行われる。本実施形態においては、例えば、ステップS109で最短許容時間Tfおよび最長許容時間Ttを算出できなかった場合や、最短許容時間Tfが最長許容時間Ttよりも大きい場合(Tt>Tf)には、合流地点において車線変更が許容される時間がないものと判断される。合流地点において車線変更が許容される時間があると判断された場合は、ステップS111に進み、一方、合流地点において車線変更が許容される時間がないと判断された場合はステップS115に進む。
次に、ステップS111およびステップS112では、車線変更制御部88により、車線変更計画を作成するための処理が行われる。ここで、車線変更計画とは、合流地点において車線変更を行う際の転舵を開始するタイミングや転舵の速度など、合流地点における操舵制御の方法を定めたものである。
まず、ステップS111では、車線変更制御部88により、車線変更所要時間を算出するための所要時間算出処理が行われる。具体的には、車線変更制御部88は、ステップS109における合流ストレス度合の評価結果に基づいて、合流地点において自車両の車線変更が許容される時間内(例えば、図6に示す例では、時刻tfから時刻ttまでの時間)に、自車両の車線変更が完了するように、合流地点において操舵制御を行う時間を、車線変更所要時間として算出する。
ここで、合流地点において自車両が車線変更を行う際の時間は、自車両が合流車線の走行を継続している時間と、自車両の転舵が開始されてから終了するまでの時間とに分けることができる。そこで、車線変更制御部88は、合流地点における自車両の車線変更が許容される時間に、自車両の車線変更が完了するように、自車両が合流車線での走行を継続する時間を走行継続時間TAとして算出するとともに、自車両の転舵が開始されてから終了するまでの時間を車線変更時間TBとして算出することで、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間を車線変更所要時間TLC(TLC=TA+TB)として算出する。以下においては、図7を参照して、車線変更所要時間TLCを算出する所要時間算出処理について説明する。なお、図7は、ステップS111の所要時間算出処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS1101では、自車両が合流車線での走行を継続する走行継続時間TAが初期値の0に設定され(TA=0)、自車両の転舵が開始されてから終了するまでの車線変更時間TBが初期値のTmin’に設定される(TB=Tmin’)。なお、Tmin’は、上述したように、転舵を行う際に最低限確保されるべき最小所要時間である。
ステップS1102では、走行継続時間TAに所定時間ΔTAが追加され、走行継続時間TAが更新される。そして、ステップS1103では、ステップS1102で所定時間ΔTAが追加された走行継続時間TAと、初期値Tmin’のままの車線変更時間TBとの合計時間が、最長許容時間Tt以上(TA+TB≧Tt)であるか否かの判断が行われる。走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最長許容時間Tt以上である場合は、ステップS1115に進み、現時点での走行継続時間TAと、初期値Tmin’である車線変更時間TBが、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。一方、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最長許容時間Ttよりも小さい場合は、ステップS1104に進む。
ステップS1104では、走行継続時間TAが、所定時間TA 0に到達したか否かの判定が行われる。ここで、所定時間TA 0は、例えば、自車両の転舵を開始するのに好適な地点まで、自車両が走行するために要する時間とすることができる。走行継続時間TAが所定時間TA 0に到達していない場合は、ステップS1102に戻り、走行継続時間TAが所定時間TA 0に到達するまで、走行継続時間TAが段階的に増加される。一方、走行継続時間TAが所定時間TA 0に到達した場合は、ステップS1105に進む。
ステップS1105では、所定時間TA 0となった走行継続時間TAと、初期値Tmin’のままの車線変更時間TBとの合計時間が、最短許容時間Tfよりも小さいか(TA+TB<Tf)否かの判定が行われる。走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tf以上である場合には、ステップS1115に進み、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、初期値Tmin’のままの車線変更時間TBとが、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。一方、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tfよりも小さい場合には、ステップS1106に進む。
また、ステップS1106〜S1109では、ステップS1102〜S1104と同様に、自車両の転舵が開始されてから終了するまでの車線変更時間TBを、所定時間TB 0まで段階的に増加させた後(ステップS1106〜S1108)、所定時間TA 0となった走行継続時間TAと、所定時間TB 0となった車線変更時間TBとの合計時間が、最短許容時間Tfよりも小さいか(TA+TB<Tf)否かの判定が行われる(ステップS1109)。すなわち、車線変更時間TBが所定時間TB 0に到達するまで、車線変更時間TBに所定時間ΔTBが繰り返し追加され(ステップS1106)、車線変更時間TBが所定時間TB 0に到達した場合に(ステップS1108=Yes)、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tfよりも小さいか否かの判定が行われる(ステップS1109)。そして、ステップS1109において、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tf以上であると判定された場合には、ステップS1115に進み、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、所定時間TB 0である車線変更時間TBとの合計時間が、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。一方、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が、最短許容時間Tfよりも小さいと判定された場合には、ステップS1110に進む。なお、車線変更時間TBが所定時間TB 0に到達するまでに、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が、最長許容時間Tt以上となった場合(ステップS1107=Yes)には、ステップS1115に進み、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、現時点での車線変更時間TBとが、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。
さらに、ステップS1110〜S1113では、ステップS1106〜S1109と同様に、車線変更時間TBが、所定時間TB 0から所定時間TB 1まで段階的に増加され(ステップS1110〜S1112)、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、所定時間TB 1となった車線変更時間TBとの合計時間が、最短許容時間Tfよりも小さいか(TA+TB<Tf)否かの判定が行われる(ステップS1113)。そして、ステップS1113において、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tf以上であると判定された場合は、ステップS1115に進み、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、所定時間TB 1である車線変更時間TBとの合計時間が、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。一方、ステップS1113において、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が最短許容時間Tfよりも小さいと判定された場合は、ステップS1114に進む。なお、車線変更時間TBを、所定時間TB 0から所定時間TB 1まで段階的に増加させている間に、走行継続時間TAと車線変更時間TBとの合計時間が、合流地点における車線変更が許容される最長許容時間Tt以上となった場合(ステップS1111=Yes)には、ステップS1115に進み、所定時間TA 0である走行継続時間TAと、現時点の車線変更時間TBとが、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。
ステップS1114では、走行継続時間TAが、最短許容時間Tfと所定時間TB 1である車線変更時間TBとの差(TA=Tf−TB 1)に設定される。そして、所定時間TB 1である車線変更時間TBと、最短許容時間Tfおよび車線変更時間TBの差である走行継続時間TAとの合計時間が、車線変更所要時間TLCを構成する時間として算出され、この所要時間算出処理を終了する。
以上のように、走行継続時間TAおよび車線変更時間TBが算出され、ステップS111の所要時間算出処理が行われる。
次いで、ステップS112では、車線変更制御部88により、ステップS111で算出された車線変更所要時間TLCに基づいて、目標操舵角の算出が行われる。具体的には、車線変更制御部88は、合流地点において車線変更を行う際の自車両の操舵角を、目標操舵角として、時系列に沿って算出する。以下においては、図8を参照して、目標操舵角の算出方法について説明する。ここで、図8は、第1実施形態において算出される目標操舵角の一例を示す図である。図8においては、横軸が時間を、縦軸が目標操舵角の大きさ(振幅)を表している。
図8に示すように、車線変更制御部88は、車線変更所要時間TLCのうち、自車両が合流車線での走行を継続する走行継続時間TA(図8においては、現在時刻t0から時刻t0+TAまでの時間)においては、目標操舵角θs *を0°として算出する。また、車線変更制御部88は、車線変更所要時間TLCのうち、自車両の転舵を開始してから終了するまでの車線変更時間TB(図8においては、時刻t0+TAから時刻t0+TA+TBまでの時間)においては、目標操舵角θs *を、例えば、周期が車線変更時間TBである正弦波状の操舵パターンとして生成する。なお、車線変更時間TBにおける目標操舵角θs *の大きさ(正弦波状の操舵パターンの振幅)は、図8に示すように、自車両が合流車線の中央位置から本線車線の中央位置まで移動するのに十分な値に設定されることが好適である。そして、車線変更制御部88は、車線変更所要時間TLCを経過した後(時刻t0+TA+TBの経過後)は、目標操舵角θs *を0°として算出する。
次に、ステップS113では、車線変更制御部88により、ステップS112で算出された目標操舵角θs *のうち、現在時刻に応じた目標操舵角θs *が、モーターコントローラ90に出力される。これにより、モーターコントローラ90は、現在時刻の目標操舵角θs *に応じた転舵トルク量を算出し、転舵アシストモーター100を介して、自車両の操舵系に、転舵トルク量に応じた転舵トルクを加える。その結果、合流地点における自車両の車線変更において、ステップS111,S112で作成された車線変更計画に応じた操舵制御が行われることとなる。
なお、ステップS104において、車線変更計画を作成する必要がないと判断された場合は、ステップS114に進む。ステップS114では、車線変更制御部88により、車線変更計画に基づく自車両の操舵制御が行われているか否かの判断が行われる。車線変更制御部88は、例えば、車線変更計画が作成されていない場合や、車線変更所要時間TLCが経過し、車線変更計画に基づく自車両の操舵制御が終了している場合には、車線変更計画に基づく自車両の操舵制御が行われていないと判断することができる。車線変更計画に基づく自車両の操舵制御が行われていないと判断された場合には、この車線変更制御処理を終了する。一方、車線変更計画に基づく自車両の操舵制御が行われている場合には、ステップS113に進み、現在時刻の目標操舵角θs *がモーターコントローラ90に出力される。
また、ステップS110において、合流地点において車線変更が許容される時間がないと判断された場合は、ステップS115に進む。ステップS115では、このままの状態で、合流地点における車線変更は困難であると判断され、自車両の運転者に対して警報が行われる。なお、自車両の運転者に対して警告を行う方法は、特に限定されず、例えば、図示しないディスプレイやスピーカにより警告することができる。
以上のように、本実施形態に係る車線変更制御装置は、合流地点において自車両が車線変更を行う際に、車線終端点が接近することに対する自車両の運転者のストレスを車線終端ストレス度合として評価するとともに、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスを後方車両ストレス度合として評価することで、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合に基づいて、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスを、合流ストレス度合として評価する。そして、この合流ストレス度合が低く、合流地点における自車両の車線変更が許容される時間(例えば、図6に示す例では、時刻tfから時刻ttまでの時間)に、自車両の車線変更が完了するように、自車両の誘導が行われる。これにより、本実施形態では、合流地点において自車両が車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスを、自車両周囲の状況に応じて適切に評価することができ、その結果、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスを低減するように、自車両の誘導を適切に行うことができる。特に、本実施形態では、合流地点において自車両が車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスが小さくなるように、合流地点における車線変更を行うための目標操舵角の時系列データを、車線変更計画として作成し、該車線変更計画に基づいて操舵制御を行うことで、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者の運転負荷を低減することができる。
また、本実施形態に係る車線変更制御装置では、合流地点における自車両の車線変更が許容される時間内に、自車両の車線変更が完了するように、自車両が合流車線での走行を継続する走行継続時間と、自車両の転舵を開始してから終了するまでの車線変更時間とを算出し、走行継続時間と車線変更時間との合計時間を車線変更所要時間として算出する。これにより、本実施形態においては、合流地点において自車両の車線変更を行う際の自車両の転舵を開始するタイミングや、自車両の転舵速度を適切に算出することができる。
≪第2実施形態≫
続いて、第2実施形態に係る車線変更制御処理を説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、図1に示す構成を備える車両において、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。具体的には、第2実施形態に係る車線変更制御処理では、図9に示すように、本線道路において自車両の前方を走行する他車両(以下、前方車両と言う。)が存在する場合に、この前方車両を考慮して、合流地点における自車両の車線変更を行うように、自車両を誘導するため、ステップS103,S105およびステップS107のみにおいて、第1実施形態に係る車線変更制御処理と異なる処理が行われ、それ以外の処理においては、第1実施形態と同様に処理が行われる。そこで、以下においては、図9に示すように、前方車両が存在する場面において、第2実施形態に係るステップS103,S105およびステップS107について説明する。なお、図9は、第2実施形態に係る車線変更制御処理を説明するための図である。
ステップS103では、他車両検出部83により、自車両周囲を走行する他車両の検出が行われる。ここで、第2実施形態では、図9に示すように、本線車線において自車両の前方に前方車両が走行しているため、他車両検出部83は、自車両前方を撮像するカメラ10a,10bから送信された画像データに基づいて、前方車両を検出し、検出した前方車両の走行位置xfおよび走行速度vfを検出する。
また、ステップS105では、自車両挙動予測部84により、合流地点における自車両の挙動の予測が行われる。ここで、第2実施形態では、図9に示す場面例のように、ステップS103において、前方車両が検出されているため、自車両挙動予測部84は、この前方車両を考慮して、合流地点における自車両の挙動を予測する。以下に、第2実施形態に係る自車両の挙動の予測方法について、説明する。
自車両挙動予測部84は、まず、自車両の車速vhとストローク量dAとに基づき、予め作成されたマップを参照して、推定目標速度v*^および推定目標加速度a*^を算出する。ここで、図9に示すように、前方車両が存在する場面では、算出された推定目標速度v*^と、ステップS103で検出された前方車両の走行速度vfとの比較が行われ、比較の結果、推定目標速度v*^よりも前方車両の走行速度vfのほうが遅い場合には、前方車両の走行速度vfが推定目標速度v*^として設定される。
次に、自車両挙動予測部84は、ステップS103で検出された前方車両の走行位置x
fおよび走行速度v
fに基づいて、合流地点における前方車両の挙動を予測する。具体的には、自車両挙動予測部84は、下記式(11)に基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける前方車両の走行位置x
f^(t)を算出する。
そして、自車両挙動予測部84は、自車両の車速v
hが推定目標速度v
*^に到達する時刻t
1において、自車両と前方車両とが接近しているか否かの判断を行う。具体的には、自車両挙動予測部84は、自車両と前方車両とが接近しているか否かを判断するために、まず、時刻t
1における自車両と前方車両との車間時間h
f(t
1)を、下記式(12)に基づいて算出する。
そして、自車両挙動予測部84は、時刻t1における車間時間hf(t1)が所定の車間時間h*以上であるか否かを判断することで、自車両と前方車両とが接近しているか否かを判断する。すなわち、自車両挙動予測部84は、時刻t1における車間時間hf(t1)が所定の車間時間h*以上である場合には、自車両と前方車両とが接近していないと判断する。このように、自車両と前方車両とが接近していない場合には、自車両は前方車両の影響を受けずに加減速を行うものと考えられる。そこで、この場合、自車両挙動予測部84は、第1実施形態と同様に、上記式(1),(2)に基づいて、現在時刻t0以降の各時刻tにおける自車両の走行速度vh^(t)と走行位置xh^(t)とを予測する。
一方、時刻t
1における車間時間h
f(t
1)が所定の車間時間h
*未満である場合には、自車両挙動予測部84は、自車両と前方車両とが接近していると判断する。この場合、自車両が前方車両に過度に接近しないように、自車両の走行速度を加減速するものと考えられるため、自車両挙動予測部84は、下記式(13)に基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける自車両の加速度を算出する。
ここで、上記式(13)において、t
0’は、自車両と前方車両とが接近することにより、自車両の運転者が加速を緩め始めると予想される時刻であり、t
1’は、自車両の運転者が自車両の加速を緩めた後、自車両の走行速度が推定目標速度v
*^に到達すると予想される時刻である。また、kは、下記式(14)で求められるパラメータ値である。
また、t
0’を所定時刻として設定し、上記式(13)を2回積分して自車両の走行位置に関する予測を生成すると、下記式(15)の条件を満たすt
1’を一意に定めることができる。
このように、自車両挙動予測部84は、前方車両と自車両とが接近している場合に、上記式(13)式に基づいて加速度ah^(t)を算出し、算出した加速度ah^(t)を用いて、現在時刻t0以降の各時刻tにおける自車両の走行速度vh(t)と走行位置xh(t)とを予測することで、合流地点における自車両の挙動を予測する。
また、ステップS107では、後方車両挙動予測部85により、後方車両の挙動の予測が行なわれる。ここで、図9に示す例のように前方車両が検出される場合に、後方車両挙動予測部85は、後方車両が前方車両の存在を考慮して走行するものとして、後方車両の挙動を予測する。具体的には、後方車両挙動予測部85は、前方車両を先行車両、後方車両を後続車両とした、公知の追従モデルを用いて、現在時刻t0以降の各時刻tの後方車両の走行位置xf(t)と走行速度vf(t)とを算出することで、合流地点における後方車両の挙動を予測する。
以上のように、第2実施形態に係る車線変更制御装置は、図9に示すように、本線車線において自車両の前方に前方車両が存在する場合に、自車両が前方車両に接近しすぎないように、自車両の運転者が加減速を行うものとして、自車両の挙動を予測する。これにより、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、前方車両が存在する状況における自車両の挙動を適切に予測することができ、合流地点において車線変更を行う際の自車両の誘導を適切に行うことができる。さらに、第2実施形態では、後方車両が前方車両に追従するものとして、後方車両の挙動を予測することで、前方車両が存在する状況における後方車両の挙動も適切に予測することができる。
≪第3実施形態≫
続いて、第3実施形態に係る車線変更制御装置について説明する。第3実施形態に係る車線変更制御装置は、図1に示す車線変更制御装置と同様の構成を有するものであり、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。以下において、図10を参照して、第3実施形態に係る車線変更制御装置の動作について説明する。図10は、第3実施形態に係る車線変更制御処理を示すフローチャートである。なお、第3実施形態に係る車線変更制御処理も、マイクロプロセッサ80により、一定の時間間隔ごとに繰り返し行われる。
まず、ステップS301〜ステップS303では、第1実施形態のステップS101〜S103と同様に、自車両の走行情報、合流車線の車線終端点を含む車線情報、および他車両の走行情報の取得が行われる。
そして、ステップS304では、車線変更計画に基づく操舵制御が行われているか否かの判断が行われる。車線変更計画に基づく操舵制御が行われている場合は、ステップS314に進み、一方、車線変更計画に基づく操舵操作が行われていない場合は、ステップS305に進む。
ステップS305では、第1実施形態のステップS105と同様に、合流地点における自車両の挙動の予測が行われる。
そして、ステップS306では、車線終端ストレス評価部86により、車線終端ストレス度合の算出が行われる。第3実施形態では、以下に説明するように、自車両が合流車線の車線終端点に到達するまでの到達時間TTCendに基づいて、車線終端ストレス度合が、時系列に沿った数値データとして算出される。
すなわち、車線終端ストレス評価部86は、まず、自車両が合流車線の車線終端点x
endに到達するまでの到達時間TTC
endを算出する。具体的には、車線終端ストレス評価部86は、ステップS305で予測した各時刻tにおける自車両の走行位置x
h^(t)および走行速度v
h^(t)と、ステップS302で取得した合流車線の車線終端点の位置情報とに基づいて、下記式(16)に従って、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける到達時間TTC
end(t)を算出する。
ここで、自車両が車線終端点に到達するまでの到達時間TTC
endが小さいほど、車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスは大きくものと考えられる。そこで、車線終端ストレス評価部86は、算出した到達時間TTC
endに基づいて、自車両が車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスを、車線終端ストレス度合S
end(t)として算出する。具体的には、車線終端ストレス評価部86は、下記式(17)に基づいて、車線終端ストレス度合S
end(t)を、時系列に沿った数値データとして算出する。なお、下記式(17)において、aは、車線終端ストレス度合S
end(t)と到達時間TTC
end(t)の逆数の値とをスケーリングするためのパラメータ値である。
ステップS307では、第1実施形態のステップS107と同様に、後方車両挙動予測部85により、合流地点における後方車両の挙動の予測が行なわれる。
そして、ステップS308では、後方車両ストレス評価部87により、後方車両ストレス度合の評価が行われる。第3実施形態では、後述するように、自車両と後方車両との車間時間および接近時間に基づいて、後方車両ストレス度合が、時系列に沿った数値データとして算出される。以下に、第3実施形態に係る後方車両ストレス度合の評価方法について説明する。
まず、後方車両ストレス評価部87は、ステップS305で予測した各時刻tにおける自車両の走行位置x
h^(t)と、ステップS307で予測した各時刻tにおける後方車両の走行位置x
r^(t)および走行速度v
r^(t)とに基づいて、下記式(18)に従って、各時刻tにおける自車両と後方車両との車間時間h
r(t)を算出する。
さらに、後方車両ストレス評価部87は、ステップS305で予測した各時刻tにおける自車両の走行位置x
h^(t)および走行速度v
h^(t)と、ステップS307で予測した各時刻tにおける後方車両の走行位置x
r^(t)および走行速度v
r^(t)とに基づいて、下記式(19)に従って、各時刻tにおける自車両と後方車両との接近時間TTC
r(t)を算出する。
ここで、車間時間h
r(t)および接近時間TTC
r(t)が小さくなるほど、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスは大きくなるものと考えられる。そこで、後方車両ストレス評価部87は、以下に説明するように、車間時間h
r(t)および接近時間TTC
r(t)に基づいて、後方車両ストレス度合S
r(t)を算出する。具体的には、後方車両ストレス評価部87は、下記式(20)に基づいて、後方車両ストレス度合S
r(t)を、時系列に沿った数値データとして算出する。なお、下記式(20)において、bおよびcは、後方車両ストレス度合に対して、車間時間および接近時間がそれぞれ寄与する大きさを示すパラメータである。
ステップS309では、車線変更制御部88により、ステップS306で算出された車線終端ストレス度合S
end(t)と、ステップS308で算出された後方車両ストレス度合S
r(t)とに基づいて、合流ストレス度合S
m(t)の算出が行われる。具体的には、車線変更制御部88は、下記式(21)に示すように、車線終端ストレス度合S
end(t)と、後方車両ストレス度合S
r(t)とを加算することで、合流ストレス度合S
m(t)を、時系列に沿った数値データとして算出する。
ここで、図11は、第3実施形態における合流ストレス度合Sm(t)の一例を示す図である。自車両が車線終端点に到達する時間は、時間の経過とともに小さくなるため、図11に示すように、車線終端ストレス度合Send(t)は、時間の経過とともに大きくなる。また、合流地点において車線変更を行うために自車両の加速が行われ、自車両と後方車両との車間時間および接近時間が、時間の経過とともに大きくなる場合には、図11に示すように、後方車両ストレス度合Srは、時間の経過とともに小さくなる。そして、図11に示すような車線終端ストレス度合Send(t)と後方車両ストレス度合Sr(t)とが算出された場合、合流ストレス度合Sm(t)は、図11に示すように、現在時刻t0から、合流ストレス度合が最小の値となる時刻t*に向かって小さくなり、時刻*から時刻tendに向かって大きくなる。
次いで、ステップS310では、車線変更制御部88により、合流地点での車線変更を行うために、自車両の運転者により操舵が開始されたか否かの判定が行われる。本実施形態において、車線変更制御部88は、例えば、ステップS301で取得した操舵角θsが所定値以上であるか否かを判断し、操舵角θsが所定値以上である場合には、自車両の運転者により操舵が開始されたものと判定する。自車両の運転者により操舵が開始されたと判定された場合は、ステップS311に進み、一方、自車両の運転者により操舵が開始されていないと判定された場合は、この車線変更制御処理を終了する。
ステップS311では、車線変更制御部88により、ステップS309における合流ストレス度合の評価結果に基づいて、合流地点における自車両の車線変更を行うことができるか否かの判断が行われる。本実施形態においては、車線変更制御部88は、合流地点における自車両の車線変更を行うことができる時間があるか否かを判断することで、合流地点における自車両の車線変更を行うことができるか否かを判断する。具体的には、車線変更制御部88は、図11に示すように、現在時刻t0から、自車両が車線終端点に到達する時刻tendまでの時間において、合流ストレス度合Sm(t)が所定値Sm aを下回る時間があるか否かを判断することで、合流地点において車線変更を行うことができる時間があるか否かの判断を行う。図11に示す例では、例えば、時刻t*において、合流ストレス度合Sm(t)が所定値Sm aを下回っているため、合流地点において車線変更を行うことができる時間があると判断され、これにより、合流地点における自車両の車線変更を行うことができると判断される。合流地点において車線変更を行うことができる時間があると判断された場合は、車線変更計画の作成を行うために、ステップS312に進み、一方、合流地点において車線変更を行うことができる時間がないと判断された場合は、ステップS315に進む。
ステップS312では、車線変更計画を作成するために、車線変更制御部88により、合流ストレス度合が最小となる時刻t*が、自車両が本線車線への合流を完了する時刻として算出され、現在時刻t0から、合流ストレス度合Sm(t)が最小となる時刻t*までの時間が、車線変更所要時間TLc(TLC=t*−t0)として算出される。
そして、ステップS313では、車線変更制御部88により、ステップS312で算出した車線変更所要時間TLcに基づいて、目標操舵角θs *の算出が行われる。具体的には、車線変更制御部88は、図12に示すように、車線変更所要時間TLcに基づいて、目標操舵角θs *を時系列に沿って算出する。ここで、図12は、第3実施形態において算出される目標操舵角θs *の一例を示す図である。車線変更制御部88は、例えば、図12に示すように、現在時刻t0から、合流ストレス度合Sm(t)が最小となる時刻t*までの車線変更所要時間TLcにおいて、目標操舵角θs *を、周期が車線変更所要時間TLcである正弦波状の操舵パターンとして算出する。なお、目標操舵角θs *の大きさ(正弦波状の操舵パターンの振幅)は、自車両が合流車線の中央位置から本線車線の中央位置まで移動するのに十分な値に設定することが好適である。
そして、ステップS314においては、ステップS313で算出された目標操舵角θs *のうち、現在時刻に応じた目標操舵角θs *がモーターコントローラ90に出力され、モーターコンローラ90により、転舵アシストモーター100が制御される。これにより、合流地点における自車両の車線変更において、車線変更計画に応じた操舵制御が行われることとなる。
また、ステップS311において、合流地点において車線変更を行うことができないと判断された場合は、ステップS315に進む。ステップS315では、このままの状況では、合流地点における車線変更が困難であると判断され、自車両の運転者に対して警報が行われる。そして、ステップS315において警告が行われた後は、この車線変更制御処理を終了する。
以上のように、第3実施形態に係る車線変更制御装置では、車線終端ストレス度合を、時系列に沿って、自車両が合流車線の車線終端に到達するまでの時間に応じた数値データ(車線終端ストレス度合の経時変化を表す関数)として算出するとともに、後方車両ストレス度合を、時系列に沿って、自車両と後方車両との車間時間および接近時間に応じた数値データ(後方車両ストレス度合の経時変化を表す関数)として算出する。そして、車線終端ストレス度合の時系列に沿った数値データと、後方車両ストレス度合の時系列に沿った数値データとを、加算し、または各時刻において最大となる値を選択することで、合流ストレス度合を、時系列に沿った数値データとして適切に算出することができる。これにより、第3実施形態では、合流ストレス度合が最小となる時刻を算出することでき、合流ストレス度合が最小となる時刻で車線変更を行うように、自車両の車線変更を行う車線変更所要時間を算出することができる。その結果、第3実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、自車両の運転者のストレスが最も小さくなるタイミングに合わせて、自車両が車線変更を行うように、自車両の誘導を行うことができ、合流地点における自車両の運転者の運転負荷をより軽減することができる。
≪第4実施形態≫
続いて、第4実施形態に係る車線変更制御装置について説明する。第4実施形態に係る車線変更制御装置は、図1に示す車線変更制御装置と同様の構成を有するものであり、車線終端ストレス度合を評価するステップS306、後方終端ストレス度合を評価するステップS308、合流ストレス度合を評価するステップS309、およびステップS311のみにおいて、第3実施形態に係る車線変更制御装置と異なり、それ以外の処理においては、第3実施形態と同様に処理が行われる。そこで、以下においては、第4実施形態に係るステップS306,S308,S309、およびステップS311について説明する。
ステップS306では、車線終端ストレス評価部86により、車線終端ストレス度合の評価が行われる。第4実施形態においては、車線終端ストレス評価部86は、まず、第3実施形態と同様に、自車両が合流車線の車線終端点xendに到達するまでの到達時間TTCend(t)を算出する。
そして、車線終端ストレス評価部86は、算出した到達時間TTC
end(t)に基づき、車線終端ストレス度合S
end(t)を評価する。具体的には、車線終端ストレス評価部86は、下記式(22)に基づいて、車線終端ストレス度合S
end(t)を、時系列に沿った数値データとして算出する。
ここで、TTC
end minは、到達時間TTC
end(t)が小さいために、自車両の運転者のストレスが大きく、自車両の運転者により車線変更が許容されない状態であると考えられる到達時間である。また、TTC
end maxは、到達時間TTC
end(t)が大きいために、車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスは小さく、自車両の運転者により車線終端点があまり意識されることがない状態であると考えられる到達時間である。
このように、車線終端ストレス評価部86は、上記式(22)に従って、接近時間TTCend(t)が所定時間TTCend min以下(TTCend(t)≦TTCend min)である場合には、車線終端ストレス度合Send(t)を上限値である『1』として算出し(Send(t)=1)、接近時間TTCend(t)が所定時間TTCend maxよりも大きい(TTCend(t)>TTCend max)場合には、車線終端ストレス度合Send(t)を下限値である『0』として算出する(Send(t)=0)。また、車線終端ストレス評価部86は、到達時間TTCend(t)が、所定時間TTCend minよりも大きく、かつ、所定時間TTCend max以下である(TTCend min≦TTCend(t)≦TTCend max)場合には、到達時間TTCend(t)が大きくなるほど、車線終端ストレス度合Send(t)を、上限値である『1』から下限値である『0』へと連続的に変化するように算出する。
また、ステップS308では、後方車両ストレス評価部87により、後方車両ストレス度合の評価が行われる。第4実施形態においては、まず、第3実施形態と同様に、自車両と後方車両との車間時間hr(t)と、自車両と後方車両との接近時間TTCr(t)とが算出される。
そして、後方車両ストレス評価部87は、算出した車間時間h
r(t)に基づいて、下記式(23)に示すように、車間時間h
r(t)による自車両の運転者のストレスを、車間時間ストレス度合S
h(t)として算出するとともに、算出した接近時間TTC
r(t)に基づいて、下記式(24)に示すように、接近時間TTC
r(t)による自車両の運転者のストレスを、接近時間ストレス度合S
TTC(t)として算出する。
ここで、h
r minは、車間時間h
r(t)が小さいため、後方車両に対する自車両の運転者のストレスが大きくなり、自車両の運転者により車線変更が許容されない状態であると考えられる車間時間である。同様に、TTC
r minは、接近時間TTC
r(t)が小さいため、自車両の運転者により車線変更が許容されない状態であると考えられる接近時間である。一方、h
r maxは、車間時間h
r(t)が大きいため、後方車両に対する自車両の運転者のストレスは小さく、自車両の運転者により後方車両があまり意識されない状態であると考えられる車間時間であり、同様に、TTC
r maxは、車間時間TTC
r(t)が大きいため、自車両の運転者により後方車両があまり意識されない状態であると考えられる車間時間である。
このように、後方車両ストレス評価部87は、上記式(24)に従って、車間時間hr(t)が所定時間hr min以下(hr(t)≦hr min)である場合には、車間時間hrによる車間時間ストレス度合Sh(t)を上限値である『1』として算出し(Sh(t)=1)、車間時間hr(t)が所定時間hr maxよりも大きい(hr(t)>hr max)場合には、車間時間hrによる車間時間ストレス度合Sh(t)を下限値である『0』として算出する(Sh(t)=0)。また、後方車両ストレス評価部87は、車間時間hr(t)が、所定時間hr minよりも大きく、かつ、所定時間hr max以下である(hr min<hr(t)≦hr max)場合には、車間時間hr(t)による車間時間ストレス度合Sh(t)を、車間時間hr(t)が大きくなるほど、上限値である『1』から下限値である『0』へと連続的に変化するように算出する。同様に、後方車両ストレス評価部87は、接近時間TTCr(t)による接近時間ストレス度合STTC(t)も算出する。
次いで、後方車両ストレス評価部87は、各時刻tにおける車間時間h
r(t)による車間時間ストレス度合S
h(t)と、各時刻tにおける接近時間TTC
r(t)による接近時間ストレス度合S
TTC(t)とに基づいて、各時刻tにおける後方車両ストレス度合S
r(t)を算出する。第4実施形態では、車間時間h
r(t)による車間時間ストレス度合S
h(t)、および、接近時間TTC
r(t)による接近時間ストレス度合S
TTC(t)のうち、そのストレス度合の大きいいずれか一方が、自車両の運転者に大きく影響するものと考えて、下記式(25)に示すように、各時刻tにおける後方車両ストレス度合S
r(t)が算出される。
ここで、上記式(25)において、車間時間に対する車間時間ストレス度合Sh(t)が合流ストレス度合Sr(t)として選択される場合とは、自車両と後方車両とが同程度の走行速度で走行している場合であるものと想定される。自車両と後方車両との相対速度が小さくなるほど、車間時間hr(t)に対して、接近時間TTCr(t)は大きくなることから、車間時間に基づくストレス度合Sh(t)が、接近時間に基づく後方車両ストレス度合STTC(t)よりも大きいことが想定されるためである。このように、自車両と後方車両とが同程度の走行速度で走行している場合に、自車両と後方車両との間に、自車両が後方車両の前方に車線変更することが可能な車間距離が確保されていれば、後方車両は、自車両の車線変更を予測し、自車両に接近しないように挙動するものと想定されることから、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスも小さくなるものと想定される。そこで、車線変更制御部88は、上記式(25)において、車間時間hr(t)による車間時間ストレス度合Sh(t)を、合流ストレス度合Sr(t)として選択した場合に、後方車両ストレス度合Sr(t)を、以下に説明するように設定する。
すなわち、まず、後方車両ストレス評価部87は、自車両と後方車両との車間距離が、自車両が後方車両の前方に車線変更することが可能な車間距離となる時刻t
Rを算出する。具体的には、後方車両ストレス評価部87は、下記式(26)に従って、時刻t
Rを算出する。
なお、上記式(26)において、R
minは、自車両が後方車両の前方に車線変更することが可能な自車両と後方車両との車間距離のうち、最小の車間距離である。
次に、後方車両ストレス評価部87は、時刻t
Rに基づいて、後方車両ストレス度合S
r(t)を補正するための補正量ΔS(t)を、下記式(27)に従って算出する。なお、下記式(27)において、S
maxは補正量の最大値、αは補正量の増加の速さを調節するためのパラメータ値を示す。
なお、後方車両ストレス評価部87は、自車両の方向指示器の動作状況の検出を行い、本線車線側における方向指示器の点灯を検出した場合には、この方向指示器の点灯により、後方車両が自車両の車線変更をより早く予測するものと判断し、自車両の車線変更をより早いタイミングで行うことができるように、例えば、上記式(27)におけるαを、より大きな値に設定して、補正量ΔS(t)を算出してもよい。
そして、後方車両ストレス評価部87は、算出された補正量ΔS(t)を用いて、下記式(28)に示すように、各時刻tにおける後方車両ストレス度合S
r 〜(t)を算出する。なお、S
r 〜(t)は、補正後の後方車両ストレス度合S
r(t)である。
ここで、下記式(28)においては、補正値であることを示す「
〜」を、S
r(t)の「S」の真上としているが、下記式(29)に示すように、これはSr
〜(t)と同義である。
そして、ステップS309では、車線変更制御部88により、ステップS306で算出された車線終端ストレス度合S
end(t)と、ステップS308で算出された後方車両ストレス度合S
r(t)または補正後の後方車両ストレス度合S
r 〜(t)とに基づいて、合流ストレス度合S
m(t)の算出が行われる。例えば、補正後の後方車両ストレス度合S
r 〜(t)が算出された場合には、図13に示すように、下記式(30)に基づいて、現在時刻t
0以降の各時刻tにおける合流ストレス度合S
m(t)が算出される。なお、図13は、第4実施形態における合流ストレス度合S
m(t)の一例を示す図である。
また、車線変更制御部88は、下記式(31)に従って、合流ストレス度合S
m(t)を算出してもよい。
なお、上記式(30),(31)は、後方車両ストレス度合S
r(t)が補正された場合の合流ストレス度合S
m(t)の算出方法を示すものであり、後方ストレス度合S
r(t)が補正されていない場合には、下記式(30),(31)における後方ストレス度合S
r 〜(t)を、後方車両ストレス度合S
rに置き換えることで、合流ストレス度合S
m(t)を算出することができる。
ステップS311では、車線変更制御部88により、合流ストレス度合の評価結果に基づいて、合流地点において車線変更を行うことができるか否かの判断が行われる。第4実施形態では、車線変更制御部88は、図13に示すように、現在時刻t0から、自車両が車線終端に到達するまでの時刻tendにおいて、合流ストレス度合Sm(t)が1よりも小さくなる時間があるか否かを判断することで、合流地点において車線変更を行うことができるか否かの判定を行う。
以上のように、第4実施形態に係る車線変更制御装置では、到達時間TTCend(t)が所定値TTCend min以下となる場合には、自車両の運転者により車線変更が許容されない状態であると判断し、車線変更ストレス度合に上限値が設定されるとともに、到達時間TTCend(t)が所定値TTCend maxよりも大きい場合には、自車両の運転者により合流車線の車線終端点があまり意識されない状態であるとして、車線変更ストレス度合に下限値が設定される。そして、車線変更ストレス度合が、設定された上限値と下限値との間の範囲内において算出されることとなる。同様に、車間時間hr(t)による車間時間ストレス度合、および接近時間TTCr(t)による接近時間ストレス度合についても、上限値および下限値が設定され、設定された上限値と下限値との間の範囲内において、車間時間hr(t)による車間時間ストレス度合、および接近時間TTCr(t)による接近時間ストレス度合が算出されることとなる。これにより、第4実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合のいずれか一方が過大な値になることを防止することができ、車線終端ストレス度合と後方車両ストレス度合とがバランスのとれた合流ストレス度合を算出することができる。
また、第4実施形態においては、自車両と後方車両とが同程度で走行しており、自車両と後方車両との車間距離が、自車両が後方車両の前方に車線変更することが可能な範囲内である場合には、後方車両は、自車両の車線変更を予測し、自車両に対して一定の車間距離を確保するものと判断し、後方車両ストレス度合を低くなるように設定する。さらに、このような場合に、自車両の方向指示器の点灯が検出された場合には、後方車両の運転者が、自車両の車線変更をより早く予測するものと判断し、自車両の車線変更をより早いタイミングで行えるように、後方車両ストレス度合を設定する。このように、第4実施形態においては、自車両と後方車両との走行状況に応じて、後方車両ストレス度合を適切に算出することがで、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者のストレスをより適切に評価することができる。
≪第5実施形態≫
続いて、第5実施形態に係る車線変更制御装置について説明する。第5実施形態に係る車線変更制御装置は、図1に示す車線変更制御装置と同様の構成を有するものであり、車線変更所要時間を算出するステップS111のみにおいて、第1実施形態に係る車線変更制御装置と異なり、それ以外の処理においては、第1実施形態と同様に処理が行われる。そこで、以下においては、第5実施形態に係るステップS111について説明する。
第5実施形態に係るステップS111では、車線変更制御部88により、自車両の方向指示器の動作状況に基づいて、車線変更所要時間TLCの算出が行われる。以下、第5実施形態における車線変更所要時間TLCの算出方法について説明する。なお、第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、自車両が合流車線での走行を継続する走行継続時間TAと、自車両の転舵が開始されてから終了するまでの車線変更時間TBとを算出することで、車線変更所要時間TLCの算出を行う。
ここで、合流地点において自車両が車線変更を行う際に、自車両の運転者が方向指示スイッチ50を操作して、本線車線側の方向指示器を点灯した場合、自車両の運転者は、後方車両の運転者に自車両が車線変更を行うことを認知させるために、方向指示器の点灯後、合流車線での走行を一定時間継続することが推奨される。そのため、車線変更制御部88は、本線車線側の方向指示器の動作状況の検出を行い、方向指示器の点灯を検出した場合には、走行継続時間T
Aを、下記式(32)の条件を満たすものと判断する。なお、下記式(32)において、t
wは、本線車線側の方向指示器の点灯が検出された時刻であり、T
wは、自車両の運転者が方向指示器を点灯した後、自車両が合流車線での走行を継続することが推奨される推奨時間である。
なお、現在時刻t
0において自車両の方向指示器が点灯されていない場合には、自車両の運転者が、所定時間T
on後に、自車両の方向指示器を点灯させるものと判断し、上記式(32)のt
wを、現在時刻t
0から所定時間T
on経過した時刻(t
w=t
0+T
on)として設定してもよい。
そして、上記式(32)から、走行継続時間T
Aは、現在時刻t
0から自車両の方向指示器の点灯が検出される時刻までの時間(t
w―t
0)と、自車両の方向指示器の点灯後に、自車両が合流車線での走行を継続することが推奨される推奨時間T
wとの合計時間以上(T
A≧T
w+t
w―t
0)という条件を満たすものと判断される。また、上述したように、車線変更のために転舵を行う際には、少なくとも最小所要時間T
min’を確保する必要がある。そのため、車線変更所要時間T
LCのうち、自車両の転舵を開始してから終了するまでの車線変更時間T
Bは、最小所要時間T
min’以上(T
B≧T
min’)となるため、走行継続時間T
Aは、車線変更所要時間T
LC(T
LC=T
A+T
B)から最小所要時間T
min’を引いた時間以下(T
A≦T
LC−T
min’)であるという条件も満たすものと判断される。そこで、車線変更制御部88は、下記式(33)に従って、走行継続時間T
Aの暫定値T
A^を算出する。なお、下記式(33)におけるmin()は、方向指示器を点灯させた場合に推奨される走行継続時間(T
w+t
w―t
0)と、転舵に要する最小所要時間T
min’とに基づく走行継続時間(T
LC−T
min’)のうち、最小となる値を選択的に算出することを示す(以下、式(34)においても同様。)
一方、自車両が転舵を開始してから終了するまでの車線変更時間T
Bについては、速すぎる転舵が許容されないことに対応して、車線変更時間T
Bが最小所要時間T
min’以上(T
B≧T
min’)という制約を設けているが、余りにも遅すぎる転舵も運転者にとっては違和感を生じる原因となる。そこで、車線変更制御部88は、転舵を行う際に許容される最大所要時間をT
max’とした場合に、車線変更時間T
Bが最大所要時間T
max’以下(T
B≦T
max’)であるという条件も満たすように、車線変更時間T
Bを算出する。具体的には、車線変更制御部88は、算出した暫定値T
A^に基づいて、車線変更時間T
Bを、下記式(34)に従って算出する。
そして、車線変更制御部88は、算出した車線変更時間T
Bに基づいて、下記式(35)に従って、走行継続時間T
Aを算出する。
以上のように、第5実施形態に係る車線変更制御装置は、自車両の方向指示器の動作状況を検出し、自車両の方向指示器の点灯を検出した場合には、自車両の運転者は、後方車両の運転者に自車両が車線変更を行うことを認知させるために、方向指示器の点灯後、合流車線での走行を一定時間継続するものと判断し、自車両が合流車線での走行を継続する車走行継続時間TAを算出することで、車線変更所要時間TLCの算出を行う。これにより、第5実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、自車両の方向指示器の動作状況に応じて推奨される運転方法で、自車両の操舵制御を行うことができ、合流地点における自車両の誘導をより適切に行うことができる。
≪第6実施形態≫
続いて、第6実施形態に係る車線変更制御装置について説明する。第6実施形態に係る車線変更制御装置は、図1に示す車線変更制御装置と同様の構成を有するものであり、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。以下において、図14を参照して、第6実施形態に係る車線変更制御装置の動作について説明する。図14は、第6実施形態に係る車線変更制御処理を示すフローチャートである。なお、第6実施形態に係る車線変更制御処理も、マイクロプロセッサ80により、一定の時間間隔ごとに繰り返し行われる。
ステップS601〜S603は、第1実施形態のステップS101〜S103と同様に、自車両の走行情報、合流車線の車線終端点を含む車線情報、および他車両の走行情報の取得が行われる。
そして、ステップS604では、車線変更制御部88により、合流地点において車線変更を行うための合流制御モードがオンになっているか否かの判定が行われる。具体的には、以下の4つの条件がすべて成立している場合に、合流制御モードがオンであると判定される。すなわち、第1に、自車両の運転者により合流地点における操舵制御が許可されていること(第1の条件)、第2に、自車両が本線車線に合流可能な範囲を走行していること(第2の条件)、第3に、合流地点における車線変更が完了していないこと(第3の条件)、第4に、後述する停止モードがオンになっていないこと(第4の条件)、の4つの条件を満たしている場合に、合流制御モードがオンであると判定される。ここで、第1の条件については、例えば、自車両の運転者により、合流地点における操舵制御を許可するためのスイッチ(不図示)がオンにされている場合に、自車両の運転者により合流地点における操舵制御が許可されていると判定される。また、第2の条件については、例えば、図4または図9に示すように、自車両の走行位置xhが合流可能開始点xstartから車線終端点xendまでの範囲内である(xstart≦xh≦xend)場合に、自車両が本線車線に合流可能な範囲を走行していると判定される。合流制御モードがオンと判定された場合はステップS605に進み、一方、合流制御モードがオフと判定された場合は、この車線変更制御処理を終了する。
ステップS605,S606では、第1実施形態のステップS105,106と同様に、合流地点における自車両の挙動の予測が行われ(ステップS605)、予測した自車両の挙動に基づいて、車線終端ストレス度合の評価が行われる(ステップS606)。
そして、ステップS607では、後方車両挙動予測部85により、合流地点における後方車両の挙動の予測が行なわれる。以下においては、図15を参照して、ステップS607の後方車両挙動予測処理を説明する。図15は、ステップS607の後方車両挙動予測処理を示すフローチャートである。なお、以下においては、図9に示す場面例のように、自車両周囲に後方車両および前方車両が存在するものとして、後方車両の挙動を予測する方法を説明する。また、この後方車両挙動予測処理においては、所定時間Δtをサイクル時間として設定し、合流地点における後方車両の挙動を、サイクル時間Δtごとの各時刻tpにおいて予測する。
まず、ステップS6701では、合流不可能状態(詳細は後述する。)が継続している継続時間Tpが初期値の0に設定され(Tp=0)、また、継続時間Tpを求めるための時刻tpが初期値の現在時刻t0に設定される(tp=t0)。
次いで、ステップS6702では、公知の追従モデルを用いて、合流地点における後方車両の挙動の予測を行うため、後方車両の追従の対象となる追従対象車両の設定が行われる。具体的には、後方車両挙動予測部85は、自車両が合流地点において転舵を開始している場合には、自車両を、後方車両の追従対象車両として設定し、一方、自車両が合流地点において転舵を開始していない場合には、前方車両を、後方車両の追従対象車両として設定する。
ステップS6703では、時刻tpにおける自車両および前方車両の挙動の予測が行われる。具体的には、後方車両挙動予測部85は、時刻tpにおける自車両の走行位置xh^(tp)および走行速度vh^(tp)を算出するとともに、時刻tpにおける前方車両の走行位置xf^(tp)と走行速度vf^(tp)を算出する。なお、時刻tpにおける自車両の走行位置xh^(tp)および走行速度vh^(tp)は、ステップS605で予測した自車両の走行位置xh^(t)および走行速度vh^(t)を用いることができる。また、時刻tpにおける前方車両の走行位置xf^(tp)と走行速度vf^(tp)は、例えば、前方車両の車速が一定であるものとして、ステップS603で算出した前方車両の現在の走行速度vfに基づいて、算出することができる。
ステップS6704では、前方車両が、後方車両の追従対象車両として設定されているか否かの判定が行われる。前方車両が、追従対象車両として設定されている場合はステップS6705に進み、一方、自車両が、追従対象車両に設定されている場合はステップS6710に進む。
ステップS6705では、自車両が本線車線に車線変更することができない合流不可能状態となっているか否かの判定が行われる。具体的には、後方車両挙動予測部85は、ステップS6703で算出した時刻t
pにおける自車両の走行位置x
h^(t
p)および走行速度v
h^(t
p)と、時刻t
pにおける後方車両の走行位置x
r^(t
p)および走行速度v
r^(t
p)とが、下記式(36),(37)に示す条件を満しているか否かを判定することで、時刻t
pにおいて、自車両が合流不可能状態であるか否かを判定する。
なお、R
0は、後方車両から自車両を視認することができる自車両と後方車両との車間距離のうち、最小の車間距離であり、また、V
0は、自車両と後方車両がほぼ同じ速度で走行していると判断できる相対速度のうち、最大の相対速度である。なお、自車両が合流不可能状態であるか否かを判定する際には、上記式(36),(37)に示す条件に加えて、自車両と後方車両との車間距離が、自車両が後方車両の前方に車線変更することができない範囲にあるという条件を満たすかを判定してもよい。
ステップS6705において、時刻tpにおいて自車両が合流不可能状態であると判定された場合は、ステップS6706に進み、一方、時刻tpにおいて、自車両が合流不可能状態ではないと判定された場合は、ステップS6709に進み、合流不可能状態が継続する継続時間Tpが0にリセットされる。
ステップS6706では、自車両が合流不可能状態であると判定されているため、合流不可能状態が継続する継続時間Tpに、上述したサイクル時間Δtが追加され、継続時間Tpが更新される。
そして、ステップS6707では、継続時間Tpが、所定時間Tp 0よりも大きいか否かの判定が行われる。継続時間Tpが所定時間Tp 0よりも大きいと判定された場合には、後方車両の運転者が、後方車両の前方に自車両が車線変更するものと予測し、後方車両が自車両に対して一定の車間距離を確保するように挙動するものと判断して、ステップS6708に進む。そして、ステップS6708において、追従対象車両が、前方車両から自車両に変更される。一方、ステップS6707において、継続時間Tpが所定時間Tp 0以下であると判定された場合には、前方車両が、追従対象車両として設定されたまま、ステップS6710に進む。
なお、後方車両挙動予測部85は、自車両の方向指示器の動作状況の検出を行い、本線車線側の方向指示器の点灯を検出した場合には、後方車両の運転者は、後方車両の前方に自車両が車線変更をすることを、より早いタイミングで予測することができるものと判断し、所定時間Tp 0をより小さい値に設定してもよい。
そして、ステップS6710では、公知の追従モデルに基づいて、合流地点における後方車両の挙動の予測が行われる。具体的には、後方車両挙動予測部85は、追従対象車両として設定された自車両または前方車両に、後方車両が追従するものとして、時刻tpにおける後方車両の挙動を予測する。そして、ステップS6711では、時刻tpが、上述したサイクル時間Δt経過した時刻に更新される。
ステップS6712では、自車両が車線終端点に到達する時刻tendまでの後方車両の挙動が予測されたか否かの判定が行われる。本実施形態においては、後方車両挙動予測部85は、時刻tpが、自車両が車線終端点に到達する時刻tendよりも遅い時刻であるか否かを判定し、時刻tpが時刻tendよりも遅い時刻である場合に、自車両が車線終端点に到達する時刻tendまでの後方車両の挙動が予測されたと判定する。刻tendまでの後方車両の挙動が予測されたと判定された場合は、この後方車両挙動予測処理を終了する。一方、時刻tendまでの後方車両の挙動が予測されていないと判定された場合は、ステップS6703に戻り、自車両が車線終端点に到達する時刻tendまで、合流地点における後方車両の挙動の予測が行われる。
以上のように、ステップS607の後方車両挙動予測処理が行われる。
図14に戻り、ステップS608〜S610では、第1実施形態のステップS108〜S110と同様に、後方車両ストレス度合の評価が行われ(ステップS608)、合流ストレス度合の評価が行われた後(ステップS609)、合流地点において車線変更が許容される時間があるか否かの判断が行われる(ステップS610)。ステップS610において、合流地点において車線変更が許容される時間があると判断された場合には、ステップS611に進み、一方、合流地点において車線変更が許容される時間がないと判断された場合は、ステップS615に進む。
ステップS611では、車線変更制御部88により、車線変更所要時間の算出が行われる。ここで、第6実施形態では、後方車両が、自車両の車線変更を予測して、自車両に対して一定の車間距離を確保するように挙動するまでは、自車両は合流車線を走行するものと判断して、車線変更所要時間T
LCを構成する走行継続時間T
Aを算出してもよい。具体的には、車線変更制御部88は、走行継続時間T
Aが下記式(38)に示す条件を満たすものとして、走行継続時間T
Aを算出する。
なお、上記式(38)において、t
w’は、自車両と後方車両とが上記式(36),(37)に示す条件を満たすことで、自車両が合流不可能状態となった最初の時刻である。また、T
w’は、合流不可能状態が継続することで、後方車両の運転者が、自車両が後方車両の前方に車線変更することを予測し、自車両と一定の車間距離をとるように挙動するものと判断されるまでの時間であり、例えば、上述したステップS6707で導入した所定時間T
p 0を用いることができる。
次に、ステップS612,S613では、第1実施形態のステップS112,113と同様に、目標操舵角の算出および出力が行われ、ステップS614に進む。
ステップS614では、車線変更制御部88により、目標駆動力の出力が行われる。具体的には、車線変更制御部88は、例えば、ステップS601で算出した推定目標加速度a*^を得るための駆動力を目標駆動力として算出し、パワートレーンコントローラ110に出力することができる。これにより、パワートレーンコントローラ110は、目標駆動力に応じて、エンジンのスロットル開度やトランスミッションの変速比を算出し、エンジン・駆動機構120を制御する。
なお、ステップS610において、合流地点において車線変更が許容される時間がないと判断された場合に、ステップS615に進む。ステップS615では、車線変更制御部88により、自車両の現在の走行位置から車線終端点までの距離が、所定値以下か否かの判定が行われる。自車両の走行位置から車線終端点までの距離が所定値以下である場合には、ステップS617に進み、一方、自車両の走行位置から車線終端点までの距離が所定値よりも大きい場合はステップS616に進む。
ステップS616では、自車両の走行位置から車線終端点までの距離が所定値よりも大きく、自車両が車線終端点に到達するまでに時間的な余裕があるものと判断される。そこで、車線変更制御部88は、合流制御モードを継続したまま、自車両の現在の車速を維持するように、パワートレーンコントローラ110に指示し、この車線変更制御処理を終了する。これにより、次回以降の車線変更制御処理において、合流地点における自車両の誘導を行うことができる。
一方、ステップS615において、自車両の走行位置から車線終端点までの距離が所定値以下であると判断された場合には、ステップS617に進む。ステップS617では、自車両が車線終端点に接近しているため、自車両の車線変更が困難であると判断され、自車両の走行を停止するための停止モードがオンとなり、自車両を停止させように、パワートレーンコントローラ110が制御される。なお、自車両の走行を停止するための停止モードがオンにされた後は、次回処理以降のステップS604において、合流制御モードがオンと判断されず、合流地点における自車両の誘導が行われないこととなる。
以上のように、第6実施形態に係る車線変更制御装置は、自車両と後方車両との車間距離が、後方車両から自車両を視認できる範囲にあり、かつ、自車両と後方車両とが同程度の走行速度で、所定時間以上継続して走行している場合に、後方車両の運転者は、自車両が後方車両の前方に車線変更するものと予測し、自車両と一定の車間距離をとるものと判断し、合流地点における後方車両の挙動を予測する。また、このような場合に、自車両の方向指示器の点灯が検出された場合には、後方車両の運転者は、後方車両の前方に自車両が車線変更をすることを、より早いタイミングで予測することができるものと判断し、合流地点における後方車両の挙動を予測する。これにより、第6実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、合流地点における後方車両の挙動を、自車両と後方車両との走行状況に応じて、より適切に予測することができ、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスをより適切に評価することができる。
さらに、第6実施形態においては、合流地点における自車両の操舵制御を行うだけではなく、推定目標加速度に基づいて、合流地点における自車両の駆動力の制御も行われる。そのため、第6実施形態においては、合流地点において車線変更を行う際の自車両の運転者の運転負荷をより低減することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本発明は、上述した実施形態に限られず、また、上述した第1〜6実施形態を組合せて実施してもよい。
また、上述した2,3実施形態では、合流ストレス度合を、車線終端ストレス度合と後方車両ストレス度合との合計値、または、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合のうち各時刻において最大となる値を選択して算出する構成を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、合流ストレス度合を、車線終端ストレス度合および後方車両ストレス度合のうち各時刻において最小となる値を選択して算出する構成としてもよい。
さらに、上述した第2,3実施形態では、自車両と後方車両との車間時間および接近時間に基づいて、後方車両ストレス度合を算出する構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、自車両と後方車両との車間時間および接近時間のうち、いずれか一方のみに基づいて、後方車両ストレス度合を算出する構成としてもよい。
また、自車両の走行情報(自車位置情報)を取得する走行情報取得部81、自車両が走行する車線の車線情報を取得する車線情報取得部82、自車両周囲を走行する他車両を検出する他車両検出部83、合流地点における自車両の挙動を予測する自車両挙動予測部84、本線車線において自車両の後方を走行する後方車両の挙動を予測する後方車両挙動予測部85、自車両が車線終端点に接近することに対する自車両の運転者のストレスを評価する車線終端ストレス評価部86、合流地点における後方車両に対する自車両の運転者のストレスを評価する後方車両ストレス評価部87、車線変更制御部88の合流ストレス評価までを、車線変更ストレス評価方法として車両に予め記憶させるのではなく、プログラムデータとして外部から通信によって受信し、記憶させてもよい。これにより、最新の合流地点が随時更新可能になり、ユーザーが逐次設定する手間を省くことができる。
なお、上述した実施形態のマイクロプロセッサ80の走行情報取得部81は本発明の走行情報取得手段に、車線情報取得部82は本発明の車線情報取得手段に、自車両挙動予測部84は本発明の自車両挙動予測手段に、他車両検出部83は本発明の他車両検出手段に、後方車両挙動予測部85は本発明の後方車両挙動予測手段および合流不可能状態判断手段に、車線終端ストレス評価部86は本発明の車線終端ストレス評価手段に、後方車両ストレス評価部87は本発明の後方車両ストレス評価手段および合流可能状態判断手段に、車線変更制御部88は本発明の合流ストレス評価手段、車線変更計画手段、および誘導手段に、モーターコントローラ90および操舵アシストモーター100は、本発明の誘導手段にそれぞれ相当する。